平成二十七年東京都議会会議録第三号

○議長(高島なおき君) 六十六番松田やすまさ君
   〔六十六番松田やすまさ君登壇〕

○六十六番(松田やすまさ君) 初めに、日本遺産についてお伺いをいたします。
 文部科学省は、昨年、文化財を活用した地方創生、文化財版クールジャパンとして、さまざまな文化財をもとにした地域のストーリーを日本遺産に認定をして、戦略的に発信し、海外からの観光客の誘致や地域の活性化につなげる仕組みを創設することを発表し、平成二十七年度より認定を開始することになりました。初年度である平成二十七年度は十五件程度、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックまでに約百件程度を認定する予定であると聞いております。
 都内には、歴史的価値があり、貴重な文化財が多数存在しており、オリンピック・パラリンピックに向けて増加が見込まれる、東京に来られる外国の方が、センター・コア・エリアだけでなく、日本遺産があるのであれば少し足を伸ばしてみようとお考えになることも想定をされます。
 例えば、多摩地区には、武蔵国分寺跡や古代の役所であった武蔵国府跡など、著名な国指定史跡などがあります。この機会に、都内の区市町村は、日本遺産の認定申請に積極的に取り組んで、地域振興につなげていただきたいと考えます。
 所管の下村大臣も、ぜひ東京都も積極的に取り組んでもらいたいとのことでございました。
 そこで東京都は、世界の多くの人々を都内各地に呼び込むため、日本遺産の認定に向けた区市町村の取り組みを支援するなど、東京都の魅力発信を充実させていく必要がありますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、放課後子供教室についてお伺いいたします。
 現在、実施をされている放課後子供教室は、国の放課後子どもプランに基づき、全ての児童を対象として、放課後や週末などに小学校などを活用して、安全・安心な子供の活動拠点である居場所を設け、学習、スポーツ、文化活動を地域住民との交流の機会を提供しながら行うことにより、失われつつある地域のきずなを強める役割も果たしております。
 渋谷区では、平成二十年度より、学童クラブを廃止して、保護者の就労にかかわらず全ての子供たちを対象とした放課後子供教室一本で行われており、私の地元板橋区でも、この四月から、放課後子供教室と学童クラブを一体的に運用する、あいキッズが全面的に実施となります。こうした放課後子供教室を積極的に進める自治体に対して、今まで学童を利用していた保護者にも不安を与えることのないよう、都のさらなる支援が期待をされます。
 国においても、各教室において、多様な学習や活動プログラムなどの展開を積極的に取り組んでいく方針を示したところであります。
 そこで、都教育委員会では、区市町村における放課後子供教室の充実に向けてどのような支援をしていくのか、所見をお伺いいたします。
 次に、東京オリンピックに向けたジュニア選手の育成強化について伺います。
 私の地元板橋区では、民間の有志を会員とする板橋区オリンピック候補者育成支援協会が昨年発足をいたしました。この会は、区内在住もしくは在学中の小中高生を対象として、二〇二〇年東京オリンピック候補者の育成を目指し、支援金支給や指導者派遣などの支援を実施するものであります。地域住民が、オリンピックを目指す地元の選手候補を支援、育成することは、地域からオリンピックの機運が高まることにもつながり、二〇二〇年大会の成功のために、大変意義のある取り組みであると考えます。
 そこで、二〇二〇年大会の開催都市である都においても、競技団体など、関係団体と連携をして、さらなる競技力向上に取り組んでいかなければなりません。
 二〇二〇年に向けて、ジュニア選手の発掘、育成、強化にどのように取り組んでいくのか所見を伺います。
 次に、東京医師アカデミーについてお伺いをします。
 超高齢社会の到来が迫る中、男性で約九年、女性では約十三年、健康寿命と平均寿命の差があります。健康長寿社会の構築を目指していかなければなりません。
 一方で、病気にかかった場合でも、速やかで適切な治療を受けられる体制づくりが必要であります。高齢化社会に伴い、合併症が増加することが見込まれる中、幅広い視野で適切な対応をすることのできる総合的な診療ができる医師の育成の必要性について、先日の厚生委員会で質問をさせていただきましたが、同時に、医療資源が少ない地域への支援も重要であり、特に、多摩地域などでは、依然として医師確保が厳しい状況にあると聞いております。
 そこで、東京医師アカデミーでは、これまで都立病院や公社病院における医師の育成、確保を行ってまいりましたが、こうした医療関係の変化を踏まえ、今後どのような取り組みを行うのかをお伺いいたします。
 次に、都営地下鉄高架部周辺のまちづくりについてお伺いをいたします。
 都営地下鉄の駅は全百六駅ございますが、そのうち高架部となっているのは、新宿線で二駅、三田線で六駅あり、高架下には店舗や事業所などが集積をしており、地域の活性化へ貢献をしてまいりました。
 三田線では、志村坂上駅を出て西高島平駅までの約五キロメートルが高架部でありますが、橋脚をより安全で強固なものにするため、現在、耐震補強工事が行われております。工事の施工に当たっては、現在店舗に入居されている方に配慮をしながら、リニューアルをしていただき、より一層の活性化を図っていただきたいと思います。
