平成二十六年東京都議会会議録第三号

〇副議長(藤井一君) 五十五番新井ともはる君。
   〔五十五番新井ともはる君登壇〕

〇五十五番(新井ともはる君) 昨年五月、社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー制度の関連法案が国会で可決、成立いたしました。
 番号制度の目的は、社会保障制度及び税制度の効率性、透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平、公正な社会を実現することにあります。
 今後、平成二十八年一月からは個人番号の利用開始がされ、平成二十九年七月からは複数の団体間での情報連携が開始される予定になっています。
 また、国民一人一人に利用可能な行政サービスをお知らせするプッシュ型サービスや、行政機関への手続を自宅のパソコンから一度で済ませることができるワンストップサービスなどの実現をするマイポータルの設置なども予定されております。
 ちなみに、番号制度においては、法律に基づく事務のみならず、自治体の独自の事務において、条例で定めることにより個人番号の利用が可能とされており、独自の福祉施策が充実している東京都や市区町村においては、将来的に一層の活用が見込まれていると考えております。
 加えて、番号法の附則には、政府は、複数の地方公共団体の情報システムの共同化、また集約の推進について必要な情報の提供、助言その他の協力を行うものとすると記載されており、町村等の小規模の自治体がシステムを共同利用できる自治体クラウドの推進に向けても、番号制度の導入が一つのきっかけになると期待されています。
 その一例として、東京都西多摩郡の四町村、瑞穂町・日の出町・檜原村・奥多摩町では、基幹系十八業務のシステムを共同利用したクラウド導入の先行事例があります。サーバー等のハードウエアは、セキュリティーレベルの高いデータセンターに設置をし、システム運用は原則ベンダー側へ任せるなど、システムの所有からシステム利用への展開を図ります。
 このほか、事業者に付与される法人番号については、厳格な個人情報保護が必要な個人番号とは扱いが異なり、民間を含む幅広い分野での利用が可能とされていることから、経済活動の一層の活性化への期待が持たれることとなります。
 さて、番号制度の導入について、都民への具体的な効果として、手当等の申請の際に添付書類が不要となるなど、行政手続における利便性の向上が挙げられます。
 その実現のためには、国、都道府県、市区町村の間でネットワークシステムを整備し、プライバシーを守りながら必要な個人情報を通信する仕組みを構築する必要があり、また、福祉や税務などの各種の既存の業務システムにおいては、番号制度に対応するための業務の見直しとシステム改修が必要になります。
 しかしながら、国においては、法律は制定したものの、その具体的な細目を規定する政省令の制定がおくれており、また、自治体におけるシステムの整備に必要な技術的な仕様の公開もおくれていると伺っています。
 私は、大規模自治体である東京都において、制度実施に不可欠なシステム整備が間に合うかどうか、危惧の念を禁じ得ません。
 それでまず、東京都における番号制度の実施に向けたシステム整備の取り組み状況についてお伺いします。
 次に、番号制度の実施に向け、都において新たに整備しなければならないシステムに、国やほかの自治体の間で情報の照会や提供を行うための情報連携基盤システムがあります。全国で二カ所に集約して設置される中間サーバーと連携して、国の情報提供ネットワークシステムと各局の業務システムとの間で中継し、情報連携を円滑に行うための重要なシステムになります。
 この基盤システムの設計に当たっては、将来的な拡張性を見据え、費用対効果、個人情報保護のためのセキュリティー対策など考慮しなければならない点が多数あります。
 しかしながら、国からは情報提供ネットワークシステムや中間サーバー等の接続先のシステムに関する仕様の詳細がいまだ示されていないなど、システム開発に当たっては課題も多いと思います。
 そこで、他団体との情報連携のための基盤システム整備の取り組みについてお伺いします。
 次に、番号制度の影響を受ける各局の業務システムの対応についてですが、法律の別表において関係する事務が規定されており、それによれば、社会保障や税の分野で、福祉保健局や主税局はもとより、都営住宅を所管する都市整備局や、都立学校を所管する教育庁など、庁内各局の業務システムなどにも影響があると考えられます。
 業務システムの改善に当たっては、個人番号を管理する仕組みを新たに設けたり、画面や帳票を変更するなど、さまざまな影響が考えられるところであり、こうした多岐にわたるシステム改修を、番号制度の実施まで限られた期間に完成する必要があります。
 そこで、番号制度の導入に向けた各局業務システムの改修の取り組みについてお伺いします。
 次に、番号制度において、新たに国民一人一人に付番される個人番号を初め、住所や生年月日、家族構成、所得情報など、多くの個人情報をシステムに所有し、なおかつこれらの個人情報を団体間でデータ交換する仕組みとなっています。
 万が一、個人番号を初めとする都民の個人情報がシステムから漏えいするような事態が生じれば、番号制度への都民、国民の信頼が大きく揺らぎかねません。
 このため、番号法では、個人情報保護とプライバシーの問題について、一つに、特定個人情報の保護、二つに、情報提供記録の個人確認、三つに、特定個人情報保護委員会などの第三者機関、四つに、特定個人情報保護評価、五つに、罰則の強化によって対応しています。
 こうした法の趣旨を具体化するために、システム面において、誰が、いつ、どの情報を取り扱ったかシステム上で記録をしておくアクセスログの管理など、個人情報保護の取り組みが極めて重要であります。
 そこで、システムにおける個人情報保護対策についてお伺いします。
 最後に、番号制度の実施に当たって、名寄せなどの初期データ構築についてですが、日本人の氏名の名寄せは大変難しいといわれています。
