〇議長(吉野利明君) 七十七番島田幸成君。
〔七十七番島田幸成君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
〇七十七番(島田幸成君) まず初めに、防災対策についてお伺いいたします。
昨年十月の台風二十六号による伊豆大島の土石流災害や、ことし八月に起きた広島市北部での土砂災害により、土砂災害対策の重要性が増しています。
東京には、自然が豊かな島しょや多摩地域、そして、都心部においても、土砂災害のおそれのある地域が多く見られます。
土砂災害は、ハード対策とソフト対策を効果的に行う必要がありますが、土砂災害の課題として、警戒区域の指定がおくれていることが挙げられます。
報道によると、国は、広島での土砂災害を受けて、警戒区域を指定しやすくする法改正を検討中ということであります。
都は、これらの土砂災害の被害を踏まえ、土砂災害警戒区域の早期指定及び指定を拡充すべきと考えます。
今後、土砂災害対策にどのように取り組んでいくのか、知事の見解をお伺いいたします。
我が選挙区の西多摩地域は、東京都の三分の一を占める広い地域ですが、その七割近くが山間部であり、急峻な地形が多く、土砂災害が今までも多く発生しています。砂防堰堤などのハード対策が行われていますが、十分とはいえません。
広島県での土砂災害では、砂防施設の整備がおくれた箇所で大きな被害が発生したと聞いております。
近年の集中豪雨などの状況を踏まえると、西多摩地域において、ハード対策をさらに進めていくべきだと考えますが、見解を求めます。
東京都は、本年六月に奥多摩町において初めて風水害を想定した防災訓練を行いました。また、都の地域防災計画風水害編も見直されたところです。
伊豆大島での災害の教訓も踏まえ、急な気象状況の変化を把握するシステムの充実や、都と自治体のホットラインの構築、そして迅速な災害派遣要請など、対応を行ってきております。
こうした中、今回の広島での災害でも明らかになりましたが、地域住民が土砂崩れの危険箇所を把握することや、災害が発生した場合の避難方法を確認するなど、万が一に備えた対応が必要です。
今後は、風水害を想定した訓練の実施を通じて得られた成果を検証し、地域の防災意識の向上に努めるべきと考えますが、見解を求めます。
観光施策についてお伺いいたします。
二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京開催が決まり、準備が進んでいます。
開催時には多くの外国人旅行者が訪れます。宿泊施設も都心部にとどまらず、多摩地域の宿泊施設を利用する外国人旅行者も多くいると予想されます。
このような機を捉え、多摩地域の自然や文化を紹介し、今後の多摩振興を充実させることは大変重要なことと考えます。
あきる野市の観光組合では、関連事業者に英会話を教えるなど、各地でも外国人旅行者を誘致、おもてなしをする試みが実施されています。
また、ローマ字のヘボン式表記から英語表記にするなど、都心部では、英語による案内を充実する取り組みが始まっていますが、多摩地域の観光地ではまだまだおくれている現状です。
今後、国際都市東京を進めていく上で、多摩や島しょ地域においても、外国人旅行者を誘致する取り組みを一層進めていくべきだと考えますが、見解を求めます。
また、近年は、登山をする若い女性を山ガールと呼ぶなど、自然に対して、女性も大変関心を持っていると聞いております。
あきる野市五日市では、ガールズキャンプフェスティバルという企画を昨年から実施しています。キャンプというと、一部の自然愛好家が対象と考えられがちですが、女性などの新しい客層を取り込む施策も地域で始まっています。
先ほど例に出した外国人旅行者や女性など、新しい客層を地域に呼び込む施策の後押しを積極的にすべきだと考えますが、都の見解を求めます。
多摩地域には、すばらしい自然資源がたくさんあります。最近は、高尾山に多くの観光客が訪れるほか、西多摩地域には、山岳信仰の対象である御岳山があり、観光客がふえています。
