平成二十六年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(藤井一君) 二十三番ほっち易隆君。
   〔二十三番ほっち易隆君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇二十三番(ほっち易隆君) 初めに、規範意識の育成について伺います。
 私はかねてより、よりよい社会をつくり上げていくためには、人づくり、すなわち教育が重要であり、中でも子供たちの感謝の心、自立の心、思いやりの心、法や決まりを大事にする心など、豊かな心を育成することが大切であると考えます。
 昨今の子供たちを見ると、人々がともに生きていく上で必要なルール、マナーとして当たり前にできなければならないことが、必ずしも十分にできていないといった現状があり、人間として持つべき最低限の規範意識の育成については、各小中学校が重点的に取り組んでいくことが重要です。
 都教育委員会が配布した都独自の道徳教育教材集には、規範意識を醸成するために、先人の言葉や子供たちが学習するためのワークシートが掲載されていますが、さらに指導を充実するためには、より一層深く考えさせるための指導内容の工夫とともに、それに関する教師の授業力を高めることが必要です。
 そこで、東京の子供たちの規範意識を高めるために、一層具体的な取り組みを進めるべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、エネルギー政策について伺います。
 この夏の電力需給はCO2排出量が多く、安定供給に課題のある老朽火力に頼らざるを得ない状況が続く中、大変厳しいものとなることが予想されていました。
 このため、都においても、震災以降定着しつつある、無理のない、賢い省エネ、節電の継続を初め、総合的な取り組みが進められております。
 こうした取り組みもあり、多くの家庭や事業所で賢い省エネ、節電が継続され、幸いにも需給が逼迫する事態は起こりませんでしたが、依然として危機的な状況が解消されたわけではありません。
 東京は、エネルギーの最大消費地でありますが、その多くを他県に依存しており、都民生活や企業活動に必要なエネルギーを安定的に確保し、環境負荷の低減、エネルギーの有効活用を図っていくことは、東京の発展を支える上で重要な課題であります。
 そこで、東京のエネルギー政策について、知事の見解を伺います。
 次に、コージェネレーションの普及について伺います。
 本年六月に閣議決定された、いわゆる骨太の方針においては、エネルギーコストの上昇や電力供給の不安は経済活動の足かせとなり、ひいては新たな投資や雇用の拡大を阻害する要因との懸念が示されています。
 こうした状況に対し、我が党は、さきの政策提言において、コージェネレーションシステムの導入支援を初め、分散電源の普及を支援していくべきことを新たに追加したところです。都は、現在も普及に取り組んでいますが、さきの長期ビジョンの中間報告で示された導入目標の達成に向けては、引き続き積極的な取り組みが必要です。
 この先、さらに拡大していくためには、導入のメリットをできる限り具体的に示していくことが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 コージェネレーションは環境性にすぐれるだけではなく、災害時のエネルギー確保にも寄与するものです。実際、東日本大震災の際には、大型のコージェネレーションにより電力供給を続けた六本木ヒルズに注目が集まりました。近年、企業が立地を決める際には、建物の環境性能に加え、非常時においても事業継続を可能とするエネルギーシステムに関心が高まっています。
 こうしたことから、都内の開発案件においても、平常時の省エネと災害時のエネルギー確保という両面に対応するシステムとして導入する事例が徐々にふえてきております。
 今後、地域の防災性を高めるという観点からも、このコージェネレーションを核として、さらなるエネルギーの有効利用を図っていく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、大気環境の改善に向けた取り組みについて伺います。
 我が党は、東京を世界で一番の環境都市とするため、CO2削減やPM二・五対策を進め、クリーンな都市、魅力あふれるまちをつくることを知事に提言しています。
 先月、都が公表した二十五年度の大気汚染の測定結果によると、二酸化窒素や浮遊粒子状物質など全体的には良好ですが、PM二・五の環境基準達成率については、二十四年度を下回る状況でした。
 都は、国に先んじて自動車排ガス対策などに取り組み、東京の大気質は確実に改善してきたと理解していますが、都民の皆様に不安を与えないために、その理由についてわかりやすく説明することが必要です。
