平成二十六年東京都議会会議録第十三号

   午後六時開議

〇副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十一番中山ひろゆき君。
   〔三十一番中山ひろゆき君登壇〕

〇三十一番(中山ひろゆき君) 初めに、国際観光都市振興の観点から四点質問させていただきます。
 二〇二〇年に向けての東京クルーズビジョンについて伺います。
 東京都は、平成二十六年一月、東京都が二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック開催都市として、また国際観光都市として、今後のクルーズ客船誘致施策を積極的に展開していくため、おおむね十五年後の目標とその取り組みについてまとめた東京クルーズビジョンを策定いたしました。二〇二八年時点での年間誘致目標は、東京港クルーズ利用人口五十万人、クルーズ客船利用回数二百八十回と、大いに期待できるものであります。
 大型クルーズ船の寄港は、一回の寄港で数千人の乗客が観光や買い物を行うだけではなく、その乗客のための食料など物資を寄港地で調達するため、非常に大きな経済効果をもたらします。さらに、東京港にクルーズ船を寄港させることは、東京港のイメージアップだけではなく、臨海エリアにおけるMICE、国際観光拠点化の推進にも大きな期待ができるものと考えます。クルーズ人気が高まる中、東京港を大型客船が寄港できる施設に整備するだけではなく、利用者の目線に立った使いやすい施設を整備し、首都の玄関口としてふさわしい港とすることが重要であります。
 そこで、オリンピック・パラリンピックが開催され、多くの人が東京に来訪する二〇二〇年に向け、国際観光都市東京として、どのようなクルーズ振興策を推進していくのか、知事の所見を伺います。
 次に、二〇二〇年に向けたカジノを含む統合型リゾート、いわゆるIRについて伺います。
 都の観光産業振興プランで示されている方向性のように、洗練された都市としての東京の魅力をさらに磨き上げ、旅行者誘致を積極的に進める上で、カジノを含むIRは都市の魅力創出の一つと考えられます。
 実際、東京五輪開催が決定したことを受け、急速に法制化の期待が高まっていると考えます。カジノの法制化に向けた動きが進んでいる中、議員立法によって提出された推進法案が次期国会で成立する可能性があり、各地の自治体もカジノ誘致に名乗りを上げるのではないかともいわれております。
 一部の報道では、経済の活性化や外国人観光客の増加に期待をかけるとして、政府も新しい組織をつくり、二〇二〇年の東京五輪に間に合うように具体案を検討すると伝えられています。
 一方、カジノはギャンブルへの依存を初め、青少年への悪影響、反社会的勢力の暗躍、マネーロンダリングの懸念など、負の側面を抱えていることも事実であり、やみくもに手を挙げられない状況もあります。カジノのマイナス面を十分に検証した上で、幅広く意見を聞いて議論を尽くすことが重要であります。
 そこで、政府や国会の動きを鑑み、現状ではどのように捉えられているのか、都の所見を伺います。
 次に、二〇二〇年に向けた観光振興について伺います。
 昨今、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に、市区町村、観光団体、企業でも、新たな外国人の来訪をふやそうとさまざまな取り組みを実施しております。
 百貨店などで構成される新宿観光振興協会は、外国人向けのガイドブックを発行する事業を行っています。東京スカイツリーでは、台北市にある高さ五百八メートルの高層ビル、台北一〇一と友好関係を結び、双方で写真展や観光PRイベントなどを展開し、プロモーション活動を展開しております。
 私の地元、台東区も観光振興には力を入れていますし、地域の皆さんも積極的であります。浅草の仲見世商店街では、旅行者のニーズを見込み、無料Wi-Fiを設置いたしました。さらに、地域全体の無料Wi-Fi対応について検討が進められようとしております。
 このように、地域に国内外からより多くの旅行者を呼び込むためには、多様で魅力的な観光資源を活用したさまざまな取り組みが重要と考えます。都は、地元自治体や地域の観光団体が主体的に行うこうした取り組みを積極的に支援すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、二〇二〇年に向けた環境やまち並みに配慮した道路整備について伺います。
 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックは、中央区晴海に設置される選手村から半径八キロ圏内に多くの競技会場を配置する開催計画になっています。数々の競技会場の中でも、陸上競技のマラソンは、オリンピックスタジアムから皇居、銀座を経て、東京スカイツリーを正面に見ながら走り、浅草を折り返すという、まさに東京の名所を駆け抜けるものであります。大会期間中、選手たちの熱戦とともに、東京のまち並みが世界に発信されるだけではなく、多くの国内外の方が東京を訪れ、観光地などをめぐり、東京を楽しむことになります。
