平成二十七年東京都議会会議録第四号

○副議長(藤井一君) 二十四番舟坂ちかお君
   〔二十四番舟坂ちかお君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二十四番(舟坂ちかお君) 初めに、次世代の産業を担う技術、製品開発の支援についてお伺いいたします。
 東京は、急速な高齢化への対応や災害への備えを初めとする多くの課題に直面しております。しかし、私は、こうした東京を取り巻く厳しい環境をチャンスと捉え、新しい東京をつくる契機としていくべきだと考えます。
 東京にはすぐれた技術を持った数多くの中小企業があり、大学などの研究機関も集積しています。中小企業が英知を集め、その力を存分に発揮すれば、大都市の抱える困難な課題を克服していく大きな原動力となります。
 こうした挑戦は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催都市としての強力なメッセージにもなると思います。
 都は、二〇二〇年とその後の日本の発展を見据え、次世代の東京の産業を牽引するプロジェクトの創出を強力に支援していくべきと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、中小企業の防災対策についてお伺いします。
 昨年十二月、都は、東京の防災プランを策定し、おおむね二〇二〇年までに、地震などの災害に対し、都民、地域、企業、行政が備えるべき取り組みを明らかにしました。
 いうまでもなく、災害などの発生時に、首都東京が速やかにその経済活動を再開することは、国全体のサプライチェーンを維持することの上で極めて重要です。そのためには、東京の経済の担い手たる企業一社一社が、このことをしっかりと認識し、万全の備えを講じることが必要です。
 そうした意味で、都が防災プランにおいて、中小企業の事業継続計画、いわゆるBCPの策定支援を公助の取り組みとして位置づけたことは評価したいと思います。
 一方、中小企業と一口に申しても、業種や規模も多種多様であり、効果的な計画づくりのためには、実態を踏まえたきめ細やかなサポートが不可欠です。
 そこで都は、新年度から中小企業のBCP策定支援にどう取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 次に、特別区消防団の強化についてお伺いいたします。
 東京が世界一安全・安心な都市となるためには、首都直下地震等の大規模災害への備えを万全なものとし、被害を最小化する高度な防災都市の早期実現が重要であると考えます。
 そのためには、自助、共助、公助の役割に応じた防災行動力を備える必要があり、特に地域の防災力のかなめである消防団の活動強化が重要です。
 消防団員の方々は、郷土愛の精神のもと、生業を営みながら、日夜、献身的に消防団活動に尽力されており、その崇高な使命感と活動に対して心から敬意を表し、感謝をしたいと思います。
 我が党は、これまでの消防団員の活動のための装備資機材の充実について訴えてきました。
 そこで、特別区消防団資機材等の充実に向けた東京消防庁の取り組みについてお伺いいたします。
 東京消防庁管内の平成二十六年の救急出場件数は、五年連続で過去最高件数であった前年を超え、速報値で約七十五万七千六百件となるなど、高齢化の進展などの影響により増加傾向にあります。
 私の地元葛飾区も高齢人口が年々ふえており、緊急を要する病気やけがなど、いざというときには多くの人が救急車を必要としています。
 一方、こうした状況は、東京に限らず日本全国においても同様であることから、国は昨年十月に消防力の整備指針を改正し、救急車の整備基準を改正いたしました。
 具体的には、これまで人口十五万を超える場合は救急車五台、さらに人口十五万を超える人口について、おおむね人口六万ごとに一台を加算した台数を基準に整備することとされていましたが、改正後は、人口十万を超える場合は救急車五台、さらに人口十万を超える人口について、おおむね人口五万ごとに一台を加算した台数を基準に整備することとされ、また、昼間人口、高齢化の状況、救急車の出動状況などについても勘案することとされています。
 第四回定例会の我が党の代表質問では、増大する救急需要への対応について求めましたが、このような状況に的確に対応していくためには、救急需要に見合った救急隊数を計画的に確保していくことが必要と考えます。
 そこで、国の整備指針改正を踏まえた今後の救急隊整備の考え方について見解をお伺いいたします。
 次に、環境分野における区市町村への支援についてお伺いいたします。
 昨年十二月に都が発表した長期ビジョンでは、政策指針として、水と緑に囲まれ、環境と調和した都市の実現という目標が掲げられております。
