平成二十七年東京都議会会議録第二号

   午後三時五十分開議

○副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百八番中嶋義雄君
   〔百八番中嶋義雄君登壇〕

○百八番(中嶋義雄君) 都議会公明党を代表して質問いたします。
 年が明け、いよいよオリンピック・パラリンピックまであと五年となりました。
 一方、世界はテロと報復、そして紛争が吹き荒れ、そこに頻発する経済危機が加わり、平和や国際秩序の崩壊への不安、あるいは世界は一体どこに向かうのかとの不安に包まれております。そうした世界の状況に対して、我々が無関心であってよいはずはありません。
 むしろ今、我々に問われているのは、スポーツと平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックをこの東京で開く意味は一体何か。さらにいえば、二〇二〇年の開催時はもとより、それまでの五年間で、日本の首都たる東京は、世界に何を呼びかけ、世界に何を発信するのかであると思います。
 世界を見渡せば、生まれてこの方、戦争、紛争しか知ることのない人々が、中東やアフリカ地域などを中心に、我々の想像を超える数に上っているかもしれません。
 その一方で、東京は、数々の問題を抱えながらも、まれに見る平和と豊かさに満たされております。それを所与の幸運として享受しているだけで一体よいのかと考えざるを得ません。
 書生論との批判はもとより承知で、あえて申し上げます。テロや武力による紛争、そして貧困と経済危機が蔓延する世界において、この東京が今、オリンピック・パラリンピックを開催する意味は一体何か。また、それを通して、東京は世界に何を、いかにして発信すべきか、改めて我々は問い直す必要があります。
 昨年も申し上げましたが、都市、とりわけ一国の首都には、国の外交とは全く次元の違った世界とのかかわり方、つまり国益と国益のぶつかり合いではない交流が可能であります。そうした意味で、都議会公明党は都市外交を重視してまいりました。
 改めて知事にお尋ねいたします。
 スポーツの祭典、平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックの開催とその準備において、平和への意志の結集とテロや紛争の解決を強く呼びかけ、生命の尊厳と基本的人権を守り抜くという東京の理念を、ありとあらゆる方策を駆使して、繰り返し世界に強く発信すべきであります。日本を代表する顔の一人である舛添要一東京都知事の決意を伺いたいと思います。
 次に、今後の財政運営について質問いたします。
 予算は、まさに都政の顔であります。施政方針で知事が触れたとおり、新年度予算案において、保健と福祉の分野が一兆一千億円を超え、構成比も二二・八%と、額、割合ともに過去最高を示したことは、都政の目指す方向を雄弁に物語っております。
 また同時に、これを可能にしたのは都税収入の伸びであり、都税収入を伸ばしたのは、都内経済の活性化にほかなりません。つまり、都政が持続的に保健と福祉、教育、環境、防災などを重視するためには、経済の活性化が不可欠であり、都の投資的経費の果たす役割は極めて重要であります。
 その投資的経費も引き伸ばすことができた今回の予算案は、ソフトとハードのバランス、オリンピック・パラリンピックの準備、さらに長期ビジョンの実現に向けた意欲と積極性がよくあらわされていると評価したいと思います。
 一方、二〇二〇年を節目に、東京都内の人口は減少し始めます。大きな時代の転換点を迎える中で、東京は、我が国全体の活性化を先導するとともに、少子高齢化、人口減少の局面を乗り越えて、持続的発展が可能な成熟都市へと変貌していかなくてはなりません。そして、そのための財政需要もまた膨大であります。
 そうした将来を見据えて、ただ単に財政規模を拡大しただけではなく、事業評価の徹底などにより、前年度比で約一・六倍となる四百十億円もの財源を確保し、福祉、防災、そして水素社会の形成など、七つの重要分野について新たに基金を創設し、単年度予算の枠を超えた目配りを行ったことも重要であります。
 しかしながら、こうした措置を講じた上でも、今後の都財政を取り巻く環境は決して予断を許しません。
 歳入面では、都税収入が常に景気変動に大きな影響を受ける上、国による地方法人課税の不合理な措置の問題など、着実な政策展開を支える財源が確保できるのかどうか、その不安定さはいまだ払拭できておりません。
 歳出面についても、先ほど述べたとおり、オリンピック・パラリンピックの準備、少子高齢化への対応はもとより、首都直下型地震などへの備えや社会資本ストックの維持更新など、政策課題は山積をしております。
 こうした状況下で、今、都にとって必要なことは、歳入歳出の両面に大きな課題があることを直視しつつ、東京の未来を着実に切り開いていくことであります。
 特に、オリンピック・パラリンピック開催までのこれからの期間は、まさに正念場であります。この間のさまざまな取り組みが、長期ビジョンの実現の帰趨を制し、さらに成熟都市東京の未来を開くといっても決して過言ではありません。
 そこで、今後の政策展開を支えるための中長期的な財政運営の基本姿勢について、知事の所見を伺いたいと思います。
 次に、社会の安定に不可欠な雇用と福祉政策に関して質問をいたします。
 政府の経済政策、いわゆるアベノミクスや、五輪開催による有形無形の経済効果が広く行き渡ることを多くの都民が期待しております。
 一方で、現状に強い閉塞感を抱く多くの都民が存在するのも事実であり、特に若い世代は、仕事、結婚、子育てなど当面する目下の課題のみならず、将来に対する強い不安を抱えております。
 かつて若者の雇用問題を扱った書籍に、次のようなくだりがありました。企業は次世代をリストラすることで、企業自体の未来も危うくしている。社会もまた、若者を犠牲にすることで、その未来を失おうとしている。至言であります。
 バブル崩壊後の新規採用の手控えや、その後の非正規雇用の増大等により技術継承が途絶え、その結果、衰退した企業が多いのと同じように、若い世代を冷遇する日本社会もまた、いずれ衰退していくという指摘であります。
 一般の建物でもそうであるように、土台づくりに手抜きをすると、将来その報いを受けるのは当然であります。社会発展の礎である若い世代への支援、とりわけ暮らしの基盤である雇用を守り、さらにそれを拡大する対策が急務であります。
 この点、今回の予算編成に当たり、知事が非正規問題を中心に若者の就労対策に焦点を当てたことは、我が党の考えと一致するものであり、評価いたします。
 繰り返しになりますが、若者への就労支援は、社会そのものを安定的かつ継続的に支える重要な施策にほかなりません。知事の認識をまず伺います。
 就労支援策という点で、都は長期ビジョンにおいて、今後年間五千人、三年間で一万五千人の非正規労働者の正規職化を目指すとしており、積極的な取り組みを大いに評価したいと思います。
 重要なことは、働くことを希望する人が、みずから希望する働き方を、みずからの努力で手に入れることができる環境を整備することであります。そこには当然、多様な働き方の選択肢を提示することもまた重要であります。
 その上で、都は、正規就労を望む都内労働者のニーズに即して、転職による正規職化、資格取得や職業訓練などのキャリアアップによる正規職化、さらには、社員の正規職化に意欲はあるものの、実施に踏み切れないでいる経営者に対する効果的な後押し策など、きめ細かな具体策を講ずるべきであります。見解を求めます。
 就労の促進には、起業、創業による就労の場の拡大も避けて通れません。その意味で、我が党は昨年の第三回定例会で、特に女性や若者に対する創業支援策の必要性を強調し、融資制度の充実に加え、創業の場の提供とあっせんを効果的に進めるように求めました。
 一口にインキュベーション施設といっても、ものづくり産業に向くものもあれば、事務作業に向いたものもあり、その形態はさまざまであります。とりわけユニークなアイデア商品やデザイン商品などの物品販売は、必ずしも広いスペースは必要とせず、むしろ生活の現場に近い商店街の空き店舗などの活用が有効であります。
 都は、それぞれの仕事の内容に適した創業の場の提供に積極的に取り組むべきであります。見解を求めたいと思います。
 一方、我が国の繁栄を長く支えてきた、すぐれた技術や伝統を誇る都内の数多くの中小企業が、今廃業の危機に直面しております。その原因の多くが、経営者の高齢化にあります。後継者がいない場合だけでなく、いわゆる失われた二十年において、景気の低迷により、たとえ後継者が存在しても、先行きの展望が開けず、事業承継を断念するケースも少なくありません。すぐれた技術を持つ中小企業が失われることは、求職者にとっても、東京の産業全体にとっても大きなマイナスであります。
 都は、事業者への経営指導などの啓発策に加え、後継者探しやその育成、また、将来にわたる安定的な経営基盤の確立など、事業承継に臨む中小企業に対して、専門家による個別で長期にわたるサポートを実施すべきであります。見解を求めたいと思います。
 次に、少子化対策について質問をします。
 子供を産み育てやすい環境の整備を目的とした子ども・子育て新制度が、いよいよこの四月からスタートいたします。
