平成二十七年東京都議会会議録第四号

○議長(高島なおき君) 百十番古賀俊昭君
   〔百十番古賀俊昭君登壇〕

○百十番(古賀俊昭君) まず、首都東京の外国軍基地について質問いたします。
 ことしは、昭和二十年八月十五日に玉音放送で大東亜戦争終結に関する詔書が渙発され、我が日本軍が潔く矛をおさめてから七十年、日本が連合国の軍事占領を脱して、主権を回復したとされる昭和二十七年四月二十八日のサンフランシスコ講和条約の発効より六十三年になります。
 日米安保条約、地位協定に基づくとはいえ、これだけの年月がたっても、一国の首都に占領軍の基地が、広大な横田基地を初め八カ所も存在することは、同じ枢軸国と呼ばれたドイツやイタリアと比べても異常であり、属国の惨状悲哀今なおと、嘆息を禁じ得ません。
 今般、都に都市外交人材育成基金を設けるなど、殊のほか外交に熱心な知事は、この現状を深刻に受けとめるべきです。
 また、米軍が航空機に対してレーダーによる進入管制を行う横田空域が、羽田空港の背後と伊豆半島のつけ根の太平洋側から日本列島のど真ん中を横断して新潟県と長野県の県境の日本海側まで、最高高度七千メートルに及んで、戦後から現在も日本の飛行機が自由に飛行できない壁が存在し、依然として米占領下と同然の状態にあります。
 沖縄の空の航空管制を行う嘉手納ラプコンは、昭和四十七年の沖縄返還、本土復帰から三十八年後の平成二十二年に日本側へ管制権が戻っています。
 主権国家の首都の知事として、東京の空を奪われたままで、東京を胸を張って世界一の都市と呼べますか。昨年十二月に知事が満を持して発表した東京都長期ビジョンは、米軍管制空域に関しては、返還の文言どころか、記述すらありません。
 去る二月二日、平成三十二年の東京五輪までに米軍横田基地への民間航空機乗り入れを目指す多摩地域の経済団体の会が立川市で設立されました。私も参加いたしましたが、出席都議を代表して挨拶に立った野村都議は、外国の軍事基地があること自体が国の恥、主権国家として、まず基地返還と認識した上で民間利用をと、語気鋭く国会議員席と参加者に訴えました。
 五年後の五輪開催を機に、ここに来て横田基地の軍民共同利用の声が盛んでありますが、その理由は、経済性、利便性、グローバル化だのの物質的利益優先の損得勘定です。
 七十年前、軍事的にアメリカにたたきのめされましたが、米国の属国かのごとき精神的敗北だけは峻拒するのが日本を取り戻すことであり、戦後体制からの脱却ではないでしょうか。独立国家の矜持にかけて、まずは米国に基地返還と航空管制権の回復を迫るのが本来の手順と考えます。
 ちなみに、昨年暮れの総選挙に横田基地返還を掲げた東京の候補者は、選挙公報を見る限り一名のみで、自民党にはいませんでした。残念です。
 横田基地は、所在する自治体にとって、航空機騒音のみならず、まちの発展に、はかりがたい阻害要因となっています。例えば、瑞穂町は基地面積の三割を提供しているために、懸案の市制施行が棚上げ状態にあり、福生市は市域の三分の一の面積が基地で占められています。地元の林田都議の、軍民共用については慎重な配慮をとの立場は、至極当然であります。
 これら米軍基地に関する諸課題について、知事の所見を伺います。
 次に、首都の領域保全について質問いたします。
 昨年四月、最初に確認された小笠原、伊豆諸島周辺海域での中共船舶の領海侵犯、違法操業などの不法行為は、海路往復四千から五千キロ、襲来した船舶は二百隻を超えており、これは単なる金銭目的の密漁、宝石泥棒ではなく、北京政府の組織的意思に基づく準軍事作戦であると考えるべきだと思いますが、国際政治学者でもある知事の認識を伺います。
 この問題に関し、知事のこれまでの対応には幾つかいぶかしい点があります。
 昨年の四定での知事所信表明では、中国大使館に直接連絡を入れ、事態の改善を強く求めたと報告がありましたが、みずからが責任を負う行政区域への侵犯であるにもかかわらず、肝心の抗議の言葉が見当たりません。
 大使館へ申し入れを行った際の相手は誰か不明であります。我が国政府には、十一月六日、官房長官にも会いと、具体的であるのに比べて違和感を覚えますが、いかがでしょうか。
