平成二十七年東京都議会会議録第四号

○議長(高島なおき君) 四十二番高椙健一君
   〔四十二番高椙健一君登壇〕

○四十二番(高椙健一君) まず最初に、オリンピック・パラリンピック大会の開催についてお尋ねします。
 東京が二〇二〇年大会を成功に導くためには、オリンピックと同様に、あるいは大会後の高齢化社会を見据えると、それ以上にパラリンピックに向けた準備が肝要です。
 二〇一二年のロンドン大会においては、パラリンピックは史上最高の大会であったと評価されており、元ロンドン大会組織委員会CEOのダイトン卿も、大会の最も重要なレガシーの一つがパラリンピック大会の成功だと知事に述べたとのことです。
 また、私は大会後ロンドンを訪れましたが、大会を契機として、ハード面に加え、ソフト面でのバリアフリー化も進んでおりました。そういった過去大会の成功要因も参考にして、東京大会を確実に成功させることが我々の責務であると考えます。
 都は、既に大会に向けたバリアフリー化の推進への取り組みに着手していると聞いております。取り組みに当たっては、パラリンピアンや障害者などを含む当事者の意見を十分に反映させることが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、安全でおいしい水について伺います。
 かねてより、私は東京が世界一を目指し、魅力あふれる都市となるには、安全・安心の充実が重要と主張し、さまざまな取り組みが進んでいます。
 中でも、東京の水道水は我が党が幾度となく取り上げてきましたが、高度浄水処理などの世界でもトップレベルの技術を備えるなど、都民の暮らしを支え、まさに安全・安心の象徴です。
 私は昔から蛇口の水をごくごく飲んでいますが、今現在、特に若い世代では蛇口離れが進んでおり、特段の理由もなく水道水を飲まない傾向にあるようでございます。このままでは、若い世代の水道水離れが定着してしまい、非常に残念であります。
 今後、情報化、国際化がますます進むとともに、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックが目前に迫ってきています。こうした状況をチャンスと捉え、東京の水道のすばらしさをもっと浸透させるため、次世代を担う若者などに対して世界観や価値観に訴えかけることが重要だと思いますが、今後の取り組みを伺います。
 次に、気候変動対策について伺います。
 世界気象機関は、先日、昨年の世界の平均気温が記録のある一八五〇年以降で最も高かったと発表いたしました。
 近年、世界各地で豪雨や干ばつなど、温暖化が原因と指摘される極端な気象現象が頻発しており、我が国でも、これまでに例のないような豪雨が毎年のように発生して大きな被害をもたらしています。
 気候変動をめぐる国際交渉では、二〇二〇年以降の新たな枠組みの合意を目指して議論が活発化してきていますが、東京はエネルギーを多量に消費する大都市の責務として、最先端のすぐれた環境技術を活用しながら、CO2の削減や省エネルギーを進め、我が党が掲げる後世に誇れるクリーンで美しい東京を実現していかなければなりません。
 都は、昨年十二月に策定した長期ビジョンにおいて、スマートエネルギー都市を創造するという新たな政策指針を掲げましたが、気候変動対策に対する基本的な認識と今後の取り組みについて、知事のご見解をお伺いします。
 また都は、これまで気候変動対策に先駆的に取り組み、平成二十二年度からは、その柱として、大規模事業所を対象とするキャップ・アンド・トレード制度を開始しております。
 先般、都が発表したこの制度の対象事業所における平成二十五年度のCO2排出量の実績では、二〇%を上回る大幅な削減が達成されているとのことです。これは、都内の大規模事業所の方々が地球温暖化問題の重要性をご理解し、省エネに積極的に取り組んでいただいた結果であるとともに、この制度が効果的に機能していることのあかしであると認識しております。
 来年度からは、削減義務率を上乗せして新たな五カ年の計画期間が開始されますが、事業所が削減義務を円滑に履行できるよう、これまでの成果を生かしながら、省エネの取り組みを一層支援していくべきものと考えますが、見解を伺います。
 次に、多摩地域振興の促進についてお尋ねいたします。
