平成二十六年東京都議会会議録第三号

   午後一時開議

〇議長(吉野利明君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(吉野利明君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(吉野利明君) 昨日に引き続き質問を行います。
 百十七番野島善司君。
   〔百十七番野島善司君登壇〕

〇百十七番(野島善司君) 幹事長経験者が一般質問というのは余り例がないようでございます。いささかひんしゅくを買っている向きもあるようでありますが、私、現在、都議会自民党の三多摩・島しょ部会長、厚生政策推進本部長の役割を担っている立場から質問をいたします。
 最初に、多摩振興についてお尋ねいたします。
 明治二十六年に多摩地域が東京に移管されてから百二十年以上が経過いたしました。この間、東京都は、都全域の府県行政と、区部については大都市行政の一部もあわせて担う行政機関として、都政運営を行ってきたところです。
 こうした都制度の特殊性などにも起因して、多摩と区部にはさまざまな差異が生じてきたのも現実です。私ども三多摩・島しょ部会は、全ての行政領域についてその差異を検証し、多摩地域の発展に資する施策を具体的に提案してまいります。
 そのキーコンセプトは、一つは都事業のスピードアップ、一つは都と市町村が持つ経営資源、人、物、金であります。これを活用しての都事業の展開、一つは各市町村が厳しい財政事情を抱えながら、創意工夫を凝らして努力する市町村政との協働を行っていくことを考えております。これらを総合的、複合的、重層的に組み合わせて都政を推進し、もって、多摩都民の負託に応えていかなければなりません。
 多摩振興について、知事の基本的認識をお伺いいたします。
 そこで、その一例として、私の地元清瀬市に所在する清瀬小児病院跡地を取り上げます。この都有地を活用し、市の発展にも寄与する都事業を展開する必要がございます。
 四・八ヘクタール。私は、この土地を清瀬市のまちづくりの視点も踏まえ、三つの要件、一つは、市の医療、福祉の町というイメージを損なわないこと、二つは、アカマツを初めとした緑を極力保全すること、そして三つは、市の財政負担を伴わないことを付して、都の事業を展開するよう求めてまいりました。ただ、広大な敷地だけに、一つの局事業では困難とも推測をいたしております。
 福祉保健局は、この跡地を活用して仮設施設を整備するための経費を来年度予算に計上しました。都内の特別養護老人ホームや障害者施設には、老朽化した施設が相当数存在しています。これらの入所施設は生活の場でもあり、安全確保、質の向上のためにも、早期の建てかえが必要であります。
 施設の建てかえに当たっては、代替施設の確保が必要です。しかしながら、地価や人件費の高い東京では、一事業者が代替地を用意し、仮設施設を建設することは極めて困難です。
 平成二十四年には、東京都社会福祉協議会からも、我が党に対して、老朽施設の建てかえのための用地確保と仮設施設建設への支援について要望がなされています。
 今回の取り組みは、こうした状況を踏まえてのことと高く評価しますが、活用に当たっては、単なる仮住まいという意識ではなく、清瀬市に存在する豊富な医療、福祉資源を活用し、特にソフト面での一歩進んだ取り組みを望むところです。
 都有地を活用した老朽化施設建てかえ促進は、初めての取り組みとのことです。実施に当たってはさまざまな課題もあると思いますが、今後どのように進めていくのかお伺いいたします。
 水道局は、清瀬市を含む北多摩北部地域の給水の安定化向上を目指し、水道施設を整備するための経費を来年度予算に計上いたしました。
 先ほど、二十三区と多摩地区の差異と申し上げました。水道事業にもそれがございます。
 多摩地区の水道は、市町が独自に経営したところですが、急激な人口増等を背景に、都営一元化に施策変更をいたしました。このことは、水道事業はすぐれて大都市行政だからでもございます。が、都営一元化後も、各市町への事務委託方式として、市町が水道施設の管理運営を行ってきた経緯があります。
 現在、事務委託を完全解消し、水道局が本格的に施設整備を進めているところでございますが、申し上げた経緯もあり、小規模で老朽化した水道施設が多く存在することや、市町域を越える管路が不十分であり、給水の安定性が低い状況にあります。
 また、清瀬市周辺には医療や福祉施設が数多く立地しており、一たび断水が起これば人命にも影響を及ぼしかねないことから、震災時等における給水の確保が特に重要な地域と考えます。
