〇議長(吉野利明君) 七十一番田中たけし君。
〔七十一番田中たけし君登壇〕
〇七十一番(田中たけし君) まず初めに、環境エネルギー政策について伺います。
昨日の我が党の代表質問で、水素エネルギー社会の実現に向けた知事の認識を伺い、高い経済波及効果に関する答弁があり、この分野に対する知事の関心の高さ、期待の大きさを感じました。
我が党も、政務調査会のもと、環境エネルギー政策に積極的に取り組む方針であり、先日も同僚議員とともに、東京ビッグサイトで開催されたスマートエネルギーWeek二〇一四の水素・燃料電池展を視察してきたところであります。環境の視点、エネルギー効率や経済効果の視点等、水素エネルギーの持つ将来性、可能性について強い感銘を受けてまいりました。
その際も伺ってまいりましたが、来年度以降、トヨタやホンダから世界に先駆けて燃料電池車が市販される予定となっており、水素エネルギー社会は、我が国の高い技術力の集約があってこそ実現され得るものであり、世界をリードする新しい産業分野となるものと確信しています。
また、水素関連商品は、産業の裾野が広く、長らく続いたデフレを克服し、新たな成長へとつなげるアベノミクスの大きな牽引役とも期待されるものであり、都としても、都内産業の活性化のためにも力を注ぐべきと考えます。
将来的には、水素発電など大規模な活用が想定されていますが、我々がまず目指すべきは、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、実用化が具体的に進んでいる燃料電池車や燃料電池バスを積極的に導入し、新しい産業を軌道に乗せ、日本の環境技術を世界に印象づけることが肝要と認識しています。
知事は選挙公約の中で、燃料電池自動車のオリンピック・パラリンピックでの活用を掲げておられましたが、二〇二〇年に向け、水素エネルギーについてどのような活用をお考えなのか、知事の所見を伺います。
また、水素社会の実現に向け、まず燃料電池車の普及を確かなものとすることが不可欠と考えますが、その際課題は何なのか、また、都としてどのように取り組んでいくのか、都の見解を伺います。
次に、防災対策について伺います。
東日本大震災以降、首都直下型地震の被害想定が見直され、また、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、防災力のさらなる強化は喫緊の課題であります。
中でも、都民の生命を守り、首都の安全性を高める木造住宅密集地域の対策が重要であり、木密地域不燃化十年プロジェクトの推進が強く求められております。この不燃化対策の柱である特定整備路線の整備及び不燃化特区の推進は、ともに行政の強い決意がないと進まない事業と認識しております。
私の地元品川区を通る補助二九号線は、特定整備路線に指定され、さらにその補助二九号線沿道周辺地域は、不燃化特区として平成二十六年度実施予定地区に指定されました。補助二九号線周辺地域は、火災時の危険性が高く、住民を災害から守るためにも、本路線の整備及び不燃化事業の推進が期待されております。
一方で、補助二九号線は、過去に品川区議会において、都市計画道路の指定廃止を求める意見書が採択された経過があります。それは、この計画線上に幾つかの商店街があり、計画線が引かれているものの、事業化がなされず、土地や建物の活用が進められないため、計画を進めるなら進める、進めないのであれば土地の有効活用の観点から計画線を外してほしいというものでありました。そのため、やるならやるという行政の決意を強く求めております。
このように、木密地域の解消に向けては、知事の力強い決意なくして事業の推進はないものと考えます。
そこで、知事は、東京を世界一安全・安心な都市にするといわれていますが、改めて木密地域の改善に向けた知事のご決意を伺います。
不燃化対策の柱の一つである特定整備路線は、延焼遮断帯として木密地域の防災力向上に寄与する都市計画道路でありますが、木密地域の多い品川区を縦断する補助二九号線の早期開通は、地域の安全性向上の視点から強く期待されております。
そこで、補助二九号線の取り組み状況と今後の見通しについて伺います。
また、もう一つの柱である不燃化特区は、品川区では、既に先行実施地区として東中延、中延地区で取り組みが進み、さらに、平成二十六年度実施予定地区のうち四地区を前倒しで指定を受け、積極的に木密対策を進めています。
一方で、住民の理解を得るのに多くの時間を必要とする区があるとも伺っております。都は、二〇二〇年までに木密地域を着実に改善させるため、積極的に取り組む区に対してさらに支援を行うと同時に、さらなる後押しが必要な区に対しては、区の取り組みに差が出ないよう、その後押しとなる支援を行うべきと考えますが、見解を伺います。
