〇議長(吉野利明君) 二十八番田中朝子さん。
〔二十八番田中朝子君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
〇二十八番(田中朝子君) 最初に、シェアサイクルについて伺います。
自転車政策のかなめとして、世界の主要都市に続々導入されているのが自転車シェアリング、シェアサイクルです。特定の場所で借りて、また返却しに行く必要がある従来のレンタサイクルとは異なり、エリア内に数十から数百カ所あるポートと呼ばれる自転車ステーションのどこでも借りられ、どこでも返却することができるのが最大の特徴です。
シェアサイクルは欧米で先行し、日本でも昨年十二月時点で全国の五十四都市がシェアサイクルを本格的に導入。現在、都内でも世田谷区や江東区臨海部など四エリアで導入されており、今後、都心部の千代田区や港区でも導入予定と聞きます。
しかし、自転車の台数は東京でもまだ地域ごとに数百台。パリの約二万四千台やロンドンの約八千台などに比べ規模は小さく、まだまだ社会実験の域を出ていないともいえます。
私も、江東区、世田谷区、横浜市のシェアサイクルを見て、利用もしてみました。江東区、横浜市は、実証実験の検証をした結果、事故や地域トラブルもなく、利用者から大変高い評価が得られており、今後の継続を希望する声も非常に多いことから、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けての東京都でのシェアサイクルの広がりに大きな期待が持てるといえます。
しかし一方で、本格実施を前にして、実証実験からの課題も明らかになってきています。
一つはポートの設置です。
どこでも借りられて、どこでも返せるシェアサイクルは、ポートの数が多いほど利用者の利便性が高まり、また、人の目につき、シェアサイクルの認知度や利用度が上がり、採算性も向上します。
しかし、東京都心部ではポートを設置する場所の確保が難しく、利便性向上の妨げになっています。事業者や道路管理者である自治体がポート増加を図っていますが、民地の提供はもちろん、都や区の公的施設へのポートの確保でさえ協力が進んでいません。また、歩道上へのポート設置に関しては地元警察署が消極的と聞いており、ぜひ積極的かつ柔軟な協力を要望するところです。
もう一つの課題は広域性です。
現在、シェアサイクルは区や市ごとに立案されており、運営主体もシステムもばらばらで、連続性、網羅性がありません。オリンピック期間中に百万人規模で増加するといわれる交通需要に対応するためにも、オリンピック会場を含む区部広域をカバーするシェアサイクルが必要ですが、こういった広域的な交通環境にかかわる政策を進めるのは、区市単位では不可能です。都の積極的な協力やリーダーシップが必要なのではないでしょうか。
また、持続可能な事業にするためには、採算性の確保が最も重要です。欧米のシェアサイクルは、銀行出資型、別事業の利益投入型、広告収入型等で採算をとっています。公共交通の一つと位置づけるならば、多少の公金投入は必要と考えますが、事業者が車体やポートの広告をつけやすくするなどの協力も不可欠です。
これらポートの設置や広域化、採算性等、今後、東京オリンピック・パラリンピック開催時に向け、都としてはどのようにシェアサイクルの推進にかかわり、課題の解決に協力していくのか、都のご所見を伺います。
次に、自転車レーンネットワークについて伺います。
シェアサイクルを幾ら広域化しても、走ることができる自転車レーンを整備しなければ意味がありません。
自転車が歩道を走るのは日本だけといっても過言ではありません。かつては、日本でも自転車は車道が当たり前でしたが、七〇年代に車が急速に普及して、車と自転車の事故が激増した結果、臨時措置として自転車の歩道走行が認められ、今日まで定着してしまいました。
平成二十三年に、警察庁から、自転車は歩行者と同様の取り扱いをされるものではなく、車両であるという通達が出されましたが、現在、自転車が歩道走行してもよいとされる普通自転車歩道通行可の歩道は、全体の六割以上にも上っています。
しかし、ここ数年ふえている自転車対歩行者の事故のおよそ四割は歩道上で発生しており、平成二十五年、都内での自転車の対歩行者事故は八百六十件、全国の約三三%を都内が占めています。
また、自転車の歩道走行は、歩行者のみならず自転車にとっても危険です。歩道を走る自転車は車から認知されにくいため、交差点での事故発生率が格段に高く、車から認知されやすい車道を走る方が実は安全です。
