平成二十六年東京都議会会議録第三号

〇議長(吉野利明君) 三十七番吉倉正美君。
   〔三十七番吉倉正美君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十七番(吉倉正美君) 初めに、東京の繁華街、特に新宿歌舞伎町の治安対策について、舛添知事に伺います。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの開催都市として東京が選ばれた大きな理由の一つに、東京が都市としての安心・安全を確保していることが挙げられております。
 東京の治安は、戦後最悪とまでいわれた十年ほど前に比べると格段によくなっておりますが、しかし、新宿歌舞伎町では、今なお強引で悪質な客引きや薬物の密売、さらに外国人の犯罪などが横行しております。内外の観光客や選手団に安心して東京に来ていただくために、まず、東京有数の繁華街である新宿歌舞伎町を、誰もが安心して楽しめる町に再生させなくてはなりません。
 そのためには、ぜひ知事に、歌舞伎町の町の実態をみずから視察することを要望いたします。
 また、あわせて、実効性ある繁華街の治安対策について、知事の所見を伺います。
 続いて、警視総監に伺います。
 新宿歌舞伎町の治安回復に向けて、警視庁はこれまで、新宿区や地元商店街、地域住民と連携を図り、積極的に盛り場対策を進めていることを評価しております。
 しかし一方で、外国人や風俗店、ホストなどの強引で悪質な客引きが横行し、完全な封じ込めには至っておりません。この客引きが歌舞伎町のイメージをさらに悪くしているほか、若い女性や家族連れを遠ざける原因になっています。
 昨年九月、新宿区も、新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例を施行し、こうした状況に歯どめをかけようと本格的な取り組みを開始しております。それでもなお執拗に続く悪質な客引きに対して、地元商店街や地域住民からは取り締まりをさらに強化すべきとの声が高まっております。
 こうした状況を認識した上で、歌舞伎町地区の浄化に向けた客引き行為の取り締まりについて、警視総監の所見を伺います。
 次に、二〇二〇年のパラリンピック大会について伺います。
 ソチ・オリンピックの興奮さめやらぬ中、今月八日には、いよいよパラリンピック大会が開幕します。
 パラリンピックは、世界最高峰の障害者スポーツ大会にもかかわらず、これまでオリンピックの陰に隠れてしまいがちでありました。一昨年のロンドン大会は史上最高のパラリンピックと呼ばれ、チケット売り上げ、観客動員の面でも大成功をおさめたといわれておりますが、それでも日本国内のテレビの放送時間は極めて短いものでした。
 今回のソチ大会では、NHKが初めて開会式を生中継すると聞いておりますが、競技については相変わらず録画ダイジェストのみの扱いです。何よりも自分の戦っている姿を見てほしい、これが、パラリンピアン一人一人の思いです。世界で戦うアスリートとして当然の願いだと思います。
 昨年、第三回定例会本会議における我が党の代表質問に対して、都は、二〇二〇年のパラリンピック大会を史上最高の大会とするよう全力で取り組むと答弁しております。オリンピックに負けないぐらいの大勢の観客の見守る中で、パラリンピアンたちが最高の活躍ができるよう、パラリンピックへの関心をさらに大きく高めていくことが重要であります。
 そのために、メディアの果たす役割は極めて大きいものがあります。最近ではパラリンピックに関する話題もふえてきておりますが、パラリンピックの競技内容が十分に周知されていないのが実情です。パラリンピックについての人々の認知を高め、その魅力を理解してもらうために、メディアを積極的に活用していく必要があります。
 テレビ、新聞、ラジオ、雑誌などのマスメディアに対して積極的な働きかけを行うべきであります。見解を求めます。
 またあわせて、二〇二〇年のパラリンピック大会を大成功させるために、組織委員会とも連携を図り、総力を挙げて広報戦略、メディア戦略に取り組むべきであります。
 特にテレビ朝日、テレビ東京、TOKYO MXなどの都の提供番組については、二〇二〇年に向けてパラリンピックの特集を放送するなど、開催機運の醸成へ向けて積極的に取り組むべきであります。見解を求めます。
