平成二十六年東京都議会会議録第九号

〇議長(吉野利明君) 七十八番斉藤あつし君。
   〔七十八番斉藤あつし君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇七十八番(斉藤あつし君) それでは、私も、東京が世界一というジャンルについてひとつ質問したいと思います。
 ことし四月から、いわゆる改正精神保健福祉法が施行され、より積極的な入院患者の地域への退院支援が始まりました。精神科病院の入院患者の退院促進は世界的な潮流であり、イタリアは一九七八年公布の世界初の精神科病院廃絶法であるバザーリア法で入院を厳しく規制しました。アメリカやイギリスでも一九六〇年代に脱施設政策が進められ、各国とも苦労して退院後の支援、そして、国民の理解に取り組んできました。
 さて、一方、日本ですが、二〇一〇年の調査では人口千人に対する精神科病床は約二・七ベッドで、約一・七ベッドの二位であるベルギーに大差をつけ、そして平均入院日数も二位の韓国の約百十日に対して日本は約三百日と、断トツ世界一なのは有名な話です。
 そして、国内の病床の数で見ると、東京都は約二万四千床と全国で第一位。そんなことから、病床や自治体の定義に幅はありますが、精神科の病床数において東京は世界一といわれた報道や業界関係者もたくさんいます。
 私は、都内の精神科病院は稼働率が他県よりも高く、高次脳機能障害患者などを受け入れるなど、イタリアとは事情が違うと思っていますが、それでも地域に帰すべき長期入院患者がまだ多く存在しており、そして退院を支える地域の医療、福祉の体制整備や人材育成が必要です。
 厚労省の描く精神医療の将来像と具体策という資料では、患者の地域移行先として特別養護老人ホームや認知症グループホームも含まれており、現状でも多数の待機者がいるこれら施設のさらなる不足が懸念されます。これら施設の一層の整備が必要と思いますが、所見を伺います。
 二点目として、今年度終了の第三期東京都障害福祉計画に続く、平成二十九年度までを視野に入れた第四期計画では、恐らく退院促進をさらに進めた形になると期待しています。長期入院患者の退院を促し、地域生活を支えるには医療と福祉が連携した取り組みが重要と考えますが、東京都の取り組みを伺います。
 さて、知事も厚労大臣時代の予算委員会で、精神障害者の地域移行の社会資源の拡充の意気込みを問われ、難しいという前提をしながらも、精神障害者に対する施策がきちんとなるということが、私はノーマライゼーションを本当に実現したことと考えていると答弁しています。
 あれから六年、多分難しさ自体は変わらないと思いますが、知事の目標も変わっていないことを私は願ってやみません。精神障害者の地域移行支援について、より現場に近い都知事としての所見を舛添知事に伺います。
 さて、大きな二点目です。
 次に、きょう議場にいらっしゃっている全ての議員の皆さんの地元の市区町村で大変、今、苦労をされている課題について触れたいと思います。
 いわゆる障害者総合支援法にある、居宅介護や就労支援、グループホームといったさまざまな障害者の福祉サービスをどう組み合わせて利用するか、そして、それをどういうふうに計画をつくっていくかということは、障害者にとって大変大事なことです。
 使うサービスの内容については、市区町村が障害者の希望などを勘案して支給決定するわけなんですが、平成二十四年度に特定相談支援事業者という事業者がサービスの利用計画を作成し、それを参考にして市区町村が支給決定するという制度が導入されました。そして、この仕組みは平成二十七年の四月から、全てのサービスを使う障害者に対象を拡大することが決まっているんです。
 つまり、新たに市区町村の指定を受けた民間の福祉や医療の施設及び事業者等が、研修を受けた専門資格者を確保して開業し、そして障害者のサービス計画をつくらなくてはいけなくなったというわけなんです。市区町村は、計画をつくる事業をしてくれる事業者をふやしながら、一方で、障害児、障害者の方たちそれぞれに、計画作成をする事業者を経過措置期間である来年の三月末までに当てはめなくてはいけないんです。