とはいえ、交通量の多い幹線道路において自転車と車が同じスペースを走るのは怖いと感じる人が多いため、世界の多くの国や都市が整備を進めているのが、車道を塗装して自転車用スペースを区分した自転車レーンです。
東京都内には、平成二十三年度末時点で百十二キロの自転車走行空間の整備がされていますが、そのうち車道の自転車レーンは総延長わずか九キロ、これは、ロンドンの実に百分の一以下の規模です。先日発表された東京都長期ビジョン中間報告では、自転車走行空間整備の目標値を、二〇二〇年までに現在のほぼ倍の二百三十二キロとされていますが、そのうち車道の自転車レーンがどのくらいになるかはまだ不明です。
また、自転車先進都市といわれるまちの多くは、まちのどこへでも連続した自転車レーンを通ってたどり着けるように、都心の主要道路を自転車レーンでネットワーク状に整備していますが、都の現計画ではネットワーク化が考慮されておらず、途切れ途切れの整備プランになっているため、特に都心部においては、車道上で自転車レーンのネットワークを整備していくことが重要と考えます。
舛添都知事の二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れたマスタープランにおいては、コンパクトなオリンピック開催に向け、自動車の流入を規制し、自転車のシェアや自転車レーンの整備を強化していく方針とのこと。二〇一二年のオリンピック開催都市ロンドンでは、ボリス・ジョンソン現市長が、オリンピックまでに延べ九百キロに及ぶ自転車レーンネットワーク、サイクルスーパーハイウエーを整備しています。
また、二〇一六年オリンピック開催都市であるリオデジャネイロも、ロンドンを成功事例として倣い、延べ三百キロの自転車レーン整備計画に着手しました。
東京都でも、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向け、車道上の自転車レーンを積極的に整備すべきと考えますが、どのような計画で今後の自転車走行空間整備に取り組んでいかれるのか、また、特に都心部における車道上の自転車レーンの整備について、あわせて伺います。
次に、社会的養護の家庭養護について伺います。
保護者のいない児童、被虐待児など、家庭環境上養護を必要とする児童を公的な責任のもとで育てる社会的養護が必要な子供は、現在約四万六千人。日本は、他の先進国と比べ施設養護への依存が非常に高く、そのうちの九割近くが児童養護施設や乳児院などの大規模施設へ入所しています。
戦後しばらくは孤児院という名で呼ばれ、専ら戦災孤児や浮浪者を保護、収容していましたが、最近では十五歳以下の子供の人口が減り続けているにもかかわらず、虐待や放任、親の離婚や病気、発達障害への誤解などの、より複雑な問題により、施設へ入所する子供はふえ続けています。
一方、ふえ続ける施設入所に比べ、日本は、家庭養護である里親委託率の割合が極めて低く、オーストラリア九三・五%、イギリス七一・七%、フランス五四・九%、韓国四三・六%などに対し、日本はわずかに一二%。東京都でも里親委託率は一一%と非常に低い割合となっています。
しかし、多くの研究から、家庭養護は子供の発達と福祉の向上のために重要であるということが明らかになっており、国際基準でも、施設ではなく家庭での養育を一般に推奨しています。
家庭的養護を必要とする子供の増加と、虐待など子供の抱える背景の多様化から考えると、従来の大規模施設では、複雑な事情を抱える子供に必ずしも対応し切れておらず、子供が健全に成長するためには、一人一人に十分に目をかけることができる家庭の環境が必要なのではないでしょうか。
東京都でも、大規模施設での養護ではなく、子供たちが家庭を通し愛着形成できる家庭養護をもっと推進、拡充すべきと考えますが、里親制度がなかなか進まない中、家庭養護の現状とこれまでの取り組み、今後の方向性について都のご所見を伺います。
次に、特別養子縁組について伺います。
家庭養護の一つに、特別養子縁組があります。育ての親が一時的に子供を預かり、戸籍上のつながりが発生しない里親制度とは違い、特別養子縁組は、養子が戸籍上養親の子となり実親と親子関係がなくなる制度で、養子となる子供の年齢は原則六歳未満の乳幼児です。
一九八八年に制度が新設されましたが、専ら親よりも子供の利益を守るために創設され、特に新生児の特別養子縁組は、乳幼児への虐待や虐待死から守るセーフティーネットにもなっています。
