平成二十六年東京都議会会議録第十七号

〇副議長(藤井一君) 十番宮瀬英治君。
   〔十番宮瀬英治君登壇〕

〇十番(宮瀬英治君) まず初めに、本一般質問に当たりまして、都民のニーズや声を客観的かつ正確に代弁することを目的に、男女比、年代別人口比など正確に反映させた都民千名ほどのマーケティング外部調査を今月実施してまいりました。本日は、その客観的な数字やデータをもとに質問をさせていただきます。
 さて、三十年以内にマグニチュード七以上の首都直下地震が来る確率が七割といわれ、その備えは都政の最重要課題の一つであります。
 阪神・淡路大震災において、一九九六年日本建築学会が聞き取り調査したところ、人命を救助した人の内訳は、近所の人によるが六四%と最も多く、また、今回の調査においても、近所の人を助けたいと回答した人が八割を占めておりました。
 都においても、地域の共助力や防災力の向上に向けた区市町村の取り組みを支援してまいりましたが、一方で、この調査結果では、近所や自治会、町会で助け合える仕組みがない、あるいはあってもわからない、近所に助けてくれる人がいない、近所の人を助ける場合、ジャッキ、バールなど救助器具がどこにあるか知らない、地域住民だけで助け合えるような取り組み、共助型の訓練がないといった声がいずれも八割を超えておりました。
 そこで私は、地元板橋区の防災意識の高い町会や青年部、区民消火隊、消防団、区職員と、半年にわたり災害時にどう助け合えばよいのか議論を進めてまいりました。
 町会メンバーは高齢化が進み、活躍が期待される町会青年部は消防団員と兼任している者も多く、また災害時には、消防団は詰所への参集のため不在となるなど、災害時にその関係各所がどう連携していくのか、まさに答えが出ていない状況であります。
 また、私自身も消防団に所属しておりますが、所属する分団長からは、団自体も首都直下地震に備えた訓練や組織体制へとさらに強化すべきだ、また、地域住民の避難誘導、要支援者の救出など助け合い訓練も必要だとのご意見も直接聞かせていただきました。
 そこで、消防団の首都直下地震に対応したさらなる実践的な訓練に加え、また、災害時における被害を軽減するために、訓練等を通じた特別区消防団と地域住民との連携強化をすべきだと考えますが、その取り組みについて東京消防庁の見解をお伺いいたします。
 また、消防団の資機材の整備も重要であります。
 東京消防庁では、首都直下地震に備え、チェーンソーや油圧ジャッキなどの配備を強化してまいりました。それらが評価される一方で、地域住民に合った本当に必要な装備の優先順位をさらに上げてほしいといった現場の声も上がっております。
 例えば、消防隊への携帯用AEDは平成二十七年度に配備が完了いたしますが、大災害時に単独での消火救命活動が想定される消防団には、現在、AEDが配備されておりません。消防団の地域のイベントや祭事等における特別警戒時に、消防団用のAEDがあれば団員による迅速な救命活動が可能であります。このたびの都民調査におきましても、六五%の方々から早急に配備すべきとの声が上がっております。
 また、平成二十六年、総務省による消防団装備基準では、新たに救助資機材の充実が挙げられ、平成二十五年度、消防団団運営会議においても、AEDの迅速な配備要求が二十三特別区のうち八区から上がっております。
 このように、特にAEDを含めた救急活動用資機材の充実が今後必要であると考えますが、特別区消防団への救助活動用資機材の整備状況と今後の取り組みについて、東京消防庁にお伺いをいたします。
 また、共助の観点から、住民同士によるAEDの活用など、救急救命活動をしていただくことも重要であります。
 神戸市は、地域住民の共助の取り組みによる救急救命活動の支援のため、まちかど救急ステーションと称し、会社やオフィスビルが保有する民間のAED情報を市に無料提供していただき、二千カ所以上を網羅したAEDマップを作成しております。
 また、平時におきましても、都では平成二十五年度において、心臓機能が停止した都内傷病者の搬送人数は約一万二千名に上っていますが、神戸市では、一一九番の救急車の要請時に、必要があれば電話を受けたオペレーターが、そのAEDマップをもとに最寄りのAED設置場所を知らせてくれます。
 このたびの都民調査によれば、職場や自宅など近隣のどこにAEDがあるか知っていると答えた方は六割に上るものの、心停止の発生場所は必ずしも職場や家の近隣だけとも限らないことから、地域全体を網羅する、東京全体を網羅する東京都AED統一マップの作成を要望する声が六四%と高まっております。一方、都には現在その取り組みがありません。
 そこでまず、広域自治体である東京都が、AED情報を集約したマップづくりに取り組む区市町村への支援や、AED使用方法等に関する普及啓発の取り組みを進めるべきだと考えますが、都の所見をお伺いいたします。
 次に、公助についてお伺いをいたします。
 調査では、発災後七十二時間以内に区や東京都などの行政、消防が助けてくれないと思う方が七割を占めておりました。