 また、公益財団法人小笠原協会の機関紙に寄せた知事の新年の挨拶文では、外国船、あるいは外国漁船とあえて国名を伏せて表記しています。中共政府に気兼ねしているのではないかと思わざるを得ないのですが、所見を伺います。
 小笠原諸島には都民二千五百人が生活をしていますが、漁民と称する彼らが台風の避難を口実に上陸に踏み切れば、二百隻で一隻に三十人としても、島民を上回る六千人が島を占拠する事態となります。
 都は、警視庁、海上保安庁、水産庁、そして防衛省と連係しての情報収集や対策が不可欠と考えますが、見解を伺います。
 中共は、日本列島、沖縄、台湾などの第一列島線を支配下に置きつつ、今回、尖閣と小笠原の二正面作戦への我が国の対応能力を試し、次いで、小笠原諸島、グアム島の第二列島線へ触手を伸ばしてきたと見るべきだと思います。
 しかし、意外なことに、日本の防空識別圏には、伊豆諸島南部から南側が除かれています。つまり、小笠原諸島は我が国の防空識別圏の外にあるのです。
 海保の警察活動や水産庁及び都の監視調査活動などが行われているこの区域は、現在、我が国が制海権、制空権を確保していることはもちろんでありますが、さらに実効支配をより確実にして島民に安心をしてもらうためにも、自国が自由に設定可能な防空識別圏設定について、早急に国へ申し入れるべきだと考えますが、知事の所見を伺います。
 (パネルを示す)これが防衛白書よりとった日本の防空識別圏ですけれども、小笠原諸島は防空識別圏から外れています。どういうわけか北方領土と竹島も意図的に外されています。これが我が国の今の国防の現状です。
 専門家に防空識別圏に関して聞きましたが、レーダーサイトを設置して電波の傘をかけるには時間がかかるので、移動レーダー管制隊を拡充すれば、早期に設定可能とのことでありました。
 ところが、今申し上げたとおり、我が国の防空識別圏からは竹島や北方領土、さらには、この小笠原諸島が外れている。これが今日の我が国の姿であります。
 次いで、日本文化と多言語表記についてです。
 去る一月三十日、東京文化ビジョン素案が発表され、都民意見の公表が行われました。文化は生きることであり、そのためのなりわい、言葉、習慣、学問、知恵、政治、信仰などをもとに衣食住があり、時代を経て、市井に生き、継承されてきました。
 当然、地域、ここでは東京の、江戸またはそれ以前の歴史と風土に根差し、磨かれてきたものが多くあるにもかかわらず、素案ではその例示や視点もなく、目立つのは、ふだん都民が使うことのない片仮名語、横文字の多さです。第一、ビジョンからして、将来、未来の構想を指し示すもので、これでは過去の忘却破棄ではないでしょうか。
 七十年前、一面焼け野が原の日本の文化、社会の再建は国語教育が重要であると民俗学者の柳田國男は主張しました。国語こそが文化の根本と考えたからです。祖国とは国語だは、エミール・シオランの言葉です。
 そして、都内にある建物の国宝、多摩地域に多い農耕と祭りの文化資源、江戸文化を伝えてきた職人、工芸品、島しょに関する記述は皆無であります。
 文化を語るのですから、国語本来の縦書き表記に改めることも含めて、内容の再検討を求めたいのですが、見解を伺います。
 次に、外国語の案内表記についてです。
 訪日外国人旅行者は、平成二十五年に初めて一千万人を突破し、さらに、平成二十六年には過去最高の一千三百四十一万人に達しました。
 外国人旅行者の増加に伴い、まち中では、歩道や駅構内などで外国語の案内表記を目にする機会がふえましたが、多くの言語を限られた枠内に表記することで、かえって文字が小さくなったり、また、肝心の日本語表記すら見づらいものがあります。
 公共空間の外国語案内表示は、利用者の視認性への配慮が必要であり、世界共通語となりつつある英語を基本として、その他は絵文字、ピクトグラムを工夫して表示すれば、日本語を中心に整理されて、景観上もわい雑にならず、全体として見やすくなると思います。
