平成二十七年東京都議会会議録第四号

○議長(高島なおき君) 六十八番神野次郎君
   〔六十八番神野次郎君登壇〕

○六十八番(神野次郎君) 初めに、官民連携福祉貢献インフラファンドについて伺います。
 都は、ファンドにより、従来の高齢者向け施設や子育て支援施設に加え、これらの施設に賃貸住宅などを集約した東京都版CCRC、これは健康なときから入所し、介護時まで移転することなく安心して暮らし続けられる施設のことですが、その建設を目指すと聞いております。
 ファンドへの出資に際し、都は、優先劣後構造を活用し、優先出資を行うことを検討しているとのことですが、都は利益の追求よりも、福祉に貢献するインフラの整備促進を重視すべきであり、また、出資金の毀損リスクはできるだけ軽減すべきであることから、出資をするのであれば、ぜひとも優先出資をしていただきたいと思います。
 官民連携ファンドのメリットの一つとして、民間の出資者や事業への融資を行う金融機関の監視機能が働くことが挙げられますが、都が優先出資を行う場合、出資者は都よりも高いリスク、債権者は都よりも低いリスクという立場からの監視を行うことになるため、その機能をより発揮しやすいという効果も期待できます。
 このように、官民連携ファンドに都が優先出資をして事業を行うということは、メリットはありますが、事業で大きな損失が発生した場合には、都の出資金が毀損する危険性もあります。
 都は、エネルギー分野の官民連携ファンドにも取り組んでいますが、当該ファンドは再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の存在などにより、資金回収の確実性が高いと考えられる一方、福祉貢献インフラファンドは、不動産市況によって将来の収入が変動しやすいなど、投資回収の難易度はより高いといえます。
 都の出資金の原資が税金である以上、都はファンドへの出資について細心の注意を払う必要がありますが、その点も踏まえて、今回、都がファンドという手法を用いて事業を推進する理由を伺います。
 また、ファンドで整備した子育て支援施設や高齢者向け施設が、ファンドの利益確保のため、短期間で別の用途に転用されるようでは、都がファンドに出資する意味もありません。
 そこで、今回、ファンドにより整備された福祉関連施設が長期にわたり安定的に運用されるよう、都はどのような取り組みを考えているのか、また、ファンドにより福祉関連施設を整備する意味について、あわせて伺います。
 次に、個人向け都債について伺います。
 都は、昨年十二月に東京グローバル都債として、発行額百五十億円、期間三年、利率〇・一二%の円建て債に加え、発行額約五十億円、期間五年、利率三・五七%の豪ドル建て債の発行をしましたが、外貨建て債の導入は、新たな投資家層を呼び込む取り組みの一つとして評価できると考えています。
 国内の発行体が外貨建て債を発行する場合、同時に通貨スワップ取引を行うことにより、経済的には円建ての借り入れとすることが一般的ですが、本件においても、都は通貨スワップ取引を利用し、為替変動リスクを負っていないものと理解しております。
 現在の市場環境において、豪ドル建て債の発行と通貨スワップを組み合わせた場合の円建ての借り入れコストは、円建て債を発行した場合よりも低廉となるため、コストという点においても、豪ドル建て債の発行は、いい選択であったと思います。
 一方で、豪ドル建て債の発行に際して、都が為替変動リスクを負っていないという点に関しては、十分に理解していないマスコミ報道も一部にあったように思います。
 都が安定的に資金調達を行っていくためには、投資家のニーズがある商品を発行し、多様な投資家層を確保しておくことは有効であり、東京グローバル都債が引き続き発行されることを期待しますが、このためにも、この商品をよりわかりやすく広報していくことが重要であると考えます。
 そこで、東京グローバル都債の発行に関して、今後どのように取り組んでいくのかを伺います。
 次に、東京都消費生活条例の改正について伺います。
 悪質な行為を繰り返す事業者による消費者被害は大変深刻であり、その手口はますます悪質、巧妙化しています。規制を逃れようとして、法が対象としないすき間を狙う悪質な手口をそのままにしておくことは決して許されるものではなく、一日も早い取り締まり強化が求められています。
 都は、昨年の本会議において、本年度中に東京都消費生活条例を改正し、こうした悪質事業者の取り締まりを強化していくと答弁してきました。
 今回、これに沿って条例改正案が提出され、原野商法の二次被害や、留学あっせんにおいて学生や若者に実態とかけ離れた契約を結ばせる取引などを、新たに禁止命令の対象に追加することとしています。