今月十九日、厚労省が発表した二〇一二年度の児童虐待死亡事例の検証結果報告書によると、心中以外の子供の虐待死は五十一人。年齢別に見ると、ゼロ歳が二十二人、四三・一%、この半分の十一人が生後二十四時間以内に命を奪われています。死亡事例の実母の状況は望まない出産が多く、未成年、未婚、経済的問題など、子供を養育できない状況にあることから、妊娠中から相談に乗り、どうしても育てられない場合は特別養子縁組の希望里親に橋渡しをして、新生児の時期から家庭を与えることは、ゼロ歳児の虐待を未然に防ぐことにつながるのです。
二〇一一年、厚労省は里親ガイドラインの中で、愛知県の児童相談所による新生児の養子縁組、里親委託を愛知方式として初めて好事例として認め、全国に通知しました。他地域の児童相談所にも少しずつ広がっていますが、東京都では、児相での新生児の特別養子縁組はほとんど進んでいないのが現状です。
一方で、この制度で生みの親と育ての親をつなぐ民間のNPO等の養子縁組あっせん事業者が全国に十五団体あり、私も四団体ほどお話をお聞きしました。
平成二十三年度、このような民間団体が行った養子縁組成立数は百三十六人と全体の三割以上を占め、この五年でその数は六倍に急増しています。また、十代で妊娠したり、中絶できる時期を過ぎた未婚女性などの相談に二十四時間対応したり、定期的に育ての親や専門家が参加する集まりを開き、子供を託した後の支援も行っている団体も多くあります。
特別養子縁組は児童福祉法上になく、施策への位置づけもないため、事業者への財政支援もあっせんの具体的な基準もありませんが、重要で必要とされている事業だけに、今後は早期のあっせん事業のあり方やあっせん技法、支援方法等の整備が必要です。
また、あっせん事業者は、養子あっせん事業だけでなく、児相がなかなか取り組めていない妊娠時からの相談事業や養子縁組のアフターフォローをも担っていることから、今後、東京都の児童相談所は、このような民間団体とも連携し、一人でも多くの新生児の虐待死を防ぎ、子供の立場に立った支援の充実が必要なのではないでしょうか。
東京都での特別養子縁組のこれまでの取り組みや課題、また今後の方向性について、都のご所見を伺います。
最後に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催時期について伺います。
この質問は、私は昨年の同じ第三回定例会でも一般質問させていただきましたが、新しい知事になられたことから、再度伺います。
二〇二〇年東京オリンピックの開催日程は七月二十四日から八月九日、パラリンピックは八月二十五日から九月六日となっており、真夏の一番暑い時期の開催です。
招致委員会がIOCに提出した立候補ファイルによると、この時期の天候は晴れることが多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候であるとありますが、例年の東京の夏の猛暑や集中豪雨の多さを考えると、決してこのとおりでないことは明らかです。
一九六四年東京大会のときは、東京の平均気温は十六・一度。しかし、ことしは、オリンピック開催時期に当たる七月から八月上旬に最高気温が三十五度以上の猛暑日を八日も記録しています。
また、ことしは七月下旬から八月にかけて、各地でも集中豪雨や台風の大きな被害が出ていて、オリンピック開催期間中に同じような天気になれば、新幹線や都内交通機関の乱れ、また、都市型水害等が大きく懸念されます。真夏の日本の開催は、出場するアスリートの皆さんに苛酷な大会になるだけでなく、応援に来られる観客のリスクも高まり、大いに心配するところです。
気候のよい十月十日、秋の開催だった六四年の東京オリンピックと比べると、猛暑、集中豪雨、台風、エネルギー問題、落雷による停電対策など、真夏特有の気候は非常に大きなリスクとなるのではないでしょうか。
同じく、真夏が暑い一九八八年開催のソウル・オリンピックでは、一九六四年東京オリンピックを見習って、開催時期を九月中旬から十月上旬にずらしています。また、中東カタールで二〇二二年に開催予定、サッカーワールドカップについては、選手と観客への暑さの影響を考慮し、通常の六、七月ではなく、十一月から二月の時期に開催する案について検討していると聞いています。
二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックも、可能ならば、まずはこのように開催時期の交渉を粘り強くしていくことも必要なのではないでしょうか。
二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催時期について、都のご所見と対策を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔東京都技監横溝良一君登壇〕
