平成二十六年東京都議会会議録第四号

   午後一時開議

〇議長(吉野利明君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(吉野利明君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(吉野利明君) 昨日に引き続き質問を行います。
 四十九番桜井浩之君。
   〔四十九番桜井浩之君登壇〕

〇四十九番(桜井浩之君) 最初に、東京の観光振興について伺います。
 昨年、我が国を訪れた外国人旅行者数は過去最高の一千万人に達し、また、東京を訪れた外国人旅行者数も昨年上半期で三百二十一万人と、過去最高を記録いたしました。
 しかしながら、都は、この数に満足することなく、オリンピック・パラリンピックの開催を追い風にして、これまで以上に積極的に観光振興に取り組み、海外からの旅行者を誘致すべきであります。
 東京は、歴史、文化、自然、食など、じっくりと腰を落ちつけて観光を楽しめる多彩な魅力にあふれております。こうした魅力を効果的に生かしながら、東京のイメージを海外に向けて十分アピールできれば、東京に長期滞在する旅行者やリピーターの獲得にもつながるはずです。あわせて、先般、知事がソチで体験された、言葉が通じない不便さを解消することも、海外からの旅行者の誘致につながるでしょう。
 知事は、オリンピック開催後に東京を世界一の都市にすると発言されております。そのためにも、外国人旅行者誘致の取り組みは重要と考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、外国人旅行者の受け入れ環境整備について伺います。
 外国人旅行者数は、中国や韓国、台湾などに加え、ビザ発給要件の緩和措置などにより、ムスリムが多いといわれる東南アジア地域からも増加していると聞いております。来訪する旅行者がそれぞれ持つ多様な言語や習慣などに対応しつつ、旅行者が東京の観光を楽しめる滞在環境をしっかりと整備すべきです。
 都は、外国人旅行者が不安なく快適に滞在できる受け入れ環境をどのように整備していくのか、所見を伺います。
 次に、東京の魅力発信について伺います。
 旅行者が東京に滞在する際の宿泊や食事、買い物等に係る観光消費は、関連する産業分野の裾野が広く、大きな経済波及効果を生み出すといわれております。観光振興を都内経済の活性化につなげるためには、より多くの旅行者を誘致することが重要です。
 オリンピック・パラリンピックの開催決定をてこに、多摩・島しょも含めた東京の魅力を国内外に積極的に発信していくべきと考えますが、都の具体的な取り組みを伺います。
 次に、中小事業所の省エネ対策について伺います。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの東京開催に向けて、東京をエネルギー効率世界一の環境都市にすることは、東京の先進性を世界にアピールできるまたとない機会であり、そのために我が国のすぐれた環境技術を最大限に活用する施策を推進する必要があります。
 これまで都は、大規模事業所に対して、CO2排出量の総量削減義務を課すキャップ・アンド・トレード制度を導入するなど、世界的にも先駆的な施策を推進してきましたが、都内業務、産業部門のCO2排出の約六割は中小規模事業所が占めており、中小規模事業所の省エネ対策を推進することは大変重要であります。
 都は、二〇一〇年度から地球温暖化対策報告書制度を開始し、中小規模事業所に対する省エネ対策を進めていますが、これまでの取り組みの成果を生かして、中小事業者のコスト削減につながる省エネ対策をより一層推進する必要があると考えますが、都の所見を伺います。
 また、先般、我が党は、東京を世界で一番の都市にするための政策提言を行いました。この中で、都内に数多くある中小テナントビルの省エネ化の推進についても提言をしております。
 中小テナントビルにおいては、ビルオーナーが省エネ改修を行っても、ビルでエネルギーを直接使用しているテナントの光熱費削減にはなりますが、ビルオーナーの利益とはならず、改修が進みにくい状況であります。
 したがって、この中小テナントビルの省エネを推進するには、テナントが省エネ性能の高いビルを評価し、入居先として選択することで、ビルオーナーのメリットにつなげていくことが重要と考えます。そのためには、ビルオーナーが省エネ性能をテナントにわかりやすく示す仕組みが必要であり、都は、こうした中小テナントビルの特性を踏まえた効果的な仕組みを構築していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、墨東病院の機能強化についてお伺いをいたします。
 都立病院では、昨年三月に策定された都立病院改革推進プランに基づき、少子高齢化など医療環境が急速に変化する中でも、都民に安定的に行政的医療を提供していくため、さらなる質の向上に向けて取り組んでいるところと承知いたしております。
 私の地元墨田区がある区東部地域は、人口に対する病院数が都平均、全国平均を下回るなど、医療資源が不足している地域であります。また、今日、新型インフルエンザを初めとする新興感染症が大流行することが危惧されておりますが、区東部地域では、専門的に感染症医療に対応できる施設が不足することが予想され、患者を的確に受け入れる体制の整備が急務であるわけであります。
 墨東病院では、東京ER・墨東が設置され、年間で救急搬送一万件を含む五万人もの患者を受け入れております。専門スタッフによる救命措置が必要な三次救急患者は、およそ二千三百人に及びます。今、救急医療機関が減少する中、引き続き区東部地域の中核的な役割を担っていくことが大いに期待されております。
 こうした地域の状況を踏まえ、現在、墨東病院では、東京都地域医療再生計画に基づき大規模な整備を行っており、本年八月には新館、二十七年には診療棟の改修が完了する予定と伺っております。
 そこで、今回の整備により強化される医療機能について具体的に伺います。
 また、区東部地域には海抜ゼロメートル地帯が広がっており、水害を初めとする災害への備えが必須であります。墨東病院には、地域の基幹病院として、また、区東部保健医療圏の地域災害拠点中核病院として、災害時においても医療機能を維持し、地域住民の命を守る役割が求められております。
 そこで、墨東病院の災害対応力についてはどのような強化が図られるのか、お伺いをいたします。
 次に、高度防災都市づくりについて伺います。
 我が党は、世界一の防災都市東京を創造するために、建物や道路など都市施設の震災対策だけでなく、上下水道などのライフラインの耐震化を進め、災害に強いまちづくりを標榜しております。
 東日本大震災から間もなく三年が経過しますが、都は、その教訓や経験を踏まえ、高度防災都市づくりに向けた取り組みを積極かつ継続して進めております。
 このような中、私の地元墨田区もそうでありますが、木密地域を抱えている自治体は、公助はもとより、自助、共助という視点から、地域防災力の向上に力を入れているところであります。
 その一例として、地域住民が有事の際の消火活動や応急給水活動のために、水道管から水を容易に取り出すことができるよう、消火栓等に設置するスタンドパイプを地域町会等に配布する取り組みを行っております。しかしながら、いざというときに水道管から水が出なければ、その意義が失われてしまいます。