先日、私は、栃木県日光市の湯西川ダムを訪れ、水陸両用のバスがダムの周辺やダムの湖面を遊覧するツアーに参加しました。これは、日光市が地域活性化事業として行っているもので、ツアーは、すばらしい景色を湖畔から、そしてダム湖内から観察し、また、ダムの施設案内など、水資源の大切さをPRするという有意義なものでした。
東京都の奥多摩湖では、奥多摩町との共同施設である奥多摩水と緑のふれあい館の運営や、水道水源林をめぐる遊歩道の整備を初め、PR施設の整備を行っていますが、これらは地域活性化にも有効です。
今後、こうした取り組みに加え、湖面利用、湖畔を徒歩で周遊するための橋梁や歩道の整備により、水道事業のPRをする必要があると考えますが、見解を求めます。
子育て、教育施策についてお伺いします。
子ども・子育て支援新制度が来年度からスタートします。代表質問でもありましたが、国の財政支援が不十分で、また、制度の概要が未定なことにより、一部の認定こども園が新制度への移行を取りやめ、また、大部分の私立幼稚園が現在の私学助成にとどまるとの意向を示しております。
そもそも認定こども園とは、幼稚園と保育園のよいところを取り入れ、質の高いカリキュラム、そして子育て支援を可能にするという高い理想の上に計画されたもので、国の子ども・子育て新制度の最重要施策であります。
しかしながら、国の対応が不十分なことから、多くの施設が新制度への移行に当たり、混乱を来しております。特に、個人立の幼稚園は、移行への機会が今回のみに限られており、不満の声が上がっています。
都は国に対し、対応の改善、財政支援を初め、制度の充実を強く求めるべきですが、見解を求めます。
先日、文部科学省から発表された資料によると、私学助成の水準が高い都道府県においては、新制度に移行する私立幼稚園についても、引き続き私学振興を目的として、地方自治体独自の上乗せ分などの助成を検討すべきとの考えが示されています。
待機児童が特に多い東京については、今までの私学助成を基準とした上乗せを維持しながら、私立幼稚園が認定こども園に移行しやすい環境を整備すべきと考えます。都の見解を求めます。
グローバル人材育成についてお伺いします。
都は、次世代育成事業を通じて、都立高校の生徒を海外に派遣し、これまでさまざまな実績や課題が出てきています。また、私立学校においても、これまで各学校の教育方針に基づき、独自にグローバル人材の育成に取り組んでいます。
こうした取り組みの成果を公立、私立で共有し、課題を議論しながら、東京都全体として、グローバル人材の育成に努めるべきです。
そこで、現在、都教育委員会が実施している、次世代リーダー育成道場の成果を広く普及していくことが重要であると考えますが、見解をお伺いいたします。
最後に、都市外交と教育施策についてお伺いします。
知事は、就任以来、友好都市である北京、ソウルを訪問するなど、積極的に都市外交を行っております。
これまで途絶えていた友好都市との交流を再開し、友好関係の構築に前向きに取り組んでいる知事の姿勢には期待するところであります。
今後、未来に向けて、都市の友好関係を発展させていくのは若者たちであります。知事が訪問先の海外諸都市の大学で講演を行い、若者たちと交流していることも、こうした認識に基づくものと理解をいたしております。
知事は、所信表明で、新たな都市外交の基本戦略を年内に策定するということでありますが、私は、都市外交で築いた各都市との関係を利用し、教育、文化、スポーツなどを通じた若者たちの交流につなげていただきたいと考えております。
今後、姉妹都市で構築した信頼関係をどのように若者たちの交流に発展させていくのか、知事の所見をお伺いし、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕
〇知事(舛添要一君) 島田幸成議員の一般質問にお答えいたします。
まず、土砂災害対策への取り組みについてでありますが、広島の土砂災害は、過去に経験のない局地的な豪雨が深夜に降ったことによるもので、昨年、伊豆大島でも同様の被害が生じております。こうした災害が、またいつどこで起きるかわからないという状況なのであります。
都内には、多摩・島しょ地域を中心に、土石流や崖崩れ、地すべりなど、土砂災害のおそれのある箇所が合わせて一万五千カ所存在しております。
