平成二十六年東京都議会会議録第三号

〇副議長(藤井一君) 七十三番神林茂君。
   〔七十三番神林茂君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇七十三番(神林茂君) 先ごろの国連のIPCC報告原案によると、温暖化の影響で世界全体の穀物生産量は今後十年ごとに最大二%ずつ減少し、経済損失も今世紀末までに年間百四十八兆円と予測しております。
 日本でも昨年には異常なまでの猛暑日が続き、巨大台風が到来し、ことしに入り記録的な大雪が降るなど、異常気象が目に見えて増加している今日、地球温暖化の問題を先送りするわけにはいきません。
 そうした地球温暖化に伴う気候変動の危機を回避するため、二〇五〇年までに温室効果ガス排出量を、世界全体では半減、先進国では八〇%削減することが必要といわれており、東京は先進国の首都として、また、世界一の環境先進都市を目指す大都市として、その責任と役割を果たしていかなければなりません。
 CO2排出の制約が強まるこれからの時代にあって、省エネ技術の活用などにより、CO2削減を進めつつ、東京の活力を維持し、さらなる成長を実現していくことが求められます。
 また、都市活動に起因する温室効果ガスが世界全体の排出量の約七割に達すといわれる中、急成長するアジアなどの諸都市においては、気候変動を初めとする環境問題が大きな課題となっております。
 そこで知事は、こうした状況をどう認識し、今後、気候変動対策、省エネルギー対策をどのように進めていくのか伺います。
 気候変動の対策としては、CO2の排出削減に加え、温室効果ガスであるフロン対策も重要です。フロンは、ビルの空調設備や小売店舗の冷凍冷蔵ショーケースなど、大小さまざまな機器に冷媒として使用されております。
 国によると、機器使用時に相当量のフロンが漏えいし、また、廃棄時のフロン回収率も三割程度にとどまっているとのことです。
 そこで、昨年六月、フロン回収破壊法が大幅に改正され、冷凍空調機器の適正管理のためにユーザーが果たすべき責務が大きくなりました。
 しかし、フロンは、においも色もないため、漏えいしても発見が困難でしょうし、また、複雑になった機器をどのように点検すればよいのかわからないのが実態だと思います。
 私は、対応に苦慮しているユーザーが適切な管理を行えるよう、経験と専門知識を有する冷凍空調関連業界の力をかりて、都が積極的に支援していくべきと考えます。
 また、フロンを使わない、いわゆるノンフロン機器を普及させることも有効な対策の一つです。しかし、まだ全体的に価格が高いことから、中小事業者がノンフロン機器を導入しやすくなるよう、都として支援を行うことも必要だと考えます。
 そこで、実効性あるフロン対策について、都の認識と今後の取り組みについて伺います。
 東京都は、気候変動を初めとする環境問題への取り組みを通して、技術やノウハウを蓄積していると認識しています。下水道事業では、新たな焼却方式を導入するなどの積極的な取り組みにより、昨年度は目標を上回る二〇〇〇年度対比約二十五万トンの温室効果ガスの削減を達成しております。
 地球は一つの有機体ですから、東京だけの取り組みで根本的な問題解決には至りません。都がこれまで蓄積してきた技術やノウハウを活用し、国際社会に貢献していくことも、また世界一を目指す東京の責務だと考えます。
 私は、平成二十三年第二回定例会で、東京下水道の技術を国際的に活用すべきという立場から質問しました。その際、マレーシア政府に対し、下水道再整備に関するマスタープランを提出し、整備計画の策定や技術的支援を行っていくとの答弁がありました。
 また、昨年第二回定例会では、都議会自民党の代表質問に対し、東京が培った技術や経験が水環境の改善を目指すマレーシア政府から高く評価され、首都クアラルンプール郊外での下水道プロジェクトが具体的に動き出しているとの答弁もありました。
 肝心なことは、東京の下水道技術を生かしたマレーシアでのプロジェクトを、都として最後まで責任を持って完結させ、成功に導くことであります。そして、さらに、このプロジェクトの成功を糧にし、さらなる国際社会への貢献へつなげていくことであります。