 一方、板橋区では、高島平地域の再活性化を目指し、高島平地域全体のグランドデザインの策定を進めており、昨日、素案が示されたところであります。これを受けて、今後、具体的な取り組みについて、地域の方々や、高島平団地を所管するUR都市機構等と議論していくこととなりますが、素案では、三田線の高島平駅周辺を交流核、西高島平駅、新高島平駅や西台駅周辺を都市生活核と位置づけて拠点整備を行っているとされておりまして、都営交通とのつながりが欠かせません。
 そこで、三田線の高架下用地の利用に当たっては、板橋区の高島平グランドデザイン及び地元区の要望を考慮して進めていただきたいと思いますが、見解をお伺いいたします。
 次に、保育園、幼稚園に対する支援について伺います。
 まず、保育士のキャリアアップに向けた支援について伺います。
 都は、二〇一七年度までに、保育利用児童数を四万人分ふやす目標を掲げ、保育所等をかつてないペースでふやしており、保育を支える保育士の確保、定着は喫緊の課題となっております。
 待機児童対策を進めれば進めるほど、本来、親と一緒にいられるはずの子供たちを親から離していってしまうという逆説的な側面があるということは大変悲しいことではありますが、それをしっかりと認識をして、東京都は、親とともに子育て施策を前に進めていかなければなりません。
 保育士の確保、定着を図るためには、保育を支えている現場の保育士の処遇を改善するとともに、保育士が働き続けることができる環境をつくることが大切であります。
 都は、長期ビジョンにおいて、保育士などの職責に応じた処遇を実現するキャリアパス導入に取り組む事業者を支援するとしておりますが、今後の具体的な取り組みをお伺いいたします。
 続けて、独自の建学の精神に基づき幼児教育を行っていただいている私立幼稚園の運営に対する支援についてお伺いをいたします。
 本年四月、子ども・子育て支援新制度がいよいよ施行となりますが、初年度である二十七年度から新制度に移行する幼稚園は一割程度に過ぎず、九割の幼稚園は現行の私学助成にとどまる見込みであります。
 昨日の本会議終了後、板橋区私立幼稚園協会並びにPTA連合会の新年会に参加した際、園長先生方に伺ったのですが、新制度が、施設型給付の創設や保育料の上限設定、入園にかかわる応諾義務など、幼稚園にとって大変大きな制度変更であることに対する不安とともに、これまで都が充実をした私学振興施策を行っていただいたことが非常に大きいとおっしゃっておりました。
 私立幼稚園が、今後とも、質の高い幼児教育を行うためには、優秀な教員がキャリアを積んで働き続けられるような環境が大切であります。
 これまで我が党は、教職員人件費を中心とする運営費を支える経常費補助の改善等を要望し、実現をしてまいりましたが、新制度施行後も基幹的補助である経常費補助を初め、私学助成の充実に取り組んでいくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、東京の子育て環境についてお伺いをいたします。
 本年一月二十三日に開催をされた国の会議において、出生率が低い東京都を名指しして、子供を産む環境ではない、育てる環境でもないとの発言があったと聞いております。これはとんでもない発言であります。知事は、反論すべきであります。
 都内の就学前児童は、毎年五千人前後ふえており、これは、他県からの子育て世代の流入も一因と伺っております。子供を産む環境でも育てる環境でもないのであれば、どうしてこれほど多くの子供を持つ親、また、これから産みたいと願う人たちが集まってくるのでしょうか。
 都はこれまで、全国に先駆け、子育てに関連するさまざまな取り組みを行ってまいりましたが、こうした発言を受け、改めて子供を産み育てられる環境の整備について、舛添知事の所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 松田やすまさ議員の一般質問にお答えいたします。
 東京における子育て環境の整備についてでございますが、都はこれまで、全ての人が安心して子供を産み育てられるよう、保育サービスの拡充、小児医療や周産期医療体制の整備、子供の医療費への助成、地域における相談体制の充実など、都独自にさまざまな施策を講じてまいりました。
 昨年十二月に策定いたしました東京都長期ビジョンにおきましても、安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長できるまちの実現を政策指針に位置づけまして、妊娠期から子育て期に至る切れ目のない支援ができるよう、ハード、ソフト両面からの子育て環境の整備を進めることとしております。
 東京に生まれて本当によかった、東京で生活し、子供を育て、仕事を続けられて本当によかったと、誰もがこう実感できる都市にしていくことが私の最終目標でございます。
 そのために、今後とも、福祉、保健、医療はもとより、雇用や住宅、教育などあらゆる分野の施策を総動員して子育て環境の整備に全力で取り組んでまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

