平成二十六年東京都議会会議録第十七号

〇副議長(藤井一君) 四十四番大場やすのぶ君。
   〔四十四番大場やすのぶ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇四十四番(大場やすのぶ君) 初めに、東京一極集中の是正について伺います。
 地方創生の議論の中で、東京への一極集中の是正が一つのテーマとなっています。一極集中の是正と国土の均衡ある発展は、戦後、歴代の内閣が取り組んできた古くて新しい課題であります。
 国土総合開発法に基づく五次にわたる全国総合開発計画では、地方における開発整備が進むとともに、新幹線や高速道路ネットワークなどが全国的に整備され、戦後日本の成長の礎となりました。
 それでもなお、今日、大都市部への集中がとまることはありません。それは、集中のメリットがあるからにほかならないからです。
 企業は集積地に立地することで、取引に伴う経費削減が可能になるとともに、フェース・ツー・フェースのコミュニケーションを通じて新しいアイデアが生まれ、生産性を向上させることができます。また、優秀な人材を確保する上でもメリットがあり、このように、大都市部への集中は経済活動上の自然な流れなのであり、それゆえ、地方においても、県庁所在地など都市部に人口や経済活動などが集中する傾向があります。
 昨今、人口減少、自治体消滅の危機が叫ばれている中で、東京一極集中の是正を殊さらに強調する向きがありますが、これはムードに流されたものになってはいないでしょうか。安易で上滑りな東京一極集中是正論を唱えるのは危険だと考えます。
 なぜならば、東京から単に人口、企業、税財源などを地方へ移転させれば、地方が活性化するとの幻影を生み出し、本来主体であるべき地方の自主的な取り組みに対するインセンティブを失わせることにもなりかねないからであります。
 また、急速に進む少子高齢化への対応や災害に強い都市づくりなど、大都市部の抱える深刻な課題に対する認識を弱めることにもなり、これでは東京も地方も共倒れとなってしまうおそれがあります。
 そこで、過度な東京一極集中是正論が今後の国の判断を誤らせないようにしていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、都庁におけるサイバーセキュリティー体制について伺います。
 オリンピック・パラリンピックの開催を契機として、サイバー攻撃の急増が予想されています。現に二〇〇八年、平成二十年の北京では七千万回、前回、二〇一二年のロンドンでは二億回以上ものサイバー攻撃が確認されており、とりわけロンドンでは、デジタル放送や公式ホームページのほか、開会式当日にスタジアム照明制御系システムが狙われ、急遽、照明の制御を手動に切りかえられる体制を組むなど、大会開催を脅かす攻撃事例があったと聞いています。
 専門家によれば、今後、二〇一六年のリオデジャネイロでは二十億回、さらに、二〇二〇年の東京では二千億回以上もの攻撃が予想されるなど、激増するサイバー攻撃への対応は喫緊の課題といえます。
 サイバー攻撃は、対応を誤れば、開催都市東京、ひいては日本国全体の国際的な信頼を大きく揺るがすだけでなく、新たなサイバー攻撃を呼び、サイバーテロに発展する危険性をはらんでいることから、開催都市としての威信をかけて全力で取り組むことが重要と考えます。
 そこで、オリンピック・パラリンピックの開催を見据えた都庁におけるサイバーセキュリティーへの対応について見解を伺います。
 一方、さきの臨時国会では、我が党のIT戦略特命委員会を中心に議員立法として提出したサイバーセキュリティ基本法が成立しました。この法では、自主的施策の策定、実施など、サイバーセキュリティーに関する自治体の責務を定めており、今後、都のみならず、都内区市町村もその対応が必要となります。
 都は、地下鉄、下水道を初め、都民生活や事業者の活動を支える重要なインフラの運営を行っているほか、区市町村も含め多種多様な行政サービスを提供していますが、サイバーセキュリティーに関する都民、事業者の意識啓発を図る一方、都民生活や経済活動などを停滞させることなく、こうした行政サービスをサイバー攻撃からしっかりと守ることが重要であります。
 そこで、国や都民、事業者に身近な区市町村と連携して、東京都全体のサイバーセキュリティーレベルの底上げを図っていくべきと考えますが、都の取り組みについて伺います。
 次に、消費者被害の防止について伺います。
 最近の都内の消費者生活相談の中では、規制する法律のない法のすき間を突いた手口による被害が問題となっています。