 そこで、マレーシアプロジェクトの現状と今後の展開、さらなる国際貢献への取り組む決意について伺います。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定し、舛添新知事誕生のもと、国際都市東京のプレゼンスを世界に示す非常に重要な時期を迎えております。
 東京の空の表玄関羽田空港では、国際競争が激化する中で、国際戦略や交流、観光政策の拠点として今後ますます機能強化が求められ、さらなる発着容量の拡大が検討されております。
 そして、隣接する羽田空港跡地につきましては、平成二十二年十月に羽田空港移転問題協議会が羽田空港跡地まちづくり推進計画を策定し、平成三十二年ごろを目途にまちづくりの概成を目指すこととされ、図らずも東京オリンピック・パラリンピックの開催年にも重なっております。
 この跡地は、東京の都市づくりビジョンにおいて、羽田空港が今後の東京の活力に極めて大きなインパクトを与えるとして、世界に開かれたにぎわいのある拠点として育成する羽田新拠点に位置づけられております。
 また、この間、東京都ではアジアヘッドクオーター特区としてグローバル企業の誘致を行っており、その特区区域の一つである羽田空港跡地では、ものづくり日本の再構築を図るため、首都東京にふさわしい産業交流施設の検討が進められております。
 今後、国家戦略特区の指定がなされ、積極的にMICEを誘致、創出していくことによって、経済の活性化や産業の飛躍的な発展に結びつくと考えられます。
 私もこれまでこの羽田空港跡地に対して、戦後の四十八時間強制退去や長年にわたって航空機騒音に苦しめられた歴史を踏まえて、東京都が果たすべき役割、人のにぎわいを創出すること、地元地域や産業と共生を図ることなどを主張してまいりました。
 あと六年のスケジュールは、決して余裕のあるものではありません。東京オリンピック・パラリンピックなど、今後多くの訪日外国人を迎えるに当たり、空の玄関口ともいえる空港跡地が現状のままであってはなりません。
 舛添知事と我が党が目指す東京が世界で一番の都市に向けて、今こそ東京が強力なリーダーシップを発揮して、空港跡地開発の具体化を推進する必要があると考えますが、所見を伺います。
 東京が、これから先国際都市として発展し続けるためには、羽田空港と都市部を結ぶ交通ネットワークの強化、充実が必要不可欠であり、この項は内容が重複いたしますが、あえて質問をさせていただきます。
 「二〇二〇年の東京」においても、首都圏空港の発着枠拡大などのさらなる機能強化や、国際競争を勝ち抜く世界トップクラスの交通インフラを整備することが計画内に位置づけられております。
 都心から羽田空港への鉄道アクセスは、現在、京急電鉄や東京モノレールがあり、都内の東部に集中しております。
 一方、平成二十七年度整備着手を目指す新空港線は、JR蒲田駅と京急蒲田駅間のわずか八百メートルをつなぐことにより、東京都西部から羽田空港へのアクセスルートを確保することが可能となり、同時に、東急東横線や東京メトロ副都心線との相互直通運転やJR線、日比谷線との接続により、アジアヘッドクオーター特区区域と羽田空港をつなぐ路線として強力に機能いたします。
 さらに、新空港線は、採算性の検討や事業手法に関する検討も終わっており、早期に整備着手し、都市計画などの手続を開始することにより、オリンピック・パラリンピックの開催に唯一間に合う可能性の高い鉄道であります。
 また、地元大田区では、区民協議会の支援を受けながら、大田区長みずからが関連沿線区の区長に対し、早期整備に対する支援を求めて、今回、都知事宛て要望をいたしました。
 一方、道路整備の面から見ると、首都圏三環状道路は、渋滞緩和や環境改善、災害時には迅速な救命救急活動を支える命を守る道路となります。
 また、オリンピック・パラリンピックの開催に向け、今後、ますます期待が高まる羽田空港や京浜港を結ぶ世界一の都市東京を目指す上で、欠くことのできない道路であります。中でも、東京西部地域に計画される外環道は、関越道から東名高速間が二〇二〇年に向け、工事が鋭意進められており、残る東名高速から湾岸道路間の計画の具体化が急がれます。
