平成二十七年東京都議会会議録第一号

平成二十七年二月十八日(水曜日)
 出席議員 百二十五名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番川松真一朗君
四番山内  晃君
五番栗山よしじ君
六番小松 大祐君
七番鈴木 章浩君
八番大津ひろ子君
九番塩村あやか君
十番宮瀬 英治君
十一番おときた駿君
十二番小松 久子君
十三番田中  健君
十四番米倉 春奈君
十五番白石たみお君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番伊藤こういち君
二十番堀  宏道君
二十一番河野ゆうき君
二十二番柴崎 幹男君
二十三番ほっち易隆君
二十四番舟坂ちかお君
二十五番清水 孝治君
二十六番島崎 義司君
二十七番石川 良一君
二十八番田中 朝子君
二十九番上田 令子君
三十番山内れい子君
三十一番中山ひろゆき君
三十二番西沢けいた君
三十三番里吉 ゆみ君
三十四番和泉なおみ君
三十五番尾崎あや子君
三十六番大松あきら君
三十七番中山 信行君
三十八番吉倉 正美君
三十九番上野 和彦君
四十番鈴木 錦治君
四十一番木村 基成君
四十二番高椙 健一君
四十三番栗山 欽行君
四十四番大場やすのぶ君
四十五番和泉 武彦君
四十六番近藤  充君
四十七番小宮あんり君
四十八番三宅 正彦君
五十番やながせ裕文君
五十一番両角みのる君
五十二番西崎 光子君
五十三番小山くにひこ君
五十四番あさの克彦君
五十五番新井ともはる君
五十六番徳留 道信君
五十七番河野ゆりえ君
五十八番小竹ひろ子君
五十九番まつば多美子君
六十番高倉 良生君
六十一番橘  正剛君
六十二番野上 純子君
六十三番谷村 孝彦君
六十四番桜井 浩之君
六十五番きたしろ勝彦君
六十六番松田やすまさ君
六十七番山崎 一輝君
六十八番神野 次郎君
六十九番菅野 弘一君
七十番北久保真道君
七十一番田中たけし君
七十二番神林  茂君
七十三番宇田川聡史君
七十四番高橋 信博君
七十五番野上ゆきえ君
七十六番中村ひろし君
七十七番島田 幸成君
七十八番今村 るか君
七十九番大西さとる君
八十番畔上三和子君
八十一番大島よしえ君
八十二番松村 友昭君
八十三番東村 邦浩君
八十四番小磯 善彦君
八十五番鈴木貫太郎君
八十六番木内 良明君
八十七番秋田 一郎君
八十八番中屋 文孝君
八十九番早坂 義弘君
九十番崎山 知尚君
九十一番鈴木 隆道君
九十二番鈴木あきまさ君
九十三番山加 朱美君
九十四番高橋かずみ君
九十五番相川  博君
九十六番山田 忠昭君
九十八番こいそ 明君
九十九番田島 和明君
百番斉藤あつし君
百一番尾崎 大介君
百二番石毛しげる君
百三番植木こうじ君
百四番かち佳代子君
百五番曽根はじめ君
百六番藤井  一君
百七番長橋 桂一君
百八番中嶋 義雄君
百九番ともとし春久君
百十番古賀 俊昭君
百十一番林田  武君
百十二番高木 けい君
百十三番村上 英子君
百十四番吉原  修君
百十五番野島 善司君
百十六番三宅 茂樹君
百十七番川井しげお君
百十八番高島なおき君
百十九番立石 晴康君
百二十番吉野 利明君
百二十一番野村 有信君
百二十二番内田  茂君
百二十三番酒井 大史君
百二十四番山下 太郎君
百二十五番清水ひで子君
百二十六番大山とも子君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 なし
 欠員
    四十九番  九十七番

 出席説明員
知事舛添 要一君
副知事安藤 立美君
副知事秋山 俊行君
副知事前田 信弘君
教育長比留間英人君
東京都技監建設局長兼務横溝 良一君
政策企画局長川澄 俊文君
総務局長中西  充君
財務局長中井 敬三君
主税局長塚田 祐次君
警視総監高綱 直良君
生活文化局長小林  清君
オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋 正宏君
都市整備局長安井 順一君
環境局長長谷川 明君
福祉保健局長梶原  洋君
産業労働局長山本  隆君
港湾局長多羅尾光睦君
会計管理局長塚本 直之君
交通局長新田 洋平君
消防総監大江 秀敏君
水道局長吉田  永君
下水道局長松田 芳和君
青少年・治安対策本部長河合  潔君
病院経営本部長醍醐 勇司君
中央卸売市場長岸本 良一君
選挙管理委員会事務局長松井多美雄君
人事委員会事務局長真田 正義君
労働委員会事務局長遠藤 雅彦君
監査事務局長石原 清次君
収用委員会事務局長目黒 克昭君
包括外部監査人佐久間清光君

二月十八日議事日程第一号
第一 第一号議案
平成二十七年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成二十七年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成二十七年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成二十七年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成二十七年度東京都母子父子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成二十七年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成二十七年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成二十七年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成二十七年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成二十七年度東京都と場会計予算
第十一 第十一号議案
平成二十七年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十二 第十二号議案
平成二十七年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十三 第十三号議案
平成二十七年度東京都都市開発資金会計予算
第十四 第十四号議案
平成二十七年度東京都用地会計予算
第十五 第十五号議案
平成二十七年度東京都公債費会計予算
第十六 第十六号議案
平成二十七年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十七 第十七号議案
平成二十七年度東京都病院会計予算
第十八 第十八号議案
平成二十七年度東京都中央卸売市場会計予算
第十九 第十九号議案
平成二十七年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十 第二十号議案
平成二十七年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成二十七年度東京都港湾事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成二十七年度東京都交通事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成二十七年度東京都高速電車事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成二十七年度東京都電気事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成二十七年度東京都水道事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成二十七年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成二十七年度東京都下水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
東京都都市外交人材育成基金条例
第二十九 第二十九号議案
東京都アジア人材育成基金条例を廃止する条例
第三十 第三十号議案
東京都行政手続条例の一部を改正する条例
第三十一 第三十一号議案
東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三十二号議案
非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十六号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都選挙管理委員の報酬及び費用弁償条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
東京都人に優しく快適な街づくり基金条例
第四十一 第四十一号議案
東京都防災街づくり基金条例
第四十二 第四十二号議案
東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
東京都収用委員会委員等の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
東京都消費生活条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
東京都芸術文化振興基金条例
第四十七 第四十七号議案
東京都教育委員会組織条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都教育委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例
第五十 第五十号議案
東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十四条の二の規定に基づく職務権限の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
東京都学校経営支援センター設置条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
東京都屋外広告物条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第五十八 第五十八号議案
東京都市計画事業足立北部舎人町付近土地区画整理事業施行規程等の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
八王子都市計画事業由木土地区画整理事業施行規程等を廃止する条例
第六十 第六十号議案
東京都建築審査会条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
東京都建築指導事務所設置条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
東京都建築安全条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十三号議案
東京都営住宅条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
東京都福祉先進都市実現基金条例
第六十五 第六十五号議案
東京都看護師等修学資金貸与条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
東京都国民健康保険調整交付金条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
東京都立ナーシングホーム条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
東京都認定こども園の認定要件に関する条例の一部を改正する条例
第六十九 第六十九号議案
東京都障害福祉サービス事業の設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
東京都立療育医療センター条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
東京都立多摩療育園条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
東京都立重症重度心身障害児者施設条例の一部を改正する条例
第七十四 第七十四号議案
プール等取締条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
東京都ふぐの取扱い規制条例の一部を改正する条例
第七十八 第七十八号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
東京都おもてなし・観光基金条例
第八十 第八十号議案
東京都森林整備加速化・林業再生基金条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
東京都立職業能力開発センター条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
東京都中央卸売市場条例の一部を改正する条例
第八十三 第八十三号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
東京都営空港条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
東京都労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十六号議案
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十七号議案
東京都水素社会・スマートエネルギー都市づくり推進基金条例
第八十八 第八十八号議案
東京都再生可能エネルギー等導入推進基金条例
第八十九 第八十九号議案
特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律関係手数料条例の一部を改正する条例
第九十 第九十号議案
土壌汚染対策法関係手数料条例の一部を改正する条例
第九十一 第九十一号議案
東京における自然の保護と回復に関する条例の一部を改正する条例
第九十二 第九十二号議案
東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第九十三 第九十三号議案
東京都駐車場条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十四号議案
東京都立公園条例の一部を改正する条例
第九十五 第九十五号議案
東京都霊園条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十六号議案
東京都葬儀所条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十七号議案
東京都貸切自動車条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十八号議案
東京都公安委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第九十九 第九十九号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第百 第百号議案
警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第百一 第百一号議案
東京都暴力団排除条例の一部を改正する条例
第百二 第百二号議案
東京消防庁の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第百三 第百三号議案
東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第百四 第百四号議案
火災予防条例の一部を改正する条例
第百五 第百五号議案
特別区の消防団員の定員、任免、給与、服務等に関する条例の一部を改正する条例
第百六 第百六号議案
都営住宅二十六H─一〇六東(江東区東砂八丁目)工事請負契約
第百七 第百七号議案
警視庁大橋庁舎(二十六)新築工事請負契約
第百八 第百八号議案
東京都写真美術館(二十六)改修工事(その二)請負契約
第百九 第百九号議案
舎人公園非常用発電設備工事その二請負契約
第百十 第百十号議案
竪川水門耐震補強工事請負契約
第百十一 第百十一号議案
包括外部監査契約の締結について
第百十二 第百十二号議案
昭島市と福生市との境界変更について
第百十三 第百十三号議案
災害廃棄物処理の事務の受託の廃止について
第百十四 第百十四号議案
平成二十七年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百十五 第百十五号議案
平成二十六年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百十六 第百十六号議案
多摩川流域下水道北多摩二号処理区の建設に要する費用の関係市の負担について
第百十七 第百十七号議案
多摩川流域下水道秋川処理区の建設に要する費用の関係市町村の負担について
第百十八 第百十八号議案
平成二十六年度東京都一般会計補正予算(第五号)
第百十九 第百十九号議案
平成二十六年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百二十 第百二十号議案
平成二十六年度東京都地方消費税清算会計補正予算(第一号)
第百二十一 第百二十一号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第百二十二 第百二十二号議案
平成二十六年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第百二十三 第百二十三号議案
東京都指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第百二十四 第百二十四号議案
東京都指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第百二十五 第百二十五号議案
東京都指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法の基準に関する条例の一部を改正する条例
第百二十六 第百二十六号議案
東京都指定障害児通所支援の事業等の人員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第百二十七 第百二十七号議案
東京都指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第百二十八 諮問第一号
地方自治法第二百六条の規定に基づく異議申立てに関する諮問について
第百二十九 諮問第二号
地方自治法第二百二十九条の規定に基づく審査請求に関する諮問について
第百三十 諮問第三号
地方自治法第二百二十九条の規定に基づく審査請求に関する諮問について

   午後一時開会・開議

○議長(高島なおき君) ただいまから平成二十七年第一回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(高島なおき君) まず、議席の変更を行います。
 議席変更の申し出がありますので、会議規則第二条第三項の規定により、お手元配布の議席変更表のとおり、議席の一部を変更いたします。
(別冊参照)

○議長(高島なおき君) 次に、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   九番   塩村あやかさん 及び
   六十六番 松田やすまさ君
を指名いたします。

○議長(高島なおき君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(新美大作君) 平成二十七年二月十日付東京都告示第百四十九号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、平成二十七年二月十日及び十七日付で、本定例会に提出するため、議案百三十件の送付がありました。
 次に、知事及び監査委員並びに各行政委員会より、平成二十七年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、包括外部監査人より、平成二十七年二月十日付で、平成二十六年度包括外部監査報告書の提出がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が三件ありました。
 内容は、東京消防庁の設置等に関する条例の一部を改正する条例の報告について、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について並びに東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、平成二十六年工事監査、平成二十六年財政援助団体等監査及び平成二十六年行政監査の結果について、それぞれ報告がありました。
 次に、包括外部監査の結果に基づき知事が講じた措置の通知内容について、提出がありました。
(別冊参照)

○議長(高島なおき君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成二十六年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(一六ページ)に掲載〕

○議長(高島なおき君) 次に、閉会中の議員の辞職について申し上げます。
 去る二月九日付をもって、台東区選出服部ゆくお君より、議員を辞職したい旨、届け出がありました。
 本件は、地方自治法第百二十六条ただし書きの規定により、議長において、同日付をもって辞職を許可いたしました。

○議長(高島なおき君) 次に、閉会中のオリンピック・パラリンピック推進対策特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 去る平成二十六年十二月二十五日付をもって、野上ゆきえさんより、また、二月十日付をもって、両角みのる君より、それぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれ同日付をもってこれを許可いたしました。
 なお、委員の欠員を補充するため、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、平成二十六年十二月二十五日付をもって石川良一君を、また、二月十日付をもって徳留道信君を指名いたしました。

○議長(高島なおき君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から三月二十七日までの三十八日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(高島なおき君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十八日間と決定いたしました。

○六十七番(山崎一輝君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 平成二十六年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。

○議長(高島なおき君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(高島なおき君) ご異議なしと認めます。よって、平成二十六年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定いたしました。
 ここで、佐久間清光包括外部監査人の出席を求めます。
〔包括外部監査人佐久間清光君入場、着席〕

○議長(高島なおき君) ただいまご出席をいただきました包括外部監査人をご紹介いたします。
 佐久間清光さんでございます。
   〔包括外部監査人挨拶〕

○議長(高島なおき君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためご出席いただき、まことにありがとうございます。

○議長(高島なおき君) この際、知事より、平成二十七年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。
 舛添要一君。
   〔知事舛添要一君登壇〕

