平成二十六年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(藤井一君) 三十番山内れい子さん。
   〔三十番山内れい子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇三十番(山内れい子君) 東京は、ことしの夏も猛暑が続きました。東京の夏の暑さはすさまじく、ヒートアイランドの解決が不可欠です。都は、その対策として、海の森や河川、道路の緑化など、海から風を都心に導く風の道の確保を進めてきました。人工的につくったエネルギー浪費型の都市から、環境負荷の少ないまちづくりを進め、水や緑などを使って快適性を生み出すパッシブデザインの都市をつくり上げていくことが必要だと思います。大都市東京の中で自然を取り入れていく難しさはありますが、まち中を涼しい風が通る快適な東京が、生活しやすさにつながります。
 先日発表された長期ビジョンの中間報告にも、水と緑のネットワークを形成することが示されており、持続可能なまちづくりが必要だと考えますが、知事の見解を伺います。
 先日行われた女性が輝くまち・東京シンポジウムでは、女性が働くことによる社会全体の活力や多様な働き方を進めるために、ワークライフバランスの意義や重要性について議論されました。
 舛添知事は、このシンポジウムの中で、都庁内の女性管理職を二〇二〇年までに二〇%にする数値目標を掲げる方針を示され、その前向きな姿勢は評価するものです。社会の意識を変革していくには、東京都が知事のもと社会を牽引していける取り組みが求められます。
 女性が輝ける社会の実現に向けて、まずは、都庁における女性の活躍推進についてどのように取り組まれるのか、知事の決意を伺います。
 男女平等参画社会の実現は、国際的にも大きな課題でありますが、その中でも、社会の価値観を変えていくためには、次世代の育成が重要だと指摘されています。日本の社会では、結婚、出産を機に、六割の女性が退職をするなど、女性の方が選択を迫られる機会が多いのが実情です。
 若い世代の人たちが生き生きと働いていける社会をつくり出していくためにも、大学生に向けたワークライフバランスの啓発が必要と考えますが、都の取り組みを伺います。
 日本労働組合総連合会が、二〇一四年六月に行った女性のための労働相談では、産休、育休復帰からの嫌がらせを受けたり、妊娠を告げたら退職するよう求められたといった妊娠、出産に関する相談のほか、昇格などにおける男女差別や処遇への不満が寄せられています。
 東京労働局が発表した二〇一三年度男女雇用機会均等法などに関する労働者からの相談内容では、セクシュアルハラスメントに次いで、妊娠、出産等を理由とする不利益な取り扱いがふえており、改めて人権侵害であることを社会は認識しなければなりません。また、近年、職場における人権侵害として、パワーハラスメントについては、業務上の指導との線引きが難しいという側面もありますが、セクシュアルハラスメントと同様に、社会的に許されない行為であることを認識させるための取り組みが必要です。
 そこで、都は、職場におけるハラスメントの防止について、どのように取り組んでいるのか伺います。
 都として、ワークライフバランスの推進を含めた男女平等参画社会を実現していくためには、企業の自主的な取り組みを後押しする仕組みの構築が必要です。そのために、都の入札契約手続の中で、企業の社会的な取り組みを評価する視点を取り入れることも、有効な手段の一つであると考えます。
 今後、都が発注する業務委託などにおいて、総合評価を実施するに当たっては、男女平等参画を推進する観点での評価をさらに充実していくべきと考えますが、所見を伺います。
 来年四月から実施予定の子ども・子育て支援新制度では、質の高い幼児教育と保育を総合的に提供することが目的の一つに掲げられました。子供の育ちを第一優先に考えれば、幼保一体化の法的整備は望ましいことであり、その意味で新制度には期待を寄せていました。
 ところが、国の財政基盤が未確定である上、制度設計が未熟であるため、目玉施策とされる認定こども園は、新制度では補助金が減るという理由で認定返上の動きが広がり、普及拡大が難航している現状です。
 幼と保が共存したままで新たな事業が盛り込まれたため、全体が複雑でわかりにくい設計になってしまいました。ただ、新たに利用者支援を打ち出したことは評価しています。利用者にとっては、例えば身近な地域で子育て支援にかかわる情報が一元的に提供されるワンストップサービスのような支援が求められます。
 都は、区市町村による利用者支援の取り組みを促すため、必要な支援を行うべきと考えますが、都の見解を伺います。
 新制度では、教育、保育の質の向上が期待されています。質を評価する要素がさまざまある中で、子供にとって遊びの大切さを考えると、外で走り回れる広い空間は、成長に欠かせないものであり、園庭は重要です。本来、必置が望ましいと考えます。
 しかしながら、園庭のない保育施設がふえ、多くのグループが一つの公園を同時に使用しているケースも少なくない中、自治体では既に小学校の校庭を使っている事例があります。都立高校の校庭など、都施設の一部を保育所の園庭にかわる空間として使用できるよう、協力を求めるものです。
