平成二十六年東京都議会会議録第十七号

〇議長(高島なおき君) 五十四番あさの克彦君。
   〔五十四番あさの克彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇五十四番(あさの克彦君) 未来に向けて、教育、人づくりが重要であることはいうまでもありません。どのような環境でも、求めれば学べることが大切です。勉学の意欲や能力があるにもかかわらず、家庭環境によって学業の継続が困難になっている人が学習の機会を得られるように、奨学金制度が存在します。しかし、制度が知られていなければ機会の損失となってしまいます。
 私自身、インターネットで調べてみましたが、現在、奨学金に関する情報は、種類や内容、条件など、どのくらいあるのかわからない状況でした。また、奨学金は重複して受給できない場合が多いため、比較検討を行うことができるような一元的な情報サイトが必要だと考えます。
 そこで、奨学金を必要としている方が必要な情報を得られるよう、情報提供、発信のあり方を工夫すべきと考えますが、見解を伺います。
 東京都育英資金の平成十二年に追加された受給要件には、貸付終了時に父母以外の第二連帯保証人を立てることがありますが、関係者からは撤廃の要望が出されております。
 一方、中小企業経営者が融資を受ける際の第三者保証は、長年、保証を負うべき債務が問題とされ、平成十八年に各都道府県の信用保証協会が原則廃止をいたしました。
 また、民主党政権時代の金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプランにおいて、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立することとされ、現在、金融庁の金融機関に対する監督指針の中でも、原則として第三者保証を求めないよう明記されています。特に、実質的に経営に関与していない個人が例外的に第三者保証契約を締結する際には、自発的な意思に基づく申し出によるものとし、金融機関から要求されたものではないことを確保するよう求めています。
 このように、保証に関する社会の意識は変わりました。しかし、東京都育英資金は従前のままです。奨学金は人に対する投資です。それなのに、金融機関でさえ原則求めない第三者保証を行政から要求する、こんなことを舛添知事も続けるのでしょうか。人材育成を重視する、弱い立場の人を助けるといった言葉は空虚に聞こえてしまいます。
 この第二連帯保証人制度は即刻撤廃すべきと考えます。都の所見を伺います。
 次に、東京都地域医療医師奨学金制度について伺います。
 これは、小児、周産期、救急、僻地という、特に医師が不足する四分野で医師を確保する目的の奨学金です。
 この制度の特別貸与奨学金は三つの大学しか選べません。地域医療に貢献しようとする受験者が他の大学に進学したいと考えるなら、この制度には申し込めません。受け入れ大学の拡大が必要です。高い志で貢献しようとする医学生をバックアップするために、他大学へ働きかけることを要望します。
 また、一般貸与奨学金は、この四分野へ進もうとする五年生以上の医学生を対象とするもので、これらの分野へ進もうとする意思を固める効果があります。
 私は、地域医療を担う医師をしっかりと確保するためにも、この奨学金制度を拡大すべきと考えます。まずは一般貸与において、学生のフォロー体制の構築を検討していただきたいと考えます。
 そして、地域医療に貢献したいという医学生に広く門戸を開くためにも、一般貸与奨学金を入学時から貸与できるようにするなど、対象の拡大を検討すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、都のホームページについて伺います。
 都のホームページは、都政の知識がある人には必要な情報を探しやすいかもしれません。しかし、一般の方にそのような知識があるとは限りませんし、実際に助成金や補助金を調べようにも、さまざまな種類が羅列されてしまいます。また、福祉ナビなどのポータルサイトがあっても、その存在を知らない人を誘導する仕組みは弱く、全体として検索性には、ばらつきがあるようです。
 そこで、行政サービスについて、その存在を知らなくてもインターネットを介して情報にアクセスできるよう、いわゆる検索サイトから直接、さまざまな事業を発信する各局のホームページにアクセスしやすい工夫をすべきと考えます。
 そのためには、検索エンジンの特性を踏まえたヒットされやすいサイトづくりを意識しなければなりません。例えば、各局のページのタイトルやメタデータに検索用語を忍ばせるといった方法です。検索用語も、その情報を必要とする人がどのような言葉で検索するのか思いをめぐらせて選定する必要があります。