次に、オリンピック・パラリンピック大会について伺います。
昨年十月、海外調査団の一員として、オリンピックの視点からアテネとロンドンを調査してまいりました。
アテネでは、オリンピック開催すら危ぶまれる中、開催後の施設利用の十分な調査、計画もないまま施設整備が行われた様子であり、ホッケー場など、フェンスに囲まれ、未使用のまま放置されている施設を幾つか見てまいりました。
一方、ロンドンでは、全ての調査先でレガシーという言葉を聞いたように、開催後の施設や町のありようをしっかり計画し、無駄なく効果的に施設建設が行われておりました。メーンスタジアムであっても、開催時は八万席の観客席を用意しましたが、そのうち約二万五千席は仮設とし、開催後のサッカーチームのホームスタジアムに適した規模に縮小し、使用するとのことでありました。
そのようなアテネ、ロンドン両都市において共通して聞いてきた言葉は、ホワイトエレファントという言葉でありました。無用の長物をつくってはならないということであります。しかし、ホワイトエレファントという言葉を両都市で聞いたものの、結果には大きな違いがありました。東京大会でも、ホワイトエレファントにならないよう、大会後の利用予測や競技人口をしっかり踏まえた施設整備が必要であり、大会中だけではなく、大会後においても都民の貴重な財産として活用される施設とすることが重要であります。
そこで、大会後の施設の有効活用について、都はどのように取り組んでいくのか伺います。
なお、現在、東京オリンピック開催時に野球を正式種目に復活させようと取り組みが行われ、バッハIOC会長の発言からも野球復活の期待が高まっております。そのような取り組みが進む中、野球場の敷地を、オリンピック開催に向け一時的に他の競技施設にすることはやむを得ませんが、大会後も野球ほど競技人口のいないマイナー競技の施設として残すことは理解できず、まさにホワイトエレファントにしないよう強く要望いたします。
先日、第八回目の東京マラソンが盛大に開催されました。東京マラソンの主役はランナーであると同時にボランティアの方々でもあります。
過去二回、東京マラソンを走った私も強く感じておりますが、ボランティアの声援により背中を押され、ゴールにたどり着いたランナーも数多くいますし、ボランティアなくして大会運営は成り立ちません。ボランティアの役割は大変重要であり、都にとってボランティアとのつながりは貴重な財産でもあります。
同様に、東京オリンピック・パラリンピック大会の成功に向けて、大会関係者のみならず、オリンピック・パラリンピックに関心を持つ都民、国民が幅広く参加して大会を盛り上げていくことが重要であります。
そこで、より多くの方々の参加が得られる仕組みとして、大会ボランティアの活用が有益だと考えられますが、都の見解を伺います。
次に、港湾政策について、まずは国際コンテナ戦略港湾に関して伺います。
東京港は、首都圏四千万人の生活と産業を支える極めて重要なインフラであり、港湾関係者や都議会、港湾管理者である都が長年にわたり一体となって、日本初のコンテナ船の受け入れや、さまざまな物流革新に取り組んでまいりました。
その結果、東京港を日本で唯一、四百万個を超えるコンテナ貨物を取り扱う港に成長させるなど、大きな成果を残してきました。
しかし、現在、東京港は重大な岐路に差しかかっております。国が進める国際コンテナ戦略港湾政策では、三年前の港湾法の改正により、京浜港で一つの港湾運営会社を設置することとされましたが、その後、港湾運営会社に対する国の出資を可能とする改正案が国会に提出されるなど、これまで港湾の現場に全くかかわってこなかった国が港湾経営を支配しようとする動きが顕著になってきております。
これまで東京港の発展を支えてきたのは、都やふ頭会社、港湾関係者が一体となった体制による港湾運営の結果であり、今後も東京港の国際競争力のさらなる向上を図っていくためにも、国の関与を抑え、引き続きこうした体制を維持していかなければならないと認識しております。
そこで、こうした国による動きがある中で、昨日、知事の力強い決意を伺いましたが、都は、港湾管理者として、今後どのように港湾運営を行っていくべきと考えるのか所見を伺います。
次に、京浜三港連携について伺います。
アジア諸港の台頭により国際競争が一層激しくなる中、京浜港の国際競争力強化は喫緊の課題であり、その実現には、京浜各三港の特性を生かした港湾機能の強化と、適正な競争による利用者サービスの向上が欠かせません。
また、大型化する国際基幹航路のコンテナ船の寄港を堅持していくためには、広域からの貨物集約など、京浜三港が連携して取り組むべき課題もあります。
そのため、平成二十年に、都が呼びかけ、京浜三港の連携を開始し、都議会もこれを支援する中、おのおのが補完しながら、その特性を充実させてまいりました。
