平成二十六年東京都議会会議録第九号

〇副議長(藤井一君) 百十五番古賀俊昭君。
   〔百十五番古賀俊昭君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇百十五番(古賀俊昭君) 去る四月二十七日日曜日、日比谷公会堂において拉致被害者家族会や救う会などが主催する、もう我慢できない、今年こそ結果を、国民大集会が開催されました。私も都議会拉致議連の同僚とともに参加し、都側からも前田副知事以下担当職員の出席がありました。
 菅内閣官房長官や古屋拉致担当大臣の挨拶には、拉致問題を国政の最重要課題と位置づけ、安倍内閣のもとで解決を図ろうとする意気込みと決意が感じられました。
 そのほか、荒木特定失踪者問題調査会代表が拉致被害者を長い間取り戻せない責任について、先般四月の韓国の旅客船沈没事故は、沈み行く船からの救助、救出を怠った点では、拉致問題を放置してきた我が国も同じで、決して人ごとではなく、我々自身が沈んで行く船である旨の指摘には首肯できるものがありました。
 北朝鮮による日本国内での違法活動や拉致、誘拐が北朝鮮の犯行であることは、昭和四十九年の韓国大統領を、日本の警察から奪った拳銃で狙撃し、大統領夫人を殺害した在日韓国人、文世光事件や、昭和五十二年、三鷹市役所警備員の久米裕さんを石川県能登半島の海岸から北朝鮮へ拉致した工作員を石川県警が逮捕し、暗号表などの証拠を押収した宇出津事件、また亡命工作員、あるいは大韓航空機爆破事件の日本人に成り済ました犯人、「よど号」乗っ取り犯関係者の証言、そして昭和六十三年、参議院での国家公安委員長の答弁等により濃厚明白であったにもかかわらず、今日に至るまで犯人の逮捕、処罰から犯行組織の解明も被害者の救出にも至っておらず、歴代日本政府が全力を尽くしたとはいいがたく、戦後日本外交の大きな闇が残されたままであります。
 横田めぐみさんが拉致されたのは今から三十七年前の昭和五十二年十一月、宇出津事件の一カ月半後のことであり、当時十三歳の少女は、ことし五十歳を迎えます。
 我が国は独立主権国家として、なぜ拉致事件を防止できなかったのか、また、なぜ救出できないのか、今改めて問い直さなければなりません。
 北朝鮮に拉致された同胞を奪還するために手本となる国がレバノン共和国であります。レバノンは、中東の地中海に面した人口わずか四百四十万人の国です。昭和五十三年、北朝鮮工作員が日本の大手企業で月給三千ドルの仕事があるという、うそ、甘言を弄し、レバノン女性四人が拉致されました。目的は、脱走米兵と結婚させて欧米系の風貌容姿の子を工作員に仕立てるためといわれています。
 四人のうち二人は自力で脱出しました。レバノン政府は、残り二人については強硬な外交手段を駆使して、誘拐後一年三カ月で奪還しています。しかし、そのうちの一人は既に脱走米兵の子供を宿していたために北朝鮮へ戻り、今日まで残念ながら未解決となっています。この女性のお母さんは、娘の救出を願って日本の国民大集会に来日参加されたこともあります。
 レバノンにできることがなぜ日本にできないのでしょうか。我が国もレバノン政府の対応を教訓として、強い姿勢でこの問題に取り組んでいくことを求めるものです。
 ことしに入り、北朝鮮が従来解決済みといい張ってきた日本人拉致を日本との交渉の議題とすることに応じた背景には、昨年末の張国防副委員長の処刑による北京との関係悪化や送金、貿易、往来の規制等の日本の経済制裁による外貨不足が打撃となっていることがあるといえます。
 本年三月に入っての瀋陽での非公式協議、拉致被害者横田めぐみさんのご両親とめぐみさんの娘がウランバートルで面会、北京で一年四カ月ぶりに局長級協議、そして五月二十六日から二十八日までのストックホルムでの局長級協議と続き、二十九日に安倍首相が、北朝鮮は全ての日本人拉致被害者と特定失踪者らの再調査を実施等を、日朝間で合意したと発表したことは、明らかに北朝鮮の焦りと方向転換のあらわれです。
 では、この機を捉えて、日本政府が制裁緩和を検討するに当たっては、過去の同じ手口に乗せられて、再びほぞをかむことのないように注意深く検証するのは当然ですが、都も今後いかに対応するかが問われることになります。
