平成二十六年東京都議会会議録第十三号

〇議長(吉野利明君) 四十六番近藤充君。
   〔四十六番近藤充君登壇〕

〇四十六番(近藤充君) 今、お隣の韓国、仁川で行われているアジア大会では、二〇二〇年オリンピックに向けた若きアスリートたちが、連日、全力で頑張ってくれています。心から各選手たちの健闘を祈りたいと思います。
 それでは、まず、危険ドラッグ問題についてお尋ねいたします。
 東京を世界一の都市にする、そして都民の生命財産を守る、これが私たち都議会自民党の政策目標であります。世界に誇る東京の警視庁の努力によって、交通事故による死傷者も、二十五年統計では十三年連続の減少を見ており、すばらしいことだと思います。交通事故による犠牲者を減らすこと、今後とも頑張っていただきたいと思います。
 さて、最近、危険ドラッグという厄介なものが若者を中心にちまたに蔓延し、覚醒剤のように売人経由で手に入れるのではなく、繁華街のどこにもその店舗を構えられ販売できて、また、インターネットを使っても、簡単に入手できるというとんでもない代物が出回ってしまいました。
 現在、検挙された危険ドラッグ乱用者の約二割がインターネットを利用して購入している状況もあり、青少年を含め、適切な対応が求められております。
 過去に同様の麻痺効果、攪乱効果を目的として、シンナーやトルエンが使われた時代がありました。各自治体の行政の指導や塗料販売業の協力もあり、青少年が入手しにくくなりました。
 でも、危険ドラッグは違います。お金さえ持っていれば、いつでも簡単に安価で手に入れることができます。平成二十四年、二十五年と危険ドラッグ使用が疑われる都内の緊急搬送件数もふえていると聞きます。
 先日も、テレビ番組「密着二十四時」という番組の中で、深夜の六本木や渋谷で危険ドラッグを吸引し、捜査員によって危険ドラッグの使用が発覚し、連行されていくという実態が報道されていました。このままでは、いたいけない判断力の弱い青少年が大人の悪の餌食となってしまいます。青少年の健全育成を推進する東京都としては、黙って見ていてはなりません。
 東京には、東京都青少年の健全な育成に関する条例があります。最新の改正では、有害図書を排除することを目的として、平成二十二年に行われました。青少年の保護に関する都や保護者の責務などが定められています。都の責務として、有害図書と同様に、危険ドラッグから、いいかえれば大人の魔の手から青少年を守る必要があると思います。
 そこで、青少年の健全育成を所管する青少年・治安対策本部は、危険ドラッグから青少年を守るため、どのような取り組みをしているのか、まず伺いたいと思います。
 次に、都としても、販売店舗に対して立入検査等を実施し、当該品の販売中止等を指示したり、国と連携し、指定薬物と疑われる物品を販売していた店舗に対し、検査結果が明らかになるまでの間、販売停止命令を行ったものの、残念ながら、その魔の手は完全にはとまらないように思います。
 危険ドラッグの影響によると思われる運転者の車の事故が絶えません。警察庁が発表した全国の検挙件数は、二十五年には三十八件、二十六年、ことしは既に三十三件であります。
 危険ドラッグによる運転事故により何人の被害者が出たのでしょうか。被害者が出なくなるのはいつになるのでしょうか。もし、私の家族が危険ドラッグによる興奮作用で車にひかれたとしたら、とても加害者を許す気持ちにはなれません。行政の皆さんだって同じ気持ちだと思います。
 兵庫県では、販売されるドラッグの成分を問わず店に規制をかけ、販売しにくいという状況をつくる条例を制定するそうであります。
 危険ドラッグの取り締まり強化について、都の即効性、有効性を考慮した今後の対応、考え、ご所見を伺いたいと思います。
 同時に、警視庁の今後の取り締まり強化においても、東京を世界一の都市にするため、危険ドラッグや犯罪撲滅にあらゆる法令を駆使して取り締まり、ぜひとも根絶に向け全力で当たっていただきたい旨、強く強く要望しておきます。
 次に、教育行政、道徳についてお尋ねいたします。
 先ほど、我が党のきたしろ議員の質問にもありましたように、私も小中学校における道徳教育の重要性を強く感じています。そして、道徳教育を推進するためには、学校は定められたことをただこなすだけでなく、本気で子供たちのことを考え、創意工夫をし、全力で取り組む姿勢を持ってもらいたいと思います。
