平成二十六年東京都議会会議録第十六号

   午後三時三十五分開議

〇副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百七番長橋桂一君。
   〔百七番長橋桂一君登壇〕

〇百七番(長橋桂一君) 都議会公明党を代表して、知事、教育長並びに関係局長に質問をいたします。
 さきに行われた衆議院解散・総選挙において、自民、公明両党による安倍政権が、衆議院で引き続き三分の二を上回る議席を得て、都民、国民の皆様から厚い信任を得ました。
 今回の衆院選は、暗く失敗続きであった三年三カ月に及ぶ民主党政権から交代し、景気の回復、社会保障制度の基盤強化、険しさを増す東アジアにおける安全保障体制の見直し等々、決められる政治の二年間を、国民の皆様から審判を受ける選挙でありました。
 公明党は引き続き、超少子高齢社会の中にあって、国民生活に直結する課題に総力を挙げ、都民、国民の皆様のご期待に必ずお応えしてまいる決意であります。
 さて、衆院選直前の国会では、地方が成長の活力を取り戻し、人口減少を克服するための地方創生を推進する法律が成立をいたしました。我が国が深刻な人口減少問題に直面し、二十年に及ぶデフレの中で地方経済の疲弊が指摘される中、地方創生は喫緊の課題であります。地方の創生なくして、超少子高齢化、人口減少化が進む我が国の展望を開くことはできないからであります。
 ただし、その際に重要なことは、地方創生の位置づけを、東京対地方という構図で決して捉えてはならないということであります。都内にも創生すべき地方は存在し、東京一極集中の課題にしても、そもそもそれ自体が地方を疲弊させている原因ではないからであります。地方を活性化するためには、東京から人や企業を地方に移転させるべきという安易な東京対地方の論を展開しても、何ら結論を得ることはありません。
 今や眼前の大きな目標となっている二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催で、東京だけではなく、国全体を盛り上げ、そしてこれを契機に、我が国全体を活性化させていく必要があります。東京の力をそぐことを前提にした東京対地方という構図には何ら生産性もなく、東京も地方も、ともに持続可能な発展を目指す取り組みとしての地方創生と捉えていかなければなりません。
 地方創生と東京の位置づけ、オリンピックとパラリンピック開催の活用、地方と東京の共生を進めていく重要かつ大きな一歩として、来年度の予算編成においても、東京から地方に対して力強いメッセージを発信していくことが必要であります。こうした点も踏まえ、地方創生に関する知事の見解を求めたいと思います。
 次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会について質問をします。
 今月八日のIOC臨時総会では、国内他都市での分散開催や追加種目の提案権が認められましたが、これにより被災地での競技開催が可能となりました。さらには、野球、ソフトボール、空手等の競技関係者からも、競技実施に向けて多くの期待が寄せられております。史上最高のオリンピック・パラリンピックの開催に向け、さらに勢いを増して前進していくことを願ってやみません。
 さて、舛添知事が今定例会の所信表明演説において、会場計画を見直すことで施設整備費を約二千億円圧縮するとの方針を表明したことは、都民負担に配慮した的確なものであると高く評価をいたします。これによって、新たな負担を招くような事態は避けなければなりません。引き続き、税金の無駄遣い排除の努力を重ねるよう求めるものであります。
 その上で、まず、東京大会の競技会場のレガシーについてであります。
 本年第二回定例会における我が党の代表質問に対し、都は、カヌースラローム会場について、地域の方々のニーズにも応えながら、より多くの都民に利用されるよう後利用を検討するとの方針を示しております。他の競技会場についても、舛添知事が視察したロンドン大会の施設レガシーを参考に、多目的活用、ランニングコスト等を設計段階から考慮し、大会後には、多くのアスリートや都民等に利用されるレガシーにするとの視点が重要であります。改めて知事の所見を伺います。
 次に、スポーツ、観光、教育分野のレガシーについてであります。
 一九六四年の東京大会で、東洋の魔女といわれた日本女子バレーボールチームの大活躍が、その後のママさんバレーの普及につながったほか、他の五輪種目においても、地域スポーツの裾野が広がったといわれております。同様に、二〇二〇年の東京大会を都民スポーツの裾野を広げるレガシーの一環として捉え、スポーツの日常化の好機として、取り組みを一層充実させるべきと考えます。
 また、観光振興の面では、近年世界的に盛んになっている観光とスポーツを連携させたスポーツツーリズムを参考に、国内外の観光客が観光とセットでスポーツも楽しめるような取り組みも、五輪レガシーとして意義があると考えます。
 一方、スポーツと教育を連動させた取り組みもレガシーの重要な視点であります。なじみの薄い種目であっても、そのスポーツのルールやルーツを学ぶと親しみが湧いてまいります。
 特に、パラリンピック種目のルールやルーツを児童生徒が事前に学び、その後に観戦すると、その種目への興味だけではなく、障害者やパラリンピックへの理解も高まるといわれております。二〇一二年ロンドン大会では、公式教育プログラムの一つとして、こうした取り組みがゲットセットという名称で実施され、大きな成果があったと評価をされております。
 都は、二〇二〇年東京大会実施準備会議の特命組織としてレガシー委員会を立ち上げ、全庁的な体制でレガシーの検討を始めましたが、ただいま申し上げた取り組み例も含め、二〇二〇年大会が目指すレガシーの全体像を明らかにしていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、被災地支援について質問いたします。
 東日本大震災発災から三年九カ月がたちました。都議会公明党は、発災直後から岩手、宮城、福島の被災三県を訪問し続け、調査を重ねては自治体関係者や各種業界関係者と意見交換を繰り返し、都としての支援策を提案してまいりました。
 被災地は、いまだ風評被害に苦しみつつ、一方で震災の風化が懸念されております。被災地の復興なくして、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの成功は断じてあり得ません。昨日も福島県の内堀知事が舛添知事を表敬し、風評払拭に向けた観光支援や避難者支援、二〇二〇年の東京大会における被災地の活用などを要望されたと報道されております。
 都として被災地復興へ一段と勢いを増していくために、公明党は声を大にして、さらなる支援の拡充を訴えるものであります。
 ことし七月には、大会組織委員会において、被災三県と国、都等で構成される第一回被災地復興支援連絡協議会が開催されましたが、世界に復興した日本の姿を指し示すべく、まずは被災三県への東京のメッセージを発信するとともに、開催都市の知事として被災三県を訪問し、知事の目で、耳で実情を見聞していただきたいと思います。今後の被災地支援について、知事の所見を伺います。
 都議会公明党は、被災地支援の大切な視点として、かねてより被災地での事前キャンプや予選の実施を提案してまいりました。さきにモナコで開催されたIOC臨時総会において、中長期改革案、五輪アジェンダ二〇二〇が承認され、国内での複数都市での分散開催が認められました。
 この朗報を被災地復興への大きな追い風として、ぜひとも被災地での競技開催を実現すべきであります。見解を求めます。
 震災直後に被災地から受けた要望を都議会公明党が提案し実施された被災地応援ツアーも、本年で四年目となりました。
 過去十年間の福島県の観光客入り込み状況は、平成十七年から二十二年まで五千万人台半ばで推移をしておりましたが、震災のあった平成二十三年は三千五百万人まで激減してしまいました。その後、都による応援ツアーを開始して、平成二十四年、二十五年には四千万人台半ばまで回復をしております。明らかに応援ツアーの成果が出ており、都の果たした役割を高く評価するものであります。
