〇議長(吉野利明君) 九番石川良一君。
〔九番石川良一君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
〇九番(石川良一君) 東京都のアセットマネジメント、ファシリティーマネジメントについてお伺いをいたします。
自治体経営の中に、自治体が所有している公共施設やインフラを総合的に、また長期的視点で企画、管理、活用するアセットマネジメントやファシリティーマネジメント、いわゆる公共施設マネジメントの考え方を導入する自治体がふえています。それは我が国が大きな変化に直面しているからであります。
その一つが人口減少と少子高齢社会問題です。日本の人口は、ご存じのとおり、二〇一一年の一億二千七百七十九万人をピークに減少に転じました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、二〇四八年には九千九百十三万人に減少するとされています。
東京都も例外ではなく、多摩地域は来年、都全体でも二〇二〇年がピークで、以後人口減少に転ずるとされています。総人口減で、公共施設の余剰化、遊休化が進みます。また、人口構造も、年少人口、生産年齢人口が減少し、老年人口がますます増加をしていきます。今後、生活保護費や医療費といった社会保障費はふえ続け、自治体の財政を逼迫させることになります。
次に、公共施設や道路、下水道等のインフラが更新時期を迎えているということであります。
国土交通省によりますと、二メートル以上の橋が全国で七十万橋あり、築五十年を超えているものの割合は二〇一〇年では一六%ですが、二〇三二年には六五%に増加し、港湾、岸壁も同じ傾向にあります。
さらに、平成十八年七月、埼玉県ふじみ野市のプールで児童が吸水口に吸い込まれて死亡する事故が発生しました。このプールの管理は民間事業者に委託をされていましたが、市の職員の業務上過失致死罪が確定いたしました。最近の公共施設に係る事故では、震災も含め、安全に関する限り、財政上の理由はほとんど免責の理由にはならないのであります。
一昨年発生した中央自動車道笹子トンネルの天井落下事故は衝撃的でありました。公共施設マネジメントは、高齢社会対応、少子化、子育て対策に匹敵する優先順位の高い大きな政策課題であります。
その上、国のバランスシートを見ますと、平成二十四年度末では資産は六百四十兆円、負債は一千百十七兆円、差引額は負債が四百七十七兆円に達しています。先進国の中で日本の財政の悪さは群を抜いています。国には頼れない時代に入りつつあります。
また、公共施設でも電気、ガス、水道などのエネルギーの効率化が求められています。再生可能エネルギーの活用や施設の緑化などによる環境緩和方策など、公共施設マネジメントとして取り組む必要があります。
以上の状況もあって、本年一月、総務省自治財政局から全国の自治体に公共施設等総合管理計画の策定に関する事務連絡が出されました。国も全国の自治体の公共施設の問題を拡大一辺倒から廃止や縮小の時代に入ったことに真正面から取り組み始めました。そして、地方債の特例として除却債の枠を設定し財源の手当てをしており、財政担当部署に正面から取り組む必要性を迫っています。
東京都は、平成十年度に千六十八億円の赤字計上により財政的な危機を迎え、財政再建推進プランにより財政の構造改革に取り組んできました。そして、二次にわたる財産利活用総合計画に基づき、十八年度までに二千百億円に上る不用財産の売却や八十件の施設統廃合等実施をしてきました。また、平成十八年には先進的な公会計制度を構築し、全国に先駆け資産の透明化を図ってまいりました。また、平成二十一年に主要施設十カ年維持更新計画を定め、三千平方メートル以上の施設の維持等のために八千三百億円必要と算出し、計画的に施設の維持管理に努めてまいりました。
そこで、まず総務省の公共施設等総合管理計画に対する都の見解を伺うものであります。
直面する財政危機と公共施設の一斉老朽化に対して、総合的な公共施設マネジメントに取り組む自治体に福岡市があります。福岡市は二〇〇六年、各局の部長クラスを委員としたアセットマネジメント基本方針検討委員会を設置し、全庁共通認識のもと基本方針作成に着手しました。そして、福岡市二〇一一グランドデザインを策定しました。これは公共施設もインフラも含めた計画となっています。
また、長野市は一九九八年の冬季オリンピック開催に伴い、大規模な施設を建設し、また合併によってさまざまな公共施設を保有することになりました。特にエムウェーブは年間三・七億円の維持管理費がかかることや将来の諸施設の建てかえ等も見据え、昨年、長野市公共施設白書を策定いたしました。対象を建物に限定することなく道路等のインフラ資産も含めて将来のコスト試算を行い、現状と課題について市民と情報を共有することを目指しています。
