平成二十六年東京都議会会議録第十三号

〇議長(吉野利明君) 九十五番相川博君。
   〔九十五番相川博君登壇〕

〇九十五番(相川博君) 三環状道路を初めとする首都圏の高速道路は、交通渋滞の解消、環境の改善、災害時の迂回機能の確保など、大変大きな整備効果が期待されています。こうした中、本年六月には、首都圏中央連絡自動車道の高尾山インターチェンジから相模原愛川インターチェンジまでの区間が開通し、東名、中央、関越の高速道路が結ばれるなど、着実に整備が進められています。
 これら高速道路網を有効に活用していくためには、ミッシングリンクの解消とともに、既存路線の渋滞対策も極めて重要であります。中でも、多摩地域と区部を結ぶ中央道の調布付近では、毎朝、長蛇の渋滞が発生し、経済損失や環境悪化を招いているなど、東京のみならず、日本経済発展のボトルネックとなっているといっても過言ではありません。
 このような交通渋滞は、一刻も早く対策を打つべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、渋滞対策に加えて、通行料金の問題を忘れてはなりません。
 多摩地域に住む都民にとっては、中央道を利用して都心方向へ向かう場合に、まず中央道の料金が徴収され、加えて、高井戸から首都高速の料金が徴収されています。首都高のみを利用している都民と比べて、同じ都民であるにもかかわらず、我々多摩都民には常に二重の料金負担が強いられる不公平感があり、利用者本位の合理的な料金体系となっていません。
 この料金問題については、都議会自民党三多摩・島しょ部会としても、長年の懸案事項として取り組んできました。これまでも幾度となく関係者の要請を行ってきましたが、多摩地域にとっての大きな悲願でもあるこの問題を解決するまでには至っていません。
 中央道については、近い将来、外環との接続が予定されており、首都圏の環状道路ネットワークが次々に形成されていきますが、現在の料金体系のままでは、高速道路がうまく活用されないばかりか、多摩の地域振興にも大きな支障が出るものと危惧しています。
 今後、国では料金検討を行う予定であると聞いていますが、都としてどうなのか、高速道路の料金体系の見直しについて見解を伺います。
 次に、住宅政策について伺います。
 分譲マンションについては、耐震化の促進や老朽化への対応などが喫緊の課題となっていますが、合意形成の難しさなどから、なかなか進んでいないのが実態です。全国の分譲マンションの四分の一以上が東京に集積しているなど、マンション問題は大都市特有の課題であり、都が率先して取り組んでいくことが必要です。
 今後、老朽マンションの増加が見込まれていますが、都が実施した実態調査によれば、築年数の経過したマンションほど居住者が高齢化し、管理への関心も薄まり、管理組合の機能が低下する傾向が見られます。耐震改修や建てかえなどを円滑に進めていくためには、日ごろから管理組合が機能していることが何よりも重要です。
 そこで、分譲マンションにおける管理について、今後どのように支援策を講じていくのか見解を伺います。
 次に、建築物の安全対策についてです。
 昨今、都内において、オフィスや倉庫などを簡単な壁で小さく区切り居住用に貸し出す物件、いわゆる違法貸しルームが散見され、火災等の安全面で問題が多いことが指摘されています。
 一方で、戸建て住宅等を転用したシェアハウスやグループホームなど、新たな住まい方も増加しています。
 国は、こうした建築物について、法令上寄宿舎として取り扱うことを明確にした上で、既存ストックの活用も可能となるよう法令改正を行いました。
 寄宿舎については、東京都建築安全条例で既に基準を設けていますが、今回の国の改正趣旨を踏まえ、必要な安全性を考慮しつつ、より多様な住宅ニーズに対応していくべきと考えますが、条例の見直しについて、見解を伺います。
 次に、緑施策について伺います。
 都は一千ヘクタールの緑を創出する目標を掲げ、これまで海の森や都市公園の整備、街路樹の倍増、校庭の芝生化など、みずから積極的に緑化に取り組むとともに、緑化計画書制度を通じて、民間開発の際の緑化を誘導してきました。
 こうした取り組みにより、例えば区中心部では、良好な街路樹や新しい建物植栽が目立つようになるなど、その効果を実感するものですが、東京オリンピック・パラリンピック大会を見据えれば、都市の風格を高め、潤いと安らぎをもたらす緑をふやす施策を引き続き推進していく必要があります。