 都は、先日の我が党の代表質問に答えて、本年四月に仮称でございます、新たな多摩のビジョン行動戦略年次報告書を作成することを明らかにいたしました。これは行動戦略等の計画をつくりっ放しにせず、多摩振興の取り組みを着実に前へ進めようとするものであり、こうした都の姿勢は評価するものです。
 一方、一口に多摩地域といっても、多摩地域は広く、また、個々の地域が抱えている行政課題や地域特性などは、北多摩、西多摩、南多摩でそれぞれ大きく異なっております。
 例えば、私の地元の国分寺市や国立市には、武蔵国分寺跡や谷保天満宮といった史跡や重要文化財のほか、一橋大学を中心とした文教地区が存在しており、こうした地域性がまちづくりなどにも生かされています。
 今後の多摩振興の推進に当たっては、こうした地域ごとの特性の違いを踏まえつつ、地域の事情に精通した市町村をきめ細かく支援し、民間等も巻き込みながら、相互に連携して進めていくべきだと考えます。
 そこで都は、今回作成する年次報告書をどのように活用して多摩振興を推進するおつもりなのか、所見を伺います。
 次に、文化振興についてお尋ねいたします。
 先般、東京都の芸術文化振興における基本指針として、東京文化ビジョンの素案が発表されました。ビジョンでは、芸術文化が東京のさらなる成長のための重要な要素として位置づけられ、その戦略の一つとして、都内の多彩な文化拠点の魅力向上が掲げられています。
 私は、文化施設が集積し、内外の数多くの文化に触れることができる区部はもとより、歴史の中で培われた都市部とは異なるさまざまな文化的特性を持つ多摩地域の魅力を向上させ文化拠点として形成していくことが、東京全体の多様な魅力の発信のためには不可欠であると思います。そのためには、地域の資源や人材を活用し、連携を進めながら、各地域の特色を効果的に生かした事業を実施することが重要であります。
 そこで、多摩地域がさらなる発展を遂げるため、多摩の文化の魅力をどう捉え、どのように発信力を高めていくのか伺います。
 次に、国分寺三・四・一一号線の事業化に向けた取り組みについて伺います。
 多摩地域では、調布保谷線や府中所沢線など、多摩南北五路線を初めとする主要な幹線道路の整備が進められております。
 国分寺市内におきましては、市の中心部を貫く府中所沢線の整備が進められており、市内のみならず、多摩地域全体の活力の向上に寄与するものと確信をしております。
 しかし一方で、国分寺市内の都市計画道路の整備水準はいまだ低く、道半ばであるといわざるを得ない状況であり、これを打開するためには、幹線道路の整備を進めるとともに、地域の安全性の向上や、まちづくりにも寄与する道路整備を同時に進めていくことが必要です。
 こうした路線の一つに、JR中央線の南側において国分寺街道と並行する国分寺三・四・一一号線があります。
 国分寺街道はバス通りであり、沿道に商店も連なる古くからの街道筋でありますが、幅員が狭く、歩道もないため、特に雨の日に傘を差しながら駅へ向かう歩行者は、横を通過するバスにいつ接触してもおかしくないなど、極めて危険な状況となっております。
 このままでは、国分寺街道沿道の衰退も危惧されるなど、地域における喫緊の課題です。この改善に向けては、国分寺三・四・一一号線の整備を行うことにより、国分寺街道を通過する交通を新たな道路に誘導することが重要です。
 そこで、国分寺三・四・一一号線の事業化に向けた取り組みについてお伺いします。
 次に、中小河川対策について、野川の整備を取り上げさせていただき、ご質問いたします。
 野川下流の多摩川合流点から小金井市との境界である鞍尾根橋までは、護岸の緑化や川の中におりて水辺を散策できるような整備が進んでいます。
 一方、上流部である国分寺市内の区間では、河川整備が未着手のため、コンクリート製の狭隘な水路状の河川となっております。また、下水道幹線の整備により、近年、大きな水害が発生していないものの、昨今、局地的集中豪雨が増加しており、このような豪雨が一たび発生すれば、地形的に低いこの地域に雨水が集中し、浸水被害が発生することが懸念されます。
 地元国分寺市も整備を強く要望しており、私は、平成二十五年第四回定例会で、治水面だけでなく、親水性や緑化等を考慮した整備を行うべきとの観点から質問させていただきました。その際、国分寺市との間で整備に向けた検討が進められているとのご答弁でしたが、現在の取り組み状況について伺います。