このため、都は、危険箇所が多い地域から順次、土砂災害警戒区域、特別警戒区域の指定を行っております。二〇二〇年までに都内全ての危険箇所の指定を終わらせ、警戒避難体制を整備するなど、ソフト面の対策を進めてまいります。
あわせて、土石流を食いとめるための砂防堰堤や、集落の孤立を防ぐためのバイパスとなる道路の整備など、ハード対策を実施することにより、地域の安全性を着実に向上させてまいります。
今後とも、こうした公助の取り組みを進めるとともに、地元自治体と連携して、自助、共助の力を高めることにより、危機管理を徹底し、災害への備えを万全なものとしてまいります。
続きまして、都市外交を通じた若者たちとの交流についてでありますが、北京やソウルなど訪問先の海外諸都市では、大学で講演を行い、学生と直接交流する機会を持つようにしてまいりました。
学生たちの質問からは、日本のことをもっと知りたいという熱意を感じました。そうした若者たちと、日本の若者たちとの交流の機会をふやし、相互理解を進めていくことが、都市の友好関係を発展させていく上で重要であると考えております。
これまでも都は、首都大学東京に百名以上の留学生を受け入れてきたほか、毎年十都市以上の少年少女が参加するジュニアスポーツアジア交流大会を開催するなど、海外諸都市との交流を行っております。
現在、新たな都市外交戦略の策定を進めているところでありますが、こうした若者たちとの交流についても検討してまいりたいと思っております。
〔教育長比留間英人君登壇〕
〇教育長(比留間英人君) 次世代リーダー育成道場についてでありますが、次世代リーダー育成道場では、一期生百五十人が一年間の留学を修了して帰国し、現在二期生二百人がオーストラリア、ニュージーランド、アメリカに留学しております。
一期生の多くは、留学を通して、英検準一級程度の高い英語力を身につけるとともに、文化の多様性などについて理解を深めました。また、将来の目標として、国際機関で働くことや海外で医療関係の仕事につくことを希望するなど、国際貢献への意欲を高めております。
今後は、中高校生や教員、保護者等を対象に、修了生等をパネリストとしたシンポジウムやフォーラムを開催し、留学した生徒の体験発表等を通して、次世代リーダー育成道場の成果を広く普及し、中高校生の留学機運をさらに高めてまいります。
〔東京都技監横溝良一君登壇〕
〇東京都技監(横溝良一君) 西多摩地域の土砂災害についてでございますが、土砂災害から都民の生命や財産を守るためには、ハード、ソフトの両面から対策を推進することが重要でございます。
ハード対策につきましては、土石流や崖崩れの危険性の高い箇所や、過去に災害が発生した箇所を対象に順次整備を進めており、急峻な斜面の多い西多摩地域では、現在、檜原村の藤原地区で、崖崩れを防ぐのり枠工を施工するなど、十二カ所で事業を実施しております。
引き続き、守るべき施設の重要性や地元要望などを踏まえ、整備を推進するとともに、ソフト対策として、土砂災害警戒区域等の指定により、警戒避難体制の整備を促進してまいります。
今後とも、関係自治体と連携し、土砂災害対策に積極的に取り組んでまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕
〇総務局長(中西充君) 風水害対策訓練による地域防災意識の向上についてでございますが、都では、今年度から住民参加型の防災訓練を季節ごとに年四回実施することとし、六月に都として初めてとなる風水害対策訓練を、土砂災害警戒区域八百九十カ所を有する奥多摩町と合同で実施いたしました。
訓練後、奥多摩町からは、全ての自治会が避難訓練や避難所開設訓練に参加したことで、町民に広く水害等の備えについて意識啓発が図れたなどの報告があり、都といたしましても、今回の住民参加型の訓練が地域防災にかかわる意識の向上に貢献したものと考えております。
都は、これらの成果を踏まえ、今後とも区市町村と連携し、住民主体の実践的訓練を通じて、風水害対策への意識が地域に広く浸透していくよう取り組んでまいります。
〔産業労働局長山本隆君登壇〕
〇産業労働局長(山本隆君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、多摩・島しょへの外国人旅行者誘致でございます。