 今定例会に提案される都庁機構の再編では、拉致問題に関し、北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会や被害者家族会などが主催する国民大集会等、知事本局が所管してきた業務を全て新たに設置する政策企画局では担当せず、拉致問題の啓発活動を担ってきた総務局へ移管するとのことです。
 今回の組織再編で都としての施策が決して後退することのないよう、舛添知事も国と歩調を合わせて取り組みを進めていただきたいと願うものです。
 知事は、本年三月の予算特別委員会の締めくくり総括質疑で、我が党の鈴木章浩議員の拉致問題に関する質疑で、北朝鮮による拉致は国家主権の侵害であり、国民の重大な人権侵害であるとの認識を示して、一日も早い解決に向け、国を後押しして全力で努力する旨の答弁を行いました。
 日朝政府間協議が新たな展開を見せる中、このたびの拉致再調査合意に対する評価、また今後、都としてどのような姿勢で拉致問題に取り組んでいくのか、改めて知事の見解を伺います。
 次は、皇居のお堀の水質改善について伺います。
 東京を首都たらしめている皇居は、まさに我が国を象徴する聖地であります。その皇室のお庭であるお堀にアオコが大量に発生して水質が悪化し、臭気や景観などの面で大きな問題となってきました。
 皇居や東京駅の周辺を日本の玄関口にふさわしいものにするために、行幸通りの整備や東京駅丸の内駅舎の保存、復元などその周辺地域の都市づくりは進んでいるものの、お堀の水質はいまだに改善されるには至っておらず、水の都東京とはいいがたいのが現状であります。
 以前、この問題について平成二十一年第一回定例会で質問しました。抜本的な対策として、内堀については汚水と雨水を分離する取り組みや放流先の変更を行うとのことでありました。
 そこで、内堀の水質改善に向けた対策について、現在の進捗状況を伺います。
 また、平成三十二年に東京五輪パラリンピックが開催されることが決定しましたが、その際には、世界に向けて我が国の文化のすばらしさを発信する機会となることから、六年後に向けて、内堀だけでなく外堀についても対策を講じるべきと考えます。
 皇居周辺の水辺空間については、国を挙げて日本の顔となり得る景観と自然環境を整えるべきであり、国と東京都が協力してお堀の水辺環境を改善していかなければなりません。
 そこで、外堀についても、さらに水質改善を積極的に図るべきだと考えますが、下水道の取り組み状況を伺います。
 次に、靖国神社に関することについて伺います。
 これはフランス・パリ地下鉄の優先席を表示した写真です。もちろん、フランス語で書いてあります。
 まず最初に、この優先席に座ることのできる人を傷痍軍人と書いています。次いで、一般障害者、妊婦と子供連れ、最後に七十五歳以上の高齢者となっています。いずれの国でも、国民は、国に殉じ傷ついた人々に心からの敬意と感謝をささげているのです。
 安倍首相は、政権発足して満一年になる昨年十二月二十六日、靖国神社に参拝を果たしました。首相は平成二十五年四月十六日の衆議院予算委員会を初めさまざまな場で、第一次安倍内閣では任期中に総理として参拝できなかったことは痛恨のきわみであったと発言してきただけに、中韓米の内政干渉に屈することなく、堂々の参拝は戦後体制からの脱却への決意を国内外に示す大きな意義があります。
 まず、この首相の靖国神社参拝について知事の感想を伺います。
 次に、国難に際し、国安かれと、とうとい一命をささげられた神霊をお祭りする靖国神社について、知事はいかなる所懐を有されているのか、そして、知事は今日まで靖国神社を参拝されたことがありますか。また、今後についての所見はいかがか伺います。
 ところで、首相の靖国神社参拝を批判する中韓の声を耳にしますが、平成十四年には韓国の陸軍と海軍の武官が観桜会で参拝していますし、大正七年には、日本留学中の周恩来元総理が例大祭に参拝して甚だ大きな感慨を催したと日記に記していますので、今日の批判、また攻撃は情報戦の武器として使われていると考えるのが妥当ではないでしょうか。