 いずれもすき間を狙った手口であり、条例改正により、取り締まりの徹底を図るとしていますが、今こうしている間にも、消費者が悪質事業者により被害をこうむっていないとも限りません。
 一日でも早くこうした被害の拡大を食いとめるためにも、都は禁止命令の対象となる悪質な取引を早急に取り締まっていくための具体的な行動を起こしていくべきと考えますが、所見を伺います。
 また、悪質事業者の巧妙な手口の一つとして、最近では劇場型勧誘と呼ばれる、複数の事業者が共謀して消費者を惑わせる詐欺まがいの手口による被害が急増していると聞きます。
 例えば、一見関係のない事業者が、販売事業者と内通して、その商品を購入すれば高値で買い取ると持ちかけ、消費者を欺く悪質な手口があります。
 こうした第三者を装う事業者が販売事業者と結託する複雑な取引では、手口の全体像を把握することが重要です。
 そこで、このような複雑巧妙な取引への対応を強化すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、精神医療について伺います。
 現在、国では、社会保障と税の一体改革のもと、さまざまな施策が展開されており、医療、介護分野においては、病気やけがの治療を病院だけで行う病院完結型から、地域の診療所や介護施設、福祉施設などが連携して、地域全体で治し支える地域完結型への転換が進められています。
 精神医療においても、平成二十五年に精神保健福祉法が改正され、入院を中心とした精神医療から地域で支える精神医療への移行が推進されています。
 しかしながら、地域で生活している精神障害者が、身体の病気やけがで医療機関を救急で受診しようとしたとき、一般救急医療機関では精神疾患をあわせ持つ患者への対応方法にふなれなため治療が困難であったり、受け入れの医療機関がなかなか決まらないといったことがあると聞いております。
 そこで、精神障害者が急なけがや病気になったときでも、できるだけ身近な地域で適切な医療が受けられる体制の整備が必要であると考えますが、所見を伺います。
 我が党が掲げる、東京を世界で一番の都市にという目標を実現する上で、環境は大変重要な要素であると思います。
 きれいな空気や水があり、花と緑に囲まれた生活環境、そして、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入が進み、水素エネルギーなどのクリーンエネルギーが普及した新しい東京を実現してもらいたいと考えます。
 これとあわせて、ぜひ進めてもらいたいのが環境面での国際協力です。
 現在、世界では、大気汚染や廃棄物処理、あるいは地球温暖化の影響など、さまざまな環境問題を抱える国や都市があり、こうした地域に協力することや、世界の諸都市との連携を進め、ともに施策を推進することも大都市東京の役割であると考えます。
 そこで、環境面における都の国際協力について、知事の基本認識を伺います。
 特にアジア地域の多くの都市では、著しい経済発展の一方で、大気汚染や廃棄物などによる環境問題が深刻化しています。
 先日、中国の大気汚染の状況が報道されましたが、昨年、PM二・五などの環境基準を達成したのは、七十四都市中八都市にとどまっており、大気汚染物質による健康被害が報告されるなど、市民生活に大きな影響を及ぼしています。
 都は、高度成長時代から、大気汚染を初め環境問題に対峙してきており、その技術や経験を伝えていくことは、急速な経済発展を遂げているアジアの諸都市にとって大きな意義があると考えます。
 そこで、これまで以上にアジア諸都市と環境面での交流、協力を推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、外国人観光客に対する宿泊施設の受け入れ環境整備について伺います。
 政府観光局の発表によりますと、昨年の訪日外国人旅行者数は千三百四十一万四千人であり、過去最高を記録したとのことです。
 今後も、日本を訪れる外国人旅行者は増加が見込まれますが、外国人にとって大きな不安の一つがコミュニケーションの問題です。
 特に、旅の拠点となるホテルや旅館において、十分な意思疎通ができないようでは安心して旅を楽しむことができません。
 私は、昨年の第一回定例会において、電話による通訳サービスを例に挙げ、宿泊施設での外国語対応をスムーズに行える環境を整えるべきという提案を行いました。都は、検討を行うとのことでしたが、宿泊施設における外国語対応をサポートするため、どのような取り組みを考えているのか、見解を伺います。
 また、宿泊施設において旅行者が快適に過ごすためには、Wi-Fi環境の整備も重要です。スマートフォンの普及により、旅行者にとって、観光情報等を入手するためのWi-Fiは欠かせないものとなりました。
 都内の宿泊施設でもかなり整備が進んでいるようですが、ロビーやレストランでは問題なくとも、客室ではつながらない、つながりにくいなど、施設によって整備状況が異なるようです。
