平成二十六年東京都議会会議録第九号

〇副議長(藤井一君) 十二番小松久子さん。
   〔十二番小松久子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇十二番(小松久子君) 都議会生活者ネットワークを代表して質問いたします。
 初めに、子供政策について伺います。
 いじめ、虐待、犯罪被害など、子供を取り巻く痛ましい事件が後を絶ちません。一九八九年の国連総会で採択された子どもの権利条約は、世界中の子供の人権が尊重され、子供が主体的に生き生きと暮らせるよう、子供の権利を保障する国際規約です。日本では、その五年後に批准されました。
 ことしは批准二十周年に当たりますが、子供を取り巻く環境は厳しい状況であり、条約の理念は生かされていません。子どもの権利条約の趣旨や理念を踏まえ、子供一人一人が大切にされる社会の実現に向けて取り組みを進めていくことが必要だと考えます。知事の所見を伺います。
 子供の権利を擁護するための第三者機関として、二〇〇四年四月から実施された子供の権利擁護事業は、子供からの電話相談、メッセージダイヤル、専門員による事例の調査・調整活動という三つの活動を行ってきました。学校の先生や親にも相談できないことを、子供みずからSOSを発信できる仕組みとして高く評価するものです。
 そこで、今後この事業を強化するとともに、教育庁との連携が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 このたび、いじめ総合対策やいじめ防止対策推進条例が示されました。しかし、いじめは見えにくく、学校での発見はなかなか難しい状況です。道徳教育や生活指導などでの対応では、いじめの問題を解決することは困難であり、子供自身の自己救済力を育成することが大切です。
 そのためには、子供を必ず受けとめ、救済するセーフティーネットの仕組みが担保されていなければなりません。子供がアクセスしやすく、子供の視点に立ち、相談、調査、調停の機能と権限を持った公的な機関が必要です。学校外で、児童生徒がいじめについて第三者的機関などに相談できるようにすべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
 さて、舛添知事が所信表明で再生可能エネルギーの利用割合二〇%を実現していくことを改めて述べたことに、大いに期待しています。再生可能エネルギーをつくり出す取り組みについては、都内でも多摩地域などにおいて、市民が行政と連携して取り組むコミュニティ電力が注目されており、地域に根差した新たな産業とも呼べる市民発のソーシャルビジネスが活発に動き出しています。
 新たな多摩のビジョンにも、エネルギーの地産地消が示され、再生可能エネルギーは、太陽光だけでなく、森林を生かしたバイオマスや、河川、用水路を生かした小水力発電も、エネルギーをつくり出す大きな可能性があると考えます。
 このため、区市町村がNPOなど市民団体と取り組む再生可能エネルギーの普及拡大に向けた事業を積極的に支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、ことし日本は障害者権利条約を批准し、障害者の社会参加がますます促進することが期待されています。
 ところが、先日、夫が突然車椅子生活になった女性から、外出で電車利用のとき、子供用ボタンで切符を買うことに大変驚いたという話を聞きました。障害者が介護者同伴で公共交通を利用する場合に運賃が半額になる制度は、窓口で障害者手帳を提示して切符を購入することになっています。その後、自動券売機で購入した子供用切符でも代用できるようになりましたが、大人の障害者が子供のボタンしか選択できないことは問題です。
 関西では、私鉄各社で券売機に障害者割引ボタンを設置しており、東京でも、りんかい線に設置されています。福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルの二〇〇〇年版には、誘導基準に、券売機に障害者割引ボタンを設置するとありました。
 都は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催都市として、ユニバーサルデザインの視点に立ったまちづくりを充実させていく必要があります。
 障害者割引ボタンについては、国のバリアフリー法ガイドラインにも書かれており、現在見直しがされている福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルに入れるべきと考えます。見解を伺います。
 次に、昨年日本を訪れた外国人旅行者は一千万人を初めて突破し、言葉や文化の違いを踏まえた受け入れ環境の整備が必要ではないかと思います。
 例えばトイレの使い方です。東京は、公衆トイレや店舗で気軽に貸してくれるトイレが町なかに点在し、しかも、清潔で安全な都市として外国人旅行者に大人気だといわれていますが、トイレの使い勝手がわからずに、困った顔で出てくる外国人旅行者に出くわすこともあります。オリンピック・パラリンピックを契機として、誰もが気持ちよく使えるトイレについて、一定の条件のもと、おもてなしトイレとして認定することで、東京の魅力にさらに磨きをかけることができると考えます。
