平成二十六年東京都議会会議録第三号

〇議長(吉野利明君) 三十九番中山信行君。
   〔三十九番中山信行君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十九番(中山信行君) 初めに、聴覚障害者への支援について質問します。
 舛添知事は、平成二十六年度予算案に早くもみずからの意向を反映させ、オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、外国語手話の普及促進に取り組むと表明されました。
 手話を言語の一つとして捉えた国際的潮流に沿うものであり、東京が世界一の福祉を目指すにふさわしい第一歩といえます。
 しかしながら、五輪大会も当然大切でありますが、都内の聴覚障害者が、当たり前の暮らしを日常の中で安心して実感できる支援の充実もまた重要であります。
 例えば、国は、昨年三月二十七日、手話通訳者や要約筆記者の派遣、いわゆる意思疎通支援事業のモデル要綱を公表しました。
 注目すべきは、派遣の対象について特段の制約を設けていない点にあります。社会通念や公共の福祉に反する場合を除き、聴覚障害者が日常生活や社会生活を営む上で必要であれば、全て派遣の対象にしているのであります。
 しかも、自公連立政権下の国は、モデル要綱の解釈に関する公文書まで発行し、聴覚障害者のコミュニケーションを保障する観点から、派遣の内容については広く扱う必要があるため、合理的な理由もなく派遣範囲を狭めることは好ましくないとしています。
 聴覚障害者団体なども、モデル要綱が推奨する制限を設けない派遣を、障害者が健常者と同じように意思疎通するための権利保障になるものとして歓迎しております。
 ところが現状では、モデル要綱の提示から一年が経過した今でも、都内の自治体のほとんどが、営利、政治活動などへの派遣を認めておりません。技能講習会への参加すら認めていない例もあります。
 聴覚障害者が、手話通訳などを用意してくれる団体や企業の情報しか得られないとしたら、何のための障害者差別解消法か、何のための障害者権利条約かということになってしまいます。
 都は、国のモデル要綱の趣旨に沿う聴覚障害者支援の取り組みが進むよう、みずから率先するとともに、区市町村にも働きかけるべきであります。見解を求めます。
 私は、かねてから、コミュニケーションバリアフリーなる言葉を用いて、本会議でも意思疎通支援事業の進展を求めてまいりました。
 聴覚障害者が感じる日常の不自由を減らしていくためには、簡単な手話であれば何とか対応できる都民をふやしていくことも効果的であります。見解を伺います。
 一方、中途失聴や難聴の方々が同じ障害を持つ人々と交流する、いわゆるピアサポートは、障害を前向きに受けとめる機会として大切であります。中途失聴や難聴の方々も、積極的に手話に挑戦し、都もその支援に努めていますが、交流の機会を支える人材が不足し、なかなか交流の場をふやせないという壁に直面しています。
 そこで都は、地域で手話講習会などを運営できる手話の指導者の養成に取り組むべきと考えます。見解を求めます。
 これまでの都の福祉行政は、間違いなく、国や他県をリードするものでありました。しかし一方、常に先行してきたがために生まれた課題も見受けられるようになっています。
 例えば、中途失聴、難聴者向けの手話講座を、入門、初級、中級、上級と四つもの習熟度別の講座に分けて実施しているのは、全国でも東京都だけであります。
 しかし、区部では毎年その四講座を同時に開講できているのに、多摩部では同時に開講できる講座枠が三つに限られています。そのため、四講座のうちのどれか一つが必ず省かれてしまい、初級編を終了してもすぐには中級編に進めないといった不都合が生じたりもしています。是正するべきであります。
 また、入門編では、講師の口語や手話による説明内容の要点をOHPで表記する要約筆記がサポート化されており、まだ手話になれていない受講者の助けとなっていますが、初級編では用意されておりません。複数の受講者から、講義内容がわからない場合があるとの相談が寄せられており、初級編でも要約筆記者とOHPを整える必要があります。
 さらに他県では、国が全国制度として定める情報提供施設が一カ所ずつ配置され、国と県からの補助金に基づいて、手話通訳者や要約筆記者の派遣と養成を行っています。
 一方、都内の情報提供施設は、同じく国と都から補助金を受け取っているものの、聴覚障害者が日常最も必要とする肝心の派遣や養成は行っておりません。
 都内では、国制度が始まる前から、そして今も、聴覚障害者などから成る社会福祉法人が、区市町村から委託を受けて派遣や養成を担っています。しかし、委託に伴う事務費だけでは足りず、運営に苦慮しています。