 少子化対策においては、子育て支援だけでなく、その前段階の就労、結婚、妊娠、出産などの各段階での支援が重要であります。我が党の少子化対策PTが提言してきた妊娠期からの切れ目のない支援に関しては、東京都は新たに、出産・子育て応援事業を開始し、区市町村を支援する仕組みをつくりました。
 しかし、事業の実施そのものは基礎自治体に委ねられているため、地域間格差や利用者間格差を生じる懸念があります。とりわけ切れ目のない支援の拠点である産後ケアセンターに関して、各地域で順調に整備が進むのかどうか懸念があります。出産直後の母親に対する心身のケアを行い、育児不安を解消する産後ケアセンターは、全ての区市町村に配置されるべきであります。今後の都の取り組みについて見解を求めたいと思います。
 知事選での公約どおり、都が待機児解消に向けて保育園の増設に取り組んでいることは高く評価いたします。しかし、このまま保育所を増設していくと、保育人材の確保が次の課題となります。
 国は、保育士不足を解消するため、一七年度までに六万九千人の増員を目指し、待遇の改善と潜在している保育士の現場復帰を促そうとしております。
 さらに効果的なのは、従来、年一回だった保育士試験を年二回実施することを目指して、都道府県への支援を打ち出したことであります。保育士資格の取得機会を拡大し、保育士不足を解消するため、この機会を逃すべきではありません。保育士試験の年二回実施に関して、都の見解を求めます。
 次に、子供たちの家庭的養護の取り組み強化について質問いたします。
 少子化の時代に生まれてきた、かけがえのない大切な子供たちであります。しかし、残念なことに、現在都内では約四千名の子供たちが虐待などの要因により家庭に帰ることができず、親元を離れ、社会的養護のもとで暮らしております。先進国の多くは、里親などの家庭的な環境で大半が養育されていますが、都においては、養育家庭やファミリーホーム、グループホームといった家庭的養護はまだ全体の三割程度にとどまり、決して十分とはいえません。
 親権者による養育を望めないケースや家庭復帰が難しい場合などについては、できる限り家庭的な養育環境で育つことが重要であります。
 特に、乳幼児のころから親元を離れる場合は、愛着障害を発症するとの指摘があります。しかし、特定の養育者との安定した継続的な関係の中で生活することによって自己肯定感を育み、それが主体的な生活態度につながって自立の力が身につきます。また、里親など自分を大事にしてくれる人や家庭に出会うことで、血縁関係がなくても、新たな家族が構築されてまいります。
 我が党はかねてより、こうした家庭的な養育を推進すべきと主張してまいりました。今後、里親制度の効果的な運用を図るとともに、五、六人のお子さんを養育するファミリーホームなどの家庭的養護をさらに拡充していく必要があります。そして同時に、そうした家庭的養護を支える児童相談所の体制も強化する必要があります。都の見解を求めます。
 続いて、医療と介護について質問いたします。
 十年後には、団塊の世代の全員が後期高齢者となり、その総数は都内で二百万人に達します。後期高齢者の要介護率は前期高齢者の約七倍と高く、住まい、医療、介護、予防、生活における各支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築は、東京都にとって、まさに最重要課題であります。
 しかし、この地域包括ケアシステムを構築する主体は、あくまでも区市町村であります。そして区市町村は、医療などの地域資源の偏在や財政力の格差、高齢化率の違いなど、さまざまな事情を抱えながらシステムの整備に取り組んでおります。
 こうして地域の事情に即して地域包括ケアシステムは構築されていくのですが、そこで問題は、各自治体ごとに利用可能なサービスの質と量が大きく異なるようであってはならないという点であります。
 要介護状態になった後でも、適切に医療と介護の連携が図られていけば、介護度の悪化を防ぎ、場合によってはその改善さえ可能であります。
 都は、さまざまな事情から、医療と介護の連携が懸念される地域にあっても、医療的知見に基づく介護サービスが十分に確保されるよう、広域自治体として調整を図るべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 さて今般、医療法が改正され、各地域においてバランスのとれた医療機能を確保するため、機能の分化と連携を図ることを目的とした地域医療構想を各都道府県が定めることとしました。都は、来年度からこの構想の策定に取り組むことになります。
 しかし、東京は、地域によって医療資源の密度にアンバランスがあり、また、基幹病院へのアクセスに相当程度の地域間の差異が存在します。その一方で、東京は公共交通が発達し、患者の方々が広範囲で移動することが可能という利点もあります。
 地域医療構想の策定に当たっては、こうした東京の持つ特性を十分に考慮して協議、検討を行っていくべきであることをまず指摘しておきたいと思います。
 さて、医療と介護の連携は、介護予防という観点からも重要であります。この四月から施行される新制度では、新たに一般介護予防事業が提起され、元気高齢者も含めた幅広い介護予防事業が展開されることになります。
 本事業が効率的に都民の健康寿命の増進に結びつくためには、健康相談から在宅リハビリテーションに至るまで、医療職を含む多様な介護予防の専門家による活動と連携が不可欠であります。
 しかし、そうした人材の確保に多くの自治体が苦慮しているのが実態であります。新しい介護予防事業の実施には二年の猶予期間があるものの、一刻も早くその効果的な実施が強く望まれています。
 都は、区市町村が介護予防事業の見直しと新たな展開に迅速に対応できるよう、介護予防の現場で活躍できる医療的知見を備えた人材の確保、育成に改めて取り組み、課題解決を図るべきであります。見解を求めます。
 今回の介護報酬の改定では、介護人材の処遇改善が狙いの一つであります。キャリアパスという人事労務や経営学上の用語が、介護の現場でも注目され始めており、舛添知事も、介護人材の確保策としてその活用を力説されました。
 キャリアパスとは、ある職の位にたどり着くまでに経験すべき、いわばステップのことであり、働き手の側から見れば、そのステップに計画的に挑戦できる環境が整っていることを意味します。
 現政権は、介護職一般の職位の目安となるキャリア段位制度を打ち出すとともに、平成二十七年度からは、給与表などのキャリアパス要件の整備状況に応じて、職員一人一万二千円相当の上乗せを加算するとしております。
 その上で東京都は、国のキャリア段位制度を活用して、段位取得者一人につき年間五十万円を最高四人分まで三年間、事業所に支給する新規施策を打ち出しております。我が党も、介護職員の処遇改善の成果に大いに期待するものであります。
 この都の新規事業は、キャリア段位を取得した介護職員への評価を着実に給与額に反映させることが目的であり、事業所が優秀な働き手を正当に評価できなければ、貴重な人材を失いかねず、各事業所の経営や人事の改善にも役立ちます。
 都は、新制度をわかりやすく事業者や介護職員の皆さん、そして都民に向けて説明するとともに、介護職員のキャリアアップが正当に給与の上昇につながるよう、さらに運用上の工夫を凝らすべきであります。見解を求めたいと思います。
 今回の報酬改定において、当初、国は六%に及ぶマイナス査定を打ち出しました。それを、我が党は国会内において激変緩和の必要性を強調し、マイナス二・二七%まで押し戻した経緯がございます。
 この介護報酬の改定に関しては、国会でも今審議がされておりますが、頭から福祉と介護の後退であると批判する議論があります。しかし、これは余りにも乱暴で、一方的な議論といわざるを得ません。
 改めて、マイナス改定が介護保険料に及ぼす影響と、マイナス改定に至った根拠と理由を都はわかりやすく都民に説明すべきであります。
 一方、改定のデータとなった国の経営実態調査は、あくまでもサンプル調査であり、現状を必ずしも十分に反映したものとはいえません。都としても、国とは別に精度の高い調査を行い、介護報酬改定の影響を正確に把握すべきであります。
 以上、二点について見解を求めます。
 次に、東京圏における交通ネットワークの整備について質問いたします。
 初めに、鉄道ネットワークの整備についてであります。
 現在、国の交通政策審議会では、次期答申に向けた議論の中で、国際競争力の強化や東京オリンピック・パラリンピックへの対応を重視し、空港アクセスの向上が大きな課題となっております。現在、都心から羽田空港へのアクセスルートは、JR東日本アクセス線や蒲蒲線建設による新空港線などが議論され、さまざまなルートでのアクセス改善が検討されております。
 しかし、多摩西部地域からのアクセスに関しては、中央線の構造やその過密なダイヤから直通列車の運行が困難とされ、都心部の空港アクセスが改善されても、多摩地域の利便性は全く改善されません。中央線の輸送力の強化には、運政審十八号答申に位置づけられている三鷹─立川駅間の複々線化の実現が前提ですが、これは最低でも十五年ほどの時間を要し、オリンピック・パラリンピックには間に合いません。
 そこで、多摩西部地区の空港アクセス改善には、新たに路線を建設する必要のない既存の貨物線を活用する方策が効果的であると考えます。