 また、多くの外国人旅行者が日本に来て困ることは、外国語の案内表示の不足や内容の不統一により、目的地までのルートがわかりづらいことだと聞いています。
 今後、観光都市東京をさらに魅力あるものにするためには、こうした旅行者が戸惑うことなく町歩きができるよう、外国語の案内表示の充実や統一を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 続いて、造成宅地の安全性についてです。
 多摩地域では、グラウンド整備などのために谷を埋め立てる計画が出ており、盛り土の安全性に対する市民からの相談が寄せられています。近年ふえているゲリラ豪雨や地震によって、自宅が災害に遭うのではないかと心配する市民は多く、自分が住んでいる土地の履歴を知ることは重要です。
 都は、大規模盛り土造成地マップを公表しましたが、土砂災害警戒区域の指定や液状化予測図と重ねて、総合的な防災地図となることを期待しています。
 災害防止に関するさまざまな情報が出ていますが、今回、大規模盛り土造成地マップを公表した目的について伺います。
 また、知事の認可、許可を受けた大規模盛り土造成地は、造成工事の際に所定の安全性が確保されているとのことです。この所定の安全性の確保とはどういうことか伺います。あわせて、マップの公表後の都民の反応についても伺います。
 最後に、都市計画の提案制度について伺います。
 外環道は、二〇一二年三月、地下化で工事が始まりましたが、地上部には外環ノ2が都市計画決定されたまま残り、地域を分断する道路整備が進むことに異議を唱える都民がいることを忘れるわけにはいきません。
 都市計画の変更については、市民側から提案できる制度が都市計画法にあり、都は、その手続を定め、広く広報しています。この制度を使って、杉並区内の地権者の八割近くに及ぶ百十六人の賛同署名をもって、外環地上部街路、外環ノ2の一部分の廃止を求める都市計画提案書が提出されました。二〇一一年十二月から、提案書に関する担当課からの指摘に対しては、再三にわたり折衝し、求められた書類を整えて提出しましたが、いまだに正式な受理がされていません。この間に、外環ノ2建設事業は既に一部着工し、廃止を求める市民の提案は放置状態となっています。
 都は、このような都民の提案に対してどのような対応をとってきたのかお伺いして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 小松久子議員の一般質問にお答えいたします。
 子供を大切にする社会の実現についてでございますが、全ての子供は日本の未来であり、宝であります。その健やかな育ちを支えることは、行政はもとより社会全体の責任であります。
 子供は、生まれ育つ環境をみずから選択することはできません。だからこそ、与えられた環境によって将来が決定されることなく、全ての子供が望む進路を主体的に選択できる環境を整えていくことが必要でございます。
 都は、こうした考えに立ちまして、次世代育成支援東京都行動計画を定め、これまでさまざまな施策を展開してまいりました。
 今後とも、東京の将来を担う子供たちが個性や創造力を伸ばし、次代の後継者として健やかに成長するよう、行政、地域、民間の力を合わせ、社会全体で子育てを支援する取り組みを進めてまいります。
 そのほかの質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁させます。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 学校外のいじめの相談機関についてでありますが、いじめの背景や原因は複雑多様化していることから、学校だけでなく、専門家などの外部人材の協力を得て解決を図る必要があります。
 このため、都教育委員会では、二十四時間対応のいじめ相談ホットラインを開設するとともに、子供家庭総合センターにおける教育相談センターで、電話相談や来所相談を受けております。また、児童相談所や警視庁少年相談室などさまざまな関係機関におきましても、いじめに関する相談に対応しております。
 都教育委員会は、今後とも、これら相談機関の連絡会を開催いたしますとともに、相談窓口の電話番号を記載した紹介カードを配布するなど、子供の声を受けとめ、いじめの早期発見、早期対応ができる体制の充実を図ってまいります。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、大規模盛り土造成地マップの公表の目的についてでございますが、国は、総合的な防災対策の一環として、三千平方メートル以上の広さの盛り土による造成地について、おおむねの位置を示す地図の作成を地方自治体に呼びかけ、都ではこれを受け、都内全域を対象とした地図を作成し、本年三月末に公表したところでございます。
