平成二十六年東京都議会会議録第十七号

〇議長(高島なおき君) 三十五番尾崎あや子さん。
   〔三十五番尾崎あや子君登壇〕

〇三十五番(尾崎あや子君) 最初に、女性の社会参加の重要性から、女性の感性や視点を生かして商売を始める女性起業家問題について質問します。
 私は、二十三年間、中小零細業者の営業と暮らしを守る運動にかかわり、女性の経営者が、育児や家事、介護をしながら、自分のスタイルで特技を生かして生き生きと商売をしている姿を見てきました。
 しかし、日本では女性が起業する場合、資金繰り、相談窓口、起業時のコスト軽減支援など、企業経営者となるための環境が十分に整っていません。
 アメリカやフランス、ドイツなどで現地調査を行う中で、日本の女性起業家は外国と比べて少なく、困難も多いということを実感しました。OECD本部を視察した際、日本では、女性の社会参加が少ない、女性起業家も少ないですねといわれたことが忘れられません。
 アメリカでは、一九九七年から二〇〇七年に女性経営企業が四四%増加し、男性経営企業に比べ二倍の伸びを示しています。
 移民や女性などの弱者に支援し、差別をなくし、女性事業発展法や連邦調達合理化法などを制定し、女性起業家を応援すると同時に、中小企業育成センターが約千カ所設置され、大学などと連携して起業家育成を行っており、女性ビジネスセンターのカウンセリング拠点が五百カ所あるなど、特別な手だてをしてきたからです。
 アメリカが公表している女性経営企業に関する代表的な報告書は、女性経営企業の成長と雇用創出の功績は将来の経済成長の潜在源である、女性経営企業が与える影響力と経済への貢献度合いが大きいと報告しています。
 韓国もアメリカと同様に、女性の起業を支援することに重点を置いた法律の整備が行われ、教育研修や創業する人への支援施設の提供などが進んでいます。フランスでも、女性の起業を後押しする基金があるなど、経済産業省の女性起業家実態調査の中で紹介しています。
 一方、日本における女性起業家支援は、抜本的な強化が求められています。
 女性の創業支援の日本の現状と意義について、知事の認識を伺います。
 都の長期ビジョンで、若者、高齢者とともに、女性の起業について、自立できるまで一貫した支援を全庁的な取り組みとして明確に位置づけることが求められると思います。
 起業分野も、女性の特性を生かし、子供、女性向け用品、食品の販売、エステなどの理美容、飲食、家事、介護サービスなど、多様な業種、分野での起業支援が求められると思いますが、どう考えていますか。
 自分で創業、起業することは、何歳であっても挑戦でき、自分らしい生き方と社会貢献したいという思いを実現でき、女性の社会参加が十分期待できる分野です。
 京都府では、女性起業者専門のチャレンジオフィスを男女平等センター内に設置するなど、全国的にも広がっています。
 都の男女平等参画のための東京都行動計画にも、女性の起業について位置づけられています。
 男女平等参画社会の実現に向けて、都民と行政が協力して取り組む活動の拠点となっているウィメンズプラザで、十二月十四日から起業女子全力応援交流会を開催していることは重要な取り組みだと思います。
 私も参加しましたが、若い女性の参加者が多く盛況でした。さらに発展させていく必要があると思いますが、いかがですか。
 ウィメンズプラザで女性の起業に関する相談、交流、展示、紹介、出店体験イベントも行っていただきたいと思いますが、いかがですか。
 品川区は、工場の撤退が続く中で、創業支援を重視してきました。二〇〇九年には、女性が元気ならまちが元気になると、女性に特化した武蔵小山創業支援センターをスタートしました。
 先日、その創業支援センターを視察し、区の担当者にもお話を伺いました。創業する人にオフィスとして施設を低額で貸し出す、インキュベーション施設とチャレンジショップもあり、セミナー、相談会、交流を中心に延べ四千人が利用しています。
 子育て、子供、女性をキーワードに、子育て中のお母さんが創業を考えるとき、子供を一時的に預けられるようにと、一時預かりもできる保育所を創業支援センターの中につくりました。
 アドバイザーの方は女性で、男性よりも女性の方が自分の体験を生かして人の役に立ちたい、社会に貢献したいと思って起業する人が多いと話していました。
 家賃の高い東京では、開業するときの支援で必要なことは男女ともお金と場所です。女性が起業するときに苦労したことは、経営に関する知識、ノウハウ不足であり、同じような立場の人との交流の場があることで、女性の力が発揮できるということです。
 女性起業家支援への区市町村の取り組みには大きな温度差がありますが、その中でも、品川区の女性に特化した武蔵小山創業支援センターの取り組みは重要です。
 こうした取り組みを全都に広げるために、都が、より身近な区市町村が行う創業支援事業への財政支援を行うこと、区市町村の担当者の交流を行うことを求めます。それぞれいかがですか。
 埼玉県では、起業相談を専門にしたワンストップ窓口を日曜、祝日以外の毎日開設しています。昨年は、県内で起業を予定している女性を対象に、起業支援ルームを開設しました。
