平成二十七年東京都議会会議録第三号

   午後三時十分開議

○副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十六番中村ひろし君
   〔七十六番中村ひろし君登壇〕

○七十六番(中村ひろし君) 最初に、高齢社会における二〇二五年問題について質問します。
 二〇二五年に団塊の世代が全て七十五歳以上を迎えるため、二〇二五年問題といわれています。東京都でも、六十五歳以上の高齢者が四人に一人の三百三十二万人になる見込みです。
 知事は遠距離で介護をされ、それが政治の原点だとよくお話をされます。在宅と施設が選べるのが理想で、施設が二割あいていればよいとも発言をされています。長期ビジョンで、二〇二五年までに特別養護老人ホームを六万人分ふやすとありますが、人材不足の状況では、特養をつくっても埋められないことがあるそうです。
 地域包括ケアシステムの構築は、医療や介護の不足を住民の支え合いで補うものであり、知事は昨年、就任直後の施政方針演説で、地域があたかも施設のようにと述べられていましたが、都民も支え合いの社会に参加することの必要性を、より普及啓発することも重要です。二〇二五年に向けてさまざまな施策を打っていくにしても、財源の裏打ちが示されていない中で、六万人分の施設が絵に描いた餅にならないか危惧がされます。
 知事は、みずからの経験から、介護の課題をどのように捉えているか、そして、二〇二五年問題にどう対応するのか、所見を伺います。
 地域包括ケアシステムが機能するには、地域の医療や資源などの連携、行政の積極的支援、高齢者の就労、地域活動の機運の醸成、働く世代の参加のためのワークライフバランスなど、さまざまな要素がそろわないとできません。ことし四月から要支援一、二の高齢者向けサービスが、全国一律の介護保険給付から市区町村事業に段階的に移りますが、全国でこの四月に移行するのはわずか七%とのことです。
 地域のさまざまな資源を活用し、新しい介護予防などに円滑に移行することが、市区町村において喫緊の課題となっており、介護予防の拠点である地域包括支援センターの強化が求められています。地域包括ケアシステムの中心的役割を果たすことが期待される市区町村の地域包括支援センターの機能を強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 孤独死を防ぐためには、地域での見守りの仕組みが必要です。監察医務院のデータがある二十三区では、年間二千人を超える方が孤独死をされているとのことです。市民も協力して見守りが行われていますが、例えば都営住宅であれば、住宅供給公社が鍵をあけたり、生活保護世帯ならケースワーカーがいるなど、何らか行政がかかわると発見しやすいのですが、日常的にどこにも接点がないと対応が困難です。
 倒れている人を発見できた場合に、親族ではないと対応が困難な場面もありますので、いわゆる善意の隣人がかかわるときに、その人を支える仕組みが必要です。行政を初め、地域のさまざまな関係機関が連携したネットワークの構築を急がなければなりません。地域で見守りにかかわる人をふやし、かつ高齢者を見守る地域のネットワーク構築を支援すべきと考えますが、所見を伺います。
 介護報酬の地域区分について伺います。
 かねてから大都市における実態と合っていないことから、都は国に対応を求め、平成二十四年四月から地域区分が細分化をされました。しかし、その方法が、国家公務員の地域手当などの地域加算の区分に合わせるために、地域の勤労者の給与や物価と合っていません。
 このため、三鷹市では近隣市よりも低く出てしまい、介護事業者が市内で事業継続が困難になり、隣の市へ拠点を移さざるを得ないという声もあり、結局はサービスの受け手である市民が不利益をこうむることになります。たびたび三鷹市長が厚生労働省に要望してきましたが、先日、福祉保健局長が三鷹市長とともに厚生労働省に老健局長を訪問し、交渉していただいたと聞いていますが、その行動力には敬意を表します。
 実態と合っていないという問題は幾つかの自治体にもあり、制度そのものに問題があるとも思われます。
 改めて、介護報酬の地域区分の問題点はどこにあるのか、都はどのような主張をしたのか伺うとともに、引き続き国に強く要望していただきたいと思いますが、見解を伺います。
