平成二十七年東京都議会会議録第四号

○議長(高島なおき君) 一番小林健二君
   〔一番小林健二君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○一番(小林健二君) 初めに、東京文化ビジョンについてお伺いいたします。
 事業に失敗して自殺を思い詰めた友人が、ベートーベンを聞いて、もう一踏ん張りやってみようかと思いとどまった、これこそ本物の芸術の力ではないか。
 これは、フランス文学者であった辻昶氏が語ったエピソードであります。文化芸術は、一人の命をも救う偉大な力を秘めており、文化芸術を愛し、大切にすることは、人間の尊厳を守ることに通ずるといえます。
 都は、今後の文化芸術振興の指針となる東京文化ビジョンの素案をさきに取りまとめ、年度内に策定する予定でありますが、二〇二〇年に向け、世界一の都市東京を目指すにおいては、文化芸術を根本としてよって立つ文化芸術立都を目指していくべきであり、文化芸術の力を東京の活性化に結びつけていくことが重要であります。
 その意味で、東京文化ビジョンに盛り込まれた戦略の一つとして、教育、福祉、地域振興など、社会や都市の課題に芸術文化をソリューションとして活用していくとの視点をいかに具現化していくかが問われると考えます。
 社会が抱えるさまざまな課題の解決に向けた文化芸術の役割について、知事の所見を伺います。
 芸術はあらゆる人々を結合させますとは、ベートーベンが残した言葉であります。文化芸術は一握りの人のためのものではありません。あらゆる人々のためのものであります。行政は、人々の日々の生活、それぞれの地域に根差した文化を大切にし、全ての人が文化芸術に親しむ機会を創出していかねばなりません。この視点に立って、二点お伺いいたします。
 まずは、地域における文化振興です。
 文化ビジョンにおける施策の方向性として、まちづくりなどにおける課題の解決を推進すると盛り込まれておりますが、地域のコミュニティづくりにおいて、日本の伝統文化である盆踊りを活性化してはどうかと考えます。
 盆踊りは、地域の町会や商店会の皆様がご苦労を重ね、工夫を凝らして地域コミュニティの活性化に寄与するものとなっています。折しもオリンピック・パラリンピックの開催は、盆踊り真っ盛りのシーズンであります。
 私も地域の盆踊りにお伺いしますが、浴衣を着たご年配の方を中心とした優雅な踊りが夏の夜を彩っております。例えば、ご年配の方が若者に踊り方を教え、さらには、外国人観光客を招いて、世代を超え、国境を越えて、ともに踊りを楽しむ一大イベントを開催するなど、地域の皆さんになじみの深い文化を活用した地域活性化を進めていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、障害がある方が文化芸術を鑑賞し、その魅力を存分に享受できる取り組みが必要であります。
 私が長年、文化振興についてご指導いただいている歌舞伎役者の方より、今回の東京文化ビジョンの策定に当たって、健康な方も障害がある方も、同じように文化芸術を楽しんでいただくために、最先端技術を活用した字幕、翻訳、音声ガイドなどを取り入れた取り組みを、ぜひ推進してもらいたいとのご意見をいただきました。
 文化ビジョンの戦略の一つでもある、あらゆる人が芸術文化を享受できる社会基盤を構築という視点を実現するためにも、障害者の方々に文化芸術を楽しんでいただける環境を整えていく取り組みが不可欠であります。見解を求めます。
 さらに、多くの外国人観光客に東京の魅力を伝え、文化の発信を行っていく上で欠かせない資源として文化財や歴史的建造物があり、それらを生かしたまちづくりが大切であります。
 私は、平成二十二年第一回定例会の一般質問で、文化財保護とまちづくりという視点から、都が策定している歴史的景観保全の指針に文化財としての建造物を含め、広く歴史的な景観形成に努めていくべきと質問いたしました。
 二〇二〇年に向け、新たな東京のまちづくりを進めていくことになりますが、歴史と文化が薫り、伝統と現代が共存する都市を構築するためにも、文化財や歴史的建造物を中心とした歴史的景観を生かした都市づくりを一層促進していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、アニメ振興についてお伺いします。
 日本が世界に誇るべきポップカルチャーの一つとして、漫画、アニメがあります。
