平成二十七年東京都議会会議録第四号

○議長(高島なおき君) 五十番やながせ裕文君
   〔五十番やながせ裕文君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十番(やながせ裕文君) 東京はすばらしい都市です。他国の状況や、さまざまな自治体の現状を見るにつけて、改めてその思いを強くするものであります。この東京をつくり上げるのにご苦労されてきた先人たちに感謝をすると同時に、何とか次の世代にこの豊かな東京を引き継がなければならないと思うのです。
 しかし、それは決して容易なものではないと強い危機感を覚えます。国は借金を重ね、累計額は八百七兆円。プライマリーバランスの黒字化を見通すことはできず、国債は、いつ暴落し、クラッシュしてもおかしくない状況であります。
 都では急速に高齢化が進み、社会保障費は毎年三百億円ペースで増加、また、社会資本ストックの老朽化が進み、維持更新経費は平均一千百億円のペースで増加を続けていきます。首都直下地震対策を初め、財政需要は膨張の一途をたどっていきます。重たい負担とリスクは、次の世代に先送りされているわけであります。
 平成二十七年度の都税収入は、企業収益の回復などにより、七年ぶりに五兆円台を回復しましたが、これまでの税収動向を見れば、今回の税収の好調はあくまで一時的なものだと深く認識する必要があると考えます。
 自分は少し我慢してでも子供においしいものを食べさせてあげたい、これが親の心であります。今、享受している豊かさが将来世代の犠牲の上に成り立つということがあってはなりません。都政においても、その事業は未来への投資となっているのか、また、将来の負担をふやすものとなっていないか、この点が重要な物差しであるべきと考えます。このような思いから、何点か質問をいたします。
 まず、都の借金である都債について。
 平成二十七年度予算案においては、都税収入が増加している中、都債は昨年度より百十五億円の増加となり、四千四百九十五億円となっています。
 地方債には、道路や学校といった社会資本の整備など、それらの施設を利用する将来世代の住民との費用負担の均衡を図るという機能があります。しかしながら、将来世代の負担を考えるのであれば、社会資本の整備に係る世代間の負担の公平性だけでなく、社会保障費の負担増などトータルで見たときの将来負担も考え、都債を発行すべきであります。
 しかし、過去の発行額、またその推移を見ると、計画性を見ることはできません。財政の需給ギャップを埋めるということ以外の一貫した思想を見出すこともできません。
 そこでまず、どのような考え方に基づいて都債発行の長期的な戦略を立てているのか、見解を伺います。
 昨年九月に財務局が発表した年次財務報告書によれば、今後、毎年、新規発行債を四千五百億円とする場合には、生産年齢人口一人当たりの都債発行残高は増加をしていくのに対して、三千億円程度に抑制することができれば、今と同じ水準の負担を維持できると試算されています。
 つまり、ことしと同額程度の都債発行を続ければ、子供たちの負担は大きくなっていくけれども、三千億円まで抑えれば、負担は現状維持できるのです。本来であれば、中長期の財政計画を示し、その中で都債の発行額や基金の積立額などを計画的に決めていくことが必要であります。
 しかし、計画策定が困難であるのなら、少なくとも将来世代の負担をこれ以上ふやすことのないよう、都債の発行額を、例えば三千億円でキャップをかけるといったように、目標値を決め、財政規律を保つ制度を創設するべきと考えますけれども、見解を伺います。
 次に、定数について伺います。
 今回、オリンピック・パラリンピック開催準備や長期ビジョンの実現に向けて、職員定数が大きく純増となりました。昭和四十九年以来、実に四十一年ぶりの増員であります。これは逆にいえば、四十一年間職員を減らし続けてきたことになります。
 いつの時代でも、新しい行政ニーズは常に発生するものです。社会の変化に伴って、複雑化、多様化し、ふえ続けるニーズに対して、これまで都は、事業や執行体制の見直し、効率化といった内部努力で吸収をしてきました。この職員定数の削減は、まさに血のにじむ努力の成果であり、都庁職員の英知の結晶ともいえるでしょう。
 知事は、必要なところに人と予算をつけるといった発言をされています。もっともです。しかし同時に、知事の選挙時の公約である、事業のゼロベースでの見直し、これを徹底できているのか、これがポイントだと思います。