 水道局では、震災対策の一環として管路の耐震化を積極的に進めていますが、その管路ヘ水を送り出す給水所が地震によって損壊したり、停電によりポンプが稼働できない場合には、水道水の供給に大きな影響が生じるわけであります。
 また、東部低地帯にある給水所では、浸水による機能停止も予想されます。震災が発生した場合でも水を供給し続けるためには、都内各所の給水所の果たす役割は非常に大きく、大規模地震や水害による影響が危惧される中、給水所の防災対策も進めていく必要があると考えます。
 そこで、給水所の防災対策をどのように進めるのか、お伺いをいたします。
 次に、下水道は都市活動や都民生活において欠かせない生活基盤の一つであり、大地震などの災害で一旦機能が停止すると、衛生面や浸水防除といった観点から、都民生活に与える影響ははかり知れません。
 実際に阪神・淡路大震災では、下水道管とマンホールの接続部が破損し、トイレなどが使えなくなり、新潟県中越地震や東日本大震災では、液状化によりマンホールが浮上し、道路の通行に支障が出るなど、住民の日常生活に大きな影響を与え、その後の復旧にも多大な時間を要したわけであります。
 下水道局は、これらを教訓とし、下水道管とマンホールの接続部の耐震化や液状化によるマンホールの浮上抑制対策技術を民間と共同開発し、対策を進めております。
 そこで、震災時に過去と同じような事態を繰り返すことのないよう、下水道管の震災対策を積極的に進めるべきと考えますが、現在の状況と今後の取り組みをお伺いいたします。
 また、東京では、地震時に建物が倒壊し、火災などの二次災害による被害を抑制するために、不燃化の取り組みや建築物の耐震化が進み、万が一火災が発生しても、地区内に大規模な延焼火災のおそれがなく、広域的な避難を要しない地区内残留地区という地域があります。
 都民生活のさらなる安全・安心を確保するためには、今後、こうした地区での不燃化などの取り組みとも整合を図りつつ、下水道管の震災対策を拡充していくべきと考えます。
 そこで、地区内残留地区における下水道管の震災対策について、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
 以上をもちまして、私からの一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 桜井浩之議員の一般質問にお答えいたします。
 外国人旅行者誘致についてでございますが、ロンドンは、オリンピック・パラリンピックの開催を起爆剤として、ニューヨークにかわり、世界の都市ランキング第一位へと上り詰めました。国際会議やプレイベント等の開催に取り組み、海外からの旅行者誘致を行ったことも、主な要因であるといわれております。
 東京は、ロンドンに劣らず、浅草雷門を初めとする伝統文化とスカイツリーのような近代科学が融合したすばらしい都市でありまして、この魅力を世界にアピールして、外国人旅行者や国際会議の誘致を積極的に進めてまいります。
 また、海外からの旅行者が必要な情報を入手できるよう、外国語が話せる観光ボランティアの育成や、町の中の案内サインの充実、さらには宿泊施設などでWi-Fiに無料で接続できる環境の整備を進めてまいります。
 こうしたことにより、オリンピック・パラリンピックに向けて外国人旅行者誘致を進め、世界一の都市を実現したいと考えております。
 その他の質問につきましては、関係局長から答弁させます。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、外国人旅行者の受け入れ環境整備についてでありますが、外国人旅行者が安心して快適に東京観光を堪能するためには、民間とも連携し、旅行者のさまざまなニーズに的確に対応した取り組みを推進することが重要であります。
 そのため、都は、来年度、観光ボランティアについて、中学生、高校生からの育成にも取り組み、これまで以上に幅広い世代による活動につなげ、外国人旅行者をきめ細かく支えてまいります。
 また、今後も増加が見込まれるムスリム旅行者については、宿泊施設や飲食店等に対するリーフレットの配布やセミナーでの先進事例の紹介などを通じて、礼拝や食事等の習慣に関する理解を深め、安心して滞在できる環境整備を推進してまいります。
 次に、東京の魅力発信についてでありますが、旅行者誘致をより一層進めていくためには、オリンピック・パラリンピックの開催決定により、東京に注目が集まる絶好の機会を生かし、東京の魅力を積極的に発信することが重要であります。
 このため、都は来年度、海外の航空会社の機内誌や世界的に知名度の高い旅行ウエブサイトを活用するなど、全世界に向けて東京の観光をPRいたします。
 また、国内においては、東京の多彩な魅力を紹介するガイドブックを作成するとともに、旅行業界が主催する旅行博覧会に、多摩・島しょ地域を中心としたPRブースを出展し、地域の魅力発信を強化いたします。こうした取り組みを通じ、多くの旅行者に選ばれる世界有数の観光都市を目指してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 省エネ対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小規模事業所の省エネ対策についてでございます。
 都は、二〇一〇年度から中小規模事業所を対象に地球温暖化対策報告書制度を開始しており、毎年度三万を超す事業所から報告書の提出がございます。二〇一一年度と二〇一二年度のこれによるCO2排出実績を見ますと、いずれも大震災前の二〇一〇年度と比べて一〇%を超える削減となっており、大震災後の節電が定着していると考えられます。
 都は、こうした中小規模事業所の取り組みを一層推進するため、報告書のデータを活用して、テナントビルなど二十業種について、CO2排出レベルを七段階で示すベンチマークを作成し、事業者に対してベンチマークを活用した目標設定を促しております。
 このベンチマークの普及を図るとともに、無料の省エネ診断や設備導入に係る省エネ減税など、事業所の特性に応じたさまざまな支援策を講じながら、中小事業者の省エネ対策を推進してまいります。
 次に、中小テナントビルの省エネ対策についてでございます。
 中小規模事業所のCO2排出量には、テナントビルによるものの割合が多く、中小テナントビルの省エネ対策は重要であります。中小テナントビルでは、ご指摘のとおり、ビルオーナーが省エネ改修を行っても、光熱費の削減効果はテナントが享受するため、なかなか改修が進みにくい状況にございます。
 このため、中小テナントビルの省エネを進めるには、省エネ性能をテナントにアピールでき、入居を促すことに結びつくような、ビルオーナーのメリットにつながる仕組みが必要でございます。
 そこで都は、先ほど申し上げたベンチマークでビルの省エネ性能をわかりやすく示して、テナントにアピールするための書面であるカーボンレポートをビルオーナーに提供し、活用を促してまいります。
 あわせて、中小テナントビルの省エネ改修費用に対する支援を行い、これにより得られる改修後の実績データをもとに、省エネ改修の効果についてもわかりやすくアピールできる仕組みを構築してまいります。
 これらの取り組みにより、ビルオーナーの省エネ意欲を高め、中小テナントビルの省エネを推進してまいります。
   〔病院経営本部長醍醐勇司君登壇〕