現在東京都では、今後十年の長期ビジョン計画策定中でありますけれども、まずは大きな計画の中に公共施設マネジメントをしっかりと位置づけ、自治体の意思を示すべきと考えます。
また、都の今までの計画は、道路等を初めとするインフラは各局の中で整理されており、公営企業分野も含めて局横断的に公共施設とインフラ資産を含めた総合的なマネジメントが求められています。そのためには強力なトップのリーダーシップが求められると同時に、局横断的な権限の集中も必要になってきます。
今回のトップマネジメント強化のために政策企画局の設置も提案をされていますが、公共施設マネジメントをどのように位置づけていくのかも重要であります。公共施設マネジメントに対する知事の見解をお伺いいたします。
知事は、第一回再生可能エネルギー拡大検討会で、都の電力消費利用に占める再生可能エネルギー割合を二〇%にする目標を示し、東京は日本で最も電力を消費する都市、省エネ、再生可能エネルギーの普及拡大に努める必要があると発言をしています。
都では公共施設でのソーラー発電を普及する事業や発電事業者が賃料を払い建物の屋根を二十年間借りてソーラー発電を普及する事業などの取り組みが求められています。
これらは都の資産を活用する事業でもあり、公共施設等マネジメントの中に位置づけ、局横断的に都全体が一丸となることで、都有施設の電力消費利用に占める再生可能エネルギーの割合を高めていくことが必要と考えますが、都の見解をお伺いいたします。
一方、多摩地域でも、公共施設マネジメントについて先進的な取り組みが行われています。府中市は、先月の二十八日、第一次公共施設マネジメント推進プラン案を発表し、府中市の駅前の総合施設グリーンプラザを初め、七カ所の施設を売却、譲渡することを発表しました。
また、多摩ニュータウン事業に伴い、多くの公共施設を抱える多摩市は、施設の更新時期を迎え、その対策として公共施設マネジメント計画に基づき住民説明会に昨年から入っており、十カ年で九十億円の施設更新の費用の削減目標も明らかにしています。
そんなこともあって、本年五月、多摩地域の市町村担当者によって多摩地域公共施設マネジメント研究会を立ち上げ、総務省や国土交通省の説明も始まっております。
東京都も、広域自治体として総務省が求める公共施設等総合管理計画策定のための区市町村に対する支援を開始する必要があると考えますが、見解をお伺いいたします。
また、公共施設の屋根貸し事業など区市町村にも協力を呼びかけることも重要であり、ソーラー発電の普及拡大に率先して取り組む区市町村を都としても支援していく必要があると考えますが、見解をお伺いいたします。
公共施設マネジメントを先進的に進めている自治体も今壁にぶつかりつつあります。計画を具体的に実践する際の問題、いわゆる住民説明会における総論賛成、各論反対の壁であります。今後、都内の区市町村の中でも公共施設マネジメントに多くの自治体が正面から取り組まなければなりません。しかし、公共施設マネジメントはまだよく知られておらず、都民の理解を深めるための世論の形成が不可欠であります。
東京都は、広報などを通じて、広域自治体としてしっかりとその役割を果たしていただくことを強く要請したいと思います。
次に、多摩振興のための自転車の活用と自転車ロードレースの開催についてであります。
知事は、交通政策の中で自転車活用をきちんとしていないのは先進国の大都市で日本だけ、自転車は一石四鳥、震災時の帰宅困難者対策にもなり、環境保全や健康にもよく、通勤費の節約にもなると発言をされております。全く同感であります。
今年度の予算の中で、快適な自転車走行空間の確保に向けた調査検討と自転車レーンの整備として二千万円が組み込まれました。
そこで、具体的な取り組みについてお伺いいたします。
また、先月第一回東京の総合的な交通政策のあり方検討会が開催されました。現段階で交通政策の中で自転車についてどのような検討がなされているのか、お伺いいたします。
一方、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会の立候補ファイルでは、多摩地域で開催されるのはサッカーと近代五種と自転車ロードレースの三競技のみとされております。しかし、オリンピックによって多摩地域活性化やスポーツ振興を図ることは重要で、新たな多摩のビジョンを受けてつくられた新たな多摩のビジョン行動戦略の中でもオリンピック・パラリンピックの開催を見据えたスポーツ、文化の振興を挙げています。
そこで、オリンピックによってどのように多摩振興を図っていくのか、改めてお伺いをいたします。
東京マラソンは、東京オリンピック構想実現を見据え、当時既に定着をしていた青梅マラソンと調整を図りながら、二〇〇七年から始まりました。三万人の市民ランナーと一万人のボランティアが支える大会で、世界の主要なマラソン大会の一つとなりました。