 文部科学省は、本年度から全国の小中学生一人一人に道徳教育用教材として、「私たちの道徳」を無償配布いたしました。そして、この「私たちの道徳」が学校だけでなく、家庭でも活用できるよう通知をしています。
 ところが、ある民間の調査によれば、必ずしも十分に活用されていない現状があることがわかりました。なくすと困るからといって授業後に回収して教室に保管をし、夏休みになって何の指導もなくただ持ち帰らせるだけ。こうした指導では、有効活用はできません。
 道徳教育は、家庭と連携して行われるものであります。私は、ぜひ保護者にも目を通してほしいと思いますし、日本のよき伝統文化として、世界に誇る日本人の道徳観がどのようなものなのか、若い世代の保護者にも、いま一度、子供たちと一緒に考えてほしいと思っています。
 そうした道徳教育の環境づくりに向けた学校の取り組みを推進するためには、都教委の一歩踏み込んだ指導が必要と考えます。都教育委員会が「私たちの道徳」の活用を一層進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 あわせて、私は、道徳の教科化に期待をしています。正規の教科でないから、教員は真剣にならないといわざるを得ません。学習指導要領の見直しを早期に実施させ、本来の教科にすべきというのは、我が党の要望でもあります。
 そこで、道徳の教科化に向けた国の動向と都教育委員会の取り組みについて伺いたいと思います。
 新たな文化ビジョンの策定についてお尋ねいたします。
 さきの所信表明において、知事は、文化ビジョンを策定することを発表いたしました。東京が世界一の都市となるためには、文化においても世界一となることが必要であり、東京オリンピック・パラリンピックを成功に導くためにも、今ここで文化戦略を打ち出すことの意義は大であると考えます。
 東京は、多彩な文化に満ちた都市であります。能や狂言、茶道、華道といった日本人の精神性に裏打ちされた伝統文化が今日に至るまで脈々と息づいているだけでなく、諸外国のさまざまな芸術文化も受け入れ、融合し、独自の文化を生み出しています。
 伝統と現代の共存は、驚くべき多様性として、世界に誇る我々東京の文化であります。
 文化ビジョンの策定に当たっては、世界に向けて誇るべき東京独自の文化を発信するとともに、小さな施策の列挙ではなく、今後の道しるべとなるべき文化政策の大きな方向性や哲学を打ち出す必要があると思いますが、知事のご所見を伺いたいと思います。
 関連して、文化施設のネットワーク化の推進についてお尋ねいたします。
 芸術文化の面でも、東京を世界で一番の都市にするためには、東京の持つ文化資源をもっと有効に活用するべきであると考えています。
 例えば、パリでは、世界に知られたルーブル美術館やオルセー美術館などの発信力を生かして、世界中から観光客を集めています。
 一方、東京には、日本における伝統文化から最先端の文化まで、区市町村や民間の施設も含め、多様で魅力的な美術館、博物館等の文化施設が数多く集積しています。
 今後、オリンピックを契機として、都立文化施設が中核となって多くの文化施設が連携して、東京の多様な魅力を発信するための取り組みを積極的に進めるべきと考えますが、ご所見を伺いたいと思います。
 次に、環境行政における安心・安全についてお尋ねいたします。
 東京には、年間二百七十万人もの観光客が訪れる高尾山や都内最高峰の雲取山など魅力的な山々があり、多くの都民がハイキング、自然観察、本格的な登山などを楽しんでいます。また、最近では、登山道や遊歩道を走るトレイルランニングを楽しむ人たちがふえております。山の中でカラフルなシャツを着て走るランナーを見かけるようになりました。
 先日、このトレイルランニングを取り上げたテレビ番組が放映されましたが、多摩地域では、都心から近いため多くの大会が開催されており、参加者が千人を超えるものも珍しくないとのことでありました。多くの人が訪れてくれることは地域振興にもつながるため、地元にとっては大変歓迎すべきことであります。
 しかし、一度に千人を超えるランナーが狭い山道を走るとなると、接触や転落など大きな事故が起きたり、自然への過剰な負荷が生じたりといった問題も看過できないと感じました。接触事故による外傷の報告はあるものの、幸いなことに緊急搬送にまでは至っていないとのことであります。大事になる前に、早いうちに対応策を講じる必要があると考えます。
 そこでまず、トレイルランニングに対し、都の現状認識や対応状況についてご所見を伺いたいと思います。
