平成二十六年東京都議会会議録第九号

〇議長(吉野利明君) 九十九番こいそ明君。
   〔九十九番こいそ明君登壇〕

〇九十九番(こいそ明君) 多摩ニュータウン再生の質問から始めさせていただきます。
 まず、五月二十一日に舛添知事が私の地元である多摩ニュータウンを視察していただきました。深く感謝を申し上げる次第でございます。
 知事は、視察後の取材に対して、視察した都営住宅は建てかえる必要性がある、南多摩尾根幹線道路は直ちに整備促進するよう検討を指示したい、諏訪二丁目住宅の建てかえは今後のモデルとしていくべきであると発言をされました。結びとして、より一層の都議会のご協力をいただき、多摩をよりよくしていきたいと述べられておられました。
 多摩ニュータウン住民は、知事が示された再生への意気込みと今後の再生に向けた具体的な動きに期待を膨らませております。
 時代の要請に的確に応え、東京と日本の経済成長を住宅の大量供給により支え続けてきた多摩ニュータウンも、初期入居から四十年以上が経過をし、現在では道路、公園などのインフラや住宅団地が老朽化をしてきております。
 また、エレベーターがなく、バリアフリーがおくれているほか、住宅が狭い、問題が至るところで露呈もしてきております。誰もが住みたくなるといった当時の多摩ニュータウンの先進的な精神や魅力は、時間の経過とともに失われつつあります。
 一方で、東京都が多摩ニュータウンに集中的に投資して整備された高規格的なインフラは高い評価を得ており、今や都民共有の貴重な財産であります。この多摩ニュータウン再生は、私のミッションとも考えております。
 そこで、多摩ニュータウンの再生に向けた都の取り組みについてであります。
 まず、南多摩尾根幹線道路の整備についてでありますが、この道路は、埼玉県の新座市から神奈川県相模原市の国道一六号までを広域的に連絡するとともに、多摩ニュータウンの東西方向ネットワークを形成する極めて重要な幹線道路であります。
 しかし、事業の着手から四十年以上が経過しているにもかかわらず、いまだ残念ながら完成をしていません。現状は、四十メートル、五十メートルの道路幅の中に、殻がまじった残土がうずたかく延々と積み上げられて放置がされています。
 このような危険な状況では、見通しが悪いだけではなく、集中豪雨や首都直下、多摩直下型地震が発生すると、交通開放されている側道部へ、いつ残土が流出するかわからないと地元は常々心配しているところであります。
 地域交通が渋滞の惨禍にある中で、都市計画道路用地が確保されていながら整備されていない現状は、投資効果からも問題です。加えて、尾根幹線道路が整備されていないため、沿道の効果的な土地利用がなされておらず、町のにぎわいもそがれている現状です。
 南多摩尾根幹線道路の整備について、都はどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、多摩ニュータウンに隣接する地区における多摩三・四・一五号線、都道鶴川街道の整備についてであります。
 私の地元稲城市百村にある鶴川街道は、歩道も整備がされていないため、スピードを出して走る大型車を避けながら歩行せざるを得ないなど、極めて危険な都道であります。
 現行の第三次事業化計画では、百村地区については、稲城市施行の道路として整備が行われることとされていますが、鶴川街道はそもそも都道であり、東京都が責任を持って多摩三・四・一五号線の道路整備を行う必要があると考えますが、見解を伺います。
 去る五月二十一日知事視察当日は、雨が降りしきる中で、諏訪四丁目の都営住宅の外観や居室内部、近隣商店街を視察していただきました。
 この都営住宅は、昭和四十六年に多摩ニュータウンで一番最初に入居があった団地であるため、今となっては、狭い居室、バリアフリーでない風呂場、エレベーターのない建物など、高齢者が外に出て活動するという健康長寿社会の観点からも問題です。
 また、都営住宅に併設された近隣商店街は、購買力の低下などにより元気がなく、知事は、こうした住宅団地や商店街では若者に見向きもされないと述べておられました。