 その上で、長期ビジョンの中間報告で掲げたPM二・五の環境基準達成率を一〇〇%にするという目標に向け、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
 PM二・五の原因物質の一つに、印刷インキや建物の塗料等に使用される揮発性有機化合物、いわゆるVOCがあります。VOCは、光化学スモッグの発生源でもあり、その削減対策は重要です。事業者は、VOCの使用削減に取り組む必要性については理解しているものの、その取り組みには濃淡があり、大幅な削減にはつながっていないのが現状です。
 本年の第一回定例会で我が党の質問に対し、都は、業界と協働して低VOC製品の利用拡大に向けたルールづくりなどの取り組みを始める旨を表明しました。
 ぜひとも、これを着実に進めていただきたいと考えますが、現状及び今後の具体的な取り組みについて伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 障害者が地域で安心して生活するためには、グループホームや通勤寮、通所施設など、地域生活基盤を確保することが重要であり、我が党はこれまでも積極的な整備を求めてきました。
 先日の長期ビジョンの中間報告では、平成二十七年度から三年間で、障害者の地域生活基盤を最大で約七千人分整備していくという目標が示されたところであります。
 都は現在、来年三月策定予定の次期障害者計画、障害福祉計画の検討を進めており、東京都長期ビジョンで示した整備目標数を次期計画にも位置づけ、引き続き地域生活基盤の整備に積極的に取り組んでいく必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、国際化への展開について何点か伺います。
 初めに、外国人旅行者への対応についてです。
 日本を訪れる外国人旅行者は、東日本大震災後、一時的な減少から回復し、平成二十五年は過去最高の一千三十六万人に上っており、都内を訪れた外国人旅行者数も過去最高となっています。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、海外からの旅行者がさらに増加することが見込まれる中、外国人旅行者が困っているWi-Fi環境の整備やコミュニケーションの向上策などについて、さきの第二回定例会における我が党の質問でも、前向きな答弁をいただきました。
 外国人旅行者が都内で訪れたランキングの一位は、新宿・大久保であり、展望室という観光スポットを持つ都庁舎も連日、海外からの観光客が大勢訪れています。今後の増加が見込まれる中、都庁舎においても、例えばWi-Fi環境の整備や多言語対応など、おもてなしの心にあふれた対応を充実していくべきと考えます。
 お膝元である都庁舎において、今後、おもてなしをどのように向上させていくのか伺います。
 次に、伝統文化の発信について伺います。
 東京には、神社仏閣や庭園、江戸開府以来、連綿と受け継がれた工芸技術、地域に伝わる神楽など、多様な伝統文化が存在しています。東京の代表的な観光地、浅草などでは、手拭いや扇子など日本の文化を感じさせる店が軒を連ねています。
 私の地元、足立区にある西新井大師でも、節分の豆まきや風鈴祭りなどの伝統的な行事が行われ、多くの方が訪れています。
 こうした日本独自の伝統文化は、日本人には日常的な品物や風景であっても、外国人旅行者にとっては、旅の記憶として強く刻まれるようです。
 都はこれまでも、都内にある伝統文化の発信に取り組んできましたが、何が外国人の心を打つのかリサーチを行い、都や区市町村が持っている各地のさまざまな伝統文化に関する情報をわかりやすく外国人に知らせていくことが重要です。
 今後の取り組みについて、都の見解を伺います。
 最後に、東京の歴史的な建造物について伺います。
 先日の新聞報道によりますと、八月に来日した観光客は百十万人を超え、今後さらに増加が見込まれます。このような機会を捉え、都内に残る景観資源を生かし、二〇二〇年以降の観光客確保を見据えた取り組みが今まさに必要です。
 例えば、私の地元である足立区の千住地区には、江戸の面影を伝える建造物が随所に残り、ほかのまちとは一味違う魅力があります。このような歴史的な建造物を保存し、特色あるまちづくりに生かしていくべきと考えます。
 今後は、都市の魅力をさらに高めるため、歴史的建造物の保存に向けて積極的に取り組むとともに、民間とのコラボレーション等により活用していくことが重要と考えますが、都の所見を伺い、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) ほっち易隆議員の一般質問にお答えいたします。