 今後、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを契機として、国内外から一層の観光客の増加が見込まれる中、自然公園を訪れる全ての方々が安心して、それぞれの楽しみ方で利用できる環境を整えることが重要だと考えます。必要であれば、八王子では、トレラン向けの用地提供には協力させていただきたいとのことであります。
 近年、トレイルランニングは全国的な広がりを見せており、特に大会開催時の自然環境への影響やほかの利用者とのトラブル等を懸念し、国もルールづくりを進めていると聞いていますが、都は利用実態を踏まえ、独自に具体的なルールづくりを率先して進めるべきと考えます。
 都のご所見を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 近藤充議員の一般質問にお答えいたします。
 文化ビジョンの策定についてでありますが、東京を世界一の都市にするためには、都市の価値を構成する重要な要素に芸術文化を位置づけ、その価値を高める文化面での世界戦略が必要であります。
 そのため、このたび二〇二〇年大会の文化プログラムはもとより、今後十年を見据えた東京の文化政策における道しるべとなる文化ビジョンを策定することといたしました。
 このビジョンでは、伝統文化から最先端の芸術文化に至る多様性に満ちた東京独自の誇るべき文化の振興策とともに、文化政策が都市づくりや産業振興の一翼を担い、東京の成長を牽引することなど、大きな方向性を打ち出してまいります。
 さらに、東京の芸術文化戦略を世界に示すために、このビジョンを海外向けの都市広報を活用して、世界に向けて発信いたします。
 今後、都議会や民間文化団体などの意見も十分に踏まえた上で、未来を先取りする文化ビジョンを策定してまいります。
 そのほかの質問については、教育長及び関係局長から答弁させます。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、「私たちの道徳」の活用についてでありますが、現在、東京都の全ての公立小中学校では、国が作成した教材「私たちの道徳」を授業で活用するとともに、家庭に持ち帰り、学習するよう子供に指導しております。
 また、都教育委員会は、道徳教育の充実を図るため、本年八月、小中学校の道徳教育推進担当の教員を対象に、国や都の教材を活用した具体的な指導法に関する研修を実施いたしました。
 今後、こうした教材を、道徳授業を初め、教育活動全体で効果的に活用するための指導計画例を示すとともに、授業で学習した内容について、子供が保護者と話し合う取り組みの実践事例を紹介するなど、区市町村教育委員会と連携して、「私たちの道徳」の活用を一層推進してまいります。
 次に、道徳の教科化についてでありますが、中央教育審議会の道徳教育専門部会は、道徳を特別の教科として位置づけ、授業は原則、学級担任が担当することなどを盛り込んだ答申案をまとめました。
 都教育委員会は、今後の国の動向を注視するとともに、道徳教育の重要性を踏まえ、三年間で都内全公立小中学校の道徳授業の核となる教員を養成する講座を今年度から開始いたしました。
 今後は、この講座を修了した教員が校内で指導助言をすることで、全ての教員の指導力を向上させ、学校の組織的な取り組みを推進するなど、区市町村教育委員会と連携して、道徳教育のさらなる充実を図ってまいります。
   〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(河合潔君) 危険ドラッグから青少年を守る取り組みについてでありますが、ご指摘のように、危険ドラッグは、青少年でもインターネットを利用して容易に入手できる状況にあります。このことから、危険ドラッグの販売など、有害情報が青少年の目に触れないようにすることが重要であります。
 そこで、インターネット上の有害情報を排除する青少年健全育成条例の規定を活用して、携帯電話やスマートフォンを購入する青少年や保護者に対し、フィルタリング加入への勧誘を事業者に義務づけております。