 こうした状況を踏まえての今回の予算と高く評価をいたします。その具体的内容について伺います。
 次に、緑の保全について伺います。
 この周辺は、新座市の野火止、知事もお住まいになっていたと伺っておりますが、その平林寺の緑ともつながって、古くからのアカマツのある雑木林だった地区です。森や林、特に、松籟は呼吸器系疾患の改善効果があるとのことで、そのせいか、病院跡地にはアカマツが相当残されており、近隣の結核研究所や清瀬高校、そして東村山市の全生園のアカマツなどと連担した面的な広がりを持つ、都内では他に例を見られないアカマツ林となっています。
 清瀬小児病院は小児結核保養所であった経緯があります。この地は、結核研究所を初め、結核治療の聖地として世界に名をはせており、地元では世界文化遺産に登録しようという動きもあります。
 全生園については、人権の森として保全していきたいとの東村山市の意向もあります。この地区のアカマツを含む緑の保全は、地元市の地域振興、魅力発信にも大きく寄与するという側面を持つものであります。
 さて、環境局は、生物多様性の視点を盛り込み策定した緑施策の新展開において、都内に残された貴重な生態系を保全する取り組みを推進していくことを掲げています。こうした観点からも、古くから残るアカマツ等の在来植物を守っていくことは極めて重要です。
 都は、清瀬小児病院跡地の利用に当たって、この貴重な緑の保全に積極的、先駆的に取り組むべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、多摩地域の産業力の強化も重要でございます。
 私は、先月二十六日、昭島市で開催された、たま工業交流展をのぞいてまいりました。そこで学んだのは、多摩地域には高い技術力を持った中小企業や大学、研究機関などが数多く存在しており、技術革新や新しい製品を生み出す大きなポテンシャルを有していることです。この集積の強みを生かして、産学の交流や企業間の連携を図り、多摩地域の産業発展を目指すべきです。
 そのためには、企業や大学などの多様な産業の担い手が集い、新たな技術や製品を広く発信したり、面談や技術提携をするなど、さまざまな交流活動を生み出すかなめとなる場を多摩地域につくることが必要不可欠です。
 都は、このような広域的産業交流の中核機能を担う産業交流拠点を八王子市に整備することとしています。多摩地域の産業の活性化につながるものとして期待をするものです。
 整備に向けた現在の状況と今後の予定についてお伺いいたします。
 次に、保育事業についてお伺いをいたします。
 福田内閣当時、平成二十年度の地方税制改革において、法人事業税の一部国税化が決定されました。その際、東京の重要施策を国と協議する場が設定され、都は十三項目を提起し、その中に、認証保育所の承認をという項目がございました。当時、舛添厚労大臣にはどのようなご認識をお持ちであられたのか、お伺いをいたします。
 私は、この課題を整理していく中に保育施策の方向性が見えてくるものと認識をいたしております。
 都はこれまでも、認可保育所、認証保育所を初め、多様なサービスを総動員して保育サービスの充実に取り組んできたところでありますが、依然、待機児童数は高どまりしております。
 平成二十七年度からの子ども・子育て新制度では、保育を利用できる方の範囲が広がることとなります。待機児童はゼロ、一、二歳児が多い状況にあります。
 一昨年、都が行った調査には、お子さんを預けたい時期と預かっていただける時期のタイムラグも見てとれます。
 国は、女性が輝く社会の実現のための政策を打ち出し、女性の就労促進が我が国の成長に必要としています。これらのことからも、保育需要量は顕在化し、多様な保育サービスの提供が必要であります。
 保育施策は、従前の保育に欠ける子供を措置するという狭義の児童福祉の概念から、子育て世代の都民のワークライフバランスを支える広義の福祉施策として、一層の充実を図っていく必要があると考えます。知事のご所見をお伺いいたします。
 知事は、待機児童を四年間でゼロにすると表明されました。そのためには、人、物、金を効果的に組み合わせ、保育サービスの拡充に向けた取り組みを加速していかなければなりません。
 そこで、今回は、人、保育人材の確保、活用について、提案も含め、お伺いをいたします。
 保育士の需要見込みを明らかにし、新たに資格取得を目指す人を支援する、有資格者等で現場を離れている人に戻ってもらう、保育者の離職防止、定着を図る等が必要です。
 都はこれまでも、保育人材の確保のためのさまざまな取り組みを進めてまいりましたが、今後、さらに強化していただきたいと思います。
