平成二十六年東京都議会会議録第十七号

〇議長(高島なおき君) 三十八番吉倉正美君。
   〔三十八番吉倉正美君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十八番(吉倉正美君) 今、首都東京における喫緊の課題は、大都市交通システムの構築と推進であります。各交通機関の連携や空港アクセスへの整備にあわせて、特に求められているのが増大する臨海副都心の交通需要への対応であります。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会の中心となる臨海副都心一帯は、MICEの誘致や国際観光拠点の開発、さらに豊洲新市場のオープンなどにより、住宅の開発が急増し、今後、約三万六千人以上の人口増が見込まれています。
 知事が公表された新たな公共交通機関であるBRT、バス高速輸送システムは、海外でも多く採用され、地域の基幹的な交通システムとして臨海副都心地域の需要に対応できるものと期待されています。
 そこで、世界の注目が集まる中、BRTの推進に当たっては、当面の交通不便地域の問題解決と同時に、さらに二つのことを目指すべきであります。
 その第一は、日本の環境技術を世界にアピールすることであります。そのために、知事が強調しておられる水素で走る燃料電池車をこのBRTに導入すべきであります。
 第二は、安全性を最大限に高める最新技術をBRTに活用すべきであります。特に開発が進んでいる衝突を未然に防ぐ自動停止など、ITを活用した安全性向上などの先端技術を積極的に導入すべきであります。知事の所見を伺います。
 成熟した新たな東京をイメージさせるBRTの推進は、国内外へ向けた大きな広報効果が期待されております。そのため、BRTの推進に当たっては、時間に正確な運行と大量の輸送力、さらに、安全性をいかに確保するかが極めて重要であります。
 これには専用レーンの設定など、交通規制の問題や停留所の整備、管理などの道路管理や用地取得など、多くの課題があります。
 こうした課題解決のために、都は既に協議を進めていると聞いております。今後、具体的な論点を明らかにし、国の協力を求めるなど、BRTの実現に向けて総力を挙げて取り組むべきであります。都の見解を求めます。
 次に、東京の都市広報、特に映像等による外国人向け情報発信の強化について質問します。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会に向けて、観光やビジネス等で東京を訪れる外国人が急増しております。こうした方々への情報発信は、わかりやすく効果的に行うべきです。
 これまで、霞が関の国際機関に勤務するシンガポールの友人や、あるいは韓国から来日して東京外語大で学ぶ友人からも、都の外国語版のホームページは文字情報が多過ぎて欲しい情報が探しづらい、もっとシンプルで使いやすいものにしてほしいとの指摘を受けております。
 事実、ロンドンやニューヨークなど、ライバル都市のホームページはシンプルで使いやすく、ビジュアル的にもわかりやすく作成されています。こうした海外都市のホームページを参考にして、外国人にさらに活用されるものにすべきであります。
 そこで都は、これまでの都庁のホームページの外国語版を抜本的に見直し、多くの外国人が簡単にアクセスし、求める情報がすぐに入手できるように、外国人にとってわかりやすいシステムに改めるべきであります。見解を伺います。
 また、都が提供しているテレビ広報番組についても、海外からの観光客の誘致活動にもっと積極的に活用すべきであります。特に番組の中で、東京の歴史や伝統文化など、東京の魅力が数多く紹介されており、こうした映像こそ外国人に提供すべきです。
 そこで、例えば、TOKYO MX等で放送している番組の中から、外国人に関心の高い映像をそのまま切り取り、そこに英語字幕をつけてインターネットで配信することが大変有効であり、こうした映像を活用した広報を積極的に進めるべきであります。見解を伺います。
 次に、二〇二〇年東京パラリンピック大会の成功を目指して、障害者スポーツの支援について質問いたします。
 先般、冬季パラリンピック競技の一つで、一九九四年のリレハンメル・パラリンピックで正式競技となったアイススレッジホッケーのトップアスリートである上原大祐さんから直接お話を聞くことができました。
 上原さんは、二〇一〇年のバンクーバー・パラリンピックでは見事に決勝ゴールを決め、日本に銀メダルをもたらしました。そうした経験を生かして、まさにライフワークとして障害のある子供たちにスポーツの楽しさを普及しておられます。
 上原さんが特に強調していたのは、障害者スポーツは健常者のスポーツの陰に置かれたものではなく、アイススレッジホッケーもブラインドサッカーも車椅子テニスも、その競技自体を独立した新たなスポーツとして認め、光を当ててほしい、応援してほしい、ファンになってほしいということでありました。スポーツのすばらしさ、楽しさを体感するためには、障害の有無にかかわらず、一緒になって競技を行うことが最も有効です。
 そこで都は、障害者スポーツの裾野を広げ、パラリンピック選手の育成のためにも、健常者と障害者がともに体験できる機会を都内に拡大すべきであります。見解を伺います。
 また、障害者がスポーツ競技を行う際、一番の苦労は練習会場の確保だとお聞きしました。
