平成二十七年東京都議会会議録第四号

   午後三時十五分開議

○副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十八番今村るか君
   〔七十八番今村るか君登壇〕

○七十八番(今村るか君) 知事は、施政方針の初めに、平和で基本的人権が尊重される社会を守るとの強い決意をあらわし、世界一の福祉先進都市を目指すとしたことに、私も同じ思いを強くし、社会的養護について知事のお考えを伺います。
 世界中が注目するオリンピック・パラリンピックを開催する私たちの都市東京は、次世代を担う日本の子供のみならず、世界中の特に紛争や貧困に苦しむ地域の子供たちまで含め、夢や希望を与えることができたらと願うものです。
 さて、親の養育、保護が受けられないなど、最も支援が必要な子供たちは、社会全体で責任を持ち、健やかに育んでいく必要があり、その社会的養護の充実なくして、世界一の福祉先進都市は決して成り立ちません。
 昨年十月、東京都児童福祉審議会から二年にわたる検討の後、提言が出されました。その柱は、家庭的養護と切れ目のない支援であり、これに基づき、都の新たな社会的養護が来年度から始まることに期待をしています。
 家庭的養護と切れ目のない支援を推進する上で、重要な役割を果たすのが児童相談所の児童福祉司です。知事はご存じかもしれませんが、こうした子供と向き合う専門職の配置基準は、残念ながら我が国は低く、世界的に見ると、イギリス五千人に一人、アメリカ二千人に一人、ドイツ九百人に一人といわれ、日本の全国平均は四万五千人に一人、さらに東京都は六万五千人に一人で全国最低となっており、二万六千人に一人の高知県とは二倍以上の開きがあります。これは、児童福祉法施行令の定める四万から七万人に一人とする標準値の七万人を超えない範囲にとどめているからと思われます。
 また、東京都の児童相談所設置数は、相談所十プラスセンター一を十三カ所程度と数えても、厚労省の児童相談所運営指針二〇〇九年改正前まで数値が示されていた人口五十万人に最低一カ所程度を基準にしてみると、二十六カ所と半分程度です。
 この十年間、児童相談所に寄せられる相談件数は約三万件から二万六千件とわずかに減少しているにもかかわらず、相談区分の被虐待件数は二倍にふえていることや、厚労省児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会においても、日本の基準が低いことが議論されていることもあわせ、東京都が児童虐待ゼロ、虐待死ゼロを目標に、児童相談所設置数や児福司などの専門職数などを国に先駆け再検討されることを願ってやみません。
 そこで、既に児童相談所などを視察をされている知事に伺います。
 虐待に象徴されるような困難事例を一つ一つ解決し、社会的養護の充実、子供たちの笑顔を支えるため、今後どのように新たな社会的養護に取り組むのか、知事の思いを聞かせてください。
 子供にとって家庭は最良の環境でなければなりません。しかし、社会的養護が必要な乳幼児、子供たちには、里親、ファミリーホームなど家庭養護とグループホームなど家庭的養護を中心に、特別養子縁組里親もあわせ推進すべきです。都の所見を伺います。
 昨年、子供の所在不明や高齢者の行方不明問題が大きな社会問題となりました。乳児健診を受診しない、学校に通わせないなど、居住実態の把握できない児童を早期に把握することは、児童虐待を未然に防ぐため大変重要です。
 厚労省が行った昨年五月の全国調査で、都内に七百三十名の居住不明児が明らかになり、その後、関係者の努力により、十月には十四名まで減ったと公表されました。最後の一人まで安全の確認がされるよう求めます。
 一方、認知症高齢者が行方不明となり、長期間身元不明者として保護されていることも明らかになり、昨年六月、厚労省は全国調査を行い、ホームページに身元不明の認知症高齢者に関するサイトを開設し、都県境を越えて探すことができるよう、各都道府県で保護されている高齢者の情報がリンクされるようになりました。
 ところが、開設から半年経過した現在も東京都だけが参加していません。認知症患者の家族会からも不安の声があることから、早期の参加を求めます。
 東京都は来年度、現在十二カ所ある認知症疾患医療センターを五十三カ所にふやす取り組みを進めるなど、これまでも積極的に認知症対策を推進してきたことは評価いたします。
 そこで、認知症高齢者が長期間保護される状況を早期に解決し、さらに、未然に防止するためのさらなる対策を講じるべきと考えますが、都の取り組みを伺います。
 オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みについて伺います。
 パラリンピック開催都市として、障害者雇用促進法が目指す、障害のある人がその能力と適性に応じた雇用の場につき、地域で自立した生活を送ることができ、スポーツに親しめる社会の実現に都が努めることは論をまたないはずです。
 私は、警視庁、消防庁、教育庁が障害者雇用率未達成のため、国からの氏名公表、適正実施勧告を受けていたときから議会の発言ごとに指摘し、現在は改善されました。
 一方、三十三団体ある都監理団体の中には、必ずしも障害者雇用が進んでいない現状があると聞いています。一年後の法改正では、差別の禁止と合理的配慮義務が追加されることも視野に、二〇二〇年までには全監理団体が雇用数を達成できるように協力すべきです。
 そこで、法の適用を受ける団体の現状と、今後、監理団体への働きかけについて見解を伺います。
 世界三大スポーツ大会は、オリンピック・パラリンピックとラグビー、サッカーのワールドカップといわれ、都が立候補し、試算八百六十六億円の経済波及効果が見込まれるラグビーワールドカップ二〇一九試合開催都市の発表が三日後と迫っています。皆さんとともに、開催都市になると私も確信しています。
 日本最高峰のラグビートップリーグ十六チーム中、町田市にキヤノンイーグルス、府中市に東芝ブレイブルーパス、サントリーサンゴリアス、世田谷にリコーブラックラムズがあり、多摩地域に三チーム、残り一チームも多摩寄りに本拠地があります。
 このように東京都、殊に多摩地域は大変恵まれた環境にあり、都はこの好条件をラグビーワールドカップとオリンピック・パラリンピックの成功に活用すべきです。
 そこで、ラグビーワールドカップの意義、大会に向けた都におけるラグビー環境についての認識と決意を伺います。
 多摩地域の発展について伺います。
 水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京は、「十年後の東京」などで使われてきたキャッチフレーズで、東京のまちの魅力を端的にあらわしており、私が好きなフレーズです。
 特に多摩地域は、新たな多摩のビジョン行動戦略にうたわれているように、森林を初め、雑木林、里山など、豊かで多様な緑が存在し、これら地域ごとの個性ある緑が大きな魅力です。また、これらの緑は、雨水を貯留し、水害を防ぐ機能や、浄化して河川に供給する役割を有するなど、都市の安全性や美しさにも貢献をしています。
 そこで、多摩地域の貴重な緑の保全に関する都の認識を伺います。
 昨年、一昨年と豪雨による土砂災害で多くの人命が失われました。緑や河川は、管理と保全、育成を適切に行わなければ、災害の危険性が高まってしまうばかりか、まちの魅力も失いかねません。
 町田市に隣接する川崎市や横浜市では、学校を初め公共施設で雨水貯留施設が多く見られます。都は豪雨対策基本方針を策定し、浸水対策に取り組んでいますが、多摩地域の市街地でも、水の涵養にもつながる雨水の貯留浸透施設を生かすべきと考えます。
 そこで、雨水貯留浸透施設をふやすべきと考えますが、都はどのように流域対策に取り組んでいるのか伺います。
 流域対策とともに河川の整備は豪雨対策の根幹です。多摩地域の中でも、私の地元を流れる境川は、東京都と神奈川県の都県境を流れており、都と県が区間を分けて管理する特殊な河川です。
 中流部に位置する都区間は、護岸整備は進んでいるものの、下流県区間の整備状況の影響を受け、十分な安全性が確保されていません。境川の安全性を向上させるためには、下流県区域の整備促進に加え、都区間でも独自にできる対策を進める必要があります。
 都は、境川の目標整備水準をこれまでの時間五十ミリから時間六十五ミリにレベルアップし、これに対応する新たな調節池の検討を進めており、私の地元でもその早期整備が望まれています。
 そこで、境川における新たな調節池整備に向けた都の取り組みについて伺い、私の一般質問といたします。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 今村るか議員の一般質問にお答えいたします。
 社会的養護への取り組みについてでございますが、全ての子供は日本の未来、宝であります。その健やかな育ちを支えることは、行政はもとより社会全体の責任であります。
 東京には、さまざまな事情で親元では暮らせない子供が約四千人おります。こうした子供たちを支援するためには、社会的養護の取り組みが必要であります。
 都ではこれまで、児童福祉司や児童心理司の増員、一時保護所の定員拡充など、児童相談所の体制強化に取り組んでまいりました。来年度は、児童福祉司をさらに増員するとともに、一時保護所の増設も行います。
 また、家庭的養護を進めるため、養育家庭やファミリーホーム、グループホームの設置を進めておりまして、来年度は、グループホームの支援拠点を整備いたします。
 子供は本来、家庭的な環境のもとで愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましいわけであります。
 都は、家庭的養護を柱に据えて、全ての子供たちが生まれ育った環境によらず、健やかに育ち、自立できるよう、社会的養護施策の充実に努めてまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁をいたします。
   〔東京都技監横溝良一君登壇〕