この東京マラソンのように、スポーツを育てながらオリンピックに備えていける競技に自転車ロードレースがあります。我が国では、二〇一〇年段階で日本自転車競技連盟に六千人の選手登録がされていますが、我が国と人口比二分の一のフランスでは七万人、自転車がメジャーではないイギリスも人口は二分の一ですが、一万一千人の選手がいます。我が国は潜在的な競技人口は多いですが、登録競技者増に結びつくコースの整備もなされていません。
昨年の第六十八回国民体育大会の自転車ロードレースは、八王子市を中心に行われたことで、自転車競技への理解は多摩地域では深まりつつあります。
お隣のさいたま市では、昨年十月に、さいたまクリテリウム by ツールドフランスをツールドフランスで上位に入賞した選手と国内有力選手を招いて開催し、短いコース設定でしたが二十万人以上の観客を集め、大盛況をおさめました。また、昨年六月には、第三回東京ヒルクライムHINOHARAステージ大会が山岳コースで開催されました。
二〇二〇年の東京オリンピックの自転車ロードレースのコースは、皇居前をスタートし、甲州街道を下り、多摩丘陵で周回コースに入り、十五・二八キロを十六周し、最後には味の素スタジアム横の武蔵野の森公園で、男子は二百八十キロ、女子は百四十キロをゴールすることを想定しております。都心の名所や多摩の自然など東京の魅力あふれる景観を世界に発信するというコンセプトのもとに選定をされました。
平成二十九年には武蔵野の森総合スポーツ施設が完成します。これらを見据えて、例えば武蔵野の森公園をスタート地点として、多摩丘陵のオリンピック予定コースの周回コースを走り、武蔵野の森公園でゴールする一般の自転車愛好者も参加する自転車ロードレース、仮称ツールド多摩をオリンピック大会の前に開催してはどうかということであります。
自転車ロードレースの理解を深めるためのサイクルフェスタや自転車の安全教室、企業PR、多摩地域の物産の展示販売を行い、知事の進めようとしている東京をヨーロッパ並みの自転車活用先進都市として多摩振興にもつながる象徴的なイベントとして取り組んでいけると考えております。
知事のご所見を伺い、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕
〇知事(舛添要一君) 石川良一議員の一般質問にお答えいたします。
公共施設マネジメントについてご質問がございました。
都が所有する施設は、都民から負託を受けた貴重な財産でありまして、都民サービスを維持向上させていくためには、こうした施設を効率的、効果的に活用し、その価値を最大限発揮させなければなりません。
このため、都では平成二十一年に主要施設十カ年維持更新計画を策定し、都有建築物の計画的な維持更新や一層の有効活用を進めてまいりました。
さらに今年度は、その後の状況変化を踏まえまして、公共建築物の長寿命化や省エネ、再エネ対応などに力点を置きました新たな十カ年計画を策定いたします。
また、道路、橋梁、港湾などの社会インフラにつきましても、これまで個別の長期計画を策定し、適切に整備、維持管理、更新を行ってきております。
引き続き、時代状況の変化に適切に対応した効率的、効果的な公共施設のマネジメントに取り組んでまいります。
多摩地域の自転車ロードレースの開催についてご質問がございました。
緑豊かな多摩の地を自転車で颯爽と駆け抜けるロードレースは、参加選手だけでなく沿道で声援を送る人々にもスポーツとしての自転車のだいご味を間近で体感できる絶好の機会となると思います。
一方、公道を使った自転車競技は大規模な交通規制を伴い、地域の生活や交通に大きな影響を及ぼします。
ご提案のコースにおきましても、沿道に救急病院など生活に重要な施設があり、また主要な幹線道路を規制することから、住民や地元自治体を初めとする関係機関に十分な理解と協力を得なければならず、慎重な対応が必要であると考えております。
都はこれまで、自転車競技の魅力の発信やオリンピック、国体等を目指す東京育ちのアスリートの強化に取り組んでまいりました。
今後とも、これらの取り組みを通じ、自転車競技の一層の普及振興に努めてまいります。
その他の質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁させます。
〔東京都技監藤井寛行君登壇〕
〇東京都技監(藤井寛行君) 交通政策の中での自転車に関する検討についてでございますが、都市の機能や利便性を向上させ、魅力的な都市空間を創出するためには、効率的で誰もが利用しやすく、環境にも優しい交通体系の実現が重要でございます。
このため、先月三十日には学識経験者や関係各局などで構成する検討会を開催したところであり、自転車の走行空間やマナー、さらには東京にふさわしい活用方法などについて広範な議論が展開されました。