〇病院経営本部長(醍醐勇司君) 墨東病院に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、墨東病院の医療機能の強化についてでありますが、現在整備を進めている新館には、新型インフルエンザにも対応する感染症外来、エボラ出血熱やSARSの患者を受け入れる第一種及び第二種感染症病床、不測の事態にも対処可能な緊急対応病床に加えまして、臨時的に病床に転用できるスペースを確保するなど、さまざまな感染症に対応する機能を整備いたします。
 また、高齢化に伴う合併症を有する患者や重症患者の増加を踏まえ、救命救急の集中治療室を拡充するほか、脳血管疾患などに有効な高気圧酸素治療室を設置いたします。
 さらに、平成二十七年度までに改修する診療棟には、脳卒中や心臓疾患の集中治療室を整備するなど、医療環境の変化に対応した東京ER・墨東の機能をさらに強化してまいります。
 次に、墨東病院の災害対応力の強化についてでありますが、墨東病院は、区東部地域の医療対策拠点として、重症者を受け入れるとともに、医療救護活動をコーディネートする重要な役割を担っておることから、みずからの災害対応力をより強固にしていくことが求められております。
 このため、今回の整備では、機能の拡張に伴い、非常用発電機の燃料タンクを増設するとともに、新館の屋上に新たな非常用発電機を設置いたします。また、浸水時に地下の受水槽を経由せずに給水するルートを新たに設け、診療に必要な貯水量を確保いたします。
 さらに、電力の多様化、分散化を図るため、今後、ガス常用発電機の導入を検討していくなど、災害に強い病院づくりを進め、地域住民の生命を守るとりでとしての使命を果たしてまいります。
   〔水道局長吉田永君登壇〕