 ところで、保育現場には、保育士資格は有しない方もおられ、そうした方も含め、認証保育所や小規模保育などで確かな保育サービスが提供されていますので、この人たちのスキルアップも効果的と考えます。
 さらにいえば、今、豊かな社会経験と知識を身につけ、自身も子育てを経験された元気な高齢者が地域に多数いらっしゃいます。こうした方の意欲と能力を次代の子育てに生かさない手はありません。そのことは、保育サービスの質の向上に資するとともに、元気高齢者の生きがい対策、就労確保の拡充にもなります。平たくいえば、イクじい、イクばばでございます。私もイクじいの一人でございます。
 それぞれについて、具体的な取り組みがあればお答えください。
 最後に、都議会自民党厚生政策推進本部では、少子化対策ワーキングチームを設け、今後も具体的な提案を行っていくことを申し添え、質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 野島善司議員の一般質問にお答え申し上げます。
 まず、多摩振興についてでございますが、多摩地域は、高度経済成長期に、東京の爆発的な人口増加を吸収するほか、ものづくり産業等の集積を生かして東京の発展を支えてきた重要な地域であります。
 今後、人口減少局面の到来によりまして、成熟へと向かう多摩地域の活力を維持向上し、これまで以上に魅力ある地域とするためには、現場の抱える問題を正しく認識するとともに、地域に眠る資源を強みとして最大限に生かす発想が必要だと考えております。
 先日、野島議員とともに、私がかつて住んでおりました、ご地元の東久留米、清瀬、このあたりを一緒に歩いてみました。三十五年たっても、まだこの道路が変わっていないのかと、こういう思いがございました。
 そのように、多摩の現場を見させていただくとともに、地元の市町村の意見を伺いながら、地域の課題や強みをみずからの目で確認して政策をつくりたいと思っております。
 その上で、東京全体を広域的に俯瞰する視点を持ち、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催を見据え、多摩地域が厳しい状況変化を乗り越えるための手だてを講じてまいります。
 多摩地域、島しょ地域、二十三区、全てが一体となった大都市が東京であります。都内全域にきめ細かく目を配るとともに、市町村との連携も図りながら、魅力にあふれ、活力に満ちた多摩地域の実現に向け、全力で取り組んでまいります。
 続きまして、認証保育所制度についてご質問がございました。
 私は、厚生労働大臣時代に、希望する全ての人が安心して子供を預けて働くことができる社会の実現を目指し、新待機児童ゼロ作戦を策定いたしました。また、保育所の整備や保育の質の向上のための取り組みを推進するために、安心こども基金もつくりました。
 都が進めてきた認証保育制度についても、十三時間開所やゼロ歳児保育など、大都市東京の保育ニーズに応え、都の保育政策の大きな柱の一つであると、大臣のころから十分認識はしております。
 また、平成十九年に開始されました国と都の実務者協議の内容も、当時の雇用均等・児童家庭局長から適宜報告を受けておりました。
 東京都からの提案を受け、平成二十年度からは、認可基準を満たす認証保育所の開設準備経費、平成二十一年度からは、認証保育所が行う休日・夜間保育や一時預かり等が国庫補助の対象となったわけですが、これは私が厚生労働大臣であったころ決めたものでありまして、当時の立場からいえば、私なりに最大限の努力をいたしたということを、ぜひ野島先生にご理解いただければと思います。
 さらに、保育サービスの充実についてご質問がございました。安心して子供を産み育てることができ、その喜びを実感できる社会、私は、こうした社会を東京で実現したいと思っております。
 そのためには、福祉、医療、教育の充実や子育てに適した住環境の整備はもちろんのこと、子育てをしながら働き続けたいと、そう願う方々が仕事と家庭を両立できる環境を整えていくことが必要であります。
 保育サービスは、周囲や社会の子育てへの理解、企業における労働環境の整備などと同様に、子供を抱える親のワークライフバランスを支える重要な柱の一つとなっております。
 私は、こうした考えに立って、子育て家庭のさまざまなニーズに応える多様な保育サービスの充実に向け、全力で取り組んでまいります。
 野島先生の座長をおやりになっているグループのさまざまなすばらしい提案を、今後ともしっかりとお受けいたしたいと思っています。ありがとうございました。