○知事(舛添要一君) 平成二十七年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 まず、中東で起きた日本人人質殺害事件について申し上げます。
 亡くなられた湯川遥菜さん、後藤健二さんのお二人に対し、深く哀悼の意を表するとともに、ご家族の方に心からお悔やみを申し上げます。強い憤りを感じております。テロ行為は絶対に許されることではありません。同時に、都政の最高責任者として、二〇二〇年も控え、都民の生命、身体、財産を守るため、全力を挙げてテロへの備えを固める思いを強くしております。
 さて、ことしで戦後七十年を迎えますが、この七十年の歴史を私なりに振り返りながら、日本の平和と繁栄を築いた先人たちの努力に思いをはせました。
 第二次世界大戦の戦勝国によりつくられた国際秩序は、一九八九年のベルリンの壁崩壊で大きく変化いたしました。イデオロギー対立の時代が終わって米ソ中心の二極体制が崩れ、EUの誕生、中国など新興国の台頭によって、世界は多極化しております。敗戦から立ち直り、アジアの経済大国へと成長した日本は、今や国連を初め安定的な国際社会の秩序形成にも積極的に参画していくべき時代に入っていると思います。
 国際政治が複雑化する中で、先人が築き上げてきた平和を次の世代にいかに引き継ぐのか、これは現代を生きる政治家の大きな責任であると思います。そうした意味でも、寛容の精神が薄れ、極端なナショナリズムや排外主義がばっこする今日の状況に強い危惧を感じております。
 ユダヤ人を排斥したナチズムが不幸な戦争への序曲であった歴史を忘れてはなりません。それゆえ、特定の民族を侮蔑的に攻撃するヘイトスピーチを許してはならないという態度を早い時期から示し、東京だけでの対策では限界があることから、安倍総理にも直接話をいたしました。今、ヘイトスピーチを問題視する動きは、社会に広がりを見せております。
 東京都は、平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックの開催都市として大きな責任を有しております。これからも平和で基本的人権が尊重される社会を守る姿勢を貫いてまいります。
 パリ経済学校のトマ・ピケティ教授の「二十一世紀の資本」という本が世界的に論争となっております。ピケティ氏は、先般、来日もしておりましたが、その説には賛否両論があります。この本の主題ともいえる資本主義と格差の問題を考えたときに、必ず平等とは何かという問いが出てくるのであります。
 それに対する私の答えは、機会の平等を追求すべきであるというものであります。もし結果の平等を推し進めれば、モラルハザードを招き、活力が損なわれ、社会の発展は望めません。しかし、行き過ぎた自由は格差を著しく拡大し、社会階層を固定化させ、機会の平等の基盤を揺るがす危険を有しております。人々の不満がたまり、他者への寛容さも薄れ、社会に修復しがたい亀裂を生むことになるのです。
 自由と平等、この二つのバランスをとりながら、一人一人が自分の力を遺憾なく発揮し、活力に満ち、豊かで安定した営みができるようにすること、これこそが私の、政治、行政の役割について考える原則でございます。
 仕事をして安定した生活を送りながら自己実現を図る。途中で子育てや介護があっても仕事を続けられる。年を重ね、あるいは病気になっても、しっかりとした福祉、医療を受けられる。他人の人生を台なしにするような卑劣な犯罪は許さない。真面目に一生懸命生きる人が必ず報われる公正な社会を私は築いてまいりたいと思います。
 都民、国民の生活水準を全体的に押し上げ、豊かな生活を実現していくためには、それを支える新たな富をつくり出していく必要がございます。都政の力を成長戦略の実行、経済活性化にも積極的に動員してまいります。都市の再開発やインフラ整備により国際競争力も高め、必要があれば規制も緩和し、東京の可能性を最大限引き出してまいります。
 世界一の都市の姿とは、生活習慣、文化、価値観など、人間の多様性が尊重され、誰もが幸せを実感できる都市、誰もがそこに住み続けたいと心から感じることができる都市であります。
 十年先を見据えて策定した東京都長期ビジョンは、世界一の都市東京を目指す都政の大方針であります。ビジョンには、都が独自に行う先進的な政策や、経済を盛り上げる政策も数多く盛り込みました。透明の水の上に青いインクを一滴垂らすと、それが水面に大きく広がってまいります。その最初の一滴こそが東京であるべきだと思っております。我々の政策が成功すれば、それを全国で展開する。東京の経済がよくなって地方経済にも波及していく。二〇二〇年はゴールではありません。二〇二〇年を跳躍台にして、日本の未来を切り開く新しい動きを東京からつくり出してまいります。
 そのビジョンに具体的な息吹を吹き込むのが平成二十七年度予算案であります。私の政治の原点であります福祉の分野は、一兆一千億円を超えます予算を組み、予算全体に占める構成比も過去最高であります。また、二〇二〇年大会を控えた施設整備や防災性の向上のための投資的経費も一〇%以上伸ばすなど、積極果敢な予算を編成いたしました。
 幸いにして、来年度の税収は堅調と見込まれております。しかし、都の税収は、常に景気の荒波に翻弄されてまいりました。それゆえ、予算編成に当たりましては、施策の見直しによる都政改革の推進と、中長期を見据えた強固な財政基盤の構築に目を配っております。
 各局がみずから事業を見直した場合に、倍額の予算要求を認めるなど、施策の新陳代謝を促した結果、前年度の一・六倍に当たる四百十億円の財源を確保いたしました。さらに、三百三十件の新規事業も立ち上げました。今後もスクラップ・アンド・ビルドを徹底してまいります。また、福祉、防災、水素社会、文化など七つの重点分野につきましては、新たに基金を創設し、戦略的、安定的に政策を推進できる体制を整えてまいります。
 今回の税制改正で、法人事業税の暫定措置や法人住民税の国税化という不合理な措置が継続され、来年度予算では三千億円の減収という影響が出ております。この制度の撤廃をこれからも強く要求してまいります。また、法人実効税率の引き下げも予定されておりますが、代替財源の確実な確保を求めてまいります。
 かねてより申し上げておりますとおり、地方財政の財源不足や地方創生の問題を大都市対地方の対立にゆがめる考え方自体が間違っております。この問題に対処するには、本来、この国の形を根本から考え直すことが必要であると思います。
 先週末、石破茂地方創生担当大臣と会談し、東京にとっての地方創生について意見交換してまいりました。私が考えるポイントは、国と比べれば東京も地方であるんだと、しかし、我が東京は日本国の首都であります、そして、今や世界中で都市間競争が起こっている、この三点を強調してまいったわけであります。東京が世界の都市間競争に敗れれば、国全体が傾くのであります。この熾烈な競争を勝ち抜くために、東京は全力を尽くしてまいりますし、東京以外の地方にも努力していただかなければなりません。
 一方で、電力供給にせよ、食料供給にせよ、東京はほかの地方に支えられている、このことも忘れてはなりません。大都市も地方も、それぞれの力を生かして伸ばすという方向で、石破大臣とも見解が一致しておりまして、今後、東京都長期ビジョンをもとに、国が求める総合戦略の策定にも対応してまいります。東北の被災地復興にも引き続き尽力し、東京と地方がともに栄える国づくりに貢献していく、この姿勢で都政運営に臨んでまいります。
 次に、都政の主要政策について申し述べたいと思います。
 日本社会は、少子高齢化、人口減少という大きな地殻変動にさらされております。この変動に対処し、都民生活を向上させるのが福祉政策であります。世界一の福祉先進都市、この大きな目標に向かって全力で取り組んでいきたいと思います。
 東京の福祉を考える上でネックとなりますのは、土地と人材の不足であります。土地については、既に都有地を中心とした活用方策を打ち出し、昨年可決していただきました補正予算による対策も進めております。今後、新たに設置する福祉貢献インフラファンドも活用し、例えば、子育て支援施設や高齢者向け施設、賃貸住宅などを集約しました東京都版CCRCともいえる建物の整備を支援するなど、多面的に取り組んでまいります。
 介護や保育を担う福祉人材については、キャリアパスに大きな問題があると思います。現場での頑張りが将来につながり、人生設計の見通しが立つということでなければ、技術、経験の豊富な人材が離職することにもなりかねません。幾ら施設を整備しても、人材を欠いていては福祉先進都市にはなれません。そこで、東京都は独自に先進的な取り組みを展開し、職員のキャリアアップと処遇改善に取り組む事業者を支援してまいります。
 保育士については、キャリアパス制度の導入を条件に、モデルケースでは、国の処遇改善加算九千円に加えまして、都がさらに二万一千円補助することで、月額平均で三万円の給与改善につなげます。
 介護職員につきましても、国のキャリア段位制度を活用してキャリアパスの仕組みを構築し、職員の介護スキルに応じた手当を支給する事業者を支援いたします。この取り組みによりまして、段位取得者一人につき月額二万円程度の処遇改善に結びつけてまいります。
 福祉人材に関する情報を一元的に管理する人材バンクシステムも、この二年間で構築し、福祉のプロフェッショナルを質、量ともに充実させたいと思っております。
 高齢者支援では、適切な医療、介護、予防、生活支援、住まいが一体的に提供される地域包括ケアシステムを構築してまいります。また、多様なニーズに応じた施設や住まいを確保するため、二〇二五年度末までに、特別養護老人ホームを六万人分、介護老人保健施設を三万人分、認知症高齢者グループホームを二万人分、サービスつき高齢者向け住宅等を二万八千戸整備するという目標を掲げ、着実に取り組みを進めてまいります。認知症に対しては、認知症疾患医療センターの設置や支援コーディネーターの配置をさらに進めていくなど、総合的に取り組んでまいります。
 障害者の支援につきましても、三年間でグループホームを二千人分、通所施設等を四千五百人分ふやすなど、生活の基盤を着実に整備し、地域で安心して生活できる環境を整えてまいります。
 子供たちを安心して健やかに育てるための取り組みも進めてまいります。
 昨年四月現在で八千六百人いる待機児童を今後三年間でゼロにするため、保育サービスを利用する児童の数を四万人分ふやすことを打ち出し、各年度の工程表を示しております。学童クラブの登録児童数も六年間で一万二千人分ふやすなど、積極的に取り組んでまいります。
 一方で、児童虐待の相談件数が増加しております。児童相談所の体制を強化し、急激に増加している一時保護の必要に対応するため、施設の受け入れ定員もふやします。グループホームの設置も促進し、子供を守り自立を支援する社会的養護の取り組みを強化してまいります。
 先般、荒川区で、二〇二〇年に向けた子供の健全育成、地域の力、スポーツの力をテーマに都民の方々とシンポジウムを行いました。改めて思いましたのは、子供の健やかな成長のためには、地域のコミュニティを活性化すること、他者への思いやりの心を育むこと、この二つが大切だということでありました。二〇二〇年のおもてなしにもつながっていくことであります。こうした視点を都政のさまざまな政策に盛り込んでいきたいと思っております。
 なお、本定例会には、子供の声などに関して、環境確保条例の改正案を提案しております。子供が元気に遊び回る声を数値で機械的に規制するのではなく、話し合いやコミュニケーションの中で必要な対策を講じ、解決を目指す仕組みに変えてまいります。そのことで、よりよい地域、よりよい保育環境の形成にもつなげていきたいと思います。
 資源小国である日本にとって、人材こそが最も貴重な資源であります。その力を引き出し、東京を誰もが夢や希望をかなえる舞台とするため、雇用と教育、この二つに重点的に取り組んでまいります。
 家庭が暗くなる大きな原因は、家族が病気になること、そして、失業することであります。安定した仕事がなければ、将来の展望も描けません。それゆえ、非正規雇用から正規雇用への転換を図ってまいります。
 来年度から、新たに都独自の非正規雇用者への支援プログラムを実施し、また、社内での正規雇用への転換に取り組む企業に対する助成金制度も創設するなど、積極的な支援を展開いたします。非正規の方を年間五千人、三年間で一万五千人、正規雇用にすることを目指します。八年後には正規雇用を希望して求職活動を行っている約十七万人の非正規雇用者の数を半減させたいと思っております。
 これからの東京と日本の経済を発展させていく原動力は女性だと思います。女性しごと応援テラスの利用者同士が情報交換するインターネット交流サイトを立ち上げ、さらに、製造業や建設業など、女性の就業が進んでいない分野への進出も後押ししてまいります。家事援助等の生活支援サービスも活性化させるなど、総合的な取り組みで女性の活躍を応援してまいります。
 労働分野のさまざまな課題への対策をさらに進めるため、先般、塩崎恭久厚生労働大臣との間で雇用対策協定を締結、調印いたしました。教育や福祉などの現場を持つ東京都の総合力と国の機関である東京労働局のネットワークを組み合わせ、より実効性の高い取り組みにつなげていきたいと思います。
 将来を担う子供たちの教育では、国際的な感覚を肌で感じる環境を提供するため、英語しか使えない場所での生活を体験する東京型の英語村、東京グローバル・スクエアの開設に向け、検討を始めたいと思います。
 また、より多くの生徒が都立高校などで、英語以外の言語を学べる機会をふやすため、外国語科目の授業を拡大いたします。この四月には、都立国際高校のバカロレアコースに第一期生が入学いたします。グローバル人材の育成をさらに加速させてまいります。
 なお、法律の改正により、来年度からは、知事が総合教育会議を招集し、東京都の教育の根本方針となる総合的な大綱を策定することとなっております。
 私は、例えば、高校中退の問題などは、先ほどの雇用の問題にもつながる大きな課題だと思っております。知事と教育委員会がさらに力を合わせ、子供の可能性を伸ばし、引き出してまいります。
 都民生活を向上させる基盤が安全・安心であります。都知事として、首都、そして都民の安全・安心を最優先に政策を実行してまいります。
 ことしは、阪神・淡路大震災から二十年になります。その後も、東日本大震災を初め、数々の震災が発生いたしました。危機感を持ちながらたゆまぬ努力を重ねる、その裏づけとして、今年度の最終補正予算案で防災街づくり基金を新設し、一千億円を計上いたしました。
 防災の取り組みは、都民の皆様の理解なくしては進みません。来年度予算にも緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化や道路の無電柱化、木密地域の不燃化特区推進の予算を計上しております。これを進めるためには、住民の方々の理解や防災意識の向上、主体的な取り組みが必要不可欠であります。
 防災訓練も、東京都が区市町村とともに実施する年四回の住民参加型訓練に加え、町会、自治会などの訓練を支援し、十年間で延べ二千万人の参加を目指します。
 各家庭には、九月一日の防災の日を目途に、家庭の防災指針となる防災ブックも配布し、自助、共助を高める取り組みに全力を挙げてまいります。
 行政が担う公助の取り組みも充実させてまいります。高層住宅や多摩などの山間部、島しょ地域での救出、消火活動を機動的に展開すべく、空からの救助部隊、エアハイパーレスキューを創設いたします。東京港内の船舶災害への対応力も強化するため、タグボート型消防艇の国内初の配備に向け、設計に着手いたします。近年多発する局地的な集中豪雨への対応では、地下調節池や下水道幹線、ポンプ所の整備など、ふだん目に見えないところでの対策もしっかりと進めてまいります。
 東京は、治安上の危機が常に新たな形で発生する最前線ともいえます。都民、国民の生命、身体、財産を守るため、サイバーテロも含めたテロ対策を徹底的に強化してまいります。二〇二〇年大会開催時のセキュリティーは極めて重要な課題であります。テロへの対処を重視して、都の国民保護計画の見直しを進めており、今年度内に計画を変更したいと思います。
 さらに、レガシー委員会のもとで、セキュリティーに関する具体的な検討に着手しております。大会組織委員会や政府と緊密に連携し、民間とも協力しながら、自然災害も含めて、リスク対応に万全を期していく考えであります。
 世界一安全な都市を目指す東京にとって、およそいかなる犯罪も許されませんが、中でもシンボリックなものが、高齢者をだます振り込め詐欺などの特殊詐欺と危険ドラッグであります。特殊詐欺と危険ドラッグを東京から撲滅する、そういう強い意志で対策を講じてまいります。特殊詐欺の検挙対策を強化し、被害防止に向け、子や孫の世代をターゲットにした注意喚起も集中的に行ってまいります。危険ドラッグに対しても、知事指定薬物の指定にかかる期間を短縮し、鑑定職員や分析機器を増強することで捜査効率も高め、徹底的な撲滅作戦を展開いたします。
 悪質、巧妙な手口の消費者被害も後を絶ちません。学生や若者を狙った被害や、複数の事業者が関与する劇場型勧誘といった新たな手口も出てきております。現行法のすき間に当たる事例でありまして、本定例会に消費生活条例の改正案を提案しております。条例の規制対象となる取引類型の拡大や立入調査権限の強化を図っていきたいと思います。
 感染症対策につきましては、二〇二〇年大会の準備を進める上で大きな柱の一つと捉えております。エボラ出血熱への対応では、指定医療機関相互の情報共有や、医療従事者などの感染リスクを減らす新たな装備の導入、訓練もさらに積み重ねるなど、対応力の強化を図ってまいります。
 デング熱も蚊の発生を抑止し、検査、医療体制を整備するほか、医学総合研究所では、新しいワクチンの開発に乗り出したいと思います。新たな感染症の発生にも目を配りながら、対策を着実に進めてまいります。
 今、日本経済にとって最も必要なものは、確固たる成長戦略であります。よい政策で景気を上向かせ、日本経済を成長軌道に乗せる、そこから生まれた富が政策のさらなる充実につながり、都民、国民の生活を豊かにする。政策と経済のこのような好循環を実現したいと思います。
 グローバル経済の時代にありましては、付加価値の高い分野への集中的な取り組みが必要であります。現在、東京を国際金融センターへとよみがえらせる施策を進めております。首都大学東京のビジネススクールに高度金融専門人材の養成講座を開設する準備を行ってまいります。国際金融会議の開催、誘致に向けても取り組むことで、金融分野に欠かせない人材、情報の集積を図っていきたいと思います。
 創薬を初めとするライフサイエンス産業も、今後の国際経済の中で成長が見込まれ、都市への集積が力を発揮する分野であります。日本橋では、産学公の連携によるビジネス交流拠点の形成に向けて動き始めております。都としても、この動きを後押ししてまいります。
 ライフサイエンス分野は、東京の中小企業にとっても大きなチャンスであります。先日、八王子にあります中小企業を訪れ、そこが開発し、ベンチャー技術大賞の特別賞を受けた介護予防のトレーニング機器を私自身が体験してまいりました。この会社では、そのほかに前立腺がんを診断する装置や試薬の開発にもチャレンジしておりました。
 こうしたすぐれた企業をこれからもより多く輩出していくため、ライフサイエンス系のベンチャー企業に対して、創業、特許出願、販路開拓などを新たに支援していきたいと思います。
 まさに東京の中小企業が持つ技術は、未来への大きな可能性を秘めているのであります。今後ロボットや医療機器などの成長が見込める分野について、中小企業の参入を戦略的に支援していくことで、豊かな生活に資する製品の開発にもつなげてまいります。
 また、二〇二〇年には、東京と日本に国内外の注目が集まります。東京はもちろん、全国の中小企業が持てる力を存分に発揮できるよう、二〇二〇年大会に関する発注情報などを一元的にインターネットで提供し、受注機会の拡大を図ってまいります。
 さらに、成長著しいアジアの旺盛な需要を取り込むため、東南アジアのハブともいえるタイのバンコクに中小企業振興公社の現地拠点を開設いたします。都立産業技術研究センターの現地拠点とも連携しながら、技術、経営の両面から海外への販路開拓を後押ししてまいります。
 東京の発展を加速し、国際競争力を高めていくため、国家戦略特区というツールを最大限活用してまいります。十地区の国際的ビジネス拠点を整備するプロジェクトでは、昨年の日比谷に続きまして、竹芝地区や虎ノ門四丁目地区の都市再生も動き出します。スピーディーな事業展開を後押しすることで、魅力的なビジネス環境の整備と都市の活性化を図ってまいります。
 さらに、来月七日には、中央環状品川線が開通し、三環状道路の最も内側の輪が初めて完成いたします。羽田空港や臨海部へのアクセス向上、都心の渋滞緩和、大規模災害発生時における物資輸送ルートの強化など、その波及効果ははかり知れないと思います。
 今後も、外環道を初め、都市活動を支える道路ネットワークの強化に取り組んでまいります。
 東京の発展に欠かすことのできない羽田空港の機能強化につきましては、昨年、国から都心上空を飛行する案が示されました。二〇二〇年大会に向けた利用者の増加や、その後の航空需要に応えるためには、羽田空港の容量拡大が不可欠でありまして、何とか実現したいと思います。
 先般、国に対しまして、安全性や騒音防止措置などについて住民の方への丁寧な説明を行い、地元の懸念にしっかり対応するよう要請をいたしました。都は、地元の理解が深まり、機能強化に関する協議が円滑に進むよう、積極的に協力してまいります。
 公園も都市の重要なインフラであります。私がこれまで申し上げてきました公園への保育所整備につきましては、先般、政府の国家戦略特区の諮問会議で、前向きに検討するという方向性が示されました。こうした動きは評価できますが、まだ十分ではありません。さらなる多面的な活用を図るべきだと思います。貴重な緑を守ることはもちろん、保育などの福祉施設、防災用の備蓄倉庫、にぎわいの創出など、現代の都市生活に見合った多彩な機能を持つ公園づくりにチャレンジしてまいります。
 先ほどの中央環状線は、計画から完成まで約五十年、虎ノ門周辺の環状二号線には約七十年の歳月を要しました。都市づくりは、相当長期的な時間軸を持って取り組む必要があります。
 それゆえ、長期ビジョンという都政の大方針のもと、さらにその先の二〇四〇年代を見据えた都市像を、都市づくりのグランドデザインとして取りまとめてまいります。少子高齢化、人口減少や技術の進歩など、さまざまな社会の変化を視野に入れて検討いたします。グランドデザインという名にふさわしく、行政の縦割りを超えた総合的な見地から、しっかり時間をかけ、東京のまちづくりについて骨太の議論を行ってまいります。
 首都東京を省エネルギーで環境に優しいスマートエネルギー都市にするため、力を尽くしてまいります。
 とりわけ、資源小国日本が発展していくために期待が大きいのが、東京都が国に先駆けて取り組んできた水素社会の実現であります。今回の予算案にも、先進的で意欲的な施策を盛り込んでおります。
 例えば、燃料電池バスの導入を加速するため、事業者に対して購入費用の補助を行います。国の補助と合わせることで、通常のバスと同程度の金額で購入できるようにしました。二〇二〇年までに百台以上の導入を目指します。
 災害時の非常用電源としての活用も期待できると思います。燃料電池車の購入や水素ステーションの設置も力強く支援してまいります。さらに、新たな基金を創設することで、水素社会実現に向けた強い意欲を示すと同時に、継続的な取り組みを担保していきたいと思います。
 スマートエネルギー化や再生可能エネルギーの拡大も進めます。コージェネレーションシステムを活用し、街区全体でエネルギーの効率化や防災力の強化を図る取り組みを新たに支援してまいります。
 また、省エネ性能を高める住宅のリフォームと、それとあわせて行う太陽光発電の導入をともに支援してまいります。さらに、地中と地上の温度差を熱源として、ビルの冷暖房に活用する地中熱利用の拡大にも取り組んでまいります。
 さて、二〇二〇年まであと五年となりました。間もなく大会開催基本計画がIOCとIPCに提出されます。いよいよ準備作業が本格化いたします。私が直轄するレガシー委員会でしっかりと進行管理し、総力を挙げて取り組んでまいります。
 都が新規に整備する恒久施設につきましては、競技会場整備計画の見直し結果に基づき、有明アリーナなど、既に今年度基本設計に入っている三つの施設に加え、来年度は、残りの三施設についても基本設計に入ります。引き続き無駄は排し、整備費の縮減に努めてまいります。
 同時に、競技施設は、大会のレガシーとして都民の新たな財産となるものであります。後利用を十分考え、都民に親しまれる施設となるよう、民間の知恵も取り入れ、整備を進めてまいります。
 先ほど申し述べましたセキュリティー対策と並んで重要なのが大会期間中の観客や関係者の輸送の問題、競技施設やインフラ工事期間中における交通混雑の問題であります。こうした問題についても、都民生活への影響に十分配慮しながら、早目の準備を行ってまいります。
 競技会場周辺や主要な観光地の自転車推奨ルートの整備も進めていきます。国や区市などと連携して四月に計画を策定することで取り組みを加速し、対象エリアも、順次、都内全域へと展開してまいります。さらに、シェアサイクルにつきましては、都と千代田、中央、港、江東の四区で広域利用の推進に向けました基本協定を結ぶ運びとなりました。
 今後も、区市町村の取り組みを力強く後押しし、さらなる展開へとつなげてまいります。
 また、地域のスポーツ振興や国際交流など、大会後のレガシーにつなげていくため、区市町村が独自に行う事前キャンプの誘致や、二〇二〇年大会を盛り上げる取り組みを支援していきたいと思っております。
 昨日、元ロンドン大会組織委員会CEOのポール・ダイトン卿が都庁にお越しになりました。十月末にロンドンでお会いして以来の再会であります。ダイトン卿は、ロンドン大会の最も重要なレガシーの一つがパラリンピックの成功だとおっしゃっておりました。
 まさに、二〇一二年のロンドン・パラリンピックでは、国民全体が一つとなって大いに盛り上がり成功をおさめました。二〇二〇年の東京パラリンピックを、ロンドンを超えるすばらしい大会にしていくため、全力を挙げて取り組んでまいります。
 区部に続きまして、多摩の障害者スポーツセンターの改修にも来年度着手し、二〇一九年度の完成を目指します。競技体験プログラムなど、パラリンピックに向けた普及啓発や心のバリアフリーに力を入れ、パラリンピックを成功させるんだと、そういう機運を高めていきたいと思っております。さらに、オリンピック・パラリンピック準備局にパラリンピック準備課と障害者スポーツ課を新たに設置し、体制も強化いたします。
 文化の面でも史上最高のオリンピック・パラリンピックにしてまいります。このたび、二〇二〇年大会に向けました文化プログラムの先導的な役割を果たし、都の芸術文化振興の基本指針となる東京文化ビジョンの素案を策定いたしました。
 世界クラスの都市型総合芸術フェスティバル、東京芸術祭や障害者アートプログラム、外国人、子供向けの伝統文化体験など、これまでにない多彩なプロジェクトを展開いたします。また、上野、池袋、六本木といった文化拠点の魅力向上など、都市の成長、発展の柱として、芸術文化を位置づけてまいります。
 都議会の皆様との議論を踏まえ、年度内に最終的な取りまとめを行い、芸術文化面での都市戦略となる、このビジョンを世界に発信してまいります。
 昨年末、東京都の都市外交の基本的な考え方と政策の方向性を示す都市外交基本戦略を策定いたしました。東京が抱える都市の課題を解決し、都民生活を豊かにするには、同じ課題を抱える海外都市との協力、交流を通じ、その知恵も取り込んでいくことが必要であります。
 さらに、オリンピック・パラリンピック大会を成功させるには、海外都市との友好関係を深め、新たな関係も築いていかなければなりません。今月三日には、朴元淳ソウル特別市長が東京を訪れ、二都市間の関係強化に関する共同コミュニケを発表いたしました。早速、道路陥没に関する技術協力を通じ、実務的な交流を加速させたいと思います。
 また、百名近い在京の各国大使や諸外国、地域の代表との親交を深める意見交換会を、先月、江戸東京博物館で開催し、江戸文化にも触れていただきました。世界とのつながりを強化し、東京をグローバル都市へと進化させてまいります。
 そのためにも、東京の魅力を世界にアピールし、新たな魅力を開拓していきたいと思います。
 東京のウオーターフロントのすばらしさというのは、海外では残念ながら余り知られておりません。臨海部には、二〇二〇年大会の競技会場もたくさんできます。来年度、まずは羽田を発着点とした水上ルートを設定するための調査を行い、さらに今後、いろいろなルートの可能性を検討していきたいと思っております。また、現在の「新東京丸」は老朽化が著しいことから、新たな視察船の建造にも着手いたします。
 浜離宮恩賜庭園では、近代日本最初の迎賓施設あった延遼館を復元したいと思います。海外からお客様への和のおもてなしに活用するだけでなく、延遼館の歴史や当時の貴重な文書等を展示するなど、訪れた方々が東京の歴史に触れられるような工夫もしてまいります。
 昨年、日本を訪れた外国人旅行者は一千三百万人を突破し、過去最高を記録いたしました。都は、東京を訪れる外国人旅行者を二〇二四年までに年間一千八百万人とする大きな目標を掲げております。この達成のため、二〇二〇年大会を機に、東京の魅力を強く印象づける東京ブランドを確立してまいります。
 今年度末までにブランディング戦略を策定し、来年度はロゴやキャッチコピーの作成に取り組んでいきます。メディアも活用しながら、世界へ強力に発信してまいります。
 来年度から、ボランティアの方が外国人旅行者に声をかけ外国語で案内する街なか観光案内を、まず新宿と上野で開始いたします。また、新たに創設する基金を活用し、区市町村や民間事業者とも連携しながら、多言語対応や無料Wi-Fiなど、外国人旅行者の移動、滞在を支える基盤を都内全域で整備してまいります。広域の観光ルート作成や全国物産展の開催など、日本全体での旅行者誘致も、さらに進めてまいります。
 受動喫煙防止対策につきましては、来年度から新虎通りへの喫煙ボックスの設置や、飲食店における対策の実施状況と効果などを調べる実態調査に取り組みます。
 また、外国人旅行者が快適にホテルや飲食店を利用できるよう、分煙化のモデル事業にも取り組んでまいります。さまざまな立場の方の意見を踏まえ、対策を着実に進めてまいります。
 続きまして、多摩・島しょ地域の振興について申し上げます。
 私は、多摩地域の発展は、東京を世界一の都市に押し上げるために必要不可欠だという姿勢で都政に臨んでおります。
 知事に就任して最初に訪れた現場も多摩地域でありました。昨年、圏央道を介して、関越道、中央道、東名高速が直接結ばれ、首都圏における多摩の位置づけは格段に向上いたしました。多摩のさらなる発展のためにも、府中所沢鎌倉街道線を初め、南北を結ぶ道路のほか、東西を結ぶ新青梅街道の整備も進めるなど、道路ネットワークの一層の強化を図ってまいります。
 地域の実情に即した雇用政策にも取り組んでまいります。しごとセンター多摩を初めとする雇用関係の施設を再編し、新たに多摩地域における雇用就業支援拠点を整備するため、基本設計に着手いたします。また、多くの大学や中小企業が立地している特性を生かして、学生と経営者が交流する場を提供し、地元企業への就職も促してまいります。
 世界有数の大都市にもかかわらず、多様な農産物が生産され、新鮮な食材が提供されることが東京ならではの魅力であります。オリンピック・パラリンピックはこうした魅力を国内外に発信するチャンスだと思います。
 都は、大消費地を抱えるという特性を生かしながら、農業経営を支援してまいります。付加価値の高い農産物を生産することで、市場競争力を高め、収益性の向上につなげていきたいと思います。
 これに加えまして、国家戦略特区の区域を、区部、多摩地域の都市農業が盛んな地域にも拡大し、その生産基盤である農地の保全と流動化を進めるなど、都市農業の一層の振興を図ってまいります。国家戦略特区の担当でもある石破大臣にもその重要性について直接話をしてまいりました。
 さらに、青梅畜産センターの改修に着手し、東北地方の畜産農家の協力も得て、トウキョウX豚などブランド畜産品の大幅な生産拡大を図ってまいります。
 今月九日、高島なおき議長を初め、都議会の方々とともに小笠原を訪ね、島民の皆様の声を直接伺い、その深刻さがひしひしと伝わってまいりました。
 都は既に、中国漁船が違法操業をしていた海域を中心に、漁業調査指導船による漁場への影響調査を行っております。伊豆諸島を管轄する漁業調査指導船「やしお」の更新を機に、小笠原海域まで航行可能で、最新の調査、監視機器も備えた船舶を建造して、海上監視活動を一層強化いたします。政府と連携し、今後もしっかりと対策をとってまいります。
 島しょ地域の観光振興にも力を入れてまいります。昨年、大島、三宅島、御蔵島を訪ねましたが、島の自然に圧倒される思いがいたしました。海外から多くの人が訪れる二〇二〇年を見据えて、客船ターミナルや空港に無料Wi-Fiや多言語案内板を整備するなど、外国人旅行者の受け入れ環境を充実させてまいります。
 また、大規模な土砂災害に見舞われた大島につきましては、土砂災害警戒区域等の指定を来年度中に完了させるなど、防災性向上に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。
 さて、英国政府の要請により、来日が予定されておりますケンブリッジ公爵殿下を来週二十六日におもてなしすることになりました。大変名誉なことであります。初来日される殿下が伝統と革新が共存するこの都市の魅力を満喫され、東京と日本にすばらしい印象を残していただけるよう、万全の準備を尽くしてまいります。
 都民を代表して、都議会の皆様とともに、歓迎の気持ちをしっかりとお伝えしてまいります。同時に、ロンドン大会を大成功させた英国を代表する王室の皆様から、東京大会へのご支援を賜りたいと思っております。
 これまで、私の政治方針である長期ビジョンと平成二十七年度予算案に盛り込みました政策について申し述べてまいりました。世界一の都市東京の実現は決して楽な道ではないと思います。都議会の皆様と現実に立脚した質の高い議論を交わしながら、ともに困難を乗り越えてまいりたいと思います。就任一年を迎えた今、その決意を新たにしております。皆様のお力添えを改めてお願い申し上げます。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものも含め、予算案三十件、条例案八十五件など、合わせて百三十件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 最後に申し上げます。
 都議会の皆様と議論を重ね、練り上げました政策も、実際に前に進めるには、都民の皆様の協力が不可欠だと思っております。
 関東大震災が起きたときと昭和の初期、二度にわたりまして東京市長を務めた永田秀次郎が、震災からの復興をなし遂げた昭和五年十月一日の自治記念日に、当時二百三十万の東京市民に向けて出した「帝都市民諸君に告ぐ」という小冊子があります。
 その結語には次のような一節があります。東京市を救うものは東京市民である。東京市政の利害得失をまともに受けるものもまた二百三十万市民である。まさに民主主義の根本をあらわした箴言だと思います。一千三百万都民にとって、東京の未来が大いなる関心事であってほしいと願うのであります。
 そして、東京の未来は日本の未来に直結しております。都政に対する都民の皆様の協力を切に願い、施政方針を締めくくりたいと思います。
 ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)

