平成二十七年東京都議会会議録第三号

○副議長(藤井一君) 七十二番神林茂君
   〔七十二番神林茂君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○七十二番(神林茂君) 東京の人口は二〇二〇年にピークを迎え、その後人口の減少が見込まれています。また、二〇六〇年には単身世帯の割合は約半数となり、高齢者は四割を占めると予測され、少子高齢化の急速な進行や居住形態の変化により、都市や地域の活力への影響が懸念されております。
 住宅は都民生活の基盤であり、世界で一番の都市の実現に向けて、将来の動向を見据え、住宅政策を迅速かつ計画的に推進していかなければなりません。
 そこで、これからの東京の住宅政策について、知事の見解を伺います。
 東京は、地域によって住宅の建設時期や住民の年齢構成、交通利便性や住環境など都民の住まいを取り巻く状況はさまざまであり、豊かな住生活を支える住宅の課題もまた多様でございます。
 このため、画一的に施策を実施するのではなく、こうした地域の課題を最も把握している区市町村とともに住宅政策に取り組むことが必要です。
 そこで、住宅政策について、今後ますます重要となる区市町村との連携と、都の果たすべき役割について見解を伺います。
 国の住宅・土地統計調査によると、平成二十五年の都内の空き家数は約八十二万戸と、平成二十年と比較し約七万戸増加し、まちの活力、防犯、防災面への悪影響が懸念されています。こうした中、空き家の適正管理に関する条例を制定するなど、老朽空き家対策に取り組む区市町村も出てきています。
 一方で、空き家の中には活用可能なものもあり、これが市場に流通することで、都民の住宅の選択肢が広がることが期待できます。
 東京においても少子高齢化が急速に進行していく中で、民間事業者の参画を得ながら、区市町村と連携して、空き家を高齢者などの居住の場や地域活性化のための場として活用することも重要と考えますが、都の見解を伺います。
 都は、福祉インフラ整備のため、都営住宅の建てかえによる創出用地を候補地として提供するとした思い切った支援策を打ち出しました。都営住宅の創出用地の中には、大規模団地において、一ヘクタールを超えるような用地も創出されています。
 まとまった規模の用地を有効活用し、民間の資金やノウハウを生かした開発を誘導することで、子育て支援、医療、介護施設などの福祉施設の整備のみならず、商業、文化施設や交流施設など、にぎわいと活気を生むさまざまな機能を整備して、より豊かな住生活の実現を図るべきです。
 都営住宅の建てかえに伴い創出される大規模な都有地において、民間活力を生かしたまちづくりを行うことについての今後の展開を伺います。
 住宅政策に関連して特に緊急性を有するのが、首都直下型地震に備える緊急輸送道路沿道建築物の耐震化と木造住宅密集地域の不燃化、耐震化などの防災対策です。
 こうした防災対策については、数年が経過し、成果を上げてきたところですが、現場をつぶさに見てみますと、既に対応が進んでいる場所がある一方で、建てかえや改修に意欲のない方、意欲があっても関係者同士の合意が得られない、資金が不足している、助成要件に適合しないなど、さまざまな理由から建てかえや改修ができず、老朽化した建物が取り残されている事例も見られます。
 こうした状況を放置したままでは、施策を進める本来の目的である災害に強いまちを実現することはできません。今後の課題として、さらに施策の実効性を上げていくことが強く求められます。
 そこで、従来の施策を継続、延長していくこと、公共性、公益性を考慮して対象を重点化すること、助成対象、要件を緩和すること、応急処置による対策を検討することなどが考えられます。さらに実効性を上げるための方策を幅広く検討していくことについて、所見を伺います。
 成長産業といわれる分野に、医療機器とロボットがあります。国内市場規模を見ても、医療機器は約二・四兆円であり、長期的に拡大しており、ロボット産業も二〇二〇年には八千六百億円から約三兆円に拡大することが見込まれています。
 都内経済を着実に成長させていくためには、その主役である中小企業をこうした成長が見込まれる産業分野へ積極的に参入を促していかなければなりません。中小企業にとっても、これまで参入に踏み切れなかった産業分野で、みずからの強みである技術を生かし、創意工夫を発揮することに公的な支援を導入することで、新しい技術や製品を生み出すことが期待できます。
 高齢化が進展する我が国においては、医療機器に対する国民的ニーズが高まっていくと考えられます。また、医療機器分野は現在著しい輸入超過となっており、すぐれた国産の医療機器の開発と商品化が国家戦略としても求められています。
