平成二十六年東京都議会会議録第八号

〇議長(吉野利明君) 質問を続行いたします。
 六十一番橘正剛君。
   〔六十一番橘正剛君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十一番(橘正剛君) 都議会公明党を代表し、知事、教育長並びに関係局長に質問いたします。
 初めに、桂宮宜仁親王殿下におかれましては、去る六月八日、薨去されました。心より哀悼の意を表するものであります。
 さて、舛添都政がスタートして四カ月が経過しました。この間、知事は都議会と真摯な議論を展開されました。そして、第一回定例会後には、都政の最前線に積極的に足を運ばれ、行動する知事として、また、世界一の都市東京の構築に向けて、日々全力で取り組まれております。
 さらに、本年第一回定例会で、我が党が知事に提案した重要課題である都市外交についても、精力的にスタートを切られました。それは、緊迫した東アジア地域の情勢を緩和し、真の友好関係を広げるためであります。
 予算特別委員会で公明党は、我が国の地方自治体による姉妹都市交流が中国との間で約三百五十の都市、韓国との間で約百五十の都市で締結されていることを指摘いたしました。そして、北京やソウルと姉妹都市交流を結ぶ東京都の舛添知事が、レジリエンス、すなわち国同士の友好関係の復元力を強化するため、全国自治体の先頭に立って都市外交を推進していくべきと提案をいたしました。
 それに対し、全力で実現したいと約束された知事のもとに、三日後には十六年ぶりに駐日中国大使が表敬訪問、知事も北京市に対して友好交流の再開を発信され、その一カ月後には、実に十八年ぶりに北京市からの招聘による東京都知事としての訪中となりました。
 今、東アジア地域に求められているのは、にらみ合いなどではありません。胸襟を開いた対話であります。平和の祭典、文化の祭典であるオリンピック・パラリンピック開催予定地の東京都知事であるからこそ、友好交流の旗を高々と掲げ、ソフトパワーを発揮すべきであります。
 舛添知事は、この四カ月で、かつての知事とは比較にならないほど多くの外国の要人に会われております。東京の国際的ステータスにふさわしい都市外交をさらに力強く進めていただきたいと思いますが、見解を伺います。
 折しも来年は、北京市などの留学生用宿舎である東京都の太田記念館が開設二十五周年を迎えます。舛添知事も訪中の際にこの話題に触れて、北京市長をその記念事業に招待されました。さらに舛添知事は、この太田記念館を中日友好の人材交流のとりでの一つと捉え、記念館を活用した卒寮生や在寮生などのネットワークの構想も提唱されております。
 そもそも戦後の日中国交正常化は、日中双方の卓越した民間人の交流による信頼関係が花を開いて実現したものであります。都の太田記念館を舞台とした日中相互理解のネットワークづくりは、都市外交、首都外交の大きな鍵を握るものであり、都議会公明党も大いに促進すべきと考えます。改めて知事の見解を伺います。
 次に、東日本大震災の被災地に対する支援、とりわけ福島県に対する支援について質問いたします。
 去る六月六日、公明党福島県議団が都庁を訪れ、舛添知事宛てに、福島の復興に向けた要望書を提出いたしました。この要望書は、福島県の復興ビジョンである、新生ふくしま二〇二〇年に向けてと連動するものであり、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会を視野に入れた要望でもあります。
 具体的には、かつてサッカーのナショナルトレーニングセンターであった福島県内のJヴィレッジの活用が取り上げられております。このたび、Jヴィレッジの復興再整備スケジュール案が発表になり、東京大会前年の二〇一九年上旬に再開される予定となっております。
 新生Jヴィレッジは、サッカーコートを十面も有するため、福島県からもオリンピックのサッカー競技の合宿等に活用していただきたいという強い要望があります。都としても、新生Jヴィレッジを復興のシンボルとして、オリンピックのサッカー競技の合宿等に活用できるように組織委員会などとともに取り組むべきであると考えます。都の見解を求めます。
 次に、二〇二〇年の東京大会の成功に向けた取り組みについて質問いたします。
 初めに、会場計画の見直しについてであります。
 知事は、所信表明の中で、新たに整備する十の競技会場について、大会後の東京にどのようなレガシーを残せるのか、広く都民にどのような影響を与えるのか、現実妥当性を持って見定めていくと述べました。さまざまな観点に照らして、見直しはやむを得ないものと考えます。大事なことは、関係団体、議会、広く都民の理解が得られる見直しとするべきであります。知事の見解を伺います。
 また、東京大会以降も使用される競技会場施設については、大会が終了した後も、都民や地元住民に親しまれ、有効活用されるような施設とするべきであります。
 カヌースラローム会場を例にとれば、一昨年のロンドン大会では、計画の当初の段階から、大会後は市民のレジャー施設として活用することを想定して整備を行い、現在も利用者が多いと聞いております。
 東京大会のカヌースラローム会場に予定されている葛西臨海公園は、水族園を初め、東京湾を一望できる砂浜や芝生広場など、自然を満喫できるスポットがそろう都内有数の公園であります。地元の江戸川区でも、多くの家族や子供たちが水遊びを楽しめる施設を望む声が根強くあります。カヌースラローム会場の見直しに当たっては、このような葛西臨海公園の持つ豊かな自然を可能な限り残すよう十分配慮するとともに、公園の持つ魅力をさらに高めるため、大会後は、地元から要望の強いプールなど水に親しめる施設としていくべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、大会施設の環境対策についてであります。
 都は、都有施設の整備において、世界でトップクラスの建物仕様である省エネ・再エネ東京仕様を適用するなど、率先して建築物の環境負荷の低減に取り組んでおります。
 こうした都の取り組みや、我が国のすぐれた環境技術を世界にアピールする絶好のチャンスでもある東京大会の競技施設は、都の施設としての現行の省エネ、再エネの仕様に準じるだけでなく、さらなる環境負荷の低減に努めるため、最新の技術を取り込むべきと考えます。見解を求めます。
 次に、海洋競技が行われる東京湾の水質改善についてであります。
 東京湾は、カヌースラロームのほか、トライアスロンやボートなど多くの海洋競技の舞台となります。しかし、東京湾に流れ込む隅田川や多摩川等の河川の水質は、下水道の整備によって大幅に改善してはいるものの、東京湾では年間九十日も赤潮が発生しております。この状況を改善するためには、富栄養化の主な原因となっている窒素やリンを削減する下水の高度処理の導入を進めていくことが必要であります。
 ところが、下水の高度処理施設の増設には、用地の確保、多大な費用、長い建設期間といったさまざまな課題があります。東京大会の開催に向けて、さらに東京湾の水質を改善するために、新たな視点に立ち、従来タイプよりも短期間に整備が可能な下水処理技術を導入すべきと考えますが、見解を求めます。
 また、下水を高度処理するとエネルギー使用量が増加するとの課題もあります。環境にも優しい東京大会とするため、大会運営上重要な役割を果たす東京湾の水質改善に当たっては、大きく省エネルギー化に結びつく高度下水処理技術を開発し、導入すべきと考えます。見解を求めます。
 さらに、東京湾の水質改善には、下水道以外の対策を含めた広域的な取り組みが必要であることから、東京湾周辺の各県などにも取り組みを促していくことが重要であります。都の見解を求めます。
 次に、五輪文化プログラムについてであります。
 オリンピック憲章は、スポーツを文化、教育と融合させる意義をうたい、大会の開催期間を中心に、文化プログラムを実施するよう求めております。これを近代オリンピック史上最大の規模と内容で展開したのが、二〇一二年ロンドン大会であるといわれております。
 この大会で文化プログラムの中心役となったのが、一九四六年に経済学者ケインズの提唱によって創設されたアーツカウンシル・イングランドであります。これは、文化芸術分野の人材育成、民間文化団体への助成、政策提言等を行う専門機関であり、国際アーツカウンシル文化機関連盟には、世界七十カ国以上が加盟しております。
 我が国では、二〇一二年十一月、日本で初めて本格設置されたのが東京都歴史文化財団の中にあるアーツカウンシル東京であります。
 そこで、二〇二〇年東京大会に向けて、アーツカウンシル東京の体制をさらに強化するとともに、我が国の持つ文化芸術の力を結集して、文化プログラムの具体化を推進すべきであります。知事の見解を伺います。