○東京都技監(横溝良一君) 境川の新たな調節池についてでございますが、多摩地域の中小河川では、時間六十五ミリの降雨に対応するため、護岸に加えて新たに公共空間を活用した調節池を整備することとしております。
 このうち、都県境を流れる境川では、時間五十ミリの降雨に対応した護岸整備率が九割を超える一方で、下流の神奈川県内での整備が進んでいないことから、川底を掘り下げることができず、十分な流下能力を確保できておりません。
 このため、新たな調節池を設置し、治水安全度を早期に向上させるとともに、施設の完成後は、上流に向かって河床掘削も行ってまいります。
 現在、町田市金森の市所有地において地質調査や主要構造の検討を進めており、引き続き平成二十七年度から他の調節池についての検討に着手してまいります。
 今後とも、境川の整備に積極的に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、家庭的養護の推進についてでありますが、都は、家庭的養護の取り組みを進めており、養育家庭の登録数をふやすため、制度を広く都民に周知いたしますとともに、児童を養育している養育家庭に対し、児童相談所や民間団体を活用したきめ細かな支援を行っております。
 また、少人数の生活単位で養育を行うファミリーホームやグループホームの設置を促進するため、開設準備経費や家賃の助成など、都独自の支援を行っており、来年度は新たにファミリーホームの補助者の増配置などの支援も行います。
 現在策定中の社会的養護施策推進計画におきましても、家庭的養護を一層進めていくために、養育家庭やファミリーホーム、グループホーム等の推進に向けた施策の方向性について盛り込む考えでございます。
 次に、身元不明認知症高齢者等への対応についてでありますが、都はこれまで、徘回して行方不明となった高齢者を早期に発見するネットワークの構築など、認知症高齢者が長期間にわたり身元不明となることを防止するための区市町村の取り組みを包括補助事業により支援してまいりました。
 また、来年度、区市町村がみずから身元不明認知症高齢者等の情報を更新し、いつでも最新情報を閲覧できる関係機関向けの情報共有サイトを都独自に構築いたします。
 さらに、都における認知症のポータルサイト、とうきょう認知症ナビから区市町村が公開している情報を誰もが閲覧できるようにするとともに、国の身元不明高齢者等に関する特設サイトとのリンクも行います。
 今後とも、さまざまな手段を講じながら、地域において認知症高齢者を支える取り組みを支援してまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 監理団体における障害者雇用についてでございますが、監理団体における障害者の雇用確保は、都としても重要と認識しており、これまでもその促進に向け指導を行ってまいりました。
 平成二十六年六月一日現在、障害者雇用促進法に基づき、障害者の雇用状況をハローワークに提出している二十五団体のうち、法定雇用数を達成している団体は十三団体であり、前年度と比較いたしますと三団体増加している状況でございます。
 今後も、未達成の団体に対しては、職場環境の整備や障害者に適した職務内容の見直しなどを行い、ハローワークなどの関係機関とも連携を図りながら、それぞれの実情に応じた雇用の取り組みを強化するよう働きかけてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) ラグビーワールドカップについてでございますが、本大会を東京で開催することは、都民のスポーツへの関心の向上、スポーツ都市東京の世界へのアピール、オリンピック・パラリンピックに向けた運営ノウハウの蓄積のほか、大会に伴う経済波及効果など、多くの意義がございます。
 また、東京には、多摩地域を中心にラグビートップリーグのチームがあり、国立競技場や秩父宮ラグビー場では長年、大学ラグビーが開催されるなど、ラグビーが盛んな大会開催にふさわしい環境があると認識しております。
 こうした実績や大会の東京開催の意義などを、ことし一月に来日いたしました大会主催者のワールドラグビー関係者に対するプレゼンテーションにおいて、アピールをいたしました。
 三月二日に東京が開催都市として必ずや選定され、大会が成功するよう、着実に準備を進めてまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