 地域での支え合いにとって、町会、自治会などの地域活動は重要です。先日、三鷹市で町会、自治会の事例発表会を拝見しましたが、全てではありませんでしたが、多くは地区公会堂や集会所などの活動の拠点がありました。今後、高齢者の居場所づくりを行ったり、地域の活動を行うには、地域に集まる場が必要になります。
 平成二十五年時点で、都内には八十二万戸の空き家が存在しており、その活用は有効です。空家等対策の推進に関する特別措置法が制定されるなど、国レベルでの動きも出てきています。地域の活動をより積極的に促進するには、空き家を活用することが重要だと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、若者の自立支援について伺います。
 ひきこもりや不登校など、さまざまな理由で社会生活を円滑に営むことが困難な子供、若者の問題は、大変深刻な状況にあります。とりわけ、長期にわたり自宅にひきこもり、社会との接点を失った状態にある、いわゆるひきこもりの若者は、都の推計では二万五千人いるとのことですが、課題は多様であり、都はもとより市区町村、家庭、学校、民間団体、その他福祉、保健、雇用、教育など、さまざまな分野の関係機関が連携して、個々の事例に即したきめ細かな支援を提供していく必要があります。
 都は今後、若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援、その他の取り組みについて、総合的な施策を推進するための基本指針である東京都子供・若者計画を策定すると聞いています。この計画の策定に伴い、さまざまな機関との連携を一層強化して、ひきこもりの状態にある若者への支援の充実が図られることを期待しています。
 そこで、都におけるひきこもりの若者への自立支援の取り組みについて伺います。
 次に、児童虐待防止について伺います。
 ふえ続ける虐待相談件数に対して、児童福祉司や児童心理司などの配置をふやしてきてはいますが、保健師が全児童相談所に配置できていないという実態があります。早期に保健師の全所への配置を含め、引き続き体制の強化を求めます。
 しかし、児童虐待対応を行う上で重要なのは、児童虐待を発生させないこと、未然に防止することです。支援が必要な家庭を早期に発見し、適切に対応することが重要です。それには民間団体との連携も必要です。
 例えば、ホームスタートという活動をしている団体の話を伺いましたが、子育て経験者が家庭訪問して、保護者の子育ての相談を受けとめ、育児を一緒に行い、虐待の危険性などがある場合に、地域の専門機関や関係者に連絡、対応していますが、こうした民間団体のノウハウを十分に活用することで、すき間のない支援体制が整備されると考えます。
 児童虐待を未然に防止するためには、こうした団体とも連携しながら、子育て不安を抱える家庭への支援を適切に行う必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みについて、最初に、在留外国人との交流について質問します。
 知事は、海外からの観光客をおもてなすための施策や、これまで停滞していた都市外交を活性化するための取り組みを推し進めています。しかし、都内に短期間滞在する外国人旅行者へのおもてなしも大切ですが、日常的に多くの外国人の方々が、仕事や留学で都内に在住しており、こうした方々との交流を大切にした多文化共生社会に向けた取り組みが必要です。
 既に民間レベルでの国際交流も盛んに行われており、都民の異文化への理解の促進、市民レベルでの交流を行っていますが、都としても、在留外国人との交流の活性化に向けて、より積極的な施策展開が必要と考えますが、知事の所見を伺います。
 最後に、市民活動の活性化について伺います。
 知事は、施政方針の最後に、都民に向けて、都政に対する協力を呼びかけました。長期ビジョンでは、オリンピックに向けてボランティアを募るとしていますが、その機運が大会後も継続していくには、実際に動ける場や機会を創出する仕組みや仕掛けが必要です。冒頭質問した地域包括ケアシステムが成り立つためには、都民の力が不可欠です。そして、市民活動の活性化のために鍵となるのがNPO法人です。
 このNPO法人は、単なる善意のボランティアだけではなく、事業主体ともなり得、経済活動も行うので、コミニティビジネス、ソーシャルビジネスでもあり、雇用も生み、特に高齢者層の雇用確保に期待が持てます。しかし、欧米に比べると、まだ寄附の文化が根づいておらず、その醸成が必要です。