 文化プログラムは、音楽、美術、舞台、映像、伝統文化、アニメ、コミック、和食文化など分野が広範にわたり、イベントの形態も多種多様になると想定されております。このため、都立の文化芸術施設を初め、公園、図書館、庭園、水族園、さらには民間の施設等も活用し、町中の至るところで取り組めるようにすべきであります。都の見解を求めます。
 次に、文化プログラムと並んで重要視されている教育プログラムについてであります。
 東京大会に向けて、都は今年度から、都内小中学校など三百校をオリンピック教育推進校に指定し、オリンピック教育の先進的な指導事例に関する教育研修会も開催されております。児童生徒に対するオリンピック教育を進めることは評価いたしますが、その対象は、六年後を目指して都内全ての小中学校などに拡大すべきであります。
 なお、その際には、映像を使った補助教材も作成するなど、オリンピック教育の充実を図るべきであります。見解を求めます。
 関連して、全国の大学との連携強化について質問いたします。
 過去の大会では、通訳を初め、救護や競技運営ボランティアとして活躍する多くの学生の姿がありました。都は、こうしたボランティア活動に加えて、大学と一体となった各種イベントの実施や、世界各国の学生との交流を進めるプログラムの実施など、学生の能力やそれぞれの大学が持つ特性を積極的に引き出すべきであります。大学や学生との連携強化について、都の見解を求めます。
 次に、人権施策の推進についてであります。
 観光案内標識や飲食店のメニューなど、五輪大会を機に東京を訪れる外国人観光客向けに、既に多言語表記などの取り組みが始まっております。その上で、今後は言葉の壁だけでなく、心の壁をなくす取り組みも重要となります。
 昨年、都が実施した人権に関する世論調査によると、十年前に比べて都民の人権意識は高くなっているものの、外国人に対しては差別意識等が依然として存在しております。そうした現状を改善し、東京大会を史上最高の五輪大会にするためには、日本の文化を世界に発信するだけでなく、外国の文化、生活習慣などを理解し、相互に尊重し合うという多文化共生の理念の高まりが不可欠と考えます。
 舛添知事が先頭に立って、国の内外にわたる人権尊重の理念や多文化共生社会の推進を力強く発信していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 ところで、都の人権施策の基本的な考え方を示した人権施策推進指針は、五年を目安に施策の見直しを行いながら進めることになっておりますが、実際には、策定から今日に至るまでの十四年間、一度も見直しが行われたことはありません。五輪開催に向け、国際的にも注目される今こそ、人権指針を見直すべきと考えます。見解を求めます。
 オリンピック・パラリンピックに関する質問の最後は、各国選手団の事前合宿についてであります。
 事前合宿は、大会で選手が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、時差解消や開催国の気候に順応するために行われるものです。二〇〇二年FIFAワールドカップでは、カメルーンの選手団が大分県中津江村に事前合宿したことが話題になり、地域おこしにもつながりました。
 東京大会では、世界各国の数多くの選手団が日本国内において事前合宿を実施するものと思われますが、多摩地区を初めとする都内全域にも積極的に誘致し、地域住民、特に若者たちが世界中の人たちと国際交流を行う機会とするべきであります。見解を求めます。
 次に、福祉と医療施策について質問します。
 まず、地域包括ケアシステムについてであります。
 地域包括ケアシステムは、高齢者が住みなれた自宅や地域で安心して暮らし続けることができるよう、医療、介護、予防、生活支援、住まいなどのサービスを切れ目なく提供するものであります。
 埼玉県和光市では、既に平成十五年からそうした取り組みが開始されており、要介護四や五といった重い介護状態でも、在宅での生活を選択できるように努めているほか、介護度の改善や悪化防止でも顕著な成果を上げております。
 そうした取り組みを可能にしている要因の一つは、高齢者の実態を把握するための入念な調査にあります。和光市では、記名式の調査を全高齢者に郵送し、未回答の高齢者を全て訪問し、回答を得ております。調査の結果は、日常生活圏域ごとの地域ケア会議の場で詳細に分析され、三年間にわたる介護保険事業計画の中で到達すべき目標値を定める根拠となっております。
 さらに、記名式で実施した調査結果は、本人の同意のもと、ケアプランを初め、医療、福祉、住まい、生活支援、権利擁護などのサービス提供者間でも共有化されており、無駄がありません。
 残念ながら、都内自治体では調査が行われていなかったり、抽出であったり、無記名であったりなど、傾向性の把握しかできていない事例も見受けられます。しかも、二〇一五年から始まる第六次の計画策定に向けた調査は既に昨年から行われており、現時点では、ほぼ終了しております。
 そこで、当面の対策として、都は、都内区市町村が調査結果を的確に分析し、地域ごとの課題の把握や、一人一人の高齢者に適したサービスの展開に結びつけられるよう支援をすべきと考えます。見解を求めます。
 その上で、地域包括ケアシステムの機能を本格的に高めるためには、調査のやり方それ自体を見直す必要があります。自治体ごとの人口規模が大きい都内においては、往々にして詳細な調査は困難と思われがちであります。しかし、調査の単位を細かく分けたり、実施を複数年次に分けたりして行うなどの工夫によって、同様の効果が得られるはずであります。
 三年ごとに行われる次の調査時期は、二〇一六年が中心となります。都は、都内全域の地域包括ケアシステムの効果を高めることを目指し、実態調査のガイドラインを示すべきであります。見解を求めます。
 一方、重い介護度であっても、在宅で介護できるようにするために大切な点の一つは、二十四時間対応が可能な訪問介護による服薬介助や、介護保険の市町村特別給付を活用した流動食や刻み食の一日三回の提供などであります。こうした取り組みがあって初めて、介護度の重い高齢者でも、特別養護老人ホームに入所しているのと同じような安心感を持って、在宅での生活を選択できるのであります。都内においてもこうした取り組みが普及するよう、都は区市町村を支援すべきと考えます。
 また、身体の機能を使わなくなることによって衰える廃用症候群を防ぐための見守りサービスも大切です。そのためには、ケアマネジャーに対し、ケア会議をOJT、すなわち職場内研修の場として捉え、具体的な事例をもとに、介護度の改善や悪化防止に役立つケアプランの作成能力の向上を図る取り組みが重要であります。
 都は、介護度の改善や悪化防止に役立つサービスミックスを進めるためのこうした人材育成について、区市町村を支援すべきであります。あわせて見解を求めます。
 要支援者向けサービスの区市町村事業への移行や、在宅中心の地域包括ケアシステムの実現に当たっては、予算組みの工夫やサービスの充実だけでなく、身体機能の改善に役立つ場合には、身体介護や家事援助よりも見守り介助を重視するケアプランへの転換など、利用者や家族の意識転換も必要であります。行政、とりわけ保険者である区市町村長の強いリーダーシップが求められております。
 都においても、都内の区市町村長が強い覚悟を持って地域包括ケアシステムの実現に取り組むことができるよう、介護保険制度に造詣の深い舛添知事みずからが強いリーダーシップを発揮し、明確な方向性を指し示すべきと考えます。知事の決意を伺います。
 次に、高齢社会における住宅対策について質問いたします。
 高齢者の住まいに対するさまざまなニーズに対応していくためには、住民に身近な区市町村が、地域の特性に応じた施策を展開していくことが重要であります。そのためには、行政はもとより、不動産関係団体、NPO等が連携し、高齢者を初め、障害者、子育て家庭などが円滑に民間賃貸住宅に入居できるよう支援する居住支援協議会の設置が有効であります。
 都内で居住支援協議会を設置している自治体は、いまだ三区しかなく、全区市町村に広げていく必要があります。そのためには、まず、都がみずからの居住支援協議会の設立をできる限り早めるべきと考えます。見解を求めます。
 高齢者の住まいに対するニーズは多様化しております。可能な限り自立して暮らせる機能やサービスを備えた住宅や、高齢者が共同で暮らせるような新しい住まい方への期待も高まっております。
 都は現在、サービスつき高齢者向け住宅の供給促進や、空き家を高齢者のグループリビング用に改修する費用を助成するモデル事業を実施しており、高齢者の住まいの選択肢をふやす効果が期待されております。
 その上で、高齢者と子育て世代とが地域で触れ合える住まい方の選択肢が具体的に整っていけば、世代間交流を通し、さらに潤いや活力が生まれてきます。こうした高齢者のニーズも踏まえ、都は、多世代が一緒に住める住宅の供給を促進すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、少子化対策について質問します。