 次に、東日本大震災を風化させないための都立高校における防災教育について伺います。
 未曽有の大災害であった東日本大震災から、ことしで三年がたとうとしております。
 この大震災の経験を経て、今、首都東京がなすべきことは、震災を過去の出来事とするのではなく、三・一一以降に起きた現実を改めて振り返り、再確認することによって都民一人一人の防災意識を高め、この教訓を重く受けとめ、切迫する首都直下地震や南海トラフ大地震への備えを万全にしていくことであります。
 我が党はこれまで、防災教育の観点から教師を被災地に派遣し、報告書や映像では知ることのできない現地の状況を把握させ、実践的な防災教育に資するとともに、被災地支援に力を注いでまいりました。
 今回のソチ・オリンピックで十六年ぶりにメダルを獲得した葛西紀明選手は、東日本大震災直後に福島を訪れ、現在も長野県で開かれるジャンプ大会に毎年被災地の子供たちを招待し、子供たちに、大変だけど頑張ろうと夢と勇気を与え続けています。葛西選手がスキー選手としてできることをやろうと考えたように、次代を担う高校生にも自分に何ができるのかを問い続けてほしいと思います。
 そこで都は、防災に関する学習においては、生徒がみずから発災時の経験や避難所生活での実体験などを学び合える場を設定し、生徒の意識をより一層高めるべきであります。見解を求めます。
 さて、昨年十月、台風二十六号の被害を受けた伊豆大島町で、都立大島高校の生徒たちが懸命に支援活動をする様子を多くのメディアが取り上げておりました。そこには、避難所生活の中で、地域の人と協力して物資を運んだり、高齢者や小さな子供たちのお世話をしたり、近隣住民の民家へ流入した土砂の撤去を手伝うなど、援助を必要とする地域の人々を当たり前のように支援する高校生の姿がありました。これらは、大島高校の生徒たちが日ごろから地域と連携した宿泊防災訓練などを実施し、絶えず地域とのかかわりを大切にしてきたことの成果であります。
 都立高校には、広範な地域から生徒が登校してきておりますが、防災にかかわる学習においては、学校周辺の地域と積極的にかかわりを持ち、日ごろから地域とのつながりを深めていくことが最も大切であります。
 そこで都は、生徒が震災疑似体験などの訓練を地域とともに行うことにより、地域に貢献できるよう生徒を育成すべきであります。見解を求めます。
 続いて、鉄道駅の安全対策として最も効果的なホームドアの整備について伺います。
 鉄道駅のホームドアの整備は、駅ホームからの転落事故などを未然に防ぐための極めて重要なバリアフリー施策であります。
 我が党はこれまでも、機会あるごとに、緊急性、必要性の高い鉄道駅に、早期のホームドアの設置を求めてまいりました。
 都は、こうした議会からの要望や社会的要請に応えて、鉄道事業者への支援策を試行的に行い、京王線新宿駅や小田急線新宿駅などのホームドアの設置に取り組んできたことを評価いたします。
 今後、オリンピック・パラリンピックを契機として、東京のバリアフリーのまちづくりを推進し、鉄道の安全度をさらに高めるためには、ホームドアの整備は不可欠であります。
 そこで都は、これまでの試行的な取り組みを本格的な鉄道事業者への支援策に切りかえ、国と都と事業者の負担割合を明らかにすることで鉄道事業者の整備意欲を応援すべきであります。
 その上で、JR中央線、総武線や西武鉄道など、ホームの形状や乗降時の危険性が指摘される駅については、鉄道事業者との協議を早急に始めるべきです。
 都はこうしたことを含めて、今後のホームドア整備を加速すべきであります。見解を求めます。
 最後に、都営住宅の耐震改修、特に併存店舗つき住棟の耐震改修について伺います。
 都は、平成二十四年に都営住宅耐震化整備プログラムを改定し、これまでの目標に加え、居住者の安心・安全を図るとともに、民間住宅等の耐震化を促す意味からも、平成三十二年度に耐震化率一〇〇%とする新たな目標を定めております。その達成に向けて、昨年度は建てかえ事業とあわせて、一万戸以上の耐震化を完了するなど、着実に取り組みを進めていることを評価いたします。
 しかしながら、都営住宅の一階に民間権利者が所有する店舗が併設された、いわゆる併存店舗つき住棟については、耐震改修工事はなかなか進まない状況にあります。