 そこで、東京都は、羽田空港から東京都西部や環状方向への交通アクセスの重要性をどのように認識されているのか、また今後、どう取り組んでいくのか見解を伺います。
 道路、橋梁、上下水道、港湾や河川護岸など、東京を支えるインフラの大半は、完成から半世紀以上がたち、笹子トンネル事故などでも明らかなように、このまま老朽化を放置すれば、都民の生命と財産を奪う結果となり、その対策は都政の重要課題であります。
 まして首都圏直下地震が一たび発生すれば、専門の調査機関によると、平常時の十倍以上、空洞箇所が確認され、陥没などの発生によって、交通、物流ネットワークが分断され、住民の避難ルート、救護、救助ルート、食料や医療の補給ルートまでが断たれて、東京はまさに壊滅的な状況となると分析されております。
 そこで、今現在、この膨大なインフラの老朽化を、限られた財源の中で一刻も早く解決する手だてとして、地中レーダー探査などの非破壊検査を活用して、交通、物流ネットワークの路面下の総点検を行い、脆弱性の高い危険箇所を早期に補修、補強を行って、迅速な強靱化を図ることが有効であると考えられております。
 東京都でも、平成二十五年には百七十三キロメートルと路面下空洞調査を年々拡大しておりますが、いまだ都道総延長二千二百三十キロメートルの八%どまりで、調査路線が断片的なため、首都直下地震発生時に交通、物流ネットワークの安全確保が懸念されます。
 道路について申し上げるならば、道路はネットワーク網をつくって一つに結びついていますので、当然、安全性を確保するには、都において、まずは各局が一丸となって、緊急輸送道路、幹線道路全ての路線で早急に路面下空洞調査などを行い、総点検をかけ、問題の対策を進めている国土交通省や市区町村と連携を図って、都内道路網全てを結びつけていくことが急務であります。
 首都東京の都民の生命と安全を守るため、インフラの総点検と迅速な強靱化に一刻の猶予もありません。
 インフラの安全性確保に向けた所見と今後の取り組みについて伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 神林茂議員のご質問にお答えいたします。
 気候変動対策、省エネルギー対策への認識と今後の取り組みについてでございますが、IPCCの最新の報告によりますと、極端な降水がより強く、頻繁になる可能性が高いことなどが予測されております。最近の極端な気候現象は、こうした指摘を想起させるものがあります。
 一方、東京都の温室効果ガス排出量は北欧一国に相当し、その多くは都市活動を支えるためのエネルギー消費に伴い生じるCO2であります。このため、都は、CO2の削減に向けて、エネルギー消費の効率化を図るなど、省エネ対策に取り組む責務がございます。
 そこで、二〇二〇年までに、エネルギー消費量を二〇〇〇年比二〇%削減するという目標を掲げ、大規模事業所へのキャップ・アンド・トレード制度を初めとするさまざまな取り組みを推進し、LED照明、高効率空調機器など、経済成長にも寄与する我が国のすぐれた環境技術を駆使して、省エネ対策を積極的に進めてまいります。
 あわせて、こうした都の取り組みやノウハウ等を発信し、経済成長が続くアジア諸都市の気候変動対策、省エネ対策にも貢献してまいる所存でございます。
 なお、残余の質問につきましては、東京都技監及び関係局長から答弁させます。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、羽田空港跡地についてでございますが、平成二十二年に、お話にもありましたが、国、地元区とともに策定した羽田空港跡地まちづくり推進計画では、魅力とにぎわいのある、世界につながる町の実現を基本コンセプトとして、二〇二〇年ごろの概成を目指し、まちづくりに取り組むことといたしました。
 現在、跡地の第一ゾーンにつきましては、地元大田区が二十四時間国際拠点空港に隣接する特性を生かして、海外企業と国内中小企業を結びつける産業連携の拠点形成などに向けて取り組んでおります。
 また、第二ゾーンにつきましては、国が国際線地区と一体となったエアポートホテルや多摩川の親水護岸の検討を進めております。