 都では本年、東京都公式ホームページ作成に関する統一基準を策定したと聞いておりますが、今述べたようなホームページの検索性を向上させる取り組みが重要と考えます。所見を伺います。
 さて、女性の社会進出という言葉があります。これはさまざまなメディアでも使われており、一般的にも使われておりますが、私には違和感があります。
 働く、もしくはボランティアなど、家庭の外で活動することを指しているのでしょうが、育児や介護、家事なども立派な社会参加ではないでしょうか。家庭の中と社会を切り離すような言葉は、私は使わないようにして、例えば女性の雇用推進など、より具体的な言葉を用いるように心がけております。言葉狩りをするつもりはありませんので、使っている人や団体が、家庭の中で働くことに差別的な認識を持っているとはいいませんが、少なくとも刷り込みという影響があると考えます。
 東京の知事の言葉には発信力があります。このような言葉で女性同士を分断することなく、全ての女性があらゆる場で活躍が認められるよう、都政を担う知事として、いかなる認識のもとで政策を進めていくのか、見解を伺います。
 次に、ワークライフバランスの推進について伺います。
 中小企業が育児や介護と就業を両立しようとする社員を応援する制度をつくる際、都としても積極的に支援するよう努めているようです。
 その一つに、中小企業ワークライフバランス推進助成金があります。事業や対象経費を定めながらも、ワークライフバランスの推進に資すると認めるものであれば助成するという姿勢は評価いたします。
 一方で、現場では、それは助成対象外だからの一点張りで断られるケースもあると伺いました。中小企業の業態や規模は多岐に及び、どのような制度を社内に設ければ推進につながるかは決めつけられません。事例として紹介されている研修やコンサルティング、在宅勤務に必要な設備の導入が有効な会社も、またそうではない会社もたくさんあります。使い勝手がいいとはいえないと考えます。推進に資すると認めれば助成するという姿勢は、現実に柔軟な対応ができてこそ生きてくるのです。
 そこで、中小企業のワークライフバランス推進について、よりフレキシブルで実情に合った制度構築がしやすい施策実施について、都の見解を伺います。
 最後に、観光振興について伺います。
 羽田空港の国際線発着枠が大幅に拡大し、海外からの利便性は大きく向上しました。羽田空港がハブ空港として発展していけば、世界中から多くの旅行者が訪れることになります。
 世界一旅行者が訪れるフランスのパリでは、ハブ空港から近隣の国や都市へと乗り継ぐ際に、目的地以外でも観光を楽しめるよう、トランジットあるいはストップオーバーなどの仕組みを有効活用しております。航空会社のサービスですが、旅行者が一日滞在すればそれだけ経済効果が生まれます。ハブ空港とこのサービスが、フランスの世界一に貢献していることは間違いないといって過言ではないでしょう。
 舛添知事は所信で、東北六県と仙台市、民間を交えて広域の観光について協議を始めるとおっしゃいました。世界各地から東京へ、東京から地方へと旅行の利便性が高まっている中、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会に向けて、日本の玄関口ともいうべき東京が、東北のみならず全国の道府県と協力し、外国人旅行者の誘致に取り組むべきと考えますが、所見を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) あさの克彦議員の一般質問にお答えいたします。
 女性の社会進出についてでありますが、女性が活躍できる社会とは、人生における出産、子育て、介護などのライフステージにおいて、全ての女性がみずからの希望と選択に応じて、職場や家庭、地域などあらゆる分野で個性や能力を十分に発揮できる社会であると考えております。
 女性の社会進出により、企業や職場で活躍の場が広がることも、こうした社会の実現にとって重要な要素の一つと考えます。
 行政が担うべき役割は、広く女性がみずからの可能性を追求し、豊かな家庭生活や職業生活を営めるよう、子育て支援など安心と希望のセーフティーネットを張りめぐらして下支えをしていくことにあります。
 都はこれまで、女性の活躍推進に向けた機運の醸成を図るとともに、子育て環境の整備、継続就業や登用促進の後押しに取り組んでまいりました。
 今後とも、あらゆる分野で女性が生き生きと活躍できるよう積極的に取り組んでまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長に答弁させます。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 奨学金制度に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、奨学金の情報提供についてでありますが、都は、保護者の負担を軽減するため、特別奨学金や育英資金等を実施しており、これらの制度については、進学相談などの機会を捉えて説明を行うとともに、対象となる私立高校生だけでなく、都内の中学三年生に対しても、学校を通じてパンフレットを配布しております。
