平成二十六年東京都議会会議録第三号

   午後三時十五分開議

〇副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十二番田中健君。
   〔三十二番田中健君登壇〕

〇三十二番(田中健君) まず、羽田空港のアクセスについて伺います。
 世界の都市間競争が進む中、東京においても、道路、鉄道、空港などの都市基盤整備が進められています。特に世界中から人がおり立つ羽田空港は、都心とのアクセス向上が大きな課題であり、改善を目指し国や民間からもさまざまな構想が打ち出されているところです。
 それら構想の中の一つに新空港線があります。これまで京急蒲田、そして東急多摩川線蒲田駅、この二つの蒲田を結ぶ路線として、運政審十八号において二〇一五年までに整備着手することが適当であると位置づけられてきました。
 この間、羽田空港は、国際化、二十四時間化が進み、訪日外国人が一千万人を超え、さらには東京オリンピック・パラリンピック招致が決定したことで、路線の持つ意義が大きく変わってきました。
 単に八百メートルを結ぶ路線ではなく、アジアビジネス拠点と観光誘致を目指す我らが国際都市東京と、発着枠がさらに拡大し、二十四時間化が進む羽田空港を結ぶ新しいアクセスルートとして、そして相互直通運転が進んだことで、都西部地域や埼玉県、神奈川県をも結ぶ広域交通軸として、まさに首都圏の都市基盤のかなめとなる東京の都市力アップに大きく寄与する路線と位置づけられるようになりました。
 先日、大田区、新宿区、豊島区、港区、目黒区、品川区、渋谷区の七区が共同でこの新空港線の実現に対して都に要望を出したとも聞いています。
 知事は、施政方針の中で、世界との玄関口である羽田空港の機能も強化していかなければならないと力強く述べ、先月二十七日の定例記者会見の中でも、羽田空港のアクセスなんて考えたときに、蒲蒲線の問題がある、こういう現場を見てみたいとの旨、発言をしています。
 羽田空港の機能強化が国や区や、そして民間を挙げて進められている中、新空港線に関してどのように考えているのか、実際にぜひ、まず現場を見ていただきたいと思っておりますが、知事の考えをお伺いします。
 入札について伺います。
 豊洲新市場の建設工事の入札が昨年十一月不調に終わり、再入札の末、二月十三日、大手ゼネコングループに約一千三十四億円で落札されることになりました。都は、当初の予定価格六百三十億円からその一・六倍に予定価格を引き上げたことになり、異例のこととして報道がされました。
 豊洲以外でも、武蔵野の森総合スポーツ施設メーンアリーナ棟新築工事や駒沢オリンピック公園総合運動球技場改築工事も最近の不調の事例として報道されています。
 東京に限らず、公共事業で入札が一度で成立しない例が全国で広がっています。被災地東北でも入札の不調が続き、復興事業の足かせになっているほどです。
 今後は、東京オリンピック・パラリンピックに関連する工事がふえることを考えると、予定価格を工事費の上限額とする現在の入札制度に関しても見直しが考えられます。入札の不調がふえて工事がおくれ、計画が進まないということにならないように、予定価格を上回った場合でも、応札者の中で最も価格が低かった業者の見積もりを点検し、問題がなければ落札する方が合理的、効果的であるといった議論もされています。
 そこで、都における最近の公共事業における不調の発生率はどのようになっているのか、今後不調を生まないためにも、その要因と対策を含め入札制度全体で考えていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 行政改革に関連して質問します。
 まず、窓口業務の電子化、効率化です。
 現在は、インターネットの普及により、どこにいても情報を手に入れることができるようになりました。東京都は、都民の利便性向上のため、行政手続の簡素化、効率化を進め、窓口業務の処理期間の短縮や電子化などの取り組みを推進してきました。
 そこでまず、窓口業務の改善に向けたこれまでの都の取り組みについて伺います。
 利便性の向上はこれで終わりというのではなく、不断の見直しが必要であります。例えば不動産売買の契約をする際に、宅建主任者は重要事項説明をしなくてはなりません。その際に必要な資料は、これまでは全てが紙ベースであり、それぞれの所管の場所に行き、台帳をコピーする必要がありました。