 今回、新たな幼保連携型認定こども園の認可基準にかかわる条例案も提案されています。この保育の質の根幹である基準は、新制度施行後も適正な運営が確保されるよう、徹底して遵守されなければなりません。
 新制度における規準遵守のための仕組みについて伺います。
 日本の精神病院の入院者数は、世界で突出して多く、しかもその六五%が一年以上の長期入院で、精神病院の閉鎖性が社会問題となっています。二〇〇四年、国は、精神保健医療福祉の改革ビジョンを策定し、入院医療中心から地域生活中心への改革を十年間で進めることとしました。
 東京都は、国に先駆けて精神障害者の地域移行を進めてきていますが、二〇一二年では、都内の精神科病院には、いまだに一万一千七百六十人が長期に入院している状況です。
 東京都障害者計画、第三期東京都障害福祉計画においては、長期入院者の地域移行を目標に掲げていますが、目標達成に向け精神障害者の地域移行支援にどのように取り組んでいるのか伺います。
 長期入院していると生活力を失い、病院生活へ依存し地域生活への復帰を諦めてしまうと聞いています。その人らしい地域での生活をイメージできるように支援し、地域移行、地域定着するには、病院と地域との調整をするコーディネーターや、みずからも入院経験を持ち、地域で暮らすピアサポーターによる働きかけは、大きな効果があります。
 そこで、地域移行におけるピアサポーターの活動についてお伺いいたします。
 都内には、精神科病床のある病院は百十五。そのうち一年以上の入院者がいる病院は、民間約七十病院と都立松沢病院と聞いています。都立松沢病院は、都における精神科医療の中核的役割を果たしており、新しい病棟の開設に当たり、精神科救急や精神科身体合併症など一般の病院では対応が困難な精神科医療機能を強化したということです。
 そのような中において、あわせて入院患者の地域生活の移行に向けた取り組みをどのように行っているのか、お伺いいたしまして、生活者ネットワークの一般質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 山内れい子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、持続可能なまちづくりについてでありますが、水や緑は、人々に安らぎを与えるほか、潤いある都市景観の創出につながるなど、多くの恩恵をもたらしております。
 また、まとまった緑や循環する水は、ヒートアイランド現象の緩和や温室効果ガスの吸収など、都市の環境負荷の低減を図る上で大切な役割を果たしております。
 都はこれまでも、水と緑のネットワーク形成に資する公園、緑地の整備や、道路、河川沿いの緑化、崖線や丘陵地の緑の保全などとともに、都市再生に合わせた緑やオープンスペースの拡大に取り組んでまいりました。
 今後も引き続き、こうした都市づくりを積極的に進め、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催の舞台にふさわしい、経済活力の維持向上はもとより、環境にもすぐれた世界一の都市東京の実現を目指してまいります。
 続きまして、都庁における女性の活躍推進についてでございますが、女性が生き生きと輝ける活力ある東京の実現に向けては、まずは都庁みずからが、職員の約四割を占める女性の意欲や能力を最大限に引き出していくことが重要であります。
 都では、仕事と育児等の両立支援とともに、性別にとらわれない能力や業績に基づく厳格な選考により、職員がみずからの選択で幹部職員にチャレンジできる仕組みを整えてまいりました。
 その結果、都の女性管理職の割合は、国や民間企業を大きく上回っております。先般のシンポジウムで申し上げましたように、課長級以上、管理職に占める女性の割合、東京都、一五・二%、国、わずか二・七%、民間もわずか五・二%であります。
 今後とも、実力本位の選考を行う中で、女性管理職の割合を高めることはもとより、都庁の幅広い分野で、意欲と能力のある女性職員が一層活躍できるよう、計画的な育成や支援に全力で積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 大学生に向けたワークライフバランスの普及啓発についてでありますが、誰もが意欲に応じて能力を十分に発揮し、活躍していくためには、将来、社会の担い手となる若者が、仕事と生活の調和、いわゆるワークライフバランスの意義や重要性を認識し、長期的な視野で人生を考えていくことが重要であると考えております。
 このため、大学生が結婚、出産を見据えたキャリア形成に向けて、職業生活のあり方やワークライフバランスの重要性を学ぶことができるよう、今年度、指導教材に直接活用できる素材を大学に対して提供してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 職場におけるハラスメントの防止についてでございますが、セクシュアルハラスメントなどを含めた職場の嫌がらせは、労働者の尊厳を傷つけるばかりでなく、職場環境の悪化にもつながるものでございます。