○議長(高島なおき君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(高島なおき君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。
 警視総監高綱直良君。
   〔警視総監高綱直良君登壇〕

○警視総監(高綱直良君) 都内の治安状況についてご報告をいたします。
 警視庁では、昨年中、最重要課題と位置づけております特殊詐欺対策や危険ドラッグ総合対策などに加え、国賓アメリカ合衆国オバマ大統領来日に伴う警衛警護警備や衆議院議員総選挙に伴う違反取り締まりなど、さまざまな治安課題に取り組んでまいりました。
 この間、東京都を初め、東京都議会、都民の皆様方のご協力をいただきながら、おおむね首都東京の安全・安心を守ることができたものと考えております。
 以下、その状況と対策についてご報告を申し上げます。
 第一は、犯罪抑止総合対策の推進状況についてであります。
 昨年の都内における刑法犯認知件数は十六万百二十件で、本対策を開始いたしました平成十五年から十二年連続で減少し、戦後最悪を記録した平成十四年と比べますと、およそ半減するまでに至っております。
 以下、主な対策の推進状況等について、五点申し上げます。
 その一は、重要特異事件の検挙状況についてであります。
 昨年は、特別捜査本部を開設した重要特異事件を六事件解決するとともに、社会的反響の大きい事件として、アンネ・フランク関連の図書を狙った連続器物損壊事件や、多摩地域における連続放火事件などを解決いたしました。
 しかしながら、上祖師谷三丁目一家四人強盗殺人事件など、これらは、いまだ解決に至っていないことから、引き続き強力に捜査を尽くしてまいります。
 その二は、特殊詐欺対策の推進状況についてであります。
 昨年の都内における特殊詐欺の認知件数、発生件数は二千三百十一件、被害額、だまし取られたお金の額は総額で約八十億円でありまして、一昨年に比べて、認知件数で三百五件、率にして一一・七%減少をいたしました。被害額も約七億六千八百万円、率にして八・八%、こちらも減少はいたしております。まさに、官民挙げた対策の効果が一定程度認められたところでありますが、全国的には被害が増加をするなど、依然として大変厳しい状況が続いているところであります。
 こうした中、当庁では各種検挙対策のほか、特殊詐欺根絶アクションプログラム・東京など、官民一体となった被害防止対策を推進しているところであります。
 今後も、関係機関と連携をし、高齢者への注意喚起等の被害防止対策やアジト摘発等の犯行グループ壊滅に向けた検挙対策など、特殊詐欺の根絶に向けた諸対策を強力に推進してまいります。
 その三は、犯罪の起きにくい社会づくりの推進状況についてであります。
 当庁では、自治体との協働による安全・安心まちづくりを推進しており、昨年末現在で五十四の区市町村と覚書を締結いたしております。
 今後も、規範意識の向上と地域社会のきずなの再生をさらに進めるべく、街頭防犯カメラの設置を初めとした防犯環境の整備促進等を推進してまいります。
 その四は、盛り場総合対策の推進状況についてであります。
 当庁では、盛り場の環境浄化を図るため、新宿歌舞伎町、池袋、渋谷、そして六本木を初めとした盛り場におきまして、悪質な客引き等違法行為の取り締まりや、官民が連携をした防犯パトロールなどを推進するとともに、昨年末には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えて、盛り場総合対策の推進体制を強化いたしたところであります。
 今後も、盛り場環境のさらなる浄化に向けた取り組みを推進してまいります。
 その五は、少年非行防止、保護総合対策の推進状況についてであります。
 昨年、ひったくりなどの街頭犯罪の被疑者に占める少年の割合は約四割に上るなど、少年が犯罪に関与する割合は依然として高いことから、当庁では引き続き、少年警察ボランティア等と連携をして、非行少年を生まない社会づくりを推進してまいります。
 また、近年の少年を取り巻く社会環境は、スマートフォンの急速な普及により、コミュニティサイト等の利用に起因する少年の被害が増加するなど、まことに憂慮すべき状況にございます。
 当庁では、携帯電話事業者に対する働きかけや、少年に対するいわゆるサイバー補導の実施など、インターネット利用に起因する少年の非行防止等に向けた取り組みをより一層推進をしてまいります。
 大きな第二は、人身安全関連事案総合対策の推進状況についてであります。
 昨年、当庁では、児童、高齢者、障害者に対するいわゆる虐待事案や特異な行方不明事案につきましても、重大事案に発展するおそれが極めて高いということから、これらをもストーカー、DV事案とあわせて、人身安全関連事案と位置づけて、体制の強化を図るなど、迅速かつ組織的な対応に努めてまいりました。
 昨年は、ストーカー、DV事案に係る相談件数は、一昨年、その前年に比べまして約一・五倍となりましたほか、検挙した件数につきましても、ストーカー事案関係は約三・三倍、DV事案関係につきましては約二・八倍となるなど、事案対応、事件化が大幅に増加をいたしたところであります。今後も、関係機関と連携をして、相談者等の安全確保こそを最優先とした適切な事態対処に全力を傾注してまいります。
 大きな第三は、危険ドラッグ総合対策を初めとする総合的な組織犯罪対策の推進状況についてでございます。
 その一は、薬物、銃器対策の推進状況についてであります。
 薬物情勢につきましては、近年、相当量の違法薬物が都内に流通している状況がうかがわれる中、昨年、当庁では薬物事犯被疑者を一千八百八十二人検挙いたしますとともに、違法薬物約八十一キログラムを押収いたしております。
 特に危険ドラッグにつきましては、その使用に起因する事件、事故が全国各地で頻発するなど、まさに深刻な社会問題となっておりますことから、当庁では、七月に総合対策推進本部を設置して、各種法令を積極的に適用した取り締まりや繁華街における撲滅キャンペーンなどを実施してまいりました。その結果、昨年七月には都内で六十八ございました危険ドラッグの販売店舗を、ことしの一月現在で八店舗まで減少させております。
 さらに、東京都薬物の濫用防止に関する条例の改正によりまして、本年一月から私ども警察職員に付与されました危険ドラッグ販売店舗等に対する立入調査権、これを積極的に活用するなど、引き続き危険ドラッグの撲滅を図ってまいります。
 次に、銃器情勢でありますが、昨年は四件の拳銃発砲事案が発生をいたしましたほか、先月も住宅街におきまして同種の事案が発生するなど、銃器事犯は依然として都民生活の安全・安心を脅かすものになっております。
 今後も、薬物、そして、銃器事犯の根絶に向けた検挙対策や広報啓発活動などを強力に推進いたしてまいります。
 その二は、暴力団総合対策の推進状況についてであります。
 近年、暴力団は、先ほど申し上げましたような特殊詐欺、あるいは公的給付金の不正受給等を敢行するなど、社会情勢の変化に応じた資金獲得活動を活発に行っておりまして、昨年、当庁では暴力団員やその共生者等を四千九百二十三人検挙いたしました。
 今後も、暴力団の弱体化、そして壊滅に向けた取り締まりを徹底するとともに、治安対策上、看過できない、見逃すことのできない存在となっております、いわゆる準暴力団につきましても取り締まり等を強力に推進してまいります。
 その三は、国際組織犯罪総合対策の推進状況についてであります。
 近年の外国人犯罪情勢は、偽装結婚などによる偽装滞在者の増加への懸念や、国際犯罪組織による強盗などの凶悪犯罪等の頻発が、依然として治安に対する重大な脅威となっております。
 こうした中、昨年、当庁では外国人犯罪者五千四百八人を検挙いたしており、今後も外国人犯罪の取り締まり、犯罪インフラの解体などを推進してまいります。
 大きな第四は、重大交通事故防止対策の推進状況についてであります。
 昨年は、各種交通事故防止対策のほか、重大事故に直結をする飲酒運転等の悪質かつ危険な交通違反の取り締まりを重点的に推進した結果、交通事故の発生件数、そして負傷者数、交通事故でけがをされた方の数はいずれも一昨年を下回り、これは十四年連続の減少となりましたものの、交通事故の死者数につきましては、亡くなられた方の数につきましては、百七十二人となりまして、まことに残念ながら、一昨年を上回る結果となっております。
 特に、下校途中の小学生の列に軽トラックが突っ込み、三人のお子さんが死傷した痛ましい事故を初め、子供さんや高齢歩行者が犠牲となる交通事故が多発をいたしましたことから、通学路、そして横断歩道を初めとする道路交通環境の整備等を強力に推進しているところであります。
 本年は、第九次東京都交通安全計画におきまして示されております、年間の交通事故死者数を百五十人未満に抑止する、その目標の最終年でありますことから、より効果的な交通事故防止対策に全力を傾けてまいります。
 大きな第五は、サイバー犯罪、サイバー攻撃対策の推進状況であります。
 インターネットが今や日常生活や経済活動にとって不可欠なものとなる一方で、その匿名性やセキュリティーの脆弱性を悪用したさまざまな犯罪が敢行されておりまして、その脅威はますます増大をいたしておりますところ、昨年、当庁では一千百八十件のサイバー犯罪を検挙したところであります。
 また、いわゆるサイバー攻撃につきましては、政府機関など公的な機関等も含めてこれらを標的とした事案が発生するなど、依然として予断を許さない状況となっております。
 そうした中、昨年、当庁では、事件捜査を通じて解明したこうしたサイバー攻撃の手法等を、最新の手法等を含めて重要インフラの事業者の方々に対し周知をいたしましたほか、サイバーテロを想定した民間の事業者の方々とのいわゆる共同技術訓練等を実施してきたところでございます。
 今後も、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えまして、民間事業者等との連携を一層強化いたしますとともに、被害の未然防止や取り締まりなどを徹底してまいります。
 大きな第六は、テロ等不法事案の未然防止、検挙状況についてでございます。
 国際テロの情勢につきましては、昨年、日本人大学生がイスラム過激派組織ISIL、いわゆるイスラム国、これに参加をする目的で中東への渡航を計画していたことが明らかになりましたほか、ご案内のように、シリアにおきまして、邦人がこの組織に殺害されたと見られる事案が発生をするなど、我が国にとり国際テロの脅威はまさに現実のものとなっております。
 また、極左暴力集団につきましては、昨年、飛翔弾、ロケット弾でありますけれども、その発射事件を引き起こしたほか、右翼につきましても、政府の政策や領土問題などを捉えた抗議行動等の過程におきまして、テロ等重大事案を引き起こすおそれが十分にあると考えております。
 こうした中、昨年、当庁では極左暴力集団の活動家を六人、右翼団体の構成員等七十人を検挙したところでありますけれども、引き続き、テロ等の標的となり得る施設の警戒を徹底するほか、今週末に開催をされる予定の東京マラソンはもちろん、来年国内で開催予定のサミット、さらには五年後の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えて、テロ等不法事案の防止に万全を期してまいります。
 第七は、震災警備を初めとする各種災害対策の推進状況についてでございます。
 昨年、当庁では、多摩地区における大雪災害を初め、広島県下における土砂災害、さらには長野県御嶽山における噴火災害に際しましても、警視庁機動隊や特殊救助隊などの部隊を派遣して対処したところでございます。
 今後も、発生が危惧をされます首都直下地震を初めとした各種の災害に備えて、職員の対処能力の向上を図りますとともに、自治体を初めとする関係機関等との連携をより一層強化するなど、これも万全を期してまいります。
 以上、都内の治安状況についてご報告を申し上げましたが、現在、警視庁では、女性活躍推進プロジェクト、これを設置して、女性の視点を一層反映した警察運営、警察活動を推進いたしております。
 具体的には、女性警察官の現場執行力向上を目的とした講習の新設や、臨床心理学の知見を有する当庁職員による女性被害者を初めとした被害者支援制度の導入等をいたしております。
 今後も、都民の皆様の要望に的確に対応していくため、性別を問わない、能力に応じた積極的な人材登用や、被害者支援体制の充実などを強力に推進してまいります。
 また、昨年、当庁では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えまして、世界一安全な都市東京実現のための警視庁ビジョン、これを策定いたしております。本年も引き続き本ビジョンに基づく各種の対策を効果的に推進して、首都東京の安全・安心を力強く守ってまいります。
 結びとなりますが、当庁では本定例会におきまして、ただいま申し上げましたような警察活動を支える基盤の強化に必要な警察職員の増員を含む所要の予算の確保をお願いしているところでございます。東京都議会の皆様方には、今後とも一層のご支援、ご協力を賜りますようお願いを申し上げまして、治安状況報告を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○議長(高島なおき君) 以上をもって警視総監の発言は終わりました。

○議長(高島なおき君) 次に、監査委員より、監査結果の報告について発言の申し出がありますのでこれを許します。
 監査委員山田忠昭君。
   〔九十六番山田忠昭君登壇〕

○九十六番(山田忠昭君) 監査委員を代表いたしまして、過去一年間に実施した監査の結果についてご報告申し上げます。
 監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務事業が適正に実施されているか監査することで、都民の信頼を確保していくことであります。そのため、年間を通じて、定例監査、工事監査、財政援助団体等監査、行政監査、決算審査、住民監査請求に基づく監査など、多岐にわたる監査を実施しております。
 この一年間に合計五百八十カ所で監査を実施し、問題点の指摘は二百三件、指摘金額は約六億円でありました。
 初めに、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。本庁各部の全てと事業所の約四割、合計で四百四十五カ所を対象として監査を実施いたしました。
 その結果、病院が借り入れている医療機器について、契約に基づく保守点検が行われたか確認していない事例があったため、安全管理を適切に行うよう求めました。
 また、学校経営支援センターにおいて、各学校の校舎の外壁診断を委託により行ったところ、外壁の落下のおそれがあり、安全対策の実施と補修が必要と判定されたにもかかわらず、センターはこのことを学校に連絡していなかったため、速やかに連絡し、生徒の安全を確保するよう求めました。指摘件数としては合計八十四件、金額にして約三億三千万円でありました。
 平成二十六年の監査では、中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故など土木構造物にかかわる安全管理が社会的な課題となっていることから、土木構造物の維持管理を重点監査事項の一つとしました。その結果、トンネルや擁壁などの日常点検の結果を記録していないもの、定期点検において早急な対応が必要とされたものの二年以上にわたり補修を行っていなかったものなど、二十七件の指摘を行いました。
 次に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は百万円以上の工事を対象として、千五百五十八件について監査を実施いたしました。
 その結果、鉄筋を正しい方向に取りつけていないものや、コンクリート打設後に必要な強度に達していることを確認しないまま型枠を外したものなど、不適切な施工について指摘し、品質管理の観点から適切な監督を行うよう求めました。
 また、単価設定や数量算出に関する積算誤りも認められたことから、積算を適正に行うよう求めるなど、合計二十七件の指摘を行いました。
 これらの工事監査の指摘では、設計や現場監督の実務経験の不足が原因となり、積算における単価設定や数量算出など基本的事項の間違いや、現場の状況を十分把握できていないものが見られます。
 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、技術職員には、大会関連施設の整備のほか、不足している都市インフラの充実や既存施設の適切な維持管理、長寿命化対策が求められます。このため、職員の技術力の維持向上や部局を超えた支援体制の拡充など、組織的な取り組みを求めました。
 次に、財政援助団体等監査について申し上げます。
 まず、補助金交付団体への監査では、百二十三団体を対象に、補助等にかかわる事業が目的に沿って適正かつ効果的に執行されているかなどについて検証いたしました。
 その結果、例えば、保育所を運営する社会福祉法人において、対象児童数の算定誤りなどによる過大交付が認められたため、補助金の返還を求めました。また、所管局に対しては、算定誤りが繰り返されていることから、審査事務の充実など一層の改善を求めました。
 出資団体への監査では、十二団体を対象に、団体の事業が出資の目的に沿って適切に運営されているかなどについて検証いたしました。
 その結果、例えば、資金運用に当たって、団体で定められた規程に反して、文書による決定を経ないまま金融商品の売買を行っていた事例が認められたため、手続を適正に行うよう求めました。
 次に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、特定の事務や事業を対象として行う監査であり、今回は、債権管理について監査しました。
 その結果、事務手順に定められた督促や催促を行っていないもの、部署間の引き継ぎが十分でなく債権回収に向けた交渉が滞っていたものなど、十一件の指摘を行い、改善を求めました。
 次に、決算審査について申し上げます。
 平成二十五年度の決算について、決算の数値が正しいか、その予算の執行が適正で効率的に行われているかなどを審査しました。
 その結果、例えば、財産に関する調書において、出資による権利で六件、合計約十三億円の登載誤りがあり、適正に事務を行うよう求めました。
 次に、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて初めてその目的を達成します。このため、年二回、各局から改善状況について報告を求め、その改善を促しています。過去三年間に行った指摘について見ると、各局が改善に努めた結果、これまでに約九二%が改善済みとなっています。
 具体的な改善事例としては、水道、下水道料金等の還付に関する事務が円滑に行えるよう新たに還付事務室を設置し、事務処理体制を見直したものや、災害時に期限切れ医薬品が使用されないよう、備蓄医薬品の管理方法を見直したものなどがあります。
 また、監査結果に基づく見直し内容を、予算編成における事業評価として迅速かつ的確に予算へ反映させる仕組みが、平成二十五年度予算編成から導入されております。
 引き続き、監査結果が都の事務事業の改善につながるよう、質の高い監査を実施するとともに、同じ誤りが繰り返されることのないよう、各局における改善の取り組みを促してまいります。
 このほかに、都民からの住民監査請求が九件あり、そのうち請求要件を満たした補助金支出に関する請求一件について監査を実施いたしました。
 以上、この一年間に実施した監査について述べてまいりました。
 監査の結果、総じていえることは、組織内部のチェック機能や異なる部門間での連携が十分に機能していないために、事務処理の誤りやおくれが見過ごされていることであります。
 各局長並びに管理者の皆様には、組織の責任者として先頭に立ち、指摘を受けた事項の是正改善のみならず、誤りの根本原因の解消や仕事の進め方の見直しなど内部統制を構築し、再発防止の徹底に努められるよう望みます。
 我が国の経済は、緩やかな回復基調が続いていますが、都財政は景気の影響を大きく受けやすい歳入構造であり、先行きは予断を許さない状況にあります。こうした中で、都は、五年後に迫った二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの成功に向け、一丸となって開催準備に取り組むとともに、少子高齢、人口減少社会への対応や、高度な防災都市の実現を初め、山積する課題を解決していかなければなりません。
 そのためには、これまで以上に創意工夫を凝らすとともに、無駄を排除し、効率的、効果的に事業を推進していくことが求められます。
 こうした中にあって、事務事業の効率化や都民へのサービス向上が図られているかを検証する監査の果たす役割が、より一層重要であります。
 私ども五名の監査委員は、都政が公正かつ効率的に運営されるよう、これからも監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。(拍手)

○議長(高島なおき君) 以上をもって監査委員の発言は終わりました。

○議長(高島なおき君) 次に、包括外部監査人より、平成二十六年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。
 包括外部監査人佐久間清光さん。
   〔包括外部監査人佐久間清光君登壇〕

○包括外部監査人(佐久間清光君) 平成二十六年度包括外部監査人の佐久間清光でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今年度の監査は、水道局事業の経営管理及び水道局所管の出資団体である東京水道サービス株式会社、株式会社PUC及び水道マッピングシステム株式会社の経営管理を監査対象とし、補助者十八名とともに実施した結果、合計七十一件の指摘と意見を監査報告書に記載することとなりました。
 本日は、その主な事項についてご説明申し上げます。
 まず第一に、監理団体との一体的な事業運営体制構築のさらなる推進に関する事項であり、具体的には次のとおりでございます。
 水道局は監理団体との一体的事業運営体制を構築する経営方針であり、この方針によって水道事業のコア業務を水道局が、準コア業務を監理団体が実施することとしておりますが、例えば漏水防止業務などにおいては、区部と多摩地区で業務範囲に不統一な面がございます。また、営業所の徴収業務は準コア業務と整理されておりますが、その大部分が監理団体への移転未了の状況でございます。
 このようなことから、水道事業のコア業務、準コア業務については、いま一度あるべき役割分担を統一的に行うこと、そして、各役割分担の目指すべき目標を水道局と監理団体が共有すること、さらに、各団体があるべき体制の構築に必要な人員を確保するために中長期的な方針を策定し、定期的に経営プランに当該内容を具体化した上で、それを実行するよう求めました。
 なお、関連して、監理団体に対しては、年齢構成を踏まえた、より中長期的な人員の確保と中長期的な事業方針の策定を求めました。
 次に、水道局が経営プランで公表する今後三年間の経費削減策や財務情報は水道局のみのものであって、監理団体を含んでおりません。そこで、監理団体を含めた一体的な事業報告や財務情報の活用と公表を求めました。
 なお、関連して、監理団体に対しては、より適正な個別案件、プロジェクト別原価管理を求めました。
 さらに、水道局によるガバナンスの構築として、〔1〕、監理団体でない水道マッピングシステムと東京水道インターナショナル株式会社に対するガバナンス構築の必要性、〔2〕、準コア業務を担う監理団体を一社ではなく、東京水道サービスとPUCの二社に分けていることの必要性、〔3〕、監理団体であるPUCの株主二社の業務をPUC自身が管理監督しているということの見直しなど、コンプライアンスを含め、法人の再編や出資関係など事業運営のあり方について再検証を求めました。
 また、交際費など監理団体の支出内容については、水道局が適切に管理監督することを徹底するとともに、平成二十六年度に発覚した情報漏えい事件を踏まえ、監理団体が締結する契約を含む全ての契約行為について総点検を実施することなどを求めました。
 なお、監理団体である東京水道サービスに対しては、その出資団体である東京水道インターナショナル等に関して情報開示の拡大、経営状況が悪化した場合の対応や投資限度のルール化を求めました。
 続いて、第二の事項として、区部と多摩地区の業務統一化のさらなる推進に関する事項であり、具体的には次のとおりでございます。
 ご承知のとおり、平成二十四年三月末には二十五市町に対する事務委託を完全解消しているところでございますが、現在でも、区部と多摩地区では二つの水道料金ネットワークシステムが併存しており、その維持管理コストは多大なものとなってございます。したがって、効率化のためにはシステム上、課題となっている事務差異を可能な限り解消し、併存する水道料金ネットワークシステムを一つとするべきであり、そのためのロードマップ策定を求めました。
 なお、その策定に際しては、他の事務処理系システムも含め、ホストコンピューターを引き続き利用するかなどの再検討も求めるとともに、PUCに対しては、ホストコンピューターの停電対策と業務継続計画の策定について、現在想定している以上の災害に備えた支援をするよう求めました。
 次に、区部と多摩地区にある二つのお客様センターについて、業務規模平準化や統合移転など、あり方の再検討などを求めました。
 さらに、区部営業所と多摩地区サービスステーションについて、都全体としての最適配置を検討するよう求めました。
 続きまして、第三に、入札契約に関する事項についてでございます。
 まず、さきの情報漏えい事件を踏まえ、入札契約に係る事後的な調査制度の拡充を求めました。
 次に、検針及び徴収業務における特命随意契約について、競争性を適切に担保するよう対策の再検討を求めました。
 なお、水道マッピングシステムに対しては、マッピングシステムのデータ更新の再委託先選定について、競争性を適切に担保するよう対策の再検討を求めました。
 第四に、資産などの管理に関する事項についてでございます。
 まず、水道利用者に対する滞納債権回収管理のさらなる徹底を求めました。
 次に、未利用の土地、未利用の建物、入居率の低い公舎、稼働率の低い公有車についてさらなる対策を求めました。
 また、配水管の漏水対策については、効率性、経済性を担保するため、定性面、定量面などを踏まえた総合的な観点から、事業の再評価を実施するよう求めました。
 さらに、各戸の給水装置図面の電子化については、外部への利用拡大や事業評価の実施などを求めました。
 最後に、工業用水道事業に関する経営改革の明確な方針について、関係各局と連携して着実に決定し推進することを求めました。
 以上をもちまして、平成二十六年度の包括外部監査結果のご説明といたします。