 震災前の観光客入り込み数の回復まで目前に迫った中、もう一押しするためにも、来年度もこの被災地応援ツアーを継続すべきであると考えます。見解を求めます。
 次に、就労支援策について質問します。
 公明党はこれまでも、都民生活の基盤となる就労の安定に向け、未就職卒業者への緊急支援や、就職氷河期にやむなく生じた年長フリーターへの対応など、さまざまな提案を行い、都の施策を後押ししてまいりました。
 知事も先日の所信表明で、安定した仕事につきたいと望む非正規の方々への就職支援を、今後の都の重点政策に位置づけることを明らかにしました。
 やむを得ず非正規として働いている人の中には、就労形態が不安定、低賃金、能力開発の機会不足といった不安を抱えている人もおります。一人一人の能力を高め、正規社員化を進めることで、将来に夢や希望を持ち、安心した生活が送れるよう施策を進めることが必要であります。
 こうした観点から、非正規社員への支援を力強く推し進めていくべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 次に、ワークライフバランスの推進について質問します。
 都民一人一人が能力を十分に発揮できる社会を実現していくためには、ワークライフバランスの取り組みを進めていくことが何よりも重要であることは、改めて申し上げるまでもありません。とりわけ企業において、育児や介護などライフステージに応じた多様で柔軟な働き方が女性にも男性にも選択できるよう、仕事と家庭生活の両立の実現が不可欠であります。
 先日、都は長期ビジョンの中間報告を公表しました。報告の巻頭言でも、知事はワークライフバランスを取り上げられており、まさに重要施策に位置づけようという意欲が伝わってまいります。
 しかし、その中間報告をひもとくと、ワークライフバランスについて、男女ともに仕事と子育て、介護等を両立できる環境整備と記載されているものの、その位置づけが、女性の活躍推進の中に盛り込まれております。
 申し上げるまでもなく、ワークライフバランスとは、男女を問わず見直すべき社会的価値観であり、女性にだけ求められたものでは決してありません。また、働き手だけではなく、ともに暮らす家族にとっても、それぞれが仕事と家庭のバランスのとれた環境を整備していくことこそが強く求められているのであります。
 ワークライフバランスについて、女性に特化せず、都民のライフスタイルそのものにとって、都政の重要な施策の柱として推進するべきであります。都の見解を求めます。
 都は、ワークライフバランスの実現に向けた社会的機運を高めるため、すぐれた取り組みを行う中小企業を東京ワークライフバランス認定企業と公表する取り組みを行っております。今年度も先月、十二社の認定企業が発表されました。この取り組みも平成二十年度の開始から七年目を迎え、認定企業数もようやく七十八社となりました。こうした企業は規模も業種も多岐にわたり、これから取り組みを始める企業にとっては大いに参考となります。
 今後、より多くの企業が速やかにワークライフバランスに取り組めるよう、認定企業の情報を活用し、さらなる普及啓発を図るべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、深刻な、仕事と介護の両立支援についてであります。
 超高齢化の進展に伴い、介護離職の問題が深刻化しております。都議会公明党は先月、高齢社会対策プロジェクトチームの最終提言をまとめましたが、この中でも、仕事と介護の両立支援を男女問わずに大きな課題として位置づけました。
 都は、昨年の第四回定例会代表質問での我が党の提案を受け、中小企業の現場実態を調べるため、今年度、仕事と介護の両立に関する特別調査を実施し、今後の施策展開に生かすとしております。
 そこで、現在の調査の取り組み状況と今後の施策展開について答弁を求めたいと思います。
 次に、女性の活躍推進について質問します。
 公明党が推進してきた女性の活躍推進については、指導的地位に占める女性の割合を、二〇二〇年までに三割にするという政府目標に基づき、国が本格的な取り組みを開始しました。東京都こそが、その推進に向けて先駆的役割を担うことが重要であります。
 女性の活躍推進に当たっては、企業など働く場における女性の登用の推進はもとより、地域におけるさまざまな幅広い分野での社会貢献活動でも、女性が生き生きと活躍する社会を構築していかなければなりません。
 舛添知事は所信表明演説において、東京の人材を考えたときに最も潜在力を有しているのが女性だとし、来年度、女性活躍推進白書を策定し、多様なライフスタイルに応じた実効的な取り組みにつなげていくと述べられました。
 公明党も、首都東京として、大都市ならではの課題を踏まえながら女性の活躍推進施策を強力に展開すべきであり、新たに女性活躍推進白書をまとめ、実効的な取り組みを開始していくという知事の取り組みに大いに期待するものであります。女性の活躍推進に向けた都の見解を求めます。
 次に、エボラ出血熱などの感染症の拡大防止について質問します。
 エボラ出血熱については、流行国からの渡航や帰国が判明した時点で発熱や患者との濃厚接触がわかれば、直ちに検疫所で隔離、停留を行うなどの積極的な対策が講じられることになっております。また、帰国時に発熱がない場合であっても健康監視の対象となり、朝夕、体温を検疫所に報告する措置がとられることとなります。
 しかし、去る十一月七日には、流行国からの帰国者が後になって発熱し、近隣の診療所で直接受診するという事例が発生をいたしました。国は、こうした事態が二度と発生しないよう、検疫所と該当地域の保健所との間で情報共有に努めることとしました。
 エボラ出血熱については、飛沫感染するインフルエンザとは異なり、爆発的な感染が広がるリスクは少ないといわれております。しかし、その致死率の高さなどから、万が一、国内で発生した場合には、国民、都民の不安感が一気に高まり、パニックが起きることも懸念されております。
 危機管理の視点からも、流行国からの帰国者が発熱等の初期症状を呈した場合には、間髪入れずに移送するなどの措置を講じなければなりません。エボラ出血熱の国内発生に備え万全の体制を整えるべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 十一月二十一日には、国内で陽性患者が確認された場合、患者の体液に直接触れた家族や医療従事者に対し健康観察を行うとともに、症状の有無にかかわらず、外出の自粛を要請するとの対応指針を発表しました。感染拡大が危惧される事態を迎えた段階では、症状の有無を問わず対策を講じるとした点では評価できます。
 しかし問題は、自主的な外出の自粛という措置がどれほどの実効性を持つのかという点にあります。仮に外出の自粛を求められても、都民には、社会との接点は仕事、修学、買い物など多岐にわたっています。万一の事態に備え、現実的にはどのように振る舞うべきなのか、専門家による助言は、当事者の不安や感染拡大の危険を軽減する上で大変に重要であります。
 また、エボラウイルスの潜伏期間は三週間といわれております。その間の当事者の状況をあらかじめ把握しておくことは、発症した場合の迅速な関係先の消毒や関係者の相談対応など、必要な対策を実行する上で極めて有益であります。
 都は、人権への配慮に努めながらも、感染の危険が完全に消えるまでの間、該当地域の保健所が当事者などに対し、積極的かつ丁寧に相談や助言に当たるよう努めるべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、認知症対策について質問します。
 今や、見守りまたは支援が必要な認知症高齢者は、高齢者人口の九・九%を占めるまでとなり、年々増加傾向にあります。また、要支援、要介護者に占める割合は五五・五%にもなり、同じく年々増加傾向にあります。
 そこで、まず重要となるのが、認知症に対する医療体制の整備であります。