 情報提供施設としての補助金が、都においても実際に手話通訳などの派遣と養成を行う機関に届くよう改めるべきであります。
 そうした課題の存在も踏まえ、本項目の最後に、舛添知事に伺います。
 オリンピック・パラリンピックの東京大会まであと六年。それまでの間に、東京で暮らす障害者はもちろんのこと、東京を訪れる国内外の障害者にとっても快適な町へと東京をつくり上げなくてはなりません。障害者に対する理解促進や障害者福祉施策の充実に向けて、知事の決意を伺います。
 関連して、障害者の雇用就労の拡大について質問します。
 私が先日視察した都立の多摩障害者スポーツセンターでは、知的、身体を問わず、数多くの障害者が、食堂の運営を含む施設のメンテナンス業務の中で働いておりました。昭和五十九年に開設された施設とは信じがたいほど清掃も行き届いております。
 中心者に成功の秘訣をお伺いしたところ、障害者スポーツの拠点にふさわしい、障害者の就労の場にとの話を受けて事業をスタート。しかし、昭和五十九年当時の最初の二年間はまさに素人同然で、さまざまなビル管理会社から教えを請い、ノウハウを身につけ、ようやく障害の違いに応じた無理のない仕事編成やサポート体制を講じられるようになったとのことでありました。この中心者の方もまた、身体障害者であります。
 障害の当事者や障害福祉に造詣の深い人が労働環境を整えてこそ、障害者の就労も進むものと実感した次第であります。
 そこで、そうしたキーパーソンを育て、また、キーパーソンの発想や取り組みを尊重して、具体的に支援することを通じて障害者の雇用機会の拡大を図るべきと考えますが、産業労働局の見解を伺います。
 続いて、福祉とともに世界一となるべき環境について質問します。
 都が平成十四年から導入した建築物の環境計画書制度によって、都内の大規模新築建造物の断熱性能や設備機器の効率が大きく進展したと伺っております。
 私は、従来から、国内のすぐれた建築技術を積極的に活用して、環境貢献へと結びつけるよう訴えてまいりました。平成二十二年度には、その趣旨を踏まえ、初の環境建築フォーラムが都庁内で開催され、大変な好評を博しております。
 環境局は、今月中にも二回目の環境建築フォーラムを開催するとのことでありますが、まず、今回のフォーラムの特色と今後の開催予定を伺います。
 最近、都内では、高効率の熱源機器の活用や明るさセンサーを併設したLED照明の導入などにより、CO2を半減したカーボンハーフビルも登場するようになっております。
 今日の東京は、さまざまな様式の建築物が数多く存在し、あたかも建築に関する博物館のようであるとの評価もあります。
 加えて、都庁や民間の積極的な取り組みにより、世界的にもすぐれた環境性能を持つ建築物がさらにふえていけば、これらを視察し、研究する目的で東京を訪れる外国人もふえるものと考えます。
 そうした機運を活用し、日本の環境建築技術をより効果的に世界に発信していくため、都は、都内のすぐれた環境建築物や都の先進的な環境行政の成果を海外に向けて、わかりやすく積極的にアピールすべきと考えますが、見解を伺います。
 また、現在都は、耐震性能の向上に加えて、最先端の省エネ性能を持つ空調機器の導入やトータルのランニングコストの低廉化にも配慮しながら、本庁舎などのリニューアルに取り組んでおります。
 一般に、建造物の設計においては、デザインなどの意匠設計が優先されがちであり、そうした建造物であるほど、設備や外装のリニューアルに伴う苦労が多いと聞きます。
 同様にさまざまな困難を抱えながら取り組んできた都庁舎のリニューアルにおける工夫は、多くの民間超高層ビルの今後のリニューアルにおいても大変参考になるものであり、また模範となるものであります。
 これまでの環境建築フォーラムは、主に新築建造物での取り組みを紹介するものでありましたが、今後は、既存建造物のリニューアルにおける環境貢献も重要な課題になってまいります。
 その意味で、都は、広く日本の環境建築技術の進展に貢献するため、環境建築フォーラムなどのさまざまな機会を捉えて、都庁舎の設備更新の成果を公表すべきと考えます。
 あわせて都は、みずからが都有施設において定めている高い省エネ基準である省エネ・再エネ東京仕様の一層の充実を図り、その成果も積極的にPRすべきであります。見解を伺います。
 最後に、私の地元足立区六町地区での土地区画整理事業について伺います。
 この事業は、つくばエクスプレスの六町駅誘致にあわせて、平成九年度に事業計画決定をしたものでありますが、換地先の希望制度を導入したことや事業計画の変更などにより、事業化後十年を経過した時点においても、換地の指定率が二〇%台にとどまるなど、スピードアップが課題となっておりました。