 その他、残余の質問は、関係局長から答弁させます。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 二点のご質問にお答えいたします。
 老朽化施設の建てかえ促進についてですが、お話のとおり、老朽化した特別養護老人ホームや障害者支援施設については、建てかえに必要な代替となる土地や建物の確保が課題となっております。
 このため、清瀬小児病院の跡地を活用し、事業者が交代で使用できる代替施設を整備することといたしました。
 来年度は、代替施設活用のニーズ、利用可能な地域資源、移転に伴う課題等について調査するとともに、サービス水準の維持に必要な機能、地域との連携、整備手法や具体的な利用方法について検討してまいります。
 検討に当たりましては、事業者や利用者、区市町村等の関係機関から多くの意見を聞き、できる限り早く、円滑に利用できる仕組みを構築し、建てかえを促進してまいります。
 次に、保育の担い手についてですが、保育サービスの現場では、保育士資格を有していない方も、多数、さまざまな仕事にかかわっております。こうした方々が保育に関する知識や技術を習得できるよう、都はこれまで、テーマ別の研修を実施しており、今月からは、小規模保育に従事する職員を対象に、家庭的保育に準じた研修を実施いたします。
 また、お話のように、豊かな社会経験を持つ元気な高齢者が保育にかかわることは、子供の豊かな成長に資するだけでなく、社会全体で子育てを支援する機運が高まるなど、さまざまな効果が期待できます。
 区市町村では、地域の方々を子育てサポーターとして活用するなどの事業を実施しており、都は、こうした取り組みを包括補助により支援してまいります。
   〔水道局長吉田永君登壇〕

〇水道局長(吉田永君) 清瀬小児病院跡地を活用した水道施設整備の具体的な内容についてでありますが、水道局では、給水安定性の向上を目的に、清瀬小児病院跡地に、最新の耐震基準を満たした配水池容量約三万立方メートルの新たな給水所を整備するとともに、配水池への受水ルートの二系統化を図ってまいります。
 この事業は、平成二十六年度の用地取得後、速やかに着手し、平成三十二年度の完成を目指しております。
 こうした施設の整備により、給水区域内における約十五万人のお客様と、当該区域に多く立地している医療や福祉施設への給水安定性が大幅に向上いたします。
 今後とも、必要な水道施設の整備や小規模で老朽化した施設の計画的な更新などにより、多摩地区三百九十万人のお客様に、将来にわたり、安全でおいしい水の安定供給をしてまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 清瀬小児病院跡地の在来種保全についてでございますが、清瀬小児病院跡地に群生するアカマツ林は、お話のとおり、市街地に残る貴重な在来植物の樹林地であり、地域の生き物の生存基盤を確保する観点から、跡地の利活用に当たっては、その保全に十分配慮すべきであると認識しております。
 このため、来年度から、跡地利用に関係する各局が連携して、アカマツなどの在来植物を保全するモデル事業に取り組んでまいります。
 具体的には、樹木医によるアカマツの健全度調査を行い、施設の建設上必要な移植を行うとともに、移植後の適切な維持管理手法を取りまとめ、着実に実施いたします。
 こうした取り組みの成果は、今後、未利用都有地を活用する際のモデルとして全庁的に共有し、地域特有の貴重な在来植物の保全に生かしてまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 産業交流拠点の整備についてのご質問にお答えいたします。
 多摩地域の産業の一層の発展を図るためには、地域に集積する大学、研究機関と企業との連携を進めるとともに、そのすぐれた技術や製品を広く発信し、多くの交流を生み出していくことが重要であります。
 このため、都は、八王子市に産業交流拠点を整備することを予定しております。
 今年度は、大型の展示会にも対応できるホールの設置など、多摩地域における産業交流の中核としてふさわしい施設のあり方について検討を進めるとともに、効率的、効果的な施設運営の方法などについて調査を行っております。
 また、関係局や地元市から成る会議体を立ち上げ、隣接地区を含めたまちづくりの協議を進めております。
 来年度は、施設の機能、規模や管理方法などを具体化した基本計画の策定に着手し、産業交流拠点の整備に向け、着実に取り組んでまいります。

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