 例えば、かつて被害が多発した原野商法の二次被害が近年急増していると聞きます。原野を処分したいという被害者の焦りにつけ込み、原野を買い上げるかわりに別の土地の購入を勧めて代金をだまし取る卑劣な手口です。しかし、これは特定商取引法でも、宅建業法でも規制の対象とならないすき間事案となっています。
 昨年、消費者安全法の改正により、すき間事案への国による行政処分が可能となりましたが、私は、都議会本会議の場で、新たな被害が先鋭的にあらわれる東京では、より現場に近い自治体において取り締まりを強化すべきことを求めました。それに対し都は、消費者安全法の処分権限の地方への移譲を求めるなど、国に対し働きかけていくとの答弁がありました。
 しかし、このようなすき間事案による消費者被害は、今こうしているうちにも新たに発生している状況にあり、都がみずからの力で効果的な対策を立て、消費者被害の防止に向けて取り組んでいくことが大変重要であると思います。
 さきの第三回定例会では、悪質事業者への取り締まり強化について、都は、条例改正などの対応策を検討していくと答弁されましたが、具体的な方策を早急に実施すべきと考えます。見解を伺います。
 また、特に高齢者の消費者被害の防止に向けた取り組みについては、悪質事業者に厳正に対処するとともに、消費者被害を早期に発見し、相談機関につなぐことも重要です。
 最近起きた事例では、高齢者がダイヤモンドの購入を持ちかけられ、二億円を超えるお金をだまし取られたという報道がありました。手口としては、いわゆる劇場型の勧誘であり、ダイヤモンドの購入を勧誘するパンフレットが届き、その後、宝石の買い取り会社を名乗る複数の事業者から、パンフレットにあるダイヤを買ってくれれば高く買い取るなどと執拗に電話があったために、約半年の間に二十数回に分けて現金を送ってしまい、米粒くらいの宝石のようなものが送られてきましたが、その事業者と連絡がとれなくなったとのことです。
 ダイヤモンドばかりでなく、近ごろの話題に便乗したオリンピック関連企業への投資など、高齢者を狙った詐欺的な勧誘による被害が後を絶たないと聞きます。
 私は、特に高齢者の被害防止に向けた取り組みについて、その重要性を指摘してきました。
 都はこれまで、地域連携による高齢者の見守りネットワークの構築に向けた取り組みなどを進めているとのことですが、このような被害は、消費生活センターに相談されれば被害を回復できる可能性が出てきますが、多くは相談に結びつかずに表面化しないのではないかと懸念されます。報道された事件も、早目に周囲の誰かの気づきがあり相談につながれば、これほどの被害にならなかったのではないかと思うと非常に残念に思います。
 都は、こうした高齢者被害の特性を踏まえて、被害防止に効果的な見守りネットワークの構築に向けて対策を講じていく必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 東京の水道は、高度経済成長期などの需要増加に応じて施設拡張を行い、量の確保に努めてきました。近年では、平成二十五年度に利根川水系を対象に高度浄水処理一〇〇%導入を達成するなど、質の面も充実が図られています。
 また、震災対策として、地球半周以上にも及ぶ水道管路の耐震継ぎ手化に、事業量を倍増して積極的に取り組んでいる点は大いに評価するところです。
 しかし、近年、国内外において、社会インフラの老朽化事故が多く発生しています。水道は、他にかわることのできない最も重要なライフラインであり、仮に停止すれば、東京のみならず、日本全体の経済活動に大きな影響を及ぼしかねません。高度経済成長期に集中的に整備した浄水場は老朽化が進行し、間もなく更新時期を迎えます。さらに、浄水場と給水所などを結ぶバックアップ管路などの整備が急務となっています。
 そこで、広域断水のリスク回避など、安定給水を確保していくためには、こうした基幹施設の整備を重点化して取り組む必要があると思いますが、見解を伺います。
 次に、区と連携した下水道の整備について伺います。
 下水道局では、特に高度経済成長期から下水道の普及を急ぎ進めていましたが、昭和四十七年度以降は、下水道局単独の取り組みに加えて、世田谷区など八つの区に下水道管の整備の工事を一部委託し、普及のスピードアップを図ったと聞いています。
 この区委託を含めたさまざまな取り組みの結果、平成六年度末には、区部の普及一〇〇%概成を達成しました。普及概成の後、下水道事業の内容は、再構築、浸水対策の強化や合流式下水道の改善など多様化し、高度化しています。
