平成二十七年東京都議会会議録第四号

○副議長(藤井一君) 二十二番柴崎幹男君
   〔二十二番柴崎幹男君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二十二番(柴崎幹男君) 戦後七十年という節目の年に、都議会自民党を代表して一般質問をする機会を頂戴し、心より感謝申し上げる次第であります。
 ことしの八月に、安倍晋三首相が終戦七十年談話を出されるとのことですが、心静かに英霊を慰霊し、日本の進むべき道に思いいたすべき年だといえます。そして、先人たちのご労苦のおかげで今日の平和な経済大国日本があることを改めて認識するところであります。
 五年後に開催される東京五輪パラリンピックは一つの通過点として、東京を世界で一番の都市実現に向けた取り組みが、今まさに求められているわけであります。また、東京五輪パラリンピックを通じて、外国人が好むクールジャパンの本質である武士道の精神は、おもてなしの柱の一つとして捉え、国際的に伝えていくことが重要であります。
 しかしながら、隣人を愛し、地域に貢献し、国家を誇りに思うなど、伝統的な日本人の精神を改めて教えていく必要がある現状に対して、危惧しているところであります。こうした中、教育は国家百年の計といわれているように、人づくりはまず教育からとのことで、時間を十分かけて取り戻していかなければなりません。
 初めに、教育委員会制度改革について伺います。
 昨年六月、地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正され、本年四月一日から施行されます。
 本改正は、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保し、教育委員長と教育長を一本化して、地方教育行政における責任体制を明確にするほか、知事と教育委員会との連携の強化を図るなど、従来の教育委員会制度を抜本的に改革するものであります。
 中でも知事は、来年度以降、知事と教育委員会が教育施策について協議、調整を行う総合教育会議の開催や、教育の総合的な施策に関する目標や根本となる方針である大綱の策定が求められています。
 このような教育委員会制度の改革を受け、今後どのような姿勢で教育行政に臨まれるのか、知事の所見を伺います。
 次に、都立高等学校への道徳的な授業導入について伺います。
 小中学校においては、道徳を特別の教科に格上げする学習指導要領改訂案が公表されました。改訂案では、自分自身や友人関係だけでなく、社会とのかかわりや自然、生命の崇高性に関する徳目を例示しております。
 現在、最も深刻な課題としてある少子化問題については、本質的な解決に至っておりません。例えば、妻であり、母であることの価値をどこよりも高く認めた日本文化について、道徳の教科化により授業で触れることを大いに期待しております。
 一方、中学三年生を対象にした国の調査によれば、友達に伝えたいことをうまく伝えられる子供が二割、今住んでいる地域の行事に参加している子供が一割という状況で、人や社会とのかかわりを苦手としております。また、将来の夢や目標を持っている子供の割合は半数に満たない現状があります。
 このような現状を踏まえ、社会に出る直前時期にある高校生には、社会のさまざまな課題に対応し、これからの社会を担う人材となってもらうことが必要であります。
 都教育委員会では、こうした人材を育成するため、国に先駆け、人間としてのあり方、生き方を考えさせる新教科を開発し、都立高等学校で実施すると仄聞いたしております。
 そこで、この新教科の設置の狙いと今後の展開について、教育長の所見を伺います。
 次に、観光振興について伺います。
 東京五輪パラリンピックの開催時には、世界中の旅行者が東京を訪れます。会場周辺にとどまらず大会開催の効果を広く波及させるためには、都内全域で旅行者を迎え入れる体制づくりを進めていく必要があります。
 都内には魅力的な観光資源が数多く存在していると思いますが、練馬区には都市農業をテーマにした観光があります。九月に練馬大根の種をまいて、十二月に収穫を体験するといった農業体験であります。収穫した練馬大根をその場でおでんや豚汁として味わえれば、外国人旅行者には身近に日本の都市農業と和食を体験できるわけであります。また、日本アニメの発祥地としてアニメを活用したイベントなども積極的に行っております。