○環境局長(長谷川明君) 多摩地域の緑の保全についてでございますが、多摩地域には、原生林が残る雲取山から丘陵地の里山や雑木林に至るまで、多様で豊かな緑が連担しております。
 こうした多摩の緑は、美しい景観を形成し、都民に身近な自然と触れ合う機会を提供するとともに、都市水害の軽減にも寄与するなど、さまざまな機能を有しており、安全で快適な都市環境を支える重要な要素と認識しております。
 都はこれまでも、丘陵地に残された貴重な里山などの保全地域への指定や、人の手が入らずに荒廃した森林の再生などを進めるとともに、開発行為に対しましては、許可制度を通じて自然環境に配慮するよう誘導するなど、多摩の緑の保全を図っております。
 今後とも、こうした取り組みの着実な推進により、水と緑に囲まれ、環境と調和した都市東京の実現を目指してまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 流域対策の取り組みについてでございますが、都は今年度、豪雨対策基本方針を改定いたしまして、町田市内を流れる境川など二流域を追加し、合わせて九つの流域で豪雨への対策を強化することといたしました。
 来年度からは、これらの流域におきまして、個人住宅の雨水浸透ます等の設置に対する補助を行うとともに、公共施設を対象とした雨水貯留浸透施設などの整備に対しまして支援を行うこととしております。
 今後とも、区市町村と構成する総合治水対策協議会の活動などを通じて普及啓発を行うなど、流域対策の強化に向けて取り組んでまいります。

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