しかし、今般の港湾運営会社への国出資制度は、それを逆手にとり、これまで行ってきた自治体同士の自主的な取り組みを、国の一方的な権限強化により乗っ取るようなものであります。
また一方で、京浜各三港も、限られたパイを取り合うようなことを目指しては決してならず、国際競争力の強化の視点から、三港が理解し合い、より積極的に連携していくことが求められております。
三港連携は、それ自体が目的ではなく、各港、または京浜港全体が発展していくための手段であり、まずは東京港がしっかりと強みを発揮し、発展していくことが必要であると考えます。
そこで、東京港がさらに強みを発揮し、発展していくために、都は三港連携をどのように取り組んでいくのか所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事舛添要一君登壇〕
〇知事(舛添要一君) 田中たけし議員のご質問にお答えいたします。
まず、水素エネルギーの活用についてでございますが、水素エネルギーの活用は、環境負荷を低減し、経済の新たな牽引役として産業の活性化につながるとともに、環境先進都市としての東京の姿や我が国の高い技術力を世界にアピールする上で、大変有意義なものと認識しております。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けては、分散型電源として、家庭用燃料電池などの活用を促進していくとともに、選手村や会場への輸送手段に燃料電池車や燃料電池バスの活用を図り、都民や国内外から東京を訪れた方々に水素社会の到来を実感していただくことなどを考えております。
このため、燃料電池車の普及に不可欠な水素ステーションの整備など、今から取り組むべき課題がございます。
そこで、来年度、新たに戦略会議を設置し、自動車メーカーやエネルギー供給事業者等を含め、産学官の英知を結集しながら具体的な取り組みを実行してまいります。
続きまして、木造住宅密集地域の改善についてご質問がございました。
私も、選挙期間中にさまざまな木密地域を回り、品川区の戸越地区のように、古い家屋が密集し、消防車が入れない狭い道路など、建物倒壊や延焼のおそれがある危険な状況をつぶさに見てまいりました。
首都直下型地震から都民の生命と財産を守り、首都の安全性を高めるためにも、また二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを万全に開催するためにも、こうした木密地域の改善を急がねばなりません。
このため、木密地域不燃化十年プロジェクトを強力に推し進め、市街地を燃えにくくする不燃化特区と、延焼を食いとめ避難の道となる特定整備路線の取り組みを本格化させます。
来年度には、不燃化特区を現在の十八地区から三十九地区に拡大し、特定整備路線を全て事業化するなど、木密地域の不燃化を加速させてまいります。
今後とも、区と連携しながら、民間の力も活用して、全力を挙げて世界一安全・安心な東京の実現を図ってまいります。
なお、残余の質問につきましては、東京都技監及び関係局長が答弁いたします。
〔東京都技監藤井寛行君登壇〕
〇東京都技監(藤井寛行君) 不燃化特区における都の支援についてでございますが、不燃化特区では、地元区が個別に老朽家屋などを訪問し、建てかえに向けた住民の方々の理解を得られるよう、きめ細かく対応を行うことが必要でございます。
この取り組みは、建てかえの促進に効果がある一方で、人手もかかることから、区によっては不燃化特区を拡大していくことが難しい状況もあると聞いております。
このため、都では、都市づくり公社や民間団体の専門家の活用など、区の実情に応じて効率よく取り組めるよう提案を行っております。
今後とも、こうした技術的、財政的支援を行うことで、各区が積極的に不燃化特区制度を活用できるよう後押しし、木密地域の改善に努めてまいります。
〔環境局長長谷川明君登壇〕
〇環境局長(長谷川明君) 燃料電池車の普及に向けた取り組みについてでございますが、燃料電池車普及への大きな課題としては、高額と見込まれる販売予定価格のほか、水素ステーションの不足による燃料電池車の利便性の低下がございます。
水素ステーションについては、法規制などにより必要面積が広大となることから、これが大都市東京ゆえの用地確保の困難性に拍車をかけることとなっており、さらに高コストな整備費などが加わることで、整備促進の足かせとなっております。
今後、都は、水素ステーションの整備促進に向けて、コスト構造や法規制等に関して、実態調査により普及に向けた障壁を明らかにし、これに基づき、安全性にも配慮しながら、公道との保安距離や市街地の水素貯蔵量など、整備促進に必要な規制緩和を国に提案してまいります。