 これは、我が党の政策提言であった、後世に誇れるクリーンで美しい東京と合致する内容で、着実に推進してもらいたいと思います。
 しかし、目標を達成するためには、都が進める環境政策のみならず、都と区市町村が連携協力して施策を展開することが必要と考えます。
 そこでまず、再生可能エネルギーの導入促進における区市町村との連携についてお伺いいたします。
 私の地元葛飾区では、昨年度から災害時に避難場所となる公共施設への再生可能エネルギーの導入を開始し、来年度、私の母校である中学にも太陽光パネルが設置される計画になっております。
 この葛飾区の事業は、防災面の強化だけではなく、都が目標とする再生可能エネルギーの導入拡大にも大きく貢献するものです。こうした事業は他の区市町村でも行われていますが、まだまだ糸口についたばかりという状況です。
 都の積極的な支援により事業を加速させ、都の目指す低炭素、快適性、防災力の三つを兼ね備えたスマートエネルギー都市の実現につなげるべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、財政支援を含めた環境行政全般への支援についてお伺いいたします。
 都は現在、区市町村への補助制度を設置し、廃棄物の適正な処理や身近な緑の保全など、さまざまなメニューで区市町村の取り組みを支援しています。
 葛飾区でも、この補助制度を活用して荒川の水辺環境の保全などに取り組み、住民の環境への意識の向上や環境保全活動への参加につなげています。
 このようなすぐれた事業が他の区市町村でも同じように活発に行われているかというと、そうでもありません。地域によっては自然環境、生活環境、住民意識が異なるほか、区市町村の財政力や保有する人材、情報にも差があります。
 こうした中で、環境都市東京の実現に向け、都はより強力に、よりきめ細やかに区市町村をサポートしていくことが必要です。
 都は、昨年の我が党の提言を受けて補助制度の再構築を行っていますが、この補助制度のさらなる有効活用を含め、区市町村の環境行政への支援を一層進めていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、マンション施策についてお伺いいたします。
 分譲マンションは、多くの区分所有者による合意形成を図りながら、計画的に維持管理や改修、建てかえなどを進めていく必要がありますが、築年数の経過とともに居住者の高齢化も進み、管理組合が十分に機能せず、円滑な合意形成が困難な事例が見受けられます。
 今後、超高齢、人口減少社会の到来等により、こうした傾向はさらに進むものと想定され、管理不全に至り、荒廃するマンションの増加も懸念されます。防災や活力向上の観点からも、必要に応じて行政が関与し、管理組合等の取り組みを支援する必要があります。
 都は、昨年七月に、住宅政策審議会に新たにマンション部会を設置し、調査審議を重ねています。今月九日の審議会では、部会から中間報告がなされ、私も委員として大変興味深く拝聴いたしました。
 ついては、この報告に対する都の所見と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、文化振興施策についてお伺いいたします。
 私の地元葛飾区には、かつしかシンフォニーヒルズという国内屈指の音響を誇るホールがあり、私もしばしば訪れてはクラシック音楽を楽しんでおりますが、いつも感服するのは、海外の有名なソリストにまさるとも劣らない日本人若手演奏家の豊かな才能です。
 国際的な音楽コンクールで上位入賞を果たす日本人の若手演奏家は枚挙にいとまがなく、彼らをもっと積極的に国内外に紹介することが必要ではないかと考えます。
 例えば、我が国を代表する公設オーケストラである東京都交響楽団は、海外、国内の公演において、こうした有望な日本の若手音楽家をソリストとして活用し、そのすばらしい才能を国内外に積極的に発信していくべきだと考えますが、所見をお伺いいたします。
 クラシック音楽の分野に限らず、東京、日本にはすぐれた才能を持つ若手芸術家が多数存在し、国内にとどまらず、海外へと武者修行に出ていく人たちも少なくありません。
 若い才能がチャンスを求めて積極的に海外へ進出することはすばらしいことですが、本来は、東京こそが国内外のアーティストが活躍の場を求めて集まってくるような都市でなければならないのではないでしょうか。
 そのためには、新進気鋭の若手芸術家が東京に集まり、存分に活躍してその才能を開花させることが重要です。
 そこで、芸術の未来を担う若者たちを積極的に支援する取り組みをさらに強化するべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 最後に、オリンピック・パラリンピック大会に向けた受け入れ環境の整備についてお伺いいたします。