 まず、現在までの換地の指定率と来年度の目標を伺います。
 一方、足立区は、平成二十三年度に綾瀬川の東西を結ぶ橋梁を設置。周辺区民は橋梁と六町駅とをつなぐ補助二五八号線の早期供用開始を願っています。しかし、残念ながらいまだ進まず、せっかくの橋梁も人道橋としてしか使えない現状にあります。
 そこで、補助二五八号線の完成の前倒しを図るため、区画整理上の新たな工夫を講じるべきと考えますが、都の見解を伺い、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 中山信行議員のご質問にお答えいたします。
 障害者施策の充実についてでございますが、北欧諸国では、障害のある人もない人も、ひとしく当たり前に生活できる社会こそがノーマルな社会であるという、いわゆるノーマライゼーションという理念が浸透しております。
 こうした理念に基づきまして、揺りかごから墓場まで、誰もが生き生きと生活できる町、それが私の目指す世界一の福祉先進都市東京の姿であります。
 都は、現在、障害者が地域で安心して暮らせる社会、障害者が当たり前に働ける社会、全ての都民がともに暮らす地域社会の実現を基本理念に据え、さまざまな障害者施策を展開しております。
 私は、こうした取り組みを一層推進し、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会も見据えながら、障害者の地域生活基盤の整備、就労に向けた支援、心のバリアフリーの推進、さらにはユニバーサルデザインのまちづくりなど、障害者施策の充実に向け全力で取り組んでいく決意でございます。
 残余の質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁いたします。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、六町地区における換地の指定率と来年度の目標についてでございますが、本地区の土地区画整理事業では、六町駅を中心とした地域の拠点の形成を図るとともに、周辺市街地の秩序ある発展のため、都市計画道路や公園などの都市基盤を整備し、宅地の利用増進を図ってまいりました。
 平成十三年に第一回の換地の指定を行い、今年度までの指定率は六三%でございます。
 引き続き、地権者対応を積極的に進め、来年度には換地の指定率を七〇%まで引き上げていくことを目指してまいります。
 次に、六町地区内の補助二五八号線の整備についてでございますが、綾瀬川にかかる補助二五八号線の橋梁につきましては、本地区の対岸の地域から六町駅への歩行者のアクセス性を高めるため、早期の歩道利用が可能となるよう平成二十三年度に足立区が整備したものでございます。
 都といたしましては、必要な事業費の確保を図るとともに、権利者との移転折衝スケジュールを前倒しすることで工事の早期着手を図るなど、区画整理事業の推進に積極的に取り組むことにより、橋梁と六町駅との間の補助二五八号線につきましても整備を進めてまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、聴覚障害者への支援についてですが、都は、聴覚障害者の福祉の増進を図るため、手話通訳者等の意思疎通支援者を養成してまいりました。
 また、昨年四月に施行された障害者総合支援法において、特に専門性の高い手話通訳者等の養成または派遣、さらにこの派遣に係る広域的な連絡調整等が都道府県の役割とされました。
 このことを受けまして、本年一月から、国のモデル要綱を踏まえ、都道府県域を越える広域的な派遣に係る連絡調整事業を開始したところでございます。
 さらに、来年度は、障害者団体等が主催または共催する広域的な行事への手話通訳者等の派遣を実施いたします。
 地域の聴覚障害者を対象とした手話通訳者等の派遣は区市町村の役割であり、今後、区市町村とも一層連携して、聴覚障害者支援の取り組みを進めてまいります。
 次に、都民への手話の普及についてですが、都は来年度から、広く都民に手話に関心を持っていただき、理解を深めてもらえるよう、入門手話パンフレットを作成し、小中学校や公共施設に配布いたします。
 また、都民が初めて手話を学ぶ際や地域で実施される手話サークル活動において活用できる教材も作成し、手話人口の裾野を広げてまいります。
 さらに、外国語手話の普及活動等も支援し、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、手話ボランティアとして活躍できる人材の育成に取り組んでまいります。