 また、都は昨年度から、在来植物による緑化事業を実施していますが、二〇二〇年東京大会を見据えると、世界的課題である生物多様性の保全、回復の取り組みも強く求められます。
 都は現在、新たな長期ビジョンの策定を進めているところですが、これまでの緑施策の総括と現状認識及び今後の取り組み方針について、見解を伺います。
 さて、私は、生物多様性の保全を図る視点から、多摩丘陵に残された樹林など、その地域に昔から生息し、今となっては絶滅危惧種となった動植物、昆虫、鳥類等の宝庫である緑を保全する取り組みが重要であると考えています。
 都は、多摩の丘陵地滞の緑地を対象として、条例に基づく保全地域に指定し、その貴重な自然環境の保全に取り組んでおり、地元ボランティア団体などが保全活動に携わっていることを承知しています。しかし、高齢化や、次の担い手がいない団体がふえているため、全ての保全地域の希少種が将来にわたって適切に保全管理されるのかが気がかりであります。
 わずかに残された東京の貴重な生態系を守り、着実に後世に引き継ぐことは、今を生きる我々の責務であることから、保全地域における希少種対策を強力に推進していくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、教育施策について伺います。
 まず、公立学校における非構造部材の耐震化です。
 都は、天井材等の非構造部材の耐震化を促進するため、我が党の要望を受け、非構造部材耐震化支援事業を平成二十五年度から開始して区市町村を支援するとともに、都立学校においても同様の耐震化を進めています。
 引き続き、区市町村の公立学校の耐震化を財政面に加えて技術面でも支援するとともに、都立学校についても取り組みをさらに推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、公立学校の冷房化について伺います。
 児童生徒が暑い時期にも集中して学習に取り組めるよう、我が党はこれまで、優先順位を考慮し、必要性の高い教室から順に冷房化するよう求めてきました。その成果として、まず平成十九年度末に都立高校の普通教室の冷房化を完了し、次いで、公立小中学校についても区市町村への補助を開始し、平成二十五年度末には全ての普通教室が冷房化されました。
 また、本年第一回定例会における我が党の代表質問を経て、都立高校で整備済みの音楽室、視聴覚室、図書室、パソコン教室の四つの特別教室について、今年度から区市町村への補助が拡大されました。
 こうした中、小中高等学校の保護者からは、四つの特別教室以外の理科室や家庭科室などへのさらなる拡大を望む声が上がっており、本年八月、我が党は、三多摩議員連絡協議会で、このことを強く都に対して要望したところです。
 今後も、これまで同様、まず都立高校で冷房化の対象となる特別教室を決定し、その上で、区市町村の意向等を踏まえて、小中学校における冷房化の対象となる特別教室を決定することが、公立学校全体における冷房化の拡大への近道になると考えます。
 そこで、小中高全ての公立学校の特別教室の冷房化を拡大するため、まずは都立高校について対象の特別教室を検討すべきと考えます。また、冷房設備が全ての都立高校に整備されるには時間がかかることから、本格的に整備するまでの間は、各高校の個別の事情に応じた対応を柔軟に行っていくことが必要と考えますが、あわせて見解を伺います。
 最後に、伊豆大島の観光復興について伺います。
 大島が甚大な被害を受けた昨年十月の台風から一年がたとうとしています。この間、都では、応急仮設住宅の建設や瓦れきの撤去、農業用施設や林道の復旧など、さまざまな支援を実施してきました。この結果、災害の傷跡は徐々に回復しつつありますが、大島が真の復興をなし遂げるには、観光業の復活が鍵となります。
 都は、第二回定例会における我が党の主張を受けて、この七月から、早速、宿泊費用の助成を開始いたしました。夏休みの期間中、大島では、この制度を活用して宿泊し、温泉や海水浴を楽しむ家族連れや若者たちの姿が見られたと聞いています。
 しかしながら、観光客はまだ十分には戻っておりません。夏休みは終わりましたが、秋の爽やかな気候に誘われて旅の計画を立てる人も多いはずです。
