平成二十六年東京都議会会議録第九号

〇副議長(藤井一君) 二十九番塩村あやかさん。
   〔二十九番塩村あやか君登壇〕

〇二十九番(塩村あやか君) 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
 東京オリンピック・パラリンピックのキーワードの一つは成熟都市です。知事も先般の予算特別委員会にて、五輪は単なるスポーツ大会ではなく文明や文化の発信の場と述べられています。
 東京は紛れもなく世界的に見ても成熟した都市です。しかし、その東京といえども成熟しているとはいえない分野があります。その一つが受動喫煙対策です。
 世界各国では、受動喫煙による健康被害は明白であるとされ、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約により受動喫煙対策が進んでいます。一九九〇年以降、アメリカのカリフォルニア州やニューヨーク州などではオフィスはもちろん、レストランやバーでも全面禁煙とする動きが起き、現在ではアメリカの半数以上の州で法律が導入されています。二〇一三年の時点では、世界四十三カ国で屋内禁煙または分煙が実施されています。
 このような世界標準と比べますと、日本、そして東京はおくれている感が否めません。東京オリンピック・パラリンピックが開催される前後には、屋内が全面禁煙になっている国々から多くの選手、関係者、観光客が訪れます。その方々は当然東京の町で観光をし、レストランで食事をするでしょう。そのときどう思うのでしょうか。歩きたばこ禁止条例を導入している区町村もありますが、機能し切っておらず、道を歩けば歩きたばこで受動喫煙、レストラン等でも分煙が徹底されておらず受動喫煙。このような状況で世界の人たちは東京を成熟した都市だと思ってくれるのでしょうか。
 こうした話をすると、飲食店の経営について心配をする声が上がります。日本公衆衛生雑誌にことし三月、大和浩産業医科大学教授らが発表した論文によりますと、日本国内で約二百六十店舗を展開する飲食チェーンで一部店舗について全面禁煙または分煙をした結果、全面禁煙化した店舗は営業収入が減らなかったばかりか増加をしていたとのこと。
 海外では飲酒の比率が高いパブやレストランの一部では売り上げが落ちたという報告もありますが、法律、条例導入に伴って海外でも同様の調査が行われ、WHOは飲食店等のサービス産業を全面禁煙とする法律、条例は営業収入を悪化させなかった、むしろ増加させたと報告しています。
 さて日本では、神奈川県、兵庫県で全国に先駆けて受動喫煙防止条例が制定をされました。できれば東京も世界標準の受動喫煙対策をとるために条例制定が望ましいと考えますが、一足飛びに屋内の全面禁煙の実施や完全分煙に踏み込むのにも課題が多いはずです。
 ですが、東京に住む人、世界各国から訪れた人が受動喫煙の被害に遭わぬよう、屋内施設や飲食店などが禁煙なのか分煙なのか、または喫煙可なのか、全ての方にわかりやすいマークを表示するなど、屋内外の受動喫煙防止対策を図り、周知していくべきです。厚生労働大臣も務められた知事に所見を伺います。
 続きまして、日本が後進国だといわれているもう一つの分野、動物愛護についてお伺いをいたします。
 東京は生体販売を行うペットショップの数が日本国内で最も多く、そのビジネスを支える子犬、子猫の競り市を少なくとも七軒、近隣県に抱えています。環境省の調査によりますと、そこで売買されている犬は八週齢未満が九三%、幼い犬猫はとても愛らしく消費者の衝動買いを誘っています。
 欧米では動物福祉と社会化の観点から生体販売業者に対して、八週齢規制や展示規制が行われています。そのため、ペットショップの店頭では生体販売が行いにくく、そのため殺処分がほとんどない、または行われていません。
 日本では昨年施行された改正動物愛護法で八週齢規制に附則がついてしまい、欧米では当たり前の八週齢規制が有名無実化してしまっています。
 海外の方が日本の、東京のペットショップを見たら驚くはずです。日本のペットショップが行っている生体販売ビジネスの仕組みは、世界的な潮流である動物福祉という考え方に全く逆行するものだからです。
 知事は、殺処分の一因をつくっているこのようなビジネスが世界に類を見ない規模で発展をしている日本、東京の状態をどのようにお考えになるのでしょうか。
 東京が成熟をした都市として二〇二〇年を迎えるために、全国に先駆け、ペットショップによる生体販売ビジネスをいかに規制、適正化するのかを論じるときに来ているのではないでしょうか。あわせて見解を伺います。
 続きまして、動物愛護行政についてお伺いをいたします。
 動物愛護と福祉をライフワークとして長年取り組んでいることから、さまざまな相談が来ます。
 一例を挙げますと、先日も都内の某ペットショップがとてもひどいという相談を複数受け、現場に視察に行ってまいりました。
 私の目に映ったのは、ペットショップというより多頭飼育崩壊現場の状態で、店の外にいても悪臭が鼻をつき、ハエが舞い、相当長い期間を経ないと、ここまで劣悪にならないと考えられる環境でした。その中に犬や猫がいました。猫の多くは目やにが付着し、犬小屋の前には黒い物質が固まり、その上に犬がいます。