 東京を訪れた外国人旅行者がこうした東京の多様な魅力に触れ、まち歩きを楽しめるよう、多言語での案内標識をふやしたり、観光案内を充実するなど、各地でそれぞれのまちの特色に応じた取り組みを始めることが必要であります。
 都は昨年末、外国人旅行者の受入環境整備方針を公表しましたが、特に、区市町村と連携して、さまざまな準備に着実に取り組んでいく必要があります。
 五年後に向けて、区市町村が行う受け入れ環境整備の取り組みを都として積極的に後押しすることが必要と考えますが、来年度の都の支援策について伺います。
 次に、創業活性化特別支援事業について伺います。
 練馬区には、アニメの制作会社も集積しており、すぐれた作品を数多く生み出すことで、地域ブランドの価値を高めるだけでなく、地域経済の活性化にも大きな力を発揮しています。こうした地域に根差す産業を引き続き発展させていくためには、新たな担い手を数多く輩出していかなければなりません。
 都では、これまでも創業セミナーやインキュベーション施設の設置等、起業、創業へのニーズを踏まえ、多様な支援を積極的に実施してきました。今後、民間事業者や区市町村との連携を一層強化し、都内各地域における創業をさらに促進していく必要があります。
 民間事業者や区市町村が行う地域の特性に応じた創業支援施設の整備や、アニメなど新たな産業の担い手を発掘、育成する取り組みを積極的に支援すべきであります。
 地域産業の活性化につながる創業支援環境の向上に向けた今後の都の取り組みについて伺います。
 次に、東京港の整備について伺います。
 昨年末、約十年ぶりに東京港の第八次改訂港湾計画が策定されました。私は、昨年の予算特別委員会で、この計画改定に当たっては、東京港の物流機能の拡充はもとより、新たな魅力の創出等により、東京を世界で一番の都市実現に寄与させていくという視点が重要であることを指摘いたしました。
 新たな計画ではこうした内容も盛り込まれ、都市機能と港湾機能が有機的に結合した世界に誇る都市型総合港湾を目指して、東京港の港づくりを推進していくことがうたわれており、東京五輪パラリンピックに向けても万全の準備を進めることとしております。
 港湾計画は、おおむね十年後の東京港の目指すべき姿を示す基本計画であるため、東京五輪パラリンピックの開催はちょうど計画の中間地点に当たります。主要な道路の整備など、大会開催までに完成させるべき事業は多数あるわけであります。
 そこで、事業の優先順位を明確にし、東京五輪パラリンピックまでに整備すべき事業を着実に実施していくことが重要と考えますが、見解を伺います。
 とりわけ、臨港道路南北線は、東京港の物流機能強化だけでなく、オリンピック・パラリンピック競技会場へのアクセス確保としても必要であり、平成三十二年までに完成させることが不可欠であります。
 この南北線は、主要部分が海底トンネルであり、南側の接続道路は橋梁構造で臨海道路に接続するなど、複雑な構造であると仄聞しております。こうした南北線と接続道路をあと五年という限られた期間で整備するためには、効率的な事業の推進に向けて相当な努力を行っていくことも必要ではないかと考えます。
 そこで都は、臨港道路南北線と接続道路の整備にどのように取り組むのか、所見を伺います。
 次に、区部西部地域の都市計画道路の整備について伺います。
 都内では、環状第六号線や環状第八号線といった主要な幹線道路の整備が進んできており、一定程度渋滞が緩和されております。しかしながら、都市計画道路の整備に関しましては、区部においても完成率六三%という中で、練馬区においてはいまだ五〇%に届いていないのが現状であります。
 こうした整備率では日常的に渋滞が発生し、経済活動の支障となるなど、地域の活力を低下させているといえます。また、整備されずに残っている道路は、幅員の狭い道路が多いため、災害時に緊急車両の通行に支障を来す恐れがあります。
 さらに、交通事故が多く発生している箇所や、事故に至らないまでも、地域の高齢者や子供たちが危険と隣り合わせになっている箇所が数多く存在します。地域の活力を高めるとともに、都民の安全・安心を確保するためには、より一層、都市計画道路の整備を進めていく必要があります。
 そこで、都市計画道路の整備について、都の見解を伺います。
 最後に、地域スポーツの振興について伺います。
 東京五輪を五年後に控えて、大会で活躍できるような選手の育成を推進することも重要な取り組みの一つであります。しかしながら、子供たちの運動能力が低下している中、子供たちに広くスポーツに親しむ機会を設けていくことも重要だと思います。