 そこで、先般の総務委員会で、都が防災プランで描いた迅速な救出救助活動を展開できる環境の実現について、首都直下地震は同時多発するので、都の総合防災訓練も一自治体に限定せず、より実態に合うよう他の区市町村も同時に実施してほしいと質問いたしました。
 都は、実働訓練は地域を限定して行っているが、図上訓練という形で、多くの区市町村や防災機関との実践的な訓練を行っているとの回答をいただきました。
 しかし、ある区の実態を調査しましたところ、この図上訓練や月一回の都の防災行政無線を活用した定期通信訓練だけでは、なれている担当者が対応するだけで、人手の少ない区側で、本番の際に迅速的確な情報連絡、最も大切な情報共有への対応ができるか不安といった率直なご意見をいただきました。
 例えば、区市町村による首都直下地震を想定した総合防災訓練においても、区の災害対策本部に警察、消防、そして都の職員も参加し、必要なアドバイスをいただきたいとの声がありました。
 このように、都は、被災地域の前線に立つ区市町村の防災力を高めるための支援をより積極的に行うべきだと考えますが、都の所見を求めます。
 次に、アジアと中小企業の支援策についてお伺いをいたします。
 イギリスのエコノミスト社の発表によりますと、二〇一〇年時点で、日本が占める世界のGDPシェアは六%、アジアの発展途上国は二八%、二〇五〇年には日本は二%と、現在の約三分の一まで減少し、逆にアジアの発展途上国は四八%へと、実に世界の富の約半数を占めるといわれております。
 私自身、NGOを十五年主宰し、つぶさに東南アジアの現地、現場を見てまいりましたが、今やアジアは支援対象国からビジネスパートナー国となりました。今回の調査では、今後のアジアのマーケットが鍵を握るといった方が過半を超えるなど、まさにアジアは大きなビジネスチャンスの場であると捉えられております。
 一方で、今回の調査でアジアを重視する会社では、進出したがうまくいっていない二七%、既に撤退した一・四%、今後進出を検討中、いずれは進出をしたい、どうすればいいかわからないの合計が一三%でございました。
 実際に、私も地元板橋区の中小企業十三社を訪問し、進出したが現地でだまされた、誰にも現地で相談できずに撤退したといった声も直接お聞きしました。
 都は、五年前から、東京都中小企業振興公社で、中小企業の海外における販路拡大に努めておりますが、公社の経営相談窓口自体の認知が、中小企業経営者や社員に限定しても約二割。また成果は、平成二十五年度の成約社数二十一社と、そのニーズの大きさに比べいまだ途上であり、さらに、公社は、情報収集や現地サポートのための海外拠点はまだありません。
 海外進出の際に相談するジェトロもありますが、実際は敷居が高く、相談件数は年約二万件あるものの、実際は見込みのありそうな会社への対応が主なものであり、その件数もわずか三百四十一件にとどまっております。また、ミャンマーなど現地ジェトロ事務所においても、全国からの企業対応で、細やかな対応ができていないとのことであります。また、さらには大使経験者にもお伺いいたしましたが、外務省は、新幹線など大型インフラに限定され、中小企業の対応はできないとのことでありました。
 一方、アジアに拠点を設けている兵庫県では、平成十九年に財政難のため事務所を一旦閉鎖したものの、中小企業の支援のためにアジアに拠点を置かなければならないとの知事のご判断で、平成二十四年度に現地事務所を復活させております。
 県内の中小企業を熟知した地銀の行員を副所長として迎えるなど、今までの文化交流から、ビジネスの拠点として機能させ、ジェトロでは対応し切れていない中小企業等のニーズを支える重要な海外拠点となっております。
 また、福岡県や北九州市では、大連、上海、香港、台北、バンコクなどに海外拠点を設けており、特筆すべきは、アジア二十都市において三十八ものインフラ国際協力事業を、県内の中小企業の販路拡大や産業力貢献へと結びつけている点であります。
 さらには、東南アジアなどから現地自治体の職員を市に交換職員として受け入れ、アジアの技術都市をキーワードに、アジアとの地域経済発展に戦略的に取り組んでおります。
 現在、都では、シンガポールなどアジアにある自治体国際化協会に都職員を派遣しているものの、あくまで自治体の活動を支援するものであり、単独で都内中小企業を支援するものではありません。
 また、過去には、平成二年度から平成十二年度まで、ニューヨークとパリに、交流事業や情報収集、都政情報の発信の場として海外事務所を置き、また平成十一年度まで、北京市やソウル特別市との職員交換をしておりましたが、当時の厳しい財政状況の中で、コストと効果の両面から、当時の知事の判断で廃止となりました。
 しかし、現在は当時と比べ財政状況は改善し、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの決定、アジアヘッドクオーターの推進、観光誘致など、今後アジアとともに進めていく施策が多いことから、今後、現地における声や情報を一層ダイレクトに聞くことが必要であります。アジアとは何か、それはそこに住む人であり、その心であります。
 舛添知事も常日ごろ、東京を世界で一番の都市にするとおっしゃられている以上、まずはアジアで一番の信頼を得られる東京を目指さなければなりません。