 最後に、首都直下型の地震の切迫性が叫ばれる中、防災拠点の中心となる消防署の整備は急務だと考えます。多摩地域においては、本年度、八王子消防署、武蔵野消防署及び武蔵野消防署武蔵境出張所を整備されたと聞いております。
 私の地元の国分寺消防署は昭和三十七年に建設され、五十二年が経過し、現在、庁舎の建てかえに向けて、都と国分寺市で調整していることは認識しております。国分寺市の安全・安心のために、一刻も早い具体的な計画の実現について強く要望し、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 高椙健一議員の一般質問にお答えいたします。
 気候変動対策についてでございますが、気候変動は人類の生存を脅かす喫緊の課題でありまして、その解決に向け、温室効果ガスを早期に削減していかなければなりません。
 世界全体のCO2排出量の七割が都市から排出されています。北欧の一国にも相当するエネルギーを消費している大都市東京は、持続的な発展を続けながら、率先してCO2の削減を進める必要があります。
 そこで都は、長期ビジョンにおきまして、二〇三〇年までにエネルギー消費量を二〇〇〇年比で三〇%削減するという意欲的な目標を新たに設定いたしました。また、再生可能エネルギーによる電力利用割合を二〇%程度に拡大する目標も同時に設定して、世界一のスマートエネルギー都市の実現を目指すことにいたしました。
 今後も、都は、大規模事業所へのキャップ・アンド・トレード制度など先進的な施策を推し進めてまいります。さらに、LEDを初めとする省エネ機器や太陽光発電、燃料電池など、我が国が有するすぐれた環境技術の普及を促進し、エネルギーの需給両面から、気候変動対策に積極的に取り組んでまいります。
 そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、国分寺三・四・一一号線の事業化に向けた取り組みについてでございますが、この路線は、狭く歩道のない国分寺街道と並行して計画されている道路で、道路が完成すると旧道化される国分寺街道沿道の衰退を心配する声もあり、住民の関心が高い路線でございます。
 また、国分寺駅に近接した市街地でもあることから、まちづくりとあわせて道路整備を進めることが必要でございます。このため、地元市では、住民参加の懇談会で検討を重ね、昨年末にまちづくりの方向性を取りまとめました。
 こうした地元の機運の高まりを受け、都は、市との連携をさらに深めながら、高低差のある地形に合わせた道路構造など、事業化に向け、具体的な検討に取り組んでまいります。
 次に、野川上流部の整備についてでございますが、野川では、水辺環境の向上や生態系の保全に配慮しながら、水害の早期軽減を目指して整備を進めてきております。
 お話の未整備の上流区間約一・八キロメートルは、川沿いに多くの住宅がある中、約五メートルの川幅を下流部と連続する形で約二十メートルに広げる必要があり、事業化に向けては、地元国分寺市による野川の自然を生かしたまちづくりの進展や、住民との合意形成が必要でございます。
 このため、都と市で周辺地域を含めた野川の検討会を設置し、遊歩道の整備やオープンスペースの確保など、地域の防災性や住環境を向上させる方策を検討しております。
 あわせて、市が開催する地元懇談会を通じて、まちづくりと一体となった事業への意識を醸成するなど、今後とも市と連携し、野川上流部の整備に向けて取り組んでまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二〇二〇年大会に向けましたバリアフリー化の推進についてでありますが、都は昨年十一月、国、組織委員会と共催で、自治体や障害者スポーツ団体などが参画するアクセシビリティ協議会を設置いたしました。協議会では、全ての人が参加しやすい大会となるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー化の推進を目的としたガイドラインの策定に、現在取り組んでおります。
 策定に当たりましては、ご指摘のとおり、選手や障害者など当事者の視点が重要と認識しておりまして、その意見や要望を十分に伺った上で適切に反映してまいります。