 都では、平成二十四年四月より、二次保健医療圏単位で認知症疾患医療センターを順次設置し、現在十二の全ての医療圏で運営を開始しております。このセンターでは、専門医療相談や認知症の診断を実施するほかに、身体合併症や行動、心理症状への対応を行うとされています。また、地域の保健、医療、介護関係者等との連携の推進や、専門的な知識を有する人材の育成にもあわせて取り組むこととなっております。
 しかし、十二あるセンターにおいて、取り組み状況に差が生じているのが実情であります。特に、区市町村の保健、医療、介護関係者等との連携が十分でない二次保健医療圏も散見されます。
 こうした問題を解決していくためには、区市町村単位に認知症疾患医療センターを設置することが望ましいとされ、国も認知症施策推進五か年計画、いわゆるオレンジプランで全国に五百カ所の認知症疾患医療センターを設置することを求めております。
 そこで、都としても、区市町村単位で専門医療相談や認知症の診断ができる診療所型等の認知症疾患医療センターを設置し、既存のセンターを基幹としたネットワークを構築し、連携を図るべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、認知症の早期発見、早期治療についてであります。
 認知症の原因はさまざまであり、根本的な治療はまだ確立されていませんが、早期発見により改善する場合や、進行をおくらせることが可能な場合があります。早期発見、早期治療が重要といわれております。
 例えば、認知症の原因が慢性硬膜下血腫の場合には、早期に発見できれば治療により改善が可能であり、脳血管性認知症の場合には、生活習慣病の予防が進行予防につながるとされております。また、アルツハイマー病による認知症の場合には、進行をある程度おくらせることが可能な薬もあり、早く使い始めることが効果的であるといわれております。
 いずれにせよ、認知症対策には、早期発見、早期治療が重要であり、そのため国は、認知症が疑われる早期の段階から家庭訪問を行い、認知症のアセスメントや家族支援を行う専門医や医療、保健、福祉の専門家による認知症初期集中支援チームを、地域包括支援センター等に配置することを推進しております。
 しかし、ほとんどの区市町村で配置されておらず、全区市町村に認知症初期集中支援チームを配置できるよう、都が支援すべきであります。見解を求めます。
 第三に、認知症高齢者とその家族への支援体制についてであります。
 認知症の場合、当事者だけではなく、その家族の精神的、身体的な負担は、はかり知れないものがあります。時に家族が病気を患ったり、要介護者になってしまうケースも増加しております。また、見守りや支援の必要な認知症高齢者が自宅で暮らす割合も五九・八%と依然と高い割合にあります。
 この要因は、本人や家族の希望もあるかもしれませんが、特別養護老人ホームや認知症グループホームなどの入所基準に合わないということも大きな要因とされております。とりわけ認知症グループホームについては、共同生活に支障があるような身体合併症や行動、心理症状を有する認知症高齢者は入所できず、結果として在宅で見守りや支援を行わなければならないという実態があります。
 こうした認知症高齢者には医学的治療が必要となりますが、受け入れられる医療機関は絶対的に不足しております。
 都として、家族支援を進めるため、身体合併症や行動、心理症状を有する認知症高齢者を治療できる医療機関をふやすべきと考えます。見解を求めます。
 また、認知症グループホームの場合、家賃が介護保険の対象とならないため、ホテルコストが介護保険の対象となる特別養護老人ホーム等と比較して利用料が高くなってしまいます。そのため、国民年金などで生活する低所得者は、たとえ認知症グループホームにあきが出た場合であっても、費用負担が難しく、入所できないという実態もあります。
 都としてもこうした実態を踏まえ、低所得者が安心して入所できるように支援していくべきと考えますが、見解を求めます。
 特別養護老人ホームや認知症グループホームなどに入所できず、自宅で暮らす認知症高齢者とその家族を地域社会で支援をしていく取り組みも重要となります。
 その一つが、認知症高齢者とその家族の居場所である認知症カフェであります。世話人や認知症サポーターのもと、認知症高齢者の家族と地域の人たちが交流する場として、大きな効果があるとされております。
 認知症カフェは、オレンジプランにおいて普及がうたわれておりますが、区市町村が実施する地域支援事業のメニューに位置づけられているものの、任意の取り組みとなっており、しかも財源が十分ではありません。そのため、この認知症カフェが全区市町村で実施できるように、都としても運営が財政面で成り立つよう支援していくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 認知症高齢者を抱える家族にとって最大の課題が徘回であります。特に、行方不明になってしまった場合には、家族の精神的な負担は、はかり知れないものがあります。そこで必要となってくるのが、認知症高齢者の徘回を地域社会で見守るネットワークであります。
 現在、区市町村においても取り組みが着手されておりますが、広域自治体である東京都としても、独自の取り組みを進めていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、生活困窮者支援について質問します。
 来年四月から生活困窮者自立支援制度がスタートします。この制度が創設された背景としては、働き盛りの年代でありながら、失業や低収入などの生活保護受給者が急増していることや、ひきこもりなどにより、家族や友人、地域社会から孤立している人がふえていることなどが指摘されております。
 この制度の究極の目標は、社会的な孤立をなくし、住民同士が相互に支え合う共助の仕組みを地域の中でつくり上げていくことであります。そのためには、住民に身近な区市を実施主体として、ワンストップの相談窓口を開設し、生活困窮者を対象にして、生活保護に至る前の段階から、それぞれの実態に即したさまざまな支援を包括的かつ継続的に行うなど、自立と尊厳の回復を図っていくものであります。
 ところが、制度施行まであと三カ月余りとなった現時点でさえ、必要な情報が十分に提供されておらず、このままでは区市における施行準備におくれが生じてしまうとの声も寄せられております。
 そこで、来年四月の円滑な制度施行に向け、都としても国に働きかけるなどの取り組みが必要と考えますが、見解を求めます。
 また、生活困窮者に対して実効性ある支援を行っていくためには、法の必須事業である自立相談支援事業の総合相談窓口の開設に加え、いわゆる任意事業であっても、積極的に実施していくことが必要と考えます。
 我が党は第三回定例会の代表質問において、任意事業の一つである子供の学習支援事業の重要性について指摘し、都からは、より多くの区市で取り組まれるよう支援していく旨の答弁がありました。
 また、同じく任意事業には、就労に向けた訓練を行う就労準備支援事業や、世帯の収入状況を診断し、家計管理について助言する家計相談支援事業など、幾つもの重要な事業があります。これらの事業について、できる限り多くの区市で取り組まれることが重要と考えますが、見解を求めます。
 次に、教育分野について質問します。
 最近、ESDという新たな教育の取り組みが世界的に注目を集めております。日本語では、持続可能な開発のための教育と訳されていますが、環境や貧困、地域紛争など地球的規模の課題について、教科の垣根を超えて横断的に学ぶことといえます。
 国連は、二〇〇五年から持続可能な開発のための教育の十年と位置づけ、さまざまな取り組みを進めてきました。これに呼応して、都においても地球的問題群の解決に取り組む人材を育成する必要があります。
 そこでまず、こうした国連が進めている教育に対する知事の所見を伺います。
 ESDに関するユネスコ世界会議が、ことしの十一月に岡山市と名古屋市で開催されました。二〇一五年以降の開発政策にESDを取り入れる緊急行動を呼びかける、あいち・なごや宣言を採択して閉幕しましたが、ESDの取り組みは今後も継続していく必要があります。
 都議会公明党は、先日、第三回ESD大賞を受賞した江東区立八名川小学校を視察しました。学校が開発したESDカレンダーは、年間を通して、どの教科でどのような地球的課題を学ぶのかを具体的に示したすぐれた事例でありました。