 都内で活動するNPO法人の数や雇用、経済規模について、さらに都が仕事を委託する金額を目標として掲げ、施策を積極的に展開することも提案します。今後の都政において、行政、市民、企業だけではなく、NPO法人もその主要な位置を占めるようにならなければ乗り切れませんし、むしろそうしたところに居場所や出番があれば、より明るい都政の展望が開けると考えます。
 NPO法人の活動の活性化についての見解を伺います。
 以上で質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 中村ひろし議員の一般質問にお答えいたします。
 介護の課題と二〇二五年問題についてでございますが、私は、認知症を患った母親の介護を経験しまして、家族の大変さ、それから、介護現場の苦労など十分理解していると思っております。
 介護は、家族で抱え込むのではなく、介護のプロや地域の力など、周囲の力をかりることが必要だと考えております。
 また、在宅か施設かという二者択一ではなく、在宅サービスも施設サービスも両方とも必要でありまして、さまざまなメニューの中から自由に選択できることが理想であると思います。
 今後、在宅サービスは、地域包括ケアの考えに立ちまして、医療と介護の連携を強化していく必要がございます。また、施設サービスにつきましては、特養などの定員を大幅にふやしていかなければなりません。
 そのために、昨年十二月に策定しました東京都長期ビジョンでは、二〇二五年度末までの政策目標とその工程表をお示しいたしました。また、その実現のため、来年度予算案では、福祉と保健の分野に、過去最高額となる一兆一千七十億円の予算を計上し、福祉先進都市実現基金も創設いたします。
 今後とも、超高齢社会の到来という将来を見据え、民間の力、地域の力、行政の力を組み合わせながら、大都市東京の特性を踏まえた施策を展開していく考えでございます。
 次に、都内で暮らす外国人向け施策の展開についてでありますが、我が国には、相手を思いやり、互いに助け合って生活する伝統がありまして、多様な文化を受け入れ、発展させてきた歴史があります。
 今後、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会の開催に向けまして、国際都市として、外国人旅行者はもとより、都内在住の外国人にとっても、より暮らしやすいまちとなることが必要であります。
 そのためには、人種、宗教、言語などを異にする人々が文化的差異を認め合い、良好な関係を築く多文化共生の考え方が浸透し、行政の施策にも反映されることが必要であると考えております。
 都ではこれまでも、都内に居住する四十一万人の外国人に対しまして、生活や防災に関する情報提供を行うとともに、東京全体で多文化共生の取り組みが広がるよう、区市町村や支援活動を行うNPOとの間で、ネットワーク構築を進めてまいりました。
 今後とも、在住外国人にとって暮らしやすいまちづくりを進めるとともに、市民レベルでの交流と相互理解の促進が図られますように取り組んでまいります。
 そのほかの質問については、関係局長が答弁をいたします。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えします。
 まず、地域包括支援センターの機能強化についてでありますが、地域包括支援センターは、地域における介護予防と相談支援の拠点として、地域包括ケアシステムを実現するための中心的な役割を担っております。
 そのため、都は今年度から、区市町村内のセンターを統括しサポートする機能強化型センターの設置や、介護予防に関して幅広い知識と経験を有した主任介護支援専門員や保健師等を、介護予防機能強化支援員としてセンター等に配置を行う区市町村を支援しております。
 来年度はさらに、効果的、効率的な介護予防の推進に向け、専門家の助言やすぐれた事例等の情報を都と区市町村の相互で共有するシステムを立ち上げます。
 今後とも、地域包括ケアシステムの構築に向け、センターの機能強化に取り組む区市町村を支援してまいります。
 次に、高齢者を見守る地域のネットワークについてでありますが、都はこれまで、民生委員や自治会、町会、ボランティアなどによる高齢者の見守り活動や、地域住民が高齢者等を日常的に見守り、異変に気づいた場合に地域の専門機関につなぐ見守りサポーターの養成に取り組む区市町村を包括補助により支援してまいりました。