 最後に、道路、橋梁についてですが、多摩地域の活力向上や安全・安心を確保するには、交通の円滑化や防災性の向上を図る道路網の充実と強化が不可欠です。
 特に橋梁は、河川などで隔てられた地域をつなぐとともに、災害時には避難路や緊急輸送の経路となる重要な施設であります。
 私の地元日野市内には多摩川にかかる橋梁が四橋ありますが、その中で、日野市と立川市を結ぶ日野橋については非常に古く、また歩道も狭いため、地元からはかけかえを望む声もあります。
 そこで、日野橋を整備すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、日野市には、日野駅から北側に延びる日野都市計画道路三・四・一七号立川日野駅線があり、そのうち多摩川にかかる部分については、仮称富士見橋と呼ばれている橋梁の計画が残されています。
 この橋梁の仮称名である富士見とは立川市側の地名でありますが、橋梁の大部分、八割以上は日野市内となりますので、名称については今後再検討すべきと考えます。
 ちなみに、現在、日野市側の町名は、町名地番の整理により、全国に無数にある無機質な新町、栄町となっていますが、もともとは四ツ谷、東光寺の字名がありました。由緒ある歴史を持つ地名を弊履のごとく捨て去った反省から、平成二十四年三月に開通したこの地の都市計画道路三・四・八号線と中央線との立体交差部は四ツ谷立体としてよみがえりました。東光寺は、当地の小学校名に名をとどめていますが、ぜひとも候補名としていただきたいと思います。
 さて、この橋梁が整備されれば、その北側の道路整備とあわせ、人員、物資の緊急輸送の中継、集積拠点である立川防災基地に直結され、防災機能の強化が図られます。
 また、立川、日野、八王子など多摩川を挟んだ南北多摩地域の拠点を連絡するとともに、周辺道路の渋滞解消にも寄与することになるのです。
 そこで、この仮称富士見橋の今後の対応について伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 古賀俊昭議員の一般質問にお答えいたします。
 拉致問題に関する日朝合意と今後の都の取り組みについてご質問がございました。
 古賀議員から、拉致問題を何としても解決したいという強い思いをただいま聞かせていただきました。
 北朝鮮による拉致は、国家主権の侵害であると同時に、国民の生命と安全を脅かす重大な人権侵害でもあり、拉致問題の解決は、我が国の外交上の最重要課題であります。
 これまでの政府の外交交渉などが実を結んだ今回の日朝合意におきまして、北朝鮮が従来の主張を転換し再調査を認めたことは大きな前進であります。これを契機に、特定失踪者も含めた拉致問題の全面解決につながることを強く期待しております。
 ご家族の高齢化が進み、再会が急がれる中、安倍政権には、再調査の結果を慎重に見きわめつつ、拉致被害者の一日も早い帰国が実現するよう、全力で交渉に取り組んでもらいたいと思っております。
 一方、都はこれまで、国などとの連携を知事本局が担いつつ、総務局は、横田ご夫妻の講演会や写真パネル展など都民に向けた啓発活動を行ってまいりました。
 今回の組織改正では、拉致問題の所管を総務局に一本化することで、国や知事の会との連携や啓発活動をより効果的に実施できる体制を整えました。
 今後も、一日も早い拉致問題の解決に向けて、ご家族の思いをしっかりと受けとめながら、国を後押しして全力で努力してまいります。
 靖国神社について質問が二つございました。
 まず、安倍総理の靖国神社への参拝についてでございますが、外交という観点でいえば、別の選択もあり得たと思いますが、総理には総理のお考えがあって、ご自身の政治信条に基づき参拝されたと思っております。
 続いて、私自身の参拝についてでございますが、私は、厚生労働大臣として、あるいは国会議員として靖国神社に参拝したことはございません。もちろん、プライベートで靖国神社を訪れ、日本の国のために命を落とされた方々に手を合わせてはおります。これからもそういう立場を貫くつもりであります。