 このマップは、宅地所有者などに身近な大規模盛り土造成地の存在を知らせることにより、地域の防災意識を高めてもらうことを目的としております。
 次に、大規模盛り土造成地における所定の安全性についてでございますが、知事などの許可や認可を受けている大規模盛り土造成地では、都市計画法や宅地造成等規制法などに定められた技術的基準に基づき、盛り土に対する設計時の審査や完了時の検査を実施しております。
 こうしたことから、マップには、所定の安全性が確保されていると記載してございます。
 次に、マップ公表後の都民の反応についてでございますが、このマップを公表したところ、多くの方から問い合わせをいただいております。
 具体的には、マップの見方や内容に関するお尋ねのほか、自己の所有地が許認可を受けている造成地か否かの確認や、近隣にある擁壁の変形、ひび割れに関する個別の相談もございました。それらの問い合わせに対しまして、都は、パンフレットなどを活用し技術的な説明を行うなど、きめ細やかな対応をしてきております。
 引き続き、都民への情報提供などを積極的に行い、防災に対する意識啓発に努めてまいります。
 最後に、外環の地上部に計画されている道路の都市計画提案についてでございますが、都市計画の提案につきましては、都市計画の決定、変更を求めることとなるため、都は規則に従い、都市計画の内容、理由書、区域を明らかにする図面、都市の環境や機能が確保できることを示す資料などの提出を求めております。
 お話の提案につきましては、平成二十三年八月に相談があり、その後、都は継続して打ち合わせを重ねてまいりました。本年四月、提案者より都市の環境や機能についての補足説明資料が提出され、都は、現在、この提案が要件を満たしているか確認しているところであり、引き続き適切に対応してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、子供の権利擁護専門相談事業についてですが、都は、平成十六年度からこの事業を開始し、子供や親からの悩みや訴えを相談員がフリーダイヤルで直接受けるとともに、深刻な相談には、弁護士などの専門員が学校や関係機関を訪問して調査を行うなど、教育部門とも連携しながら、迅速かつ適切な支援を行っております。
 また、教育委員会や学校等の協力を得て、都内の小学校四年生、中学一年生、高校一年生の全員を対象に、電話相談PR用カードを毎年配布しております。
 今後とも、教育部門などの関係機関と連携しながら、子供の権利擁護専門相談事業を実施してまいります。
 次に、自動券売機への障害者割引ボタンの設置についてですが、現在、多くの鉄道事業者では、関係団体等からの要望を踏まえ、障害者割引の方法の一つとして、自動券売機で購入した小児乗車券を代用する方式を取り入れております。
 また、このほかにも、改札窓口で障害者手帳を提示して割引乗車券を購入する方法や、ICカードを利用して降車駅で精算する方法など、各鉄道事業者において障害者に配慮したさまざまな割引の方法がとられているところでございます。
 そのため、福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルにおいて、障害者割引ボタンの設置を、一律に望ましい基準として示すことは考えておりません。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 再生可能エネルギーの普及拡大についてでございますが、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大を図っていくためには、区市町村が多様な民間団体等と連携し、地域の特性に応じて取り組むことも重要でございます。
 都は現在、区市町村が事業者団体やNPOなどの民間団体と連携して取り組む太陽エネルギーや木質バイオマスなどの再生可能エネルギーの利用拡大に対して支援を行っております。
 今月三日には、再生可能エネルギーの利用割合二〇%の実現を目指し、エネルギーの専門家や民間事業者から成る再生可能エネルギー拡大検討会を立ち上げたところであり、都内外での導入拡大に向け、さまざまな観点から官民が連携して取り組みを進めてまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 外国語の案内表示についてのご質問にお答えいたします。
 東京を訪れる外国人旅行者が迷うことなく安心して町歩きができるよう、表示、標識等の多言語対応を進めることは重要であります。
 このため、都は、外国人旅行者が滞在中の移動に必要な情報を提供するため、案内サイン標準化指針を策定し、区市町村や鉄道事業者に対する普及啓発に取り組んでまいりました。今年度は、表示、標識等の統一性や視認性の向上を図るため、指針の改定を行います。
 今後とも、国や民間団体などとも連携し、表示、標識等の多言語表記の充実とわかりやすさの向上に取り組んでまいります。

〇議長(吉野利明君) 以上をもって質問は終わりました。

ページ先頭に戻る