 オリンピック・パラリンピックを契機に、観光地などにおいて環境やまち並みに配慮して道路を整備し、緑豊かな魅力ある道路空間を創出することは、大会後の東京にとって価値あるものとなります。
 そこで、都内でも有数の観光地である浅草、上野などを抱える私の地元台東区における環境やまち並みに配慮した都道の取り組みについて伺います。
 次に、認知症対策について伺います。
 徘回する認知症の高齢者が行方不明になったり、事故に巻き込まれたりする事案が後を絶ちません。地域全体で対応が欠かせませんが、近所づき合いが希薄化する都市部にとっては難しい課題ともいえます。
 そんな中、身近な地域で、七年前に忽然と家族の前から姿を消した女性が、六十キロ離れた群馬県館林市の施設で別の名前で生活していることがわかりました。きっかけは、五月十一日、夜九時から放送されたNHKスペシャル番組「認知症八百万人時代 行方不明者一万人」でした。認知症による徘回で行方不明になった事例を東北から九州にかけて取材したものです。
 番組では、一つの事例として、群馬県館林市の施設に保護されている六十七歳の認知症の女性が取り上げられ、NHKの番組を見ていた私の母親が、三重ちゃんだ、間違いないと確信していいました。NHKには、番組放送中にも情報提供が数件あったと聞いております。
 彼女は、二〇〇七年十月の三十日未明に、東武鉄道館林駅近くで警察に保護された際、靴下には名字が、下着にはミエコと名前が書いてありました。本人は、みずからをクミコと名乗ったことが、身元照会がうまくいかなかった理由のようです。
 そこで、認知症などで身元不明のまま保護される高齢者が相次ぐ中、全国の警察や自治体の枠を超えて身元照会ができる仕組みづくりが急がれています。警察で保護された高齢者が認知症のために正しい身元情報が伝えられず、届け出内容と照合できないケースもあります。警察は、身元不明者を保護した場合、二十四時間以内に地元の自治体に引き継ぐこととなります。身体的特徴や所持品などの頼みの綱となる情報を自治体間で共有できる仕組みづくりが求められていますが、都の所見を伺います。
 次に、認知症の相談支援体制の充実について伺います。
 認知症の治療では、物忘れなど認知機能の低下の症状があらわれたとき、それが認知症によるものなのかを初期の段階で見きわめ、周囲の人の理解と気遣いとともに、適切なケアを行うことが重要とされています。しかし、現状では、自宅で生活をし続けた結果、入院、入所せざるを得ない状況に追い込まれたケースが散見されます。
 そこで、認知症の人が住みなれた環境で自立した生活を、地域の支援の流れを明確にする必要があるのではないかと認識をしております。初期症状等があらわれたらどこに相談すればいいのか、住みなれた環境で生活するには、どのような医療、介護サービスを受けたらいいのか、症状が悪化した場合にはどうすればいいかなど、具体的な対応方法をあらかじめ明確にし、家族に周知するとともに、家族からの相談に対応できる体制を整えることで、家族も安心し、認知症の適切な対応が可能になります。
 私は、高齢化が進む都内において、認知症に対する普及啓発と相談支援体制の充実をさらに図っていく必要があると考えますが、都の所見を伺います。
 以上で質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 中山ひろゆき議員の一般質問にお答えいたします。
 クルーズ振興についてでありますが、東京の成長戦略には、世界中の人々を引きつける国際観光都市としての発展が不可欠でありまして、観光振興の新たな基軸として、クルーズ客船の誘致は極めて大きな可能性を有しております。
 クルーズ客船の入港は、東京に多くの外国人観光客をもたらすとともに、港の風景を華やかに演出するなど、それ自体が魅力的な観光資源となります。
 都は、東京クルーズビジョンを策定し、クルーズ客船の誘致を積極的に行っており、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催までに、臨海副都心地区に世界最大の大型クルーズ客船にも対応できる客船ふ頭を整備してまいります。
 新客船ふ頭は、世界一の観光都市東京の海の玄関口にふさわしい、十分なおもてなしを提供できる施設としていきたいと思っております。
 また、このような東京港の将来像を世界に向けて力強く発信するなど、クルーズ振興策を積極的に推進し、さまざまなクルーズ客船によって常に彩られている、にぎわいあふれる国際観光都市東京を実現してまいります。
   〔東京都技監横溝良一君登壇〕