 大田区では、ものづくり産業が集積しており、医工連携の実現を目指した施策が進められております。舛添知事も、医療機器産業について、医療機器のニーズと中小企業のシーズをマッチングさせる、大田区の医工連携支援センターがモデルとなると表明しております。
 高度な技術、製品開発能力を有する都内のものづくり企業に医療機器産業への参入を促すには、大学病院などの医療現場と専業医療機器メーカーとのマッチングを進めるとともに、市場の動向を見据えた戦略立案や、開発、製造、販売に関する法規制に関する知識、ノウハウに対する支援を進めることは非常に重要です。
 今後、都は、医工連携を進める方策として、どのような役割を担っていきたいと考えているのか伺います。
 ロボット産業は、中小企業の高度な技術力や開発力を生かせる産業として注目されており、都においても、昨年十二月に策定した長期ビジョンにおいてロボットを成長産業分野として位置づけ、戦略的に育成していくとしています。
 政府においても、内閣総理大臣の指示のもとに設置されたロボット革命実現会議により、本年一月、ロボット新戦略が発表されました。その中では、ロボットを少子高齢化の中での人手不足やサービス部門の生産性向上という日本が抱える課題解決の切り札とするとともに、世界市場を切り開く成長産業に育成していくとしています。
 ロボット産業は、製造業での生産支援に加え、介護支援や二〇二〇年大会での案内支援など、幅広い現場での活用が見込まれます。
 一方、技術開発には、研究成果や中小企業が有する高度な技術力をそれぞれの製品の特性に合わせて結集させることが重要であると考えます。
 そこで、ロボット産業の活性化に向けた都の今後の取り組みについて伺います。
 羽田空港跡地については、羽田空港移転問題協議会が策定したまちづくりの目標年次である平成三十二年まであと五年となり、折しも東京オリンピック・パラリンピックの開催の時期とも重なり、世界から多くの来訪者を迎える空の玄関口としても、待ったなしで効果的な取り組みを推進しなければなりません。
 都は、昨年十二月に、今後十年間の長期ビジョンを策定しました。世界をリードするグローバル都市の実現を目指して、羽田空港跡地を含む都内十地区の国際的ビジネス拠点プロジェクトを、国家戦略特区制度を活用してスピーディーに展開するとしています。また、羽田空港跡地を、産業、文化交流機能や宿泊機能、複合業務機能などを備え、空港と一体となった新拠点を形成するとして、国及び地元区と連携し推進することがうたわれております。
 この羽田空港跡地に予定する機能を整備していくために、まず必要となってくるのが基盤関連施設の整備であり、整備に当たっては、都市計画の手続などを円滑に進めていくことが重要であります。
 羽田空港跡地のまちづくりにおいて、国家戦略特区制度を活用するメリットがどこにあるのか、また、国家戦略特区制度を活用して、実りある跡地開発が早く進むよう検討いただきたいと考えますが、ご所見を伺います。
 地球温暖化の防止に向けた対策としては、CO2の排出削減に加え、温室効果ガスであるフロンの排出削減も重要であります。
 一昨年の六月にフロン回収破壊法が全面的に改正され、本年四月からフロン排出抑制法として施行されます。
 改正法では、フロンの製造から使用、廃棄までのライフサイクル全体で、それぞれの主体がフロンの使用量を削減するとともに、大気中に漏出させないように取り組むことが定められました。
 都内には、ビルの空調設備や小売店舗の冷凍冷蔵ショーケース、冷凍倉庫など膨大な数の冷凍空調機器が存在しており、これらの機器に使われているフロンもまた膨大な量に上ります。
 また、都内には本社機能が集中しており、都の指導の効果は全国に波及するため、都はフロン対策に率先して取り組むべきであります。
 フロンの使用量を削減するには、フロンを使わない、いわゆるノンフロン機器を普及させることが有効であります。改正法に基づく取り組みだけでなく、都はさらに踏み込んだ独自の取り組みを進めることによって、ノンフロンへの転換を牽引していくべきと考えますが、都の認識と取り組みについて伺います。
 また、法改正により、簡易点検や定期点検の実施、漏れがある状態での再充填の禁止など、冷凍空調機器を適正に管理するためにユーザーが果たすべき責務が大きくなっています。
 しかし、こうした改正の内容がまだまだユーザーの隅々にまで伝わっていなかったり、伝わっていたとしても、ユーザー自身が行う点検は、何をどこまで行えばよいのか対応に苦慮しているユーザーが多いと聞いております。