 具体的には、武蔵野南線と東海道貨物支線を活用すれば、青梅や八王子方面から立川駅、府中本町駅を通る羽田空港へのエアポートライナーを運行することが可能となります。二月十日には、この問題を都の関係副市長会で検討されたと聞いております。都としても、ぜひとも羽田空港への鉄道アクセス向上のため、この路線を検討していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、高速道路ネットワークの整備についてであります。
 いよいよ来年には圏央道が東名高速から東北道、さらには常磐道、東関道までつながり、東京圏の高速道路体系は大きく改善されます。そこで重要となってくるのが、都心部の渋滞緩和のための抜本的な料金体系の見直しであります。
 例えば、現在の料金体系のままで東名高速から東北道まで圏央道を利用した場合、首都高速の都心環状線や中央環状線を使うより時間は短縮されますが、高速料金は高くなります。これでは、三環状道路の整備効果が上がりません。都としても、国とともに圏央道の内側の高速道路料金体系を抜本的に見直し、圏央道等の環状道路の利用促進を図り、都心部の渋滞解消につなげていくべきであります。
 また、これが実現すると、圏央道の内側にある高速道路上の料金所は不要になり、渋滞の解消にも効果があります。しかし、料金所撤去に触れると必ず、高井戸付近を境に中央道と首都高に分かれ、会社が異なるため料金所撤去は難しいという議論や、現金利用車の対応が困難であるという議論が出てまいります。
 しかし、今や鉄道では私鉄と地下鉄の相互乗り入れが当たり前であり、現金利用車も、鉄道のようにSuicaやPASMOのようなデポジットカードを使えば解決可能であります。都は、国を初め関係機関に、圏央道の内側にある料金所を撤廃するよう強く働きかけていくべきであります。あわせて都の見解を求めたいと思います。
 次に、エネルギー政策について質問をいたします。
 年末に開催予定のCOP21では、気候変動対策の新たな枠組みに関する議論が行われることになっております。これにあわせて、国では、火力や原子力、再生可能エネルギーなどを二〇三〇年時点でどのように組み合わせていくのかという、いわゆるエネルギーミックスの議論が始まっています。
 一方、東京都は長期ビジョンにおいて、再生可能エネルギーを全体の二〇%程度にふやす目標を掲げております。この目標達成には、単に再生可能エネルギーをふやすだけではなく、分母となるエネルギー消費量そのものを縮減するとともに、熱エネルギーなどの新たな資源の活用が不可欠であります。その点で極めて有望なのが地中熱であります。
 この地中熱については、オフィスビルの空調での利用はもとより、熱需要の大きな特別養護老人ホーム、保育園などの福祉施設、あるいはビニールハウスにおける農業利用など、さまざまな用途での利用が期待できることから、かねてより我々は、都の重要施策に位置づけるよう求めてまいりました。
 都は、事業者に対するキャップ・アンド・トレード制度や建築物環境計画書制度、都施設の改築等に適用する省エネ・再エネ東京仕様などを通じ、地中熱の利用拡大を後押ししてきました。今後はさらに、低炭素社会実現のための効果的なエネルギー源として改めて地中熱を位置づけ、その普及に向けて積極的に取り組んでいく必要があります。都の見解を求めます。
 なお、今後さらに重要となるのが、炭素社会から水素社会への転換であります。都は、水素戦略会議において、二〇二〇年までとそれ以降を見据えた戦略や具体的な取り組みをまとめ、長期ビジョンに反映させるとともに、二〇二〇年までの継続的な取り組みに要する経費を新年度予算案に基金として計上しました。
 また、第四回定例会の我が党の主張を踏まえ、同戦略会議においては、東北等の再エネ余剰電力を活用した水素供給システムの検討を行うとしております。これは北海道、東北地方で生み出された太陽光、風力などの再生可能エネルギーによって水素を生成し、都内の電力需要に応じて燃料電池で発電する仕組みであり、水素による電力の蓄蔵ということができます。
 いずれにしても、エネルギー源としての水素には極めて大きな可能性があります。水素社会への転換に向けて、都は、化石燃料由来ではない水素の活用や安全性の観点も含め、より一層の普及啓発に努めるべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 次に、都市外交について質問いたします。
 舛添知事は、既に北京、ソウル、ベルリンなど五カ国八都市を訪問し、二〇二〇年東京大会に向けた協力の合意や、さまざまな技術協力などの成果を上げております。
 そこで、次に重要なのは、オリンピック・パラリンピックの成功のためにも、これまで停滞してきた姉妹友好都市との関係の再構築であります。
 昨年十二月の都市外交基本戦略にも述べられているとおり、世界で十一カ所にも上る東京の姉妹友好都市は、我々東京の貴重な財産であります。この関係を、より以上強固なものにすべきであります。世界各都市が抱える、より広範な課題をともに解決するため、相互交流を積極的に推進すべきであります。知事の所見を伺いたいと思います。
 また、緊迫する国際社会にあって、今最も求められているのは、国益が激しくぶつかる国家間の外交のみに頼るのではなく、都市と都市との相互理解の構築であり、人と人との対話を進めることであります。
 そして、将来のさらなる友好と交流を深めるためには、海外諸都市との、未来を支える青少年の交流を本格的に展開すべきであります。
 かつて、中国の周恩来氏は日本の明治大学に留学し、日本社会や日本人についての理解を深め、知日派として日中友好の礎を築きました。また、韓国のサムスングループ創業者の李秉喆氏も青年時代、日本の早稲田大学に学び、日本への理解を深めたといわれております。いずれも、若き日の日本での勉学が、その後、本国に帰国してからも親日派、知日派となった実例であります。
 これまで都は、アジア人材育成基金を活用し、中国、インドネシア、ベトナムなどから百名以上の留学生を継続的に首都大学東京の博士後期課程で受け入れてきました。
 そこで、今後は、新たに創設を予定している都市外交人材育成基金を活用して、この事業を拡充すべきであります。姉妹友好都市に限らず、世界のより幅の広い都市から首都大学東京、都立大学で留学生を受け入れ、息の長い都市の交流の礎を築くべきであります。知事の所見を伺います。
 次に、オリンピック追加種目と会場について質問いたします。
 昨年十二月にモナコで開催されたIOC臨時総会で、アジェンダ二〇二〇が決定されました。その結果、開催都市の組織委員会が追加種目の提案権を持つことになり、夏の大会としては東京大会が最初の適用となります。
 組織委員会は先日、その検討のため、東京二〇二〇種目検討会議を設置しました。新たな種目については、四月のIOC理事会でガイドラインともいうべき評価基準が決定され、それをもとに組織委員会がIOCに提案する追加種目を九月までに決定、そして来年八月にIOCが承認するスケジュールと聞いております。
 既に、オリンピックの競技種目入りを目指す各競技団体の期待が高まっており、また、新たな開催会場についても、都内外の自治体が強い関心を寄せております。
 特に開催会場については、東北の被災地を重視すべきであります。大会開催時には、被災から約十年となる東日本大震災の復興状況を世界に発信し、被災地の方々の励みにもなるように、被災地での開催を強く組織委員会に提案すべきであります。知事の所見を伺います。
 次に、パラリンピックについて質問をいたします。
 東京は、二回目のパラリンピックを開催する初めての都市となります。過去最高の観客動員を記録し、大いに盛り上がった二〇一二年のロンドン・パラリンピックを超える大会を目指して、福祉先進都市東京が開催するにふさわしい、見事なパラリンピックの姿を世界に提示すべきであります。
 そのためには、都民、国民のパラリンピックへの注目をより一層高め、パラリンピックを盛り上げていこうという機運を醸成していく必要があります。
 残り五年となった開催までの間に、組織委員会や区市町村などとも連携しながら、都が積極的にリードして機運盛り上げへの取り組みを推進すべきであると考えますが、見解を求めたいと思います。
 次に、障害者の方たちがスポーツを行う場の拡大について質問します。
 パラリンピックの成功には、大会に向けた機運醸成に加え、障害者がスポーツを楽しむ環境を整えていくことが重要です。
 障害者の場合、移動に困難が伴うことから、身近な地域でスポーツを行えることが大切であり、また、サポートする人の協力も欠かせません。
 ところが、身近な地域でスポーツ施設を利用しようとしても、車椅子競技は床に傷がつくとか、何かあったら困るので介助者を同伴してもらいたいといったスポーツ施設の管理運営者の理解不足によって、利用が制限されてしまうケースが少なくないと聞いております。また、障害者スポーツをサポートする人材の不足も利用促進の足かせとなっている面があります。
 こうした施設の使いやすさの確保とサポート人材の育成は極めて重要であり、その取り組みが、貴重な東京のレガシーにつながると考えます。都の見解を伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピック大会の開催を契機としたボランティアについて質問いたします。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会では、都民を初め多くの人々が、大会運営や外国人のおもてなしにボランティアとして活躍することになります。これまでも、東京マラソンや福祉の分野、さらに大震災の復興に向けてボランティア活動が活発になってまいりました。