 例えば、アイススレッジホッケーの練習にはスケートリンクが必要です。しかし、都内で車椅子ユーザーが使用できるのは、バリアフリー仕様となっている東大和市のアイスリンク一カ所のみです。しかも、練習が可能な時間は、夜中の三時から明け方までとされ、昼間の時間は一般滑走が優先されるため、全く予約がとれないのが実情と伺いました。さらに、他の競技でも障害者の利用を好ましいものとせず、断られてしまうことも少なくありません。これでは余りにも活動が制限されてしまいます。
 一方で、都は、障害者スポーツの拠点となっている都内二カ所の都立障害者スポーツセンターについて、大規模改修を計画しています。こうした機会を捉え、より障害者が利用しやすい施設へと改善を図るなど、障害者がスポーツ活動を行える場の拡大について積極的に検討すべきであります。見解を求めます。
 最後に、東京の伝統工芸品づくりの新たな挑戦について伺います。
 東京には先端技術を誇る企業が多数集積している一方、江戸、明治の時代から続く伝統工芸も、地場のものづくりとして今なお健在であります。
 私の地元の新宿区も、江戸から続く染物産業の一大集積地であり、東京染小紋や江戸さらさ、東京手描き友禅などの伝統工芸品の数々が生み出されています。工業化が高度に進んだ現代にあって、代々受け継がれた技法を用い、熟練の職人により一品一品手づくりされる伝統工芸品は、本物志向の消費者に愛されており、まさに歴史と伝統の結晶であります。
 新宿区では毎年、染物をテーマとした染めの小道というまちおこしの取り組みが行われています。まち全体をギャラリーに見立て、色とりどりの反物が川面に踊る川のギャラリー、地元の商店街の軒先を作家や大学生などが制作したのれんで彩る道のギャラリー、こういった数々のイベントは、染物のつくり手の方々にとって大いに刺激となり、新たな創作活動への活力にもなっております。
 東京の伝統工芸は、その歴史的、芸術的価値からも、後世にまで守り継ぐべき東京の財産であり、そこに新しい息吹を吹き込むことによって、産業としても大いなる成長の可能性を持っております。
 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催により、世界からの注目がこの東京に集まる今こそ、世界に誇るべき伝統工芸文化、伝統工芸産業として、一層の発展と普及を図っていくべきであります。知事の所見を伺います。
 こうした伝統工芸品の制作は、その多くが零細企業や個人の事業主によって担われており、近年の消費者のライフスタイルの変化や大量生産品の普及などにより、事業環境は厳しさを増しています。
 この状況を打破しようと、東京都美術館で販売されるオリジナル商品を開発する「TOKYO CRAFTS&DESIGN」というプロジェクトが二年前に実施されました。職人と新進デザイナーがタッグを組み、昔ながらの素材と技法を用いつつも、これまでにない全く新しいデザインの伝統工芸品の商品開発に取り組んだものであります。着物の生地などに使われる東京染小紋のポケットチーフや江戸切り子を美しくあしらった指輪などの新商品の数々が生まれ、来館者を魅了したと聞いております。
 このように、これからの伝統工芸は、歴史や伝統を単に保存、継承するだけではなく、現代の感性に合うような先端の技術や先鋭のデザインを積極的に取り込んでいくなど、新しいものづくりへの挑戦が不可欠です。
 そこで、都は、各局の持てる資源や人的ネットワークなどを活用し、新たな商品開発を強力に支援するとともに、新しい伝統工芸展などの場を設けることにより、すぐれた商品を広く発信していくべきであります。都の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 吉倉正美議員の一般質問にお答えいたします。
 先進技術のBRTへの導入についてでございますが、一九六四年大会のときの新幹線のように、オリンピック・パラリンピック大会を契機として生まれた画期的な技術は、レガシーとなってその後の社会を大きく発展させることになります。
 二〇二〇年の大会では、その変革に当たるものが水素社会の実現だと考えております。そのためにも、大会後も継続して燃料電池を備えたBRTを走らせるなど、水素エネルギーの利活用を積極的に推進していく必要があります。
 先日、私も試乗いたしましたが、燃料電池車は非常に静かで、加速性能も十分だと実感しております。BRTにもその技術をぜひ採用したいと考えております。加えて、周囲の交通状況を把握し、車両みずから事故を未然に防ぐ技術を備えた安全性の高いBRTの実用化を国や車両メーカーに対して求めております。
 引き続きまして計画の具体化を進めて、次世代交通のモデルともなるBRTを走らせることにより、日本の先進技術を世界にアピールしてまいります。
 伝統工芸の振興についてでありますが、日本人の繊細な美意識が織りなす絵画や工芸品などは、古来から多くの人々を引きつけ、海外にも多大な文化的影響を与えてまいりました。
 ここ東京にも、江戸の町人文化の中で発展を遂げてきました数多くの伝統工芸が今なお息づいております。洗練された感性とたくみの技術から成る伝統工芸品は、世界に通用するポテンシャルを持ち、その普及を図ることは、東京の歴史や文化の価値を世界に伝えることにもつながります。
 また、若いつくり手の間では、伝統に裏打ちされつつも、現代的なセンスを取り入れるなど、新たな創作の動きも見られるようになってまいりました。
 都は、こうした意欲ある人材による新商品の開発や国内外への販路開拓などの取り組みを強力に推進し、東京の伝統工芸をクールジャパンを担う産業として育て、その魅力を広く発信してまいります。
 その他の質問につきましては、関係局長が答弁いたします。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