 しかしながら、厚労省発表の全国調査によれば、この当てはめの進捗状況というのは大変はかばかしくありません。ことし三月末の障害者の計画作成の進捗率は全国で三一・四%、最高の愛知県で五九・三%ですが、東京都はわずか二一・七%しかありません。東京都全体で障害者は七万二千人、障害児が一万五千人いますが、そのうち八割の人のサービスの計画がまだ作成されていないという状態なんです。
 市区町村は、今後、これらの人たちに計画作成の時期を割り振って、事業者を決める、あるいは自分でプランをつくりたい人を把握するなどして、残り九カ月間で来年四月からの支給決定に支障がないようにしなくてはならないんです。
 市区町村が全てのサービス利用計画作成という目標を達成できるように、東京都としてどのように対応しているのか伺います。
 さらに、余力がある事業者というのは既に相談事業を始めていますので、今後積極的に引き受けてくれる新しい事業者というのはだんだん減っていくと予測されます。皆さんの地元でも障害福祉の担当職員に聞けば、恐らく相当焦っている、困っているという方が多いんじゃないかと思います。
 この進捗の遅さには、相談支援事業の報酬単価にも原因があります。計画作成時に一万六千円、計画実施後の評価のときに一万三千円という単価では、計算しても年間三百万円の収入がせいぜいで、人件費は出ても通信費やコピーのコストは出ない、もしくは、やればやるほど赤字になるという事業者の声を聞いております。かといって、この担当件数をたくさんふやして収入を上げようと思っても、やみくもに上げてしまっては障害者それぞれに沿った丁寧な計画ができなくなってしまうということで、それもできないというのが事業者や関係団体の意見なんです。
 相談支援を推進していくには報酬の見直しが必要と考えますが、東京都の所見を伺います。
 さらに、計画作成の現場では、例えば症状変化の激しい精神障害者の場合など、少しでも国の示す判断例のパターンから外れてしまうと、市区町村や関係機関と共通理解に至るまでが難しくなったりしています。そもそも、制度を導入する準備段階で早期に情報提供がなされ、関係者の共通認識ができていたらと思います。ですから、今後、実績を踏まえて制度の改善をしていくことを願っています。
 相談支援の実情を踏まえた制度の見直しについて、東京都の所見を伺います。
 最後に、学校の職員についての話です。
 平成二十四年三月に出された小中学校の校務改善推進プランは、多くの現場調査に基づき、何かと話題になる副校長への業務の集中に加えて、一般教員の校務改善についてまとめたものです。既に二年を経過していますが、その進捗状況を伺います。
 また、産休や病休などの代替教員をパソコンを使って探しやすくする非常勤職員情報提供システムの構築もこの本に載っておりますが、あわせて進捗状況を伺います。
 そして、私の地元、小平市では、自慢話ではありませんが、全中学校にスクールソーシャルワーカーを配置したところ、不登校が減ったと聞いております。家庭での福祉的な問題による子供たちの学校での不安定な行動に教師がかかわることは以前からありました。私が社会福祉士として、親が精神疾患の母子家庭という案件にかかわった際も、先生たちは本当に頭が下がるほど奮闘していました。
 ただ、そのとき、福祉専門職と連携しつつも、ある程度専門職に委ねて解決すべきではないか、教師はその分、ほかの生徒に対して教師しかできないことをやるべきではないかと感じました。福祉専門職の導入自治体をふやすことが必要です。
 福祉的課題解決の手法の一つとして、スクールソーシャルワーカーの配置の意義について、教育委員会の見解を伺います。
 そして、最後に、国が定めた教員定数が果たして現状に見合った数字かというのは、時として疑問であります。学校というものが多様な専門家による多機能な運営を期待される施設に近年なってきたと思います。平成二十四年三月の報告では、校庭開放の受付が行政の事務なのに学校が担っている例を指摘していますが、これら旧来の業務課題に加えて、近年は通り魔対策、さらには校内への犯罪者の侵入防止策のほか、震災後の厚みを増した防災訓練、発達障害児対応、今議会では、いじめ防止に関して教職員の義務も条例に示されるなど、新たに期待される業務が、これは学校でやってくださいねという感じで、少しずつ積み上がっている、そんな印象を受けます。