 引き続き多くの方々に大島を訪れていただけるよう、都はさらなる支援を行うべきと考えますが、見解を伺い質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 相川博議員の一般質問にお答えいたします。
 中央自動車道の渋滞対策についてでありますが、首都圏三環状道路は、整備中の外環道を含め、二〇二〇年には約九割が完成いたします。
 首都圏における高速道路ネットワークの機能を最大限に発揮させるためには、三環状道路の残る区間の着実な整備とともに、既存路線の慢性的な渋滞箇所の対策にも積極的に取り組んでいく必要があります。
 お話の中央自動車道の都内区間は、調布付近において、毎朝、渋滞が発生していることから、先ごろ、高速道路会社より、路肩を活用して車線を付加するなどの対策案が示されました。
 調布付近の渋滞対策は、多摩地域のみならず、オリンピック・パラリンピック開催を控える東京全体において重要であります。国や高速道路会社に速やかな対策の完了を働きかけて、円滑で快適な移動の実現に取り組んでまいります。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、公立学校の非構造部材の耐震化についてでございます。
 学校施設には、児童生徒の安全確保はもとより、地域住民の避難所としての役割が求められており、天井などの非構造部材の耐震化を早急に進める必要がございます。
 都教育委員会は、小中学校について、非構造部材の耐震化に要する費用の補助に加えて、震災被害などから得られたつり天井の危険性や改修方法に関する講習会の実施など、技術的な支援を通して、区市町村による非構造部材の耐震化への取り組みを強く後押ししてまいります。
 都立学校につきましては、地震発生時に重大事故につながるおそれがある体育館の非構造部材を優先し、平成二十七年度までの完了に向け、耐震化を進めております。
 また、体育館以外の施設につきましても、昨年度に実施した専門家による点検結果を踏まえ、計画的に改修工事を実施してまいります。
 次に、公立学校の冷房化についてでございますが、都立高校では、普通教室に加え、特別教室のうち、防音性などが求められる音楽室、視聴覚室、図書室、パソコン教室などについて、冷房化を既に完了しております。
 また、今年度から、都立高校で整備している教室を基準に、小中学校の音楽室などの特別教室について、区市町村が計画的に冷房化を進められるよう、補助事業を開始いたしました。
 今後、都立高校において、いまだ冷房化していない理科室、家庭科室などの特別教室の利用状況などに基づき、冷房化の対象とすべき教室を検討した上で、その結果を踏まえ、小中学校で支援を拡大すべき教室を検討してまいります。
 あわせて、お話の個別の事情がある都立高校への対応につきましても、さまざまな手法を工夫し、教育環境の改善に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長安井順一君登壇〕

〇都市整備局長(安井順一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、高速道路の料金体系についてでございますが、首都圏の高速道路は、複数の会社により管理されていることから、複雑でわかりにくい料金体系となっております。
 このため、都は、関係県市とともに、さまざまな機会を通じて料金体系の見直しを国に求めてまいりました。
 国は、首都圏における高速道路の整備の進捗を踏まえ、都心を通過する車の環状道路への誘導を図ることなどを目指しまして、管理主体を超えたシームレスな料金体系を構築し、平成二十八年度から導入していくこととしております。
 都は引き続き、会社間の乗り継ぎ割引などの検討を国や高速道路会社に働きかけまして、首都圏における一体的で利用しやすい料金体系の実現に取り組んでまいります。
 次に、分譲マンションの管理についてでございます。
 日常的な維持管理はもとより、建てかえなどの合意形成を進めていくためにも、管理組合の役割が重要でございます。
 都はこれまで、マンション管理の重要性への理解を深めるため、セミナーの実施やアドバイザー派遣など、組合を支援し、一定の成果を上げてまいりました。