 長期的に固定的なコスト増をもたらす職員の定数増は、税収構造が不安定な中で、あくまで緊急避難的措置と考えるべきであり、長期的な視点に立った計画的な管理が必要だと考えますけれども、見解を伺います。
 行革について伺います。
 昨年の我が党の一般質問でも指摘したとおり、都では、平成十八年策定の行財政プログラム終了後、新たな大綱は策定されておらず、行革大綱を策定すべきとの我が党の質問に対し、知事は、私みずから実際に現場をつぶさに見て、さまざまな声に耳を傾け、都政の現状を見きわめた上で、しかるべき改革の方向を示したいと答弁しています。
 しかし、その後示された長期ビジョンでは、四百六十ページもの本編の中で行革について触れられているのはわずか一ページ弱、数多くの数値目標が示される中で、行革に関する目標の設定は見当たりません。
 二十七年度予算編成に当たって、事業評価の取り組みにより四百十億円の財源を確保したとしていますが、七兆円に迫る都財政の規模からいえば、この数字はわずか〇・六%でしかありません。これは知事のいうとおり、スクラップ・アンド・ビルドのあくまで第一歩でしかないのです。
 そもそも、都が行っている事業評価と行革は全く異なるものです。事業評価が今ある事業をいかにブラッシュアップするかに焦点を当てているのに対して、行政改革はリーダーの考える行政、政治哲学、それに基づく組織のあり方そのもののパラダイムシフトを行うことであります。
 行政に求められる役割は大きく変化をしています。民と官がどこまで、どのような役割を担うのか、都民が真に求めている行政サービスは何か、逆に、必要のない行政サービスはないのか、公営企業や監理団体のあり方、都から監理団体への一千億円を超える特命随意契約の問題、舛添知事が就任以降も、監理団体への天下りの人数はふえ続けています。まさにこういったことを、ゼロベースで根本から問い直すべきときに来ています。
 長期ビジョンによって、知事が考える東京の将来像や、それに向けた野心的な政策目標が明らかとなりました。今後、その実現に向け、オリンピック・パラリンピックを起爆剤に、財政需要はまさに爆発的に増加していくわけであります。
 このようなときだからこそ、知事はリーダーシップを発揮し、行政改革の方針を策定すべきと考えますが、知事の行政改革についての見解を伺います。
 次に、規制緩和について伺います。
 コストを削減することと同時に、大切なのは富を生み出す施策であります。規制緩和は、無から有を生み出す富の源泉であり、税金の投入を必要としない景気刺激策としてこれ以上のものはありません。ですから、都はあらゆる規制緩和の可能性を検証するべきであります。
 そこで、まちづくりの観点から、航空法による高さ制限の規制緩和を国に働きかけるべきと提案します。
 東京の空は、羽田空港に離発着する航空機の安全を確保するために、航空法によって建築物の高さが制限されています。羽田空港のある一点を中心に、半径二十四キロの円形ですり鉢状に高さ制限がかかっています。
 例えば、大田区の蒲田駅周辺では八十メートル、品川区の大崎駅周辺では約百五十メートルまでの高さの建物しか建てることができません。羽田から遠ざかっていくにつれて、だんだん制限が緩やかになっていく仕組みであります。
 首都直下型地震を見据えた、東京の課題である密集住宅地域の再構築、老朽化建物の建てかえ促進、これらを大胆に推進するために有効な方策は容積率の緩和であり、同時に、容積率緩和で利用可能になる床を実現するための高度利用の促進、これが必要であります。
 しかし、共同化や再開発を計画しても、この航空法による高さ制限があるがゆえに容積が使い切れず、開発によるインセンティブを十分に発揮できない、このような状況があります。
 国は個別審査に応じるといっており、実際、六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、虎ノ門ヒルズの三カ所については、規制を緩和した実績があります。
 しかし、これはよく考えればおかしなことでありまして、個別に緩和できるのであればエリアでの緩和ができるはずであり、その目安を明らかにするべきです。審査をやってみなければわからないということであれば、これは、インセンティブは働きません。