 来年度から始まる子ども・子育て支援新制度では、保育に欠ける子供から、保育を必要とする子供へと支援対象が拡大するため、都民の期待も膨らんでおります。その期待に応えるため、保育サービスの充実が一段と求められることになりますが、国が五月末に公表した公定価格、すなわち国や自治体から事業者に支払われるサービスごとの単価は、消費税率一〇%を前提にした平成二十九年度時点での仮単価であります。その結果、来年、再来年の単価は、それぞれ前年の十二月ごろ決定するとのことであり、事業者の最大の不安要因となっております。
 現在、都内自治体は、このように未確定要素が多い中にあって、多様な子育てサービスの利用料を定め、財源を確保するなど、新制度の準備に臨んでおります。
 そこで、準備に当たる区市町村への支援とともに、これまで都が独自に充実を図ってきた保育ママや小規模保育などの事業についても、国の動向を踏まえ、都の認証保育と同様に都としての支援を検討すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、病児保育について質問します。
 保育ニーズの増大に伴い、子育て支援策の大事な柱である病児保育の必要性が一段と高まっております。しかしながら、病児保育を実施している自治体は都内でも偏在しており、しかも実施している自治体の域内でも、受け入れ施設が少ないなどの課題を抱えております。
 こうした現状を打開するため、都は、区市町村による病児専用の保育施設の設置を強力に支援すべきと考えます。さらに、病児保育施設の偏在に伴う都民全体の不便を補うため、都は、近隣の自治体間で病児専用の保育施設を共同で活用する広域利用を積極的に推進すべきであります。あわせて見解を求めます。
 次に、難病患者支援について質問します。
 今国会で、医療費助成の対象となる難病の種類を拡大する法律が成立しました。東京都がこれまで支援の対象としてきた難病患者は当然のこと、都内医療機関も含めて、全ての関係者が新制度のもと、今後も安心して治療、療養を行うことができるよう万全を期すべきであります。その上で、難病支援には、支援拠点の機能と就労支援内容の充実が不可欠であります。
 先月下旬、都議会公明党が視察した北海道難病支援センターは、相談と宿泊、そして患者や家族会の相互交流という三つの機能を担っておりました。難病相談員を配置して、療養生活や医療、福祉制度、年金など幅広い相談業務に応じているほか、定員十八名分の和洋室を備え、入院待ちや検査通院での長期宿泊にも応じております。ほかに交流スペースもあり、視察した日も患者や家族会の方々が熱心に交流しておりました。
 北海道では、難病患者への就労支援にも力を入れております。難病支援センターに隣接する地域支援センターアラジンには、現在十六名の患者が通所し、ハローワークを通じた本格就労を目指しております。難病患者は日々病状が変化することから、計画的な就労が困難であり、各人の病状を慎重に見きわめ、助け合いながらトレーニングを重ねる姿が印象的でありました。
 法の成立により、支援患者は大幅に増加します。また、都の難病相談支援センターの最寄り駅である広尾駅のバリアフリー化も進展し、利用者の利便性も向上しつつあります。
 こうした中で、同センターの機能強化や多摩のセンターの新設、そして就労支援の強化など、施策の充実が必要と考えます。都の見解を求めます。
 次に、処方薬依存症への対応について質問いたします。
 近年、精神医療などで処方された薬が原因で薬物依存症に陥る人がふえております。一般的に薬物依存症というと、覚醒剤やシンナー、脱法ハーブなど、快楽や刺激を求めて手を出すというイメージがあります。
 しかし、問題が顕在化しにくいのは、精神医療で処方された睡眠薬や抗不安薬などを大量に服用した結果、依存症に陥ってしまう、いわゆる処方薬依存症であります。患者の正確な数は把握されておりませんが、二〇一〇年に全国約千六百カ所の精神医療機関を対象に調査したところ、薬物障害患者のうち、処方薬を主たる原因とする患者の割合は、覚醒剤に次いで全国第二位となったとの調査報告もあります。
 処方薬の摂取を中断した際に起きる精神的、身体的症状の恐ろしさは、覚醒剤などの他の薬物依存症と何ら変わらないといいます。さらに、自傷行為や自殺を企て、救急車で搬送されるケースもふえております。ただでさえ過酷な救急医療の現場に、より一層の負担がかかっている実態もあります。
 いうまでもなく精神医療の治療は、薬物療法とカウンセリングなどによる精神療法の二つに大別されますが、我が国では、診療報酬上、薬物療法に手厚いため、結果的に精神療法を受けることが制限されております。都として、こうした現状を改善することを国に強く求めるべきであります。
 あわせて、精神医療を受ける前段階として、患者が身近な地域で気軽に相談できる体制づくりや、調剤薬局の協力体制の確立など総合的に推進すべきであります。それぞれ見解を求めます。
 次に、教育施策について質問いたします。
 児童生徒がいじめによって自殺に追い込まれた事件が大きな社会問題になって以降、我が党は一貫して、いじめ防止のための条例制定を主張してまいりました。今定例会に、いじめ防止対策推進条例案が提出されたことを高く評価するものであります。
 条例案では、都立学校での重大ないじめの事案の発生に備え、学校や教育委員会に常設の組織や附属機関を設置すると定めております。さらに、知事の指示により、常設機関とは別に有識者による附属機関を設置できるとしております。知事の判断で設置する附属機関については、議会への報告も義務づけており、重層的で、かつ透明性や公平性にも配慮したものといえます。そうした内容の本条例をもとに、いじめ防止の実効性を高めることについて、知事の見解を伺います。
 とりわけ、いじめの発生率の高い小中学校への対策は急務であります。区市町村の教育委員会に、都と同様のいじめ対策用の附属機関を設置するためには、やはり条例の制定が必要であります。
 都は、都内全ての区市町村において円滑に必要な条例の制定が進むよう支援すべきであります。見解を求めます。
 条例の実効性を高める上で重要な役割を果たすスクールカウンセラーを常設で全校配置するよう、この際強く要望するものであります。
 次に、防犯カメラの設置促進について質問いたします。
 子供や女性等を狙った悪質、凶悪な事件が後を絶ちません。
 これまで都議会公明党は、防犯対策の強化策として、防犯カメラの設置促進を繰り返し主張してまいりました。二〇一二年第二回定例会で、防犯カメラの設置効果をただした我が党の代表質問に対し、警視総監からは、犯行を思いとどまらせる効果に加え、犯人の特定、犯人の立証に極めて有効との旨の答弁がありました。
 都は、青少年・治安対策本部を中心に、平成十六年度から商店街を、平成二十二年度からは町会等を対象に、防犯カメラの設置補助事業を実施してまいりました。この事業が開始されて以来、ことしで十年になります。当初の機材の老朽化や日進月歩の技術革新の中、我が党は、防犯カメラの更新について補助事業の対象とすべきと訴え、既に実現してまいりました。
 今後は、都民の安全・安心を守るため、都は、防犯カメラに関する補助事業をさらに強化拡充すべきであります。見解を求めます。
 先ごろ、当時小学一年生の栃木県の女児が、帰宅途中の通学路で凶悪な犯罪の犠牲となった事件について、防犯カメラに残された画像が犯人逮捕の有力な決め手になったとの報道がありました。都は、今年度新たに通学路防犯設備の整備事業を実施することにしておりますが、通学路の安全を願う都民の期待に応えるため、学校、家庭、地域の意向が十分に反映された事業とすべきと考えます。教育長の見解を求めます。
 また、商店街や町会、自治会からは、防犯カメラの維持管理費についても補助を求める声が多く寄せられております。防犯カメラの維持管理費補助も視野に、都は取り組みを強化拡充するよう、改めて強く要望いたします。
 次に、中小企業対策について質問します。
 知事は日ごろから、中小企業や零細企業が元気になれば、東京全体に活力が生まれると述べております。
 そこでまず、都内の中小企業への支援に臨む知事の決意を伺います。
 ことし二月から、経営者保証に関するガイドラインの適用が開始され、信用保証制度を活用しない、いわゆる金融機関のプロパー融資でも個人保証に頼らない融資が可能となりました。これにより経営者個人の負担が軽減され、事業展開に取り組みやすくなるなどの効果が期待されております。
 ガイドラインでは、企業と金融機関それぞれに具体的な取り組みを求めておりますが、都はこれをしっかりと周知し、都内中小企業の融資環境の改善に結びつけるべきであります。見解を求めます。