 第三次東京都教育ビジョンには、持続可能な社会システムの構築に向けた人材育成など、ESDの考え方に沿った内容が既に示されていますが、取り組みは緒についたばかりであります。
 そこで、教員がより深くESDの理念を理解し、手法が学べるように、さらなる普及に取り組むべきと考えますが、都教育委員会の見解を求めます。
 次に、観光客誘致に関連し、バリアフリー観光について質問します。
 多くの観光客の来訪が期待されるオリンピック・パラリンピックの開催に向けて、多くの施設のバリアフリー化を進めることは重要でありますが、現実問題として、二〇二〇年までに、民間施設も含めて全てのバリアを解消することは困難であります。
 しかし、たとえバリアが残っていたとしても、必要なサポートがあれば、障害者や高齢者に観光地の旅行を楽しんでもらうことは十分可能であります。
 三重県伊勢志摩では、地元のNPO法人が宿泊施設や観光施設などの段差の有無やサポート体制などの情報を集めて発信するとともに、障害者の障害の程度に応じて利用可能な施設を紹介するなどの活動を行っております。砂利道用の車椅子の借り方や露天風呂までの段差など、きめ細かな情報提供が好評のようであります。
 東京でも、東京観光財団が運営するネット上のサイト「GO TOKYO」で、車椅子で移動を楽しめる、動画つきのバリアフリーコースの紹介が始まっています。
 国内外の障害者や高齢者に東京観光を存分に楽しんでいただけるよう、都は、こうした観光施設等におけるバリアやバリアフリーに関する情報の収集、発信に積極的に取り組むべきと提案いたしますが、都の見解を求めます。
 次に、知事が新たな指針を年内に定めると表明したWi-Fi整備について質問します。
 先日、都議会公明党は福岡市を訪問し、市が民間事業者とも協力しながら、無料Wi-Fiの面的整備を進める事業を視察してまいりました。一度の登録で簡単に半年間、Wi-Fiの利用が可能となるほか、行政情報や防災情報などとともに、市内の観光情報を提供して、観光客の回遊性を高める取り組みとなっておりました。
 さらに、自治体では世界初となる、台湾、新北市とのWi-Fiローミングの技術を利用し、新北市の無料Wi-Fi利用者は、福岡市に入れば、新たな利用登録をせずとも、従来利用している個人のIDとパスワードで利用でき、台湾からの観光客増加の一因となったとのことでありました。世界中から観光客が東京を訪れることを考えると、Wi-Fiローミングを数多くの国と結ぶなどして、おもてなしにつなげていくことも大変に重要な視点であります。
 我が党は、本年の予算特別委員会において、オリンピック・パラリンピック東京大会を目指して、訪日外国人に対する利便性向上に資する無料Wi-Fiを、都バスに続き都営地下鉄でも導入すべきと訴えました。また、本年第二回定例会では、エリアや事業者ごとに異なる無料Wi-Fiの登録手続をできるだけ簡便にすることも訴えてきたところであります。
 これに対し都は、我が党の求めに応じ、都営地下鉄に加え、東京メトロを含む百四十三駅で無料Wi-Fiを導入するとともに、一度の登録で地下鉄駅のほか、都バスに乗り継いでも手軽にWi-Fiが使えるよう迅速に整備したことを高く評価いたします。
 そこで、今後の無料Wi-Fiの整備は、国内外の観光客にとって、より使いやすい環境となるよう配慮して進めるべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、水素エネルギーについて質問します。
 知事は、水素エネルギーの普及に向けて戦略会議を立ち上げ、先日、中間のまとめを発表しました。また、「二〇二〇年の東京」で水素社会の先駆的な都市モデルの実現を掲げ、みずからのリーダーシップで水素ステーションの整備促進や、燃料電池車の普及に向けた都独自の支援策を構築し、このたび補正予算を編成した点を評価いたします。
 現状では、水素は主に化石燃料から生成されています。しかし、今後は、例えば木質チップから生成される低CO2な水素や、再生可能エネルギーの電力により水を分解して大量に水素を製造するシステムが実用化されれば、まさにCO2フリーの電力源となります。
 そこで都は、水素エネルギーの利活用については、インフラ整備や初期需要の創出を着実に進めるとともに、供給源としてCO2フリーの水素の利用も視野に入れて検討していくことが必要であると考えます。都の見解を求めます。
 次に、再生可能エネルギーについて質問します。
 去る十月に、都議会公明党の再生可能エネルギー促進PTは、都に対して、地中熱など都内における再生可能エネルギーの拡大、官民連携ファンドによる都外での拡大、スマートエネルギーの促進、新技術の開発と実用化の促進などの政策提言を行いました。都はこの提言を踏まえ、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた最終取りまとめを行ったところであります。
 現在、電力系統への接続制約が社会問題となっていますが、都は、電力の大消費地の責務として、再生可能エネルギー拡大に向けた動きを失速させることなく、消費電力に占める割合二〇%達成に向けて強力に推進すべきであります。知事の所見を伺います。
 さらに、都内エネルギー使用量の約三割を占める家庭部門における省エネや再エネ拡大も重要であり、既存住宅への対策が欠かせません。既存住宅の九割以上が平成十一年の省エネ基準を満たしていないといわれており、省エネ性能の向上を図ることが重要であります。そのために、二重窓や高性能な建材を用いるなど、断熱性を高めるリフォームを促進すべきであります。既存住宅で太陽光発電等を普及させることも重要です。そのためには、リフォームの機会を活用することが有効と考えます。
 住宅の省エネ性能の向上を図り、あわせて太陽光発電等の導入を進めていくための具体的な手だてを構築すべきであります。都の見解を求めます。
 世界で最も環境負荷の低い都市を目指す東京には、人と自然との共生を実現した循環型都市であった江戸のDNAとレガシーがあります。さらに、他の国際都市と比較して都が優位に立っている要素に、多摩地域の豊かな森林エリアがあります。この多摩の森林エリアを都民の経済活動に生かしていくべきであります。
 これまで都は、コスト問題など困難な課題と向き合いながらも、多摩産材の活用や花粉の少ない杉への植えかえなど、さまざまな施策を展開してまいりました。
 この困難を克服するためには、さらに都民が全てを生かして使っていくという江戸の循環都市の理念を共有し、多摩の森が都民の里山であり、循環型社会システムに多摩の森林を加えていくことが重要であります。
 そこで、この里山の理念のもと、新たに多摩の森林をバイオマスエネルギーや建材として資源化することに加え、食品残渣やプラスチック廃棄物から下水道汚泥まで、あらゆる廃棄物を資源として活用する技術などにより、世界一の循環型都市を構築すべきと考えます。知事の所見を伺います。
 最後に、島しょ振興について質問をいたします。
 都議会公明党は、十月下旬、小笠原諸島に視察団を派遣し、島民の長年の悲願である航空路開設の課題、世界自然遺産登録後の実情、中国漁船による周辺海域でのサンゴ密漁などについて現地調査を行いました。
 とりわけサンゴの密漁については、既に報道で大きく取り上げられたとおり、小笠原諸島の近隣海域で白昼堂々、深夜にはこうこうと明かりをつけて、極めて乱暴な操業ぶりや飲食物容器などの不法投棄の現状等も確認してまいりました。
 そして、村長を初め村議会、漁業、観光関連従事者等からは、海洋資源の保全と漁師等の安全確保及び事態の早期解決、住民の不安解消に全力を挙げてほしいとの切実な要望を受けました。また、村民の間では、違法船の出現が長期化していることから、不測の事故やトラブルへの不安が高まり、対応を求める声が高まっておりました。
 都議会公明党の視察調査を踏まえ、公明党は、山口代表を中心に即座に対策PTを立ち上げて、政府に強く働きかけた結果、国は、海上保安庁巡視船による警備の強化とともに、密漁に対する罰則強化を異例のスピードで実施しました。