○教育長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、日本遺産についてであります。
 国は、平成二十七年度から、史跡や建造物、伝統芸能などさまざまな文化財を活用し、地域の歴史的な特色や魅力を国内外に発信することなどを目的とした日本遺産の認定事業を開始いたします。
 日本遺産に認定をされますと、区市町村等が行う情報発信や人材育成、公開及び活用のための整備事業などに対して、国から財政的な支援を受けられるとともに、これらの文化財群の知名度が向上するため、地域の活性化を図ることが期待をされます。
 都教育委員会は、日本遺産の認定を目指す区市町村に対する専門的、技術的な指導助言や、広報活動等への支援を通じて、文化財を活用した東京の魅力発信に努めてまいります。
 次に、放課後子供教室の充実についてでありますが、放課後子供教室は、安全・安心な子供の居場所づくりを主な目的とした事業であり、現在では、都内の八割を超える小学校区で実施をされております。地域の身近な人材の協力に加え、企業、NPO等の協力も得て、学習支援やスポーツ活動への指導が行われており、居場所づくりにとどまらず、子供たちの学力や体力向上を図る取り組みにも広がっております。
 都教育委員会は、子供たちの放課後の活動を一層豊かにするため、区市町村への補助以外にも、企業等が実施する活動プログラムの紹介や教室運営スタッフに対する研修の実施等を通じて学習支援等の質の向上や拡充を図るとともに、平成三十一年度末までに全ての小学校区への設置を目指して、区市町村を支援してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) ジュニア選手の競技力向上施策についてでございますが、二〇二〇年大会を盛り上げるためには、多くの地元東京育ちのアスリートが活躍できるよう、ジュニア選手を計画的に発掘、育成し、強化することが重要でございます。
 都では、オリンピックなどで活躍できる選手の輩出を目的として、才能ある中学生を発掘し、ボートや自転車など七つの競技から選択させ、育成を図るトップアスリート発掘・育成事業を引き続き推進してまいります。
 さらに、現在実施しております有望なジュニア選手に対する強化等の経費を支援するジュニア特別強化事業につきまして、来年度は、特にオリンピック競技を対象に支援を拡充してまいります。
 こうした取り組みにより、各競技団体と連携を図りながら、二〇二〇年大会に向けたジュニア選手の育成強化を一層推進してまいります。
   〔病院経営本部長醍醐勇司君登壇〕