 こうした取り組みにより、手話のできる都民を広く育成し、聴覚障害者が安心して暮らし、活動できる環境整備を進めてまいります。
 最後に、手話の指導者養成についてですが、都は、昭和四十五年度から手話通訳者養成講習会を開始し、現在、地域手話通訳者クラス、手話通訳者特別クラス、指導者クラスの三つのクラスを設け、手話通訳者の養成に加え、地域で手話講習会を担える指導者の育成に努めております。
 また、講習会修了者を対象に、相互の交流の機会も設け、技術の研さん及び資質の向上を図っているところでございます。
 指導者クラスのカリキュラムの作成に当たりましては、中途失聴、難聴者向け講習会のための講義も取り入れておりまして、今後とも、適宜カリキュラムの見直しを行うなど講習内容の充実を図りながら、手話の指導者養成に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 障害者雇用についてのご質問にお答えいたします。
 障害者の雇用機会を拡大し、就業を促進するためには、障害者雇用について理解し、企業現場で中心的な役割を担う人材の存在が重要であります。
 これまで都では、中小企業の経営者や人事担当者向けのセミナーの実施、普及啓発資料の発行などにより、職場における障害者受け入れの理解促進を図ってまいりました。
 来年度からは、中小企業の人事担当者等を対象として、専門家による講義や企業見学などにより、障害者を職場で受け入れるために必要な知識やノウハウを身につける講座を開催いたします。
 こうした施策を通じ、企業の中核的な存在となる人材を養成し、現場に根差した発想により、障害者雇用の拡大に取り組めるよう支援してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 環境建築に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、環境建築フォーラムについてでございます。
 このフォーラムは、民間のすぐれた事例などを紹介することで環境建築技術を普及させるため、ご提唱の趣旨を踏まえて開催するもので、建築物の省エネ化などの環境配慮を進める機会として大きな意義がございます。
 都は、平成十四年度から十年以上にわたって、新築建築物の環境性能の向上を目的とする建築物環境計画書制度を運用しており、今月開催する二回目のフォーラムでは、この制度を通じて得られた建築物の断熱性能や設備機器の効率向上の推移を初め、今後目指すべき新築建築物のあり方などをテーマに行う予定でございます。
 今後とも、このフォーラムの継続的な開催などにより、東京の持続可能な発展を目指して、環境建築技術の普及に引き続き取り組んでまいります。
 次に、都内のすぐれた環境建築物などの海外へのアピールについてであります。
 都はこれまでも、国際会議の場などにおいて、東京のトップレベルの省エネビルの事例や都の先進的な施策でありますキャップ・アンド・トレード制度などを紹介してまいりました。
 ことし六月には、気候変動対策に取り組む都市の国際的なネットワークでありますC40のワークショップを、環境建築をテーマとして東京で開催する予定でございます。
 この機会を捉え、都内の環境性能のすぐれた建築物を紹介する英文のリーフレットの作成やサイトツアーなどを通じて、日本の最先端の環境建築技術や都の施策の成果を世界に向けて積極的に発信してまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 都庁舎改修における環境貢献とその成果の公表についてでありますが、設備更新における空調設備の更新では、省エネ型空調設備である大温度差空調システムを導入し、エネルギー消費量の削減を図ってまいります。
 また、空調機器の設置場所を天井から機械室に変更するなど、メンテナンス性の向上と更新時の施工の容易性を図り、将来コストの低減にも取り組んでまいります。
 このような都庁舎改修の取り組みは、現在、東京都のホームページや建築専門誌などで公表しているところでございます。
 今後は、さらに、設備更新における建築物の省エネ性能向上の効果や、居ながら工事における複数業種が同時期かつ短期間に工事を行う場合の課題と対応策などを関係部局と連携し、都民や民間事業者にわかりやすく公表してまいります。
 また、都有施設の改築等に適用している省エネ・再エネ東京仕様については、例えば、LED照明の規格化が推進されていることを踏まえ、その導入拡大に向けた検討を進めていくとともに、自治体向けの説明会の開催やホームページへの掲載などを通じて、引き続きPRに努めてまいります。

ページ先頭に戻る