 このため都は、さまざまなハラスメントの防止に関するセミナーや、関連法令を解説した冊子の配布等により、事業主に対して必要な知識の普及啓発を行っております。また、労働相談情報センターにおきまして、退職強要や職場の嫌がらせなどに関する相談にも対応しております。
 今後もこうした取り組みにより、働きやすい職場環境の確保を進めてまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 男女平等参画を推進するための都発注契約における総合評価の充実についてでありますが、環境や福祉などの政策目的をサポートする手段の一つとして、公正性や透明性、競争性、品質の確保といった観点に配慮しながら、入札契約制度を活用することは有効であります。
 都はこれまでも、各局の施策を促進していくことを目的として、総合評価に政策的な評価項目を設定しており、ワークライフバランスの項目も盛り込んでおります。
 今後、都の全体方針や各局の取り組みを踏まえつつ、公共調達の発注者として、総合評価の活用など、女性の活躍を促す仕組みの一層の充実に向け、検討を進めてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、地域の子育て支援サービスに係る利用者支援についてでありますが、サービスの利用を希望する保護者が、多様なサービスの中からニーズに合ったメニューを選択し、円滑に利用できるよう、区市町村が身近な場所で相談を受け、情報提供や支援を行う利用者支援の取り組みは、待機児童の解消を図る上でも重要でございます。
 都は、こうした取り組みを昨年度から支援しており、今年度は十三区市で実施を予定しております。
 また、今年度から新たに、相談業務に必要なノウハウに関する都独自の研修も開始し、利用者への支援を担う職員のスキルアップを図っております。
 今後とも、区市町村における利用者支援の取り組みが進むよう、積極的に支援してまいります。
 次に、子ども・子育て新制度における指導監督についてでありますが、新制度では、都道府県が幼稚園、保育所、幼保連携型認定こども園の認可権限を有します、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育の四サービスは、新たに区市町村が認可権限を持つことになります。それに伴いまして、施設設備や人員配置など、認可に関する指導監督権限は、都道府県と区市町村それぞれに与えられるということになります。
 また、新制度の実施主体である区市町村は、保育サービスに関する運営基準を条例で定めるとともに、施設型給付や地域型保育給付の対象として確認をした場合には、認可権限と別に、認可権限の有無にかかわらず、運営基準に関する指導監督を区市町村が行うこととなっております。
 次に、精神障害者の地域移行についてでありますが、都は第三期東京都障害福祉計画において、一年以上入院している患者の退院率を二九%以上とする目標を掲げ、都内六カ所の相談支援事業所等に地域移行のためのコーディネーターを配置いたしまして、退院への働きかけや、病院と地域との調整を行っております。
 また、退院後の不安軽減や退院意欲の向上を図るため、都内五カ所のグループホームに併設した専用の居室を活用しまして、入院中に地域生活を経験できる体験宿泊を実施しております。
 今後とも、こうした取り組みにより、入院中の精神障害者の地域移行が円滑に進むよう支援してまいります。
 最後に、地域移行におけるピアサポーターの活動についてですが、都では、入院中の精神障害者の地域生活に対する不安を軽減するため、入院経験を持ち、現在は地域で生活しているピアサポーターが、コーディネーターとともに病院に出向き、みずからの経験に基づいて、退院に向けた準備や地域生活に関する助言をするなどの支援を行っております。
 今後とも、入院中の精神障害者が安心して退院を目指すことができるよう、病院と地域とを結ぶコーディネーターやピアサポーターによる活動を生かし、地域移行の取り組みを進めてまいります。
   〔病院経営本部長醍醐勇司君登壇〕

〇病院経営本部長(醍醐勇司君) 松沢病院における患者の地域移行についてでありますが、適切な入院医療の提供とともに、退院後に地域の中で安心した生活を送れるよう支援することは重要です。
 このため、入院時から退院に向けた生活相談を行うとともに、退院後は、必要に応じ、看護師が定期的に自宅を訪問し、体調の確認や服薬指導を行っております。また、社会生活に必要な機能の回復を目指し、さまざまなプログラムによるデイケアを実施しているところでございます。
 さらに、入院期間が一年を超える患者につきましては、医師、看護師、精神保健福祉士など、多職種のチームが情報を共有し、病状や家族の状況に応じた退院先の選定を行うなど、早期退院を支援しております。
 今後とも、関係機関と連携を図りながら、患者の社会復帰と地域での生活を支えるための取り組みを進めてまいります。

〇議長(吉野利明君) 以上をもって質問は終わりました。

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