 さきの大戦が終わって六十九年がたち、戦後生まれが社会の大半を占めるに至りました。今の日本の繁栄がとうとい犠牲の上に築かれている事実を忘れてはならないと思います。
 国のために殉じた方々の思いを深く胸に刻み、東京を、そしてこの日本をさらにすばらしいものにするために、東京都知事の仕事に全力を傾注してまいります。
 その他の質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁させます。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 仮称富士見橋の整備についてでございますが、都は、平成十八年度に策定した第三次事業化計画に基づき、計画的、効率的に都市計画道路の整備を行っております。
 日野三・四・一七号立川日野駅線の橋梁部分、仮称富士見橋につきましては、現計画において優先整備路線に位置づけられてございません。
 現在、都と地元区市町では、現計画が平成二十七年度に終了することから、次期事業化計画の策定に向け、検討会や学識経験者による委員会などを立ち上げ、検討を進めているところでございます。
 今後、渋滞の効果的な解消や高度防災都市の実現などの視点から優先整備路線の選定を行っていく予定でございまして、お尋ねの橋梁につきましても、この中で適切に対応してまいります。
   〔下水道局長松浦將行君登壇〕

〇下水道局長(松浦將行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、内堀の水質改善に向けた進捗状況についてでございますが、内堀のはけ口四カ所のうち清水濠については、流域の地権者の協力を得て、それぞれの敷地内の排水設備を汚水と雨水の二系統に分けていただくとともに、当局においては、雨水を収容する下水道管を新たに設置し、内堀への放流を雨水のみとする分流化を完成させております。
 残る三カ所のはけ口の対策としては、貯留効果をあわせ持った、内径八メートル、延長二・五キロメートルの第二溜池幹線の延伸工事について、虎ノ門交差点直下の大深度地下における既設トンネルとの接続工事を含め、主要な工程を既に終了させております。
 今後、同幹線に接続する枝線の工事を鋭意進め、閉鎖性水域である内堀から流れのある隅田川へ放流先を切りかえる事業を平成二十七年度までに完了させてまいります。
 次に、外堀における取り組み状況についてでございますが、新見附濠付近で、降雨初期の特に汚れた下水を一時的に貯留し、雨がやんだ後に水再生センターへ送水して処理するための施設である、内径二・二メートル、延長六百五十メートル、貯留量千八百立方メートルの貯留管を今年度末までに完成させることとしております。
 さらに、市ヶ谷濠などの対策として、残る十一カ所のはけ口からの放流回数を大幅に削減するため、一万四千八百立方メーター分の容量を持つ貯留施設を整備することとし、現在、関係機関と協議しながら実施設計を進めているところであり、早期の工事着手を目指してまいります。
 これらの抜本的対策により、内堀と外堀の水質を大幅に改善し、首都東京にふさわしい水辺空間の形成に貢献してまいります。
   〔建設局長横溝良一君登壇〕

〇建設局長(横溝良一君) 日野橋の整備についてでございますが、日野橋は古くから甲州街道の要衝となっており、地域の連携強化に資する多摩川中流部橋梁の一つでございます。
 この橋梁は、大正十五年に架設され、九十年近くが経過し、老朽化が進んでいるとともに、近年の台風などの影響で橋梁周辺の河床が低下しており、安全性を向上させることが課題となっております。
 また、橋の上の歩道は一・五メートルと狭く、人のすれ違いも容易にできない状況にございます。
 このため、今年度から環境調査や現況測量、橋梁構造の検討などを開始し、かけかえに向けた取り組みを進めてまいります。

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