 私の地元練馬区には、昭和三十三年に日本で最初につくられた劇場用長編アニメ「白蛇伝」を作成した当時の東映動画株式会社、現在の東映アニメーション株式会社があり、日本のアニメ制作が本格的に始まったジャパン・アニメーション発祥の地であります。
 毎年、練馬アニメカーニバルを開催し、産業と文化の両面から盛り上げていこうと取り組んでおります。西武池袋線大泉学園駅周辺をアニメのまちの玄関口として整備する事業も進めており、来月には駅北口に、区ゆかりのキャラクターとして、鉄腕アトム、「銀河鉄道999」のメーテル、「あしたのジョー」の矢吹丈など五体のモニュメントが設置される予定です。
 都内には、練馬区に限らず、漫画、アニメに由来した聖地と呼ばれる地域も多数存在し、聖地巡礼として多くのファンに楽しみを与えてくれていますが、これら都内に点在しているアニメ資源を面として捉え、総合的に生かしていくことが重要であります。
 東京の観光公式サイトには、トーキョー・アニメ&マンガマップがありますが、区市町村や民間事業者とも連携をとり、一層内容を充実させ、タブレットやスマートフォン向けのアプリを作成するなど、国内のみならず、海外に向けてジャパン・ポップカルチャーの情報発信、さらには重要な観光資源として活用していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、若年性認知症施策についてお伺いします。
 厚生労働省は、認知症施策を加速化するため、認知症施策推進総合戦略、いわゆる新オレンジプランを策定し、先月公表いたしました。
 この新オレンジプランでは、七つの柱があり、その一つに若年性認知症施策の強化が盛り込まれております。
 都では、国に先駆けてこの問題に対応すべく、全国で初となるワンストップ相談窓口として若年性認知症総合支援センターの設置や、普及啓発のためのハンドブックを作成するなどの取り組みをしており、高く評価いたします。
 私のご近所で親しくしていただいているご夫婦のご主人が若年性認知症を発症され、奥様から日々のさまざまなご苦労をつぶさにお聞きしております。
 六十五歳未満で発症する若年性認知症は、高齢者の認知症と違い、現役世代での発症であり、就労、居場所づくり、社会参加支援など多岐にわたる支援策を講じていく必要があります。
 その一つとして、早期診断、早期対応への取り組みが大切であります。
 都では現在、十二の二次保健医療圏ごとに認知症疾患医療センターを設置し、医療体制を整備しておりますが、都議会公明党は昨年の第四回定例会において、区市町村ごとに認知症疾患医療センターを整備し、既存のセンターを基幹としたネットワークを構築すべきと提案いたしました。
 都では、この提案を受け、新たに区市町村にも設置する予定ですが、既存の認知症疾患医療センターはもとより、今後、区市町村に設置されるセンターの運営に当たっても、認知症高齢者だけではなく、若年性認知症も含めた視点がぜひとも必要であります。見解を求めます。
 次に、都営住宅における障害者支援についてお伺いいたします。
 住宅セーフティーネットの中心的役割を果たしている都営住宅には、障害者の方も多くお住まいです。
 昨年、地元練馬区の聴覚障害者の団体より、都営住宅にお住まいの聴覚障害者の方のご苦労をお聞きしました。
 お一人でお住まいの聴覚障害の方は、居住している部屋で、水漏れなど緊急に対応をお願いしたい際に、住宅供給公社に連絡をしたくても、耳の不自由な方にとっては、電話ですぐに伝えることは困難であるとのことでありました。
 公社では、申し出があれば、聴覚障害の方に個別にファクシミリでの連絡対応も行っているとのことですが、私がご要望をいただいた方のように、ファクシミリ対応があることも知らない方もいらっしゃいます。
 このような障害に応じた個別のサービスは、申し出た方だけに対応するのではなく、居住者の方々へ広く周知を図るべきであり、さらに今後、きめ細かく対応していくためにも、メールなどの媒体を活用したサービスの提供も検討すべきと考えます。見解を求めます。
 最後に、下水道事業について、二点お伺いします。
 一点目は、下水道における再生可能エネルギー、省エネルギー化であります。
 百八カ所の水再生センターやポンプ所など、下水道施設に係る電力量は、都内における年間電気使用量の一%強を占めており、その効率化が重要な課題であります。
 エネルギー資源が乏しい我が国において、電力効率化への取り組みは経済成長の柱として重要であり、下水道事業に係る電力への再生可能エネルギーや省エネルギー対策は、スピード感を持って計画的に推進していくべきであります。
 二点目は、非常時の電力確保であります。