〇水道局長(吉田永君) 給水所の防災対策についてでありますが、給水所は、平常時はもとより、大規模地震や停電時などにおいても、給水を維持する上で重要な役割を担っております。
 このため、給水所の耐震化につきましては、阪神・淡路大震災を契機に、最新の基準等に基づき耐震診断や補強工事を進めており、平成三十四年度までに概成させることとしております。
 また、電力の確保につきましては、東日本大震災における教訓をもとに、平成三十三年度を目途に、停電時においてもポンプ運転の継続を可能とするよう、非常用自家発電設備を増強してまいります。
 さらに、浸水対策につきましては、これまでも一定の対策を講じてきたところでありますが、近年頻発する豪雨などを踏まえ、平成二十八年度までに、新たに建屋出入り口への防水扉の設置など必要な措置を講じてまいります。
 こうした給水所の防災対策を積極的に進めるとともに、水道管路の耐震化なども着実に推進することにより、災害時における給水の確保に万全を期してまいります。
   〔下水道局長松浦將行君登壇〕

〇下水道局長(松浦將行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道管の震災対策についてでございますが、民間と共同開発した、道路を掘らずに下水道管とマンホールの接続部を耐震化する技術や、マンホールの浮上抑制を図る技術を活用し、対策を迅速に進めております。
 これまで、墨東病院などの災害拠点病院や避難所など二千五百カ所で下水道管の耐震化を進め、今年度、計画を二年前倒して完了させることとしております。
 さらに、今年度から帰宅困難者が滞留するターミナル駅や災害復旧拠点となる官公庁など千カ所に対象を拡大し、来年度は錦糸町駅など百八十カ所で着手いたします。
 また、マンホール浮上抑制対策は、緊急輸送道路五百キロメートルについて既に完了し、平成二十三年度から、避難所などと緊急輸送道路を結ぶアクセス道路七百キロメートルの対策に着手しており、今年度末までに約四百キロメートルを実施いたします。これらの取り組みを三十一年度までに全て完了してまいります。
 次に、地区内残留地区における震災対策についてでございますが、これまで避難所などからの排水を受け入れる下水道管の耐震化を進めていますが、これらに加え、地区内残留地区では、建物の耐震化や不燃化により、震災時に多くの人が地区内にとどまることが予想されることから、地区内のトイレ機能や救急活動に必要な緊急車両の通行を確保するため、下水道管の耐震化やマンホールの浮上抑制対策を計画化し、今年度より対策を開始いたしました。
 経営計画二〇一三では、区部の地区内残留地区約千ヘクタールで対策を進めることとしております。墨田区内では、錦糸町駅付近の約三十ヘクタールの対策を二十七年度までに実施いたします。こうした取り組みを着実に進め、東京の高度防災都市づくりに貢献してまいります。

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