 都市化が進み、また下水道が整備され、下水道が使えることが当たり前になっている今日では、普及を進めた時期よりも、下水道事業の実施の際に、事業の内容や必要性に対する住民の理解を得ることが難しくなっているほか、さらに、二十三区一律ではなく、地域ニーズをより一層反映した取り組みが求められているのではないかと思います。
 そこで、今後の下水道事業の実施に当たっては、普及の際と同じように、下水道局単独で取り組むだけでなく、地域住民に最も近く、地元の事情に精通した区との連携もより重視すべきと考えますが、見解を伺います。
 さて、東京二十三区の下水道は、八割の地域で汚水と雨水を同じ一つの下水道管で集める合流式下水道を採用していますが、私の地元では、汚水と雨水を別々の下水道管で集めて処理や排除を行う分流式下水道管で整備されています、いわゆる多摩川分流地区があります。
 この地区では、汚水を水再生センターへ流して処理するための下水道管、いわゆる汚水管の整備は完了し、現在は雨水を排除するための下水道管、いわゆる雨水管の整備が進められています。
 分流式下水道の地区のうち、雨水管が整備されていない地区では、雨水は側溝などを流され排除されていますが、雨が降った際に排除し切れずに、規模は小さいものの、ほぼ毎年のように浸水被害が発生しています。
 そこで、このような世田谷区の多摩川分流地区において、雨水管の整備を着実に進めるべきと考えますが、見解を伺いまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 大場やすのぶ議員の一般質問にお答えいたします。
 東京一極集中是正論についてでございますが、東京一極集中の問題は、明治以来の中央集権体制をどう変えていくのかという、国の形から考え直して答えを出すべきものであります。一極集中是正の名のもとに、安易に税財源を東京から地方に移転するなど、日本の機関車である東京の活力をそぐようなことがあってはなりません。
 今日、大都市部に多様な産業の集積が進んでおります。集積は、経営の効率化やイノベーションの源泉でありまして、都市の持つ力であります。そのメリットを求めて、大都市に企業や人口が集中するのは、ある意味必然的な流れでありまして、それを無理にとめることはできません。
 その一方で、東京と地方の発展は二律背反の関係ではございません。農産物や観光など、それぞれの地域が持つ豊かで特色のある資源を東京に集まる知恵や資金と結びつけ、相乗効果で新しい地域ごとの魅力をつくり出していくことは可能であります。
 今後、東京と地方がウイン・ウインの関係を築いていけるよう、あらゆる機会を捉えて、国に対し、都としての考えを主張してまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁いたします。
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都庁におけるサイバーセキュリティーへの対応についてでございます。
 行政事務のIT依存化が高まる中、情報システムに対するサイバー攻撃への迅速な対応が必要と認識しております。史上最高、世界一のオリンピック・パラリンピックを成功させるためにも、都は開催都市として、サイバーセキュリティー体制を万全なものとすることが不可欠でございます。
 そこで、現行の情報セキュリティー委員会を、副知事をトップに公営企業を含めたサイバーセキュリティー委員会へ来年度改組いたしますとともに、そのもとにセキュリティー事故等への調査、対応等を行う都庁版シーサートを設置するなど、全庁横断的に取り組む仕組みを検討いたします。
 あわせて、多様化、高度化するサイバー攻撃の発生を前提に、新たなセキュリティー方針を来年度策定してまいります。
 次に、東京都全体のサイバーセキュリティーレベルの向上についてでございます。
 都民、事業者のサイバーセキュリティーに関する対応力を高めるとともに、行政サービスの継続的な提供を確保していくことは重要であると認識しております。
 このため、オリンピック・パラリンピックを見据えつつ、開催前の一定の時期から区市町村と連携し、都民、事業者を初め、さまざまな主体とのサイバー演習を実施するなど、都民、事業者への一層の意識啓発を図ってまいります。
 また、都民、事業者の安心・安全を確保するため、都が運営する重要インフラへのサイバー攻撃に対する事前の備えや発生後の対策を強化するほか、区市町村との情報連携をより緊密に行ってまいります。