○病院経営本部長(醍醐勇司君) 東京医師アカデミーの今後の取り組みについてでありますが、医師アカデミーは、都立、公社病院における医師確保を目的として、小児科や産婦人科など専門性の高い行政的医療の担い手を育成し、これまで一定の成果を上げてまいりました。
 一方で、国が進める地域医療構想を背景とした医療環境の変化や、複数の疾患を抱える患者への対応など、地域医療を支える総合診療専門医の育成が急務となっております。
 また、公的育成機関としては最大級となる規模を生かし、医師が不足している多摩地域の医療機関への派遣や、災害時における活用も望まれております。
 このため、都立、公社病院における医師の育成、確保に加えまして、東京の医療を支える公的育成機関としての新たな医師アカデミーの構築に向けまして、外部委員を含めた委員会を早急に立ち上げ、検討を進めてまいります。
   〔交通局長新田洋平君登壇〕

○交通局長(新田洋平君) 三田線高架下用地の利用についてでございますが、交通局ではこれまで、高架下用地を店舗や駐輪場として貸し付けを行うなど、その活用を図ってまいりました。
 現在、都営三田線の高架部につきましては、東日本大震災の教訓を踏まえ、安全性をより高めるために、橋脚のさらなる耐震補強を実施しており、既存の店舗等は、所定の補償を行った上で順次移転していただいております。
 耐震補強終了後の高架下用地の利用に当たりましては、交通局の大切な資産として有効活用を図りつつ、地元区とも十分協議しながら、にぎわいの創出や地域の発展につながるまちづくりに貢献してまいりたいと考えております。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 保育士等のキャリアアップについてでありますが、保育人材の確保定着を図っていくためには、保育士が専門性を高めながら将来を見通し、やりがいを持って働くことができるようにすることが重要でございます。
 このため、都は来年度、認可保育所、認証保育所、認定こども園、小規模保育事業所などを対象に、新たに保育士等キャリアアップ補助を創設し、キャリアパスの仕組みを導入することを条件に処遇改善に係る取り組みを独自に支援いたします。
 補助の実施に当たりましては、職責や職務内容などに応じた賃金体系の設定や職員の資質向上に向けた計画の策定など、キャリアパス要件の届け出や賃金改善に関する実施状況の報告を求め、保育士等のキャリアアップや処遇改善が確実に図られる仕組みを講じてまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 私立幼稚園に対する支援についてでありますが、都内の園児の九割以上が通う私立幼稚園は、建学の精神と独自の教育理念に基づき、個性的で特色ある教育を展開し、東京の幼児教育において極めて大きな役割を果たしており、子ども・子育て支援新制度施行後もその重要性が変わることはございません。
 私立幼稚園がこれまで行ってきた質の高い幼児教育を今後も維持向上させ、引き続き都民の期待に応えていくためには、ご指摘のとおり、各園が優秀な教員を確保し、さらにその能力を伸ばしていくことが欠かせないものと考えております。
 こうした認識のもと、来年度予算案におきましても、経常費補助の算定に用いる教職員給与の手当算定率をさらに引き上げ、幼稚園運営に対する補助を充実させるほか、教員の研修に要する経費を補助してまいります。
 今後とも、私学助成を一層充実し、都内の私立幼稚園の振興を図ってまいります。

○議長(高島なおき君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時五分休憩

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