 しかし、一方で、居住者の高齢化や建物の老朽化とともに、管理への関心が薄れ、行政からの働きかけも困難な組合も少なくございません。
 このため、住宅政策審議会に新たにマンション部会を設置いたしまして、マンションの管理状況に応じた効果的な支援策のあり方などについて、具体的な検討を進めております。
 さらに、耐震化や建てかえを促進する施策についても検討を重ねまして、分譲マンションの円滑な再生を図り、安全で良好な環境を備えた市街地の形成に取り組んでまいります。
 最後に、東京都建築安全条例の見直しについてでございますが、国は昨年、いわゆる違法貸しルームを初めとする建築物につきまして、安全性を確保するため、法令上、寄宿舎として厳格に扱うことといたしました。その上で、内装の不燃化等を条件に、寄宿舎に適用される防火規制の一部を緩和いたしまして、戸建て住宅からグループホームなどへの転用も可能となるようにいたしました。
 都といたしましても、国の改正趣旨を踏まえまして、安全条例において、寄宿舎の敷地に義務づけておりました避難のための空地につきましても、建築規模などに応じて不要とするなど、きめ細かな対応を検討してまいります。
 今後、区市等と連携し、居住環境や安全性の確保を考慮しつつ、新たな住まい方にも対応できるよう基準の見直しに取り組んでまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 自然環境に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、緑施策の総括と現状認識等についてでございます。
 都は、平成十九年度から二十五年度までの七年間に、約六百二十五ヘクタールの新たな緑を創出してまいりました。
 平成二十五年度のみどり率は、都全域で五〇・五%で、前年調査時と比べ〇・二ポイント減のほぼ横ばいの状況でございました。区部で初めて増加に転じるとともに、多摩部も減少幅を大きく縮小しており、これまでの緑をふやす取り組みの成果を示すものと受けとめております。
 都は、先日公表した新たな長期ビジョンの中間報告において、自然環境の保全と創出及び生物多様性の保全を目指すこととしており、引き続き、全庁を挙げて緑の増加策に取り組むとともに、官民による積極的な在来種緑化や保全地域の希少種対策の強化など、緑の質に配慮した取り組みを推進してまいりたいと考えております。
 質、量両面にわたる緑施策を積極的に展開し、水や緑に囲まれ環境と調和した都市の実現を目指してまいります。
 次に、保全地域における希少種対策についてでございます。
 多摩の丘陵部などにあります保全地域は、昔ながらの東京の生態系が残る貴重な場であり、希少種である動植物の適切な保全が重要と認識しております。
 このため、各保全地域において希少種の詳細な生息状況調査を行い、それを活用して、現在、持ち去り等を抑制する保護柵やカメラの設置の試行を実施しております。
 また、樹林地、水辺、湿地等の環境に応じた保全作業についてガイドラインにまとめ、活動団体に周知するとともに、アドバイザーを派遣して、現地で直接、希少種の保全方法についての指導助言を行っております。
 今後、地域住民等、広く都民に保全活動に参加していただく機会を拡充し、活動団体の活性化を図りながら、地域特性に応じてこれらの対策を展開し、全ての保全地域で貴重な生態系をしっかりと後世に継承してまいります。
   〔産業労働局長山本隆君登壇〕

〇産業労働局長(山本隆君) 伊豆大島の観光支援についてでございます。
 大島が本格的な復興を果たすためには、基幹産業の一つである観光産業が活力を取り戻すことが重要でございます。
 このため、都は、昨年十二月から観光キャンペーンを展開するとともに、本年七月からは、一泊三千円の宿泊助成を行うなど、旅行者の来島を促す取り組みを実施しております。
 これに加えまして、新たに十月から、都がツアー経費の一部を負担し、旅行会社と連携して、三原山のハイキングや椿まつりなど、大島の魅力を盛り込んだ割安なパッケージツアーを提供してまいります。
 こうした取り組みを、区市町村や町会、自治会などを通じて広く周知し、大島への旅行者の増加につなげることで、災害からの復興を積極的に後押ししてまいります。

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