○議長(高島なおき君) 以上をもって包括外部監査人の説明は終わりました。

○六十七番(山崎一輝君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明十九日から二十三日まで五日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(高島なおき君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(高島なおき君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明十九日から二十三日まで五日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、二月二十四日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後二時三十一分散会


文書質問趣意書及び答弁書

26財主議第497号
平成27年2月9日
東京都議会議長
高島なおき 殿
東京都知事
舛添 要一

文書質問に対する答弁書の送付について

 平成26年第四回東京都議会定例会における下記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。

おときた駿議員
上田令子議員
河野ゆりえ議員
小竹ひろ子議員
中村ひろし議員
斉藤あつし議員
曽根はじめ議員
吉田信夫議員

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 おときた駿

質問事項
一 補助86号線の都市計画について
二 特区限定の保育士について

一 補助86号線の都市計画について
 都市計画道路である補助86号線についてお伺いいたします。この補助86号線も含めた多くの都市計画道路は、昭和21年4月25日に決定された「戦災復興院告示第15号」において決定したとされています。そしてその関係図面については、「東京都に置いて縦覧に供す」と昭和21年4月の官報が明確に規定しています。この一連の決定は、本事業計画の正当性を証明する非常に重要な手続きであると考えられます。そこで、以下の点についてお伺いいたします。
1 官報に指定された関係図面は、現在東京都において実物が保管されているのか伺います。仮に原本が消失している場合、手続きに重大な瑕疵がある可能性があります。現在用いている代替の図面があるとしても、その図面が計画当時のものと相違ないことを証明することは困難にも思えますが、東京都の見解をお聞かせ下さい。
2 そもそも本事業を内閣総理大臣が決定したとされる「告知文書」が、存在しない可能性が指摘されています。70年近く前の文書とはいえ、行政文書が存在しなければ、この事業の正当性そのものが疑われます。この点につきまして、事実関係と東京都の見解をお伺いいたします。
3 さらに、この都市計画における「内閣総理大臣決定」とその告示について、昭和21年4月25日は幣原内閣が総辞職していた時期にあたり、戦災復興院の阿部総裁が告示を出したとされています。しかしながら、この阿部総裁は戦災復興院の総裁就任にあたって、内閣総理大臣の添え書きはあるが、天皇の認証がある総裁任命の辞令書が出せず、国務大臣資格のない総裁であった点が指摘されています。つまり、この都市計画自体が旧都市計画法第3条の規定する正当な手続きに則っていない可能性があると考えられますが、この点につきまして、東京都の把握している事実関係と見解をお聞かせください。

二 特区限定の保育士について
 本年10月の国家戦略特区諮問会議において、特区内での保育士不足解消を目指した追加規制緩和策として、地域を絞って国家戦略特区のみで働くことのできる「地域限定保育士」を新たに創設することが決定されました。現在、待機児童解消のボトルネックの一つとなっているのが、都市部における保育士不足です。これによって、今年も4月開園予定だったにもかかわらず、保育士がいなくて開園できなかった園が東京各地で見られたとされています。
 保育士不足の根源的な問題は、給与を始めとしたその待遇の低さにあるとされていますが、この改善には多くの財源や制度設計のための時間がかかります。一方で、保育士試験を複数回化してその絶対数を増やすことはすぐにでもできる改革の一つであり、すでに待機児童対策を熱心に行っている神奈川県がこの特区制度を活用するとの報道もなされています。そこで、この特区限定保育士について、以下の3点について伺います。
1 保育士試験の複数回化の必要性について、都の認識をお聞かせ下さい。
2 神奈川県以上により深刻な待機児童問題、保育士不足を抱える東京都こそ、本特区制度をいち早く導入するべきと考えますが、見解を伺います。また仮に導入が難しいとしている場合、都が課題として認識していることは何かをお伺い致します。
3 仮にこちらの特区制度を活用しない場合、機動的に保育士不足を解消していくために東京都はどのような対応をされるのか、今後の計画について具体的にお答えください。

平成26年第四回都議会定例会
おときた駿議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 補助86号線の都市計画について
1 補助86号線について、官報に指定された関係図面は、現在、都において実物が保管されているのか伺う。仮に原本が消失している場合、代替の図面があるとしても、その図面が計画当時のものと相違ないことを証明することは困難だが、見解を伺う。

回答
 補助第86号線について、官報に記載のある関係図面は、現在、不存在です。
 この補助第86号線の都市計画決定された区域は、他に都市計画決定された区域も合わせて図示した資料に継承し、適切に監理しています。

質問事項
一の2 本事業を内閣総理大臣が決定したとされる「告知文書」が、存在しない可能性が指摘されているが、事実関係と見解を伺う。

回答
 補助86号線の都市計画決定について、戦災復興院告示第15号(昭和21年4月25日)に記載のとおり決定されており、都市計画法に基づき、適切に手続が実施されたものと認識しています。

質問事項
一の3 この都市計画自体が、旧都市計画法第3条の規定する正当な手続きに則っていない可能性があるが、都の把握している事実関係と見解を伺う。

回答
 昭和21年当時の都市計画法第3条では、主務大臣が都市計画決定し、内閣の認可を受けることが規定されています。
 しかし、勅令第671号(昭和20年11月30日)により、戦災地に係る都市計画決定に関しては内閣総理大臣が主務大臣とされ、勅令第941号(昭和18年12月27日)都市計画法及同法施行令臨時特例により、内閣の認可も不要となっています。
 戦災復興院告示第15号(昭和21年4月25日)に記載のとおり、都市計画法に基づき、適切に手続がされたものと認識しております。

質問事項
二 特区限定の保育士について
1 保育士試験の複数回化の必要性について、都の認識を伺う。

回答
 保育士試験については、保育士資格取得の機会を拡大するため、これまでも繰り返し国に対して、試験回数を増やすよう要望しています。

質問事項
二の2 深刻な待機児童問題、保育士不足を抱える東京都こそ、本特区制度をいち早く導入すべきだが、見解を伺う。また、仮に導入が難しいとしている場合、都が課題として認識していることは何か、見解を伺う。

回答
 保育士試験は、現在、全都道府県が一般社団法人全国保育士養成協議会を指定試験機関に指定し、全国統一の試験として実施しており、受験料で賄われています。
 国家戦略特区による地域限定保育士(仮称)の創設については、特区で2回目の試験を実施し、3年程度当該都道府県内のみで保育士として通用する地域限定保育士の資格を与えることとしていますが、導入に当たっては多くの課題があると認識しています。
 具体的には、一般の保育士試験は8科目あり、3年間で全ての科目を合格することが条件となりますが、科目の一部を特区試験で合格した場合にも地域限定保育士となるのか、受験生の科目合格管理を誰がどのように行うのか、就労しなければ年数が経過しても地域限定保育士から一般の保育士にはなれないのか、特区試験の場合の受験料や財政負担をどうするのか、などの課題があげられます。

質問事項
二の3 仮に本特区制度を活用しない場合、都はどのような対応をするのか、今後の計画について具体的に伺う。

回答
 都はこれまで、保育施設勤務経験者で、現在勤めていない人を対象に、就職支援研修と就職相談会を一体的に実施するほか、未経験の有資格者を対象としたセミナー等の取組を実施しています。
 また、東京都保育人材・保育所支援センターに、保育人材コーディネーターを配置し、事業者と就職希望者のマッチングや定着に向けた支援を強化するほか、働きやすい職場環境づくりに関する事業者向け研修を行っています。
 さらに、国の安心こども基金による保育士宿舎借上げ支援事業を都独自に拡充し、保育従事者の確保及び定着を進める区市町村や事業者を支援しています。
 今後とも、福祉人材の育成・定着・再就業を進めるとともに、保育士、介護福祉士等の福祉人材に関する情報を一元的に管理する「人材バンクシステム(仮称)」を新たに構築し、求職者や離職者等に対して、求人情報を効果的・積極的に発信するなどの働きかけを実施していきます。

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 上田令子

質問事項
一 見やすくわかりやすい予算書・決算書について
二 医療・福祉・介護政策の新たな展開について
三 社会福祉法人田無の会・たんぽぽにおける虐待事件について
四 葛西臨海公園のカヌー・スラローム競技会場について
五 中央卸売市場における「自衛消防活動中核要員」について
六 文化芸術振興政策における東京都交響楽団の位置付けについて
七 教育政策について
八 東京都恩賜上野動物園の接遇について

一 見やすくわかりやすい予算書・決算書について
 本年5月の総務大臣通知によれば平成29年度に全ての地方公共団体において統一的な基準による財務書類等を作成するよう要請する予定となっています。これに向けて東京都も早急なる取り組みをしているところは評価するところです。その上で主権者であり財政の最終的負担者も都民であることから、適切かつタイムリーな財務報告により議会や都民による監査機能が働くことが財政や経営に対する規律意識が高まると考え、パブリックアカウンタビリティを識別の上で外部・内部公監査の制度の機能強化が求められます。
 そこで、予算書・決算書のあり方について、うかがいます。
1 予算書・決算書および関係資料の書式が各局でバラバラです。統一感を持つことができないのか、所見を求めます。
2 区市等にみられる「事務報告書」のように、事務事業、根拠となる計画、決算額が政策体系ごとに一覧性をもって見られるような資料が都にはありません。都にも「事務報告書」が必要と考えるが、実務において必要性を感じないか、所見を求めます。
3 予算書・決算書の検索性向上のためには、電子化が不可欠と考えますが、取組状況と所見を求めます。
4 決算書を見ても、事業の成果、費用対効果、数値目標達成がみえません。決算書をいかに政策評価に結び付けていくのか、取組状況と所見を求めます。
5 予算編成にあたり、都議会各会派から予算要望と復活要望が提出されているが、これらの要望は予算編成プロセスの中でどのように具体化され、活用されているのか、その有用性を含め、ご説明ください。

二 医療・福祉・介護政策の新たな展開について
1 来年4月に「生活困窮者自立支援法」が施行されます。モデル事業を含む都としての取組状況、現状の課題、今後の見通しについて、ご説明ください。
2 本年6月、高齢化が一段と進むのに備え、医療や介護の仕組みを見直す「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立しました。特に介護保険制度については、介護保険制度導入以来の大きな制度改正ですが、都としての取組状況、現状の課題、今後の見通しについて、ご説明ください。特に、要支援1、2向けの訪問介護と通所介護は、介護保険のサービスから市町村の事業へ移されるにあたり、区市町村との協議の状況と区市町村からの要望や意見について、その内容と都としての対応について、お示しください。
3 本年4月、文部科学省は、経済的に厳しい家庭の小中学生を財政支援する就学援助制度について、昨年8月に生活保護の基準額が引き下げられた影響で、市区町村が対象世帯の認定基準を厳しくしていないか調査を行うことにしました。準要保護の基準に統一ルールはなく、地域の財政事情によって運用実態にはばらつきが大きいとされています。この調査への都としての対応状況と、結果についての所見、区市町村格差があった場合の具体的対応について、ご説明ください。
4 児童養護施設は、児童福祉法第56条の規定に基づき費用は国および所在地の地方自治体が支出し、児童の保護者からその一部を収入に応じて負担金として徴収している。負担金の算定についての考え方、昨年度の徴収の実績、滞納等への対応状況についてご説明ください。
5 都の児童養護施設の総定員と措置児童数について、直近のものをお示しください。
6 本年発効した「障害者の権利に関する条約」および関係法令(改正障害者基本法・障害者差別解消法・障害者虐待防止法・改正障害者雇用促進法等)の着実な実施に向けて、都としての普及・啓発の取組状況をご説明ください。また、同条約の批准を受け、条例制定等、都独自の取組の必要性についての考え方をお示しください。
7 次世代育成支援対策推進法、子ども・子育て支援法に基づく計画及び計画に基づく事業について、都の取組状況を伺う。
8 子ども・若者育成支援推進法に基づく計画及び計画に基づく事業について、都の取組状況を伺う。
9 災害時の薬事コーディネートについて、都の取組状況をご説明ください。

三 社会福祉法人田無の会・たんぽぽにおける虐待事件について
1 行政処分の現状と今後
 社会福祉法人田無の会に対し、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」第五十条第一項及び同条第三項に基づき指定障がい者支援施設行政処分「一部効力停止」が再び本年9月30日に下りました。
 処分の内容は、虐待防止の取組が不十分、管理の不徹底、不要な物品購入、正当なサービス拒否、不正請求など、「新規利用者の受入れを停止」では済まされない甚大な状況である。東京都は改善措置について「平成25年度処分における処分事由の多くが改善されず、本件処分に至った事実は重大であり、理事長等の責任を明確にした上で、早急に組織・管理体制の見直しを図り、処分事由にある法令等違反状態を改めるとともに、施設運営及び利用者支援等について必要な改善措置を講じ、都に報告をするよう指示している。」としていますが、平成14年「知的障がい者入所更生施設「たんぽぽ」に対する改善の申入れについて(報告)」にて社会福祉協議会から改善申入れ以降、苦情相談が耐えず、公益通報もあり現状このような状況に至った点についてのこれまでの定期監査で何をみて、どういう指導をしてきたか東京都の反省点を踏まえた過去から現時点までの課題認識と今後どのような厳正な措置をとっていくかを伺います。

四 葛西臨海公園のカヌー・スラローム競技会場について
 本定例会初日の所信表明にて、知事は「葛西臨海公園のカヌー・スラローム競技会場については、自然環境等に配慮した結果、隣接地を活用して整備することにいたしました。」と明言をしました。地域住民並びに江戸川区より、当該地の建設への再検討の強い要望を受けたもので現状を踏まえ的確な判断であると考えるものです。
ついては、これまでの予定地から隣接地へ移動することになることから、これまでの環境影響評価結果をどう活かすのか。あるいは、新たに評価をし直すのか等、今後の見通しをお示しください。また、会場となる江戸川区・地域住民への説明および意見の反映の考え方、方向性をお示しください。

五 中央卸売市場における「自衛消防活動中核要員」について
 「火災予防条例」、「火災予防条例施行規則」によれば、一定規模以上の施設では、「自衛消防技術試験」の合格者を自衛消防活動中核要員として一定数配置せねばならないとされています。受講料が15,000円テキスト代5,200円、東京防災救急協会の場合は16,200円、受験料は5,400円認定証交付手数料が1,700円。葛西市場自治会では15万円の支出になるということです。
 また、東京防災救急協会は、66名の職員数のうち東京都からの派遣16名、38名が東京都職員OBで構成される東京都の監理団体であり、仲卸業者の経営状況が悪化していることは先の公営企業会計決算特別委員会で指摘したところです。このような中での15万円の出費は大きいと考えます。そこで、以下、うかがいます。
1 各仲卸業者への指導にあたっては、各消防署は指導の内容にばらつきはありませんか。統一的な対応方針は確立されていますか。
2 防火・防災管理者講習が無料なのに対し、「自衛消防技術試験」については、なぜ有料にしなければならないのか、「火災予防条例」「火災予防条例施行規則」に基づいて有料の試験を受けさせることへの見解と法的妥当性についてもお示し下さい。

六 文化芸術振興政策における東京都交響楽団の位置付けについて
 平成13年に、文化芸術が人間に多くの恵沢をもたらすものであることにかんがみ、文化芸術の振興に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、文化芸術の振興に関する施策の基本となる事項を定める文化芸術振興基本法が制定されました。同法第35条では、地方自治体は、国の文化芸術施策を勘案し、その地域の特性に応じた文化芸術の振興のために必要な施策の推進を図るよう努めるものとすることとされています。
 そこで、都における文化芸術の振興に関し、東京都交響楽団(都響)について、以下、おたずねします。
1 補助金に頼らない運営、独自財源の確保にむけて
 都響は監理団体であるが、都内には民間の交響楽団も複数、存在する中、独自の活動の展開のためには、補助金に依存せず、独立採算を目指していく必要があると考える。そこで、都響のおかれている現状についてうかがいます。
ア 都内にはプロとして活動しているオーケストラは何団体ありますか。また、それらのうち、都が運営費について補助金を交付している団体は何団体ですか。
イ 今年度の都響への補助額は10.5億円ですが、その積算の考え方と今後の方向性についてうかがいます。
ウ 集客アップに向けた取り組み状況についてうかがいます。あわせて、過去3か年の集客状況とそれについての都としての評価をお示しください。
エ 都響は、外部資金調達のためにパトロネージュ(企業協賛、個人協賛)等の仕組みがあるが、これらの過去3か年の実績、拡大に向けての取り組み状況について、お答えください。
2 より親しみやすいプログラム編成にむけて
 都響の団員の技術レベルは、首都の楽団として世界レベルにあり、現行の演目については、都民からの定評がありますことから、以下についてうかがいます。
ア 演奏会の際の聴衆へのアンケートの実施状況といかに反映されているかについて、具体的にお答えください。
イ 大人のための初めてのクラッシック、子ども達に向けてのクラッシック等の取組が各地の楽団でみられるが、このような入門的な企画については推進すべきと考えるが、現状と考え方をお示しください。
ウ 都響は来年、設立50年を迎えるが、どのような記念イベントが予定されているか、お示しください。
エ 都響と東京都歴史文化財団の「東京文化発信プロジェクト」の連携が重要と考えるが、取組状況と今後の展開について、見通しと考え方をお示しください。
3 新理事長就任にあたって
ア 都響は、青島都政までは理事長は知事が兼務してきたが、石原都政では民間から理事長が登用されている。新理事長は元外務官僚と聞くが、人選の理由・経緯、新理事長による外部資金調達についての考え方をお示しください。
イ 石原都政以降の歴代理事長の前職と在任期間、主な実績について、お示しください。
4 都響の本拠地について
 都響は、東京文化会館を本拠地としているが、他の会場での演奏会も多い。通常の練習・リハーサルをする場としての意義も高い本拠地の在り方についての考え方をお示しください。
5 都民との交流事業について
 各種学校や福祉施設等への出張演奏の現状について、昨年度と今年度の活動実績とその評価について、お示しください。
6 他の交響楽団との差別化について
 都内には民間の交響楽団が多数、活動しているが、これらの楽団との差別化、都響の特色づくりについて、取組状況と考え方をお示しください。

七 教育政策について
1 教育委員会から各学校長への指導・通達については、いかなる手順で行われているのでしょうか。また、教育委員会の指導主事は、どのように関与しているのでしょうか。根拠法令に即して、ご説明ください。
2 都内公立中学校における教員の高校受験等にむけた進路指導のスキルアップについて、強化していく必要があるように考えますが、教育庁および区市町村教育委員会として具体的な取り組みと、今後の展開についての考え方をお示しください。

八 東京都恩賜上野動物園の接遇について
 東京都恩賜上野動物園は、上野恩賜公園内にあり、日本で最も古い動物園です。平成18年4月1日より指定管理者制度の導入に伴って、多摩動物公園・葛西臨海水族園・井の頭自然文化園とともに「公益財団法人東京動物園協会」が管理しており、都が誇る東京を代表する観光スポットになっています。
 園内のおもてなしについて、以下うかがいます。
1 昨年1年間で入場者数が多かった日の上位3位の日と、その日の入場者数をそれぞれお答えください。
2 入場者が多い日には、入場券購入のためにゲート前に30分以上、行列で待たされます。一方、障害者手帳、愛の手帳、療育手帳の所持者とその付き添い者、年間パスポート所持者は、そのままゲートを通れますが、行列の最後尾等でこのことについて周知が行われていますか。
3 園内の女子トイレにおいては、入場者が多い日には、「トイレ渋滞」が起きているが、これについての対策は検討していますか。また、授乳室やおむつ交換スペースは足りていると考えていますか。

平成26年第四回都議会定例会
上田令子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 見やすくわかりやすい予算書・決算書について
1 予算書・決算書および関係資料の書式が各局でバラバラであり、統一感を持つことができないのか、所見を伺う。

回答
 都の事業を推進していくためには、予算・決算の内容について、都民や議会の理解を深めていくことが重要です。
 そのため、都はこれまでも、地方自治法及び地方公営企業法の定めるところにより調製する予算・決算以外に、「予算概要」、「決算参考書」、「決算参考書財務諸表」、「年次財務報告書」などを公表することにより、できる限り分かりやすく説明し、理解をいただけるよう、工夫を凝らしてきました。
 また、個々の事業については、事業を所管する各局が、自ら創意工夫を行い、都民や議会に対し、お示しすることで、それぞれの説明責任を果たしているものです。
 今後とも、予算・決算について、できる限り分かりやすく伝えられるよう、工夫を図り、都としての説明責任を果たしてまいります。

質問事項
一の2 区市等にみられる「事務報告書」のように、事務事業、根拠となる計画、決算額が政策体系ごとに一覧性をもって見られるような資料が都には無い。都においても「事務報告書」が必要だが、実務において必要性を感じないのか、所見を伺う。

回答
 御指摘の「事務報告書」は、地方自治法第233条第5項の規定に基づき、決算を議会の認定に付する際、「主要な施策の成果を説明する書類」として提出されるものです。
 都においても、同法に基づき、「主要施策の成果」を作成し、決算と併せて議会に提出しています。
 具体的には、会計別、局別に主要事業の概要をまとめたもので、予算と決算を対比して示しているほか、事業の成果がより明確となるよう、事業ごとに財務諸表から得られる情報も掲載しています。
 今後とも、都民への説明責任をしっかりと果たせるよう、記載内容の充実等を検討していきます。

質問事項
一の3 予算書・決算書の検索性向上のためには電子化が不可欠だが、取組状況と所見を伺う。

回答
 都は、財政の民主的な運営に資するため、定期あるいは随時に財政状況を公表しています。
 具体的には、「財政のあらまし」、「各会計歳入歳出決算書」、「主要施策の成果」等といった法律に基づくものだけではなく、毎年2月に予算案が固まり次第作成・公表している「予算案の概要」、予算の成立を受けて毎年4月に作成・公表している「予算概要」や毎年9月に新たな公会計制度による普通会計決算がまとまり次第作成し、公表している「年次財務報告書」など、都財政に対する理解と協力を得るため独自で公表を行っています。
 これら全てについて、紙媒体だけでなく、電子化することでホームページにも掲載し、広く都民に公表しています。
 引き続き、都の財政状況について、より分かりやすく公表するよう心がけてまいります。

質問事項
一の4 決算書を見ても、事業の成果、費用対効果、数値目標がみえない。決算書をいかに政策評価に結び付けていくのか、取組状況と所見を伺う。

回答
 都はこれまでも、都民に対して、決算の内容をできる限り分かりやすく伝えられるよう、「主要施策の成果」を作成し、会計別、局別に主要事業の概要をまとめ、予算・決算を対比して示すなど、工夫を凝らしてきました。
 また、昨年12月に策定した「東京都長期ビジョン」をはじめとして、可能な限り施策の数値目標をお示ししています。
 さらに、毎年度、予算編成の一環として事業評価を行い、決算状況などを厳しく検証した上で、その結果を予算に的確に反映しています。
 今後とも、事業評価の取組等を通じて、決算分析を政策に結び付けていくよう取り組んでいきます。