 水道管埋設状況については水道局に、下水道管に関しては下水道局に、ガス管に関してはガス会社にというぐあいに、事務所を回るだけでも一日がかりといった効率の悪さがいわれてきました。
 そんな中、下水道局は、平成十七年にネットでの閲覧、プリントアウトを可能とし、東京ガスもインターネットによる閲覧サービスを始めました。利用者の利便性を第一に考えるなら、全ての資料がネットで取得できることが望ましいのはいうまでもありません。
 ネットでの閲覧により、利用者の利便性の向上はもとより、都内水道局三十三カ所の事務所の窓口業務も大幅に効率化が可能となります。実際、下水道局は、台帳閲覧室を第二庁舎の一カ所に集約することができました。
 水道局の図面も、インターネットによる閲覧方式の導入を検討すべきと考えます。これまでの経緯と今後の取り組みについての見解を伺います。
 行政改革のもう一点は、コンセッションについてです。
 政府は、成長戦略の大きな柱の一つとして、社会資本整備の手法であるPPP、PFIの活用を掲げています。特に土地や建物を自治体が保有したままで、公共施設の運営権のみを民間に移転するコンセッション方式は、自治体の財政負担の軽減と民間企業の事業領域の拡大の両面から注目を集めているところです。
 政府の想定事業としては、空港、そして上下水道事業の公共施設が掲げられていますが、それだけではなく、指定管理者として、都の監理団体が運営してきた都営住宅や都営の駐車場等の公益的施設もこのコンセッション方式の導入が検討できます。また、東京オリンピック・パラリンピックに関する施設も利用料金を取る公共施設であればコンセッション方式の対象施設になります。
 都においても、公共施設の老朽化に伴い、安全性及びサービスの向上を図るとともに、長期にわたる費用の低減を考慮した最適な施設の整備、運営手法を検討することが重要な課題となっております。
 老朽施設の更新やオリンピックの開催を控え、大きなインフラ投資が必要となる中、財政黒字であるこういう時期だからこそ、さらなる行政改革を進めるべきであります。
 そこで、公共施設の運営に当たり、コンセッション方式の導入に向けた検討を進めていく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、都政の課題について三点伺います。
 まず、尖閣諸島寄附金についてです。
 都は昨年、尖閣諸島活用のための寄附金約十四億円を尖閣諸島活用基金として、国による尖閣諸島活用に関する取り組みに拠出することとしました。その上で、国に対する提案を行っています。都が国に提案した事項は、地元漁民のための船だまりの設置、通信施設の建設、野生ヤギへの対策等であります。
 もちろん、尖閣諸島の管理体制の構築は政府の役割であり、尖閣への公務員の常駐の検討という現政権の政策をどのように実現するか、まだその具体的な動きは見られません。だからこそ、国が進める警備力、防衛力の強化という観点ではなく、小笠原諸島を擁する都としては、希少動物の保全、海洋環境教育の推進、漁業支援等、尖閣諸島の多面的活用の推進を訴えていくことが必要ではないでしょうか。
 こうした観点から、国との調整を含め、今後尖閣諸島基金をどのように活用、推進していくのか、知事の考えを伺います。
 二点目は、外国人地方参政権についてです。
 このたびの知事選挙において大きなテーマとはなりませんでしたが、私たち地方議会にとっては大きな関心事の一つに外国人参政権があります。もちろん法律上での規定は国でありますが、東京都においては、石原元知事が明確に反対の立場をとってきたのは周知の事実です。
 選挙において、舛添知事が外国人参政権推進派といったうわさも流れました。私は帰化要件を非常に緩くするならば、ぜひ帰化していただくということは結構だろうというように思います。しかし、帰化要件が非常に厳しいままであるならば、外国人の地方参政権というのは、同じ地域に住む人間として認めることは一つの考え方であっていいと思いますとの二〇〇二年の参議院における発言が根拠となっているようであります。
 一方で、二〇一〇年の新党改革代表としての記者会見では、議論を詰めていない今の段階では反対だとも述べています。
 さまざまなうわさが飛び交う中、外国人参政権に対してどのように考えているのか、知事の基本的な見解を伺います。
 最後はカジノについてです。