 さらに、インターネット適正利用を支援するファミリeルール講座を保護者や生徒等を対象に実施し、青少年を危険ドラッグから遠ざける環境を整えておりますほか、関係各局の関連イベントの際、リーフレット等を配布するなど、今後とも危険ドラッグの排除に努めてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 危険ドラッグの取り締まり強化についてでございますが、都はこれまで、危険ドラッグの流通実態調査や買い上げ調査を行い、未規制薬物を条例に基づき速やかに規制するとともに、国や警視庁等と連携しながら、立入調査や合同捜査を実施してまいりました。
 また、本年八月には国と連携し、指定薬物と疑われる物品が見つかった店舗への販売停止命令を行うとともに、今月から無承認医薬品としての取り締まりも開始いたしました。
 さらに、インターネット上での監視強化や、プロバイダーへのホームページの削除要請、宅配事業者への自粛要請など、さまざまな対策を実施しております。
 本定例会には、これまで以上に迅速かつ効果的な取り締まりができるよう、規制強化のための条例の改正案も提出しており、今後とも、国や警視庁等と連携して、危険ドラッグの取り締まりを一層強化してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 文化施設のネットワーク化の推進についてでありますが、東京が海外の文化都市との競争の中で文化の発信力を強化していくためには、東京の有力な文化資源である国公立、民間の文化施設が連携し、より大きな力を発揮することが必要であります。
 既に上野地区におきましては、世界に認知される文化拠点を目指すため、上野「文化の杜」新構想推進会議が設置され、美術館や博物館、教育機関の連携協力による取り組みが始まっておりまして、都としても、その推進を図るため、重要な役割を担う都立文化施設が検討に加わっております。
 さらに、オリンピック・パラリンピックの開催に向けましては、案内表示の多言語化や夜間の開館時間の延長、新たな共通パスポートの導入が不可欠であり、そのためには文化施設のネットワークの構築とその活用が急務であることから、先般、都が中心となりまして、首都圏の名立たる美術館、博物館の館長にお集まりいただき、意見交換を行ったところでございます。
 今後は、首都圏の文化施設に対して幅広くネットワークへの参加を呼びかけ、文化施設の連携強化や、世界に向けた発信力向上のための方策の具体化に取り組んでまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 自然公園に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、トレイルランニングに対する現状認識等についてでございます。
 多摩地域の自然公園では、日常的に個人ランナーを見かけるほか、大会も年々増加し、今年度は十六の大会が予定されるなど、トレイルランニングは、新しい自然公園の楽しみ方として定着してきているものと認識しております。
 一方、ハイカーなどからは、登山道での危険な追い抜きや大会開催時の渋滞への苦情が寄せられたり、接触事故が起きかねない状況も一部に見られるようになってきております。また、登山道のはみ出し走行による周辺植生へのダメージなど、自然環境への影響も懸念されております。
 このため、都は現在、大会等の開催情報の把握に努め、主催者に安全管理の徹底を促すとともに、東京都レンジャーが現地で直接大会開催状況を確認したり、個人ランナーに対して指導や利用マナーの啓発などを行っております。
 次に、都独自のルールづくりについてでございます。
 都は、自然公園の安全で適切な利用を確保する管理者としての責務等に鑑み、トレイルランニング大会などについて、ご指摘のとおり一定のルールを定めることが必要と認識しております。
 このため、七月に自然公園の専門家等で構成する検討委員会を設置し、国の検討内容との整合を図りつつ、新たな利用と保護のあり方についての検討に着手をいたしました。この委員会では、利用の多様化に応じたマナーのあり方、大会実施に係る事前相談やコース設定、ランナーの誘導方法、一般利用者等への周知方法などの具体的なルールについて議論をしております。
 今後、地元の関係者や市町村、観光協会等から意見をお聞きするとともに、パブリックコメントを行い、今年度内にルールを策定し、さまざまな利用者が安全かつ安心して、おのおのの楽しみ方を享受できる環境づくりを進めてまいります。

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