〇東京都技監(横溝良一君) 台東区の都道における環境やまち並みに配慮した取り組みについてでございますが、区内には、江戸の伝統と下町情緒を今に伝える浅草や、桜の名所で知られる隅田川など東京を代表する観光地があることから、その周辺の道路整備に当たっては、地域の特色を生かすことも重要でございます。
 このため、都は、浅草通りにおいて隅田川の流れや浅草寺の境内などをイメージして歩道をデザインしたり、サルスベリやツツジなどまちを彩る街路樹を採用し、歴史、文化、まち並みと調和した道路づくりを進めております。また、環境面に配慮し、道路の表面温度の上昇を抑える遮熱性舗装も実施しております。
 今後とも、良好な都市景観と快適な道路環境の創出に向け、積極的に道路整備を進めてまいります。
   〔港湾局長多羅尾光睦君登壇〕

〇港湾局長(多羅尾光睦君) 統合型リゾート、いわゆるIRについてですが、ホテルやリゾート施設、カジノなどを一体的に整備したIRは有力な観光資源であり、東京の国際競争力をさらに高める可能性を有していると考えられます。
 その反面、カジノを含むIRの導入には、刑法における違法性の阻却など、さまざまな課題があるともいわれております。
 現在、IRの整備を推進するための法案が国会で継続審議となっており、今後さまざまな観点から検討されるべきものと考えております。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 観光振興についてでございます。
 地域の観光振興を進めるためには、地元のさまざまな主体がみずからの発想や創意工夫を発揮して、魅力的な観光資源を活用していくことが重要でございます。
 これまで都は、その土地ゆかりの産業や景観、伝統文化など、多様な魅力を生かした地域の観光まちづくりを支援しております。
 また、地域の抱えるさまざまな課題に対応した適切な専門家を選定いたしまして、アドバイザーとして派遣し、地域の主体的な取り組みを後押ししております。
 今後も、地域の観光振興を積極的に支援し、国内外からの旅行者誘致につなげてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、認知症の行方不明高齢者等についてでありますが、都は、平成二十二年度から区市町村の依頼に基づき、認知症が疑われる行方不明高齢者等の情報を都内区市町村や近隣県に提供する取り組みを行っており、取り組み開始から平成二十五年度末までの四年間で、行方不明四百五十三件、身元不明七十件の情報を提供しております。
 国は、本年六月に実施した全国の自治体の実態調査に基づき、今月十九日、今後の認知症高齢者等の行方不明、身元不明に対する自治体の取り組みのあり方について示しておりまして、都は、この内容も踏まえながら、今後とも、警察や区市町村と連携し、広域的な情報共有に努めてまいります。
 次に、認知症の普及啓発と相談支援の充実についてでありますが、都は、都民の認知症への理解を促進するため、認知症の疑いを家庭で簡単に確認できるチェックリストや、早期診断の重要性、相談先等を掲載したパンフレットを本年五月に作成し、区市町村や関係機関等に配布したほか、都のホームページにも掲載し、広く都民への周知を図っております。
 また、昨年度から、区市町村に配置した認知症コーディネーターが認知症の人の家族等から相談を受け、訪問支援等により適切な医療、介護サービスにつなげる取り組みを開始しており、実施している自治体は、来月一日から開始する二区四市を加えまして、二十七の区市となっております。
 今後とも、こうした取り組みにより、都民に対する認知症の普及啓発と相談支援体制の充実を一層図ってまいります。

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