 都は、現場を抱える強みを生かし、フロンの漏えい防止策について、ユーザーの立場に立ってきめ細かく指導していくべきと考えますが、都の取り組みについて伺います。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 神林茂議員の一般質問にお答えいたします。
 これからの住宅政策についてでありますが、住宅は生活の基盤であると同時に、都市を形づくる基本的な要素であります。都民生活の安定と東京の持続的な発展のためには、経済的活力や文化的魅力と相まって、居住の場としての東京の魅力を高めていくことが重要であります。
 このため、都民が適切に住宅を選択できる市場の環境整備や居住の安定確保とともに、お話のとおり、少子高齢、人口減少社会の到来を見据えて、良質な住宅ストックと良好な住環境の形成を図ることが重要であります。
 世代を超えて住み続けられる優良な住宅ストックの形成や木密地域の防災性の向上、マンションや団地の再生など、まちづくりと一体となった施策により、都民が安全に安心して暮らせる活力ある住宅市街地を築いてまいります。
 こうした考えに立ちまして、住宅政策を計画的に推進し、誰もが住み続けたいと心から感じられる世界一の都市東京を実現してまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、住宅政策における都の役割についてでございますが、都は、広域自治体として東京全体の住宅政策の方向性を示すとともに、区市町村を支援し、また連携しながら、都民の居住の安定や市街地の防災性の向上など地域の課題に対応していくことが重要でございます。
 このため、住宅マスタープランにおいて政策の基本方針や目標を明示するとともに、区市町村と共同で策定した地域住宅計画に基づきまして、公的賃貸住宅の整備や民間を含めた住宅の耐震化などに取り組んでおります。来年度からは、新たに、子育てに配慮した住宅の普及や、空き家の活用などに取り組む区市町村に対しまして、技術面、財政面の双方において支援を行うなど、住宅政策における連携を強化してまいります。
 次に、区市町村と連携した空き家の活用についてでございますが、お話のとおり、少子高齢化などに伴い空き家が増加していくことにより、地域の生活環境への影響が懸念されていることから、その適正な管理や有効活用を進めていくことが重要でございます。
 このため、都は来年度から、区市町村が実施する空き家の実態調査や総合的な対策のための計画の策定、高齢者や子育て世帯などに民間が賃貸する住宅への改修助成につきまして財政支援を行ってまいります。
 今後、さらに民間との連携などにより、地域の活性化に空き家を活用する区市町村の取り組みが促進されますよう、住宅政策審議会での議論も踏まえ検討してまいります。
 次に、創出用地を活用したまちづくりについてでございますが、大規模な都営住宅の建てかえで創出する用地は、都民の貴重な財産でございます。これを民間事業者の創意工夫を引き出しながらまちづくりの種地として活用し、商業、文化機能の導入など地域の魅力向上を図ることが重要でございます。
 例えば、都心部に立地します青山北町アパートでは、新たに創出する用地を活用しまして、青山通り沿道の民有地と一体的な民間開発を誘導し、最先端の文化、流行の発信拠点を目指します。周辺区部や多摩地域における大規模団地の建てかえでは、商業、医療、福祉等の日常生活を支える機能の集積を図りまして、身近な地域におきましても、交流やにぎわいのある誰もが暮らしやすい生活圏の形成を誘導してまいります。
 今後、創出用地における地域特性に応じたまちづくりを積極的に展開し、豊かな住生活の実現に取り組んでまいります。
 最後に、住宅の耐震化、不燃化のさらなる方策についてでございますが、特定緊急輸送道路の沿道建築物につきましては、耐震診断を完了した所有者が確実に改修に取り組めるよう、助成期限を延長し、来年度中の工事着手についても助成の対象といたします。
 また、マンション所有者に対しまして、居住を続けながら改修できる工法を提案し、区分所有者間の合意形成が円滑に進むよう支援してまいります。
 一方、不燃化特区制度につきましても、老朽戸建て住宅の建てかえに係る設計費を延べ床面積に応じて助成するなど支援策を改善するとともに、不燃領域率などのデータを毎年明らかにしまして区の取り組みを効果的に支援してまいります。