多摩・島しょは、旅行者を引きつける豊かな自然や、その土地ならではの文化など、さまざまな観光資源に恵まれており、東京の観光振興を図る上で欠かすことのできない地域でございます。
都は、現在、東京の観光公式サイトにおいて、多摩・島しょの見どころや交通機関の利用方法など、旅行に必要な情報を多言語で発信しております。また、地域が行う多言語での観光マップ作成や観光案内板設置などの取り組みを支援しております。
今後も、より多くの外国人旅行者が訪れるよう、さまざまな角度から方策を検討し、美しい自然や地域に伝わる郷土芸能など、多摩・島しょ地域ならではの魅力の発信に努めてまいります。
次に、観光振興に取り組む地域への支援についてでございます。
魅力ある観光資源を生かし、地域が取り組む、より幅広い層からの旅行者誘致を支援することは重要でございます。
都では、地域の実情に詳しい観光協会等のアイデアと、これを実現するための具体的なノウハウを持つ民間事業者とを結びつけ、秋川渓谷の女性向けキャンプフェスティバルや、青梅のカヌーやゴムボートを使った川下り体験など、新しい客層を呼び込む地域の取り組みを後押ししております。
今後とも、地域の観光振興を効果的に支援し、幅広い旅行者の誘致につなげてまいります。
〔水道局長吉田永君登壇〕
〇水道局長(吉田永君) 小河内貯水池、いわゆる奥多摩湖における水道事業のPRについてでありますが、水道局では、奥多摩湖が都民の飲料水を確保する上で貴重な水源であることなどを理解していただくため、奥多摩町と共同で、奥多摩水と緑のふれあい館を設置運営しております。
また、湖畔周辺には、奥多摩湖いこいの路や水源地ふれあいのみちを、さらに、ダム堤体部には展望塔を整備してまいりました。奥多摩水と緑のふれあい館には、毎年約二十万人が訪れるなど、これらの施設は、既に多くの都民に親しまれております。
都民の貴重な水がめである奥多摩湖は、一度水質が悪化すると回復しにくいという特徴があり、湖面利用につきましては、水質保全の面で困難であると考えております。
今後も、これまで同様、湖畔周辺施設の整備について、地元の関係者と調整しながら検討し、水道事業のPRに努めてまいります。
〔生活文化局長小林清君登壇〕
〇生活文化局長(小林清君) 子ども・子育て支援新制度に関する二点のご質問にお答えいたします。
まず、子ども・子育て支援新制度に関する国への要望についてであります。
新制度への移行に当たっては、私立幼稚園がみずからの意思と正しい情報に基づき、保護者や地域の状況等を踏まえて、移行の判断が的確にできるよう支援することが必要であります。
しかし、各園にとって重要な判断材料となる施設型給付の水準や区市町村による利用調整など、新たな運用上の取り扱いなどに関する国からの情報が不足しております。
都はこれまでも、国の財源確保や新制度施行後の運用上の取り扱いについて、速やかな情報提供を行うよう、緊急要望も含め複数回にわたり国に要望してまいりました。
新制度への円滑な移行は、まずは国の責任において図るべきであり、今後も引き続き、国に強く求めてまいります。
次に、認定こども園に対する都の上乗せ支援策についてでありますが、子ども・子育て支援新制度は、幼児期の学校教育、保育、地域の子育て支援の量の拡充と質の向上を総合的に進めることを目的として国が創設したものでありまして、その実施に当たっては、消費税増収分による財源も含め、追加の恒久財源を確保することとしております。
したがいまして、先ほどご答弁申し上げたとおり、新制度は財源確保も含め、まずは国の責任において円滑移行を図るべきものであります。
都といたしましては、今後も国に対し、公定価格の見直しを強く求めていくとともに、新制度施行後も私立幼稚園が質の高い幼児教育を行うことができるよう、必要な対策を検討してまいります。
〇副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
午後三時二十五分休憩
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