 都は、中小企業振興公社のインキュベーション施設の利用者や、相談、セミナー受講者などから、起業を目指す女性のニーズをしっかりと把握し、創業支援施策を拡充していくべきと考えますが、どうですか。
 女性の感性を生かした工夫で、消費者のニーズである、かわいい、使ってうれしいと思える製品開発やパッケージ、店舗づくりなどを進める際に、東京都立産業技術研究センター墨田支所にある生活技術開発セクターは大きな力になると思います。
 都では、女性起業家に対して、それぞれの支所でどのような支援を行い、今後どのように支援していくのですか。
 都として、女性に特化した女性創業支援センターを設置し、女性起業家のさまざまな相談に対応できるワンストップ窓口、セミナーの開催、女性起業家紹介、交流コーナー、女性に特化した貸し創業施設を設け、利用できるようにすることで、女性の創業、起業を促進することができると考えます。
 女性の起業が順調に進む上で、鍵を握っている女性の専門家の育成も重要だということを強調しておくものです。
 女性起業家がふえる上で、家事、育児、介護などへの支援の充実、病気や出産のときに安心して休めるよう援助できる人、商いヘルパーを派遣できるような支援を求めておきます。
 子育てや介護などの問題に直面し、乗り越えた女性経営者は、女性従業員が直面する同じような問題にも柔軟に対応できるため、雇用の創出にもつながっていきます。
 自営業者が地域の産業を支えています。しかし、家族従業者に支払う給与は経費として認められず、自営業者、家族従業者を苦しめてきました。これは、家族従業者に対する人権侵害です。
 多くの先進国では、自営業の家族の賃金は、必要経費として認められております。このような差別的な税制度は早急に廃止すべきです。
 家族従業者の働き分を認めない所得税法五十六条の撤廃を国に求めるよう要望します。いかがですか。
 次に、コミュニティバスについて質問します。
 多摩地域の交通は、区部で働く人を鉄道を中心にして、大量輸送することを基本につくられてきました。このため、日常生活を支える地域交通の整備は大きく立ちおくれており、多摩地域には多くの交通不便地域があります。団塊世代の大量退職時代を迎えた中、この問題の解決は急務となっています。
 知事が第二回定例会の所信表明で述べたように、高齢化が進む中で、身近な足であるバスの役割はますます大きくなっています。
 中でも、多摩地域では、日常の買い物や病院への通院、役所の手続などのためのコミュニティバスを走らせてほしいということが市民の大きな要望になっています。
 地域での生活を支えるコミュニティバスの役割をどう認識していますか。都として、コミュニティバスへの区市町村支援を抜本的に強化すべきと思いますが、いかがですか。
 私の地元である東村山市は、ことし六月から、コミュニティバスの料金が百円から百八十円に値上げされ、乗降者数は二五%減少しています。市民からは、病院に行く回数を減らしている、シルバーパスが使えるようにしてほしいと署名運動が広がっています。
 コミュニティバスでシルバーパスを使えるようにしてほしいという願いも切実です。この要望をどう受けとめていますか。せめて、百円バス以外のところはシルバーパスが使えるように都の支援を求めるものです。お答えください。
 次に、公立小中学校の特別教室へのクーラー設置についてです。
 クーラー設置には、二〇一一年から都の補助が実施され、おくれていた多摩地域でも一気に普通教室にクーラーが設置され、子供たちからも保護者の皆さんからも感謝されています。
 東村山市では、保護者の皆さんが、特別教室にもクーラーをつけてほしいと署名を集め、市に何度も申し入れをしています。
 子供や保護者の方からは、理科室、家庭科室、美術室などの特別教室にも都の冷房化補助対象に広げてほしいとの要望が強くありますが、いかがですか。
 冷房化工事費四百万円以下の工事は、国と都の補助対象となりません。そのため、私の地元である東大和市のように、一教室のみの工事をするような小規模工事の学校では、この補助制度が使えません。このような場合は、国の交付税を使いますが、自治体にはこの交付税を使った小規模改修でやるべきものがたくさんあります。
 国の補助が使えない場合でも、全額区市町村の負担とならないよう、都独自の補助を行うよう求め、見解を求めます。質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 尾崎あや子議員の一般質問にお答えいたします。
 女性の起業に対する支援についてでありますが、少子高齢化により、生産年齢人口が縮小する中において、経済の持続的な成長を確かなものとしていくためには、女性の活躍を推進していくことが必要であります。
 とりわけ、女性による起業は、産業の新たな担い手として、女性ならではの感性を生かした、これまでにない製品やサービスを創造することが期待できます。