 東京のエネルギー政策についてでありますが、東京は日本の首都、経済の中心としての都市活動を支える電力、エネルギーの供給を他の地域に大きく依存しており、電源立地地域への感謝の念を忘れてはならないと思います。
 都は、電力の大消費地としての責務を踏まえ、都民や事業者に無理のない、賢い省エネ、節電の継続を促すとともに、再生可能エネルギーを初めとする低炭素で災害にも強い分散型エネルギーの拡大に努めるなど、エネルギーの需給両面にわたる取り組みを強化しております。
 再生可能エネルギーにつきましては、東京の消費電力に占める割合を二〇%に高めることを目指し、都内での太陽光発電や小水力発電などの導入拡大のほか、民間資金を活用したファンドを通じ、都外のメガソーラー等の拡大にも取り組んでおります。
 加えまして、次世代エネルギーとして期待されております水素の利用拡大に向けて、燃料電池車や水素ステーション整備などの具体的な数値目標とその実現に向けた戦略を定め、国を先導して水素社会の実現を目指すこととしております。
 世界の注目が集まります東京オリンピック・パラリンピックを見据え、我が国の高い環境技術を活用しながら、東京の発展を支える実効性の高いエネルギー政策を展開してまいります。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 規範意識を高めるための教育についてでございます。
 子供たちの規範意識は、日常の生活全てを通して育成されるものであり、家庭、学校、地域社会がそれぞれの責任と役割を果たすことが重要でございます。
 とりわけ学校においては、全ての教育活動を通して、子供たちが自己を他者とのかかわりの中で捉え、集団の一員として必要な法や決まりを遵守する態度を身につけ、主体的に行動できるよう指導する必要があります。
 今後、都教育委員会は、こうした指導を充実するため、都が独自に作成した道徳教材集を補完する教材を開発するとともに、教員の指導力を向上させるための研修を充実させてまいります。
 さらに、家庭、地域と連携して、規範意識を高めるための教育計画の事例を示して、学校の組織的な取り組みを一層推進してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、コージェネレーションの導入拡大についてでございます。
 コージェネレーションは、熱と電気の双方を有効に利用することでエネルギー効率が高まり、省エネやCO2排出量の削減に寄与するものでございます。
 このため、都は、キャップ・アンド・トレード制度において高効率なコージェネレーションの活用が評価される仕組みを構築するとともに、エネルギーマネジメントシステムをあわせて導入することを条件として初期費用の負担軽減を図るなど、多面的に支援を行っております。
 今後は、補助金を交付した事業者からコージェネレーションシステムの実際の運転状況などのデータ提供をいただき、ピークカットや省エネなどのコージェネレーション導入効果の実績を公表するなど、ビルオーナーやテナントにメリットをわかりやすく示すことで、さらなる導入拡大につなげてまいります。
 次に、コージェネレーションの有効利用についてでございます。
 コージェネレーションは、エネルギー効率の向上による環境面への貢献のみならず、災害時において生活や企業活動の継続に必要な熱や電気の供給が可能となることから、近年、防災面の価値についても注目が高まっております。
 こうした価値に着目し、今後は、災害時における地域の自立性向上につなげていく観点からも、コージェネレーションで生み出した熱と電気を建物間や街区内で融通するなど、エネルギーの面的利用を促進する方策について検討を進めてまいります。
 低炭素、快適性、防災力を兼ね備えたスマートエネルギー都市の実現に向けて、さまざまな価値を有するコージェネレーションの普及を多面的に支援してまいります。
 次に、PM二・五対策についてでございます。
 PM二・五の都内の年平均濃度は、ここ十年で約五五%減少し、大幅に改善しており、平成二十五年度も二年前の水準と同様で、環境基準値を若干上回る程度となっております。
 そうした中、二十五年度の環境基準の達成率が、ご指摘のように前年度に比べて悪化いたしましたのは、風が弱いため汚染物質が拡散せず、濃度が高くなった日が増加したためでございます。
 こうした情報を正確に都民に提供いたしますとともに、今後、気象条件に左右されずに環境基準を達成していくため、低公害、低燃費自動車の導入支援等の大気汚染対策や、VOC、揮発性有機化合物の排出削減対策等を引き続き推進してまいります。
 あわせて、今年度、都内全域のPM二・五の状況について、地理的特性や気象条件との関係などの詳細な解析を行い、都民にわかりやすく情報提供しますとともに、今後の一層効果的な削減対策を検討してまいります。