 オリンピックに関しても、既に組織委員会と全国の大学が連携する取り組みがスタートいたしました。語学など、各大学の特色を生かしたボランティア活動の展開が期待されます。これを機に、今まで以上にボランティアを東京にしっかりと根づかせていくことが必要です。
 このため、都は長期ビジョンにおいて、東京をボランティア先進都市に成長させるため、ボランティア活動の一年間の指標である十歳以上人口における行動者率を二五%から四〇%までに引き上げる目標を示しました。この目標を達成するためには、知事の強いリーダーシップが重要であります。都民はもとより、さまざまな団体や機関への働きかけによって、ボランティアへの参加を促す仕組みを構築し、ボランティアの拡大と育成を図るべきであります。知事の所見を伺います。
 従来、ボランティアといえば、その多くは地域に拠点を置きました。そのため、二〇二〇年大会を契機として計画的にボランティアをふやし、その機会を広げていくためには、住民に身近な区市町村が、希望者と受け入れ先のニーズを結びつける役割を果たしていかねばなりません。
 今後、都として、都民や企業、NPO等の多様な主体との連携や、区市町村への支援の方策を早急に提示するとともに、東京全体のボランティア支援を担う東京ボランティア・市民活動センターの機能強化を図るべきであります。見解を伺います。
 次に、東京の文化芸術振興について質問いたします。
 先月、東京文化ビジョンの素案が発表されました。このビジョンは、今後の東京都の芸術文化振興における基本指針であり、二〇二〇年に向けて展開していく文化プログラムを初めとする芸術文化活動の進むべき方向性を示したものであります。
 我が党は従来から、二十一世紀の日本のあるべき姿は文化芸術立国であるとの理念のもと、国の文化芸術振興基本法の制定や東京都文化振興条例の策定など、さまざまな施策を展開、推進してきました。特に文化芸術振興基本法には、法制定の目的の一つである、人々がひとしく文化芸術を享受、参加できる社会的仕組みをつくるという基本理念を書き込みました。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向け、また、その先も見据えた芸術文化振興における基本指針となる東京文化ビジョンには、芸術家はもとより、子供や障害者などのあらゆる都民、そしてさらに、世界のあらゆる人々が芸術文化を通して交流を深め、国境を越えた相互理解と地球規模の連帯感を育むとの理念が掲げられており、我々も強く賛同するところであります。
 そこで、あらゆる人々が芸術文化を創造し、享受する都市東京の実現に向けた知事の決意を伺いたいと思います。
 二〇一二年ロンドン大会では、大会開催四年前から文化プログラムが実施され、合計で十八万にも及ぶさまざまなイベントに四千三百万人が参加しました。さらにフィナーレには、大会一カ月前から閉幕まで十二週間にわたるフェスティバルが開かれ、二百四カ国から二万五千人のアーティストが参加し、音楽や演劇、ダンス、美術、文学、映画、ファッションなど、多彩な文化イベントが繰り広げられました。
 東京においても、老若男女、プロもアマチュアも、障害のある方もない方も、多くの人々が参加できる大規模な文化プログラムを展開していくべきであります。
 昨年の第二回、第三回定例会代表質問で、我が党は一貫して、アーツカウンシル東京の活用と強化を主張してまいりました。民間の芸術活動を支援する専門機関であるアーツカウンシル東京を積極的に活用し、区市町村や地域の中で、子供や高齢者、障害者の方々も含め、あらゆる人々が文化芸術活動を展開できるよう、都が支援すべきであります。見解を求めます。
 次に、住宅政策について質問いたします。
 最初に、都民の居住の安定について質問します。
 第一は、居住支援協議会についてであります。この居住支援協議会は、住宅セーフティーネット法に基づき、高齢者、障害者、子育て世帯など、住宅の確保に配慮を要する方々に対して、民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するための組織であります。しかし、残念ながら協議会が設置されたのは都内でわずか三区。これまでも繰り返し述べてまいりましたが、保健福祉サービスを初め、全ての行政サービスを根底から支えるのが住宅の安定であります。
 したがって、高齢者や障害者、子育て世帯の人たちの生活を守り、地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、この居住支援協議会を全区市町村で設立する必要があります。区市町村における居住支援協議会の設立促進と活動への支援について、都の見解を求めます。
 第二に、空き家の利活用であります。
 平成二十五年住宅・土地統計調査によれば、都内の空き家は約八十二万戸に達し、そのうち使用予定がない長期不在、取り壊し予定のものに限っても約十五万戸に達しています。今後の人口減少局面を考えれば、空き家の数がさらにふえていくことも想定され、地域の環境へのマイナスの影響が心配であります。
 東京都は、まず、この空き家の実態を正確に把握すべきであります。都は、空き家の実態調査やその利活用に取り組む区市町村に対して、助成など実効性の高い支援策を講じるべきですが、見解を求めたいと思います。
 第三に、サービスつき高齢者住宅についてであります。
 東京都は、昨年十二月に策定した長期ビジョンにおいて、サービスつき高齢者向け住宅等を二〇二五年度末までに二万八千戸整備していくとしております。
 都議会公明党は、これまでも事業者の声を聞くなど、この施策に強い関心を持ち、一貫してその充実を訴えてまいりました。特に住宅政策と福祉政策の連携、質の確保、家賃の低廉化などを強く主張してまいりました。サービスつき高齢者向け住宅の今後の展開について、都の見解を求めたいと思います。
 次に、都営住宅、公社住宅の建てかえによる福祉インフラ整備について質問いたします。
 地価が高く、用地を確保することが困難な東京において、福祉インフラ整備を促進していくためには、都営住宅や公社住宅の建てかえに伴う創出用地を活用することは有効であります。
 東京都は長期ビジョンにおいて、二〇二四年度末までに福祉インフラ整備への活用が見込まれる候補地を提供するとし、また、二〇一四年度末までに公社住宅三カ所において事業者募集を行うとしてきました。東京都住宅供給公社のこの取り組みは評価するものでありますが、そこにおいては、地域の実情に応じて多様な機能を持つ施設を整備することが求められております。
 そこで、都は、今後の都営住宅や公社住宅の建てかえを今まで以上に推進し、創出用地を活用したさまざまな施設の建設にも積極的に取り組むべきであります。見解を求めたいと思います。
 最後に、住宅政策の強化に向けた知事の認識と組織のあり方について質問いたします。
 舛添知事は、このたび策定した長期ビジョンにおいて、東京に生まれ、生活し、老後を過ごしてよかったと誰もが実感できる都市を実現することが最終目標であると、その所信を明らかにしました。全くそのとおりであります。
 そして、そのためには、全ての行政サービスの基盤である住宅政策が極めて重要であります。今後の住宅政策の強化について、長期ビジョンを策定した知事の認識を伺いたいと思います。
 そしてさらに、住宅政策の強化を図るためには、都の住宅部門の強化が不可欠であります。かつて存在した住宅局は、住宅とまちづくりを連動させるとして都市整備局に吸収されました。
 しかし、昨今の高齢化や介護の問題を考えたとき、居住の安定の重要性はますます高まっております。改めて、いずれは行われるであろう局組織の再編に合わせて、新たな住宅政策を担う局体制を築くべきであると考えますが、あわせて知事の所見を伺います。
 次に、防災対策について質問します。
 首都直下地震の切迫性が指摘される東京では、オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、防災対策の強化が急務となっております。
 東京都の防災対策を進める観点からは、都市部で発生した阪神・淡路大震災では、ハード面での課題が浮き彫りになり、津波による被害が発生した東日本大震災では、ソフト面の課題が強く指摘されました。こうした大災害の歴史と課題を教訓として、東京都はさまざまな事態を想定して防災対策に取り組むべきであります。まず、都知事の防災対策に臨む決意を伺いたいと思います。
 緊急時や災害時に都民の命を守るためには、より重層的な対策が必要であります。公明党は、空からの救命救急対策として、ドクターヘリの導入を強く訴えてまいりました。それに応えて都は、東京消防庁が保有する消防ヘリに医療機器を装備し、医師が搭乗して救急現場に向かう東京版ドクターヘリを導入し、大きな役割を果たしております。
 来年度は、東京消防庁はさらにエアハイパーレスキューを創設すると発表いたしました。空からでなければ救助できない環境において、ヘリコプターの機動力を生かした部隊は大いにその力を発揮いたします。都内全域で災害時も含めたさまざまな危機に空から対応できるよう、エアハイパーレスキューの極力早期な部隊の整備と配備が求められております。見解を求めたいと思います。