質問事項
一の5 予算編成にあたり、都議会各会派から予算要望と復活要望が提出されているが、これらの要望は予算編成プロセスの中でどのように具体化され、活用されているのか、その有用性を含めて伺う。

回答
 都民の代表である都議会各会派からの予算要望は、都の予算にその時々の民意を正確に反映させるために必要不可欠なプロセスであると認識しています。
 都議会各会派からの予算要望及び復活要望については、その内容を十分に吟味し、事業の内容やその効果、重要性、緊急性などを総合的な見地から判断し、優先度を付けて予算原案及び予算案に反映しています。

質問事項
二 医療・福祉・介護政策の新たな展開について
1 来年4月に「生活困窮者自立支援法」が施行されるが、モデル事業を含む都としての取組状況、現状の課題、今後の見通しについて伺う。

回答
 平成27年4月からの生活困窮者自立支援法の施行に向け、都はこれまで、実施主体である区市の体制整備を支援するために、制度内容を迅速に周知するとともに、各区市の準備状況に応じて個別の助言等を行ってきました。また、平成26年10月には区市の実務担当者会議を開催し、13区市で実施しているモデル事業の成果と課題等について、情報提供を行いました。
 しかし、国からは国庫補助基準額等の重要な情報の提示が遅れており、区市の施行準備に支障が生じていることから、平成26年11月に、都は国に対し、早期の情報提示や十分な財政措置を求める緊急の提案要求を行い、その後も様々な機会を通じて働きかけを行っています。
 今後、都は、より多くの区市が法の必須事業である自立相談支援の窓口設置だけでなく、地域の実情やニーズに応じて、就労準備支援、家計相談支援、子供の学習支援などの任意事業に取り組めるよう支援を行い、生活困窮者に対する総合的な支援体制を都内全域で整備していきます。

質問事項
二の2 本年6月、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立したが、特に介護保険制度改正のうち、区市町村の事業に移される要介護1、2向けの訪問介護と通所介護についての都としての取組状況、現状の課題、今後の見通し等について伺う。

回答
 今回の介護保険制度改正では、予防訪問介護・予防通所介護は、平成29年度までに地域支援事業に移行し、区市町村が地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画したサービスを充実させ、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援を可能とする総合事業を実施することとなります。
 そのため都は、区市町村の介護保険担当者説明会を2回実施し、制度改正について情報を提供するとともに、担当者との意見交換会や技術的助言等を行っています。また、国に対しては、詳細な制度設計及び早期の情報提供を行うよう、平成26年9月に緊急提言を行いました。
 総合事業では、単価や基準、利用料の設定など、多岐にわたる事務が生じるため、区市町村からは、他自治体における取組状況の情報提供や、介護予防の機能強化への支援を求める意見が寄せられています。そのため、都は、介護予防推進会議を開催し、区市町村の取組状況の情報共有や専門的な助言を行っています。また、主任介護支援専門員、社会福祉士、保健師等を介護予防機能強化支援員として配置する区市町村を今年度から支援しており、現在13の区市町が実施しています。来年度は30区市町村以上が実施を予定しています。
 今後とも、円滑な制度移行に向け、区市町村等を支援していきます。

質問事項
二の3 本年4月、文部科学省は、就学援助制度について、市区町村が対象世帯の認定基準を厳しくしていないか調査を行うことにしたが、この調査への都としての対応状況と、結果についての所見、区市町村格差があった場合の具体的対応について伺う。

回答
 都教育委員会は、平成26年6月に国が公表した「平成26年度における就学援助実施状況調査」(一部前倒し調査)結果により、就学援助にかかる区市町村の実態について把握しました。
 調査の結果より、準要保護者に対する就学援助について、各区市町村は、その地域の実情に応じて認定基準の見直しや他の取組を実施するなど、児童生徒への影響が出ないよう適切な対応を行っていると考えています。
 就学援助は、学校教育法により、区市町村にその実施が義務付けられており、準要保護者に対する就学援助については、区市町村が認定基準の在り方を含めて、その権限と責任において実施するものであると考えます。

質問事項
二の4 児童養護施設は、児童福祉法第56条の規定に基づき、費用は国および所在地の地方自治体が支出し、児童の保護者からその一部を収入に応じて負担金として徴収している。負担金の算定についての考え方、昨年度の徴収の実績、滞納等への対応状況について伺う。

回答
 児童相談所が、児童養護施設に児童を入所させる措置を採った場合、児童福祉法第56条に基づき、扶養義務者から、負担能力に応じて、入所にかかる費用を徴収しています。その金額は、児童福祉法施行細則に基づき、所得税額等により決定しています。
 平成25年度の児童養護施設に入所した児童に係る徴収実績は、現年度分は、調定金額144,024千円に対して収入金額82,076千円で徴収率57.0パーセント、過年度分は、調定金額304,500千円に対して収入金額37,962千円で徴収率12.5パーセントとなっています。
 滞納者に対しては、文書による督促や催告を行っており、必要に応じて、個別に電話や訪問により、納入を促しています。

質問事項
二の5 都の児童養護施設の総定員と措置児童数について、直近の値を伺う。

回答
 平成26年12月1日現在、児童養護施設の定員数は、3,209人、措置児童数は、3,031人となっています。

質問事項
二の6 本年発効した「障害者の権利に関する条約」および関係法令(改正障害者基本法・障害者差別解消法・障害者虐待防止法・改正障害者雇用促進法等)の着実な実施に向けて、都としての普及・啓発の取組状況を伺う。また、同条約の批准を受け、条例制定等、都独自の取組の必要性について伺う。

回答
 我が国では、平成26年1月の障害者権利条約の締結に先立ち、平成23年8月に改正障害者基本法の施行、平成24年10月に障害者虐待防止法の施行、平成25年6月に障害者差別解消法の制定など国内法制度の整備を進めてきました。
 都は、こうした動きに合わせ、障害の特性や障害者へのサポート方法等を紹介するWEBサイト「ハートシティ東京」の開設、リーフレット「障害者虐待をなくそう」の作成や福祉施設職員等に対する研修の実施など、障害に関する理解の促進や障害者虐待防止に関する普及・啓発に取り組んできました。
 今後、平成28年4月の障害者差別解消法の施行に向け、国は職員向けの対応要領や事業者向けの対応指針等を定める予定であり、都としては、障害者の方の意見も聞きながら、施行に向けた準備を進めていきます。

質問事項
二の7 次世代育成支援対策推進法、子ども・子育て支援法に基づく計画及び計画に基づく事業について、都の取組状況を伺う。

回答
 平成15年7月に制定された「次世代育成支援対策推進法」(以下「次世代法」という。)に基づき、都は、次代を担う子供達が健やかに生まれかつ育成される社会の形成を目指し、平成17年4月に「次世代育成支援東京都行動計画(前期)」、また、平成22年4月に「次世代育成支援東京都行動計画(後期)」を策定し、福祉、保健、教育等、様々な分野に渡る施策を実施しています。また、施策については、各分野の学識経験者等で構成する「次世代育成支援行動計画懇談会」に報告し、意見や助言を求めた上で、毎年その進捗状況を公表しています。
 さらに、平成24年8月に制定された「子ども・子育て支援法」に基づく都道府県計画については、現在、東京都子供・子育て会議の意見も踏まえ、検討を進めています。その計画は、平成26年に改正された次世代法に基づく都道府県行動計画と合わせ、東京都における子供・子育てに関する総合計画として一体的に策定する予定です。

質問事項
 二の8 子ども・若者育成支援推進法に基づく計画及び計画に基づく事業について、都の取組状況を伺う。

回答
 平成21年に制定された「子ども・若者育成支援推進法」第9条に基づく「東京都子供・若者計画(仮称)」については、現在、本年夏頃の策定に向けた検討を行っているところです。
 同計画に盛り込まれる事業等については、今後、第30期東京都青少年問題協議会における審議やパブリックコメントの実施を経て、決定される予定です。

質問事項
 二の9 災害時の薬事コーディネートについて、都の取組状況を伺う。

回答
 都はこれまで、災害時に医薬品等が円滑に供給されるよう、東京都薬剤師会や医薬品卸業等の関係6団体と協定を締結しています。
 また、東日本大震災の教訓を踏まえ、平成24年11月に地域防災計画を修正し、卸売販売業者が、被災者に必要な医薬品等を区市町村の医療救護所等に直接、納品する体制を構築しました。
 さらに、こうした体制が円滑に機能するよう、平成26年9月には「災害時における薬剤師班活動マニュアル」を改定しました。その中では、災害時に、区市町村の災害薬事センターに配置する災害薬事コーディネーターが中心となり、医薬品等の管理や被災者に調剤・服薬指導を行う薬剤師班を各医療救護所等に派遣するとともに、不足する医薬品等の情報を集約し、卸売販売業者へ一括して発注することとしています。

質問事項
三 社会福祉法人田無の会・たんぽぽにおける虐待事件について
 社会福祉法人田無の会に対し、指定障害者支援施設行政処分が再び本年9月30日に下ったが、平成14年度の社会福祉協議会からの改善申入れ以降、このような状況に至った点について、定期監査で何をみて、どのような指導をしてきたのか、都の反省点を踏まえた過去から現在までの課題認識と、今後どのような厳正な措置をとるのか伺う。

回答
 都はこれまでも、当該施設と利用者家族とのトラブルや苦情等があった都度、利用者家族への対応について指導を行ってきたほか、施設運営基準等の遵守について、法令等に基づく指導検査を毎年実施してきました。
 平成24年11月には虐待に関する公益通報があったことから、平成25年3月に監査を開始し、身体的虐待や理事長等の不適切な対応等が認められたため、同年9月に、一年間の新規利用者の受入れ停止処分を行いました。
 その後も運営指導のため毎月施設を訪問し、平成26年1月に発生した利用者の転倒事故等についても指導を行ってきました。また、法人の所轄庁である西東京市と合同で指導検査も実施してきましたが、改善に向けた取組が不十分なため、平成26年9月に新たに一年間の新規利用者の受入れ停止処分を行いました。
 障害者に対する虐待は、その尊厳を著しく傷つけるものであり、あってはならないことです。今後とも、改善状況の確認や指導を行い、西東京市と連携しながら、関係法令に基づき厳正に対処していきます。

質問事項
四 葛西臨海公園のカヌー・スラローム競技会場について
 これまでの予定地から隣接地へ移動することになるが、これまでの環境影響評価結果をどのように活かすのか。あるいは、新たに評価し直すのか等、今後の見通しを伺う。また、会場となる江戸川区・地域住民への説明および意見の反映の考え方と方向性について伺う。

回答
 2020年オリンピック競技大会で使用するカヌー・スラローム施設は、葛西臨海公園に整備する計画でしたが、公園整備の歴史的背景や公園の自然環境に配慮し、隣接する都有地を活用して施設を配置することとしました。
 競技会場整備等を対象に任意で実施しているオリンピック・パラリンピック環境アセスメントの手続きに必要となる現況調査については、これまで既存資料を活用した陸域生物調査を行うとともに、平成25年11月に公園内で樹木概況調査を実施するなどしてきましたが、計画の変更を受け、隣接地で平成26年11月から四季ごとの大気調査などの追加調査を開始したところです。
 今後、基本設計等の進捗に合わせて評価書案を作成、公表し、都民意見を募集します。意見に対する見解書は評価書案と共にオリンピック・パラリンピック環境アセスメント評価委員会に付議した上で、評価書に反映させていきます。

質問事項
五 中央卸売市場における「自衛消防活動中核要員」について
1 中央卸売市場における「自衛消防活動中核要員」について、各仲卸業者への指導にあたり、各消防署の指導内容にばらつきはないのか。統一的な対応方針が確立されているのか伺う。

回答
 自衛消防活動中核要員が必要とされる市場への指導については、火災予防条例及び火災予防条例施行規則に基づき、管理権原者である市場の場長に対し、東京消防庁として統一的な指導を行っています。
 なお、各仲卸業者が占有する部分については、市場の場長からの要望に基づき、直接、仲卸業者の方に火気管理等ソフト面に関する指導を行っています。

質問事項
五の2 防火・防災管理講習が無料なのに対し、「自衛消防技術試験」については、なぜ有料にしなければならないのか、「火災予防条例」「火災予防条例施行規則」に基づいて有料の試験を受けさせることへの見解と法的妥当性について伺う。

回答
 防火・防災管理講習は、それぞれの事業所における管理監督的な立場の者に防火・防災管理業務の推進役としての知識及び技術を習得させるための講習であり、これにより業をなすものではなく、また、火災予防上、広く制度の普及啓発を図る必要があることから受講料を無料としています。
 一方、自衛消防技術試験は、災害発生時の活動の困難性及び人的な危険性が大であると予想される建物へ配置が義務付けられている自衛消防活動中核要員等になるための知識及び技術を証明する資格試験であり、これにより業をなすこともできるもので、東京都消防関係手数料条例に基づき手数料(受験料5,400円及び交付申請手数料1,700円)を徴収しています。
 なお、受講料とテキスト代については、自衛消防技術試験の準備講習のことと思われますが、当庁が実施するものではなく、受験者が合格を目指し、任意で受講するものです。

質問事項
六 文化芸術振興政策における東京都交響楽団の位置付けについて
1 補助金に頼らない運営、独自財源の確保について
ア 都内にはプロとして活動しているオーケストラは何団体あるのか。また、それらのうち、都が運営費について補助金を交付している団体は何団体あるのか伺う。

回答
 都内では、日本のプロ・オーケストラで構成される公益社団法人日本オーケストラ連盟の正会員として、東京都交響楽団をはじめ、NHK交響楽団、読売日本交響楽団など、9つのオーケストラが活動をしています。
 これらのオーケストラのうち、東京都交響楽団に対しては、都が運営費補助を行っています。
 このほか、「都民芸術フェスティバル」での公演や、子ども向けの参加・体験プログラム事業等を通じて、都は、都内オーケストラの活動を支援しています。

質問事項
六の1のイ 今年度の都響への補助額は10.5億円だが、その積算の考え方と今後の方向性について伺う。

回答
 都響が行っている、質の高い公演や音楽鑑賞教室をはじめとした多種多様な音楽活動は、都における音楽芸術の普及や振興に大きく寄与しており、都は、人件費及び管理費など基幹的経費の一定額に対し補助金を支出しています。
 なお、都響は、自立した楽団経営の実現に向けて、自主財源の確保や人事給与制度の抜本改革、高い演奏水準の確保などに中長期的な観点から着実かつ継続的に取り組んでおり、都としては引き続き支援していきます。

質問事項
六の1のウ 集客アップに向けた取り組み状況について伺う。あわせて、過去3か年の集客状況と、それについての都としての評価を伺う。

回答
 都響では、集客アップに向けた取組として、若い女性やシニア世代など、公演にこれまでなじみの少ない方々を含めて幅広い方々を対象に特設ウェブサイトやフェイスブックページを作成し、演奏の聴きどころなどを紹介するコンテンツを充実しています。
 また、レクチャーやディナー付きなど付加価値チケットの販売や、座席指定販売オンラインシステムをいち早く導入するなどの工夫もしています。
 過去3か年の公演の総入場者数は、平成23年度が約20万7千人、24年度は約20万3千人であったものが、様々な取組を開始した25年度には約23万6千人と増加しており、これらの取組が一定の成果をあげたものと考えています。

質問事項
六の1のエ 都響は、外部資金調達のためにパトロネージュ(企業協賛、個人協賛)等の仕組みがあるが、これらの過去3か年の実績、拡大に向けての取組状況について伺う。

回答
 都響が実施している外部資金調達の手段には、企業協賛金、個人協賛金、広告料収入があります。過去3か年の実績は、平成23年度が約2千8百万円、24年度は約3千1百万円、25年度は約3千4百万円となっています。
 協賛金拡大に向けては、個人協賛者に対し、チケット購入の優先権、指揮者・楽員との懇親会への招待などの特典を設けるほか、協賛を広げるため企業のCSR担当者に対し直接働きかけるなどの取組を行っています。

質問事項
六の2 より親しみやすいプログラム編成にむけて
ア 演奏会の際の聴衆へのアンケートの実施状況と、いかに反映されているかについて、具体的に伺う。

回答
 都響では、演奏会会場に意見箱を設置してお客様の意見を聴取しているほか、来場された方に対し年1回程度、演奏会への来場目的や、来場のきっかけ等、テーマを決めた調査を実施しています。
 いただいたお客様の意見も踏まえ、プログラムの編成に当たっています。

質問事項
六の2のイ 大人のための初めてのクラッシック、子ども達に向けてのクラッシック等の取組が各地の楽団でみられるが、このような入門的な企画については推進すべきだが、現状と考え方について伺う。

回答
 多くの人々に音楽に気軽に親しんでもらい、聴衆の裾野を広げていくため、現在都響では、各区市町村の教育委員会と連携し、小中学生に解説付きでオーケストラ演奏を聴いてもらう音楽鑑賞教室を、年間約60回実施しています。
 また、東京文化発信プロジェクトの一環として、多摩・島しょ地域の方々に、地域のホールや公共施設を活用して、曲目解説を含めながら無料で演奏を聴いてもらうプレミアムコンサートを年14回(オーケストラ公演6回、アンサンブル公演8回)実施しています。

質問事項
六の2のウ 都響は来年、設立50年を迎えるが、どのような記念イベントが予定されているのか伺う。

回答
 都響では、創立50周年を記念して、ヨーロッパ公演を実施します。平成27年11月中旬に、同年4月に就任する大野和士次期音楽監督の指揮により、アムステルダム、ベルリン、ウィーン等で公演を行う予定です。
 その他、定期演奏会での創立50周年記念委嘱作品の世界初演など、意欲的な記念プログラムを展開するほか、創立50周年記念誌の発行や、広報物等への創立50周年記念ロゴの使用などで、年間を通じ、都響が創立50周年を迎えたことを広くアピールしていきます。

質問事項
六の2のエ 都響と東京都歴史文化財団の「東京文化発信プロジェクト」の連携が重要だが、取組状況と今後の展開について、見通しと考え方を伺う。

回答
 東京文化発信プロジェクトの一環であるプレミアムコンサートは、多摩・島しょ地域を含めて、平成23年度は都内各所で15公演、24年度は14公演、25年度は14公演を行いました。
 今後は、オリンピック関連の曲目を積極的に取り上げたり、地元自治体等から協力を得て広報を強化するなど、引き続き東京都歴史文化財団とも連携して、東京の音楽文化の醸成を図っていきます。

質問事項
六の3 新理事長就任について
ア 都響の新理事長は元外務官僚と聞くが、人選の理由・経緯、新理事長による外部資金調達についての考え方を伺う。

回答
 新理事長の近藤誠一氏については、外交官として国際経験豊富であるだけでなく、三保松原を含めた富士山の世界遺産登録の実現などをはじめ文化庁長官としても顕著な業績を数多く残されていることなどから、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向け存在感を高めていく都響の理事長として適任であるとの判断に至りました。
 新理事長の経験も活かしながら、外部資金調達への取り組みを引き続き推進していきます。

質問事項
六の3のイ 石原都政以降の歴代理事長の前職と在任期間、主な実績について伺う。

回答
 平成11年4月の石原都知事就任以降、平成13年3月までは知事が都響の理事長となっていましたが、その後、理事長は不在となり、副理事長が理事長を代行していました。
 平成18年3月、東京都教育委員会委員であり、丸紅株式会社取締役社長、会長であった鳥海巖氏が理事長に就任しました。
 鳥海氏は、文化庁補助金や企業等協賛金の確保、職員の賞与や各種手当の見直しなどによる人事給与制度の抜本改革、世界的指揮者の招聘や楽員体制の充実による高い演奏水準の確保等に着実に取り組み、経営健全化や国際的な高評価の獲得などに大きな成果を上げました。

質問事項
六の4 都響は、東京文化会館を本拠地としているが、他の会場での演奏会も多く、本拠地の在り方についての考え方を伺う。

回答
 現在、都響は、事務所を東京文化会館内においており、東京文化会館のリハーサル室を主なリハーサル会場として利用するとともに、東京文化会館や東京芸術劇場、サントリーホールなど都内の主要なホールを拠点に活動しています。

質問事項
六の5 各種の学校や福祉施設等への出張演奏の現状について、昨年度と今年度の活動実績とその評価について伺う。

回答
 都響による、小中学校や福祉施設等への出張演奏などの小規模演奏会は、平成25年度は計97回行われています。今年度は、90回実施する予定となっています。
 こうした活動は、多くの子供たちの情操教育に貢献し、公演へ足を運びづらい方々へ癒しをお届けするとともに、クラシックファンの裾野を広げると考えています。

質問事項
六の6 都内には民間の交響楽団が多数、活動しているが、これらの楽団との差別化、都響の特色づくりについて、取組状況と考え方を伺う。

回答
 都響は、国内外の多彩な指揮者体制に加え、世界的に活躍する指揮者・ソリストとも共演し、意欲的でクオリティーの高いプログラムを展開しています。平成24年度から25年度にかけ、マーラー交響曲全9曲を連続演奏した「マーラー・ツィクルス」は、音楽ファンはもちろん専門家からも高い評価を得ています。4月には世界的な指揮者である大野和士氏が音楽監督に就任し、都響ならではの音楽活動により、更に高い芸術性を追求していきます。
 また、年間公演数の6割近くを占める、音楽鑑賞教室や福祉コンサートなどの教育・社会貢献プログラムも積極的に展開しており、高い芸術性の発揮と社会貢献活動との両立が都響の大きな特色となっています。

質問事項
七 教育政策について
1 教育委員会から各学校長への指導・通達については、いかなる手順で行われているのか。また、教育委員会の指導主事は、どのように関与しているのか、根拠法令に則して伺う。

回答
 各教育委員会は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第二十三条に基づき、所管する学校の設置、管理及び教育課程などに関する職務権限があり、校長に対して通知や通達などを通して、必要な指導・助言等を行っています。
 また、教育委員会の指導主事は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第十九条に基づき、上司の命を受け、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事しています。

質問事項
七の2 都内公立中学校における教員の、受験などに向けた進路指導のスキルアップについて、教育庁及び区市町村教育委員会の具体的な取組と、今後の展開についての考えを伺う。

回答
 都教育委員会では、都内公立中学校の教員を対象に、進路指導のための都立高校説明会を開催し、都立高校の特色ある教育活動を紹介するなど、情報提供を行っています。
 また、各区市町村教育委員会では、望ましい勤労観・職業観の育成に向けた取組や進路相談の在り方など、進路指導に関する研修会を開催し、教員の指導力の向上を図っています。
 今後もこうした取組を継続していきます。

質問事項
八 東京都恩賜上野動物園の接遇について
1 昨年1年間で入場者数が多かった日の上位3位の日と、その日の入場者数について、それぞれ伺う。

回答
 平成26年における、入場者数が多かった日とその入場者数は、最も多かった日が5月4日で76,719人、二番目に多かった日が5月3日で37,766人、三番目に多かった日が3月29日で35,534人です。

質問事項
八の2 入場者が多い日には、入場券購入のためにゲート前に待たされる一方、障害者手帳、愛の手帳、療育手帳の所持者とその付き添い者、年間パスポート所持者は、そのままゲートを通れるが、行列の最後尾等でこのことについて周知が行われているのか伺う。

回答
 恩賜上野動物園では、入場を待つ方の列の最後尾など数か所に誘導案内員や警備員を複数名配置するほか、案内看板などを設置し、障害者手帳等を所持する方や付き添い者、年間パスポート所持者などについては入場券販売の列に並ぶ必要がない旨を周知しています。