 また、漢字を表記する場合、現在、ほとんどが簡体字と呼んでいる略字が使用されていますが、実際、来日旅行者で最も多いのは、繁体字と称している正漢字を日常使用している台湾の人たちであります。本来の漢字、正漢字の表記も必要だと考えますが、あわせて都の見解を伺います。
 なお、絵文字についてでありますが、手洗いの男女の図案は日本語がわからない外国人のために考案されて、今日では海外でも見かけるほど普及いたしました。加えて、非常口を示す絵文字、図案は日本の大学生が考えたもので、これも世界中で使われています。絵文字の活用を都も積極的に進めることを要望しておきます。
 最後に、道路橋梁の整備について質問いたします。
 日野市と立川市の境界をなす多摩川にかかる日野橋の整備について、昨年六月の第二回定例会の一般質問で取り上げたところ、都では、平成二十六年度から、かけかえに向けての調査を開始するとの答弁がありました。日野橋は、長年地域に親しまれてきたことから、私の地元、日野市でも、早期整備への市民の関心と期待が高まっています。
 そこで、今年度、平成二十六年度の取り組み状況と今後の予定について伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 古賀俊昭議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、米軍基地に関する諸課題についてでございますが、アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増す中、日米安全保障体制は、我が国の安全とともに、地域の平和と安定にとって不可欠なものでありまして、横田基地など都内の米軍基地もその一翼を担うものと認識しております。
 米軍基地は、日米地位協定に基づき、必要でなくなった場合は返還されなければならず、その必要性が絶えず検討されることとなっております。
 都としましては、都民の生活環境を改善し、地域のまちづくりを推進する観点から、引き続き基地の返還の可能性が検討され、整理、縮小、返還が促進されるよう国に要請してまいります。
 また、横田空域につきましては、平成二十年九月にその一部が返還され、飛行時間の短縮や燃料消費の削減などが図られました。
 今後とも、首都圏の空域を再編成し、より安全で効率的な航空交通を確保していくため、管制業務とあわせて、全面返還の実現を国に要請してまいります。
 中国漁船違法操業問題についてでございますが、今般の中国漁船の違法操業は、地元漁業への被害や島民に不安をもたらしたことはもとより、我が国の領土、領海の保全にかかわる大変重大でゆゆしき事態でございます。
 今月、小笠原を視察した際にも、島民の皆様から被害の実情を直接伺い、改めて非常に深刻な問題であると認識をいたしました。
 議員ご指摘のような主張があることは承知しておりますが、国におきましては、海上保安庁長官が、中国漁船の意図について、領海や海洋権益とは別問題で、一獲千金を狙った違法な操業との見方を示してございます。
 また、昨年十二月に開催されました日中漁業共同委員会において、中国漁船によるサンゴの密漁を根絶するため、断固とした取り締まりや違反者への厳しい処罰など、両国で合意をしております。
 都としましては、二国間の合意が確実に守られ、今般のような事態を再び招くことのないよう、今後とも中国政府の対応を厳しく注視してまいります。
 中国大使館への申し入れなどについてでございますが、これまで私は、中国漁船による違法操業に対し、昨年十一月六日に中国大使館に直接電話し、公使に抗議するとともに、事態の改善を強く求めるなど、再三、中国政府に対し抗議、要請をしてまいりました。
 なお、議員お尋ねの外国漁船との表現についてでございますが、中国に遠慮や気兼ねをしているわけでは毛頭ございません。昨年の第四回定例会での所信表明や本定例会での私の施政方針においては、中国漁船と表現をしております。
 現在では、中国漁船の違法操業は小康状態にありますが、今後とも油断することなく、毅然とした態度で臨んでまいります。
 防空識別圏についてでありますが、防空識別圏の設定及び運用は、国の専管事項でありまして、高度な判断が必要な問題であります。