 こうした空からの対応に加え、海に面している東京では、海上からの救助体制も早急に整える必要があります。昨年十一月には、医療機能を備えた病院船による海からの医療支援を想定した東京湾での実証訓練が実施されました。都は、東京DMATとともに積極的に協力し、一定の成果が得られたところであります。
 知事は、防災訓練について、季節ごとにテーマを決めて年四回にふやす方針を明らかにいたしました。今後の防災訓練では、車両などを活用した陸の応急対策だけでなく、海や空を活用した多角的な災害時の救出救助体制の構築をも図っていくべきと考えますが、見解を求めたいと思います。
 最後に、都市農業の振興について質問いたします。
 我が党は、都市農地の再評価を促し、その保全の重要性を訴えるため、都市農業振興プロジェクトチームを発足させ、JAの多くの方々と意見を重ねてまいりました。その成果をもとに、相続税制度の改善要望を初め、ハウス等の施設整備の推進など、さまざまな営農支援策に結びつけてまいりました。
 しかし、残念ながら、相続時の高額な税負担などにより、都市農地はこの十年間で約二割近くも減少し、歯どめはかかっておりません。
 本定例会の所信表明で知事が提唱された都市農業特区は、税法やさまざまな法規を横串にして、都市農地の保全に必要な特例変更を可能にするものであります。しかし、これは基本法の制定によって初めて効果を発揮するものであります。したがって、着実に都市農業振興基本法の制定を果たし、その上で、国に対し東京が望むとおりの特区を認めさせていくことが重要であります。
 したがって、知事は、都市農業特区によって実現される都市の農業モデルが東京の魅力の増進にどれほど寄与するか、都民に力強く発信していくべきであります。農業特区実現に向けた知事の決意を伺い、代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 中嶋義雄議員の代表質問にお答えいたします。
 オリンピック・パラリンピックに向けた平和への意志の発信についてでございますが、近代オリンピックの根源をひもときますと、クーベルタン男爵の、スポーツを通して心身を向上させ、平和でよりよい世界の実現に貢献するという願いがあります。そしてオリンピック憲章では、人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励すると、オリンピズムの目的をうたい上げています。
 オリンピック・パラリンピックは、まさに現実の政治を超越して、世界が人類共通の価値観を確認し共有する、四年に一度の機会といえます。その意義は、国際政治が複雑化する今日、ますます高まっていると思います。
 オリンピック憲章ではまた、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解し合うとうたっております。二〇二〇年大会に向けまして、平和で基本的な人権が尊重される社会のとうとさをさまざまな形で発信し、世界中に行き渡らせていく必要がございます。
 私自身、都市外交の場面なども通じ、こうしたオリンピズムの目標に向かって、直接オリンピックムーブメントの先頭に立っていく決意でございます。
 中長期的な財政運営の基本姿勢についてでございますが、いかなる状況であっても、東京が抱えるさまざまな課題の解決に向け、必要な施策を確実に実施し、成果に結びつけることは、都政のかじ取りを担う者としての責務であります。
 都は、今後、オリンピック・パラリンピックを史上最高の大会とすることはもとより、大会開催を起爆剤として都市基盤の充実を図るなど、ハード、ソフト両面におけるレガシーを次世代に継承し、都民生活を向上させていかなければなりません。
 また、東京の人口は、近い将来、減少に転じると予想されております。時代の変化に先んじて、人口減少社会の到来を見据えた実効性の高い少子高齢化対策や、都民の安全・安心を守る施策などを積極的に推進していく必要もございます。
 こうした果敢な事業展開を実施していくためには、それを支える安定的で強固な財政基盤が必要不可欠であります。今回、福祉先進都市実現基金など新たな基金を創設いたしましたのも、今後重点的に取り組むべき課題を着実に実施する覚悟と、その裏づけを明確に示したものであります。
 今後とも、不断の自己改革に努めつつ、基金や都債を効果的に活用するなど、政策展開の源となります安定した財政対応力の堅持に努めてまいります。
 続きまして、若者の就労支援についてでございます。
 人口減少社会を迎える中、我が国の成長を確かなものとするためには、将来を担う若者が、持てる力を存分に発揮していくことが重要であります。額に汗して積み重ねた努力が正当に報われると信じられることで、若者は夢と希望を持つことができます。
 しかし、そのときの雇用情勢によっては、力を発揮する場すら得られないこともあります。目指すべきは、希望に応じた働き方を選択できる社会であります。
 都は、不本意な働き方をしている非正規の方々に対して、正社員としての就職の推進や社内における正社員への転換促進などにより、三年間で一万五千人の正規雇用化を図ります。
 若者の安定した雇用を実現し、生活への不安をなくすことで、新しい人生への可能性が広がります。これは社会の持続的発展にもつながり、東京は間違いなく明るくなってまいります。このために、私は全力を尽くしたいと思っております。
 続きまして、姉妹友好都市との交流についてでありますが、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会を成功に導き、これを契機として、東京を世界一の都市へと発展させることは、私が目指す都政の大きな方向性であります。その実現には、都市外交の果たす役割は極めて重要であります。
 私は、これまで北京市、ソウル市やベルリン市を訪問し、姉妹友好都市との関係再構築に取り組んでまいりました。これは友好親善にとどまらず、PM二・五など大気汚染対策に関する技術交流、協力や道路陥没対策など環境や危機管理等、さまざまな分野でウイン・ウインの関係を築くことを目指すものであります。
 昨年十二月には、こうした都の都市外交の基本的な考え方と政策の方向性を示す都市外交基本戦略を策定いたしました。本戦略に基づきまして、今後も姉妹友好都市との間で、ともに学び合いながら、大都市が直面する課題解決に向けた協力や相互交流を促進し、関係強化を図ってまいります。
 昨年、私が参りました北京市、ソウル市、十八年ぶりの都知事の公式訪問でありまして、昨年段階で申しますと、モスクワにちょっと立ち寄りましたけど、モスクワには二十二年間、都知事は公式に行っておりません。それからフランスのパリ、二十四年間、昨年で行っていない。ということは、ことしになって、それぞれ二十三年間、二十五年間、交流はないということでありますので、これは私は正常ではないと考えておりますので、そのことも含めて、今後とも努力を重ねていきたいと思っております。
 都市外交人材育成基金を活用した留学生の受け入れについてでございますが、未来を担う若者が海外留学を経験することは大変有意義なものであります。
 私自身も欧州へ留学して、さまざまな言語と文化を通じて、多様な価値観を許容することを学ぶとてもよい機会となりました。二〇二〇年大会の準備に際しまして、そのときの経験が、語学も含めて大変役に立っていると確信しております。
 ご指摘のとおり、首都大学東京では、これまで基金を活用してアジアの十四の国と地域から百四十五名の留学生を受け入れ、現在九十一人が学んでおります。
 今定例会に提案しております都市外交人材育成基金では、その対象をアジアから姉妹友好都市などさまざまな都市に拡大いたします。この基金を活用し、世界諸都市から高度な人材を受け入れ、将来に向けて東京と海外の都市とを強固に結ぶ知日派人材を首都大学東京から輩出していきたいと思っております。
 次に、被災地での競技開催についてでありますが、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本人が力を合わせて東日本大震災を克服し、復興をなし遂げた姿を世界に披露する最高の舞台となります。その意味からも、被災地での競技開催は意義のあるものと認識しております。
 既に、サッカー予選については宮城県での開催を予定しております。新たな種目が追加され、被災地での開催が可能となれば、すばらしいことだと思っております。
 種目の追加につきましては、まずは、今後IOCから示される選定のプロセスや評価基準等を注視することが必要であります。こうした動向も見きわめながら、被災地での開催の可能性について、組織委員会とともに検討してまいりたいと思っております。
 被災地の復興なくしては、日本の明るい未来はあり得ない。東日本大震災からちょうど十年目となる二〇二〇年に向けまして、復興を後押しするさまざまな取り組みを行い、被災地の方々とともに大会を盛り上げていきたいと思っております。
 続きまして、ボランティアの拡大と育成についてでありますが、二〇二〇年大会の開催は、多くの都民にボランティア活動への参加の場を提供できる絶好の機会でありまして、これを契機として、東京にボランティア文化を定着させることが重要であります。
 この日曜日の東京マラソン、一万人のボランティアの方に来ていただきました。そのうちの七五%、七千五百人が新しいボランティアであります。これまで九年間やってきましたから、既に九万人のボランティアの蓄積があります。