 一方、都の取り組みとしては、警視庁機動隊等の増員による陸上での警備強化など、素早い対応が講じられたことにより、事態は鎮静化が図られました。
 しかし、こうしたことが二度と繰り返されることがないよう、都は、小笠原から伊豆諸島周辺海域と島民を守るべく、今後も実効性のある対策を講じていくべきであります。
 そこでまず、小笠原、伊豆諸島周辺海域における違法操業に対して、日常の取り締まりを強化することはもちろんのこと、違法船をその国から出港させないよう、外交レベルでのルールづくりを進めるなど、再犯防止の対策を間断なく講じていくよう、国に強く求めるべきであります。見解を求めます。
 また、世界自然遺産に登録された我が国と都の財産を、後世に確実に継承していく責務が都にはあります。そのため、所管している漁業調査指導船「興洋」などを積極的に活用し、国と連携して違法操業の監視強化を継続するとともに、荒らされた水産資源や漁場への影響を把握するため、実態調査を早急に行うなど、水産資源の保全に向けた対策を講じるべきであります。見解を求めます。
 これまでも都議会公明党は、小笠原島民の生命の安全、離島振興のために、航空路開設の必要性を繰り返し求めてきましたが、このたびの小笠原視察団の調査を通し、改めて、日本の国境離島であり、東京都小笠原に航空路開設が欠かせないことを確認いたしました。
 そこで、小笠原への航空路開設の実現に向けて、舛添知事がリーダーシップを発揮し、国とともに取り組みを加速させるべきと考えますが、小笠原の振興に対する知事の決意とともに、あわせて、改めて小笠原を視察していただきたいと考えますが、知事の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 長橋桂一議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、地方創生についてでありますが、地方の活性化には、何より日本経済の発展が必要でありまして、そのためには、東京が機関車としての役割を果たさなければなりません。
 地方創生を東京と地方の対立という図式で捉え、東京から人口や企業を地方に移転させることで地方が活性化するとの議論がございますが、日本の経済成長を牽引する東京の活力をそぐならば、日本全体が沈没しかねないのであります。
 また、日本経済を発展させるためには、東京以外にも複数の機関車を育てると同時に、地方の魅力を高め、国全体に富を行き渡らせることこそが重要であります。
 そもそも地方の繁栄と大都市の発展はトレードオフではございません。例えば、東京を訪れる外国人観光客に対し、日本各地の観光地を紹介して足を延ばしてもらうなど、東京と地方が相互に連携して、ともに発展していくことが大切であります。
 地方創生が、東京と地方が限られたパイの中で奪い合う構造ではなく、ウイン・ウインの関係を築くことになるよう、来年度の予算編成におきましてもしっかりと内容を吟味し、都として実効性の高い取り組みを進めてまいります。
 競技施設の有効活用についてでありますが、今回のロンドン視察を通じて、競技施設をレガシーとして最大限に活用するためには、早い段階から後利用を十分に考えた会場計画を立てていくことが必要だと実感いたしました。
 例えば、ロンドンの場合、お話のカヌースラローム会場は、大会後も、カヌー教室の開催だけでなく、子供たちの水遊び、親子でのバーベキューなど、多様な活動ができるように整備されておりました。周辺の自然環境と一体となって、市民に親しまれる施設として利活用されております。
 さらに、競技施設を有効活用していくためには、こうした個別施設の後利用をあらかじめ想定していくことに加えまして、周辺施設や地域のまちづくりと連携を図り、新たなにぎわいを創出していくことも重要であります。
 そのため、民間企業や地元自治体などの意見も参考にしながら、具体的な検討に着手してございます。
 今後も、関係者の協力を得て、大会後も都民に利用され喜ばれる施設となるよう、全力で取り組んでまいります。
 東日本大震災の被災地支援についてでありますが、震災から三年九カ月が経過しました。記憶の風化が懸念される一方、今なお全国で二十三万人を超える避難者が厳しい生活を余儀なくされておりまして、早期の復興が求められております。
 これまで都は、三万人を超える職員の派遣、瓦れきの都内受け入れ、被災地応援ツアーなど、被災地のニーズを的確に把握しながら、総力を挙げて被災地を支えてまいりました。
 また、千キロメートル縦断リレーや被災地の子供たちとのスポーツ交流など、スポーツの力で被災地復興を支援するさまざまな事業を展開してきました。
 震災からの復興は、東京オリンピック・パラリンピック大会成功の前提であります。大会開催を通じて人々に勇気と希望を与えるとともに、東京が日本経済を牽引し、東北の被災地を元気にしていきたいと思っております。
 そのため、開催都市の知事として、私みずから被災県に赴くことを念頭に入れ、現地の実情をしっかりと把握してまいります。
 都は引き続き、被災地の声に耳を傾けながら、真に役に立つ支援に取り組み、被災地の復興を力強く後押ししてまいります。
 非正規雇用についてですが、雇用情勢は着実に改善しておりますが、働く人の三分の一が非正規雇用という現状は尋常ではありません。都民の生活に責任を持つ知事として、これは看過することはできないと思っております。恒産なくして恒心なしという言葉がありますように、安定した職業という生活基盤があればこそ、明るい気持ちで生活していくことができます。
 目指すべきは、全ての人がみずからの能力を存分に発揮できる職につき、自信と希望を持って活躍できる社会であります。安定した仕事につきたいと望みながらも不本意な働き方をしている非正規の方々への就職支援を重点政策に位置づけてまいります。
 東京都は、社内での正社員への転換の推進や、就職氷河期世代に対するきめ細かな就職支援など、総合的な非正規雇用対策を国も巻き込んで強力に推し進めてまいります。人々に元気の源を供給するのが政治の役割であります。都民が豊かさを実感できる東京を実現するため、リーダーシップを発揮し、非正規雇用の問題に正面から取り組んでまいります。
 エボラ出血熱への対応についてでありますが、現在、我が国においては、水際対策として空港等での検疫を強化し、サーモグラフィーによる体温測定を実施するほか、発熱がない場合でも、流行国からの全ての入国者及び帰国者を健康監視の対象としております。さらに、健康監視対象者が発熱等の症状を呈した場合に備えて、対象者の情報は、検疫所と居住地等の保健所で共有することとなっております。
 都においても、国内での患者発生に備え、関係局、警視庁、東京消防庁、区市町村の代表者などをメンバーとする連絡会議を立ち上げ、都の指定医療機関三病院で専用車両を用いた患者受け入れの実践的な訓練を実施いたしました。
 また、十一月七日には、都内で疑似症患者が発生しましたが、都は、患者の自宅がある地元保健所と連携して、感染症指定医療機関への患者搬送を行いました。
 さらに、こうした訓練の検証や疑似症患者の発生事例を踏まえ、新たに東京都エボラ出血熱対応マニュアルを作成いたしました。マニュアルでは、各機関の連絡先をリスト化し、情報連絡体制を徹底するとともに、患者移送や疫学調査などにおいて、保健所が担う業務を発生段階に応じて具体的に明記いたしました。また、個人防護具の着脱方法を図解で示すなど、より実践的なものといたしました。
 今後も、都として、患者が発生した場合に備え、国や保健所、感染症指定医療機関など関係機関との連携を一層強化し、対策に万全を期してまいります。
 また、患者発生時に都民の皆さんがパニックにならないよう、さまざまな広報媒体を通じて、エボラ出血熱に関する正確な情報提供を行ってまいります。
 地球規模の課題の解決に取り組む人材の育成についてでございますが、現在、世界は、環境、貧困、防災、平和など、さまざまな地球規模の課題に直面しております。これらの課題は、相互に複雑に関係しておりますことから、一つ一つの課題をつぶさに見詰めるとともに、全体を俯瞰しつつ、互いに関連づけながら取り組むことで、一つの解決策の効果が複数に広がっていく、そういう取り組みが必要だと考えております。