 また、公益財団法人東京都私学財団のホームページにおきまして、これらの制度を紹介し、民間団体等の奨学金サイトにリンクを張るなど、多様な情報を掲載しております。
 今後とも、都民の方が必要とする奨学金の情報を得られるよう、学校との連携を図るとともに、ホームページをより見やすく工夫するなど、わかりやすい情報提供に努めてまいります。
 次に、東京都育英資金における第二連帯保証人についてであります。
 育英資金は、中小企業等への事業資金の融資とは異なり、修学上必要な学資金の一部を、公費により無利子で個人に貸し付ける事業でございます。
 貸付終了時に、貸し付けを受けた本人と別生計の第二連帯保証人を立てていただいているのは、連帯保証人である父母が本人とともに所在不明となり、債権回収に支障を来した場合があったためであります。
 育英資金事業につきましては、返還金が次世代の奨学生への貸付原資となることから、適切に回収する観点が必要でありますが、借りやすさや他の奨学金制度の状況もあわせ、総合的に勘案して取り組んでいく必要があると考えております。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 医師奨学金制度についてお答えします。
 この制度は、医師不足が深刻な状況にあった小児、周産期、救急、僻地医療に従事する医師を確保するため、平成二十一年度に創設したものでございます。
 このうち、特別貸与奨学金は、国の緊急医師確保対策等に基づき医学部の定員増を図った都内三大学の医学生を対象に、入学時から貸与する制度であり、卒業生がこれらの医療に従事する時期は平成二十九年度以降となります。
 一方、一般貸与奨学金は、早期に必要な医師を確保できるよう、都内全ての大学の医学生を対象に、将来の進路を見定める時期である五年、六年次の二年間貸与する制度でありまして、昨年度から卒業生が勤務を開始しております。
 今後、利用者の分野別の就業状況も確認しながら、二つの奨学金制度を活用し、医師の確保に努めてまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) ホームページの検索性の向上についてでございますが、都は、ホームページのデザインなどの一体感の醸成、アクセシビリティー対応の強化及びユーザビリティーの向上を図るため、本年三月に東京都公式ホームページ作成に関する統一基準を策定いたしました。
 本基準では、検索結果の精度を高めるため、ページのコンテンツの内容がわかるようなタイトルをつけるほか、ページ全体に関する説明文、キーワードを検索用語として設定する旨定めるなど、外部からの検索性も含めた利便性の向上に努めております。
 本基準策定後、担当者向け説明会の実施を手始めに、基準の準拠に向けた取り組みを鋭意進めており、今後とも、ユーザビリティーの一層の向上に努めてまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ワークライフバランスの推進についてでございますが、都は、仕事と育児等が両立できる社内制度の整備に取り組む中小企業に対して、経費を助成し支援しております。
 本事業では、所要経費について一定の基準を設けた上で、さまざまな企業の主体的な取り組みを応援するため、目的に合致したものを幅広く対象としております。
 助成を希望する中小企業に対しましては、基準にのっとり、公平公正な支給に努めるとともに、相談に当たる担当者が各企業の実情に応じ、例えば従業員の負担軽減策としてシステム導入を提案するなど、助成金の効果的な活用に向けたアドバイスを適切に行っているところでございます。
 今後とも、ワークライフバランスの推進に意欲的な中小企業を積極的に後押しできるよう、各企業の実態を踏まえた対応を図ってまいります。
 次に、地方と連携した外国人旅行者誘致についてでございますが、東京と他の自治体が連携し、広域的な旅行者誘致を進めることは、東京へのリピーターを確保するとともに、地方の活性化を図る上で重要でございます。
 このため、都は、東京を訪れる外国人旅行者が地方にも足を伸ばし、多様な魅力を堪能できるよう、広域の観光ルートの作成に向けて取り組んでまいります。
 今年度、まずは東北六県と仙台市、航空、鉄道事業者から成る協議体を設置するとともに、交通手段などの調査を行ってまいります。
 今後とも、東京と地方が連携し、相乗効果を生み出す取り組みを進めてまいります。

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