 そこで、多摩ニュータウンの都営住宅の建てかえを計画的に進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、知事にご視察をいただいた、日本最大の団地建てかえ事業となった諏訪二丁目のマンションでは、知事の周りに子供が集まり、赤ちゃんの声もにぎやかに響きわたるなど、成功した建てかえ事例であると誇れるものであります。
 この建てかえは、新規契約者の六〇%が三十代、四十歳代の子育て世代であり、建てかえ前から居住していた高齢者世代とミックスして居住できる理想的な住宅となりました。
 諏訪二丁目の建てかえの実績、そして経験をそれだけにとどめることなく、次の建てかえに生かすことが重要であると考えますが、このような有意義な実績を今後の多摩ニュータウン再生の中でどのように生かしていくのか伺います。
 多摩ニュータウンの再生は、東京都が多摩ニュータウン再生ガイドラインを策定したことで注目を集め、再生の動きにつながったことを高く評価します。
 しかし、多摩ニュータウンの再生は、老朽団地の建てかえやそれを取り巻く道路、公園などのインフラ再生にとどまらず、地域で高齢者を支える地域包括ケアのまちづくりなど、総合的な取り組みであると考えております。
 そこで、多摩ニュータウンを再生するためには今後どのように取り組んでいくのか、その進め方について伺います。
 次に、核都市多摩ニュータウンの再生についてであります。
 南多摩を含む広域的な圏域に視点を移すと、小田急多摩線の延伸やこの六月に中央道と東名高速道路が結ばれる圏央道の開通など、多摩ニュータウンへのアクセス環境が大いに改善される動きが活発になっています。
 さらに、二〇二七年開業のリニア中央新幹線の橋本駅は、核都市である多摩ニュータウンの至近に整備される計画です。
 こうした南多摩圏域における隣接市との動きや都県境を越えた広域連携も踏まえて、多摩ニュータウンを核都市として再生整備すべきであると考えますが、知事の所見を伺います。
 多摩ニュータウンは、都の人材や技術、多大な資金を投入してつくり上げた、いわば都民共有の財産です。こうした財産を後世に伝えるためには、再生に向けた具体的な動きに確実につなげることが極めて重要であることを述べて、次の質問に移ります。
 私の地元多摩市連光寺に関して質問します。
 多摩丘陵の貴重な自然を守り、将来に引き継ぐ視点も決して忘れてはならないと考えます。
 多摩市連光寺の一角には、周辺が住宅へと変わる中で、稲城市にまたがる良好な緑地に囲まれ、今なお田んぼや畑が残された地域があります。この自然環境豊かな場所に、キバサナギガイという種類の都内で唯一、国内でも極めて珍しい陸産貝類が生息していることが明らかとなりました。昔懐かしい多摩丘陵の景観や希少な生物が奇跡的に残されたこの場所は、かけがえのない都民の財産であります。
 そこで東京都は、隣接する稲城市の緑地も含めて保全地域に指定し、地元自治体と連携して、将来にわたって確実に保全していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、東京の水環境と水循環についてであります。
 東京はこの数年、気象が大きく変化して、湿度は中国奥地のウルムチと同程度の六〇%であり、最高気温は三十九度を記録するなど、既に砂漠化しています。
 このような苛酷な環境下で、東京オリンピック・パラリンピックは二〇二〇年の七月下旬から九月上旬にかけて開催されます。この現状が続けば、皇居のお堀ではアオコが、東京湾でも赤潮、青潮が大量発生します。前回の東京オリンピックは秋たけなわの十月にすがすがしく開会されましたが、今回は盛夏のオリンピックです。
 そこで、私は、小河内ダムに蓄えられた大量で清らかな冷たい水を、玉川上水を通して皇居のお堀を通り東京湾まで流下させることで、東京のヒートアイランド現象の緩和やお堀と東京湾の水質改善に向けたプロジェクトを至急開始すべきと考えます。
 小河内ダムからの水を利水するには、水道水源に関する調査が必要となるため、都は、今から国、他県に協力を要請し、おおむね七十万トン程度の水道用水の支援を受けるべきです。
 オリンピックが開催される東京に清らかで冷たい水を行き渡らせることで、アスリートに力を発揮させるだけではなく、観光の振興やヒートアイランド対策にも効果的です。
 東京が水循環によりクールダウンを達成することで、環境に配慮した日本ならではのおもてなしが世界に向けて発信でき、日本の技術のPRにつながります。