 先日、海外の高校に留学した生徒たちと懇談する機会がありました。その中で生徒が、水素社会の実現に向けて必要な技術研究を行ってみたいとか、ユニセフで働いて世界の人々を笑顔にしたいと、そういった夢を語っておりました。将来、世界を舞台として活躍する意気込みに接して、本当にうれしく、また強い感銘を受けました。
 持続可能な社会を実現するためには、こうした生徒のように、さまざまな課題を地球的視野で考え、みずからの課題として取り組み、解決につなげようとする若者を育成する教育が必要であります。
 今後とも、国連が提唱するこうした教育を通し、日本の将来を担い、地球規模の課題の解決に貢献できる人材を東京都から育ててまいります。
 再生可能エネルギー拡大への取り組みについてでございますが、東京は、日本の首都、経済の中心として、都市活動を支える電力、エネルギー需給の安定を図るとともに、気候変動対策にも資する低炭素な電力の利用割合を拡大していくことが重要であります。
 このため、専門家による検討会で議論を進め、再生可能エネルギー拡大への目標設定や具体策について提言をいただきました。これを踏まえまして、十年後の二〇二四年までに、消費電力に占める再生可能エネルギーの割合を二〇%程度に高めることを目標に定め、長期ビジョンに反映してまいります。
 今後、都民や企業、区市町村とも連携し、都内での既存住宅等への太陽光発電の導入や都市型バイオマス発電の推進、官民連携ファンドによる東北地方等への大規模発電の導入拡大など、可能なものから速やかに取り組んでまいります。
 加えまして、エネルギー総量の削減が極めて重要であるとの観点から、省エネやエネルギーマネジメント、太陽熱、地中熱利用など、需要側の取り組みを推進し、需給両面にわたる取り組みの強化を図ってまいります。
 現在、電力系統への接続に制約がかかるなど、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた全国的な課題が明らかになっております。このため、他の自治体とも連携し、国に意見を申し述べてきたところでございますが、今後も、再生可能エネルギー拡大の機運を失速させることなく、導入を加速する方策を講じていくことを強く求めてまいります。
 目標の実現に向け多面的な取り組みを進め、東京オリンピック・パラリンピックにおいて、東京で再生可能エネルギーの導入が進んでいる姿を世界に示したいと思っております。
 循環型都市の構築についてでありますが、我々日本人は、古来より里山などに暮らし、田畑からは農作物を、森林からは果実やまき、炭などの恵みを享受するとともに、その副産物である灰や排せつ物をも堆肥として用いることにより、再び翌年の収穫につなげてまいりました。
 こうした日本の伝統的な暮らしの知恵は、今を生きる私たちが、世界一の循環型都市の形成を考える上で立ち返るべき原点であります。東京が今後も継続的に発展していくためには、都市活動から発生する食品残渣等の廃棄物を極力減らすとともに、可能な限り資源として活用することが肝要であり、廃棄物による発電は、電力需要地に直結した分散型電源としても重要な役割を担っております。
 また、多摩地域には森林資源が豊富に存在しておりまして、多摩産材の利用促進やバイオマスエネルギーとしての活用は、廃棄物の資源循環とあわせて、低炭素型の循環システムの構築に資することが期待できます。
 こうした東京の特徴を生かした資源エネルギーの地域循環、地産地消を進め、環境負荷の少ない持続可能な都市を構築し、江戸のレガシーを次の世代に引き継いでまいりたいと思っております。
 小笠原の振興についてでありますが、昭和四十三年の我が国への復帰以来、都は、小笠原の地理的、歴史的な事情等による課題の克服に向け、島民の生活に必要な社会基盤の整備を初め、医療、教育の充実など、さまざまな施策を推進してまいりました。
 本土から千キロ離れた小笠原諸島においては、とりわけ交通アクセスの改善は重要であると認識しておりますが、その一方で、航空路の開設には、自然環境への影響、費用対効果、運航採算性など、さまざまな課題があることもまた事実でございます。
 このため、国や小笠原村など関係者との調整を丁寧に行いながら、課題の整理、検討を着実に進めてまいります。
 今後とも、島民生活の安定や産業振興を図り、小笠原諸島の自立的発展を目指して積極的に取り組んでまいります。
 なお、先般予定しておりました視察は残念ながら中止となりましたが、改めて現地に赴きたいと考えております。
 なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁いたします。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) ESDのさらなる普及についてでございます。
 ESD、持続可能な開発のための教育を推進するユネスコスクールに指定されている学校では、地球規模の課題を相互に関連づけ、解決策を考え、行動する取り組みを行っております。
 例えば、社会科で世界の食料事情を学習した後、給食の残菜を調べ、残菜を活用した土づくりを地域の人々とともに行うことを通して、食について考える学習を行っております。さらに、食から世界の環境や経済の問題を考え、人類が命のつながりの中で生きていることを総合的に学んでおります。
 ユネスコスクールは都内でも年々増加しており、都教育委員会は、今後こうしたすぐれた事例を掲載したリーフレット等を配布するなどして、区市町村教育委員会等と連携し、ESDの一層の拡充を支援してまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、二〇二〇年大会のレガシーについてでありますが、大会を契機に、都民共通の財産として真に価値あるレガシーを残していくため、先般設置いたしましたレガシー委員会において、庁内横断的な検討を開始いたしました。今後、選手村や競技施設の大会後の活用方策や、周辺のまちづくりとの連携のあり方などについて、民間や地域の意見も取り入れながら検討を加えてまいります。
 さらに、これらハード面のみならず、ソフト面でも確かなレガシーを残し、都民生活の質を向上させ、東京を成熟都市として一層発展させていかなければなりません。
 このため、スポーツ、観光、教育などソフトの分野についても検討を進め、二〇二〇年大会のレガシーの全体像を、来年度、レガシービジョンとして取りまとめてまいります。
 次に、被災地での競技開催についてでありますが、二〇二〇年東京大会は、復興した日本を世界に示す絶好の機会であり、被災地での競技開催は意義あるものと認識しております。現計画でも、サッカー予選の宮城県での開催を予定しております。
 このたび、モナコのIOC臨時総会において採択されたアジェンダ二〇二〇では、持続可能性等の観点から、既存施設の最大限の活用などを推進するとともに、開催都市以外での実施を認めることとしております。
 被災地を初め他都市での開催には、経費の負担や選手の宿泊、円滑な輸送など解決すべき課題はありますが、今後、その実現可能性につきまして、組織委員会とともに検証してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、被災地応援ツアーについてでございますが、被災地応援ツアーは、東日本大震災による被災地復興支援のため、緊急対策の一環として平成二十三年九月から実施をしているところでございます。
 今年度は、昨年度に引き続き、福島県への旅行者を対象に宿泊二万泊、日帰り一万五千人分について、その費用の一部を助成しております。また、多彩な旅行商品の造成につなげるため、福島県の地域の魅力やイベントに関する情報を取扱旅行事業者に対し定期的に提供するなど、旅行の一層の促進や現地での消費喚起を後押ししております。
 今後、被災地応援ツアーにつきましては、福島県の観光の状況等を踏まえまして、検討してまいります。
 次に、ワークライフバランスの取り組みについてでございます。