 オリンピック開催都市にふさわしい、世界で一番の都市東京を実現するためには、民族、国籍、宗教、文化等のさまざまな背景や属性のある都民や来訪者など、全ての人々がお互いの違いを認め合い、幸せを追求できる都市であることが重要です。
 そのためには、人権尊重の理念が幅広く社会全体に浸透していくことが求められます。
 都は現在、人権施策推進指針の見直しに取り組んでいるとのことですが、今後の人権施策の推進について知事の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 舟坂ちかお議員のご質問にお答えいたします。
 中小企業の技術、製品開発支援についてでございますが、東京と日本の成長のためには、革新的な技術や製品の創造に挑戦する中小企業を支援し、世界をリードする産業を育成していくことが重要でございます。
 先日、介護予防の自動筋力トレーニングマシンを製造し、現在は、大学等と連携して、前立腺がんの小型診断装置の開発を行っている中小企業を訪問いたしました。
 こうしたすぐれたものづくりの技術が、東京が抱える都市の課題の解決に寄与し、都民の生活をより豊かにすると実感いたしました。
 今後、医療や福祉、環境などの分野におきまして、大学等で生まれた最新の研究シーズとすぐれた技術力を持つ中小企業とを結びつけ、次世代のイノベーションを創出する多くのプロジェクトを立ち上げます。
 これによりまして、グローバル市場で渡り合える東京発の新しい技術や製品を生み出し、二〇二〇年大会を契機に広く世界に発信するとともに、将来にわたって、東京、ひいては日本の産業の発展を支えるレガシーとしてまいりたいと思っております。
 続きまして、今後の人権施策の推進についてでありますが、東京がオリンピック・パラリンピック開催にふさわしい都市であるためには、東京で暮らし、また東京を訪れる全ての人々が、その違いを認め合い、心のバリアフリーを実現し、誰もが幸せを実感できる都市であることが必要であります。
 現在、有識者懇談会からの提言に基づきまして、平成十二年に策定して以来、十四年ぶりとなります人権施策推進指針の見直しを行っておりまして、新しい指針において、新たな基本理念や施策の方向性を示してまいります。
 今後は、この基本理念に基づきまして、企業等の民間団体や国、区市町村と連携して、総合的な人権施策を推進してまいります。
 この取り組みを通じまして、オリンピック・パラリンピック開催都市にふさわしい、人権が尊重される世界一の都市東京の実現を目指します。
 なお、そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 中小企業の防災対策への支援についてでございます。
 東京の経済活動を担う中小企業のBCP策定を促すことは、災害に強い都市づくりを進める上で有効でございます。
 このため、都は来年度から、企業のBCP策定を支援する専門家の派遣回数をふやし、効果的なBCPづくりとその運用を一層きめ細かくサポートしてまいります。
 また、協同組合等の業界団体向けのセミナーを業種別に実施するとともに、これらの団体が行うBCPの普及や策定推進の取り組みに対する経費助成の件数を拡充することにより、各業界の主体的な取り組みに対する支援を強化してまいります。
 さらに、制度融資では、新たにBCPの策定や実施に係る費用を低利で融資するとともに、商工団体等から支援を受けた場合の金利を優遇いたします。
 これらにより、中小企業の防災力の向上を図ってまいります。
   〔消防総監大江秀敏君登壇〕

○消防総監(大江秀敏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別区消防団の装備資機材の充実についてでございますが、当庁では、特別区消防団運営委員会の答申や各消防団からの要望等を踏まえ、順次整備してまいりました。
 来年度は、通信連絡体制の強化のため、消防団専用無線機の増強や可搬ポンプ積載車のアナログ式受令機をデジタル式に一括整備する予定であります。
 また、消防団活動の迅速性を高めるため、可搬ポンプ積載車の整備数をふやすとともに、消火用ホースを全て差し込み式へ更新する計画としております。
 今後とも、地域防災力のかなめとして必要不可欠な消防団が、より迅速かつ効果的に活動できるよう、各種装備資機材の充実強化に努めてまいります。
 次に、救急隊整備の考え方についてでございますけれども、今回、総務省消防庁が改正した消防力の整備指針では、救急出場件数の増加や高齢化の進展等の社会情勢を反映し、救急体制の強化を図ったものと認識しております。
 当庁では、消防力の整備指針を踏まえるとともに、救急出場件数や救急活動時間の推移等を分析して救急隊を整備しており、来年度は、直面する課題である救急隊の現場到着時間の短縮に向け、五隊の増強を計画しております。