〇東京都技監(横溝良一君) 田中朝子議員の一般質問にお答えいたします。
自転車走行空間整備の取り組みについてでございますが、都は、平成二十四年度に策定した自転車走行空間整備推進計画を前倒しし、車道の活用を基本とし、オリンピック・パラリンピック開催までに都道全体で百二十キロメートルの整備を進めてまいります。
また、関係区市や警視庁などと連携し、都道、国道、区市道を連続させた自転車推奨ルートの検討を行い、オリンピック・パラリンピックの競技場などの周辺において、年度内を目途にルートを設定いたします。
さらに、東京の総合的な交通政策のあり方検討会の議論も踏まえ、都内全域に広げるための検討を進めてまいります。
今後とも、誰もが安全で安心して利用できる自転車走行空間の整備に積極的に取り組んでまいります。
〔環境局長長谷川明君登壇〕
〇環境局長(長谷川明君) 自転車シェアリングの推進についてでございますが、都内では、江東区等に続き千代田区と港区において、十月からの事業実施に向けた準備が着実に進められているところでございます。
自転車シェアリング事業の実施に当たりましては、まず、利便性の高いステーションの設置が重要となりますが、都は既に、関係部局で連携して、駅前など利用しやすい場所の確保に向けた調整を行ってきております。
さらに、区市町村補助制度において、今年度から新たに自転車シェアリング事業を補助対象メニューに加えるなど、事業採算性の向上を図る観点からの取り組みも行っております。
今後、さらなる普及拡大を図るため、引き続き利用促進に向けたさまざまな調整を行いますとともに、広域展開につきましては、これから実施される事業の状況も踏まえ、各区と連携しながら検討を進めてまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕
〇福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
まず、養育家庭についてでありますが、都の養育家庭等への委託児童数は、十年前に比べると約百人ふえておりますけれども、社会的養護全体に占める割合は、ここ数年、一一%程度で推移をしております。
そのため、都は、この制度を広く都民に周知し理解を促進するとともに、養育家庭等の登録数をふやすために、区市町村と連携しながら、体験発表会の開催やホームページ、広報誌等を活用した啓発活動を行っているところでございます。
また、児童を委託している養育家庭に対しましては、児童相談所による家庭訪問や心理面接等に加え、民間団体を活用して定期的な巡回訪問を実施するなど、きめ細かな支援を行っております。
こうした取り組みにより、都は今後とも、養育家庭を初めとする家庭的養護を積極的に推進してまいります。
次に、特別養子縁組についてでありますが、養育が困難などの理由で特別養子縁組を希望する相談があった場合、児童福祉司等が面接などを通じて、実親の意向や養育力等を十分に確認し、必要性を判断しております。
その上で、養子縁組が必要と判断した場合には、適切な家庭を選定し、交流、委託、養子縁組成立に至るまで、きめ細かく支援をしております。そのため、十分な期間を要するというところでございます。
都は今後、できるだけ早い段階からの交流に努め、委託につながるよう、子供の福祉を第一に考えながら、養子縁組も含め、社会的養護を必要とする児童の家庭的養護を進めてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕
〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催時期とその対策についてでございますが、IOCの規定では、オリンピックは、七月十五日から八月三十一日の間で開催し、パラリンピックを合わせて六十日間以内で実施することが定められております。
この時期は、学校などが夏季休暇となり、多くの人々が参加しやすいことや、他の大規模な国際競技大会と重複しないことなどから、開催期間としては適切であると考えております。
一方で、気温の高い日が続く時期でもあることから、競技時間を比較的涼しい時間帯に設定することや、会場内に日陰を確保することなど、今後、気候や天候に対してさまざまな対策を講じていくことが必要であるということも認識しております。
今後、組織委員会を初め関係者と十分協議をし、安全で快適な大会開催に向けて検討を進めてまいります。
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