 誰もが生き生きと働きながら、子育てや介護など家庭における役割を果たすためには、仕事と家庭生活の両立が可能となる雇用環境を整備することが重要でございます。
 都は、ワークライフバランスに関する社会的な機運を高めるため、すぐれた取り組みを行う中小企業を平成二十年度から認定、公表しており、今年度までで七十八社となりました。認定企業の取り組み事例は、ワークライフバランスイベントでのパネル展示やセミナー等を通じて紹介をしております。
 今後は、中小企業それぞれの職場の実態に応じた環境整備を一層促進するため、蓄積した取り組み事例を、企業規模別、業種別に発信するとともに、これまでに認定した企業の現状や課題等につきまして集約をし、公表していくことを検討してまいります。
 次に、仕事と介護の両立についてでございます。
 都は今年度、仕事と介護の両立に関する今後の効果的な施策展開に向けて、都内中小企業とその従業員の実態を把握するため、特別調査を実施しております。現在、来年二月の取りまとめに向けまして、アンケートについてデータの集計、分析を進めるとともに、訪問によるヒアリング調査を実施しております。
 これまでの回答では、介護がいつまで続くかわからないなど肉体的、精神的な負担から、仕事と介護の両立に不安を持つ従業員が約八割となっております。また、職場に迷惑をかけるのでやめざるを得ない、遠距離介護で経済的負担が大きいなどの声が寄せられております。
 今後、調査で浮かび上がりました実態等を踏まえまして、時期を逸することなく、具体的な事業展開につなげてまいります。
 次に、観光施設等のバリアフリー情報についてでございますが、障害者や高齢者が移動や滞在に必要な情報を容易に入手し、安心して都内観光を行うことができる環境を整備することは重要でございます。
 これまで都は、障害者等が宿泊施設を円滑に利用できるよう、そのバリアフリー化を支援するとともに、改修施設をウエブサイトに掲載いたしまして、情報を提供してまいりました。
 今後はこれに加え、障害者等が旅行先の選択肢をふやすことができるよう、観光施設や交通機関等を対象に、移動の支障となるバリアの有無やサポート体制などに関する情報を収集いたしまして、効果的に発信する方策を検討いたします。こうした取り組みによりまして幅広い情報の提供に努め、東京を訪れる障害者等が都内各地域で観光を堪能することができるよう支援してまいります。
 次に、無料Wi-Fi環境の整備についてでございます。
 外国人旅行者がインターネットを手軽に利用できるようにするためには、簡便な登録手続により無料Wi-Fiに接続できる環境を整備することが重要でございます。
 このため、都は、現在策定中の外国人旅行者の受け入れ環境整備方針に基づき、都立施設等に導入する無料Wi-Fiサービスの利用手続を一元化し、一度の登録でどの施設でも接続可能な仕組みの構築を検討してまいります。
 また、商業施設や飲食店などの民間事業者が設置するWi-Fiにつきましても、利便性向上に向け一体的な取り組みが進むよう、国や自治体、事業者等で構成される無線LAN整備促進協議会の場を活用いたしまして、働きかけてまいります。
 こうした取り組みを通じ、旅行者にとって使いやすいWi-Fi利用環境の整備を推進いたします。
 最後に、外国漁船の違法操業に対する漁業対策でございます。
 漁業は、小笠原の基幹産業であり、漁業者が安心して操業できる環境を確保することは、都の重要な役割でございます。
 このため、都は、外国漁船の違法操業に対し、今後も国と緊密に連携を図り、漁業調査指導船による監視活動を継続してまいります。
 また、漁場への影響を調査するため、中国漁船が違法操業を行っていた海域を中心に、漁業調査指導船を活用した試験操業を開始したところであり、小笠原における漁獲の主要魚種となっているハマダイなどの漁獲量や魚体サイズ等のデータを収集してまいります。
 今後、こうした調査と漁業者の漁獲状況等も踏まえ、国と連携し漁場への影響を分析していくなど、貴重な水産資源の保全に向けた取り組みを強化してまいります。
   〔政策企画局長川澄俊文君登壇〕

〇政策企画局長(川澄俊文君) ワークライフバランスについてですが、ワークライフバランスは、一人一人がやりがいを感じながら働くとともに、家庭や地域でも充実した活動を展開できる、仕事と生活の調和のとれた社会を目指すために必要不可欠なものでございます。こうした観点から、長期ビジョンの中間報告では、企業における取り組みの推進など、ワークライフバランス実現のための施策の方向性を示したところでございます。
 個人が能力を十分に発揮することで豊かな都市生活をもたらすワークライフバランスの実現は、ご指摘のとおり、男女を問わず社会全体で取り組むべき重要な課題であり、都庁を挙げて積極的な取り組みを展開してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 女性の活躍推進に向けた今後の展開についてでありますが、女性の活躍推進の加速化を図るため、今定例会において補正予算を提案し、来年度の公表に向けて、東京都初の女性活躍推進白書の作成に着手をいたします。
 策定に当たりましては、長時間通勤や核家族化など、大都市特有の女性の活躍を阻害する要因について、統計調査のみならず、当事者から意見を聴取するなど多角的に分析し、課題を明らかにしてまいります。
 また、企業や国内外の諸都市に対してヒアリングを行い、先進的な取り組み事例の調査を実施し、これらに基づき、東京が持つ高度に集積した人材や情報などの資源を活用した取り組みの方向性を示してまいります。
 また、白書の公表を機に、都がリーダーシップを発揮し、行政、企業、地域など、あらゆる主体を巻き込み、社会全体の改革への機運醸成を図るとともに、世界を代表する大都市である東京が課題解決に取り組む姿を、国際シンポジウムなどを活用して国内外に広く発信をしてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 九点のご質問にお答えします。
 まず、エボラ出血熱対策についてでありますが、都内で患者が発生した場合、患者の居住地等の保健所が、その患者と直接接触した家族等を対象に、感染の可能性がなくなるまで最大二十一日間の健康観察を行うこととなっております。
 具体的には、保健所が対象者の健康状態を一日二回確認するとともに、対象者の不安を軽減するため、保健所内に担当者を設け、必要に応じて自宅への訪問も行いながら、相談や助言を行うこととしております。
 こうした対策は、新たに作成した東京都エボラ出血熱対応マニュアルにも記載し、都内の全ての保健所に周知徹底を図っており、今後とも保健所と常に情報共有を図りながら、健康観察者への丁寧な対応も含め、患者発生時の対策に万全を期してまいります。
 次に、認知症疾患医療センターについてでありますが、都は現在、学識経験者、医師会、介護関係団体、保険者等から成る認知症対策推進会議に部会を設け、都における認知症疾患医療センターの今後の整備方針について検討を進めております。
 その中では、センターの機能や配置数、東京の特性を踏まえた指定要件等を検討しており、都は、新たな診療所型も活用しながら、センターを区市町村ごとに一カ所指定し、区市町村の保健、医療、介護関係者等との連携を強化していく方針でございます。
 また、現在の十二のセンターを二次保健医療圏の拠点に位置づけ、区市町村ごとに指定するセンターとネットワークを構築することにより、身近な地域で認知症の人と家族を支える体制を整備していきたいと考えております。
 次に、認知症初期集中支援チームについてでありますが、国は、平成三十年四月までに全区市町村が地域支援事業を活用して、認知症初期集中支援チームを配置することを求めておりますが、訪問支援の実績を有する医療機関が少ないことなどから、現在、都内で実施している自治体は一区一市にとどまっております。
 都は現在、区市町村に配置した認知症コーディネーターと認知症疾患医療センターに配置したアウトリーチチームが連携して自宅を訪問し、早期発見、早期診断につながる取り組みを進め、二十七の区市が実施しております。
 こうした取り組みが、認知症初期集中支援チームの配置につながるよう、今後、都は協力する医療機関の確保に努めてまいります。