 下水道は、二十四時間三百六十五日、都民生活を支える重要なインフラであり、非常時においても下水道の機能を維持するための取り組みが求められます。
 存在するのが当たり前になっている下水道ですが、その存在なくして都民生活は成り立ちません。予想される首都直下型地震などの非常時においても、非常用発電機の設置を万全とするなど下水道機能を維持できる電力の確保に総力を挙げるべきであります。
 あわせて見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 小林健二議員の一般質問にお答えいたします。
 社会が抱えるさまざまな課題の解決に向けた芸術文化の役割についてでありますが、芸術や文化には、人間の心を豊かにし、言葉を超えて人々の理解や共感を育む力がございます。
 この力は、被災者の心のケアを初め、高齢者の生きがいづくりや子供の創造力を引き出すとともに、障害者の豊かな感性を芸術として開花させるなど大きな可能性を持っておりまして、アーティストの中でも、こうした認識のもとで社会問題の解決と向き合った活動がふえつつあります。
 都はこれまで、東日本大震災の被災地において、住民が気軽に鑑賞、体験できるプログラムや、美術、音楽、演劇などの分野の一流の芸術家による子供たちとの共同創作など、さまざまな芸術文化活動に支援を行ってまいりました。
 少子高齢化などの課題に直面する東京では、学校や障害者福祉施設などの現場との連携をさらに深め、芸術文化の力を活用した取り組みを加速させていくことが極めて重要であります。
 今後、都は、アーツカウンシル東京を活用して、民間の先駆的、実験的な芸術文化活動を積極的に支援するなど、社会課題の解決に向けて、芸術文化の可能性を最大限に引き出してまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 文化振興に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、芸術文化を活用した地域振興についてでありますが、二〇二〇年大会に向けては、大規模な文化事業の展開とともに、地域の関係団体と連携して、地域に身近な伝統行事や地域特性を生かした文化事業を数多く展開し、地域の活性化を進めていくことが重要であると考えております。
 これまでも都は、アーツカウンシル東京を活用し、地元のまちづくり協議会やNPOとともに、江戸情緒あふれるまち並みといった文化資源を、神社や道路などまち全体を使って紹介し、地域振興に寄与する先進的なイベントを実施してまいりました。
 今後は、こうした事業を引き続き展開するとともに、新たに創設する地域に根差した芸術文化活動に対する助成制度も活用しながら、地域振興等につながる取り組みを広げてまいります。
 次に、障害者が芸術文化を享受する取り組みについてでございます。
 障害者が芸術文化を享受するには、鑑賞と創造の両面で、芸術文化に何ら支障なく触れられる環境を整えることが重要でございます。
 これまで都は、文化施設のバリアフリー化を着実に進めるとともに、特別支援学級に芸術家を派遣しワークショップを行うなど、障害者が芸術文化を身近なものとする取り組みを展開してまいりました。
 来年度からは、デジタル技術を活用した観劇のサポートなども含め、障害者の芸術文化鑑賞のための環境づくりを促進する芸術文化団体やNPO等のすぐれた取り組みを、新たな助成制度によって支援をしてまいります。
 今後は、これらの施策を進め、障害者と芸術文化を結ぶ活動を推進してまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、歴史的景観を生かした都市づくりについてでございますが、東京の魅力を高めていくためには、皇居の堀や緑、近代的な建造物など、都市の記憶の継承にも配慮して都市づくりを進めていくことが重要でございます。
 都はこれまでも、都市計画制度を活用し、東京駅丸の内駅舎や三菱一号館の復元、重要文化財である三井本館の保存と美術館への転用、日本橋の福徳神社の再建など、歴史的景観を生かした民間開発を誘導してまいりました。
 また、皇居の周辺を対象といたしまして、開発事業者と景観等の専門家との協議を通じた景観誘導を進めております。来年度から、この取り組みを、都市再生特別地区を活用する全ての開発も対象といたしまして、風格のあるまち並みの形成を一層進めてまいります。
 今後とも、歴史や文化を感じられる成熟都市東京の実現に向けた都市づくりを促進してまいります。