 業務の増加に見合った人員は不可欠ですので、東京都の費用による教員の加配というものは、現場では大変喜ばれているというふうに聞いております。そして、評価されると同時に、さらなる加配の希望も強くなっています。国の教職員定数は私どもの政権時代は何とか現状の維持に努めてきましたが、今年度、文部科学省は初めて教員数を純減、つまり純粋に減少としています。
 ベテランの五十四歳前後の教員の今後の大量退職を見越せば、若手の教員の育成と確保、これが必要です。予算が前提と承知はしていますが、よくいわれる、資源に乏しい日本は人材こそが資源というのであれば、教育の体制づくりは重要です。都のレベルで加配の地道な努力がなければ、人材育成の土壌づくりはできないということです。
 加配の予算確保を望むところですが、東京都の所見を最後に伺い、私の質問といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 斉藤あつし議員の一般質問にお答えいたします。
 精神障害者の地域移行支援についてでございますが、精神障害者は体調や環境によって症状が変化しやすいため、保健、医療、福祉が連携して支える体制がなければ、地域で安定した生活を送ることは難しゅうございます。また、都内の精神科の医療資源は地域的な偏在が大きいため、保健、医療、福祉の連携が有効に機能するには、地域の実情に応じた仕組みを構築する必要があります。
 そのため、都は、精神障害者がその時々に必要な支援を受けられるよう、病院と地域をつなぐコーディネーターを都内六つの地域活動支援センター等に配置し、広域的なネットワークの強化を図って、円滑な地域移行を進めております。
 今後、こうした取り組みを積み重ね、精神障害者が地域で安心して暮らすことのできる社会の実現に向け、周囲や関係者の理解を得ながら、精神障害者の地域移行を進めてまいりたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、教育長及び福祉保健局長から答弁させます。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、小中学校の校務改善の進捗状況についてでありますが、現在、校務改善推進プランに基づき、校務の調整機能を持つ経営支援部の設置を推進し、また、副校長の負担が大きい講師などの任用業務について、インターネット上で募集や申し込みを行う非常勤職員情報提供システムを導入するなど、組織的、効率的な取り組みを進めております。
 経営支援部設置校は、平成二十四年度二百三十二校、平成二十五年度三百二十五校、平成二十六年度四百三十四校と着実に拡大し、副校長を初め教職員が担う校務の効率化を進めております。また、非常勤職員情報提供システムは、平成二十三年度末の運用開始以降、八割強の小中学校で導入され、副校長の負担軽減に効果を上げております。
 都教育委員会は、今後も区市町村及び小中学校と連携し、さらに校務改善に取り組んでまいります。
 次に、スクールソーシャルワーカーの意義についてでありますが、子供の問題行動の背景には、家庭環境が影響していることが多くあります。そのため、教育分野に関する知識に加え、社会福祉などの専門性を生かし、関係機関等とのネットワークを活用して、子供の問題解決に向けて支援を行うスクールソーシャルワーカーの果たす役割は大きいものがあります。
 スクールソーシャルワーカーを配置しております四十二の区市町村では、その活用によって不登校などの問題の解決が図られた事例や、児童虐待が疑われるケースを児童相談所の対応につなげた事例があります。
 都教育委員会は、学校とスクールソーシャルワーカーが連携した取り組みにより、学校だけでは解決が困難な子供の問題行動の解消を図ることができるよう、引き続き本事業の活用によって、全都に普及啓発を図ってまいります。
 次に、教員の加配についてでありますが、教職員数は、国の標準法に基づき、児童生徒数に応じた学級数で算定をしており、さらに都教育委員会は、個別の教育課題に対応するため教員を加配しております。