 これらの取り組みにより、東京都全体のサイバーセキュリティーレベルの向上を目指してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 消費生活行政に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、消費者被害の防止についてであります。
 近年、悪質事業者が規制を逃れるため、法のすき間を狙った悪質な手口を繰り返すケースが増加しております。
 こうした事業者の取り締まりを迅速に行い、被害拡大を食いとめるため、都はこれまで国に対し、消費者安全法の勧告、命令権限を地方自治体へ移譲することを繰り返し求めてまいりましたが、実現に至っておりません。
 このため、都といたしましては、国の対応を待つだけでなく、東京都消費生活条例に基づく取り締まりを強化し、早急に実効性ある対策を講じてまいります。
 具体的には、原野商法等のすき間事案について、不適正な取引行為があった場合に、勧誘行為等を禁止する禁止命令の対象とするよう、今年度内の条例改正に向けて取り組んでまいります。
 次に、高齢者の消費者被害防止についてでありますが、高齢者の被害の早期発見には、地域の見守りなど日常的な働きかけが必要であり、昨年度、都が高齢者を対象に実施した調査では、悪質商法の被害者の約五割は消費生活センターや家族に相談等を行っていないことがわかりました。
 また、区市町村の見守りネットワークは、福祉サービスを受けている高齢者の約二割が対象であり、高齢者全体の見守りを広げるには、新たな方策が必要であると考えております。
 このため、今後都は、区市町村が行う地域の見守りに対し、消費者被害防止のための支援を強化するとともに、家庭を訪問して配送等の業務を行う事業者と連携し、高齢者に悪質事業者の手口や相談窓口等の情報を直接届ける新たな仕組みを構築し、被害防止に取り組んでまいります。
   〔水道局長吉田永君登壇〕

〇水道局長(吉田永君) 水道基幹施設の整備についてでありますが、東京水道の最大の使命である将来にわたる安全でおいしい水の安定供給には、施設の老朽化や大規模地震などに適切に対応するため、今後、浄水場更新を初め多くの施設整備が必要となります。
 これら施設のうち、特に浄水場や導水施設、送水管などの水道基幹施設は、一たびその機能に支障が生じれば、断水などの影響が広範囲に及ぶおそれがございます。また、これらの整備には長い年月と多くの費用を要します。
 そこで、広域断水のリスク回避などを図るため、水道基幹施設の整備を局の最重要課題と位置づけ、代替施設の設置やアセットマネジメント手法などを活用した事業の平準化に努め、安定給水を確保しながら、効率的に整備を実施してまいります。
   〔下水道局長松田芳和君登壇〕

〇下水道局長(松田芳和君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道事業における区との連携についてでございますが、下水道事業は、地域の生活を改善するために、地域の中で行われる事業であることから、事業の実施には、区との連携が重要でございます。
 このため、日ごろから区と連携を密にとり合い、地域のニーズや動向等の把握に努めているほか、毎年度、区への事業計画の説明等を実施しております。
 また、区は区道管理者でありますため、区道整備とあわせた下水道工事などを世田谷区など十一区に委託し、コスト縮減や工期短縮等を図り、事業を効率的に進めております。
 さらに、区からは、下水道工事の受託は、区の技術系職員の育成にも役立っていると聞いております。
 今後も、一層の情報共有化や、区委託工事の施工場所や期間を柔軟に対応できる仕組みの導入等、区との連携強化を図りまして、下水道事業の効率的な執行に努めてまいります。
 次に、世田谷区の多摩川分流地区の雨水管整備についてでございますが、この地区では、良好な生活衛生環境を早期に確保するため、汚水管を先行して整備し、現在、雨水管の整備を進めております。
 雨水管の整備に当たりましては、下水道局での施工に加え、区道の整備と一体的に実施できる工事などを区に委託し、事業の迅速化や効率化を図っているところでございます。
 区内で雨水管を整備する計画区域二千二百ヘクタールのうち、浸水の危険性が高い地域を優先して対策を進めておりまして、平成二十五年度までに五百十ヘクタールを完了させております。
 今後は、地形や降雨状況等をきめ細かく反映できる雨水流出解析シミュレーションの活用などの工夫を行いまして、効率的、効果的に雨水管の整備を進め、浸水に強いまちづくりを推進してまいります。

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