 今後とも、救急車の適正利用広報や救急相談センター等の周知を図るとともに、救急需要に的確に対応した救急隊の整備に努めてまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

○環境局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、再生可能エネルギー等の導入に係る区市町村への支援についてでございますが、避難所となる学校などへの太陽光パネルなどの導入は、都が目指す防災力の向上と再生可能エネルギーの導入拡大の双方に効果的な取り組みと認識しております。
 このため、本定例会に提出しております平成二十六年度補正予算案には、再生可能エネルギー等導入推進基金の設置を盛り込んでおりまして、この基金を財源として、来年度から二カ年にわたり、区市町村の取り組みを支援してまいります。
 具体的には、避難所に導入する太陽光パネルや蓄電池などについて、設置費用の十分の十を補助いたします。
 今後、区市町村の円滑な取り組みに向け、きめ細かい情報提供を行うなど、この基金の積極的な活用を図ってまいります。
 次に、区市町村の環境行政への支援についてでございますが、世界一の環境都市東京を実現するためには、区市町村による地域に密着した取り組みが活発化していくことが重要でございます。
 こうした認識のもとで、都として区市町村の環境への取り組みを継続的かつ着実に支援していくため、今年度五十億円の基金を環境公社に造成しており、初年度の助成対象は、三十三団体、五十八事業となっております。
 また、技術支援として、職員向けの専門的な研修などを充実するほか、アスベスト対策では、法改正に対応して、都の専門職員の現場同行を開始しております。
 今後も、先進的事例などの情報の共有を図るほか、補助メニューや手続などの改善を進め、区市町村が積極的に環境問題に取り組めるよう強力に支援してまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 分譲マンション施策についてでございますが、都内のマンションは、都心部などを中心に昭和四十年代から大量に供給されてございまして、この中には耐震性が不足しているものも多く、今後、老朽化も急速に進んでまいります。
 これらを放置すれば、都市の安全性や生活環境に悪影響を及ぼすおそれがあるため、お話の中間報告に示されましたとおり、行政が適切に関与し、マンションの適正な管理や再生の促進を図っていく必要がございます。
 このため、都は、実態を踏まえまして、管理不全の予防、改善策や、まちづくり手法を活用した老朽マンションの再生促進策などにつきまして、具体的な検討を進めてまいります。
 本年夏には、審議会からの答申が予定されており、区市や業界団体等と連携いたしまして、実効性のある施策を構築し、安全で良質な住宅ストックの形成に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都交響楽団による有望な日本の若手音楽家の才能の育成と国内外への発信についてでございます。
 東京都交響楽団は、これまでも若手アーティストの登用、育成に努めてきております。
 毎年、フレッシュ名曲コンサートにおいて、東京音楽コンクールの上位入賞者と共演するほか、国際コンクールで史上最年少で優勝したバイオリニストを初め、新進気鋭の若手演奏家を起用してまいりました。
 来年度も、国際的なコンクールで入賞し、デビューアルバムを発表したばかりのソプラノ歌手と四月に共演する予定であり、今後、東京オリンピック・パラリンピックに向け、定期演奏会での大野和士氏を初めとする、内外の一流指揮者との共演など、若い才能を国内外に紹介する機会を積極的に生み出してまいります。
 次に、芸術の未来を担う若者への支援についてでありますが、新進若手芸術家を中心に、多様な人材を国内外から発掘し育成することは、現在策定を進めている東京文化ビジョンでも主要な文化戦略と位置づけております。
 今後は、現代美術、音楽、演劇、映像などの分野で高い可能性を秘めた若手芸術家の海外進出を支援するとともに、海外からの人材も積極的に受け入れるなど、お話のように、東京を舞台とする交流の促進が極めて重要であると考えております。
 東京が若手芸術家の才能の発掘や育成の面で世界をリードしていくため、東京都現代美術館など都立の文化施設を活用し、創造、発表の場を提供するほか、世界で活躍が期待できる新進芸術家に対し、将来の活躍を支援するための表彰制度を新たに設けるなど、施策の拡充を積極的に進めてまいります。

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