 二〇二〇年、八万人が必要ですけど、私は、今の東京の皆さん方、また日本の皆さん方の熱意をもってすれば、必ずこの目標は到達できると確信しております。
 都民のボランティア活動への参加を促進するためには、活動を通じて社会貢献をしたいと考える都民と受け入れ側のニーズを適切に結びつける必要がございます。
 このため、ボランティアに関する情報発信を強化し、活動の活性化を図るとともに、子供からシニアまでの幅広い世代の都民がボランティア活動を身近に感じ、福祉や環境、防災等さまざまな分野での参加につながるよう、都の支援のあり方について早期に具体的な方針を示します。
 また、東京全体でボランティア機運を醸成するため、企業、NPO、地縁団体や区市町村などを広範に巻き込んだ官民連帯の推進体制を構築するとともに、全庁を挙げて取り組む体制を立ち上げます。
 今後十年間で、東京都長期ビジョンで掲げましたボランティア行動者率四〇%、これを着実に達成するため、この二つの推進体制を車の両輪として、私自身が先頭に立って取り組むことで、オリンピック・パラリンピックのレガシーとしてボランティア文化を東京に根づかせてまいりたいと思っております。
 あらゆる人々が芸術文化を創造し享受する都市東京の実現についてでございますが、芸術文化は、誰もが生まれながらの権利として享受すべきものでありまして、これからの東京を、子供や高齢者、障害者、外国人など全ての人々が芸術文化を創造し、鑑賞できる、文化の面で世界をリードする成熟した都市としていくことが必要であります。
 これを実現するため、子供を対象にした伝統芸能などの文化体験プログラムや障害者アートの展開、文化施設の共通パスやWi-Fi設備といった鑑賞環境の整備など、芸術文化を身近な存在にするための取り組みを進め、東京を多様な文化を体験できるまちにしてまいります。
 また、海外の文化機関と連携した若手芸術家の受け入れや、現代アートや舞台芸術による都市間交流の拡大など、国際的な芸術文化交流により、幅広い芸術文化を生み出す取り組みも充実させてまいります。
 今後、アーツカウンシル東京を活用し、NPOや民間企業、教育機関など、さまざまな主体と連携することで、世界中の誰もが芸術文化を享受、創造できる新たな文化都市東京を構築してまいります。
 都民生活の安定のための住宅政策についてでございますが、住宅は、生活の基盤であると同時に、都市を形づくる基本的な要素であります。都民生活の安定と東京の持続的な発展のためには、経済的活力や文化的魅力と相まって、居住の場としての東京の魅力を高めていくことが重要でございます。
 このため、良質な住宅ストックと良好な住環境の形成や、都民が適切に住宅を選択できる市場の環境整備とともに、少子高齢化の進行や単身世帯の増加など社会状況の変化を踏まえますと、都民の居住の安定を図ることが極めて重要であります。福祉などの関連分野と連携しながら、公的賃貸住宅の供給や民間賃貸住宅への円滑な入居の支援など、重層的な住宅セーフティーネット機能を構築してまいります。
 こうした考えに立ちまして住宅政策を推進し、長期ビジョンにおいて私が最終目標としております、ここで生まれ、生活し、老後を過ごせてよかったと、こう誰もが実感できる成熟都市東京を実現してまいります。
 新たな住宅政策を担う局体制についてでございますが、私の組織運営の基本は、現場をつかさどる各局が、数多くの重要課題に真正面から向き合い、責任を持って物事を前に進め、具体的な成果に結びつけていくことであります。
 知事就任後、まずは、巨大な都庁組織をスピーディーで仕事ができる組織としていくため、知事補佐官や政策企画局を設置し、ガバナンスの強化を図ってまいりました。これにより、意思形成や指揮命令が迅速化されるとともに、知事と各局が密につながり、一つのチームとして都庁全体が風通しのよい組織に変貌しつつあると思っております。
 都の住宅部門につきましては、平成十六年に都市整備局として再編し、その後も担当理事を設置するなど、必要な体制強化を図ってまいりました。現在、局内のまちづくり部門や福祉分野などの関係局ともより密接に連携し、積極的に課題解決に取り組んでおります。
 組織のあり方につきましては、直面する課題に迅速かつ的確に対応し、成果を上げられるかどうかが重要な視点でありまして、今後も事業の展開に応じて検証を行いつつ、私自身の目でしっかりと確かめた上で、必要に応じて対処してまいります。
 さまざまな事態を想定しました防災対策についてでありますが、阪神・淡路大震災では、ビルやマンションに加え高速道路までが倒壊し、市街地が大規模な火災に見舞われるなど、大地震が都市を襲う姿を目の当たりにいたしました。
 また、東日本大震災では、沿岸部のまちが巨大津波にのみ込まれ、逃げられなかった方々が犠牲となってしまいましたが、都内でも帰宅困難者が大量に発生し、混乱をいたしました。
 さらに、一昨年の伊豆大島での土砂災害では三十名を超える方々が犠牲となるなど、この東京が自然災害の脅威に常にさらされていることを改めて痛感した次第でございます。
 二〇二〇年の東京大会開催も見据え、東京を世界一安全・安心な都市にするためには、首都直下地震などの大地震に加え、台風や集中豪雨に対する対策も必要でございます。
 また、防災対策を推し進め、都民一人一人が災害から身を守るためには、行政の取り組みはもとより、都民、企業の皆さんと総力を結集して取り組む必要がございます。
 このため、昨年十二月に東京の防災プランを策定し、二〇二〇年に向けて、都民や企業の皆さんと一緒に取り組む防災の指針を示しました。
 今後は、これを絵に描いた餅に終わらせることのないよう、自助、共助の取り組みを積極的に促すとともに、都としてもハード、ソフト両面から防災対策を強力に推進してまいります。
 都市農業の振興についてでございますが、都市農業は、新鮮で安全・安心な農産物を都民に提供するだけでなく、その生産基盤である農地は、防災や環境保全など多面的機能を発揮し、都民生活に潤いと安らぎをもたらすなど、東京の貴重な財産となっております。
 しかし、都市農業は、収益性の悪化や、担い手である農業者の高齢化など、我が国の農業に共通する問題に加え、相続税を初めとする高い税負担など、大都市特有の問題も抱えております。
 このため、都は、今通常国会での都市農業振興基本法の制定を見据えつつ、国に、都市農業特区を提案してまいります。その中で、都市農地の保全や、農地の貸借促進による多様な担い手の確保、生産性の向上など、都市農業のモデルの構築を目指してまいります。
 都内では、全国で二位の生産量を誇るコマツナを初め、ブドウの高尾やキウイフルーツの東京ゴールドなど、高品質で特色ある農産物が数多く生産されています。このように、新鮮で多様な食材が提供されることが、東京ならではの魅力となっています。
 今後、区や市町とも緊密に連携を図りながら、都市農業特区を実現させ、こうした魅力を支える都市農業の一層の振興を図ってまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁いたします。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

○産業労働局長(山本隆君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、非正規労働者の正規雇用化についてでございますが、学校卒業時に正社員になる機会に恵まれなかった就職氷河期世代や若者等、不本意にも非正規雇用で働く方を支援し、正社員化を進めていくことが必要でございます。
 都は来年度、正社員としての就職を後押しするため、国の若者応援企業に対する都独自の採用奨励金を創設するとともに、非正規雇用期間が長い方を対象に、職務経験やスキルに応じたきめ細かな就業支援プログラムを提供してまいります。
 また、企業内で正規雇用への転換を促すため、国の助成金に同額を上乗せする新たな助成制度を創設いたします。さらには、職業訓練なども引き続き実施いたします。
 こうした個々のニーズに応じた多面的な支援に取り組み、安定した職につくことを希望する方の正規雇用化を実現してまいります。
 次に、創業に対する支援についてでございますが、女性や若者の創業を一層進めるためには、事業に適した創業の場を確保できるよう支援することが重要でございます。
 そのため、都は中小企業振興公社において、起業塾の受講生等に対し最適な開業場所を選定できるよう、専門家によるきめ細かいアドバイスを実施しております。
 さらに、来年度からは、創業希望者のニーズに応じた多様なインキュベーション施設の整備を促進するため、区市町村等に対して必要な経費を助成する取り組みを開始いたします。
 また、女性の創業支援に取り組む民間事業者を活用して、地域の空きオフィスや店舗とのマッチングを推進するなど、女性創業希望者の開業場所の確保を支援いたします。
 こうした取り組みによりまして、地域における創業を加速させ、経済の活性化や雇用の拡大につなげてまいります。
 最後に、事業承継への支援についてでございますが、中小企業のすぐれた技術やノウハウを次代に引き継いでいくためには、円滑な世代交代への支援が重要でございます。
 このため、都は来年度、中小企業振興公社における事業承継支援の取り組みを強化いたします。