 また、センターが培った訪問支援のノウハウを提供するなど、区市町村を積極的に支援してまいります。
 次に、認知症高齢者の医療体制についてでありますが、現在、都が指定している十二の認知症疾患医療センターは、身体合併症や行動、心理症状を有する認知症高齢者をみずから受け入れるとともに、地域の認知症に係る専門医療機関、一般病院や精神科病院等と緊密な連携を図り、地域全体で受け入れを促進していく体制を構築する役割を担っております。
 こうした取り組みを一層進めるため、現在、区市町村ごとに設置を検討している新たなセンターについても、十二のセンターと連携しながら、身体合併症等を有する認知症高齢者の受け入れに努めることを指定要件にする考えでございます。
 また、急増する認知症の人と家族を地域で支えるため、認知症ケアに従事する医療専門職向けの研修についても一層の充実を検討してまいります。
 次に、認知症高齢者グループホームについてでありますが、家庭的な環境の中で介護や日常生活上の世話を受けることのできる認知症高齢者グループホームは、自宅での生活が困難になった認知症高齢者の居住の場として重要でございます。
 そのため、都は、グループホームの整備に当たって、最大三ユニットで九千万円までの独自の補助を実施し、初期負担の軽減を図るとともに、補助金の交付審査の際には、利用者の家賃負担を原価相当額まで軽減するよう、区市町村を通じて事業者に求めております。
 また、低所得者に対する家賃等の軽減を行う事業者への助成が、平成二十四年度から介護保険法で区市町村の地域支援事業の一つに位置づけられており、今後その活用を区市町村に対し積極的に働きかけてまいります。
 次に、認知症カフェの運営支援についてでありますが、認知症カフェは、認知症の人やその家族、地域住民などが集い、主体的に活動する場であり、来年度は現時点で九の区市が地域支援事業で実施する意向を示しております。
 こうした取り組みに加えまして、都は昨年度から、三年間全額補助する包括補助の先駆的事業として、医師や看護師等と連携し、介護や治療についての必要な情報の提供や相談、助言などを行うことができる認知症の人とその家族の居場所づくりを行う区市町村を支援しております。現在六区市で実施されているこの取り組みは、医療機関と連携した認知症カフェと呼べるものであり、来年度はさらに多くの区市町村が実施に向けた検討を進めております。
 今後とも、区市町村が地域の実情に応じて認知症カフェを実施できるよう、積極的に働きかけてまいります。
 次に、認知症高齢者を地域で見守る取り組みについてでありますが、都はこれまで、認知症の人やその家族を支えるための関係者会議の開催や、徘回して行方不明となった高齢者を早期に発見するネットワークの構築など、地域における区市町村の取り組みを包括補助事業で支援してまいりました。
 また、区市町村の依頼に基づき、認知症が疑われる行方不明高齢者等の情報をメールやファクスで都内区市町村や近隣県に提供する取り組みも実施してまいりました。さらに現在、区市町村がみずから行方不明高齢者等の情報を更新し、いつでも最新情報を閲覧できる関係機関向けの情報共有サイトの構築を都独自に進めております。
 今後とも、こうした取り組みにより認知症高齢者を地域で見守るためのネットワークづくりを積極的に支援してまいります。
 次に、生活困窮者自立支援制度の施行に向けた取り組みについてでありますが、都はこれまで、実施主体である区市の体制整備を支援するため、各区市の準備状況に応じて個別に助言を行うほか、十月には実務担当者会議を開催し、十三区市で取り組んでいるモデル事業の成果と課題や、各区市の予算、人員の検討状況等について情報提供を行ってまいりました。
 しかし、お話のように、いまだ国から国庫補助基準額などが提示されないため、区市の施行準備にも支障が生じております。そのため、都は先月、国に対し早期の情報提示や十分な財政措置を求める緊急の提案要求を行いました。
 都としては、今後とも、来年四月の制度施行に向け、区市へのきめ細かな支援を行うとともに、国に対して必要な情報を早期に提示するよう、さまざまな機会を通じて積極的に働きかけてまいります。
 最後に、生活困窮者自立支援法の任意事業についてでありますが、生活困窮者は、失業、多重債務、子供の教育など多様な課題を抱えていることから、必須事業である自立相談支援の窓口設置だけでなく、就労準備支援や家計相談支援、子供の学習支援などの任意事業も実施し、対象者の状況に応じた包括的な支援を行うことが重要でございます。
 しかし、現時点では国から事業の実施規模や実施方法の確定に必要な情報が十分に提供されていないこともあり、来年度からの任意事業の実施予定は、学習支援が二十四の区市、就労準備支援が二十二の区市、家計相談支援が十四の区市にとどまっております。
 今後とも、地域の実情やニーズに応じて、より多くの区市が各種の任意事業に取り組めるよう積極的に働きかけるとともに、新たな支援策についても検討してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、水素エネルギーの普及についてでございます。
 水素は、利用時にCO2を排出しないだけでなく、再生可能エネルギーの電力で製造するシステムが実用化すれば、低炭素社会の切り札ともなります。先日、水素戦略会議の中間まとめを行い、水素社会実現に向けた数値目標と取り組みの方向性について取りまとめをいたしました。
 この中では、燃料電池車導入や水素ステーション整備の促進などとあわせて、再生可能エネルギー由来の水素活用設備の導入促進や、都民に対する水素の特性や安全性の正確な情報提供なども盛り込んでおり、これらを進めるための都独自の支援策の実施に必要な補正予算案を本定例会に提案しております。
 今後、戦略目標の着実な実現に向けて官民一体となって取り組み、地産地消等の低炭素な水素の先導的な導入や、将来的なCO2フリー水素の活用も視野に入れて、水素エネルギーの普及に努めてまいります。
 次に、住宅の省エネ性能の向上等についてでございますが、既存住宅の約四割を占める無断熱の住宅は、平成十一年の省エネ基準を満たした住宅と比べて、冷暖房エネルギー消費量が二倍以上といわれております。
 こうした既存住宅の省エネ性能の向上を図る上では、熱の出入りが大きい開口部において断熱性能の高い複層ガラスを活用するなど高性能な建材を活用したリフォームが有効でございます。
 また、新築と比べて導入が進んでいない既存住宅での太陽光発電等の設置を推進するためにも、リフォームの機会を活用することが効果的であり、それぞれ別に取り組むよりも、工期短縮等のメリットも期待できます。
 今後、こうした観点を踏まえ、リフォームの機会を活用し、一層の省エネ促進と太陽光発電等の利用拡大の双方を効果的に進める仕組みについて検討してまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) 中国漁船による違法操業対策についてでございます。
 小笠原、伊豆諸島周辺海域における中国漁船の違法操業により、島しょの基幹産業でございます漁業に影響を及ぼすなど、島民に大きな不安を与えたことは、大変ゆゆしき事態と考えております。
 今回の事態に際し、都は、取り締まりの強化や必要な法整備を国に強く要望してきたほか、海上保安庁などと連携し、都の漁業調査指導船による監視活動を行うとともに、外務省など国の機関や小笠原村との連絡会議を立ち上げ、情報の共有化、連携の強化を図ってまいりました。
 今後、同様の事態が発生し、島民の方々が二度と不安を抱くことのないよう、引き続き関係機関と緊密な連携を図るとともに、違法操業の取り締まり強化や外交ルートでの対応の強化など、実効性ある再発防止策を講じていくよう、関係局一体となり、国に強く働きかけてまいります。

〇副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後四時五十二分休憩

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