 最後に、VOC対策についてでございます。
 VOCは、これまで事業者の自主的取り組みを促進することで、過去十年間で排出量が約四割削減されております。しかし、PM二・五と光化学スモッグの低減に向けて、その原因物質の一つであるVOCの排出量をさらに削減するためには、業界や発注者を広く巻き込んだ取り組みが必要と認識しております。
 都はこれまで、事業者に排出削減方法等を紹介するセミナーの開催やガイドブックの配布による普及啓発を進めてまいりましたが、新たに低VOC製品の利用拡大に向けて、一定の排出量を占める屋外塗装工事を対象に、学識経験者、材料メーカーや工事業者等の業界団体から成る作業部会を先日スタートさせたところでございます。
 この部会において、低VOC塗料や塗装技術の普及に関するコストや工期等の課題、業界や発注者、施工者の役割、公共事業への適用等の検討を本年度末までに行い、低VOC製品の利用拡大に向けたルールづくりを進めてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 障害者の地域生活基盤の整備についてでありますが、障害者が地域で安心して暮らせる社会を実現するためには、グループホームや通勤寮、通所施設など、地域生活基盤の充実を図っていくことが重要でございます。
 そのため、都はこれまで、整備費の事業者負担を軽減する特別助成等を実施し、障害者の地域生活基盤の整備を進めるとともに、入所施設への地域移行促進コーディネーターの配置などにより、地域生活への移行を推進してまいりました。
 東京都長期ビジョンの中間報告では、平成二十七年度からの三年間における地域生活基盤の整備数の見込みを示しておりまして、今後、障害者施策推進協議会での議論も踏まえ、次期障害者計画、障害福祉計画におきまして、改めて整備目標を策定いたしますとともに、目標達成に向けたさらなる支援策を検討してまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 都庁舎におけるおもてなし対応についてでありますが、都庁舎の展望室には毎日五千人余りの訪問客があり、その中には、海外からの旅行者も数多く含まれております。
 庁舎の案内窓口には、これらの方々から、庁舎内の施設のことだけでなく、近隣の情報も含めてさまざまな問い合わせが寄せられており、現在、英語での対応のほか、タブレット端末の翻訳機能を使った多言語による案内も行っておるところでございます。
 ご指摘のとおり、海外からの訪問客は今後ますます増加することが予想され、こうした機能を質的、量的に一層充実することが必要であると考えております。
 このため、庁舎の案内窓口等における多言語対応の強化など、おもてなしの向上に向けた検討を速やかに進めてまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 伝統文化の外国人旅行者への発信についてでございますが、海外からの旅行者をより一層誘致していくためには、歴史的建造物や伝統的な芸能、工芸品など、多彩な文化について外国人の嗜好を十分に把握し、それを踏まえて効果的に発信していくことが重要でございます。
 このため、都は今年度、外国人旅行者が関心を持つ伝統文化の内容や、国別、地域別の傾向を具体的に把握するための調査を実施しております。
 今後、東京の伝統文化に関する情報を区市町村や庁内各局と連携して一元的に集約し、調査結果を踏まえ、旅行者の行動特性や嗜好に応じて分類し提供するなど、情報発信の方策を検討してまいります。
 こうした取り組みを通じて、旅行者が目的に応じて容易に日本の伝統文化の情報を入手できるよう努めてまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

〇都市整備局長(安井順一君) 歴史的建造物についてでございますが、歴史的建造物は、地域の愛着や誇りにつながり、貴重な観光資源でもあることから、保存と活用を図っていくことが重要でございます。
 都はこれまで、昭和初期までの歴史的建造物を選定し、保存に努めてまいりましたが、戦後の建造物の中にも、都市の記憶を継承していく上で重要なものが少なくございません。
 このため、これらの建造物につきましても、新たに選定の対象とするとともに、所有者などの協力を得ながら、コンサート会場としての利用や、カフェ、アートギャラリーへの転用など、活用の取り組みを拡大してまいります。
 今後とも、地域における観光まちづくりとも連携いたしまして、歴史的建造物の保存や活用を図り、歴史や文化を感じさせるまち並みの形成に取り組んでまいります。

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