平成二十七年東京都議会会議録第四号

○副議長(藤井一君) 七十五番野上ゆきえさん
   〔七十五番野上ゆきえ君登壇〕

○七十五番(野上ゆきえ君) 初めに、オリンピックレガシー共創に向けた取り組みについて伺います。
 オリンピック憲章では、スポーツを文化と教育と融合させることをオリンピズムの目指すものとしており、とりわけロンドン大会成功以来、スポーツ競技だけではなく、並行して開催することが義務づけられている文化プログラム、カルチュラルオリンピアードの役割が重要になってきています。
 二〇一二年ロンドン大会の際には、大会の四年前から英国全土で展開され、文化セクター全体を活性化させるだけではなく、観光や地域振興などの面でも大きな波及効果を生み出しました。より多くの市民が新しい形で文化活動に触れ、参加する機会をつくりました。
 二〇二〇年東京大会まであと五年です。大会を最高のものとするためにも、早期からプログラムを展開し、世界に向けて、東京の魅力を発信し続けていくことが必要であります。
 東京大会では、文化面でも成熟都市としてのモデルを内外に示すことが不可欠であり、プログラムの展開に向けては、年齢や性別、障害の有無にかかわらず一人でも多くの都民がともにつくり上げていくことが必要であると考えますが、知事の所見を伺います。
 特に、プログラムは、誰もが鑑賞し、参加できることが重要です。パラリンピックでハンディキャップのある人々がスポーツに参加するのと同様に、芸術文化を享受、創造するための工夫に力を入れるべきであると考えます。
 ロンドン大会では、障害を持つアーティストが美術、映像、ダンスなどイギリス全土で展開するアンリミテッドという取り組みがなされました。この取り組みは、大会後も継続しており、この精神をレガシーとして根づかせています。
 東京でも同様の取り組みを継承し、障害のある方々の芸術文化活動の発展につなげていくべきと考えますが、見解を伺います。
 東京独自の取り組みも必要です。例えば、シカゴ美術館で行われているタッチギャラリーやユニバーサルミュージアムのように障害のある人々への鑑賞支援や障害者アーティストを育てる環境を整えること、また、その活動の場をつくることもさらに進めていく必要があります。障害者の文化活動に対する支援として、都はどのような取り組みを進めていくのか、見解を伺います。
 今後、東京都芸術文化振興基金も設立されますが、都など公的団体が主体となって実施する取り組みだけではどうしても限界があります。体制づくりも重要です。
 障害者支援に限らず、文化プログラムなどの施策を大々的に展開するためにも、民間企業や各種団体とより積極的なパートナーシップを結び、民間の力も十分に活用していくべきと考えますが、見解を伺います。
 ロンドン大会では、誰もが大会に参加するチャンスを提供し、あらゆる文化に共通する創造性を、とりわけ若者たちに喚起することが目標でありました。東京大会においても、現在、学校に通う生徒を初めとする若者には、大会開催を支えるとともに、その先の成熟した都市東京をつくり上げていく主役として、高い学力、語学力とともに、多様な文化への理解を持つ人材として育てていく必要があると考えています。
 そこで、二〇二〇年東京大会を見据え、高校生が多様な文化の理解を深めるため、都立高校において国際交流を推進すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、エネルギー施策について伺います。
 現在、国においては、将来の電源構成を決めるエネルギーミックスの議論が始まっています。また、国会では、二〇二〇年からの発送電分離を盛り込んだ、電気事業法の改正案が議論される予定です。
 エネルギー施策が大きく変動しています。都はこれまで、我が国の地球温暖化対策をリードしてきましたが、現在は火力発電所からの電力供給の増大に伴い、当面、CO2排出量の増加が避けられない状況にあります。
 こうした気候変動への悪影響や東日本大震災により浮き彫りとなった電力供給体制の脆弱性に対し、私はこれまでも、コージェネレーションシステム等の自立分散型エネルギーを拡充していくことの重要性を主張してまいりました。
 コージェネレーションシステムは需要地に近いことから、送電のロスもなく熱利用が可能で、総合的なエネルギー効率が高いことや、非常時のエネルギー供給確保という点ですぐれていることはよく知られていますが、近年、こうした価値に加え、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの出力変動を補完し、安定した電力に調整する電源としての役割も期待されております。
 実際、田町駅の開発では、コージェネレーションシステムや再生可能エネルギーなどを組み合わせ、ICT技術により需給をマネジメントして、地域全体でエネルギーの利活用を最適化するなど、最近の開発では、スマートエネルギーネットワークが構築された案件がふえてきています。
 今後、東京大会を見据え、都内では多くの都市開発が見込まれています。こうした機会を捉え、都市の快適性を損なうことなくCO2排出量を低減させ、系統からの電力供給が停止した場合でも、経済活動や生活機能の継続を可能とするエネルギーシステムをまちづくりの中でビルトインしていくことが重要です。その際、大きな役割を担うのがコージェネレーションシステムであると考えます。
 世界に誇れる低炭素で災害に強いレジリエントな都市の実現を目指し、コージェネレーションシステムのさらなる導入拡大に向けて取り組んでいく必要があると考えますが、見解を伺います。
 二〇一三年四月、電力システムに関する改革方針が閣議決定されました。このロードマップに基づき、我が国の電力供給システムに関する戦後最大の抜本的な改革も始まっています。
 これまでの地域ごとの独占的事業者が電気を供給する仕組みを見直し、二〇一六年からは、電力の小売全面自由化により、家庭や中小事業所などの需要家も地域独占の従来の電力会社以外の事業者から電気の供給を受けることが可能となります。
 こうした需要家の供給事業者の切りかえ、スイッチングを進めるためには、需要家が供給事業者をみずから選び、事業者間の競争を促進していくことが重要です。こうした電力システムの改革の動きも踏まえ、都民、事業者の取り組みを一層促していくことが必要と考えますが、見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 野上ゆきえ議員の一般質問にお答えいたします。
 都民とともにつくり上げる文化プログラムについてでございますが、ロンドン大会では、英国全土で伝統やアートを発信するロンドンフェスティバルが展開され、世界中から二千万人もの人々が参加したことが大会の成功を大きく牽引いたしました。とりわけ、若者や障害者など誰もがフェスティバルに参加する機会を提供したことは大きな特色でございます。
 世界の人々が共感できる文化の力を活用することは、東京が大会を通じて成熟都市としてのメッセージを発信していくことつながります。
 このため、二〇二〇年東京大会では、都民はもとより国内外のアーティストなど多くの英知を結集して、老若男女、障害の有無を問わず、あらゆる人々が参加体験できる取り組みを展開することで、文化の面でも史上最高のオリンピック・パラリンピック大会としていきたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