 一方、小笠原諸島など、東京の島しょ地域は、我が国の排他的経済水域の約四割を占めるなど、国益を確保する上で重要な国家的役割を担っております。
 島しょ地域に暮らす住民の生命と財産は、本土に住む国民と同様にひとしく守られるべきであり、島しょ地域の方々が不安を抱きながら生活をするようなことがあってはなりません。
 国は、平成二十五年十二月に閣議決定されました防衛計画の大綱において、太平洋側の島しょ部における防空態勢のあり方について検討を行うとしていることから、その推移を見守ってまいりたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁をいたします。
   〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 日野橋のかけかえについてでございますが、日野橋は、甲州街道が多摩川を渡る橋梁であり、河川で分断した地域をつなぐとともに、災害時には緊急輸送道路として、防災上重要な役割を担う都市施設でございます。
 この橋は建設から九十年近くが経過し、老朽化が進んでいるため、かけかえにより耐震性の向上を図るとともに、あわせて快適で安全な歩行空間を確保してまいります。
 今年度からは環境調査や現況測量などを実施するとともに、工事に必要な仮橋の構造などについて検討を開始いたしました。平成二十七年度は、引き続き地質調査や橋梁形式の比較検討などを進めてまいります。
 今後とも、関係機関との協議を計画的に実施し、事業化に向けて積極的に取り組んでまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 中国漁船の違法操業問題に関する関係機関と連携した対策についてでございますが、都はこれまで、海上保安庁などと連携し、都の漁業調査指導船による監視活動を行うとともに、国や小笠原村との連絡会議を立ち上げ、これまで三回開催するなど、情報の共有化、連携の強化を図ってまいりました。
 島民の方々が二度と不安を抱くことのないよう、今後とも、状況に応じて幅広く関係機関と連携し、情報共有を行いながら的確に対応してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 東京文化ビジョンについてでありますが、東京文化ビジョンの素案では、東京の文化を考える上での基本として、東京の文化には日本古来の伝統が今なお脈々と息づいており、こうした伝統に新たな感性が取り入れられて融合し、新たな価値が生み出されたことで、独自の文化として成長を遂げてきたとの認識を示しております。
 素案の発表後、伝統文化に対するさまざまな考え方を初め、歴史的建造物や庭園などの文化財の活用、表記に関する意見などが都民の方々や団体などから寄せられております。
 今後、最終取りまとめに向けては、都議会での議論を踏まえた上で、寄せられた意見の反映を検討し、用語解説を加えるとともに表記も工夫して、都民にわかりやすいものとしてまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 案内表示、標識の外国語表記についてでございますが、東京を訪れる外国人旅行者や障害者、高齢者等の方々が安心してまち歩きを楽しむためには、案内表示、標識の表記をわかりやすくしていくことが重要でございます。
 このため、都が定める案内サイン標準化指針では、使用する言語は日本語及び英語の二言語を基本とし、絵文字を効果的に活用するとともに、必要に応じ他の言語を含めて表示することとしております。
 今回改定をした指針では、この原則を踏まえつつ、英語のほか、使用する旅行者数の多い中国語の簡体字、繁体字、韓国語に対応する対訳表を新たに作成いたしました。
 今後、標識等の設置者に対し、本指針の普及啓発を図り、来訪者の動向や表示面の大きさに応じた活用を促すことで、利用者の目線に立った整備を促進してまいります。

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