〇都市整備局長(安井順一君) BRTの実現に向けた具体的な取り組みについてでございますが、都は、早期にBRTの実現を図るため、先般選定した事業協力者二社とともに、本年十一月、学識経験者や関係機関から成る協議会を設置いたしました。
 この協議会では、利用者の需要を踏まえたルートの設定や時間に正確な運行を確保するための方策、乗降場や車両のユニバーサルデザインなどについて検討しております。
 さらに、都は、国が進めております衝突事故の未然の回避、渋滞緩和につながる高度な自動走行などの技術開発に協力いたしまして、BRT車両への導入を目指しております。
 こうした内容を盛り込んだ基本計画を来年度早々に取りまとめ、早期の事業化につなげてまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 海外に向けた都市広報に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、外国語版ホームページについてであります。
 都の外国語版総合ホームページは、これまで在住外国者向けの生活情報や防災情報を英語、中国語、韓国語で発信してまいりましたが、今後は、観光やビジネスで東京を訪れる外国人に対しても、多様な情報をニーズに合わせてわかりやすく提供することが重要でございます。
 このため、近日中に外国語版ホームページを全面的に刷新し、ロンドンなど世界の大都市で広く採用がされているグローバルナビゲーションを新たに導入して、ニーズに応じた検索を容易にするとともに、パソコンやスマートフォンなど、さまざまな端末の画面に最適な表示が可能となるレスポンシブデザインを導入いたします。
 このような二つの世界標準に基づいたリニューアルを機に、写真や映像など視覚に訴えるコンテンツを充実させ、より効果的に東京の魅力を海外に伝えてまいります。
 次に、映像を活用した英語での情報発信についてでありますが、外国人向けの広報は、誰にでもわかりやすく、視覚に訴える映像を活用することが特に効果的であります。
 このため、来年度、TOKYO MXテレビで放送している都政広報番組「東京クラッソ」のミニコーナー「Made In Tokyo」の映像の中で、季節の美しい風景や豊かな食文化、伝統工芸のわざ、伝統文化の様式美など、外国人目線で選んだ東京の魅力を、英語の字幕をつけた動画として編集し、ユーチューブを通じて海外へ発信いたします。
 海外からの関心を高めるため、ユーチューブ上には、今年度新たに公募を開始したPR動画も加えた上で、ツイッターなどのSNSを活用して、今回全面的に刷新する外国語版ホームページへ誘導を図り、より多くの外国人に視聴を促してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 障害者スポーツに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、障害者スポーツを体験できる機会についてですが、障害のある人とない人がともに障害者スポーツを体験することは、障害者スポーツの認知度を高め、裾野を広げていく上で重要でございます。
 都は、この秋に開催いたしましたスポーツ博覧会やチャレスポTOKYOなどのイベントを通じ、車椅子バスケットボールやボッチャなど、健常者にも人気の高い障害者スポーツを来場者の方々に楽しんでいただきました。
 また、身近な地域において、地域スポーツクラブなどが実施いたします健常者と障害者がともにスポーツに親しむ事業に対しまして、企画立案のアドバイスなどの支援を行っております。
 今後、障害のある人とない人がともに体験できる競技をイベントなどでさらに積極的に取り上げ、障害者スポーツの魅力を実感できる機会の拡充に努めてまいります。
 次に、障害者がスポーツを行う場の拡大についてですが、障害のある人が身近な地域でスポーツ活動を行うためには、公立スポーツ施設が率先して受け入れ体制を整備していくことが重要でございます。
 都では、今後、障害者スポーツセンターの大規模改修において、競技スペース拡大や利便性向上を図ってまいります。
 また、区市町村のスポーツ施設に対しましては、今年度創設した補助制度により、身近なスポーツ環境の整備を進めてまいります。あわせて、障害者スポーツに対する誤解から施設利用が制限されることのないよう、区市町村職員などに対するセミナーや障害者スポーツ指導員養成講習会を通じて、障害の特性や競技用具についての理解を促進してまいります。
 こうした取り組みを通じまして、障害のある人がスポーツを行うことのできる場の拡大に努めてまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 伝統工芸品産業に対する支援策についてでございますが、伝統工芸は、江戸時代から続くものづくりのすぐれた蓄積を現代に伝えるものであり、こうした特色ある産業を将来に引き継いでいくため、時代のニーズに応える工芸品づくりを進めていくことが重要でございます。
 これまで都は、すぐれた知識、技術を持つ職人を伝統工芸士として認定するほか、東京都伝統工芸品展の開催など、販路開拓支援や次代の伝統工芸品産業を担う後継者の育成支援などに取り組んでまいりました。
 今後は、文化芸術の専門家のネットワークを有する関係局とも連携いたしまして、職人とデザイナー等との協働による商品開発への積極的な支援や幅広いPRなど、革新的な商品やデザインをより多く生み出し、普及させていく新たな取り組みを検討してまいります。

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