 ハエのカーテンをくぐり店内に入ると、店内には汚い鳥かごが何段にも積まれており、その鳥かごの中に成長した猫がいます。下の金網も長年のふん尿で変色しています。店内にいる犬は皮膚病を疑われる状態で体毛の半分が抜け落ちており、赤い皮膚が見えていました。水槽の中には、緑に変色をした水の中に金魚等が百を超えて入っており、外の山積みされた百以上はあるだろうと思われる鳥かごには、さまざまな鳥がひしめき合っており、衛生状態がかなり悪い状況です。
 あけ放たれた窓から二階が見えますが、鳥かごやケージがやはり何段にも積み上げられており、多数の犬らしき生き物がいるのが見えました。明らかに動物愛護法第二十一条、基準遵守義務、二十一条の二、感染症の疾病予防、第二十二条の三、獣医師との連携確保に違反をしている状況です。
 通行人たちは、鼻をつまんで店の前を走り去っていきます。近所の方に話を聞いてみますと、長年この状態で大変に迷惑をしているとのこと。私のもとにも、こういった劣悪なペットショップについて、もう何年も動物愛護センター、警察にいっても変わらないとの情報が入っています。土地の不法占有が確認できたケースもありました。
 東京都は、都道府県知事の権限を規定した動物愛護法二十三条及び十九条に基づいて、改善や、それに従わない場合の措置、または第一種動物取扱業の登録取り消し等の措置をとるべきだと考えます。その際には二十一条の三にのっとり、当該動物を譲渡し、そのほかの適切な措置を講ずるように努めなくてはいけません。
 そこでお伺いをいたします。
 劣悪なペットショップはこのケースに限ったことではなく、一方で、東京都はこうした事業者に対して適切な対応をとっていないとの情報、意見が多数寄せられています。こうした都民の通報が生かされておらず、十年以上放置しているケースもあります。
 東京都はこれまでどのような指導、勧告をしてきたのか、その際、狂犬病予防法を遵守しているのかどうか、確実に確認をしているのでしょうか。
 動物愛護法違反の事業者、不法占有をしている事業者など、違法、適正ではない事業者の登録を長年にわたり取り消さず、登録更新までしている状態をどのようにお考えでしょうか。劣悪な事業者に対し、今後、都はどのように対応していくのかもあわせてお伺いいたします。
 続きまして、女性のサポート、子育て支援についてお伺いをいたします。
 東京の女性は、他の都市よりも晩婚、晩産です。都道府県別の第一子出産時の母の平均年齢は、東京都がずば抜けて高く、三十二歳近いことがわかっており、高齢生産や不妊治療を受ける女性が増加をしています。
 東京は、都会であるがゆえに周囲との関係が希薄で、女性が妊娠、出産、育児にかかわる悩みを一人で抱えてしまうという弊害があります。こうした問題を抱える女性たちのサポートを東京都は積極的に進めていくべきで、特に、周囲に相談ができる人がいない妊婦さんを支える仕組みはとても重要であり、私も所属する厚生委員会で、この件についての充実をお願いしてきました。
 東京都として、今後、妊娠、出産に関して悩みを抱える女性たちの問題に対し、どのような対策を打っていくつもりなのか、具体的な取り組みをお伺いいたします。
 また、不妊の原因は女性だけではなく、男性にも原因があります。男性の協力を得る難しさから、悩みが大きくなる女性たちのサポートも必要です。男性不妊に関する知識について、男性も含めて若い世代に啓発する必要があると考えますが、都の見解と取り組みをお伺いいたします。
 関連しまして、都営地下鉄におけるベビーカーの利用についてお伺いをいたします。
 国土交通省は、電車内などでベビーカーを畳まなくてもよいとする共通ルールを示しました。女性が、子供とミルクやおむつの入った荷物を一方に抱え、畳んだベビーカーをもう一方の手に持って電車に乗るのは、揺れる電車の中では大変に危険である上、体力的にも大きな負担がかかります。国土交通省の方針は歓迎すべきものです。
 一方で、最近はベビーカーが大型化したこともあって、電車内でのトラブルの原因にもなっています。そのため横浜市営地下鉄は、車椅子優先スペースとの兼用でベビーカー優先スペースを設置する方針を掲げており、また東京メトロは、今ある車椅子用のスペースを一緒に利用してもらうことを検討。JR東日本も、ベビーカーの統一マークの掲出には前向きに検討しているとのことですが、都営地下鉄は方針を示していません。
 乗客同士の無用のトラブル回避と育児中の母親たちの負担軽減のためにも、都営地下鉄においても優先スペースを車椅子と共用にしてマークを掲出し、周知をするべきではないでしょうか。見解を伺い、私の質問といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 塩村あやか議員の一般質問にお答えいたします。
 受動喫煙防止対策についてご質問がございました。
 都は、受動喫煙の健康影響を減少させることを目的に、平成十六年に受動喫煙防止ガイドラインを策定し、その対策を推進してまいりました。また、昨年改定した健康推進プラン21におきましても、受動喫煙の健康影響の防止のための取り組みを盛り込んでおります。