 都は、我が党のかねてからの主張を受けて、動産・債権担保融資、いわゆるABL制度を創設し、ことし五月から取り扱いを開始いたしました。このABL制度は、経営者の個人保証や土地を担保にしない新たな資金調達手段として、実効性の高い取り組みであるといえます。
 今後、都内中小企業の経営をより一層後押しするため、都はABL制度の利用促進を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 和食が世界無形文化遺産に登録されるなど、日本文化への関心は、近年世界的な広がりを見せております。
 例えば、いわゆるポップカルチャーの分野でも、来る七月二日からの五日間、東京都と姉妹友好都市を結ぶパリで、アニメを中心としたジャパンエキスポが開催されます。ことしで十五回目となり、今やヨーロッパ最大の日本文化の祭典となっております。
 一方、アニメやファッションなどのクールジャパン関連産業は、映像配信やグッズ販売だけでなく、衣食住を問わず、リアルな日本文化や生活習慣への関心を広げ、訪日意欲を高めるきっかけとなっております。
 二〇二〇年の東京五輪は、クールジャパン分野で、長年、下支え的に活躍してきた多くの都内中小企業にとって、絶好のビジネスチャンスであります。東京に世界の注目が集まるこの機会を逃さず、クールジャパン関連産業が将来の東京の活力を担う産業の一つとして成長できるよう、都としても積極的に育成や発信を行うべきと考えます。知事の所見を伺います。
 次に、環境対策について質問いたします。
 我が党は、再生可能エネルギー促進PTを設置し、都が再生可能エネルギーの先導役を果たすよう主張してまいりました。これを受けて、舛添知事が今月三日、東京都再生可能エネルギー拡大検討会を設置したことは、普及拡大に向けた大きな一歩であり、評価いたします。
 そこで、改めて、都が先頭に立って再生可能エネルギーの拡大を加速していくことについて、知事の見解を伺います。
 我が党はかねてより、再生可能エネルギーの東北地方への投資は、東日本大震災の被災地の復興にも役立つと主張してまいりました。まさに官民連携ファンドこそ、被災地復興にも貢献するものであります。
 そこで、現行の官民連携インフラファンドの成果と、今後の新たなファンドの活用の取り組みについて、都の見解を求めます。
 次に、防災対策について質問いたします。
 初めに、水害対策についてであります。
 ことしの夏は、五年ぶりにエルニーニョ現象が発生し、秋にかけて続く可能性が高いといわれております。この現象が起こると、日本では集中豪雨に加え、台風の列島直撃等もふえると予測されていることから、浸水被害への備えが必要であります。
 豪雨対策に必要なことは、河川整備、下水道整備、流域対策を複合的、重層的に実施していくことであります。中でも、宅地での雨水浸透が中心となる流域対策は広範に展開していくことが肝要であり、都民の協力が不可欠であります。
 そこで、この流域対策を推進していくために、宅地での雨水浸透対策の一層の支援や啓発活動等に積極的に取り組むべきであると考えますが、都の見解を求めます。
 また、浸水被害は豪雨だけが原因とは限りません。平成二十四年十月の米国を襲ったハリケーン・サンディは、ニューヨークの地下鉄を高潮によって水没させています。もし東京でこのような災害が発生した場合、沿岸の地下街や地下鉄等では、人命や公共交通機関等に重大な影響をもたらす可能性が高いと考えられます。
 都は、地下街や地下鉄への水害は、豪雨のみならず、高潮や津波、地震による破堤などによっても起こり得ることを考慮すべきであります。地下街、地下鉄等を水害から守るためには、水害全般の対策等をしっかりと検討する体制づくりが不可欠であると考えますが、都の見解を求めます。
 最後に、島しょ部の災害対策について質問いたします。
 南海トラフ巨大地震発生の際には、救援活動が西日本に集中することが想定されております。そのため、八丈町では、人口約八千人が長期間にわたって孤立化することが危惧されております。また、最大で三十メートルを超える津波が想定されている新島村では、避難対策や備蓄の強化が最大の課題であり、我が党はその対策の推進を求めてまいりました。
 都は、本定例会に東京都地域防災計画修正素案を報告しております。これには、南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定や、昨年十月に発生した伊豆大島豪雨災害の教訓を踏まえ、新たな課題と概要が記されております。
 しかし、残念ながら、伊豆諸島それぞれの島が抱える状況が深刻であるにもかかわらず、緊急課題についての具体的な事業スケジュールが明らかになっておりません。加えて、島しょ部の状況は、地形や地盤、集落など、島ごとに異なります。
 そこで都は、具体的な取り組み内容と事業スケジュールを明らかにした防災計画のアクションプランとなるものを早期に策定し、島しょ部の地域特性に応じた防災対策の強化を着実に進めるべきであります。見解を求め、代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 橘正剛議員の代表質問にお答えいたします。
 都市外交についてでありますが、外交は国の専管事項でありますけれども、都市には都市だからこそできる外交があると思っております。都市同士が交流を通じて相互理解を深めることは、国家間の良好な関係にも資するものであります。
 私は四月に、王安順北京市長の招待を受けまして北京市を訪問し、都市問題の解決に向けた協力の推進で合意をいたしました。元外務大臣の唐家中日友好協会会長、汪洋国務院副総理など中国政府要人等との会談や、首都師範大学における学生との対話を通じ、日中相互理解の促進を図ることができました。
 また、就任直後の二月のニューサウスウェールズ州首相の訪問を皮切りに、五月のベルリン副市長など、四カ月間で約二十件の表敬訪問を受け、積極的なトップ外交を行ってきたところであります。
 こうしたさまざまな機会を通じ、粘り強く都市のレベルで人と人とのつながりを太くすることが、長期的に近隣諸国や世界の国々との関係を安定強化することにつながると思っております。
 今後も、姉妹友好都市等との間で都市の課題解決に向けた協力や、文化、スポーツなど幅広い分野での交流を推進し、東京、日本、ひいてはアジアを初めとする世界の発展に尽力していきたいと思います。
 太田記念館を活用した交流促進についてご質問がございました。
 太田記念館は、日中友好に尽力し、孫文とも親交のあった故太田宇之助氏から生前に寄贈を受けました杉並区久我山の土地に、都が平成二年に開設した留学生宿舎で、これまで北京から約五百名近くの留学生を受け入れてまいりました。
 先日、私は太田記念館で、中国大使館の韓志強公使と留学生受け入れ等の教育分野の責任者であります白剛公使参事官の同席のもと、日本で真剣に学ぶ北京からの留学生と懇談いたしました。
 この席で、留学生からは、静かで落ちついた環境で安心して勉学に励むことができると、大学に近くて研究に専念できると、そういう声を聞きました。私も、フランスやスイスへの留学経験がございますけれども、利便性と居住環境にすぐれた太田記念館は、留学生活を送る上ですばらしい施設であると実感をした次第であります。
 この交流施設をさらに有効活用し、東京と北京が直面している環境や都市交通などの問題を研究する留学生の受け入れを促進することは、大変有意義であります。今後、北京市と協力して、こうした留学生の優先的な受け入れを進めたいと思っております。
 また、今後の友好のかけ橋となる人材バンク構築に向けて、太田記念館の卒寮生で日中友好に重要な役割を果たしている方の協力も得て、卒寮生のネットワークづくりに取り組む決意であります。
 さらに、こうした取り組みを加速させるため、来年、開館二十五周年記念式典を開催し、そこに北京市長と駐日中国大使を招待したいと思っております。
 今後の東京と北京の両都市の友好関係を発展させ、日本と中国の関係改善にもつながるよう、太田記念館を活用した東京都としての外交を積極的に推進していく所存でございます。
 続きまして、会場計画の見直しについてでございますが、オリンピック・パラリンピックは、東京という都市に大きな変革をもたらす絶好の契機となります。都民にとって、大会期間中はもとより、大会後もオリンピック・パラリンピックの価値を実感できることが何よりも重要だと考えております。
 そのため、私は、招致に当たって策定した会場計画を、都民、国民にとってよりよいものとするため、レガシーや都民生活への影響、整備コストの高騰への懸念などの視点から、再検討することといたしました。既存施設の活用や整備費の圧縮など、見直しの基本的な考え方に沿って、今後、具体的にこの見直しを進めていきたいと思っております。大会後の東京に、有形無形の貴重なレガシーが根づき、都民が二〇二〇年大会を本当に誇りに思えるものにしていきたいと思います。