質問事項
八の3 園内の女子トイレにおいて、入場者が多い日には「トイレ渋滞」が起きているが、これについての対策は検討しているのか。また、授乳室やおむつ交換スペースは足りていると考えているのか伺う。

回答
 現在、恩賜上野動物園内には、園内13か所に178基のトイレを設置しており、このうち、車いす使用者、高齢者、妊婦、乳幼児を連れた方など、だれもが円滑に利用することができるトイレと女子トイレは76基となっています。
 園内のトイレ数は、来園者が同時にトイレを使用する数を想定し設置するとともに、春休み期間やゴールデンウイークなどの繁忙期には、仮設トイレを14基増設して対応しています。
 また、授乳室は、園内3か所に設置しており、授乳用チェア、ミルク用のお湯、ベビーベッドを備えています。オムツ交換台についても、一部の男性用トイレも含め、全てのトイレ棟に22台を設置しています。これらの施設はホームページや園内マップに表示するとともに、総合案内所などで周知を図り、利用者ニーズに対応しています。

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 河野ゆりえ

質問事項
一 再生可能エネルギーの抜本的拡大について

一 再生可能エネルギーの抜本的拡大について
1 安倍政権は、原子力規制委員会が定めた「新基準」をテコに、川内原発をはじめとする原発再稼働をすすめようとしています。これにたいし知事は、「公平中立な立場の原子力規制委員会が専門的知見に基づき判断し、その結果をふまえて国が決めていくべきもの」との見解ですが、そんな傍観者的な立場で、都民の安全が守られるのでしょうか。規制委員会も安倍首相自身も「原発に絶対安全はない」と認めているのです。都民の安全を守るべき知事として、少なくとも安全宣言もできない原発再稼働はすべきでないと表明すべきと考えますが、いかがですか。
2 知事は、所信表明で「公約に掲げた再生可能エネルギーの利用割合20%の実現について、都が立ち上げた東京都再生可能エネルギー拡大検討会から『不可能に近い』と言われたとして、2020年の目標年次を2024年にする」と述べました。
 知事は、選挙で原子力発電に依存しない社会の構築、再生可能エネルギー20%計画の構築を掲げ、その実現に向けて検討会を設置したのではありませんか。もともと、東京都は、2006年の「東京都再生可能エネルギー戦略」で、「2020年までに都のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を20%程度までたかめることをめざす」としてきました。知事は、自らの公約を後退させたばかりでなく、これまで都民とともにつくりあげてきた「東京都再生可能エネルギー戦略」までも後退させたということになります。違いますか。
 後退させた主な理由は、再生可能エネルギー導入拡大に伴う、既存の電力系統への接続にともなう技術的問題及び固定価格買い取りにともなう国民負担の増加の問題としています。
3 政府内でも、同様の動きがあります。それは、これからの再生可能エネルギー発電事業者については全量買い取り原則を改め、電力会社側が出力をおさえられるようにするというものです。家庭用の発電設備にも出力抑制を求められることになります。こうしたことが実施されれば、これからの再生可能エネルギー発電事業者は買い取ってもらえる電力量が事前に見通せず、採算計画をたてることが困難になり、再生可能エネルギー普及の機運が一気に落ち込むことになります。知事は、こうした国の動きに、どう対応するのですか。
4 もともと知事が立ち上げた「再生可能エネルギー拡大検討会」のメンバーは、「原発を再稼働しないと電力価格は上昇し、産業空洞化・雇用問題に波及する」と発言するなど電力業界の代弁者となっている座長をはじめ、原発を製造している大企業、原発推進者が理事長の団体、東京電力などの方々で構成されています。
 国内にはすでに再生可能エネルギー100%のシナリオを作成している研究機関もあります。首都東京での再生可能エネルギーを本格普及するというなら、「原発ゼロ」の立場を明確にし、その本格普及に先進的とりくみをしている学識経験者、事業者、住宅・建設業界、中小企業、都民などで構成される協議機関を立ち上げ、再生可能エネルギーの本格普及をすすめるべきです。どうですか。
5 既存の電力系統への接続にともなう技術的問題があるとしている点では、すでにWWFジャパンが5電力会社による検証では、再生可能エネルギーの発電量が毎日ピークに近い値になっていることなどの問題点を指摘し、接続上障害は起きないとの声明を発表しています。
 再生可能エネルギーが30%に達しているスペインでは、今年1月~5月の発電量は53%にまで達しました。そのスペインでは、15分単位で更新される気象予報による発電予測、12秒単位で更新される風力発電状況のデータ、水力発電やガス火力なども含めた全国レベルでの統一的な調整で、大量の再生可能エネルギーの急速な普及を支えています。また、大きな発電能力を有する再生可能エネルギー電源は中央給電司令所から直接制御できる設備が備えられています。
 したがって、既存の電力系統への接続にともなう技術的問題は、後退の理由にはなりません。違いますか。
6 電力系統への接続にともなう技術的問題については、その解決にむけ4つの提案をします。〔1〕電力会社が既存の送電網で最大どれだけ受入可能なのか情報公開すること。〔2〕非常時以外に使わないとされている5電力間の連係線を一体化して再生可能エネルギーの変動を吸収できるようにすること。〔3〕スペインのように気象予測を使った出力予測システムのような精密なシミュレーション、平均稼働率は3%の揚水ダムを再生可能エネルギーのために運用できるようにすること、大規模再生可能エネルギー発電所の発電量を制御できるようにすることなど、全体を統一的に調整・運用できるシステムを構築すること。〔4〕電力系統の接続保留問題は、再生可能エネルギーを大幅導入してきた国々で経験済みのもので、「再生可能エネルギーの本格的普及のための系統運用」との根本的な発想転換をはかるとともに、小規模、地域分散型となる再生可能エネルギーの特性をふまえ需要先と発電所の需給を制御する電力ネットワーク技術の研究開発に取り組むこと。以上4点を求めますがどうですか。
 再生可能エネルギー導入拡大による固定価格買い取りにともなう国民負担の増加の問題についても理由にはなりません。
7 固定価格買い取り制度については一部経済団体からは「廃止も含め、早急に抜本的な見直しをおこなうべき」との提案がされています。しかし、制度が始まって2年間でわかったことは、電気料金に上乗せして買い取り財源とされている「賦課金」が電気料金に占める割合は、2013年度は家庭向け電気料金の1.4%、2014年度は3%程度です。
 家庭向け電気料金が上がっていますが、その主な要因は、火力発電の燃料価格上昇分で、原油価格、LNG価格の上昇と、円安の進行によるものです。上昇分に占める賦課金の割合は10%以下です。
 にもかかわらず、再生可能エネルギー導入の拡大が国民負担を増大させるかのような議論をしていること自体、問題です。そもそも、すでに電気料金には電源開発促進税として電源を生み出すための税金が含まれており年間3600億円も電力使用者が負担します。しかし、これが主に原発のためにつかわれており、この財源を再生可能エネルギーの買い取り費用にあてれば、消費者の負担を抑えることができます。国民の負担増大を避けるというなら、こうした点こそ、改善を求めるべきではありませんか。
8 さらには、原発がほとんど発電していないにもかかわらず、総括原価に維持管理経費、安全対策工事、使用済み燃料再処理などに巨額な費用がかかっていると言われています。消費者からあつめられた賦課金、調整機関から納付された金額、地域間の負担のばらつきを調整している調整機関に納付された金額、調整機関から電力会社に交付された金額など、賦課金に係わる資金の流れ、賦課金の算定根拠、再生可能エネルギーを調達しなかったとした場合の調達費用の算定根拠などを十分情報公開すべきです。どうですか。
9 公益財団法人自然エネルギー財団は、この2年間の固定価格買い取り制度の運用実績をもとに、電力を多く消費する事業所ほど負担額が小さくなるなど賦課金減免制度の見直すことをはじめとした改善すべき基本的方向性を発表しています。これらの調査・研究にもとづき、国に改善するよう求めることを提案します。どうですか。
 次に、再生可能エネルギー普及の抜本的強化についてです。
10 現在、都内の太陽光発電設備容量は26万キロワットです。環境省の調査によれば、建物全体に占める設置割合では、北海道、新潟県など豪雪地帯を除けば最下位レベルです。都内の住宅系、公共系建築物、発電所・工場等、低・未利用地などで、500万kW近く導入できる可能性があります。都が必要な予算もつぎ込んで、NPOなど市民団体、民間企業、区市町村とも協力すれば大幅に増加させることが可能だと思います。とりわけ、都有地、都有施設については、一斉点検し、可能性を最大限活かす取組みを求めます。
11 都は太陽光発電の「設置コストが下がった」として燃料電池や蓄電池など同時に設置する場合等、初期投資が多額になるケースに限定するなど門戸を狭くしていますが、都民が設置しやすくなるような独自の支援策を拡充することこそ必要です。また、区市町村とも協力して、設置件数を大幅に増加させるしくみを拡充するよう、求めます。お答えください。
12 小型風力発電については、大型風力発電と同等の環境アセスメント制度が課せられたり、設置について規制となる建築基準法、電気設備としての取り扱いに係わる電気事業法、小型風力発電を複数組み合わせると大型風力発電と同等に見なされる仕組みなど、普及、市場化の阻害要因となっている数々の問題があります。これらの普及阻害要因について、関係者と協議を進めて早急に改善する必要があるのではありませんか。
13 小型風力発電につかわれるパワコン(インバーター)の認証業務が遅れています。その改善を国に早急にすすめるよう求めること、都立産業技術センターとも連携して、小型風力発電用のインバーター開発に取り組むと共にその認証試験方法について先駆的に国に提案していくことを提案します。それぞれ、どうですか。
 大都市東京における再生可能エネルギー源として期待されているものに、バイオ燃料・発電があります。
14 多摩の森林再生、花粉症対策などで伐採した木材、また都内の製材所、住宅の新規建築、リフォームなどにともなう端材などを有効活用して、木質チップ・ペレットの生産と普及を支援することも再生可能エネルギー普及へ大きな力になると思いますが、どうですか。
15 木質ペレットを使うストーブ、ボイラーなどが既に、できあがっています。それらの購入費を助成すれば、木質ペレットを使うストーブ、ボイラーが普及すると思いますが、どうですか。
16 畜産業者からの家畜のふん尿などの排出物、飲食店・食堂・食品製造業からの食品残渣、家庭・お店・工場からの廃油、下水道汚泥などを活用したバイオガス製造について研究することは、大都市の再生可能エネルギーの創出に大きな展望が開けてきます。すでに、家畜のふん尿などと食品残渣を混合した場合のバイオガス発生量が増加するという研究結果があります。実際にドイツで進んでいます。東京都も、都内中小業者、研究者などに研究委託し、その活用をすすめ、前にすすめるよう求めますが、どうですか。
 次に、全体のエネルギー消費を削減していく取組みについてです。
17 住宅の省エネ化・エコ住宅を増やすとりくみにもさらなる努力が必要です。エコ住宅は、太陽光・熱を取り込み、中の熱を逃がさないようにすることが基本です。その具体的な方法については、すでに都市整備局がガイドブックを発行しています。しかし、その省エネ効果の検証が十分ではなく、その投資を促す上では、省エネリフォームの投資効果を明確に示す改善が必要です。都として、改善することを求めます。どうですか。
18 窓ガラスの複層化、壁、窓、床の断熱化などの工事費は経済的負担がかさみます。都として省エネリフォーム助成の実施、新築住宅のエコ化への助成をすすめることを提案します。どうですか。
19 省エネ化が遅れている中小企業対策も重要です。特に売上高に占める電力消費量が多い事業所の場合は、総電力量が要件にあてはまらずに、賦課金支払いの減免が受けられません。
すでに都は、照明のLED化など省エネ効果が見込まれる省エネルギー設備を導入する中小テナントビルにたいして助成を始めました。中小企業、中小医療・福祉施設の省エネ化への支援、助成もすすめるなど、抜本的に強化するよう求めます。どうですか。

平成26年第四回都議会定例会
河野ゆりえ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 再生可能エネルギーの抜本的拡大について
1 安倍政権は、川内原発をはじめとする原発再稼働を進めようとしているが、安全宣言もできない原発再稼働はすべきでないと表明すべきだが、見解を伺う。

回答
 原発の再稼働については、国会での議論を経て、専門的知見に基づき公正中立な立場で独立して職権を行使する行政機関として、原子力規制委員会が設置されており、この委員会が、科学的な見地から様々な調査を行い、リスクの評価や新規制基準への適合性の判断を行うとされています。
 その結果、基準への適合性が認められた原発については、立地地域の意見を聞きながら、国が最終的に原発の再稼働について判断していくべきものと考えます。

質問事項
一の2 都は、2006年の「東京都再生可能エネルギー戦略」で、「2020年までに都のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を20%程度までたかめることをめざす」としてきたが、目標年次を2024年に後退させたことについて伺う。

回答
 東日本大震災以降、電力需給の安定が大きな課題となる中、電力の大消費地である東京が、都市活動を支える電力需給の安定を図るとともに、気候変動対策にも資する低炭素な電力の利用割合を拡大していくことが重要です。
 このため、東京の電力に占める再生可能エネルギーの割合を20パーセント程度に高めることを目指し、専門家による検討を進め、拡大に向けた目標設定や具体策について提言をいただきました。
 これを踏まえ、東京都長期ビジョンにおいて、10年後の2024年までに東京の消費電力に占める再生可能エネルギーの割合を20パーセント程度に高める目標を定めました。
 目標の実現に向け、都民・事業者等と連携し、再生可能エネルギー拡大に向けた取組を着実に推進してまいります。

質問事項
一の3 これからの再生可能エネルギー発電事業者については、全量買取 原則を改め、電力会社側が出力を抑えられるようにし、家庭用の発電設備にも出力抑制を求められるなど、再生可能エネルギー普及の機運が一気に落ち込むことになる。こうした国の動きに、どのように対応するのか伺う。

回答
 都は、国に対し、関東知事会など他の自治体とも連携し、必要な見直しは行いながら、再生可能エネルギーの導入拡大方策を講じるよう提案してきたところであり、今後も引き続き求めてまいります。

質問事項
一の4 首都東京での再生可能エネルギーを本格普及するならば、「原発ゼロ」の立場を明確にし、その本格普及に先進的取組をしている学識経験者、事業者、住宅・建設業界、中小企業、都民などで構成される協議機関を立ち上げ、再生可能エネルギーの本格普及を進めるべきだが、見解を伺う。

回答
 東日本大震災以降、電力需給の安定が大きな課題となる中、電力の大消費地である東京が、都市活動を支える電力需給の安定を図るとともに、気候変動対策にも資する低炭素な電力の利用割合を拡大していくことが重要です。
 このため、再生可能エネルギー事業の最先端を担う企業、エネルギー供給事業者、研究機関、学識経験者等の専門家による検討を進め、拡大に向けた目標設定や具体策について提言をいただきました。
 これを踏まえ、東京都長期ビジョンにおいて、10年後の2024年までに東京の消費電力に占める再生可能エネルギーの割合を20パーセント程度に高める目標を定め、実現に向けた具体的な政策展開を示しました。
 都は、都民・事業者とも連携し、省エネ・節電とともに、住宅等への太陽光発電の導入推進など、需給両面にわたる多面的な取組を着実に進めてまいります。

質問事項
一の5 既存の電力系統への接続にともなう技術的問題は、後退の理由にはならないが、見解を伺う。

回答
 電力系統への接続制約については、国に対し、関東知事会など他の自治体とも連携し、必要な見直しは行いながら、再生可能エネルギーの導入拡大方策を講じるよう提案してきたところであり、今後も引き続き求めてまいります。

質問事項
一の6 電力系統への接続にともなう技術的問題の解決にむけ、電力会社が既存の送電網で最大どれだけ受入可能なのか情報公開すること、5電力間の連係線を一体化して再生可能エネルギーの変動を吸収できるようにすること、全体を統一的に調整・運用できるシステムを構築すること、根本的な発想転換をはかるとともに、需要先と発電所の需給を制御する電力ネットワーク技術の研究開発に取り組むこと、以上4つの提案をするが、見解を伺う。

回答
 電力系統への接続に伴う技術的問題の解決に向けた取組は、国や電力会社が行うべきものであり、都は、国に対し、関東知事会など他の自治体とも連携し、必要な見直しは行いながら、系統設備の整備促進、送電系統の一体運用や系統運用技術の活用など、再生可能エネルギーの導入拡大方策を講じるよう提案してきたところであり、今後も引き続き求めてまいります。

質問事項
一の7 電気料金には電源開発促進税として電源を生み出すための税金が含まれており、この財源を再生可能エネルギーの買い取り費用にあてれば、消費者の負担を抑えることができる。こうした点こそ、改善を求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 固定価格買取制度による再生可能エネルギー電気の買取費用は、電力を利用する全員が、再生可能エネルギー電気の普及によるメリットを得るとともに、電気の一部として供給されていることから、電気の使用量に応じて賦課金として負担することとしています。
 現在、国において、固定価格買取制度の在り方について検討が進められており、都は、国に対し、関東知事会など他の自治体とも連携し、必要な見直しは行いながら、再生可能エネルギーの導入拡大方策を講じるよう提案してきたところであり、今後も引き続き求めてまいります。
 また、電源開発促進税の在り方については、国が必要に応じて検証を行っていくべきものであると考えます。

質問事項
一の8 賦課金に係わる資金の流れ、賦課金の算定根拠、再生可能エネルギーを調達しなかったとした場合の調達費用の算定根拠などを、十分情報公開すべきだが、見解を伺う。

回答
 賦課金は、電気の使用量に応じて電気料金の一部として徴収されるものですが、その単価は全国一律であり、法令に基づき、買取単価や再生可能エネルギーの導入見込み等を基に毎年度国が定めます。なお、推測値と実績値の差分については、翌々年度の再エネ賦課金単価で調整します。
 賦課金等の算定根拠や、調整機関の納付金・交付金額等は、ホームページ等で公表されています。

質問事項
一の9 公益財団法人自然エネルギー財団は、この2年間の固定価格買い取り制度の運用実績をもとに、賦課金減免制度を見直すことをはじめとした改善すべき基本的方向性を発表しており、これらの調査・研究にもとづき、国に改善するよう求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、国に対し、関東知事会など他の自治体とも連携し、必要な見直しは行いながら、再生可能エネルギーの導入拡大方策を講じるよう提案してきたところであり、今後も引き続き求めてまいります。

質問事項
一の10 現在、都内の太陽光発電設備容量は26万キロワットであり、都が必要な予算もつぎ込んで、NPOなど市民団体、民間企業、区市町村とも協力すれば大幅に増加させることが可能である。とりわけ、都有地、都有施設については、一斉点検し、可能性を最大限活かす取組をすべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、都有施設等への再生可能エネルギー(太陽光発電設備)の拡大については、これまでも「都有施設省エネ・再エネ等導入指針(平成21年3月策定)」に基づき、取り組みを進めております。
 今後、最新の省エネ設備や多様な再生可能エネルギー設備を盛り込んだ「省エネ・再エネ東京仕様(平成23年7月策定、平成26年6月改正)」の活用などにより、都有施設等への再生可能エネルギー(太陽光発電設備)の導入に引き続き取り組んでまいります。

質問事項
一の11 都は太陽光発電について、都民が設置しやすくなるような独自の支援策を拡充することこそ必要であり、また、区市町村とも協力して、設置件数を大幅に増加させる仕組みを拡充すべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、平成21年度から太陽光発電設備を単独で導入した場合に補助を行っていましたが、設置コストが大幅に下がってきたことや国の固定価格買取制度が導入されたこともあり、平成24年度で終了しています。
 平成25年度からは、家庭におけるエネルギー利用の効率化・最適化を行う機器の普及を促進するとともに、併せて太陽エネルギーの利用拡大を図るため、HEMS等の導入を条件として、家庭用燃料電池等の導入に対する補助を行っており、これに加えて太陽光発電設備を導入する場合には、補助を上乗せしています。
 さらに、都内の建物の太陽光発電の導入ポテンシャルをインターネット上で把握できる「東京ソーラー屋根台帳」を公開するとともに、区市町村が屋根台帳を活用して行う普及促進事業を実施する場合に財政支援するなど、区市町村との連携も図りながら、都内における住宅での太陽光発電の普及拡大に努めております。

質問事項
一の12 小型風力発電については、普及、市場化の阻害要因となっている数々の問題がある。これらの普及阻害要因について、関係者と協議を進めて早急に改善すべきだが、見解を伺う。

回答
 再生可能エネルギーについては、設置場所周辺の環境への配慮や、設備の安全性の確保を前提として、普及拡大を図っていく必要があります。
 都は、風力発電等の設置に係る環境アセスメントの迅速化など、再生可能エネルギーの普及拡大に向けて必要な措置を講じるよう、国に提案要求を行っています。

質問事項
一の13 小型風力発電に使われるパワコン(インバーター)について、認証業務の遅れの改善を国に求めること、都立産業技術センターと連携した小型風力発電用インバーターの開発と、その認証試験方法について国に提案すべきだが、それぞれについて伺う。

回答
 小型風力発電のパワーコンディショナーに係る認証試験方法の検討や発電用設備の技術開発については、国や民間事業者によって進められるべきものです。

質問事項
一の14 多摩の森林再生、花粉症対策などで伐採した木材、また都内の製材所、住宅の新規建築、リフォームなどにともなう端材などを有効活用して、木質チップ・ペレットの生産と普及を支援することも再生可能エネルギー普及へ大きな力になるが、見解を伺う。

回答
 都は既に、区市町村補助制度において、地域の特性に応じて木質バイオマスエネルギーの利用拡大に取り組む区市町村が行う木質資源燃料化施設の整備なども補助対象としています。

質問事項
一の15 木質ペレットを使うストーブ、ボイラーなどの購入費を助成すれば、それらが普及すると思うが、見解を伺う。

回答
 都は既に、区市町村補助制度において区市町村が設置する木質ペレットを使うストーブ、ボイラーなども補助対象としています。

質問事項
一の16 バイオガス製造について、都も、都内中小業者、研究者などに研究委託し、その活用を進めるべきだが、見解を伺う。

回答
 都が推進している東京スーパーエコタウン事業では、食品廃棄物を発酵させてバイオガスを製造する民間施設が平成18年から稼働しています。
 さらに、東京スーパーエコタウン事業では今後、飼料化とバイオガス化を同時に行う新たな施設の整備を予定しています。

質問事項
一の17 住宅の省エネ化・エコ住宅について、都市整備局がガイドブックを発行しているが、その省エネ効果の検証が十分ではなく、省エネリフォームの投資効果を明確に示す改善をすべきだが、見解を伺う。

回答
 「住宅の省エネリフォ-ムガイドブック」は、住宅の省エネルギー性能の向上を図るためのリフォ-ムの実施事例を都が募集し、リフォ-ム事業者や都民が省エネリフォ-ムを検討する際に役立つ優良事例などを取りまとめたものです。
 断熱性能の向上や設備機器の高効率化等の技術的な情報のほか、工事費用及びリフォ-ム前後の光熱費削減実績を金額で示すとともに、快適性の向上などの効果についても「建築主からのメッセ-ジ」として紹介するなど、投資効果についても多くの有益な情報を示しています。

質問事項
一の18 都として、省エネリフォーム助成の実施、新築住宅のエコ化への助成を進めるべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、集合住宅の新築時等において建築物環境計画書制度やマンション環境性能表示制度により、建築物の省エネ化を推進しています。また、家庭におけるエネルギー利用の効率化・最適化を行う機器の普及を促進するため、HEMS等の導入を条件として、家庭用燃料電池等の導入に対する補助を行っています。
 住宅の省エネ性能の向上を図る上では、熱の出入りの多い開口部に断熱性能の高い建材を活用することなどが効果的と考えています。今後、リフォーム時に省エネ性能の向上を図る取組を検討していきます。