 全国でトップクラスの水質である小河内ダムの水を流下させることとあわせて、アオコや赤潮プランクトンの成長を抑制する樹木を植栽すれば、お堀や東京湾の浄化とともに、都市景観が向上するなど一石三鳥と考えます。
 盛夏に行われる東京オリンピックの成功のために、小河内ダムの清浄な水を玉川上水を活用してお堀や東京湾まで流し込み、東京のクールダウンと水質改善をエコの力で進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 以上、魅力ある多摩ニュータウンの再生や環境に関する取り組みについて、多角的な観点から質問を行いました。今回の知事の視察を生かして今後の実効性ある取り組みを期待して、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) こいそ明議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩ニュータウンの再生整備についてでございますが、私は以前から、重要課題の一つとして多摩ニュータウンの再生を取り上げてまいりました。
 先日、こいそ議員にも同行していただきました現場視察におきましては、古くなりました都営住宅や未完成の南多摩尾根幹線などの現状を直接見て回り、さらにさまざまな方からも地域の課題を伺い、改めて再生の必要性を強く認識しました。
 雨の中、土手を登りまして、南多摩尾根幹線のその残土の固まったところを滑りながら歩きまして、まさに現場視察というのはこういうものだなということを認識しましたけれども、あれは何とかしないといけないと思いました。
 また、お話のように広域的な観点から見ますと、中央道と東名高速をつなぐ圏央道の開通、これは六月二十八日に式典が行われます。リニア中央新幹線の新駅の計画など、周辺地域に大きな動きが見られます。
 そこで、地域が抱える課題を踏まえ、都営住宅の建てかえや民間住宅の建てかえ支援など、大規模住宅の再生を進めてまいります。
 さらに、新たな周辺地域の動向を踏まえ、都県境を越えた道路ネットワークの拡充を見据えて、南多摩尾根幹線道路の整備を進めるとともに、核都市にふさわしい多様な機能を集積し、多摩ニュータウンが広域的な連携、交流のかなめとなるように取り組んでまいります。
 こうした取り組みは、多摩のみならず、東京の発展を支えるものであり、都、地元市、民間などが一丸となって推し進め、多摩ニュータウンの再生を実現してまいります。
 続きまして、大変夢のある、東京の水循環の回復と活用についてご提案がございました。
 水は循環して生態系を支え、蒸発散を繰り返すことによりまして、気温の上昇を緩和するとともに、景観に潤いを与え、水辺を形成するなど、良好な都市環境を育む上で大切な役割を果たしております。
 小河内ダムに蓄えられた清らかで冷たい水を、玉川上水を利用してお堀に注ぎ、さらに東京湾に放流するといった水の循環に着目した斬新なご提案を頂戴いたしました。
 二〇二〇年に向けて、ヒートアイランド現象の緩和や、お堀などの水質浄化、景観の形成は、水循環にかかわる都政の課題だと認識しております。
 今後も、国や区市町村と連携して、河川や水路を有効に活用するなど、水にかかわる多様な施策を効果的に展開し、東京全体の水循環と水環境の回復に取り組んでまいります。
 都市と水というのは、これは絶対に不可欠な連関があるというふうに考えておりますし、小さな小川が、何とかこれ復活できないかというのが私のもう一つの課題でもありまして、先般、渋谷を視察しましたけど、「春の小川」の原点となった渋谷川の再生にも取り組んでいきたいと思っておりますので、議員のご提案を真剣に受けとめて検討してまいりたいというふうに思っております。
 そのほかの質問につきましては、東京都技監及び環境局長から答弁させます。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、南多摩尾根幹線の整備についてでございますが、本路線は、北は調布保谷線と接続し埼玉県へ至り、南は相模原、橋本方面に向かう広域的な幹線道路でございます。本路線は、平成十八年に策定した第三次事業化計画におきまして、広域的な幹線道路ネットワークとしてのあり方も踏まえ、概成区間の整備形態等について検討していく路線としております。