 その理由は、同じ一つの建物のうち、住宅部分は都の所有する都営住宅としてすぐにでも耐震改修工事に着手できるものの、建物の一階部分は民間の店舗のため、店舗所有者の理解、特に費用負担についての合意が得られない限り工事ができないからであります。
 私の地元の新宿区の戸山ハイツも同様に、四棟の併存店舗つき住棟については、まだ耐震改修工事は始まっておりません。
 今後、耐震改修が必要な併存店舗つき住棟の住宅戸数は五千戸を超えると聞いております。この五千戸が手つかずのまま取り残されることは、防災の観点からも極めて重大な問題であります。
 そこで都は、併存店舗つき住棟の耐震改修に当たり、これまでの店舗所有者との協議も踏まえて、費用負担の方法について新たなスキームを提案し、積極的な打開策を打ち出すべきであります。見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 吉倉正美議員のご質問にお答えいたします。
 繁華街に対する治安対策についてご質問がございました。繁華街を、人々が安心して集い、憩う安全な空間としていくことは、世界で最も安全で安心な首都東京を実現していく上でも、また、五十六年ぶりに東京で開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会を史上最高の大会として成功させるためにも、不可欠であると考えております。
 都はこれまで、地域の方々や区市町村、警視庁などと連携し、防犯カメラの設置に対する財政支援や暴力団の排除に向けた普及啓発など、防犯に関する地域の力を高めるためのさまざまな取り組みにより、繁華街における治安対策の充実強化を図ってまいりました。
 引き続き、関係機関などと密接に連携しながら、東京の安全・安心のバロメーターともなる繁華街のイメージを向上させるよう、実効性のある対策を講じ、首都東京の治安の改善に全力を尽くしてまいります。
 なお、歌舞伎町につきましては、私は新宿の中でかなり頻繁に足を運んだ場所でありまして、特に、誤解がないように申し上げますと、家族を連れてあそこで映画を見て、映画館がありますね、その後、晩ご飯を食べて帰るというのが私の休日のパターンの一つでありますので、よく歌舞伎町は知っていると思いますが、知事になってまだ行っておりませんので、今、お話がありましたように、改めて、また機会を見て参りたいと思っております。
 ありがとうございました。
   〔警視総監高綱直良君登壇〕

〇警視総監(高綱直良君) 新宿歌舞伎町における強引な客引き行為の取り締まりについてお答えを申し上げます。
 警視庁では、平成十四年に盛り場総合対策推進本部を設置し、警視庁本部関係所属及び各警察署で体制をとりながら、新宿歌舞伎町を初めとした都内盛り場の環境浄化を強力に推進しており、路上における悪質、迷惑な客引き行為についても重点的な取り締まりを継続いたしております。
 また、民間協力団体、事業者、関係行政機関等と連携した環境浄化活動の推進により、盛り場環境は改善されつつあります。しかし一方で、両罰規定のある、いわゆる風営適正化法での取り締まりを逃れるため、フリーの客引きを雇うことが多くなってきております。
 こうした行為に対しては、いわゆる東京都迷惑防止条例及びぼったくり防止条例を適用して、悪質な客引きの検挙を進めますとともに、悪質な店舗の排除に努めているところでございます。
 警視庁といたしましては、引き続き歌舞伎町地区を初めとする盛り場における悪質な客引き事犯に対する徹底した取り締まりを推進し、誰もが安心して集い憩うことのできる盛り場環境の醸成に努めてまいります。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都立高校における防災教育についてでありますが、生徒の防災意識を高めるには、発災時を想定した具体的かつ体験的な防災訓練に加え、生徒が被災の状況を理解し、防災について主体的に考えることが重要でございます。
 都教育委員会は、昨年度から、全ての都立高校における一泊二日の宿泊防災訓練や、防災教育推進校事業を通して生徒の防災意識の向上を図っております。
 また、今年度から、生徒が主体的に運営する、生徒による防災サミットを開催し、一泊二日宿泊防災訓練などの成果発表やパネルディスカッションを行い、生徒同士の活発な意見交換を通して防災意識を高めております。