 都は、こうして策定されましたガイドラインを、今後整備する競技施設や最寄り駅から会場へのアクセス経路などに適用いたしますとともに、大会時の障害者の誘導などにも幅広く活用してまいります。
 また、公共交通事業者など関係者にも広く周知し、協力を得ながら、バリアフリー化の取り組みを一層加速させてまいります。
   〔水道局長吉田永君登壇〕

○水道局長(吉田永君) 水道のよさを浸透させる取り組みについてでありますが、水道局では、現在推進中の東京タップウォータープロジェクトにおきまして、水道水の品質の高さに加え、暮らしを支える視点から、そのよさなどを伝える施策を展開しております。
 しかしながら、若い世代では、他に比べ水道水に対する満足度が低いことから、水道水の優位性などを、グローバルな視点も含め多様な角度から働きかけていくことが重要であります。
 そこで、セルフチェック方式の水質モニター、ニューヨーク、パリなど先進都市との共通の取り組みなどを通して、安全性やおいしさのみならず、環境や家計に優しいという優位性を効果的に発信し、浸透させてまいります。
 これらの取り組みにより、次世代の担い手を含め、都民の共感を得て、東京水道のプレゼンスを一層向上させ、東京オリンピック・パラリンピック大会成功の一翼を担ってまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

○環境局長(長谷川明君) キャップ・アンド・トレード制度についてでございますが、昨年度の制度対象事業所のCO2排出量は、基準年度比で約二三%の減少となり、大幅な削減が過去三年間継続されるとともに、約九割の事業所は義務率以上の削減を達成している状況にございます。
 また、今年度実施した事業者向けのアンケートでは、CO2削減に対する経営トップ層の関心が飛躍的に向上し、省エネ機器の採用に積極的になったことが明らかになるなど、事業者のご理解、ご協力が進み、制度導入の効果が大きく発揮されていることが裏づけられたところでございます。
 今後、都は、対象事業所のこれまでの省エネ対策とその効果を詳細に分析し、その結果を活用して各事業所の一層の省エネをきめ細かに支援するなど、来年度から開始される第二計画期間においても本制度の着実な運用を図ってまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 今後の多摩振興の推進についてでございますが、実効ある多摩振興の取り組みを進めるためには、地域ごとにさまざまな特性を有する多摩地域の実情を踏まえた上で、市町村や民間等と連携して取り組むことが重要でございます。
 このため、今回作成いたします新たな多摩のビジョン行動戦略年次報告書では、地域の特性を生かした市町村や民間等による取り組みを積極的に取り上げてまいります。
 具体的には、歴史的資源を生かした地域の魅力発信や大学等と連携した地域の活性化、閉校施設を活用した観光振興等の取り組みを取りまとめ、広く普及を図ってまいります。
 あわせて、今年度創設いたしました補助事業等も活用し、市町村の創意工夫ある取り組みをきめ細かく後押しいたします。
 今後とも、多摩の多様な地域特性を踏まえて、市町村や民間等と連携し、多摩振興に全力で取り組んでまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 多摩地域の文化の魅力の発信についてでありますが、多摩地域は、歴史や自然、産業など、地域ごとの特性が多様であり、独自の文化的魅力を形成していると認識をしております。
 また、博物館、美術館を初め、芸術系大学、歴史的建造物など、多岐にわたる文化資源が豊富で、郷土芸能やお祭り、伝統文化の担い手の活動も意欲的であります。
 都はこれまでも、このような地域の資源や人材を生かし、江戸東京たてもの園において、多摩の文化団体と連携して開催する東京大茶会などの事業を行ってまいりました。
 今後、多摩の多彩な魅力をより効果的に発信するため、来年度新設する、地域に根差した伝統芸能や文化に対する助成制度を生かし、資源や人材のネットワーク化を進めるなど、文化の面から多摩の振興を積極的に支援してまいります。

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