 昨年八月に行われた国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングでは、座長が、そもそも過剰な基準だったのではないかと疑義を呈しています。同様な課題を抱える福岡市は、国家戦略特区の枠組みの中で、天神地区というエリア全体での緩和を訴え、昨年、実現に至っています。
 都は、二〇四〇年代を見据えた都市像をグランドデザインとして取りまとめるとしています。東京の未来像を描くに当たって、高度利用の制限は、そのさまざまな可能性を減じるものであります。
 東京には土地がありません。しかし、公園や緑地、保育所や特養など必要な施設は数多くあり、これらを解決するために高度利用は不可欠であります。
 東京の未来への投資となる高さ制限のエリア緩和を求めるべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、都民の安心に向けて、性犯罪の防止について伺います。
 平成二十六年の東京都における強姦の認知件数は百九十三件であり、全国ワーストであります。また、被害者の年齢別構成を見ると、十代までの子供が二七%を占めています。
 性犯罪は被害者の心身に大きな傷を残し、その人権及び尊厳を踏みにじる決して許すことのできない犯罪です。とりわけ、子供に対する性犯罪は、その健やかな成長を阻害し、家族はもとより、地域社会にも重大な影響を及ぼします。その対策は、警察のみならず行政においても重要であり、犯罪の抑止、再犯の防止、犯罪被害者の支援などに積極的に取り組む必要があります。
 性犯罪には再犯リスクがあり、一部の性犯罪者は、繰り返し同様の犯罪をする常習者であることがわかっています。科学警察研究所の調査では、再検挙された性犯罪者は平均五・四件の性犯罪の経歴があったと報告をされています。つまり、刑務所内で治療ができないまま出所し、また被害者を生み出すということを何度も何度も繰り返している現状があるんです。
 イギリスなど欧米圏では、性犯罪の刑期満了者に対して法律で登録を義務づけ、刑期満了後も専門プログラムを受講させるなど治療教育の機会を提供する仕組みが整っており、再犯防止に効果を上げています。
 刺激の少ない刑務所内での治療プログラムでは限界があり、刑期満了後も継続して更生のために治療教育を行っていくことが解決への道である、これは周知の事実であります。
 しかし、我が国では、刑期満了者に対しては相談や治療教育の機会を提供する仕組みはありません。また、刑期満了後の治療は二重処罰に当たるのではないかなどという配慮から、出所者に対して、民間が実施する治療プログラムを紹介することもできないとしています。
 性犯罪という重大な犯罪が繰り返される危険がある、それを抑止する方法もわかっている、しかし、何ら措置がなされることはない。この不作為は、性犯罪の件数が最も多い東京都において大きな脅威であります。
 奈良で、小学校一年生の女子児童が、性犯罪を繰り返してきた犯人に殺害されるという非常に痛ましい事件から十年以上が経過しています。しかし、取り組みは一向に進んでいません。再び重大な事件が発生したときに、誰がその責めを負うべきなんでしょうか。
 都に対しては、性犯罪の再犯防止の観点から、出所者を把握し、治療に結びつける仕組みづくりを検討していただきたいと要望しますが、一足飛びにそこまでには至らないということのようであります。
 このような状況の中で、都は、まず性犯罪の被害から子供を守る取り組みを強化すべきと考えます。
 見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) やながせ裕文議員の一般質問にお答えいたします。
 行政改革についてでございますが、現実の行政は、抽象的なあるべき論や、実態を無視した机上の空論であってはならず、政策を実現するために障害となっていることを一つ一つ取り除くことで、初めて大きな仕事ができると考えております。
 私は、知事就任以来、できる限り現場を見て、広範な意見に耳を傾けながら、政策の実現に取り組んでまいっております。
 長期ビジョンにも、こうした都政のさまざまな分野の政策を盛り込む一方、政策を着実に実行していくため、個々の事務事業について、マネジメントサイクルを通じた改革、改善を繰り返し、具体的な成果を上げるなど、不断の行政改革に取り組むことを明記してございます。
 時期や形式を問わず、必要な改革は断行し、結果を出すことが政治の責任でありまして、結果を出すために必要な予算や人員を措置していくのが私の一貫した方針でございます。