さらに、自動車メーカーやエネルギー供給事業者等とも連携し、戦略会議を活用しながら具体的な普及策を検討してまいります。
〔建設局長横溝良一君登壇〕
〇建設局長(横溝良一君) 補助第二九号線の取り組み状況と今後の見通しについてでございますが、六千四百人を超えるとうとい命が失われた阪神・淡路大震災では、幅員が十二メーター以上の全ての道路が延焼を食いとめました。このことなどを踏まえ、東京消防庁の手法を活用し、シミュレーションを行った結果、本路線では延焼遮断に大きな効果が確認されました。
このため、この路線の山手通りから環七通りまでを特定整備路線に選定し、昨年十一月までに六区間に分けて地元説明会を開催し、現在、測量などを進めております。
この六区間のうち、大崎及び豊町の二区間については、今月中に国の認可を取得し、事業に着手するとともに、残る区間についても来年度中に事業を開始いたします。
今後とも、都は、命の道となる特定整備路線の整備にスピード感を持って全力で取り組んでまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕
〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、二〇二〇年大会の会場整備についてでありますが、都が新設いたします競技施設は、大会期間中はもちろん、大会後も都民、国民の貴重な財産となり、末永く親しまれる施設となるよう整備していく必要がございます。
そのため、大会後における活用策や、事業性を踏まえた効率的な管理運営手法などについて、地元自治体や競技団体、施設管理事業者など、各界の意見を幅広く聞くとともに、ロンドン・オリンピックなど、国内外の事例を参考としながら、後世に引き継ぐための施設のあり方を検討してまいります。
次に、二〇二〇年大会におけるボランティアの活用についてでありますが、ご指摘のとおり、ボランティアを活用することは、大会を成功させる上で必要不可欠であるとともに、開催機運を盛り上げるためにも極めて重要であります。
今回のソチ・オリンピック・パラリンピック大会では、二万五千人のボランティアが会場案内やセキュリティーチェックなど、重要な役割を担っております。
都では、東京マラソンで一万一千人、昨年開催されましたスポーツ祭東京二〇一三では、全体で延べ三万人を超える数多くのボランティアを活用するなど、着実に実績を積み重ねております。
今後、都が有するこうしたボランティアの募集や育成などに関する知識やノウハウを十二分に活用して、学生を含め若者から高齢者まで幅広い年齢層の方々の参加が得られる仕組みを大会組織委員会とともに構築してまいります。
〔港湾局長多羅尾光睦君登壇〕
〇港湾局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、今後の港湾運営についてですが、都はこれまで、ふ頭会社とともに港の第一線で働く方々の声に真摯に耳を傾け、現場の実態に即した振興策を実施することにより、事業者の方々と一体となって今日の東京港の発展を築いてきたと考えております。
例えば、東京港独自の渋滞対策であるコンテナ貨物搬出入時間を一時間前倒しする早朝ゲートオープンの取り組みなどは、現場の方々との密接な意見交換の中から生まれ、実現することができた取り組みでございます。
これにより、十七時以降におけるコンテナターミナルへのトラックの入場数が約二〇%減少するなど、一日のうちで最も混雑が激しい夕方の渋滞を大きく緩和する効果を上げております。
今後、京浜三港のふ頭会社で立ち上げる港湾運営会社のあり方を検討していく中においても、これまでのように、都がふ頭会社や港湾関係者の方々と一体となって、東京港の現場に精通しているという強みを最大限に生かし、港湾運営に引き続き指導力を発揮することで、実のある国際競争力強化策を展開してまいります。
次に、東京港の発展に向けた三港連携の取り組みについてですが、厳しい国際港湾間競争を勝ち抜くためには、京浜港が一体となって総合力を発揮していかなければならないと考えております。
都としては、これまで東京、川崎、横浜の三港が別々に徴収していた入港料を一元化し、実質的な値下げと手続の簡素化を図るなど、三港一体となった取り組みを進めてまいりました。
一方、京浜港を構成する三港は、それぞれ異なる機能や特色を持って発展してきた経緯があり、今後もその強みを生かし、各港が切磋琢磨していくことも必要でございます。
今後とも、都は、三港間の連携施策を展開するとともに、健全な競争関係のもとで、利用者サービスの向上と港湾コストの低減を実現することにより、東京港の発展を図りながら、京浜港全体の国際競争力を強化してまいります。
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