 具体的には、公社における承継セミナーの実施回数をふやすとともに、金融機関等が開催するセミナーにも講師を派遣することで、より多くの企業に対し、事業承継への意識づけと早期の準備を促してまいります。
 また、事業承継に向けた経営の改善や組織の改革から、後継者の選定、承継後の体制の定着に至るまでを、専属のマネジャーが三年間にわたり一貫してサポートする取り組みを開始いたします。
 これらによりまして、中小企業の事業承継をめぐるさまざまな課題の解決を着実に後押ししてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 七点のご質問にお答えをいたします。
 まず、産後ケアの充実についてでありますが、都はこれまで、出産前後に家族等の援助が受けられず心身の負担感を抱える母親を対象に、妊娠中から産後まで継続的な支援を行う区市町村を支援してまいりました。
 こうした取り組みに加え、来年度からは、区市町村が、全ての子育て家庭の状況を妊娠期から把握し、継続した支援を行えるよう、相談支援を行う保健師等の配置や、育児パッケージの配布を行う、ゆりかご・とうきょう事業を開始いたします。また、宿泊やデイサービス等の産後ケアに取り組む区市町村への支援を強化いたします。
 さらに、産後ケアの取り組みを進めるため、区市町村や医療機関等における取り組み状況や支援手法の調査を行ってまいります。
 今後とも、産後ケアセンターの設置を初め、区市町村における産後ケアの取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、保育士試験についてでありますが、現在、保育士試験は、全ての都道府県が一般社団法人全国保育士養成協議会を指定試験機関に指定し、年一回、全国統一で実施していますが、都は、保育士資格取得の機会を拡大するため、これまで国に対し、試験回数をふやすよう繰り返し提案要求してまいりました。
 国は、先月、人材育成や再就職支援等を強力に進めるための保育士確保プランを策定いたしました。その中では、年二回の保育士試験の実施に向けて積極的に取り組むこととし、実施する都道府県に対しては、できる限りの支援を行う方針を打ち出しました。
 試験実施に必要な都道府県負担など詳細は未定でございますが、都は今後、国や他の自治体と連携し、年二回の試験実施に向け具体的な検討を行ってまいります。
 次に、家庭的養護の推進についてでありますが、子供は本来、家庭的な環境のもとで愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましいものでございます。
 そのため、都は、家庭的養護の取り組みを進めており、養育家庭の登録数をふやすため、制度を都民に広く周知するとともに、養育家庭に対し、児童相談所や民間団体を活用したきめ細かな支援を行ってまいりました。
 また、グループホームや養育者の家庭でのファミリーホームの設置を促進するため、開設準備経費や家賃への補助など独自の支援を行っており、来年度はファミリーホームの補助者の増配置への支援を行うとともに、児童福祉司十三名を増員し、児童相談所の体制も強化いたします。
 現在策定中の社会的養護施策推進計画では、平成四十一年度までに、社会的養護に占める家庭的養護の割合を現在の三割から六割へと引き上げる方向で検討しておりまして、今後とも家庭的養護を一層推進してまいります。
 次に、医療と介護の連携の推進についてでありますが、お話のように、地域包括ケアシステムを構築していくためには、地域の医療や介護資源の状況を踏まえながら区市町村が、その連携を一層強化していく必要がございます。
 そのため、都は、医療と介護の連携を調整する在宅療養支援窓口を設置する区市町村への支援や、連携の核となる介護支援専門員等の人材育成に取り組んでまいりました。
 また、連携に重要な役割を果たす訪問看護ステーションの拠点整備や、サービスを支える人材の育成、定着等に向けたさまざまな取り組みを展開しており、来年度は人材育成を担うステーションや事務作業を補助するクラークを雇用するステーションへの支援をさらに推進いたします。
 今後とも、こうした取り組みにより、区市町村における医療と介護の連携を積極的に推進してまいります。
 次に、介護予防を推進する人材の確保、育成についてでありますが、都は、平成二十九年度までに実施が義務づけられた新しい介護予防事業に区市町村が円滑に移行できるよう、今年度から、介護予防に関する幅広い知識と経験を有し、介護予防事業の企画立案や予防機能強化のための実践的な研修等を行う介護予防機能強化支援員を地域包括支援センター等に配置する取り組みを支援しております。
 こうした取り組みに加えまして、来年度は、区市町村において効果的な介護予防事業が推進されるよう、都の指定病院に理学療法士等の専門職アドバイザーを設置し、区市町村への助言等を行う事業を実施いたします。また、地域のリハビリテーション専門職を対象に、介護予防事業の推進に必要な知識を習得するための研修も実施し、介護予防を推進する区市町村を積極的に支援してまいります。
 次に、キャリア段位制度を活用した事業についてでありますが、今回、都が新たに創設する事業は、介護職員の育成、定着を図るため、国のキャリア段位制度を活用して、職責に応じた処遇を実現するキャリアパスの導入に取り組む介護事業所を支援するものでございます。
 そのため、事業実施に当たりましては、キャリアパスの仕組みが確実に導入されるよう、介護事業者に対して、職員の段位に応じた手当の支給や職場の人事管理、経営改善に関するセミナーの受講を義務づけております。
 今後、多くの事業者で取り組みが進むよう、全ての事業者を対象に説明会を開催し、積極的に情報提供を行うとともに、ホームページやリーフレットなどを通じて、事業の趣旨や内容をわかりやすく紹介し、都民、事業者に幅広く周知を図ってまいります。
 最後に、介護報酬改定についてでありますが、今回の改定は、国の社会保障審議会の答申に基づき、中重度の要介護者や認知症高齢者への対応のさらなる強化、介護人材確保対策の推進、サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築という基本的な考え方に基づき行われたものでございます。
 また、その改定率は、賃金や物価の状況、平成二十六年の介護事業経営実態調査における各サービスの収支状況等を踏まえて算出されたものであり、介護保険料の上昇の幅は抑制される見込みでございます。
 今後、都は、今回の改定の考え方や内容を説明会を通じて区市町村や事業者等に周知いたしますとともに、第七期の高齢者保健福祉計画策定に向けた取り組みの中で、報酬改定の影響も含め、運営状況に関する調査等を行ってまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

○都市整備局長(安井順一君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、武蔵野南線と東海道貨物支線を活用した空港アクセスについてでございます。
 羽田空港の機能強化を図る上で、空港へのアクセスを向上させていくことも重要でございます。お話の武蔵野南線などの活用については、空港への接続ルート、中間駅の有無の検討、貨物線ダイヤとの調整などの課題があることから、沿線自治体や鉄道事業者間で具体的な計画をまとめていくことが重要でございます。
 また、需要の確保や事業費、事業採算性などについても、関係者間で検討する必要がございます。
 都としては、こうした検討状況を注視してまいります。
 次に、圏央道内側における高速道路上の料金所の撤廃などについてでございますが、国は、首都圏の高速道路について、圏央道のおおむねの完成などを見据え、平成二十八年度から新たな料金体系を導入することとしており、本年一月に基本方針を公表いたしました。
 方針では、走行距離に応じた料金制度や、都心部の通過交通を環状道路に誘導する政策的な料金制度の考え方が示されております。
 また、ETCの普及促進、義務化とともに、料金体系が異なる地点における乗り継ぎを円滑にするため、まずは首都高速道路の都県境付近の本線料金所から撤廃を進めるべきとしております。
 都としては、国の動向を注視しながら、利用者が使いやすい高速道路となるよう適切に対応してまいります。
 次に、居住支援協議会についてでございます。
 高齢者、子育て世帯など住宅の確保に配慮を要する方々に対しまして、地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、区市町村が居住支援協議会を設立し、取り組むことが重要でございます。
 昨年、都は協議会を設立し、パンフレットの作成や配布、区市町村や関係団体等を対象としたセミナーの開催、都内における協議会の取り組み状況に関する情報交換などにより、区市町村協議会の設立意義への理解を深めてまいりました。
 今後は、全国の活動事例集を新たに作成し、情報提供を積極的に行うとともに、活動経費について補助を行うなど、区市町村協議会の設立を促進してまいります。
 次に、区市町村の空き家利活用などへの支援についてでございますが、空き家の活用を促進するためには、立地や所有者の意向を含めた地域の実態や特性を踏まえまして対応することが重要でございます。
 このため、都は来年度から、区市町村に対しまして、実態調査と総合的な対策を定める計画について技術的、財政的な支援を行います。