 今後とも、全ての都民の皆様が夢と希望と幸せを感じられる世界一の都市東京の実現に向けまして、都政運営に全力で取り組んでまいります。
 なお、そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

○財務局長(中井敬三君) 都債に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都債発行の考え方についてでありますが、都債は、年度間の財源調整とともに、世代間の負担の均衡を図る重要な役割を果たしております。
 一方で、都債は、将来の財政負担も見据え、都税収入の動向や投資的経費の水準、基金残高等を勘案しつつ、中長期的な視点に立ち、活用を図ることが必要であります。
 このような視点から、平成二十七年度予算においては投資的経費が大幅に増加する中、都債は前年度と同水準とし、この結果、起債依存度は六・五%と前年度よりさらに低い水準となっております。
 今後とも、後年度の財政負担等、都財政の健全性に十分に配慮しつつ、適切な都債の活用に努めてまいります。
 次に、都債発行額に関する目標値の設定についてでありますが、都財政は、過去に年一兆円の税収減を経験するなど、景気変動の影響を大きく受ける構造にございます。
 こうした中にあって、税収減の厳しい状況下でも安定的に行政サービスを行うためには、都債は必要不可欠な財源であり、基金とあわせて、社会基盤整備等の財源として有効に活用する必要がございます。
 今後とも、中長期的な視点に立って、その時々の社会経済情勢や財政状況、投資的経費の水準等を総合的かつ弾力的に考慮し、適切に都債の活用を図ってまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 職員定数の管理についてでございますが、都の事業は都民の税金で賄われており、執行体制も、常に最少の経費で最大の効果を発揮しなければなりません。都では、これまでも徹底した事務事業の見直しや内部努力により、簡素で効率的な執行体制の構築に努めてまいりました。
 今後は、オリンピック・パラリンピック大会の開催準備や長期ビジョンの実現など、行政の質の高さや成果が一層求められる中、さまざまな変化や課題に即応していかなければなりません。
 そのため、職員定数については、あらかじめ期限や目標を定めて管理するよりも、毎年度、事業動向や個々の職務内容、業務量等をつぶさに精査し、めり張りをきかせた措置をしていくことが重要でございます。
 こうした考えのもと、引き続き、定数管理を適正に行ってまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 航空法による高さ制限についてでございますが、空港周辺では、航空機の安全性を確保するため、航空法による建築物等の高さ制限が設定されております。
 羽田空港は、土地の高度利用が進む都心に隣接していることから、国は高さ制限を超える建築物の計画などにつきまして、個別に安全性を確認した上で、航空法の規定に基づき特例の承認を行っており、航空機の安全性と都心部における都市開発との共存を図っております。
〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(河合潔君) 性犯罪の被害から子供を守る取り組みについてでありますが、性犯罪を初めとする犯罪被害から子供を守るための取り組みは、子供の健やかな成長を支える上でも、安全で安心して暮らせる地域社会を実現する上でも、最優先で進めるべきものと認識しております。
 このため、都は、かねてから防犯ボランティアの育成など、地域における子供の見守り活動の活性化に向けた支援や、子供自身の犯罪被害防止能力の向上に資する地域安全マップづくりの普及を進めてきたほか、今年度新たに、子供一一〇番の家への駆け込み訓練を実施するなど、犯罪から子供を守るための多彩かつ実践的な取り組みを展開しているところです。
 引き続き、これらの取り組みを着実に進め、性犯罪を初めとする子供に対する犯罪の撲滅に全力を尽くしてまいります。

○副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時五十八分休憩

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