 こうした取り組みによりまして、耐震化、不燃化の施策の実効性を高め、災害に強い住宅市街地の形成を加速してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、医療機器産業への参入支援についてでございますが、ご指摘のように、高い技術力や製品開発力を有する中小企業が成長の見込まれる医療機器産業に参入することは、東京の産業競争力を高めていく上で重要でございます。
 このため、都は来年度より、医療機器産業への参入を目指す都内ものづくり中小企業を支援する取り組みを開始いたします。
 具体的には、都内中小企業の幅広い技術シーズと医療現場におけるニーズを専門のコーディネーターが掘り起こし、両者をマッチングして製品開発のプロジェクトを立ち上げ、実用化まできめ細かく支援してまいります。また、医療機器産業の市場動向や法規制に関する最新の情報を提供し、中小企業のさらなる参入を促してまいります。
 これによりまして、中小企業の技術力を生かした付加価値の高い機器の開発を進め、産業活力の向上を図ってまいります。
 次に、ロボット産業の振興についてでございますが、ロボットは二〇二〇年大会や医療、介護の現場などさまざまな場面で活用が期待される成長性の高い産業であり、その振興は東京の産業活性化にとって重要でございます。
 そこで、都は来年度より、ロボット産業の活性化に向け、産業技術研究センターの開発支援機能を強化いたします。
 具体的には、産業技術研究センターが大学や大手企業などと連携して、将来の活用が想定される多様な分野でのロボットの基礎技術を開発し、その成果を参入意欲を持つ中小企業に移転し、実用化を推進いたします。また、センターの最新の機器を利用して安全性や性能の検証を重ね、製品としての信頼性を高めてまいります。
 こうした取り組みを着実に進め、二〇二〇年大会を契機に、東京発のロボット技術を国内外に発信してまいります。
   〔政策企画局長川澄俊文君登壇〕

○政策企画局長(川澄俊文君) 羽田跡地への国家戦略特区の活用についてですが、国家戦略特区では、意欲的な都市計画の決定目標を設定し、国、東京都、関係区等が一丸となって目標達成に向けて取り組む都市計画手続のワンストップ特例が設けられております。この制度を活用することにより、迅速な事業展開が期待できることになります。
 羽田空港跡地は、昨年十月の国家戦略特区の区域計画素案において、平成二十七年度中の都市計画決定を目標として掲げたところであり、現在、地元大田区では、計画の具体化に向けて準備を進めているところでございます。
 今後、東京都といたしましては、大田区の取り組みを踏まえ、プロジェクトをスピーディーに展開するため、国と連携を図り、区域会議のもとに設置した都市再生分科会の機動的な運営等を通じて、事業の促進に向け支援してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

○環境局長(長谷川明君) フロン対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ノンフロンへの転換についてでございますが、温室効果ガスの削減に向けて、都は長期ビジョンで、代替フロンの排出量を二〇三〇年度には三五%削減する目標を新たに掲げました。この実現に向け、法改正による対策強化に加え、都独自の排出削減対策を展開してまいります。
 具体的には、業務用冷凍空調機器の設置申請時にノンフロン機器等の導入を促すとともに、ノンフロンショーケースへの補助制度も活用し、転換を後押しいたします。また、カーエアコンについては、新たに自動車販売者に冷媒フロンの温室効果の説明を義務づけますとともに、近く商品化が見込まれるノンフロンルームエアコンにつきましても、家電販売店にノンフロン表示を義務づけるなど、都民がノンフロン機器等を選択しやすい仕組みづくりを進めてまいります。
 次に、フロンの漏えい防止についてでございますが、業務用冷凍空調機器のユーザーは極めて多く、業種も多岐にわたることから、各事業者団体や設備点検業者などと連携した対応が効果的でございます。
 そこで都は、新たに義務づけられた点検の際に、確認すべき項目や注意点などをわかりやすく掲載したユーザー向けの点検マニュアルを作成し、事業者団体を通じて周知するとともに、立入検査時に具体的な指導助言を行ってまいります。さらに、設備点検業者などを通じたユーザーへの周知も行うなど、さまざまな場面で適正管理を促してまいります。
 また、設備点検業者やフロン回収業者などの団体と連携して、法施行後の点検実施状況や冷媒フロンの転換状況を業種別、業態別に調査把握し、その結果を解析して、取り組みの徹底に向け、きめ細かく指導を行ってまいります。

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