質問事項
一の19 都は、省エネルギー設備を導入する中小テナントビルに対して助成を始めた。中小企業、中小医療・福祉施設の省エネ化への支援、助成も進めるなど、抜本的に強化すべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、資金等に乏しい中小規模事業所の省エネを後押しするために、既に、地球温暖化対策報告書制度、無料省エネ診断、業種別省エネ研修等への無料講師派遣などを実施しています。
 こうした取組に加え、今年度から、中小テナントビルの省エネ改修の助成や中小医療・福祉施設のESCO事業活用の支援を実施しています。
 また、ITの進展に伴い増大する中小規模事業所のエネルギー消費量の低減策を検討していきます。

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 小竹ひろ子

質問事項
一 都内の学校図書館に専任の学校司書の配置について
二 樋口一葉ゆかりの国登録有形文化財「旧伊勢屋質店」の存続について

一 都内の学校図書館に専任の学校司書の配置について
 今年6月に学校図書館法の一部が改正されました。第6条で、学校には司書教諭のほか、「学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員(次項において「学校司書」という)を置くよう努めなければならない。」とされ、その第2項では、「国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされました。学校図書館への専任の学校司書の配置が、学校図書館法に法的に位置づけられ、来年4月1日より施行されることになったのです。
 この法改正は、独自の努力で学校司書を配置し子どもや教師のニーズに応えてきた小・中学校の校長会や教育関係団体、学校図書館や読書推進の関係団体などからの「学校司書を位置づけてほしい」という強い要望をうけ、国会の超党派の学校図書館議員連盟が法改正案を提出し、衆参両院で全会派一致で可決成立したものです。
1 都教育委員会は学校図書館を学校教育の中でどのように位置づけ、学校図書館の役割をどのように考えているのか、その認識を伺います。
2 今回の学校図書館法の改正をどのように受け止め、都内の学校図書館の改善をはかっていくのか伺います。
 私は、長年学校司書として、先生方とともに子どもたちの読書や学びを保障する活動に取り組んできた司書の方の話を聞き、学校図書館問題研究会の「学校司書ってこんな仕事」という本なども読み、大変感動を覚えました。
 「子ども達は知りたいことが一杯、しかも、それは待ったなしの場合が多い、子どものすぐ身近にある学校図書館だからこそ、その知りたい気持ちに応えることで、調べることがとても楽しくなるし満足感がある。それが次につながるのだと思う。これが学校に図書館があることの大切さだ。子どもだけではなく、教師も授業で使いたい本、群読に向く詩を紹介してほしいとか、説明文を理解させるのに教科書以外適当な本ないか等、その依頼に応えて資料を提供している」とのことです。
 また、「『ぼく、ほんまに図書館好きや』『ここがいちばん落ち着くわ』と、くつろいでいる子どもたち、『何かおもしろい本ない?』と聞いてくる子どもたち、子どもたちと本をしっかりつなぐには、学校図書館がいつも開いていて、そこに学校司書がいて、教職員の相談に応じ常に授業に活用でき、子どもたちに資料提供しているという、日常的な図書館活動があってこそ。いつでも誰でも自然に“ふだん使い”できる学校図書館があってこそのこと。子ども達に図書館の達人になってほしい。本を通して時空を超えて人の思いとつながり、様々な知識や新しい世界に出会え、知ることの喜びを感じてほしいと思って活動している」など、子どもや教師の支えとなり、本と人を結びつけ、特に子どもたちの知的好奇心を呼び覚まし、「生きる力」を与える専門職としての優れた実践が重ねられています。
 法案審議にあたり、衆参両院でそれぞれ6項目にわたる附帯決議がつけられました。そのなかで、衆議院の附帯決議では、「(三)政府及び地方公共団体は学校司書の職務の重要性を踏まえ、学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる環境の整備に努めること。」、また参議院の附帯決議では「(三)政府及び地方公共団体は、学校司書が継続的な職務に基づく知識・経験の蓄積が求められるものであること等に鑑み、学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる任用・勤務条件の整備に努めること。」とされています。学校司書を配置する上で、専門性と安定的な雇用を求めているのです。
3 学校司書の専門性と雇用のあり方についてどう考えているのか、認識を伺います。
 私たち日本共産党都議団は、今年11月に都内各区市町村に対し「小・中学校の学校司書等の配置に関する調査」を行いました。調査結果の十分な分析はこれからですが、学校図書館への司書などの職員の配置に前進がはかられていることがわかりました。23区と多摩地域の自治体のうち、全小中学校の図書館に司書などの職員を配置している区市町村は、小学校では16区(69.6%)、20市(76.9%)、3町村(75%)でした。中学校では15区(65.2%)、21市(80.8%)、3町村(75%)でした。小中学校いずれも配置していないのは3区1町、小学校未配置は1区、中学校未配置は1区2市となっていました。他の自治体は一部の小中学校に配置しています。
資格要件として、司書を配置しているのは9区8市、司書又は司書教諭としているのは6区14市1町、特に資格を求めていないのは3区4市2町でした。
 配置時間は自治体によりまちまちで、1日5~6時間、学校がある日は毎日配置しているなど、1校あたりの配置時間が年間1000時間をこえているのは4区(足立区は中学のみ)5市2町でした。その一方で、1週間に1日しか配置していない自治体は6区(大田区は小学校のみ)1市1村でした。夏休み中も配置している自治体は13区16市1町(奥多摩町は中学のみ)となっていました。
 雇用形態は、非常勤が6区17市3町村、業務委託が8区5市、有償ボランティアが3区2市、他は派遣、臨時、嘱託、指定管理などで、すべてが非正規の不安定な雇用となっており、しかも契約期間も1年又は1年未満がほとんどであり、更新も6回までが国立、東大和、武蔵村山の3市で、5回までが品川、渋谷、杉並の3区となっているなど、身分的には非常に不安定なものとなっています。
 子どもたちにとって、学校でいつも図書館が開館していて専門の司書が支援するなかで、休憩時間や放課後などに自由に利用できるかどうかは、読書の喜びを知り、知的好奇心を喚起する上で重要です。
 雇用の実態が非常勤や業務委託など、身分的に不安定で契約期間も短期なものとなっていては、職務の継続によって蓄積されるはずの知識や経験が生かされず、衆参両院の附帯決議にもそぐわないと考えます。
 今、子どもの貧困が社会問題になっているなかで、親の経済力により本との出合いがない子どもも増えているといわれています。どの子も本とふれ合い、読書の喜びを感じ、主体的に学び、生きる力につながる学びの保障の基礎となる学校図書館の充実は欠かせません。
 その点からも、東京都内にある小中学校の学校図書館の充実は重要です。法施行にあたり、都が率先して拡充に努めることを求めます。島根県などは市町村への財政補助を続け、ほぼ全校に専任の司書が配置されました。この点からも都が果たすべき役割は大きいと考えます。
4 都内に住む子どもたちすべてが読書の楽しみを味わうことができ、子どもたちの学ぶ権利、読書の権利を保障する場として、小中学校の学校図書館に、専門性を持った学校司書を専任で正規配置することが必要です。都として正規職員を配置する、また正規配置できるように区市町村を支援すべきと考えますが、いかがですか。
 都立高校では、学校司書の民間委託が進められ、全都立高校の3分の1の61校の図書館業務が委託されています。しかも競争入札のため年々委託費も低下傾向にあります。そのことはそこで働く専門家である学校司書の待遇に影響することは明らかです。
 都教育委員会はかつて、全国に先駆けて都立高校に学校司書を配置し全国をリードしてきました。しかし2000年以降、学校司書の定数を減らして退職不補充とし、2011年度からは学校司書業務を1年契約で民間企業に委託しているのです。
5 都立高校図書館の民間委託をやめ、都として学校司書の採用を再開し、図書館業務の継続・充実を図るよう求めるものです。

二 樋口一葉ゆかりの国登録有形文化財「旧伊勢屋質店」の存続について
 明治の作家、樋口一葉(1872-1896年)が通ったことで知られる文京区本郷の旧伊勢屋質店が取り壊される危険のあることが、マスコミでも報道されています。地元では愛着を持つ人たちを中心に「一葉の伊勢屋質店を残す会」が結成され、保存のための運動が、急速に広がっています。
 伊勢屋質店は1860(万延元)年に創業し、1982(昭和57)年に廃業するまで本郷菊坂(現文京区本郷5丁目)で122年続いた老舗です。木造2階建ての土蔵と見世(みせ)、木造平屋の座敷の計3棟(延べ床面積174.3平方メートル)からなっています。蔵は幕末に足立区鹿浜で創建されたものを、1887(明治20)年に移築、座敷は1890年、見世は1907年に建てられました。
 一葉は、1890年9月から1893年7月までの3年間、本郷菊坂に住み、その後下谷龍泉寺町(台東区)に転居しましたが、翌94年5月には菊坂に近い丸山福山町に移り住み、赤貧暮らしの中でしばしば伊勢屋に通ったことが日記にも登場しています。そして2年半後の1896年11月23日に亡くなりました。東京大学赤門前の法真寺近辺は、一葉が幼少期を過ごし、晩年「桜木の宿」と言って懐かしんだ場所で、旧伊勢屋質店とその周辺は、一葉の後半生が凝縮されている地域でもあります。
 質店の建物は、経営者の家族が代々大切にし、関東大震災、東京大空襲、バブル期の地上げも乗り越えました。一時期、小金井にある東京たてもの園への移築の話もありましたが頓挫し、2003年「旧伊勢屋質店」として国登録有形文化財に指定されています。
 一級建築士で文化女子大学講師の伊郷吉信氏は「伊勢屋質店の魅力を語る」シンポジウムで、「伊勢屋質店は山手線内で最古の商家建築である。土蔵は江戸時代に建築され、明治20年足立区鹿浜から移築され、建物の記録がきちんと残っている貴重なものである」と述べ、現在地に残すことの意義を強調しています。伊郷氏はまた、「文豪ゆかりの店であり、坂の街文京区の象徴でもある。明治の商家の生活を伝える生活史、建築史、都市史など、多くの観点から貴重な遺構」と評価しています。
 2002年からは、市民団体「文京の文化環境を生かす会」と「たてもの応援団」の協力で、毎年11月23日の一葉忌に一般公開され、13年間で9000人もの方々が訪れている建物でもあります。
現在、東京都内は再開発などがすすんでいますが、それにより貴重な文化財が失われるようなことは避けなければなりません。
1 先人の文化遺産・文化財を保存し、後世に引き継いでいくべきと考えますが、見解を伺います。2020年のオリンピック・パラリンピック開催都市としても、文化的な財産を大切にすべきではないでしょうか。
2 都として、旧伊勢屋質店の文化財としての価値を改めて検証し、文京区と連携して、旧伊勢屋質店を残すための手立てをとるよう求めます。

平成26年第四回都議会定例会
小竹ひろ子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 都内の学校図書館に専任の学校司書の配置について
1 今年6月に学校図書館法の一部が改正され、学校図書館への専任の学校司書の配置が法的に位置づけられたが、都教育委員会は、学校図書館を学校教育の中でどのように位置づけ、役割をどのように考えているのか、認識について伺う。

回答
 学校図書館は、図書等を収集、整理、保存し、児童・生徒や教員に提供することにより、教育課程の展開に寄与するとともに、児童・生徒の健全な教養を育成する学校の設備として重要であると認識しています。

質問事項
一の2 今回の学校図書館法の改正をどのように受け止め、都内の学校図書館の改善を図るのか伺う。

回答
 平成26年7月の学校図書館法の一部を改正する法律の公布にかかる文部科学省通知では、「学校司書の配置については、学校図書館における教育の充実の観点からこれまで自主的に取組が進められてきており、ついては、今回法改正が行われたことに鑑み、引き続き必要な学校司書の配置に努めるよう留意すること。」とされているところであり、学校司書の配置の在り方については、学校の設置者である各自治体の自主的な判断に委ねられているものと考えています。
 なお、都立学校においては、学校図書館法の趣旨を踏まえ、司書教諭を中心に学校全体で適切に学校図書館の運営に取り組んでいます。

質問事項
一の3 学校司書の専門性と雇用のあり方について、どのように考えているのか、認識について伺う。

回答
 学校司書の雇用については、学校の設置者である各自治体の自主的な判断に委ねられており、各自治体が学校司書の資質・能力の向上のために必要な措置を講じるべきと考えています。
 都教育委員会は、都立学校に勤務する学校司書に対し、専門知識を習得し、職務能力の向上を図ることを目的として、専門実務研修を実施しています。また、学校図書館の管理を委託している高校では、従事者は司書としての資格を有し、かつ、公立図書館等における勤務経験を有する者と定めるとともに、受託者が業務開始前に図書館業務に関する研修を実施することにより、専門性を確保しています。

質問事項
一の4 小中学校の学校図書館に、専門性を持った学校司書を専任で正規配置することが必要であり、都として、正規職員を配置する、また正規配置できるように区市町村を支援すべきだが、見解を伺う。

回答
 小中学校の学校司書については、国のいわゆる「標準法」に位置づけられていないため、都教育委員会としては、正規職員を配置していません。
 また、学校司書の配置については、既に国による地方財政措置がなされており、都教育委員会として、更なる支援をすることは考えていません。

質問事項
一の5 都立高校図書館の民間委託をやめ、都として、学校司書の採用を再開し、図書館業務の継続・充実を図るべきだが、見解を伺う。

回答
 都教育委員会では、平成23年度から、学校司書職員に欠員が生じる学校については、順次、業務委託を導入しています。
 業務委託導入校においては、業務の終了時刻を生徒が下校する時刻よりも遅い時間とすることで開館時間を拡大するとともに、長期休業期間においても業務日とすることで開館日数を拡大させるなど、学校図書館の利便性を向上させ、生徒の読書活動を推進しています。
 今後も、引き続き、学校司書職員に欠員が生じる学校については、順次、業務委託に切り替えていきます。

質問事項
二 樋口一葉ゆかりの国登録有形文化財「旧伊勢屋質店」の存続について
1 先人の文化遺産・文化財を保存し、後世に引き継いでいくべきと考える。2020年のオリンピック・パラリンピック開催都市としても、文化的な財産を大切にすべきだが、見解を伺う。

回答
 文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、かつ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものです。
 都教育委員会では、都内に存在する貴重な建造物や史跡等について、国や都の文化財への指定を推進し、その保存と活用に努めています。

質問事項
二の2 都として、旧伊勢屋質店の文化財としての価値を改めて検証し、文京区と連携して、旧伊勢屋質店を残すべきだが、見解を伺う。

回答
 旧伊勢屋質店は、文化庁が文化財としての価値を判断し、見世、土蔵及び座敷棟の3棟が平成15年2月26日に国登録有形文化財(建造物)に登録されています。
 都教育委員会では、区市町村など文化財を管理する団体が行う活用整備、防災対策及び耐震補強工事等に対し、国とともに補助の実施や、専門的・技術的な指導を行い、国登録有形文化財の適切な保存に努めています。

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 中村ひろし

質問事項
一 自転車交通の安全について

一 自転車交通の安全について
 自転車は環境にも健康にもすぐれた乗り物です。昨今、自転車関連の事故の報道が多くあり、マナーの悪さも指摘されていますが、単に悪者にするのではなく利用しやすい環境を整備することで事故を減少させ利用促進につなげていくことが大切です。東日本大震災での帰宅困難者問題から通勤手段が見直され自転車通勤に変えた方もいると聞くなど、エネルギーの問題から都民の意識も変わってきています。
 現在、「東京の総合的な交通政策のあり方検討会」で自転車を含めた交通のあり方が検討されていますが、その前提として何より安全が確保されなければなりません。平成24年10月に建設局が「東京都自転車走行空間整備推進計画」を策定しています。また、「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を制定し、さらに、第9次東京都交通安全計画を受けて今年1月には青少年・治安対策本部が「東京都自転車安全利用推進計画」を策定しています。今都議会定例会冒頭の舛添知事の所信表明で、「交通事故による死者数が、昨年を上回りかねないペースで増加」との発言もありましたが、自転車関連の事故についても対応を強化する必要があります。しかし、私自身も身近な移動はほとんど自転車を利用しますが、決して走りやすく安全な環境とは言えません。自転車の安全利用の促進に向けて以下、質問します。
1 「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」、「東京都自転車安全利用推進計画」が制定されましたが、これにより施策がどのように変化をしたか、具体的な取り組みを伺うとともに、現状捉えている課題を伺います。
2 スマートフォンで視覚を失い、ヘッドホンで聴覚を防ぎ、危ない走行が多く見られます。携帯電話をかけながらの走行は問題があることは認識されてきましたが、以前からあるヘッドホンをしながらの運転が禁止されていることはあまり普及されているとは言えません。広報と啓発が必要ですが所見を伺います。
3 高齢者の自動車運転免許返納を進める政策がありますが、その代わりに自転車の利用をされる場合も多くあります。しかし、高齢者の自転車走行では、転倒が危ぶまれる場合も多く見られます。そのため、三輪車や補助輪の普及も必要です。高齢者の安全教育をより一層行うべきと考えますが所見を伺います。
4 自転車は原則車道を走ることになりましたが、実際の車道の端は凹凸が激しかったり、排水溝の格子状のふたがあったりと、決して走りやすい状況ではありません。そのため、歩道に入るか車道にはみ出さざるを得ない状況になってしまいます。道路の自転車が走行する部分を総点検し改善すべきと考えますが所見を伺います。
5 横断歩道の手前などでは、歩道の端にブロックが設置されており数センチの段差があります。もう少し段差が小さい方が自転車の通行がスムーズになりますし、また、高齢者にとっても、つまづきが少なくなります。段差を検討する必要があると思いますが所見を伺います。
6 自転車通行可能の歩道においても、自動車が歩道をまたぐ形で自宅の車庫の入り口がある場合に自己の負担で歩道に切り下げをつける箇所が多くありますが、自転車が徐行して走りにくいばかりか、高齢者や車椅子の人が通りにくいとの声が寄せられます。車庫から自動車が出入りできることは必要ですが、自転車や歩行者への配慮も必要と考えますが所見を伺います。
7 自転車レーンや自転車歩行者道など、自転車走行空間の整備を進めることは必要です。広い車道や歩道の道路であれば整備も進むのですが、現状は、そのような道路ばかりではなく、特に幅員が狭い道路での整備は容易ではありません。このため、優先順位を決めて自転車走行空間の整備を進め、自転車や歩行者の安全を早期に確保することが重要と考えますが、所見を伺います。
8 道路の無電柱化が進められていますが、都心部を中心に景観のために進められています。しかし、安全のためにこそ優先して進めるべきであり、狭い道路で電柱によって危険な状況にあるものから対応すべきと考えますが、所見を伺います。

平成26年第四回都議会定例会
中村ひろし議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 自転車交通の安全について
1 「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」、「東京都自転車安全利用推進計画」が制定されたが、これにより施策がどのように変化をしたか、具体的な取組と成果を伺うとともに、現状捉えている課題について伺う。

回答
 都内における自転車が関与する交通事故の割合は、全体の3割を超える高い水準にあります。
 そのため、都は、昨年1月、「東京都自転車安全利用推進計画」を策定し、以前から実施している自転車安全教室の開催などに加え、事業者による従業員研修を支援する教材の提供や講習会の実施など、新たな取組を展開しています。
 今後も引き続き、こうした取組を充実させ、自転車利用者のルール、マナーの周知徹底を図っていきます。

質問事項
一の2 携帯電話をかけながらの走行は問題があると認識されてきたが、ヘッドホンをしながらの運転が禁止されていることはあまり普及していない。広報と啓発が必要だが、所見を伺う。

回答
 ヘッドホン等を使用して、交通に関する音が聞こえないような状態で自転車を運転することは禁じられており、広く周知が必要なことから、自転車安全利用リーフレットにも禁止事項として明示しているところです。
 加えて、広く都民に交通安全意識を普及浸透させることを目的とした「平成26年TOKYO交通安全キャンペーン」のポスターにも、この行為の禁止について啓発する絵を採用するなど、普及啓発に取り組んでいます。

質問事項
一の3 高齢者の自転車走行は、転倒が危ぶまれる場合も多く見られるため、三輪車や補助輪の普及が必要であり、高齢者の安全教育をより一層行うべきだが、所見を伺う。

回答
 都内の交通事故死者数に占める高齢者の割合は、約4割と高い水準にあることから、高齢者の安全教育は重要です。
 そのため、都は、地域で行われる交通安全教室等において、高齢による身体機能の低下等を自覚してもらうよう、「自転車シミュレータ」、「歩行者教育システム」等を活用した参加・体験型の交通安全教育を実施しています。
 また、スーパーや各種イベント等において、反射材やリーフレットを配布し、交通安全の啓発活動を行っています。
 今後も引き続き、こうした取組を充実させ、一人でも多くの高齢者に交通安全意識が浸透するよう、普及啓発に取り組んでいきます。

質問事項
一の4 自転車は原則車道を走ることになったが、決して走りやすい状況ではなく、歩道に入るか車道にはみ出さざるを得ない状況である。自転車が走行する部分を総点検し改善すべきだが、所見を伺う。

回答
 都道については、常に良好な状態に保ち、安全な通行を確保するために、日常的な巡回点検により、排水溝のふたも含め、道路の状況を的確に把握し、必要な維持管理工事を実施しています。
 今後とも、都道の適切な管理と保全に取り組んでまいります。

質問事項
一の5 歩道の端にブロックが設置されており、もう少し段差が小さい方が、自転車の通行がスムーズになり、また、高齢者にとってもつまづきが少なくなることから、段差を検討すべきだが、所見を伺う。

回答
 東京都福祉のまちづくり条例の整備基準では、歩車道境界部の段差は、都民、各障害者団体、学識経験者等からなる「福祉のまちづくり推進協議会」の意見も踏まえ、車いす使用者等の利便と視覚障害者の安全な通行との双方を考慮し、2センチメートルを標準とすることとされています。
 歩道については、誰もが安全に利用できるよう、この基準に基づき整備を行っていますが、沿道状況に応じ、幹線道路と生活道路の交差部を改良するなど、歩道を連続させてフラット化を図る整備にも取り組んでいきます。

質問事項
一の6 自転車通行可能の歩道において、歩道に切り下げをつける箇所が多くあるが、自転車が走りにくいばかりか、高齢者や車椅子の人が通りにくく、自転車や歩行者へも配慮すべきだが、所見を伺う。

回答
 歩道の切下げは、自動車が車道から歩道を横断して、道路に隣接する車庫、駐車場等へ乗入れする必要がある場合に、その設置を認めるものです。
 切下げを設ける場合には、原則として、歩道の平たん部を2メートル以上確保するなど、自転車及び歩行者等の通行に配慮しています。
 なお、歩道の平たん部を2メートル以上確保できない場合であっても、可能な限り歩道の平たん部を確保させた上で、切下げを認めています。

質問事項
一の7 優先順位を決めて自転車走行空間の整備を進め、自転車や歩行者の安全を早期に確保すべきだが、所見を伺う。

回答
 都では、平成24年度に策定した自転車走行空間整備推進計画において、自転車交通量が多く事故の危険性がある箇所などを優先整備区間と位置付け、オリンピック・パラリンピックの開催までに120キロメートルを整備することとしています。
 今後とも、誰もが安全で安心して利用できる自転車走行空間の整備に取り組んでいきます。

質問事項
一の8 都心部を中心に景観のために道路の無電柱化が進められているが、安全のためにこそ優先して進めるべきであり、狭い道路で電柱によって危険な状況にあるものから対応すべきだが、所見を伺う。