 今後、会場計画の再検討に当たりましては、都議会の皆様方のご理解とご協力を仰ぎながら、大会組織委員会との緊密な連携のもと、IOC、IPC、国内外の競技団体等と真摯に議論を行い、広く都民の理解が得られる計画としてまいります。
 アーツカウンシル東京の体制強化と、我が国の芸術文化の力を結集した文化プログラムについてでありますが、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会を文化の面でも史上最高のものとするためには、先進的で類を見ない文化プログラムを展開していかなければなりません。
 ロンドン大会では、組織委員会とロンドン市、そして芸術文化の推進機関であるアーツカウンシル・イングランドの三者が連携して取り組んだことが、この文化プログラムを成功に導いたわけであります。
 都は、既にアーツカウンシルを日本で初めて本格的に設置いたしましたが、文化プログラムにおける中核的役割を果たしていくため、国内外のアーティストの活動支援はもとより、文化施設を支える人材の育成や、東京の特性を生かした先駆的な文化事業の企画、推進を担うことができますように、体制をより一層充実する必要があります。
 このため、アーツカウンシル東京について、二〇二〇年に向けて今年度から強化に着手し、民間支援機能の拡充や専門人材の積極的登用などの取り組みを段階的に進めてまいります。
 今後、組織委員会などと緊密に連携しながら、さまざまなジャンルの芸術家や人々の参加を得て日本の文化の力を結集し、二〇二〇年の東京大会を文化の面でも成功に導いてまいります。橘議員ご指摘のように、文化でも世界一になるんだと、そういう思いでこの二〇二〇年を有効に活用したいと考えております。
 続きまして、多文化共生社会の推進などの人権施策についてでありますが、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会を、史上最高、世界一の大会とするために、人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく差別は、オリンピックムーブメントとは相入れないというオリンピック憲章の理念が広く社会に浸透している、それがこの東京なんだと、そういう成熟した都市の姿を示すことが重要であります。
 日本には、他者を思いやり、尊重し、互いに助け合って生活する伝統と、多様な文化を受け入れ発展してきた歴史がございます。こうした日本の特性を十分に生かし、心のバリアフリーを実現することで、日本人と外国人が互いに阻害し合うことなく、民族、文化、宗教などの多様性を理解し、尊重し合う社会を築き上げ、日本を訪れる人々に最高のおもてなしをしたいと思っております。
 そのためには、多文化共生社会の実現に向けて、多様性への理解と、差別はあってはならないという人権尊重の理念を都民全体で共有できるように積極的に啓発に取り組むとともに、都の姿勢を国内外に発信してまいります。
 ハンナ・アーレントという女性ですけれども、これはユダヤ人、ドイツ人で、ナチに迫害されまして、ヨーロッパ、アメリカで活躍しましたけれども、彼女がいった言葉で私が非常に重く思っていますのは、民主主義の基礎というのは人間の多様性にあるということであります。そういう思いを、東京の人々、日本国民全体が持つことが、さらにすばらしい東京、さらにすばらしい日本を実現する道だと確信しております。
 続きまして、地域包括ケアシステムについてでありますが、多くの高齢者は、たとえ介護が必要になっても、可能な限り住みなれた地域で生活したいと望んでおります。そうした社会を実現していくためには、高齢者のための適切な住まいを確保し、医療や介護、生活支援サービスが日常生活の場で切れ目なく提供できる地域包括ケアシステムを構築していかなければなりません。
 政策の出発点は、常に現場にある。地域の高齢者の実態や地域の資源を最もよく知っているのは、介護保険制度の保険者である区市町村であります。
 今後、区市町村とともに、高齢者が安心して暮らし続けることができる大都市東京にふさわしい地域包括ケアシステムの構築に向け、全力で取り組んでまいります。
 続きまして、いじめ防止の実効性を高めることについてでございますが、いじめは、子供の生命や心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を及ぼすものでありまして、絶対に許されない行為であります。とりわけ、子供がいじめを苦にしてみずからの命を絶つようなことは決してあってはなりません。いじめ問題を解決するために、学校や保護者はもとより、社会全体の力を結集する必要がございます。
 この条例では、都、区市町村、学校、保護者等のそれぞれの責務を明確にするとともに、地域や関係機関等と緊密に連携するための組織や、重大な事態が発生した場合の調査体制の整備などについて定め、実効性のあるいじめ防止対策を推進できるようにいたしました。
 いじめは、どの学校でも、どの子供にも起こり得る。全ての子供たちが安心して学校に通い、学ぶことができるよう、学校、家庭を初め、社会全体でいじめ問題に対応していくことを目指し、都として全力で取り組んでまいります。
 中小企業の振興についてでございますが、東京の中小企業は、長く続いたデフレの中でも懸命に経営革新に取り組み、困難な状況に立ち向かってきました。都内企業数の九九%を占める中小企業が、景気の好循環の波に乗り元気にならなければ、東京の発展、ひいては日本の成長はあり得ません。
 そのため、中小企業の経営基盤の強化に向け、新たな取引先の開拓や日々の資金繰りなどのさまざまな経営課題の解決をきめ細かく支援してまいります。
 また、成長産業分野への参入や、世界市場への果敢な挑戦を強力に後押しするとともに、大企業や大学、研究機関との連携を強化し、新たな技術や製品の開発に向けた中小企業のイノベーションを推進してまいります。さらに、意欲ある多様な人材が知識や経験を生かし、みずから会社を興して新しい事業にチャレンジできるよう、創業環境の整備にも力を注ぎます。
 こうした施策を総合的に展開することで産業力を強化し、東京の経済を再生させ、持続可能な成長軌道に乗せてまいります。
 続きまして、クールジャパン関連産業に対する支援についてご質問がございました。
 日本人は、四季の移り変わりを生活や文化に反映し、繊細な美的センスを育んできました。アニメやファッションなどは、こうした日本人の豊かな感性が生み出す独自の魅力で、海外の人々を魅了しており、ビジネスとしても世界に通用する競争力を持っております。
 大都市東京には、マスメディアや巨大な消費市場の存在を背景に、いわゆるクールジャパンを支えるクリエーティブ産業が集積しており、すぐれた感性を持つ多様な人材が切磋琢磨し、新たな価値をつくり出しております。
 都は、こうした東京の強みを十分に生かし、これらの分野における人材の輩出や関連企業の国際展開などを集中的に支援して、東京に活力と成長をもたらすリーディング産業として育て、その魅力を世界に発信してまいります。
 再生可能エネルギーの拡大についてでありますが、東京は電力の大消費地であり、都民、事業者の活動に不可欠なエネルギー需給の安定を図るとともに、気候変動対策にも資する低炭素な電力の利用割合を拡大していくことが重要であります。
 このため、今月三日に、エネルギーの専門家や民間事業者から成る東京都再生可能エネルギー拡大検討会を立ち上げたところでありまして、都内外での再生可能エネルギーの導入拡大に向けた具体策を検討してまいります。
 第一回会議には私も参加いたしましたが、地価が高い東京の制約を踏まえた官民連携再生可能エネルギーファンドによる東北地方などへの設置促進や、都内においても大量にストックがある住宅及び屋外駐車場への太陽光発電の導入など、東京の特性を生かした今後の取り組みについて、活発なご議論をいただきました。
 この検討会におきまして、都内外で導入拡大を図るためのさまざまな工夫や新たな可能性について議論を重ね、検討結果は、年末までにまとめます東京都長期ビジョンに反映させてまいります。
 都の施設におきましても、浄水場や水再生センターへの太陽光、バイオマス及び小水力発電の設置など率先した導入を進め、東京オリンピック・パラリンピックも見据えた上で、東京全体で再生可能エネルギーの拡大に向けた取り組みを加速し、環境先進都市東京の姿を国内外に示していきたいと思っております。
 なお、その他の質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁させます。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) ご答弁申し上げます前に、先ほどの答弁に誤りがあり、議事を混乱させてしまい、まことに申しわけありませんでした。深くおわびを申し上げます。