 今後は、このサミットに被災地の生徒との交流活動や、被災者の体験を直接聞く機会を取り入れるなど、より一層の充実を図ってまいります。
 次に、地域に貢献できる生徒の育成についてでありますが、災害時に生徒が地域のために活動できるようにするためには、防災訓練を通して地域社会の一員としての自覚を高め、実践力を身につけることが必要でございます。
 このため、一泊二日宿泊防災訓練では、就寝訓練等、避難生活の疑似体験に加え、地域の消防団と連携した避難所の設営訓練などを通して実践力を育成しております。
 また、防災教育推進校では、生徒が自校の防災訓練の企画立案を行う防災活動支援隊を編成し、地域の防災訓練で、住民とともに救出訓練や放水訓練に参加するなどの活動を行っております。
 都教育委員会は、こうした成果を踏まえ、来年度、防災活動支援隊を全校で編成し、地域の中で実践力を育み、地域に貢献できる人材を育成してまいります。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ホームドアの整備に対する取り組みについてでございますが、オリンピック・パラリンピックを契機として、東京という町をより進化させていくためには、安全・安心のまちづくりの観点から、公共交通の安全度を高めることが重要でございます。
 このため、都は、利用者数十万人以上の駅を優先して、国、区市町村及び鉄道事業者と連携してホームドア整備を促進するため、これまで試行的に行ってまいりました設置に関する費用に対する補助制度を本格実施することといたしました。
 今後、本制度を活用しながら、鉄道事業者に働きかけを行い、ホームドアの整備の促進に取り組んでまいります。
 次に、併存店舗つきの都営住宅の耐震改修についてでございますが、平成三十二年度までに全ての都営住宅の耐震化を達成するためには、都営住宅と民間店舗とで一つの建物を区分所有している、いわゆる併存店舗つき都営住宅の耐震化も進めていく必要がございます。
 これまで、店舗所有者に耐震改修の工法や費用負担などについて説明し、耐震化を働きかけてまいりましたが、所有者からは、改修費用の負担分について、一括で支払うことが困難であるなどの意見が多く出されております。
 そこで、店舗所有者の負担軽減を図るため、耐震改修費用の支払いにつきまして、将来の建てかえ時まで猶予することを可能とする新たな方策を導入することにより、店舗所有者との合意形成を進め、併存店舗つき都営住宅の耐震化を推進してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) パラリンピックについての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、メディアへの働きかけについてでございますが、ロンドン大会は史上最高となる二百七十万枚のチケットセールスや、英国社会における障害者への理解を大きく変えたことなどにより、国際パラリンピック委員会から高く評価をされました。
 この背景には、パラリンピアンのすぐれた身体能力をテレビを通じてアピールする広報活動など、メディアを効果的に活用した取り組みがあったと聞いております。
 日本におきましても、ご指摘のように、パラリンピアンなどにかかわる情報がさまざまなメディアを通じて広く発信され、パラリンピックの価値や競技の魅力が多くの人々に伝わることが重要でございます。
 都といたしましても、パラリンピックに関する話題が積極的に取り上げられるよう、日本パラリンピック委員会、大会組織委員会とともに、各メディアに強く働きかけてまいります。
 次に、パラリンピック成功のための広報戦略、メディア戦略についてでございますが、効果的な情報発信のためには、庁内各局はもちろん、大会組織委員会やスポンサーなど、関係者と連携して進めていくことが重要でございます。
 都は現在、テレビ朝日、テレビ東京、TOKYO MXの各局でテレビ番組を提供しております。今後はこうした東京都提供番組を活用して、パラリンピックスポーツやパラリンピアンの紹介を積極的に行うなど、開催機運の盛り上げに向けて取り組んでまいります。
 さらに、これから大会まで六年間の総合的な広報戦略、メディア戦略につきましては、今後、関係者とともに精力的に検討してまいります。

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