回答
 無電柱化は、防災機能の強化や良好な都市景観の創出、快適な歩行空間の確保を図る上で重要です。
 都は、平成26年12月に策定した東京都無電柱化推進計画に基づき、センター・コア・エリア内において、計画幅員で完成した都道の無電柱化をオリンピック・パラリンピック開催までに完了させるとともに、今後は、周辺区部や多摩地域を中心に、都市防災機能強化の視点から、緊急輸送道路や主要駅周辺等で整備を推進していきます。
 なお、現在、都が実施している無電柱化は、地上機器の設置空間を確保する必要があることから、歩道幅員が2.5メートル以上の都道を対象としています。

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 斉藤あつし

質問事項
一 建設廃棄物及び発生残土の処理について

一 建設廃棄物及び発生残土の処理について
 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて都内建築物の建て替えや開発などが進んでおり、今後も進むと思われる。
 しかし、都市部においては既存市街地や建物が既にある所での建設ということも多い。華々しい新しい建物に眼を奪われがちだが、旧来の建物、つまりは建設廃棄物の処理を忘れてはならない。ここにいわゆる「静脈産業」に依存している面が多いわけだが、許容量は無限大ではないというような思いで廃棄物処理に取り組んでいかないといけないと考える。一般家庭ごみにおける日の出町の二ツ塚処分場などはごみ減量やエコセメント化といった工夫で処理能力を逐次推計し、延命を図る工夫をしている。産業廃棄物も上手に処理や再利用をしっかり計画的にやっていかなくてはならないのは当然である。
 また、建設廃棄物、建設発生土共に建設現場において適切な日程で処理ができなくなったりすればその後の建設工程に支障が出る。結果、作業日程が延びれば人件費や機材リース代などが膨らみ、下請けへの賃金の支払い遅れなどの影響が予想されるので、そのようなこともまたあってはならない。
1 都内の建設廃棄物及び建設発生土の排出量について伺う。
2 東京都建設発生土再利用センター及び青梅建設発生土再利用事業所は東京都にとって重要な処理施設である。2施設の概要と処理能力について伺う。
3 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた都市の更新に伴い、建設廃棄物や建設発生土が大量に発生し、その処理が益々困難になってくると思われる。
都は建設リサイクルを滞りなく進める必要があると思われるが、所見を伺う。

平成26年第四回都議会定例会
斉藤あつし議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 建設廃棄物及び発生残土の処理について
1 都内の建設廃棄物及び建設発生土の排出量について伺う。

回答
 平成26年3月に公表された国土交通省の平成24年度建設副産物実態調査結果によれば、東京都内の建設廃棄物の排出量は、約764万トン、建設発生土の排出量は、約599万立方メートルとなっています。

質問事項
一の2 東京都建設発生土再利用センター及び青梅建設発生土再利用事業所の概要と処理能力について伺う。

回答
 東京都建設発生土再利用センター及び青梅建設発生土再利用事業所では、都などが実施する公共事業の建設発生土について、そのままでは埋戻しに利用できない状態の場合に、必要な改良を加えて、工事現場で利用できる土に再生することなどを行っています。
 両施設で受け入れる建設発生土は、関係機関から成る東京都建設発生土利用調整会議における工事間利用等に関する調整に基づき、事業者によって搬入されています。
 両施設では建設発生土を処理し、東京都建設発生土再利用センターは年間約30万立方メートル、青梅建設発生土再利用事業所は年間約4万立方メートルの改良土を生成しています。

質問事項
一の3 都は、建設リサイクルを滞りなく進めるべきだが、所見を伺う。

回答
 都はこれまでも、東京都建設リサイクル推進計画に基づき建設資源循環に取り組んでおり、引き続き都や区市町村、事業者等、関係者の適切な役割分担の下、計画的に建設廃棄物及び建設発生土の発生抑制や再利用などを推進していきます。

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 曽根はじめ

質問事項
一 北区内の特定整備路線について

一 北区内の特定整備路線について
 東京都が「木密地域不燃化10年プロジェクト」の一環として特定整備路線を計画してから3年が経過しようとしており、都はこの間「特定整備路線28路線全てについて、平成26年度中に事業認可を受ける」との方針を繰り返し強調しています。
 しかし北区内の特定整備路線である補助81号線、補助86号線、補助73号線については、いずれも説明会は開かれたものの、地権者を含めて沿道住民の理解を得られたと言える状況でないことは明らかです。
 補助81号線については、北区長の異例の要請を受けて、都は区内計画道路の大部分を特定整備路線から除外せざるを得なくなりました。さらに特定整備路線に残された谷田川通り以南の方や、豊島区部分の方々から、都市計画の廃止を求める陳情も出されています。
 補助86号線については沿道の3つの地域で、それぞれ計画撤回・見直しを求める住民運動が起きています。志茂1丁目地域については該当する志茂1丁目町会のかなりの部分が道路を拡幅せず現状のままを要望しています。赤羽西4丁目付近では、静勝寺を中心に稲付城以来の史跡保存の立場から道路建設に反対しており、赤羽西5・6丁目では赤羽自然観察公園とスポーツの森公園の利用者等が道路整備による公園の分断に反対し、この地域がすでに公園や緑地で延焼防止の十分な機能を持っていることから延焼遮断帯を新たに整備する必然性が無く、都市計画道路としても他の道路で代替するよう求めています。
 補助73号線は、現道が無い上に圧倒的に民有地であり、集合住宅や商店街店舗の倉庫なども多く、地域のコミュニティーや商業活動に多大な影響を与えることから、整備のための買収や立ち退きが困難を極めると予測され、さらには補助85号線(通称区役所通り)との接合部分における十条駅前再開発事業が、準備組合から組合設立に至らないまま再開発ビル事業の採算問題で計画練り直しが必要とされつつあるなど、道路が目標年次に完成する見通しが全く立たなくなっている現状です。
 こうした状況の下で北区内の3つの特定整備路線については、改めて沿道住民をはじめ関係住民に対して、計画の緊急性とともに法律や行政手続きについての正当性を積極的に示せなければ、住民の理解と協力が得られないことは明らかと考えます。
 本質問においては3つの路線の法的根拠や事業化の見通し、代替案の検討などについて質問し、また各路線について個別の課題について質問します。
1 都市計画道路の第3次事業化計画との関係については、北区内の3つの特定整備路線のうち、補助86号線の志茂1丁目部分と、補助73号線の区役所通りから90メートルの駅前部分以外の部分、さらに補助81号線については2004年度から2015年度までの優先整備路線から除外されました。また計画路線内の建物の建替え基準が緩和されたこともあり、86号線や81号線の予定地ではこの10年以内に新たに建て替えや新築を行った住宅が多数に上ります。その多くが特定整備路線に指定されたことで「立ち退いてまた新築を建てれば2重ローンを抱える」との深刻な悩みを抱えています。都の買収費用では移転改築費用を賄うのは困難であり、近隣に代替地も用意されていません。
 都の第3次事業化計画では阪神大震災を教訓に幹線道路の延焼遮断効果について既に検討されているのですから、その際、優先整備路線から除外された地域については少なくとも特定整備路線の見直しも検討すべきではありませんか。
2 3つの路線の関係住民については、私たちの調査によれば、すでに住民への説明会も終了しているにもかかわらず現在の段階でいずれも地権者の約半数またはそれ以上が事業の前提となる測量に協力することを認めていません。このまま予定通り近日中に事業認可を申請すれば、大半の住宅等を測量しないままの申請となり、重大な混乱を招きかねません。地権者の協力を得られる新たな打開策はあるのですか。
3 都市再開発事業では、再開発組合を設立し、地権者全員について組合加入を義務づけるため、少なくとも3分の2以上の地権者の同意がなければならず、地権者には現在と同等かそれに近い権利床が保障されます。ところが道路事業では、近隣に代替地もなく権利も十分保障されないにもかかわらず、いったん事業認可されれば最終的には土地収用法に基づく強制的な立ち退きが控えています。
 したがって特定整備路線に多数の地権者が明確に反対している場合には、2020年までの期限内に完成させることを理由に強権的な手法をとることはしないと約束すべきですが、どうですか。
4 北区内の3つの路線は、いずれも昭和21年4月25日の戦災復興院の告示第15号をもって都市計画決定の法的根拠とされています。
 しかしこの際、告示に「内閣総理大臣ノ決定アリタリ」と明記されているにもかかわらず、その根拠となる閣議決定の文書が存在しないとの研究者の指摘があります。
 この際の決定経過については、閣議決定はされたが決定文書が残っていないとの説と、戦時立法措置として閣議決定は省略されたとする説、さらにはこの告示直前に復興院が自らの決定で閣議決定を代行できるよう上申書を提出していた記録があることから、この代行措置が取られたとの解釈が存在しますが、都はどのように認識していますか。
5 いずれにしても、当時の復興院による都市計画道路の決定には、現行法に定められた公聴会や都市計画案の縦覧と意見書の提出など住民が意見を述べる場も全く存在せず、密室の机上で線引きが行われ、それがそのまま法律として決定されたことは明らかです。今日までその決定が、路線位置に関して住民意見を一切取り入れる必要がないことの根拠とされていることには、国民主権の立場から大きな疑問を抱かざるを得ません。都は改めて路線ごとに事業化を進めるにあたって、少なくとも今日の都市計画法に基づく法的な根拠づけを行うことが必要だったのではありませんか。
6 北区内の都市計画道路については、10年前に補助85号線の赤羽台3丁目部分について、八幡神社の参道との整合をとる等の目的から、路線の一部変更に踏み切りました。すでにこうした措置も取られていることを考慮すれば、都市計画道路の整備が、あまりに多数の住民の利益と競合したり重要な都の史跡の価値を損ねるような場合、路線の変更を検討する余地はありうると考えられますが、どうですか。
7 補助86号線の赤羽西4丁目付近の道路計画について、昭和40年代に北区が事業化の説明会を住民に行った事実があると聞きますが、その記録はあるのですか。その際、事業化に至らなかった理由はなんだったのか、また今回改めて事業化するにあたって、その当時の住民意見は検討されたのですか。当時は、トンネルによる道路建設の計画提案に対して、地権者から強い反対があったと聞きますが、今回は当初計画でトンネルか掘割かを示さなかったのは、批判を回避するためですか。
8 補助86号線の志茂1丁目付近については、都による延焼遮断効果のシミュレーションの結果、延焼遮断効果はほとんど上昇しないと聞きました。当該部分は第3次優先整備路線から除外されていただけに、住民からは、2020年までに完成させるという特定整備路線の指定そのものに大きな疑問が上がっていますが、どう答えますか。
9 補助73号線については地元住民から、いかに道路建設が住民にとって犠牲が大きく、測量や買収が困難であるかを、知事が現場を視察して認識してほしいとの強い要望が出されています。知事も「現場に足を運ぶ」との姿勢を示しており、ぜひ実現させていただきたいが、どうか。
10 補助73号線に期待されている延焼遮断効果については、その東側150メートルに並行して走るJR埼京線を立体化事業で地下化することによりオープンスペースができることから、ほぼ同じ効果が期待できます。埼京線を高架でなく地下化することによる費用の増額分は、補助73号線を整備する費用や住民立ち退き・コミュニティー破壊などの犠牲に比べてより小さな負担で済むと思われますが、どうですか。

平成26年第四回都議会定例会
曽根はじめ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 北区内の特定整備路線について
1 北区内の特定整備路線である補助81号線、補助86号線の志茂1丁目部分、補助73号線について、都の第3次事業化計画では幹線道路の延焼遮断効果について既に検討されており、その際、優先整備路線から除外された地域については、少なくとも特定整備路線の見直しも検討すべきだが、見解を伺う。

回答
 首都直下地震の切迫性や東日本大震災の発生を踏まえ、平成24年、「木密地域不燃化10年プロジェクト」の実施方針を策定しました。この方針に基づき特定整備路線を選定し、整備を推進することとしました。
 特定整備路線は、木造住宅密集地域において、延焼を遮断するとともに、避難経路や緊急車両の通行路ともなる重要な都市計画道路であり、見直すことは考えておりません。

質問事項
一の2 地権者の約半数またはそれ以上が、事業の前提となる測量に協力することを認めていない。このまま事業認可を申請すれば、大半の住宅等を測量しないままの申請となり、重大な混乱を招きかねない。地権者の協力を得られる新たな打開策はあるのか伺う。

回答
 都市計画道路の事業認可については、地形や高低差などを把握するために現況測量を行い、都市計画線の位置や事業地の範囲等を決めたうえで、都市計画法に基づき申請することとしています。
 今後とも、関係権利者への丁寧な対応に努めるなど、理解と協力を得ながら事業を進めていきます。

質問事項
一の3 特定整備路線に多数の地権者が明確に反対している場合には、2020年までの期限内に完成させることを理由に、強権的な手法をとることはしないと約束すべきだが、見解を伺う。

回答
 事業用地の取得に当たっては、関係権利者一人一人に用地取得の進め方や補償の考え方などを丁寧に説明するとともに、相談窓口の設置などにより生活再建の支援を行い、理解と協力を得ながら事業を進めていきます。

質問事項
一の4 北区内の3つの路線は、いずれも昭和21年4月25日の戦災復興院の告示第15号をもって、都市計画決定の法的根拠とされているが、その根拠となる閣議決定の文書が存在しないとの指摘がある。都は、どのように認識しているのか伺う。

回答
 昭和21年当時の都市計画法第3条では、主務大臣が都市計画決定し、内閣の認可を受けることが規定されています。
 しかし、勅令第671号(昭和20年11月30日)により、戦災地に係る都市計画決定に関しては内閣総理大臣が主務大臣とされ、勅令第941号(昭和18年12月27日)都市計画法及同法施行令臨時特例により、内閣の認可も不要となっています。
 戦災復興院告示第15号(昭和21年4月25日)に記載のとおり、都市計画法に基づき、適切に手続がされたものと認識しております。

質問事項
一の5 都は、改めて路線ごとに事業化を進めるにあたって、少なくとも今日の都市計画法に基づく法的な根拠づけを行うべきだったのではないのか、見解を伺う。

回答
 都市計画法の旧法から新法への移行に際して、都市計画法施行法第2条で、「新法の施行の際現に旧都市計画法の規定により決定されている都市計画区域及び都市計画は、それぞれ新法の規定による都市計画区域又は新法の規定による相当の都市計画とみなす」と規定されており、新法の規定に基づく都市計画であると認識しています。

質問事項
一の6 都市計画道路の整備が、あまりに多数の住民の利益と競合したり、重要な都の史跡の価値を損ねるような場合、路線の変更を検討する余地はありうるが、見解を伺う。

回答
 都ではこれまで、社会経済情勢の変化を踏まえ、活力、安全、暮らし等の観点から総合的に検討し、区部及び多摩地域の都市計画道路の見直しを適宜行っています。
 今後とも、燃え広がらないまちの実現に向け、重点的、集中的に特定整備路線の整備を進めていきます。

質問事項
一の7 補助86号線の赤羽西4丁目付近の道路計画について、昭和40年代に北区が事業化の説明会を住民に行った事実があると聞くが、その記録はあるのか。その際、事業化に至らなかった理由はなんだったのか。また、今回改めて事業化するにあたり、その当時の住民意見は検討されたのか。当時は、トンネルによる道路建設の計画提案に対し、地権者から強い反対があったと聞くが、今回は当初計画でトンネルか掘割かを示さなかったのは、批判を回避するためなのか伺う。

回答
 北区に確認したところ、補助第86号線の赤羽西4丁目付近の道路計画について、昭和40年代に北区が事業化の説明会を行った記録はありません。

質問事項
一の8 補助86号線の志茂1丁目付近について、都による延焼遮断帯効果のシミュレーションの結果、延焼遮断効果はほとんど上昇しないとのことである。住民からは、2020年までに完成させるという特定整備路線の指定そのものに、大きな疑問が上がっているが、見解を伺う。

回答
 延焼シミュレーションによると、補助第86号線の整備により、延焼面積を約3割減らすことができ、志茂一丁目付近の延焼の危険性が低減します。
 また、本路線は避難や救援活動のための空間ともなり、区域内交通の効率的な集散や広い歩道の整備による歩行者の安全確保などにも寄与します。
 このため、特定整備路線である本路線の整備が必要です。

質問事項
一の9 補助73号線については、地元住民から道路建設が住民にとって犠牲が大きく、測量や買収が困難であるかを、知事が現場を視察して認識してほしいとの強い要望が出されているが、見解を伺う。

回答
 知事は、既に木造住宅密集地域を視察しており、火災時の危険性を指摘し、早急な対策が必要であると認識しております。

質問事項
一の10 補助73号線に期待されている延焼遮断効果については、JR埼京線を立体化事業で地下化することによりオープンスペースができることから、ほぼ同じ効果が期待できる。埼京線を高架でなく地下化することによる費用の増額分は、補助73号線を整備する費用や、住民立ち退き・コミュニティー破壊などの犠牲に比べ、より小さな負担で済むと思われるが、見解を伺う。

回答
 補助第73号線沿道の上十条、十条仲原地区における燃え広がりを防ぐためには、当該区間を特定整備路線として整備する必要があります。

平成26年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 吉田信夫

質問事項
一 新国立競技場計画の景観協議提出資料への対応について

一 新国立競技場計画の景観協議提出資料への対応について
 国と独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)がすすめる新国立競技場計画にたいし、多くの建築家や都民から、神宮外苑の歴史的景観を破壊することへの懸念がひろがっています。日本景観学会も、新国立競技場計画にたいし「神宮外苑という日本の代表的な歴史的風致地区の景観を阻害し、この地のもつ過去から未来にかけて保持すべき文化価値を破壊すると考えられる」とのアピールを発表しています。
 そもそも、周辺の景観を守ることは、IOCの「アジェンダ21」でも「まわりの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない」と強調されています。しかも東京都景観条例でも規定されている通り、良好な景観の形成は都の責務です。それだけに貴重な景観保全の立場から都が新国立競技場計画にたいし厳正な対応をとることが求められています。
 しかし、日本共産党都議団の指摘でJSCが事前協議のために都に提出した完成後のシミュレーション写真が、周辺の建物にくらべて競技場が低く、小さく見えるという重大な問題が明らかになったにもかかわらず、何ら対応をしませんでした。こうした都の対応は良好な景観の保全という点で厳正さを欠くものです。あらためて、都の対応について以下質問します。
1 そもそも、都は景観の事前協議のために、完成後の景観シミュレーション写真提出を求めていますが、それはどのような理由からですか。
2 シミュレーション写真は、実際に建築物が完成したあとの景観に可能なかぎり近いものにすべきと思いますが、どうですか。
3 知事は、10月17日の記者会見で、JSCから提出された景観予測図が過小との指摘があることの質問にたいし、「目くじらを立てることはない」と発言しましたが、それはどのような理由からですか。
4 知事は、「信号機の位置がちょっと上か下かくらいは」と発言していますが、シミュレーション写真の人工地盤の高さが設計より低かったことは軽視できないではありませんか。しかも日本共産党都議団が知事への要請書で指摘をしたのは、当初「提出されたモンタージュ写真が、実際の設計より競技場が低く小さく見えるものだった」ことです。この点をどう認識したのですか。
5 JSCが当初提出した合成写真と再提出した合成写真とをくらべると、屋根の最高部の高さ、さらに横幅が大きく違うことは明瞭です。写真上の比較で、再提出写真修正にくらべ当初提出写真では屋根の最高部の高さ、横幅はどれだけ低く、狭くなっていましたか。その写真上の高さや横幅のちがいは、実物上ではどれだけ、低く、狭いと推計されますか。
6 知事は第3回定例会で、新国立競技場計画についてのわが党の質問にたいし「景観を含めた必要な手続を適正に進め」と答弁しました。シミュレーション写真が実際の完成時の高さや大きさより低く、小さく見えるもので、事前協議されたことが、「適正」となぜいえるのですか。
7 わが党は、都市整備局長にたいし、当初提出した合成写真が、信号機や街路灯の高さとくらべ人工地盤の高さが低いことを指摘し、「すみやかに調査」することを要請しました。この申し入れにたいしどう対応してきたのですか。調査結果はどうだったのですか。
8 わが党は、10月15日、JSCが再提出した合成写真が当初提出の合成写真と大きくちがっていたことをうけて、JSCにたいしすべての写真について作成し直して提出を求めるよう知事に申し入れました。しかし都はなぜJSCに対し周辺の高さを考慮し、実際の完成後のシミュレーションに近い合成写真の再提出を求めなかったのですか。

平成26年第四回都議会定例会
吉田信夫議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 新国立競技場計画の景観協議提出資料への対応について
1 独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)に対し、都は景観の事前協議のために、完成後の景観シミュレーション写真提出を求めているが、それはどのような理由からなのか伺う。

回答
 都の景観協議では、計画されている建物の完成後の街並みのイメージを確認するために、景観シミュレーションの提出を求めています。

質問事項
一の2 シミュレーション写真は、実際に建築物が完成したあとの景観に、可能な限り近いものにすべきだが、見解を伺う。

回答
 都の景観協議では、既存の街並みに完成予想図を組み入れた景観シミュレーションを提出させ、街並みのイメージについて確認しています。

質問事項
一の3 知事は、10月17日の記者会見で、JSCから提出された景観予測図が過小との指摘があることの質問に対し、「目くじらを立てることはない」と発言したが、それはどのような理由からなのか伺う。

回答
 都は、既存の街並みに完成予想図を組み入れた景観シミュレーションだけでなく、図面などの様々な資料により建物の規模や外観を確認しており、御指摘の点は、景観協議の判断に影響を与えるものではありません。

質問事項
一の4 知事は、「信号機の位置はちょっと上か下かくらいは」と発言しているが、要請書で指摘したのは、当初「提出されたモンタージュ写真が、実際の設計より競技場が低く小さく見えるものだった」ことである。この点をどのように認識したのか伺う。

回答
 景観シミュレーションは、既存の街並みに完成予想図を組み入れることから、作成の仕方によって見え方に違いが生じるものです。

質問事項
一の5 JSCが当初提出した合成写真と再提出した合成写真とを比べると、写真上の比較で、再提出写真修正にくらべ当初提出写真では屋根の最高部の高さ、横幅はどれだけ低く、狭くなっていたのか。その写真上の高さや横幅の違いは、実物上ではどれだけ低く、狭いと推計するのか伺う。

回答
 景観シミュレーションは、既存の街並みに完成予想図を組み入れることから、作成の仕方によって見え方に違いが生じるもので、建物の高さや幅などの具体的な数値の推計には用いません。

質問事項
一の6 新国立競技場計画について、景観を含めた必要な手続を適正に進めるとしているが、シミュレーション写真が実際の完成時の高さや大きさより低く、小さく見えるもので事前協議されたことが、「適正」となぜ言えるのか伺う。

回答
 都は、今回の景観協議においても、既存の街並みに完成予想図を組み入れた景観シミュレーションだけでなく、図面などの様々な資料により建物の規模や外観を確認しており、適切な対応であったと考えています。

質問事項
一の7 当初提出した合成写真が、信号機や街路灯の高さと比べ、人工地盤の高さが低いことを指摘し、速やかに調査することを要請したが、これに対し、どのように対応し、調査結果はどのようなものだったのか伺う。

回答
 都は、今回の景観協議においても、既存の街並みに完成予想図を組み入れた景観シミュレーションだけでなく、図面などの様々な資料により建物の規模や外観を確認しており、適切な対応であったと考えています。

質問事項
一の8 都は、なぜJSCに対し周辺の高さを考慮し、実際の完成後のシミュレーションに近い合成写真の再提出を求めなかったのか伺う。

回答
 都は、今回の景観協議においても、既存の街並みに完成予想図を組み入れた景観シミュレーションだけでなく、図面などの様々な資料により建物の規模や外観を確認しており、適切な対応であったと考えています。

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