 カジノに関しては、刑法の賭博罪に触れるため、実現するには国の法整備が必要であるという議論が長らく都議会では続いてきました。そんな中、昨年十二月、特定複合観光施設区域整備推進法、いわゆるカジノ法案が衆議院に提出され、通常国会で成立の可能性が出てきました。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催都市が東京に決定したことを受け、急速に法制化の期待が高まっていることも後押しとなっています。実際、ことし四月下旬からカジノ法案が衆議院で審議入りし、会期末の六月までに参議院で成立させるとの見通しもいわれ始めました。
 知事は、ある新聞社の候補者アンケートには反対の表明をされていました。一方、定例会見の中では、いろんな人の意見を聞いて決めるべきだとの発言もあります。明確にカジノ構想を掲げ、招致に力を入れているほかの自治体もあり、のんびりと構えていられないのが現状ではないでしょうか。
 カジノに関してどのような考えを持っているのか、また早いタイミングで協議会や検討会等を立ち上げるなどの対応が必要だと考えますが、知事の基本的スタンスと今後の展開について伺います。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 田中健議員のご質問にお答えいたします。
 まず、新空港線についてでありますが、私は四月以降、さまざまな現場を見ながら都政の課題に取り組んでいくつもりであります。新空港線につきましても、多額の事業費を要することなどから、現場を見て、関係機関等の意見も聞きながら、鉄道ネットワーク全体のあり方を検討する中で、総合的に判断していきたいと思っております。
 次に、尖閣諸島活用基金についてでございますが、尖閣諸島は我が国固有の領土であり、一昨年に国が所有することとなりました。都は、寄附者の志を受け、国による島々の活用に関する取り組みの資金とするために、昨年、都議会の議決に基づき基金を造成しました。
 この基金については、今後、外交や防衛を専管する国の動向を慎重に見定めながら対応してまいりたいと思っております。
 続きまして、外国人地方参政権についてお尋ねがございました。
 まず、地方政治に関してであれ、その国で政治的な権利を行使しようとするなら国籍を取る、帰化すべきだというのが私の考えであります。
 なお、この問題につきましては、特に選挙中において、インターネットなどでは事実と異なる話も流布されているようでありますが、これは私の父親の選挙ビラについての逸話をねじ曲げたものだと思います。
 私は、父が現在の北九州市、当時の若松市の市会議員選挙に立候補した際のビラに、私の父親の名前にハングルのルビが振られていたんです。なぜだろうかということで、昭和初期の選挙制度を調査研究してみました。そこで明らかになったのは、このことはほとんど、韓国の方も、北朝鮮の方も知らないんです。朝鮮半島出身の方々も、当時は選挙権も被選挙権もあったんです。ですから、朴春琴さんという国会議員だって深川にいたんです。もちろん市会議員にもいた。
 それで、そのときに――だから国会議員にも市会議員にもなることができて、しかも、日本語を書けない方々がいます。ハングルしかわからない方。当時の内務省は、ハングルでの投票も認めていたんです。ローマ字でもよかったんです。
 だから、私は、むしろこういう歴史的事実をちゃんと知ってもらって、全て強制連行して虐待したというようなことではないということをむしろ申し上げるために、このビラを、現実に私のうちにありますから、研究してみたわけです。
 同時に、この研究から、日本人も在日朝鮮人の方々と阻害し合うんではなくて、同じコミュニティで生活するという、構成員であるという意識を持つことの大切さも改めて教えられました。
 ついでにいいますと、北九州の八幡製鉄所がありましたね、そこで、職工さんとしてたくさん朝鮮半島から来られたんです。差別もなく、日本人の職工さんと一緒に弁当を食べている。そういう風景があって、これは、火野葦平という私の郷土の作家がいます。「花と龍」を書いた作家です。彼が書いた文学作品ぜひお読みください。そこにそういう光景がきちんと書いてある。したがって、同じコミュニティで生活する構成員であるという意識は、そのときから私のふるさとの八幡ではありました。
 一方、こうした選挙制度自体は、朝鮮が日本の統治下にあったという当時の政治、社会情勢のもとで行われたものでありますので、このこともまた忘れてはなりません。帝国臣民でありましたから。ですから、半島の方々はそれぞれのご意見もまたあると思います。しかし、そういう選挙ビラという現実のものがあって、それを見て、じゃ、なぜそういうルビが打ってあるんだ、ハングル、そこから研究をやるというのは、私は事実に基づく歴史的研究であると思っております。