 そこで、北九州市や兵庫県のように、これまでのような交流事業や情報収集、発信だけではなく、都内中小企業が経済成長するためのビジネス等の拠点が必要であります。
 都は、こうしたさまざまな要求に応えるためにも、アジアに東京都の拠点を置くべきであり、その第一歩目として、アジア諸都市との都の職員の交換派遣から始めるべきだと考えますが、知事のご見解をお伺いいたします。
 また、最後になりますが、今後、知事が東南アジアに都市外交に行かれる際には、ぜひトップセールス、有望な都内の中小企業も同行させていただき、もうかる都市外交といった側面もあわせて目指していただくよう要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 宮瀬英治議員の一般質問にお答えいたします。
 アジア諸都市との職員交換派遣についてでありますが、厳しい都市間競争の時代を迎えておりまして、都は効果的な都市外交を進めていく必要があります。とりわけ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを控えた今日、姉妹友好都市や世界の主要都市との交流を深めることは、ますます重要となってきております。
 そうした意味でも、都の職員が海外に出て、東京のため、ひいては日本のために活動することは極めて重要であると考えております。
 そのための手段はさまざまあると思いますが、ご質問にあります都の海外事務所は、行財政上の理由で平成十二年に閉鎖されております。
 都は現在、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールにある自治体国際化協会の海外事務所等に職員を派遣しておりますが、来年度中を目途に、こうした職員派遣の拡大を検討してまいります。
 さらに、都知事として十八年ぶりに訪問いたしました北京市とソウル特別市では、職員の交換を再開することで合意いたしました。具体的な内容については、現在、実務レベルで検討を行っております。
 今後とも、職員派遣を通じ、海外諸都市との交流、協力を促進してまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁いたします。
   〔消防総監大江秀敏君登壇〕

〇消防総監(大江秀敏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別区消防団の実践的な訓練の推進と地域住民との連携強化の取り組みについてでございますが、消防団は、地域特性に応じた実践的な訓練を消防署と連携して実施しております。また、消防団は、地域の防災リーダーとして、防災訓練や応急救護訓練などの指導のほか、消防団点検等の機会を捉えて、町会、自治会など地域住民と一体となった訓練を実施しております。
 今後も、消防団の活動能力の向上と地域住民との連携強化を図り、震災時における被害軽減に努めてまいります。
 次に、特別区消防団の救助活動用資機材の整備状況と今後の取り組みについてでございますが、当庁では、特別区消防団運営委員会の答申などを踏まえ、これまで携帯型油圧救助器具、チェーンソー、万能おの等を順次整備してまいりました。
 今後も、消防団の活動力強化のため、救助活動用を初め、各種資機材の整備に努めてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) AEDの普及啓発についてお答えします。
 都はこれまで、都民を対象に、AEDの使用法や心肺蘇生法等に関する講習会を実施しており、平成二十五年度までに約二百万人が受講しております。
 また、昨年度は、AEDによる心肺蘇生の手順等をまとめたリーフレットを五万部作成し、区市町村や都内全ての病院等に配布し、周知を図っております。
 さらに、AEDの設置場所を示すマップの作成を行う区市町村を、包括補助により支援しております。
 AEDを用いた速やかな心肺蘇生の実施は、救命率の向上に寄与するものでございまして、今後とも、東京都医師会など関係団体と連携しながら、AEDの普及啓発に努めてまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) 区市町村の防災力向上に向けた支援についてでございます。
 都はこれまでも、災害時に住民の救援活動に直接携わる区市町村を、広域自治体としてさまざまに支援してまいりました。
 例えば、都の総合防災訓練や図上訓練において、区市町村や各機関との情報連絡や応急対策の検討などを区市町村とともに実施し、災害対応力の向上を図っております。
 また、今年度は、例年行っております都職員を都庁舎等に参集させる訓練におきまして、新たに、区役所や市役所にも都職員を派遣し、発災時に円滑に連携、支援できるよう、区市の災害対策本部の設備や体制を確認させたところでございます。
 今後とも、都は、区市町村の意見を踏まえた実践的な訓練を連携して実施するなど、区市町村の防災力向上に向けて支援してまいります。

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