 受動喫煙防止対策を進めるためには、たばこを吸う人と吸わない人の相互理解と、対策への都民一人一人の理解が重要であります。そのため、都は、都民への普及啓発はもとより、区市町村や企業の管理者等を対象に環境整備に関する研修会を行うほか、職場向けのハンドブックを作成し、禁煙、分煙の取り組みを働きかけてまいりました。
 また、飲食店等に対しましては、店舗での禁煙、分煙への取り組みを呼びかけるリーフレットを配布するとともに、店内の禁煙、分煙が店頭でわかるよう都が作成したステッカーを配布し、事業者の取り組みを促しております。
 今後、都民や世界各国からお見えになった方々にも店内の状況が理解できるよう、飲食店等における店頭表示ステッカーの普及を一層進め、受動喫煙防止対策を積極的に推進してまいります。
 動物愛護行政についてでありますが、我が国では、動物販売業者は、動物の愛護及び管理に関する法律で都道府県知事の登録が必要とされており、都には約千七百件の事業者があります。
 都は、販売や保管、展示などの業態に応じた監視指導を行っており、多くの事業者は法令を守っております。ただ、残念ながら、問題のある事業者が存在するのも事実であります。
 動物は、飼い主にとって家族の一員として生活に潤いを与えてくれる大切な存在であります。都は、都民やボランティア、関係団体等と連携しながら、さまざまな動物愛護の施策を進めており、動物の販売におきましても、動物愛護の考え方を進めていくことが必要であります。
 昨年の法改正では、動物の健康及び安全を保持する観点から、幼い犬猫の引き渡し及び展示の禁止、販売時における対面説明の義務づけなど、規制が強化されました。現在、国では、幼い犬猫の販売規制のあり方を含め検討が進められており、今後とも、都は、監視指導を通じた法令遵守の徹底を図ってまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長に答弁させます。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、動物販売業者への指導等についてですが、都は、動物愛護管理法に基づいて事業者の登録を行っており、その更新に当たっては、法令で規定する飼育施設や設備の管理、動物の管理などの基準の遵守状況を適正に審査しております。お話のような事業者には重点的な監視指導を行い、施設の管理状況等の改善を図っているところでございます。
 狂犬病予防法に基づく犬の登録や予防注射につきましては、区市町村の自治事務となっており、都は、監視指導を通じて得られた情報について、必要に応じて区市町村に提供しております。
 今後とも、都としては、問題のある事業者に対して監視指導を徹底し、改善が見られない場合は、法に基づいて勧告、命令や登録の取り消しなどを行ってまいります。
 次に、妊娠、出産に関して悩みを抱える女性を支える仕組みについてですが、区市町村では母子健康手帳の交付や新生児訪問等を通じて相談や指導を実施しており、福祉事務所等でも、妊娠中や出産後の生活相談に対応しております。
 また、都におきましても、女性のための健康ホットラインや不妊・不育ホットライン等で相談に応じてまいりました。
 さらに、来月一日には、妊娠、出産に関する専用の電話相談窓口、妊娠相談ほっとラインを開設いたします。この窓口では、看護師等の専門職による助言や相談内容に応じた適切な関係機関の紹介を行い、メールによる相談や夜間の電話相談にも対応することとしており、電車内の広告やリーフレット等により、都民に広く周知をしてまいります。
 今後とも、こうしたさまざまな取り組みを通じて、妊娠、出産に関して悩みを抱える女性を支援してまいります。
 最後に、男性不妊に関する啓発についてですが、妊娠、出産に関しては、男女を問わず若い人たちが正しい知識を持ち、自分自身のライフプランを考えるきっかけになるよう、小冊子「いつか子供がほしいと思っているあなたへ」を作成しております。この小冊子には、男性にも不妊につながる要因が存在することを詳しく説明した内容も盛り込んでおり、区市町村の窓口や都内の大学約百八十カ所で配布をしております。
 また、昨年度は、妊娠、出産に関する出前講座を二つの大学で実施し、男性の不妊についても取り上げております。
 今年度も引き続き小冊子を配布するほか、大学での出前講座の実施箇所数をふやすなど、男性も含め若い世代を中心とした妊娠、出産に関する正しい知識の啓発に努めてまいります。
   〔交通局長新田洋平君登壇〕

〇交通局長(新田洋平君) 都営地下鉄におけるベビーカー利用についてでございますが、本年三月、国土交通省の公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会におきまして、ベビーカーの安全使用や周囲への配慮、周囲の方々の使用者への理解と配慮、統一マークの作成等を内容といたします検討結果が取りまとめられました。
 これを受けまして、都営地下鉄におきましても、他の鉄道事業者と連携し、啓発ポスターの掲出やチラシの配布などにより、周知と理解促進に努めてきたところであり、ベビーカーマークにつきましても、現在掲出の準備を進めております。
 今後とも、ベビーカー使用者と周囲の方々双方のご協力もいただきながら、交通局としてさまざまな利用者の一層の利便向上に取り組み、誰もが安心して快適に利用できる都営地下鉄を目指してまいります。

ページ先頭に戻る