 現在、一部区間は四車線で整備されているものの、大半は暫定二車線であることから、渋滞が発生するなど、お話のとおり課題が生じており、抜本的な対策が必要でございます。
 都としては、本路線の役割や重要性を踏まえ、早期事業化に向けて関係機関や地元市と調整を行うなど、積極的に取り組んでまいります。
 次に、多摩都市計画道路三・四・一五号についてでございますが、本路線は、稲城市から川崎市に至る主要な幹線道路でございます。このうち、百村地区におきましては、交通混雑の緩和、安全で快適な歩行空間の確保などの観点から、第三次事業化計画におきまして優先整備路線に位置づけられました。
 本区間は、稲城市施行の土地区画整理事業の区域内であったため、市施行に位置づけられましたが、その後、土地区画整理事業の都市計画が廃止されたため、市施行による道路整備が困難となりました。
 都では、緊急輸送道路の機能確保など、本区間の重要性から早期事業化が必要と考えており、事業主体等について関係者間で調整を行ってまいります。
 次に、都営住宅の建てかえについてでございますが、多摩ニュータウンにおきましては、建設から四十年以上経過した都営住宅が約四千戸あり、お話のとおり老朽化などの課題もあることから、計画的に建てかえを進め、バリアフリー化や居住水準の向上などを図っていくことが重要でございます。
 このため、比較的早期に建設された六団地につきまして、今年度、建てかえに向けての基礎的な調査を実施いたします。このうち、諏訪団地につきましては、最も初期に建設され、敷地規模が大きく、周辺のまちづくりとの連携も考えられることから、具体的な建てかえ計画の検討をあわせて行ってまいります。
 その際、地域の活力や魅力の向上などの観点から、地元市などと協議しながら、建てかえに伴う創出用地のあり方についても検討してまいります。
 次に、今後の多摩ニュータウン再生における諏訪二丁目住宅の建てかえ事例の活用についてでございますが、今回の建てかえ事業は、居住環境の改善のみならず、地域の活性化や福祉の充実にも寄与するなど、今後の団地再生のモデルともなるものでございます。
 これを次の大規模分譲住宅の建てかえにつなげていくため、本年秋に多摩ニュータウンにおきまして、管理組合などを対象とした団地再生のセミナーを開催し、諏訪二丁目住宅の取り組みを紹介するなど、建てかえに向けた機運の醸成を図ってまいります。
 また、諏訪二丁目住宅の事業の成果などについても引き続き検証を行い、多摩ニュータウンの再生の中で、次の建てかえの支援に生かすなど、積極的に取り組んでまいります。
 最後に、多摩ニュータウン再生の進め方についてでございますが、多摩ニュータウンは、大量の住宅を供給するとともに、道路、公園などを計画的に整備することで、東京の高度成長に大きな役割を果たしてまいりました。この多摩ニュータウンも、初期入居地区では四十数年が経過し、都営住宅の老朽化など課題が顕在化してきたため、都や市、学識経験者で構成する会議で、ニュータウン再生の検討を行っております。
 今後とも、都は、多摩ニュータウン等大規模住宅団地再生ガイドラインを活用し、広域自治体として地元市を技術的に支援しながら、住宅の更新や道路の整備、地域包括ケアと連携したまちづくりなどに取り組むことで、多摩ニュータウンの再生を実現してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 多摩市連光寺一帯の緑地の保全についてでございますが、都は、都内に残る貴重な自然地を現況のまま保全するため、希少な動植物の生息地となっている丘陵地の良好な緑地等について、自然保護条例に基づく保全地域に指定し、保護、回復を図っております。
 お話の緑地は、都内では貴重となった里山景観を有し、全国的にも希少な陸産貝類の生息地であり、地元自治体からも強い保全の意向が示されております。このため、都はこれまで、当該地域の地権者と保全に向けた協議を継続的に進めてまいりました。
 今後、隣接する稲城市の緑地を含めて保全計画を策定し、年内を目途に保全地域に指定して、地元自治体との役割分担のもと、適切に維持管理を図り、この貴重な緑地をしっかりと将来に継承してまいります。

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