 こうした中、都は昨年度から、子供たちを対象にした地域のスポーツ教室にさまざまなトップアスリートを指導者として派遣しております。地元練馬区で活動する地域スポーツクラブもこの事業を活用しております。クラブの関係者によると、参加した子供たちは、アスリートの高い技術や俊敏な身のこなしに、すごい、格好いいなど歓声を上げながら目を輝かせているとのことであります。
 アスリートと触れ合った体験は子供たちにとって一生の宝物となるとともに、アスリートを目指してスポーツに打ち込むことにもつながり、地域におけるスポーツの裾野の拡大に寄与するものと思います。今後も本事業の充実に向けて取り組みを進めるべきと思います。
 これまでの成果と今後の展開について、都の見解を伺いまして、私の一般質問を終了いたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 柴崎幹男議員の一般質問にお答えいたします。
 教育行政に臨む姿勢についてでございますが、世界一の都市東京を実現するには、日本人としての自覚と誇りを持ちながら、国際感覚にあふれ、自分の力で未来を切り開くことができる人材を育成していく必要がございます。
 具体的には、海外留学支援を初めとした子供たちの学習意欲に応えられる取り組みの充実のほか、聞けて話せるといった使えることに重点を置いた外国語教育や、オリンピック・パラリンピック教育の推進を通じ、グローバル人材の育成を加速化してまいります。
 また、雇用の問題にもつながる不登校や高校中退は大きな課題であります。こうした課題を解決するためには、全ての子供たちが社会的に自立できるよう、基礎学力の着実な定着を図るとともに、民間の教育団体などのさまざまな主体と連携して、子供たちを支援する取り組みを充実していく必要がございます。
 こうした取り組みを全力で進めていくため、新たに設けられます総合教育会議を活用し、課題の解決に向け、さまざまな観点から活発な意見交換を行い、教育施策の大綱を策定してまいります。
 今後とも、教育委員会制度改革の趣旨を踏まえまして、教育委員会とさらに力を合わせ、子供たちの個性と能力を伸ばし、将来の東京を担う人材を育成してまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

○教育長(比留間英人君) 人間としてのあり方、生き方を学ぶ新教科についてでありますが、都教育委員会は、現在、全ての都立高校で実施しております教科奉仕を発展させ、東京都独自の新教科、これは仮称でございますが、人間と社会を導入することとしております。
 この教科では、人としての生き方の指針となる道徳的な価値観を深める学習と、社会とのかかわりの中で自分の生き方を考え行動する力を育成するキャリア教育に関する学習とを、演習や体験活動を通して一体的に学ぶこととしております。
 今後、平成二十七年度に全ての都立高校で試行をし、その成果を踏まえ、平成二十八年度から教科人間と社会を設置し、生徒が社会に対して責任を持ち、主体的に生きていけるよう育成をしてまいります。
   〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 区部西部地域の都市計画道路の整備についてでございますが、この地域では、西武池袋線の連続立体交差事業などが進んでいるものの、災害時の緊急物資輸送路の確保や狭い道路における通過交通の抑制等の課題があることから、引き続き都市計画道路の整備を推進する必要がございます。
 このため、都は、外環道と多摩地域をつなぐ放射第七号線などの骨格幹線道路や、歩道の整備が必要な千川通りなど、地域の防災性や安全性を高める道路の整備を行っております。事業の実施に当たりましては、バリアフリーに対応した歩道や自転車走行空間を整備するとともに、都市の景観形成に資する無電柱化にも積極的に取り組んでまいります。
 今後とも、必要な財源確保に努め、地域の発展や安全に寄与し、快適な空間を創出する都市計画道路の整備を推進してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、区市町村の外国人旅行者の受け入れ環境整備への支援についてでございますが、多言語対応を初めとした受け入れ環境の整備を都内各地で進めることは、外国人旅行者が地域の特色ある観光を楽しむために不可欠でございます。