 次に、都営住宅における障害者支援についてでございますが、住宅セーフティーネットの中核である都営住宅におきまして、障害者の居住の安定を図ることが重要でございます。
 公募の際には、若年単身者も対象とする資格要件の緩和や、当せん率を優遇する措置などを実施してございます。入居後は、巡回管理人の定期訪問や障害の状況に応じた住宅設備の改善など、きめ細かな支援を行っております。
 お話の現在実施している聴覚障害者とのファクシミリによる連絡対応につきましては、居住者向け広報誌で周知を図るなど、一層の普及に努めてまいります。
 なお、メール等による連絡につきましては、誤った送信による個人情報の拡散や成り済ましの危険性などのリスクへの対応が必要なことから、慎重に検討してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) アニメの観光資源としての活用についてでございますが、アニメは世界に誇る日本の文化であり、海外でも人気の高い重要な観光資源でございます。
 このため、都は、東京の観光公式サイトにおいて、アニメや漫画の文化が集積するまちや作品の舞台となった場所を紹介するなど、アニメファンを引きつける情報を国内外に発信しております。
 また、アニメキャラクターの銅像や案内板の設置など、アニメを観光資源として活用する地域の取り組みを支援しております。
 今後も、こうした取り組みを後押しするとともに、区市町村や民間事業者とも連携して、アニメに関する情報をより幅広く収集し、内容を充実させてまいります。
 また、ウエブサイト上で情報を容易に入手できるよう工夫するなど、アニメを活用した地域への旅行者の誘致に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 若年性認知症への対応についてでありますが、若年性認知症特有の課題に対応するため、都は、若年性認知症総合支援センターを設置し、本人や家族からの多岐にわたる相談をワンストップで受け付けるとともに、都内十二カ所の認知症疾患医療センターや地域の医療機関は連携しながら医療的支援を提供しております。
 都は来年度、この認知症疾患医療センターを区市町村ごとに地域連携型として設置していく予定でございまして、若年性認知症の方にとっても、より身近な地域で専門的な医療的支援が受けられる体制となります。
 今後、こうした取り組みを地域の医療機関や都民に広く周知いたしますとともに、若年性認知症総合支援センターを中心に関係機関の連携を一層強化し、若年性認知症対策を推進してまいります。
   〔下水道局長松田芳和君登壇〕

○下水道局長(松田芳和君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道事業におけるエネルギー対策についてでございますが、下水道局では、スマートプラン二〇一四において、総エネルギー使用量に対する再生可能エネルギーと省エネルギーの合計の割合を平成三十六年度までに二〇%以上とすることを目標としております。
 平成二十七年度は、太陽光発電について、森ヶ崎など二センターにメガワット級の設備を整備するほか、八王子など二センターで計画を前倒しして進捗を図るなど、累計四千八百キロワット以上といたします。
 あわせて、従来の高度処理と比べ二割以上の電力削減が可能な新たな高度処理を、葛西及び浅川の各センターに導入するなどの取り組みを進め、再生可能エネルギー等の割合を九%まで引き上げてまいります。
 さらに、目標達成に向け、民間企業とも連携を深め、新たな技術開発を強力に推し進めてまいります。
 次に、下水道事業における非常時の電力確保についてでございますが、災害時にも下水道機能を維持するためには、非常用電源の確保が不可欠でございます。
 そのため、平成三十一年度までに全ての水再生センター、ポンプ所、計百八施設で、非常時の電力設備の未整備施設を解消する取り組みを進めております。
 平成二十六年度までに百一の施設に非常用発電機を導入しており、二十七年度は新たに三施設で整備を進め、このうち用地確保が困難な湯島ポンプ所では、新たに移動電源車を導入いたします。
 また、必要な発電容量につきましても、平成三十一年度までに九割の施設で確保する取り組みを進めております。現在、七割の施設で確保しておりまして、平成二十七年度は十カ所で工事を進めてまいります。
 今後とも、下水道事業の危機管理対応の強化を図り、下水道機能を維持できる電力の確保に総力を挙げてまいります。

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