 このため、都は、経営、資金の両面から支援を行っておりまして、今後とも、新たなビジネスを創出する女性の力を最大限に引き出し、東京の経済を活性化してまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁いたします。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、公立小中学校の特別教室の冷房化についてでありますが、都は今年度から、小中学校を対象に、都立高校において整備が完了している音楽室などの特別教室の冷房化に係る補助事業を開始し、区市町村が計画的に冷房化を進められるよう支援をしております。
 現在、都立学校において、いまだ冷房化していない特別教室の利用状況等に基づき、冷房化の対象とすべき教室を検討しており、その結果を踏まえ、小中学校について総合的に検討することとしております。
 次に、公立小中学校の冷房化補助事業についてでありますが、公立小中学校の冷房化については、設置者である区市町村が国の補助制度を活用して、その権限と責任において行うことが原則であります。
 都は、今後とも、区市町村を支援するため、国の補助対象となる事業について、早急に整備が必要な特別教室に対する都独自の財政支援を行ってまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、女性の起業支援についてでございますが、都では、中小企業振興公社の総合相談窓口でのアドバイスや各種セミナーの開催、さまざまなインキュベーション施設の運営等により、女性の多様な創業を支援しております。
 なお、長期ビジョンにつきましては、年内の公表に向けて調整を進めているところでございます。
 次に、区市町村に対する支援についてでございますが、都は、区市町村によるインキュベーション施設の整備に対する支援を検討するとともに、引き続き区市町村と創業支援について意見交換を実施してまいります。
 次に、起業を目指す女性のニーズと支援策についてでございますが、都はこれまでも、事業計画策定や資金調達など、起業を目指す女性のニーズを踏まえ、女性向けセミナーの開催や、女性等を対象とした新たな融資制度など、施策の充実を図っております。
 今後とも、必要な支援を行ってまいります。
 次に、女性起業家に対する技術支援についてでございますが、産業技術研究センターの各支所におきましては、先端機器を活用し、地域の産業特性や利用者のニーズを踏まえまして、製品開発などに対する技術支援を行っております。
 最後に、家族従業者への給与に関する所得税法上の取り扱いについてでございますが、青色申告で正確な帳簿に基づき、家計と事業を明確に分離した場合には、家族従業者への給与が必要経費として認められております。
 また、定額による専従者控除を定めている白色申告については、本年一月から、記帳、帳簿等の保存が義務化されたところでございまして、今後とも、国の動向を注視してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 女性の起業に向けた取り組みについてでありますが、みずからが就業スタイルを決定できる起業を目指している女性の多くが、専門家による助言や指導、同じような経営者等との交流の場の提供などの支援を求めており、今回の起業女子全力応援交流会はこうした認識のもと、専門家による指導や人的ネットワーク形成を図るため、開始いたしました。
 具体的には、東京ウィメンズプラザにおきまして、目ききのできる講師陣による、より実践的なセミナーを開催するほか、起業ビジョンの助言、指導を行うサポートプログラムや交流会などを通じて、講師と参加者、参加者同士の交流を支援いたします。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、コミュニティバスへの支援についてでありますが、コミュニティバスは、既存の路線バスや鉄道等では補えない交通需要に対応する乗合バスであり、地域における高齢者、障害者等の社会参加を促進するための交通手段の一つと認識しております。
 そのため、都は現在、区市町村がコミュニティバスの運行を主体的に計画し、自立的な運営を確保する場合に、事業の立ち上げ段階における初度経費や運行経費の一部について、包括補助により支援しております。
 次に、コミュニティバスへのシルバーパスの適用についてでありますが、コミュニティバスは、交通手段の少ない地域の解消や、公共施設などへの移動手段を確保するため、区市町村とバス事業者が路線や運賃、運行経費の負担等について協定を締結し、運行されております。
 コミュニティバスのうち、一般のバス路線と同等の運賃を設定しているものについて、区市町村とバス事業者の協議が調った場合は、シルバーパスで乗車できるようになっております。

〇議長(高島なおき君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時休憩

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