 教育に関する三点のご質問ですが、まず、オリンピック教育の充実についてであります。
 児童生徒がオリンピックやパラリンピックの理念や歴史を正しく学び、我が国や他国の生活や文化を理解することは重要であります。
 都教育委員会は、本年度、オリンピック教育推進校を三百校指定し、地域の外国人や留学生との交流などの取り組みを行うとともに、オリンピック学習読本の制作を進めており、今後、映像教材等の作成も検討をしてまいります。
 六年後の開催に向けて、こうした推進校の取り組みを踏まえ、オリンピック学習はもとより、学校と参加国が交流する一校一国運動や、大会運営を支えるボランティアの育成など、さまざまな取り組みを都内全ての公立小中学校等で展開し、児童生徒が国際的な視野を養い、世界平和に貢献する教育を積極的に推進してまいります。
 次に、区市町村のいじめ防止対策推進条例制定のための支援についてであります。
 いじめ問題の解決には、未然防止の取り組みを推進するとともに、いじめが発生した場合の対処や、再発防止の対応を確実に行う体制づくりが必要であります。
 本定例会に提案をしておりますいじめ防止対策推進条例では、基本理念を明らかにするとともに、都及び学校等の責務、対策を推進するための附属機関などの組織に関する基本的な事項などを定めることにより、いじめ防止対策を総合的かつ効果的に推進する体制について規定をしております。
 都教育委員会は、区市町村教育委員会に対して、本条例を初め、今後制定する都の基本方針や総合対策の趣旨を周知し助言を行うとともに、各自治体がいじめ防止のための条例や方針を適切に策定することができるよう、積極的に支援を行ってまいります。
 次に、通学路における防犯カメラの整備についてであります。
 都内におきましても、登下校時の児童が事件に巻き込まれる事例が発生しており、学校、家庭、地域が連携をした通学路の見守り体制の充実が求められております。学校の通学路に防犯カメラを設置することは、こうした体制を強化する上で有効でございます。
 このため、今年度から五年間で、希望する全ての公立小学校の通学路に一校当たり五台程度の防犯カメラを設置できるよう、区市町村に設置経費の二分の一を補助する事業が開始されました。
 都教育委員会は、区市町村教育委員会が地域住民の合意を得ながら防犯カメラの設置を円滑に進められるよう、事業説明会や導入意向調査の実施、運用基準例の提供など、きめ細かく区市町村を支援してまいります。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都居住支援協議会の設立についてでございますが、都は、今月中の居住支援協議会の設立を予定しており、現在、その母体となる、すまいサポート連絡協議会の構成員と鋭意協議を重ねているところでございます。
 なお、活動内容といたしましては、区市町村による協議会の設立と取り組みを支援するため、区市町村や不動産関係団体、NPOなどを対象に、協議会の役割や事業推進に関するセミナーの開催などを予定しております。
 また、既に設立された他県の協議会の取り組みなどについても広く調査し、情報提供してまいります。
 今後、こうした活動を通じて、高齢者など住宅の確保に配慮を要する方々の居住の安定確保を図ってまいります。
 次に、高齢者が多世代と一緒に住める住宅の供給促進についてでございますが、高齢者が住生活において、多様な世代の方々との触れ合いが可能となる環境を整えていくことは重要でございます。
 このため、高齢者とさまざまな居住者とが交流しながら暮らし、災害時にも助け合える住宅をモデル的に整備することとし、新たに一般住宅を併設したサービスつき高齢者向け住宅整備事業を実施することといたしました。
 事業を進めるに当たりましては、民間から創意工夫を生かした提案を公募し、区市町村の意見も踏まえ、年内に事業者を選定いたします。
 今後とも、高齢者が生き生きと安心して生活できるよう、多様化するニーズに対応した住宅の供給を進めてまいります。
 次に、流域対策の推進に向けた取り組みについてでございますが、都は、豪雨時の流域対策の実効性を高めるために、雨水貯留浸透施設への一層の支援や、重点的に対策を実施する流域ごとの豪雨対策計画の拡充などの考え方を含んだ豪雨対策基本方針を今月末に改定する予定でございます。
 こうした流域対策を着実に実施していくには、都民や企業などからの理解と協力を得ていくことが不可欠でございます。
 そのため、都及び区市町村から成る総合治水対策協議会の活用、施設見学会の実施、ホームページでの周知など、さまざまな機会を捉え啓発活動などを積極的に行い、流域対策の一層の促進に努めてまいります。
 最後に、地下街などの浸水対策への体制づくりについてでございますが、都はこれまで、地下街における豪雨時の浸水防止や避難確保などの対策を促進するために、地下空間浸水対策ガイドラインや大規模地下街ごとの浸水対策計画の策定に取り組んでまいりました。
 地下街の浸水対策の実効性を一層高めるためには、水害の原因や地域特性を考慮した上で、地下街に隣接する地下鉄やビルなどにも対象を広げることが必要であり、今後これらの施設管理者と水害対策の検討体制の構築に取り組んでまいります。
 また、国が水災害に関する防災、減災対策のため、本年一月に設置した地下街・地下鉄等ワーキンググループにおける検討状況を踏まえるなど、効果的な浸水対策を推進してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、Jヴィレッジの活用についてでございますが、二〇二〇年大会の開催に当たり、スポーツを通じて被災地の復興支援を行うことは非常に重要であります。被災地におきまして事前合宿等の大会関連事業が実施されることは、復興した姿を世界に示すことができるとともに、被災者の方々にとりましても、オリンピック・パラリンピックを身近に感じていただける大変よい機会であります。
 お話のあった福島県のJヴィレッジは、日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンターとして開設され、震災後に福島第一原子力発電所事故の対応拠点として利用された、国際スポーツや震災復興の象徴的な施設であります。
 都としては、大会組織委員会や国などと緊密な連携を図りまして、このJヴィレッジを初め、被災地のスポーツ施設について事前合宿の誘致を支援するなど、被災地の声をきめ細かく聞きながら、被災地支援を積極的に進めてまいります。
 次に、カヌースラローム会場の整備についてでありますが、都が整備する競技会場は、オリンピック・パラリンピック大会の要件を満たすとともに、環境にも十分配慮しながら整備を行い、大会後には、都民の貴重な財産として有効に活用される必要があります。
 カヌースラローム会場の計画地であります葛西臨海公園は、お話のとおり、その豊かな自然環境とともに、葛西臨海水族園や人工なぎさ、芝生広場など、都内でも有数の水辺の憩いと行楽の場であります。こうしたことから、公園の自然環境への配慮も踏まえ、隣接する下水道局用地の活用など施設配置の検討を行ってまいります。
 また、カヌースラローム競技施設は、その特性から、カヌー競技のほか、プールなど水辺に親しめるさまざま活用が可能であります。ご提案のような葛西臨海公園の持つ魅力をさらに高め、地域の方々のニーズにも応えながら、より多くの都民に利用されるよう、大会後の施設の利活用について検討してまいります。
 次に、二〇二〇年東京大会の開催に向けた大学との連携についてでありますが、大会の開催準備や運営に多くの学生の参加を得ることは、大会を成功に導く上で重要であり、次の世代を担う若者たちにとって貴重な経験となります。
 大会組織委員会は、この六月二十三日に、全国の大学に呼びかけ、五百を超す大学の賛同を集め、協定を結ぶ予定であります。今後、オリンピック教育の推進やグローバル人材の育成などに、各大学が語学や医療などの専門性や強みを生かして取り組んでまいります。
 都におきましても、オリンピック・パラリンピックを題材とした大学の講座等への講師派遣や、東京マラソンでの救護活動への学生の協力、大学の持つスポーツ医科学のノウハウを生かした高校生アスリートの競技力向上事業などにより、大学との連携を進めてまいります。二〇二〇年大会を支える人材を育成するとともに、学生が自信と誇りを持ち、国際社会への理解を深められるよう取り組んでまいります。
 最後に、二〇二〇年大会の事前合宿についてでありますが、事前合宿等の大会関連事業が多摩地区を初めとする都内各所で実施されますことは、都内の開催機運の醸成に極めて重要であるとともに、地域の方々、とりわけ次の世代を担う若者が身近に国際交流を体験できる貴重な機会となります。