 繰り返しになりますが、外国籍の方が日本において参政権を行使したいのであれば、私は日本国籍を取得するべきであると考えております。
 カジノについてでありますが、カジノを含む統合型リゾート、いわゆるIRにつきましては、これを推進するための法案が国会に提出され、今後審議されることになっております。
 IRには、経済効果などのプラスの側面があります。一方で、ギャンブル依存症などのマイナスの側面もあります。
 これまでもさまざまな機会に述べてまいりましたが、国会における法案審議の動向も注意深く見きわめつつ、今後しっかりと検討してまいりたいと思います。
 なお、残余の質問につきましては、関係局長が答弁いたします。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、不調の発生状況とその対応についてでありますが、平成二十三年度の不調発生率は約七%でありましたが、二十五年度は十二月末までで約一二%になっており、約五%上昇しております。
 不調が増加した主な要因には、労務費や鉄筋、型枠などの資材価格の上昇等が考えられることから、最新の労務単価を速やかに反映して積算を行うとともに、主要な資材等について価格動向を随時把握し、適時適切に単価の改定を行って対応しているところでございます。
 必要な事業を着実に推進していくためには、より多くの事業者が入札に参加しやすい環境を整備することが重要であり、今後とも、より適切な入札契約制度の実現に向けて、状況の推移も見ながら、引き続き検討を行ってまいります。
 次に、公共施設等の運営に対するコンセッション方式の導入についてでありますが、この方式は、平成二十三年のPFI法改正で新たに導入されたものでありまして、その特徴は、施設の所有権を行政が保有し続けること、既存施設においても運営権の設定が可能であること、そして独立採算型事業が前提となるという点にございます。
 コンセッション方式を採用することで、行政は、管理運営面で民間のノウハウを最大限活用でき、また運営権を売却することで、既存債務の削減が可能となるといったメリットが考えられます。一方、民間事業者には、創意工夫を生かした運営ができるといったメリットが想定されます。
 しかしながら、運営権を設定するためには、原則として収益が安定した独立採算型事業が対象となることから、対象事業が極めて限定されるといった課題がございます。公共施設等の整備運営手法は多岐にわたることから、今後とも国等の動向を十分に注視し、各事業の特性を十分に踏まえた上で、最適な手法の採用について幅広く検討を行ってまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) 窓口事務の改善に向けた取り組みについてでございます。
 都は、各種申請手続における負担軽減や利便性向上を図るため、日ごろから窓口事務の改善に努めてまいりました。平成二十一年度には、都民によりわかりやすく、簡素で効率的な手続を目指すことなどを目的に、窓口事務の見直し方針を定め、全庁的に総点検を実施いたしました。
 その結果、例えば固定資産税等の減免申請において不動産登記簿謄本の添付を不要としたことや、都立霊園使用者の募集をインターネットで行うなどの見直しを順次行ったところでございます。
 今後とも、窓口事務について、より都民が利用しやすいよう継続的に見直しを行い、都民サービスのさらなる向上に努めてまいります。
   〔水道局長吉田永君登壇〕

〇水道局長(吉田永君) 水道局における図面の閲覧についてでありますが、道路内に布設されている給水管は、下水道管やガス管と異なり、お客様の私有財産であり、個人情報の管理徹底を図る必要がございます。このため、図面の閲覧はこれまで、事業所の窓口において閲覧者を確認の上、実施してまいりました。
 一方、利用者の利便性向上の観点から、ホームページ上での閲覧方法について準備を進めてきたところであり、既に今年度中にインターネットを介した水道管管理図面の閲覧を開始することとしております。
 なお、実施に当たりましては、給水装置に精通している指定給水装置工事事業者を対象とし、セキュリティーを考慮し、ID、パスワードを付与するなどの対策を講じております。

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