 急増する外国人旅行者の満足度を高めるため、都内宿泊施設における無料Wi-Fiへの接続環境の向上が必要と考えますが、見解を伺い、私の質問を終えます。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 神野次郎議員の一般質問にお答えいたします。
 環境分野における国際協力についてでございますが、昨年末に発表しました都市外交基本戦略におきましては、東京の都市外交の目的として、大都市共通の課題解決を明確に位置づけてあります。
 大気汚染などの環境問題は、世界の大都市が抱える共通の課題でありまして、都市間での交流、協力を進め、経験やノウハウを学び合うことで、より効果的な課題解決につなげていくことができると考えております。
 例えば、昨年私が訪問いたしました北京市やソウル市とは、環境分野での交流、協力について合意し、それぞれの都市にとって大きな課題となっておりますPM二・五などの大気汚染分野での技術交流を進めております。
 このほかにも、気候変動対策や廃棄物処理などでさまざまな都市との交流、協力を推進しております。
 今後とも、都と世界の大都市との間で技術者などの人材交流を活発に行い、生きた情報、経験やノウハウを学び合うことで、都の政策をより高めていくことはもちろん、世界の環境問題の解決にも貢献してまいりたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔会計管理局長塚本直之君登壇〕

○会計管理局長(塚本直之君) 福祉貢献インフラファンドに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ファンドという手法を用いて事業を推進する理由についてですが、お話のとおり、ファンドを通じ、事業を行う場合、都以外の出資者や事業に融資する金融機関のチェックが入るため、都が単独で投資事業を行う場合に比べて、事業の安全性が高まるとともに、より大規模な事業展開を行うことが可能となります。
 また、単に資金を支出するのではなく、配当を受け取ることにより、福祉関連施設の整備に対し、新たな資金循環システムを構築することが可能となります。
 なお、ファンドへの出資は、経営責任を負わない有限責任の形で行うことに加え、優先劣後構造の活用により都が優先的に配当を受け取り、出資金の毀損リスクを抑える仕組みの導入も検討してまいります。
 次に、福祉関連施設が安定的に運営されるための取り組みと、ファンドにより施設を整備する意義についてでございますが、子育て支援施設や高齢者向け施設といった福祉関連施設を含む建物は、その整備が急務であるものの、商業ビルなどに比べて収益性が低く、収益モデルが確立されていないことから、建設が進んでいないのが現状でございます。
 そのため、過去のファンド創設に係るノウハウを生かし、福祉関連施設の整備促進という政策目的実現のため、収益モデルの確立に向けて、専門家の意見も踏まえながら、ファンドを創設いたします。
 また、ファンド運営事業者の公募に際しましては、施設が短期間で転用されないよう、地域のニーズも踏まえ、必要な期間、福祉関連施設が運営されるよう求めてまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

○財務局長(中井敬三君) 東京グローバル都債の今後の取り組みについてでありますが、昨年十二月に発行した東京グローバル都債は、個人向けの外貨建て債としては、国債、地方債を通じて戦後初めての取り組みでありましたが、従来の個人向け都債と比べても順調な販売でございました。
 従来の購入者層は、七十歳以上が中心でありましたが、今回の外貨建て債は、四十代、五十代の年齢層が増加し、年齢層の多様化が実現できたと同時に、購入者の約七割が、初めて都債を購入された方であったことから、購入者の裾野の拡大も図ることができたと考えております。
 今後とも、市況を踏まえながら、継続的な発行に取り組むとともに、新たな広報媒体の活用を図るなど、より積極的な周知に努めてまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 消費者行政に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、消費生活条例の改正に基づく取り締まり強化についてでありますが、近年、悪質事業者の手口は巧妙化し、法のすき間を狙った事案が急増しております。
 本来、法のすき間をついた悪質な手口につきましては、国が消費者安全法により対処すべきものでございますが、十分に機能していないという状況にございます。
 そこで都は、条例を改正し、すき間事案の取り締まりを強化してまいります。