 今後、大会組織委員会において各競技の事前合宿に求められる要件を設定して、全国から要件を満たす候補地を募集する予定でございます。リオ大会までに各オリンピック委員会の参考となるよう、候補地情報を記載したガイドブックを作成してホームページで公表し、情報提供する予定であります。
 都といたしましては、大会組織委員会が事前合宿の要件を設定する前に、都内区市町村が準備し、応募する際の参考となるよう、過去大会における事前合宿の実例などについて情報提供してまいります。また、都内の候補地に関する情報を大会参加国へ積極的に発信するなど、さまざまな支援を実施してまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 都が整備をするオリンピック・パラリンピック施設などへの最新の環境技術の活用についてでありますが、都は、平成二十三年に省エネ・再エネ東京仕様を策定するなど、これまでも率先して省エネ、再エネ技術の導入に取り組んでまいりました。
 一方、近年、建築分野における環境技術の進展は著しいことから、施設の特性や費用対効果等を勘案しながら新技術の検証を行ってきたところであり、これらの成果を踏まえて、現行仕様をこの六月に改正いたします。これにより、一層の高効率な電気設備の採用を行うとともに、自然の風や地中熱の積極的な活用などを進めてまいります。
 こうした取り組みを都が整備するオリンピック・パラリンピック施設にも適用するとともに、今後も、さらなる新技術の導入により、環境負荷の低減に積極的に取り組んでまいります。
   〔下水道局長松浦將行君登壇〕

〇下水道局長(松浦將行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水の高度処理の短期間での導入についてでございますが、従来の高度処理は、施設の新たな整備が必要で、導入に期間を要します。そこで、従来の高度処理に比べて窒素とリンの除去率が若干低いものの、既存施設の改造と運転管理の工夫により効率的に水質改善を図ることができる準高度処理の導入を平成二十二年度より進めております。
 従来の高度処理は、平成八年度の導入開始から十八年かけて百十九万立方メートル分の導入にとどまっておりましたが、準高度処理では、平成二十六年度までの五年間で百二十二万立方メートル分が完成する見込みであり、高度処理の能力を倍増させることとなります。
 今後は、平成二十七年度から三十一年度までの五年間で、新たに百三十八万立方メートル分の準高度処理を導入し、さらなるスピードアップを図ってまいります。
 次に、新たな高度処理技術の開発と導入についてでございますが、従来の高度処理と同等の窒素やリンの除去率を確保するとともに、省エネルギー化を可能とする新たな高度処理の技術開発をことしの三月に完了いたしました。
 準高度処理と新たな高度処理は、従来の高度処理と比較すると、いずれも電力使用量を二割以上抑制できます。既存施設の状況などに応じまして最適な高度処理技術を計画的に導入し、水質改善と省エネルギーの両立を効率的に実現してまいります。
 新たな高度処理は、今年度、芝浦水再生センターへ、平成二十七年度は、さらに葛西、浅川の二つの水再生センターへ導入することとしております。平成三十一年度までに、一日平均処理水量の七割以上に相当する四百万立方メートル以上の高度処理を導入し、東京湾の水質改善に一層貢献してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京湾の水質改善についてでございますが、東京湾にかかる汚濁負荷は、下水道事業に関するものが約四割を占めるほか、下水道未整備地域の市街地からの雨水や、水田、畑、山林からの排水等に起因しており、広域的に取り組むことが重要でございます。
 このため、東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県は、国の総量削減基本方針に基づき、それぞれ計画を定め、下水道の整備のほか、事業所等への規制指導や浄化槽の整備など、陸域におけるさまざまな施策に取り組んでおります。
 また、東京湾再生推進会議等を通じて、国や関係自治体が協働し、底泥のしゅんせつ等の海域の環境改善対策を実施するほか、施策効果を把握するための水質モニタリングも行っております。
 今後とも、東京オリンピック・パラリンピックの開催にふさわしい都市として、親しみやすく美しい東京湾の再生を、周辺の各県などとも協働して目指してまいります。
 次に、官民連携ファンドについてでございますが、現行ファンドは、千葉県の火力発電など一般家庭約二十七万世帯分の電力量に相当する電源確保に貢献してまいりました。今年度は、東北地方の再生可能エネルギー案件として、宮城県や福島県において太陽光発電に投資する運びとなっております。
 再生可能エネルギーの利用割合二〇%の実現を目指して創設する新たなファンドにつきましては、東北地方などにおける広域的な普及拡大と都内での導入を図るべく、運営事業者の募集を先月開始し、十月下旬には選定を完了、来年二月までのファンド立ち上げを予定しております。
 今後、ファンドを活用し、被災地の復興にもつながる再生可能エネルギーの一層の普及拡大に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 町中の至るところで文化プログラムを展開することについてでありますが、都はこれまで、民間の美術館と町が連携したイベントである六本木アートナイトや、文化施設が集積する上野恩賜公園でのヘブンアーティスト公演などを通じて、地域の特性を生かした文化の魅力を発信してまいりました。
 昨年一月にIOCへ提出した立候補ファイルでは、文化プログラムの基本的な考え方の一つとして、大会期間中、都市自体が祝祭のための大きな劇場となると示されております。
 二〇一二年のロンドン大会では、市内の広場で数千人のダンサーが一斉に踊ったり、市中心部の交差点でのサーカスイベントなど、公共空間を活用した数多くの文化プロジェクトが実施されました。
 東京大会におきましても、公園や道路などの公共空間や民間の文化施設などを積極的に活用するとともに、多くの人が集まる都心部の交差点、高層ビルや地下街など、これまでに例のない場所での事業展開も検討してまいります。
 今後、国内外の文化関係者からアイデアを広く募るとともに、東京芸術文化評議会での議論も深めながら、こうした文化プログラムの実現に向けて取り組んでまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、人権施策推進指針の見直しについてでございます。
 東京を世界一の都市とするためには、全ての人が互いに認め合う人権尊重理念の浸透が不可欠でございます。都はこれまで、人権施策推進指針を踏まえ、啓発、教育、相談などの人権施策に取り組んでまいりました。
 しかし近年、子供や高齢者に対する虐待などの人権問題に加え、インターネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害の増加など、人権を取り巻く状況は複雑多様化しております。さらに、オリンピック・パラリンピック開催都市にふさわしい、人権が尊重される社会の実現が求められております。
 このため、今後の人権施策の基本的な考え方について検討する外部有識者の会議を設置し、人権施策推進指針の見直しに着手することといたします。
 次に、島しょ地域の防災対策の強化についてでございます。
 南海トラフ巨大地震による被害想定等に基づき、島しょ地域における津波対策など、必要な取り組みを地域防災計画修正素案として取りまとめました。現在、都民の皆様のご意見を伺うため、パブリックコメントを実施しております。本定例会での議論も踏まえ、七月には計画を修正し、全庁を挙げて防災対策を進めてまいります。
 さらに、二〇二〇年を見据え、スピード感を持って防災対策を推進するため、年内に防災プランを策定いたします。防災プランでは、地震等を初めとする災害への備えについて、自助、共助、公助の取り組みをわかりやすく示すことといたします。南海トラフ地震に伴う津波対策につきましても、必要な取り組みや事業の工程を明らかにし、地元自治体と連携しながら、島しょ地域の防災対策を着実に推進してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、日常生活圏域ニーズ調査の活用についてですが、区市町村は次期計画策定に当たり、高齢者の実態やニーズ、地域の抱える課題や不足しているサービス等を分析してサービス見込み量を算定するため、日常生活圏域ニーズ調査を実施しております。この調査は、国が具体的な調査項目を示しておりますが、都はこの内容とあわせて、計画策定に向け取り組むべき課題等を区市町村の担当者向けに説明しております。