○教育長(比留間英人君) 都立高校における国際交流についてでありますが、都教育委員会は、都立高校における国際交流の機会を拡大するため、来年度、全校に外国人指導者を配置し、生徒が生きた英語を身につけ、日常的に異文化理解を深められる環境を整備いたします。
 英語以外の外国語についても、授業や部活動を行う学校をふやすことで、さまざまな言語や文化に対する生徒の理解と関心を高めてまいります。さらに、新たに都立高校十校を東京グローバル10として指定し、大学との連携による留学生交流や、海外の学校との姉妹校交流などの取り組みを支援していきます。
 二〇二〇年に向けて、こうした取り組みを推進し、豊かな国際感覚とコミュニケーション能力を持つ生徒を育成してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、アンリミテッドの継承についてでありますが、二〇一二年のロンドン大会で実施されたアンリミテッドは、障害のあるアーティストの活動を支援するため、この大会で初めて導入された文化プログラムでございます。
 東京大会の立候補に当たりましても、若手芸術家、高齢者、障害者等がともに創作するプログラムとして、その考え方を継承することとしていたところでございます。今回の東京文化ビジョンにおきましても、その考え方は反映されており、今後アーツカウンシル東京を活用して、障害者アートなどの取り組みを展開していく予定でございます。
 次に、障害者の文化活動支援に関する都の取り組みについてでありますが、東京文化ビジョンの素案では、障害者アートへの支援や障害者の鑑賞、参加を促す活動の推進等、文化の面でもバリアフリーな都市を目指すことを明記しております。
 障害の有無にかかわらず芸術文化を楽しめるよう、都立文化施設では、バリアフリー化のための整備を行うとともに、音声ガイド等を設置するほか、手で触れて体験できる展示も行っております。
 来年度は、新たな助成制度も活用し、鑑賞や創作などさまざまな障害者の芸術活動を支援してまいります。
 最後に、文化施策の展開における民間の力の活用についてでございます。
 障害者の文化活動支援を初め、文化拠点の形成や人材育成など、さまざまな文化施策を実現していくためには、独自に芸術文化活動を展開している多様な主体との連携強化が必要であります。今後、東京文化ビジョンで掲げた文化戦略を推進するため、企業やNPO、芸術文化団体等さまざまな主体に幅広く協力を呼びかけてまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

○環境局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、コージェネレーションの導入拡大についてでございますが、都はこれまで、キャップ・アンド・トレード制度において、高効率なコージェネレーションの活用が評価される仕組みを構築するとともに、エネルギーマネジメントシステムの導入を条件として初期費用の負担軽減を図るなど、多面的に支援を行ってまいりました。
 こうした取り組みに加え、来年度からは、コージェネレーションによる熱や電気を建物間などで面的に融通するためのインフラ整備を支援し、地域のエネルギー利用効率や防災性の向上につなげてまいります。
 低炭素、快適性、防災力を兼ね備えたスマートエネルギー都市の実現に向け、今後とも、コージェネレーションの普及に積極的に取り組んでまいります。
 次に、電力システム改革の動きを踏まえた取り組みについてでございますが、現在、国において制度の詳細設計に係る議論が行われております電力の小売全面自由化等につきましては、家庭や中小事業者を含む需要家の選択肢や供給事業者の事業機会が拡大し、低炭素かつ安価な電力の安定的な供給が進むことが肝要でございます。
 昨年設置した都の再生可能エネルギー拡大検討会におきましては、再生可能エネルギーの供給拡大に向けて需要家による再生可能エネルギー電力の選択を促すことが重要であるという提言をいただいており、今後、国における議論を見ながら、消費者の低炭素電力の選択意欲を喚起する取り組みについて検討してまいります。

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