 また、来年度は、区市町村における高齢者等の見守り活動のさらなる充実に向けて、包括補助の見守り関係事業を、区市町村が実施するもの、町会、自治会が実施するもの、地域包括支援センターが実施するものに再編し、より活用しやすい形に見直す予定でございます。
 こうした取り組みにより、今後とも区市町村と連携しながら、地域において高齢者を見守るネットワークづくりを推進してまいります。
 次に、介護報酬の地域区分についてでありますが、国は、介護報酬において地域ごとの人件費の差を調整するため、保険者である区市町村ごとに、人件費分の上乗せ割合を七つの地域区分として定めております。
 現在の地域区分における上乗せ割合は、基本的に国家公務員の地域手当等を横引きしていることから、都はこれまで、大都市における人件費や物件費等の高さに鑑み、地域の実態を踏まえた地域区分の設定が可能になるよう、繰り返し国に提案要求してまいりました。
 その結果、今回の地域区分の見直しでは、保険者である区市町村の意見も踏まえ、多くの市町村で経過措置が適用されることになりました。
 次期改定に当たりましても、区市町村の意見を聞きながら適切に対応してまいります。
 最後に、児童虐待の未然防止に関する取り組みについてでありますが、現在、区市町村においては、乳幼児健診、産後の家庭訪問、保護者への相談支援等の母子保健事業を通じて、子育てに不安を抱える家庭を把握した場合には、保健所や子供家庭支援センター等が民間団体とも連携しながら、訪問型の子育て支援やショートステイなどのサービスを提供しており、都ではこうした区市町村の取り組みを包括補助事業等により支援しております。
 また、支援が必要な家庭を早期に発見し、虐待を未然に防止できるよう、保健所や子供家庭支援センター、子育てひろば等の職員に対する研修も実施しております。
 今後とも、虐待の未然防止に向け、子育てに不安を抱える家庭へのさまざまな支援に取り組む区市町村を積極的に支援してまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 地域における空き家の活用についてでございますが、空き家の活用を促進していくためには、その立地や住民のニーズなど地域の実情を把握している区市町村の役割が重要でございます。
 昨年制定されました空家等対策の推進に関する特別措置法では、区市町村が空き家の活用を含む対策を総合的に実施するための計画を定めることとされております。
 都は来年度から、区市町村による計画の策定や実態調査に対しまして、技術的、財政支援を行ってまいります。
〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(河合潔君) ひきこもりの若者への自立支援についてでありますが、都は、相談事業東京都ひきこもりサポートネットを運営し、ひきこもりの状態にある若者やその家族等を対象に電子メール、電話、ご家庭等への訪問による相談に対応し、相談者の状況やニーズに即した支援機関の紹介等を実施しております。
 また、都のプログラムに沿って若者の自立支援に向けた活動を行うNPO法人等を登録、サポートする事業や、住民に身近な地域の支援体制の整備を目的とした区市町村補助や、職員研修等も実施しているところです。
 今後とも、関係支援機関との連携を深めるとともに、区市町村による若者への支援体制の整備を促進し、ひきこもりの若者が社会的自立に向けた一歩を踏み出せるよう積極的に支援してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) NPO法人活動の活性化についてでありますが、東京には九千を超すNPO法人が存在し、高齢者や障害者福祉、子供の健全育成、芸術文化の振興など多様な分野において自発的に活動を行っております。
 こうしたNPO法人の活動が地域で活発に行われるとともに、行政と協働、連携していくことは都の施策を進める上でも意義がございます。
 都はこれまで、東京ボランティア・市民活動センターにおきまして、NPO法人の活動内容を一般向けに情報提供するとともに、NPO法人に対しては行政とNPOとの連携事例の紹介などを行ってまいりました。
 来年度は、こうした支援に加えまして、NPO法人についての運営に関する相談の充実や企業との連携促進を図るなど、取り組みを進めてまいります。

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