 次期計画では、今後三年間の介護サービスの利用見込みに加え、十年後を見据え、必要な介護サービス量の推計も盛り込むこととなっており、都は、調査から得られたデータをツールを使って分析し、地域の実情や課題を踏まえ、適切なサービス展開が図られるよう、区市町村へのヒアリングや助言を行い、積極的に支援してまいります。
 次に、地域包括ケアの実現に向けた方策についてですが、地域包括ケアシステムの構築のためには、お話のように、日常生活圏域ニーズ調査の中で高齢者の実態とニーズを的確に把握するとともに、地域包括支援センター等で行う地域ケア会議での個別課題の検討を通じて、地域資源を把握することが重要でございます。
 そのため、都は昨年度、地域ケア会議で地域の課題の把握、分析を行い、政策立案に結びつけられるよう、会議の望ましい姿や効果的な運営方法、すぐれた実践例等を盛り込んだ報告書を取りまとめました。今後、都は報告書を活用し、地域ケア会議の活用を一層推進するとともに、区市町村の行う調査の充実が図られるよう、国の動向や区市町村の意見も踏まえながら、そのあり方を検討してまいります。
 次に、在宅介護や人材育成への区市町村支援についてですが、介護度の重い高齢者でも在宅で安心して生活できる環境を整備するため、都は、二十四時間対応可能な小規模多機能型居宅介護や複合型サービス等、地域密着型サービスの整備に補助を行い、区市町村を支援しているところでございます。
 また、昨年度、実例を使ったリ・アセスメント支援シートなど、区市町村と介護支援専門員が協力してケアプランの点検を行うためのガイドラインを作成いたしました。今後、適切なケアプランにより、高齢者ができるだけ自立した生活が送れるよう、区市町村に対し研修の実施や専門的助言を行う人材の派遣等を行ってまいります。
 こうした取り組みにより、在宅サービスの基盤整備や適切なサービス提供を支える人材の育成を進め、地域包括ケアシステムの構築に取り組む区市町村を支援してまいります。
 次に、子ども・子育て支援新制度についてですが、お話のとおり、先月示された新制度における公定価格の仮単価は平成二十九年度の単価であり、平成二十七年度、二十八年度の金額や加算項目などの具体的な内容は、いまだ国から示されておりません。都としては、早急に必要な情報を提供するよう、改めて国に対し強く求めるとともに、新制度に向けた区市町村の準備が円滑に進むよう支援してまいります。
 また、現在、東京都子供・子育て会議では、新たに策定する子供・子育て支援事業支援計画に盛り込む施策の方向性や具体的な取り組みについて議論を行っているところでございます。家庭的保育や小規模保育などへの支援につきましては、会議での議論や国からの情報も踏まえながら、今後、支援のあり方を検討してまいります。
 次に、病児保育についてですが、都は、区市町村における病児保育の取り組みを促進するため、保育所や医療機関等の専用スペースで実施する際の施設整備や、病児保育施設の人材やノウハウを活用した地域の保育所への支援等を都独自に支援してまいりました。また、今年度から病児保育施設を複数の区市町村で広域利用する場合、賃借料を補助する取り組みを開始いたしました。
 お話のように、病児保育のニーズは高まっており、今後、一層サービスを拡充することが求められております。そのため、都は今後とも、施設整備を進める区市町村を積極的に支援するとともに、東京都医師会の協力も得ながら地域の医療機関の取り組みを促してまいります。また、自治体間の広域利用が進むよう都が調整役を担い、隣接する区市町村それぞれに対して働きかけてまいります。
 次に、難病患者への支援についてですが、都はこれまで、難病患者の日常生活や就労に関する相談や支援を行う拠点として、難病相談・支援センターを設置し、在宅での療養生活や、患者、家族の交流活動を支援するとともに、家族等の事情で介護が受けられない場合には一時的に入院できるよう、病床を確保してまいりました。
 難病は、長期の療養を要し、患者本人や家族に大きな負担が生ずるため、安定した療養生活の確保と生活の質の向上を図ることが重要であり、本年五月に成立した法律におきましても、療養生活に関する相談や支援等が都道府県事業として改めて位置づけられ、明記されたところでございます。
 法に定められた事業の具体的な内容は、今後国から示される予定であり、その内容や、お話の他の自治体の取り組みも踏まえ、都としての今後の施策展開を検討してまいります。
 次に、精神疾患の治療法についてですが、国は、平成二十六年度の診療報酬改定において、適切な向精神薬の使用を推進するために、薬を多剤処方した場合の減算規定を新設するなどの対策を講じました。
 一方、精神療法の一つであり、世界的に広く使用されている認知行動療法につきましては、平成二十二年度から新たに診療報酬の対象となりましたが、対象疾患が鬱病等の気分障害に限定されており、また、個別の患者に実施することなどが要件となっております。
 このため、都は国に対し、認知行動療法の診療報酬について対象疾患を拡大するとともに、集団を対象とする場合にも評価するよう求めており、今後とも、精神疾患に有益な治療法に対して、適切な診療報酬上の評価がなされるよう強く働きかけてまいります。
 最後に、精神疾患患者を地域で支える体制についてですが、精神疾患に関して、身近な地域で気軽に相談ができ、必要なときに適切な医療が受けられる仕組みを構築していくためには、地域の関係機関が連携して取り組むことが重要でございます。
 このため、都は現在、四つの二次保健医療圏で、医療機関や調剤薬局、保健所、精神保健福祉センター、地域活動支援センター等の相談機関等による地域連携会議の開催や連携マップの作成などを行うとともに、一般診療科と精神科の合同症例検討会等を実施しているところでございます。
 今年度はこうした取り組みを六つの圏域に拡大し、医療機関や調剤薬局と相談機関の連携強化、向精神薬の適切な処方の普及など、精神疾患患者を地域で支える体制づくりを推進してまいります。
〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(河合潔君) 防犯カメラの設置に対する補助事業についてでありますが、防犯カメラの設置は、防犯に関する地域の活動を進める好機となることに加え、犯罪の抑止や犯罪が発生した場合の事件の解決にも資することから、地域の安全・安心を確保する上で大変有効であると考えております。
 このため、都は、都議会のお力添えをいただきながらこれらの事業を積極的に推進し、これまでに町会等にあっては合計二千百二十二台、商店街等にあっては合計二千六百六十五台の防犯カメラの設置を進めてまいりました。
 さらに、設置後七年を経過した更新分も補助の対象に追加したほか、今年度は、より多くの地域に普及するよう予算を大幅に増額するとともに、通学路に設置される防犯カメラに対する補助事業を創設いたしました。引き続き、地域の活動を積極的に支援してまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、経営者保証に関するガイドラインについてでありますが、このガイドラインでは、中小企業が個人保証によらない融資を希望する場合は、法人と経営者個人の資産の明確な分離や財務基盤の強化による返済能力の向上等を求めております。一方で金融機関には、ABLなど個人保証の機能を代替する融資手法の充実や、個々の事業者の状況に応じた適切な対応等を求めております。
 こうした内容の周知を図るため、東京信用保証協会において、事業者に対し丁寧かつ具体的な説明を行っております。
 今後、都といたしましても、制度融資の窓口でのパンフレットの配布や相談員による案内に努めますとともに、希望する中小企業に対して、本ガイドラインに対応した保証制度の活用を促してまいります。
 次に、ABL制度の利用促進についてでありますが、都が中小企業の資金調達の多様化を目的として創設したABL制度は、個人保証によらない融資手法の一つとしても有効な取り組みであります。現在、担保物件の種類ごとに、専門的なノウハウや実績を有する六つの機関を選定し、十九の金融機関で融資を受け付けております。
 都では、この制度の周知を図るため、事業者向けのパンフレットを作成し、中小企業団体等を通じて広く配布しております。また、商工会議所や商工会等に直接出向き、経営指導員に対する説明会などを行うとともに、取扱金融機関の営業職員向けの勉強会も実施しております。
 今後とも、取扱金融機関のさらなる拡大に努めますとともに、事業者に対する普及啓発に積極的に取り組むなど、ABL制度の利用促進を図ってまいります。

〇副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時四十九分休憩

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