平成二十六年東京都議会会議録第四号

〇副議長(藤井一君) 二十七番やながせ裕文君。
   〔二十七番やながせ裕文君登壇〕

〇二十七番(やながせ裕文君) バス、地下鉄、水道、下水道など、都の公営企業は、交通不便地域の解消、公衆衛生の向上、安全でおいしい水の供給という、都民にとって大きな役割を果たしてきました。
 これらの企業は、不断の経営努力を重ね、成熟した優秀な企業に育ちました。子供を育てるのが親の役割、成人した子供はひとり立ちさせるべきであります。
 国が昨年六月に閣議決定した三本目の矢である新たな成長戦略、日本再興戦略は、公共施設運営の民間開放が柱となっており、国内のインフラ整備、運営を担ってきた公共部門の民間開放を強く推進するとしています。
 安倍総理の言葉を引用しますと、エネルギー、医療、インフラ整備、がんじがらめの規制を背景に、公的な制度や機関が民間の役割を制約している、いわば官業といえる世界が今でも広い分野で残されています、いずれも将来の成長が見込まれる産業ばかりです、この官業の世界を大胆に開放していくこと、そして、日本人や日本企業が持つ創造力や突破力を信じ、その活力を自由に解き放つこと、これが安倍内閣の仕事です。このように述べられています。
 この言葉に強く賛同するものでありますが、あとはどこまで実行できるかであり、東京も含めたオールジャパンでこの方針を共有し、国と軌を一にして進めていくことが必要だと考えます。首都東京は、国の成長戦略を牽引する役割を果たすべきであり、官業の大胆な開放、都における公営企業の抜本的な改革に踏み出すべきであります。
 都の公営企業は、全国に先駆けて設備投資を行ってきた成熟企業であり、民間として対応できる十分な力を蓄えています。更新需要については、これまでの料金回収で蓄えを得ており、この蓄えをもって賄うことが企業経営の基本であります。交通、水道、下水道を所管する公営企業局は、さらに都民に大きな利益をもたらす存在となるよう、次のステージ、民営化を検討する段階に来ていると考えます。
 例えば、水道事業はどうか。東京都水道局は、世界一の技術を持ち、一千三百万都民においしい水を安定供給してきた実績があります。しかし、公営企業では限界がある。都は世界展開をうたっていますが、なぜ都がするのかという説明を求められますから、あくまで国際貢献レベルが限界であります。
 水ビジネスは、初期投資が大きくリスクをとらなければならないですし、何より意思決定の速さが肝心だからです。水ビジネスは成長産業だといわれ続けながら、日本の企業はおくれをとってきました。それは、水道事業が官業から脱皮できなかったからであります。
 世界での水関連産業は、二〇二五年に百十兆円といわれる巨大な市場ですが、フランスのヴェオリア、スエズ、イギリスのテムズウォーター、この水メジャー三社のシェアは圧倒的であります。イギリスやフランスでは、早くから上下水道の民営化が行われ、戦略的にこれらの企業を育ててきたのであります。
 中でもヴェオリアは、既に埼玉県や千葉県、広島市などで浄水場、下水処理場の管理を受託、大牟田市では浄水場を買収、松山市では水道事業を委託されました。日本企業が海外市場に参入するどころか、国内市場が海外の水メジャーに脅かされているという現状が残念でなりません。
 そこで、安全や安定供給に関してはしっかりと規制をかけること、これを前提として、都において水ビジネスを成長産業とはっきりと位置づけ、水道局を民営化する。プラントメーカーや商社と共同して和製メジャーを目指す。その企業体を政府と東京都が応援する。将来的には利益を上げて、納税、配当、料金値下げ、雇用の創出など還元してもらう。それこそ、東京がその財産を活用して、日本を牽引するモデルを構築することになるのです。国際貢献は大事でありますけれども、水道局はもっともっと大きなポテンシャルを持つ企業なのであります。
 国鉄はJR、電電公社はNTT、専売公社はJTになりました。これらの企業が官から民へ移行したことが、我が国の経済を活性化し、発展に大きく寄与したことは周知の事実であります。広く官業を開放することは、サービスの向上、効率化だけでなく、民間にお金が回り、地域経済の活性化や雇用の創出につながっていくのです。
 都は、公営企業の民営化を検討すべきと考えますが、今後の公営企業のあり方について知事の見解を伺いたいと思います。
 公営企業の改革の中でも、都が熱心に取り組んできたのが、いわゆる地下鉄一元化であります。都民の生活に密着し、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会期間中には移動の核となる地下鉄は、都営地下鉄と東京メトロに二元化されており、わかりづらい複雑な乗りかえや、割高な運賃、二重改札など、利用者は不便を強いられてきました。
 これらの解決には、経営の一体化、いわゆる地下鉄一元化が必須であることは明らかですが、財務省、国土交通省、東京メトロと複数のステークホルダーの思惑が複雑に絡み合い、残念ながら進展してきませんでした。
 都営地下鉄は、地道な経営改革を重ねてきた結果、六年間単年度黒字、これを続けております。順調に借金を返済しており、地下鉄一元化は都営の借金をメトロに押しつけるものだという主張には根拠がありません。むしろ、経営一元化は、その規模拡大のメリットを生かし、大胆なコスト削減を実現できる。サービスの一体化を加速させ、都民のさらなる利便性の向上を図ることができる。結果として、一元化によって、将来、企業価値が高くなることは間違いないのです。
 二月二十六日、つい先日ですけれども、衆議院予算委員会での質疑で、メトロと都営の経営一元化について問われた太田国土交通大臣は、知事もかわりましたものですから、また仕切り直し的なところもありますが、早急に協議をしていかなくてはいけないと答弁をされています。メトロの株式は速やかに売却することとされており、これが実施されれば、一元化は永久に困難なものになります。
 知事の地下鉄一元化に関する所見をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) やながせ裕文議員の質問にお答えいたします。
 まず、公営企業の民営化についてでありますけれども、地下鉄やバス、水道、下水道という東京都の公営企業は、都民の生活や安全・安心、経済活動の根幹を支えております。また、さらなる東京の発展や都市としての快適性の向上と切り離して考えることはできません。
 震災や豪雨など大規模災害への対応、総合的な交通政策を初めとして、オリンピック・パラリンピックも視野に入れた都市の持続、発展と密接に絡んでおります。
 民間でできることは民間でという考え方自体は、大きな流れとしては間違っていないと思いますが、まず、事業をめぐる状況や、経営の見通しを慎重に検討する必要があると考えております。
 東京都の公営企業のあり方につきましては、東京という都市を将来どのようにしていくのかという観点を十分に踏まえながら今後考えるべき事柄だと考えております。
 続きまして、地下鉄の経営一元化についてでありますが、一元化は、東京の地下鉄のサービス改善、一体化を進める上で有効な方策であるものの、国は経営一元化には課題が多いとしております。関係者間で意見の隔たりが大きく、今後協議を継続することとしております。
 こうしたことから、経営一元化を展望しながら、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック開催を踏まえ、まずは、都民や外国人観光客の利便性向上に直結する地下鉄のサービス改善、一体化を一層進めていくことが重要であると考えております。

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