 具体的には、本年度から、習熟のおくれがちな子供たちに対して、必要な場合には前の学年の内容に立ち戻るなどの指導を徹底するため、指導方法工夫改善加配を拡充しております。また、国に先駆けて三十五人以下の学級編制を可能とする小一問題、中一ギャップの予防解決のための教員の加配を行うなど、指導体制を充実しております。
 今後とも、さまざまな加配を活用して、教育課題の解決を図ってまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 五点の質問にお答えいたします。
 まず、特別養護老人ホーム等の整備促進についてですが、都はこれまでも、区市町村が地域のニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、東京都高齢者保健福祉計画を定め、特別養護老人ホーム等の整備を進めてまいりました。整備に当たりましては、高齢者人口に比べて整備が十分でない地域への補助単価を最大一・五倍に加算するほか、都有地の減額貸付や定期借地権の一時金に対する補助など、都独自の多様な手法を講じ支援しております。
 今後とも、さまざまな手法により、区市町村を支援し、特別養護老人ホーム等の介護サービス基盤のさらなる整備促進に取り組んでまいります。
 次に、長期入院中の精神障害者の地域移行についてですが、都は、精神障害者の退院促進のため、相談支援事業所等にコーディネーターを配置し、入院中の精神障害者に対する退院への働きかけや、地域の支援機関との調整を行い、地域移行を進めてまいりました。また、医療機関、保健所、障害福祉サービス事業者等による地域生活移行支援会議を開催し、精神障害者の地域移行、地域定着支援のための情報交換や事例検証を通じ、連携の強化や支援の質の向上を図っているところでございます。
 さらに、病院職員を対象とした地域のサービス事業所における実習や、地域の関係機関の職員を対象とした病院実習により、相互理解の促進に努めております。
 今後とも、医療と福祉の連携を強化し、精神障害者の地域移行、地域定着が一層進むよう努めてまいります。
 次に、障害者サービス等利用計画作成への支援についてでございますが、障害者総合支援法では、平成二十七年度から障害福祉サービスを利用する全ての利用者について相談支援事業者が利用計画案を作成することとされており、区市町村は、事業者の指定など、計画相談支援の体制整備を行う必要がございます。
 都はこれまで、利用計画を作成する相談支援専門員養成のための研修や、計画相談支援の促進に関するセミナーでの先進事例の紹介などを行うほか、各区市町村の取り組み状況を把握し、その結果を情報提供するなど、区市町村の取り組みを支援してまいりました。
 今後とも、区市町村が相談支援体制の整備を進められるよう、必要な人材の養成や情報提供等を行ってまいります。
 次に、相談支援事業の報酬の見直しについてですが、障害者総合支援法に基づく相談支援を進めていくためには、相談支援事業者が人材確保や安定した事業運営を行うことができる報酬体系とする必要がございます。
 これまで、都は国に対し、障害福祉サービス全般にわたり報酬の改善を行うことや、人件費、土地取得費、物件費等が高額である大都市の実情を適切に報酬に反映させることなどを提案要求してまいりました。
 現在、国は、平成二十七年四月の報酬改定に向けた検討を開始したところであり、今後、国の動向を注視しながら、必要な提案を行ってまいります。
 最後に、相談支援事業についてですが、平成二十四年の障害者自立支援法の改正以降、相談支援事業者による利用計画の作成数は拡大し、区市町村において、さまざまなケースへの対応実績も積み重ねられております。
 都は、相談支援事業が円滑に進むよう、引き続き実施状況を把握するとともに、区市町村の意見も聞きながら、円滑な制度実施に必要なものについては、国に対し提案要求をしてまいります。

〇副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十九分休憩

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