 さらに、区市町村が実施する高齢者や子育て世帯などの賃貸を目的とした改修助成に対しまして、都も財政支援を行うことにより、空き家の有効活用を促進してまいります。
 次に、サービスつき高齢者向け住宅についてでございますが、都はこれまでも、多様化する住まいニーズへの対応を図りながら、医療、介護サービスが確保された住宅や、一般住宅を併設し、多世代がともに暮らせる住宅を整備する場合に支援を行ってまいりました。
 来年度からは、地域包括ケアシステムの構築に寄与するため、地元住民が利用できる地域密着型サービス事業所の併設などへの補助を加算するとともに、既存ストックの改修による供給の促進に向けて、補助制度の拡充を図ってまいります。
 今後も、高齢者が住みなれた地域において安心して豊かな暮らしを営めるよう、福祉施策との連携などを図りながら、サービスつき高齢者向け住宅の供給を促進してまいります。
 最後に、福祉インフラ整備のための創出用地についてでございますが、都営住宅、公社住宅の建てかえにより、良質な住宅ストックを供給するとともに、住宅の建てかえの際に創出された用地を、地域福祉の充実のために活用していくことは重要でございます。
 このため、公社は、中野区広町住宅、板橋区向原住宅、文京区茗荷谷住宅の用地を社会福祉法人などに貸し付け、地元区との協議を踏まえまして、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、ショートステイ、障害者施設などを整備してまいります。
 今後とも、地域のニーズにも応えながら、多様な福祉インフラの整備に向け、都営住宅、公社住宅の建てかえに伴う創出用地を活用した取り組みを進めてまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

○環境局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、地中熱利用の普及促進についてでございますが、都はこれまで、一定規模を超える開発を行う事業者に対し、地中熱を初めとする再生可能エネルギーの導入検討を義務づけますとともに、都施設の新築、改築を行う際にも、省エネ・再エネ東京仕様に基づき、立地状況等に応じて地中熱を導入するなど、普及に取り組んでまいりました。
 地中熱のさらなる導入拡大に向けては、認知度の向上とコストの低減が課題でございます。
 このため、来年度、地質情報等をもとに、地中からとれる熱量の目安をわかりやすく示したポテンシャルマップの作成に取り組んでまいります。
 また、都の普及啓発への協力などを条件に、国と合わせて初期費用の二分の一を補助する制度を創設いたします。
 こうした取り組みを通じ、東京の特性を踏まえたエネルギー源として、地中熱の普及促進に積極的に取り組んでまいります。
 次に、水素社会実現に向けた取り組みについてでございますが、水素は、利用の段階で水しか排出しないため、化石燃料由来でない水素が普及すれば、低炭素社会の切り札となります。
 このため、戦略会議では、低炭素な水素の先導的な導入を取り組みの方向性として掲げており、地産地消の太陽光等の再エネ由来水素活用設備への補助事業を来年度早々に開始するとともに、東北などの再エネ余剰電力を活用した水素製造についても、官民連携して検討してまいります。
 また、水素の利用を進めるには、安全性や意義などに関する都民の理解を高めていくことが重要でございます。先日、都民向けのシンポジウムを開催いたしましたが、引き続き、専用ポータルサイトを開設するなど、国や九都県市、区市町村等とも連携しながら、水素への理解促進に積極的に取り組んでまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、パラリンピック大会の機運醸成についてでございますが、二〇二〇年大会に向けては、広く都民にパラリンピック大会や競技のすばらしさを伝えていく取り組みが重要でございます。
 このため、さまざまな主体と連携した取り組みを来年度から積極的に展開いたします。
 具体的には、組織委員会と連携し、多くの都民が集まる都や区市町村主催のイベントに、パラリンピック競技の体験プログラムやアスリートの講演などを提供いたします。
 また、障害の有無にかかわらず参加できるスポーツイベント、チャレスポを拡充いたします。
 さらに、パラリンピックの魅力を紹介するガイドブック、DVDの作成や、テレビなどのメディア活用による普及啓発を行ってまいります。
 こうした取り組みを通じて、二〇二〇年パラリンピック大会の成功に向けたオール東京での開催機運の盛り上げを図ってまいります。
 次に、障害者スポーツの振興についてでございますが、障害者スポーツの場の拡大には、ハード面の整備に加え、施設管理者や指導者等への理解促進が不可欠でございます。
 都は、施設管理者について、障害に対する知識不足が原因で不適切な対応を行わないよう、来年度、施設の管理運営上配慮すべき事項をマニュアルとして取りまとめ、施設管理者に対して周知するとともに、研修を実施し、障害者の施設利用に対する理解を促進してまいります。
 また、障害者スポーツ指導員に対しましては、経験不足から来る指導への不安がある場合、これを解消するため、実技指導を取り入れたフォローアップ研修等を実施し、指導者としてのスキルアップを図ってまいります。
 今後とも、障害者スポーツの環境づくりを進め、二〇二〇年大会後のレガシーにつながるよう取り組んでまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

○生活文化局長(小林清君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ボランティアセンターの機能強化についてでありますが、ボランティアへの参加機会をふやすためには、活動を希望する都民や社会貢献活動を行う企業とともに、受け入れ側となる施設やNPO等に対する支援の拡充をあわせて行う必要がございます。
 具体的には、活動する側と受け入れ先のマッチング強化や企業の取り組みへの支援、現場で調整役となる人材の育成を充実する必要があり、住民に身近な区市町村と地域のボランティアセンターとの連携促進や、活動ニーズのマッチングに取り組む中間支援組織への支援が不可欠であります。
 このため、都といたしましては、年内に連携と支援に関する指針を策定するとともに、その中核を担う東京ボランティア・市民活動センターの相談体制の充実や情報発信力の強化、企業との連携促進など、支援機能の拡充を図ってまいります。
 次に、アーツカウンシル東京を活用した都民の芸術文化活動に対する支援についてでありますが、全ての都民が芸術文化を鑑賞、創造するためには、地域での取り組みを充実させていくことが重要であります。
 このため、来年度から都民がアーティストやNPOと連携して、地域のコミュニティづくりを進める芸術文化活動の支援を新たに開始いたします。
 また、二〇二〇年東京大会の文化プログラムの先導プロジェクトとして、障害者とアーティストがともに創作を行う障害者アートプログラムを展開するとともに、障害者の創作活動を支援する助成制度につきましても新設をいたします。
 これらの施策の実現に向け、芸術文化の専門機関であるアーツカウンシル東京が、地域の活動を支えるNPOとの連携を進めてまいります。
   〔消防総監大江秀敏君登壇〕

○消防総監(大江秀敏君) エアハイパーレスキューの整備についてでありますが、当部隊は、空から迅速かつ効果的な消火、救助、救急活動を展開する専門部隊でありまして、江東と立川の二拠点に高度な救助技術や救急救命士の資格を有する部隊員と特殊な資器材を配備することとしております。平成二十七年度中の早期発隊に向けて、拠点の一つとなる江東航空センター新庁舎を、本年十一月の完成を目指し整備をしております。
 また、大量救出用ゴンドラ等の資器材の配置や部隊員に対する航空救助技術の教育訓練などの準備を着実に進めてまいります。
 今後とも、世界一安全・安心な都市の実現に向けて、陸海空が一体となった消防活動体制の充実を図ってまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

○総務局長(中西充君) 防災訓練を通じた多角的な救出救助体制の構築についてでございますが、大規模災害時に、建物倒壊等により、陸路での救出救助活動が困難な場合には、迅速に道路啓開を行いつつ、ヘリコプターや船舶等を活用することが有効でございます。
 このため、昨年策定した首都直下地震等対処要領では、全国からの応援部隊も含め、自衛隊、警察、消防等が持つ陸海空の資機材を効果的、効率的に活用するため、地域ごとに活動拠点等を示すとともに、連携内容や手順を取りまとめたところでございます。この要領に基づき、昨年の総合防災訓練では、東京消防庁のヘリコプターや自衛隊の船舶等が連携した医療救護訓練を実施し、活動内容を検証いたしました。
 今後とも、陸海空の連携を念頭に、九都県市等と協力しながら実践的な訓練を実施、検証することで、災害時に効果的な救出救助活動が展開できるよう取り組んでまいります。

○副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時二十二分休憩

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