 このため、都は、区市町村による多言語の観光案内標識の新規設置に加えて、このたび改定をいたしました表示、標識等のガイドラインに基づく表記内容の更新も新たに支援対象とすることで、整備を一層促進してまいります。
 さらに、地域の特性に応じた受け入れ環境整備を支援するため、観光案内所の設置やボランティアの育成などの取り組みに対し、来年度から五年間の合計で一区市町村当たり一億円を上限とする補助制度を創設いたします。二〇二〇年に向けまして、区市町村の計画的な取り組みを支援し、旅行者が快適に滞在できる環境を実現いたします。
 次に、創業支援環境の向上に向けた取り組みについてでございます。
 東京の経済の持続的な成長を実現するためには、起業、創業を一層促進し、地域産業の新たな担い手を創出していくことが不可欠でございます。
 そこで、都は来年度から、都内各地域における起業、創業を活発化するため、民間事業者や区市町村による創業支援施設の整備を促進する取り組みを開始いたします。
 具体的には、施設の運営計画を認定し、ホームページで紹介することにより利用促進を図るとともに、施設間の交流によるノウハウの共有等を進めてまいります。また、すぐれた計画に対しましては、施設の整備、改修や運営に要する経費を助成いたします。
 さらに、民間事業者を活用し、アニメを初めとするコンテンツ分野の創業を支援するなど、地域産業の成長に向け、創業支援環境の整備を強力に推進してまいります。
   〔港湾局長多羅尾光睦君登壇〕

○港湾局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 オリンピック・パラリンピックまでに整備すべき東京港の事業についてですが、首都圏を支える東京港の物流機能をさらに強化しつつも、大会開催を見据えた施設整備を優先する必要がございます。
 大会までには、競技会場へのアクセス道路としても不可欠となる臨港道路南北線を完成させるとともに、大型クルーズ客船に対応可能な客船ふ頭を整備して、国際観光拠点としての東京港の魅力を向上させてまいります。
 さらに、臨海部の会場周辺の臨港道路の無電柱化を行っていきます。
 また、大規模地震時にも機能する耐震強化岸壁の整備や橋梁の耐震化などにより防災力を高めるとともに、中央防波堤外側コンテナふ頭等の整備を推進することにより、物流機能を強化していきます。五年後に迫る大会の成功に向け、東京港の整備に全力で取り組んでまいります。
 次に、臨港道路南北線と接続道路の整備についてですが、南北線は約一キロメートルに及ぶ海底トンネルと埋立地盤内のトンネルから成る一方、これに続く接続道路は中央防波堤内側と外側の埋立地を橋脚なしで結ぶ約二百五十メートルの橋梁とともに、東京港臨海道路とのジャンクション機能を有し、合計六橋梁で構成される大変複雑な構造の施設となっております。
 トンネル部は国の事業ですが、軟弱な埋立地盤内の工事を都が受託し、関係者調整を含め、確実に事業を進めてまいります。
 一方、接続道路では、設計と工事を一括して発注するデザインビルド方式を採用して工期の短縮を図るとともに、五年間の債務負担工事とするなど、効率的な整備に取り組んでまいります。
 今後とも、これまでの港湾工事で培った技術力を結集しつつ、他のオリンピック関連工事とも調整を図り、大会開催までに確実に完了するよう、全力で整備を進めてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) アスリートサイクル地域貢献事業についてでありますが、子供たちがトップアスリートと直接触れ合うことは、スポーツへの参加意欲を高めるとともに、次世代選手の発掘にもつながり、選手にとってもモチベーション向上などの効果が期待できます。
 昨年度創設いたしましたこの事業では、参加した児童のうち、約五割が参加前に比べスポーツをする頻度がふえ、約六割がスポーツ観戦の機会がふえるなど、着実な効果が見られました。
 今後、都は、この実績を踏まえて、区市町村との連携を深め、実態に応じたきめ細かい対応を行うことで、地域スポーツクラブを通じて、より多くの子供たちの参加を促進し、スポーツの裾野を拡大してまいります。
 あわせて、将来、本事業に参加した子供たちがトップアスリートとして活躍し、再び地域に貢献するというような人材の好循環の仕組みをつくり上げてまいります。

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