今後専門家や交通事業者へのヒアリングを行うなど検討を進め、年内に策定予定の東京都長期ビジョンへ反映するとともに、今年度内を目途に自転車を含めた総合的な交通政策を取りまとめる予定でございます。
〔財務局長中井敬三君登壇〕
〇財務局長(中井敬三君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、公共施設等総合管理計画についてでありますが、都では従前より所有する公共施設等について個別に定めた計画等に基づき、予防保全型管理の手法を導入するなど、長期的な視点を持って維持管理等を行ってきております。
また、総務省の公共施設等総合管理計画の策定指針において示されている財政負担の軽減や平準化等についても、これまでの長期計画や毎年度の予算編成において反映させております。
公共施設等総合管理計画については、現在詳細について総務省からの情報収集や意見交換を行っているところであり、こうしたやりとりの結果などを踏まえながら、今後適切に対応してまいります。
次に、再生可能エネルギーの利用拡大についてでありますが、都では平成二十三年に省エネ・再エネ東京仕様を策定するなど、これまでも率先して省エネ、再エネ技術の導入に取り組んでまいりました。
また、近年の建築分野における新たな環境技術についても費用対効果等を勘案しながら検証を行ってきたところであり、これらの成果を踏まえて現行仕様をこの六月に改正いたします。
これにより、再生可能エネルギーについては太陽光発電に加え、太陽熱や自然の風、さらには地中熱などを施設の特性や立地状況に応じて積極的に活用してまいります。
こうした取り組みにより、都有建築物の積極的な省エネ化とともに再生可能エネルギーの利用拡大に努めてまいります。
最後に、公共施設マネジメントの取り組みにおける区市町村への支援についてでありますが、都はこれまでも、定例的な会議を通じた技術情報の提供や研修講師の派遣などにより、区市町村の公共建築物にかかわる技術の向上を支援してまいりました。
今後も、本年度策定する主要施設十カ年維持更新計画に関する情報提供を積極的に行うなど、区市町村に対する技術支援を引き続き行ってまいります。
〔環境局長長谷川明君登壇〕
〇環境局長(長谷川明君) 太陽光発電に係る区市町村支援についてでございますが、再生可能エネルギーの普及を図るためには、区市町村の役割が重要でございます。
こうした観点から、都は都内の建物の太陽光発電等の導入ポテンシャルを把握できるソーラー屋根台帳の詳細なデータを区市町村に提供しております。
また、今年度から区市町村がこの台帳を活用し、屋根貸しマッチングなどの普及促進事業を実施する場合には、補助を行うこととしております。
今後とも、区市町村と連携し、地域に根差した取り組みを一層進めることで、都内の再生可能エネルギーの普及拡大に努めてまいります。
〔建設局長横溝良一君登壇〕
〇建設局長(横溝良一君) 自転車走行空間整備の取り組みについてでございますが、都は平成二十四年度に策定した自転車走行空間整備推進計画を前倒しし、オリンピック・パラリンピック開催までに百二十キロメートルを整備することといたしました。
今年度は設計箇所数を当初よりふやすとともに、平和橋通りなど約十一キロメートルを整備いたします。
また、関係区市や警視庁などと自転車推奨ルートの検討を行い、オリンピック・パラリンピック競技場などの周辺において、年度内を目途にルートを設定いたします。
さらに、東京の総合的な交通政策のあり方検討会の議論を踏まえ、都内全域に広げるための検討を進めてまいります。
今後とも、誰もが安全で安心して利用できる自転車走行空間の整備に積極的に取り組んでまいります。
〔総務局長中西充君登壇〕
〇総務局長(中西充君) オリンピック・パラリンピックによる多摩振興についてでございますが、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催は、東京の飛躍につながる大きな契機であり、世界最大のスポーツの祭典を多摩地域のさらなる発展に結びつけていくという視点が重要です。
このため、都は、多摩地域におけるスポーツクラスターの形成や地域におけるスポーツ振興といった取り組みとともに、自然、文化、歴史、地域の特産物など、多摩地域の多様な魅力を発信する取り組みなどを盛り込んだ新たな多摩のビジョン行動戦略を本年三月に取りまとめたところでございます。
今後は、本戦略に基づき、都事業を着実に推進するとともに、市町村や民間企業等とも連携して多摩地域の振興に取り組んでまいります。
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