 標準化できない漢字など、外字や字体、字形デザインが異なっていても、同じ文字コード番号であらわす、つまり同じ文字であるとみなすJISの包摂基準や、基本的には戸籍にも住民票にも振り仮名はついていないので、法的に正しい振り仮名は存在しないなど、漢字や振り仮名の問題があるからです。
 その結果、基礎年金番号に統合、整理されていない記録が約五千万件あるなどが判明した年金記録問題も生じました。
 最大規模の自治体である東京都では、さまざまな業務システムにおいて、膨大な数の都民の個人情報を管理していますが、現在、それらが相互連携できる仕組みとはなっていません。
 例えば、ある都民については、手当など社会保障給付の受給に関する社会保障の情報と、その方の都民税に関する主税局の情報とが、相互に連携することなく、別個に管理されているのが現状です。つまり、都民の個人情報は、業務ごとに必要な範囲で各システムで別々に管理され、名寄せもされていないということになります。
 これまでは、それで問題はなかったのですが、番号制度においては、都民が受けられるサービスを漏れなく提供していくためにも、きちんと名寄せをし、個人番号とひもつけをして、都民の個人情報を管理していくことが求められます。
 そこで、都民が保有している膨大な数の都民の個人情報について、どのように個人番号を取得していくのか、見解をお伺いします。
 ところで、個人番号のそもそもの発端は、三十年以上前の昭和五十五年にさかのぼるといわれます。マル優という非課税貯蓄の仮名口座を防止するため、グリーンカード制度の導入が提案されました。法案は通りましたが、昭和五十八年に延期となり、昭和六十年には廃止されました。
 住民基本台帳ネットワークシステム、略称住基ネットの制度においては、そのグリーンカードのトラウマから、反対派に配慮がありました。
 これで一般質問を終わりにします。(拍手)
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) 新井ともはる議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、番号制度の実施に向けたシステム整備の取り組み状況についてでございます。
 番号制度の導入に当たっては、国が示す作業スケジュールに基づき、平成二十八年六月までに、他の行政機関等との個人情報の照会、提供の基盤となる情報システムの構築や、個人番号を利用する各局の業務システムの改修を行う必要がございます。
 しかし、国は、対象となる事務の範囲やシステム整備に係る技術的な仕様などを確定しておりません。
 このため、都は、国に対して、省令やシステム整備に必要な情報の早期提供を求めるとともに、現時点での情報をもとに、関係各局と情報システム部門が連携して、システム整備の準備を進めているところでございます。
 次に、他団体との情報連携のためのシステム整備についてでございます。
 番号制度では、申請者の情報を他の行政機関との間で電子的に照会、提供することで、住民票や所得証明書などの添付書類の省略が可能となり、都民の利便性の向上が期待されております。
 こうした他団体との情報連携を円滑、確実に行うためには、新たに庁内に情報連携の基盤となるシステムを整備する必要がございます。
 システム整備に当たっては、国が整備する情報提供ネットワークシステムなど、外部の接続先システムの技術仕様に関する情報収集に努めるとともに、業務システムを所管する庁内の関係各局と十分に調整を図っていくこととしております。
 次に、各局業務システムの取り組みについてでございます。
 先ほど申し上げましたとおり、現在、国においては、対象事務の範囲や技術的な仕様などを確定していない状況でありますが、確実に制度導入が予定されている業務システムについては、できるだけ早期にシステム改修に着手する必要がございます。
 こうした中、主税局においては、改修の範囲が多岐にわたる税務システムについて、番号の管理や画面表示等、システム上必要と想定される改修を平成二十六年度から開始することとしております。
 今後、関係業務を所管する各局は、国の動向も見きわめつつ、それぞれの業務フローを見直した上で、各システムの規模等に応じて、個人番号による情報の管理や連携に係るシステム改修を順次進めていくこととしております。
 次に、システムにおける個人情報保護対策についてでございます。
 番号制度に係る情報システムの整備に当たっては、個人情報が法令に定められた範囲を超えて利用され、または漏えいすることがないよう、管理の適正を確保することが必要です。
 このため、国は、システム上の安全措置として、個人情報の事務ごとの分散管理や、個人が特定できない情報連携の仕組みを構築しております。また、目的外利用の禁止や、外部の委員会による監視監督など、個人情報の適正な取り扱いを確保するための制度上の保護措置も定めております。
 都の情報システムにおいても、国が定めるガイドラインなどに基づき、アクセス制御や通信の暗号化など、システム面での対策や担当者への権限付与など、運用面に必要な対策を講じることとしております。
 最後に、個人番号の取得についてでございますが、番号制度における情報連携を円滑に行うためには、現在、業務ごとに管理しております個人情報について、個人番号を取得していく必要がございます。
 しかしながら、都の各業務システムにおいては、都民に付与される個人番号を特定できるまでの個人の情報を必ずしも把握してはおりません。
 個人番号の取得方法としては、把握している住所、氏名、生年月日等の情報をもとに、住民基本台帳ネットワークシステムに照会する方法や、各種手続の申請時に本人から直接、番号の提供を受ける方法などが考えられます。
 都といたしましては、これらの方法により、平成二十九年七月の情報連携の開始までに、情報連携の実施に必要な範囲で個人番号を取得していくこととしております。

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