 都は、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを迎えるに当たり、羽田が世界に開かれた魅力的な玄関口となるよう、引き続き国や区と連携し、跡地のまちづくりに積極的に取り組んでまいります。
 次に、羽田空港への交通アクセスについてでございますが、空港の機能を最大限発揮させるためには、都内各地域と空港とを結ぶ、環状方向を含めた交通アクセスの充実が必要であると認識しております。
 これまでに、京急蒲田駅の改良事業や、第一京浜と環状八号線との立体交差事業などがほぼ完成し、現在、首都高速中央環状品川線の整備などを進めております。
 都は、来年度、都における今後の鉄道ネットワークのあり方などについて検討する委員会を設置し、その中で、空港アクセス機能の強化なども含め、調査検討を進めてまいります。
 また、深夜、早朝時間帯におけるバスなどによる空港アクセスの利便性向上にも、国と連携しながら取り組んでまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) フロン対策についてでございますが、フロンガスは、二酸化炭素の数百倍から一万倍を超える温室効果を有することから、冷凍空調設備等のフロン漏えい防止対策が重要であります。
 そのため、都は、フロン回収業者や設備点検業者で構成される団体と連携し、回収業者の漏えい防止技術の向上を図るための講習会を開催するほか、団体の協力を得て、新たに設備の適正管理マニュアルを作成、配布などの、設備等のユーザーへの支援を行ってまいります。
 また、冷凍冷蔵ショーケースからのフロンの漏れは全体の三割と最も多いため、都は、中小事業者がノンフロンのショーケースに更新する場合に、導入費用の一部を補助する制度を、来年度から新たに開始いたします。
 さらに、都は、この四月から、総合的なフロン対策を専門に行う組織を高圧ガスの保安対策を所管する部署に設置し、高圧ガスの漏えい防止対策などで蓄積したノウハウを活用した助言を行うなど、ユーザーの適正管理が一層進むよう取り組んでまいります。
   〔下水道局長松浦將行君登壇〕

〇下水道局長(松浦將行君) マレーシアでの下水道整備プロジェクトについてでございますが、これは東京下水道が培ってきた技術を活用し、同国の首都郊外のランガット地区で、下水道施設の設計から建設、維持管理までを一括して行うものでございます。
 人口約九十万人、面積約八十平方キロメートルを対象とし、事業規模は数百億円に及び、官民連携による下水道分野での海外展開では最大規模となります。
 昨年十二月には、東京都下水道サービスを含むコンソーシアムが、現地での測量、土質調査、基本設計を完了し、マレーシア政府に東京発の省スペース技術や効率的な維持管理手法を含む技術提案書を提出しております。
 引き続き、このプロジェクトを契約締結と事業実施に向けて積極的に推進し、この成果がさらなる国際貢献に結びつくよう取り組んでまいります。
   〔建設局長横溝良一君登壇〕

〇建設局長(横溝良一君) インフラの安全性確保についてでございますが、都道では、全路線を対象に日常的な巡回点検を行い、異常を発見した場合には速やかに応急措置を実施するとともに、毎年、地中レーダーによる空洞調査を計画的に実施し、埋設企業者と連携して道路陥没を防止しております。
 また、特殊車両に搭載したレーザーを用い、約二千二百キロほぼ全ての道路において、三年サイクルで路面の状態を詳細に調査するとともに、橋梁やトンネルなどでは、定期点検に加え、非破壊検査を行い、効果的に補修、補強工事を実施しております。
 引き続き、国や区市町村とも連携して、最先端技術を活用した切れ目のない管理を推進するとともに、今後は笹子トンネルの事故を教訓として、点検しにくい場所における検査通路や照明の設置、IT技術を活用した構造物の監視など、確実な管理体制を構築し、インフラの戦略的なメンテナンスを通して、都民の安全・安心を確保してまいります。

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