 具体的には、原野商法等の四つの取引につきまして、新たな勧誘や契約締結を最長一年間禁ずることのできる禁止命令の対象に追加をいたします。
 さらに、迅速な対応を図るため、都内の相談情報等から、該当する悪質取引を積極的に掘り起こし、施行後、直ちに取り締まりに着手して、被害拡大の防止に取り組んでまいります。
 あわせまして、事業者団体等を通じまして、十分に改正内容の周知を図り、コンプライアンス意識の醸成も促してまいります。
 次に、複数事業者の複雑な取引への対応についてでございます。
 共謀して消費者を惑わせ契約させる悪質事業者を取り締まっていくためには、関係事業者の情報についても速やかに把握し、不適正な取引行為を解明することが極めて重要でございます。
 しかし、現行の条例では、消費者と直接契約する事業者以外には立入調査等が認められておらず、複数事業者が共謀して行う取引の実態把握は困難となっております。
 このため、密接な関係のある別の事業者に対しましても、同時に立入調査等を行えるよう、今回の条例改正で調査権限を強化いたします。
 これにより、こうした事業者からも証拠書類の収集や事情聴取等が可能となることから、手口の全体像を明らかにして、迅速かつ厳正な指導、処分を行い、被害拡大の防止につなげてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 精神障害者の救急医療体制の整備についてでありますが、精神障害者が急なけがや病気になったときに、迅速かつ適切な医療を提供するためには、身体上の治療を行う地域の一般救急医療機関と精神科医療機関相互の連携が重要でございます。
 そのため、都は、地域の拠点となる精神科医療機関に医師等を配置し、患者を受け入れた一般救急医療機関に対しまして、治療に当たっての助言や治療後の精神科医療機関への受け入れ調整を行うモデル事業を昨年度から実施しております。
 また、この事業では、精神科医療機関の受け入れ体制を拡大するため、一般救急医療機関からの受け入れルールの検討なども行っております。
 来年度は、モデル事業で得られた成果を踏まえまして、五つの二次保健医療圏において本格的に事業を実施することとしており、今後、都全域での展開を目指してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

○環境局長(長谷川明君) 環境分野でのアジア諸都市との交流についてでございますが、大気汚染や廃棄物処理などの環境問題に直面するアジアの大都市に対して、都は、同様の問題を克服してきた経験を生かして、技術協力などの交流を進めております。
 今年度は、大気汚染に関して北京市、バンコク都と、また、廃棄物処理に関してウランバートル市、ヤンゴン市、バンコク都と、それぞれ職員の相互派遣やワークショップによる交流を行っております。
 また、昨年九月には、ソウル市が主催する大気質改善国際フォーラムに参加し、都の自動車公害対策などを紹介して、参加十三都市が協力して大気汚染に取り組んでいくことを確認しております。
 今後、都の持つ技術、経験やノウハウを、相手都市の状況やニーズを踏まえて、より具体的に情報提供するなど、アジア諸都市との交流、協力を一層推進してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、宿泊施設の外国語対応についてでございますが、旅の拠点となる宿泊施設において、外国人旅行者の日常的な疑問や質問にスムーズに対応できる体制を整備することは重要でございます。
 このため、都は、他県における先行事例の調査や宿泊施設を対象とするアンケートの実施により、効果的な支援内容を検討し、昨年十一月から、フロント等で指さしで使える会話集の作成、配布等を行っております。
 さらに、来年度からは、事前に登録をした宿泊施設に対し、オペレーターが電話を通じて外国人旅行者と従業員との会話を通訳するサービスを、英、中、韓の三カ国語で二十四時間提供いたします。
 宿泊施設における円滑なコミュニケーションの確保に努めることで、旅行者の満足度向上を図ってまいります。
 次に、宿泊施設のWi-Fi環境についてでございます。
 国の調査によりますと、外国人旅行者が無料Wi-Fiを利用したい場所の上位に宿泊施設が挙げられており、利用環境の向上が求められております。
 このため、都はこれまで、ロビーやレストラン等の公共スペースに無料Wi-Fiを設置する宿泊施設に対して支援を実施してまいりました。
 来年度は、宿泊施設内ではどこでも自由に利用できるよう、客室への無料Wi-Fi設置も新たに支援対象に含めるとともに、支援規模を大幅に拡充することにより、Wi-Fi環境の整備を促進いたします。
 こうした取り組みによりまして、外国人旅行者の利便性向上に努め、旅行者が快適に滞在できる環境整備を進めてまいります。