平成二十六年東京都議会会議録第二号

   午後三時五十分開議

〇副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百八番中嶋義雄君。
   〔百八番中嶋義雄君登壇〕

〇百八番(中嶋義雄君) 公明党を代表して質問をいたします。
 冒頭、さきの豪雪被害について質問をいたします。
 先月、東京は二度にわたる記録的な大雪に見舞われ、鉄道や道路などの交通手段が途絶し、大混乱に陥りました。
 特に西多摩地域の奥多摩町や檜原村の一部集落は、一メートルを超える積雪により、数日にわたり孤立するという事態に追い込まれ、自衛隊、警視庁、東京消防庁による救援物資の搬送や除雪作業を必要といたしました。
 その他の多摩地域においても、四十センチを超える積雪により道路の一部が通行不可能となり、市町村は数日にわたり除雪作業に追われました。このため、本来の道路事業の予算が枯渇し、国に特別交付税を申請する自治体も出始めております。
 しかし、この特別交付税も財源が限られていることから、必ずしも申請額がそのままおりるとは限りません。今こそ、除雪により負担を背負った多摩地域の自治体を支援すべきであります。
 さらには、今後新たな多摩のビジョンを具体化するに当たっては、こうした厳しい自然環境に置かれている多摩地域の実情を踏まえた対応が必要であると思います。都の見解を伺います。
 また、今回の大雪により、多摩地域の農業は広いエリアで深刻なダメージを受けております。新聞やテレビでも、野菜などをつくるパイプハウスが雪の重みで倒壊している様子が報じられておりますが、多摩の農家では、パイプハウスのみならず、畜舎や畑地も含め被害は甚大であります。
 農業施設の被害だけで約四億円に上り、手塩にかけて育ててきた農作物は出荷ができずに、農家の損害額が膨らみ、経営の大きな負担となることが予想されます。
 国は去る二月二十四日に農業被害への当面の対応策を明らかにしていますが、制度をきちんと整備して受け付けを始めるには時間がかかる模様であります。被害の状況は日を追うにつれてふえていくだけに、都としても、一刻も早い復旧への具体策を打ち出して、農家の不安の解消に努めていくべきであります。
 また、多摩地域の商店街では、積雪によりアーケードの一部が崩れ落ち、安心して買い物ができない事態も出てきております。農業被害への対応とともに、商店街の被害にも対処すべきであります。見解を求めたいと思います。
 関連して、大雪に伴う帰宅困難者対策について質問いたします。
 今回の記録的な大雪により、都内初め首都圏は大混乱に陥りました。例えばJRのある駅では、停車したままの車両の中で六時間も過ごし、一時滞在施設の開放を望む声も聞いておりました。
 帰宅困難者対策は、本来、首都直下地震等の大規模災害における混乱防止を前提としていることは承知をしておりますが、こうした大雪のみならず、台風などの災害でも帰宅困難者の発生が予想されます。今後改めての対策が必要と考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 さて、今回の都知事選挙で舛添知事は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの成功、首都直下地震に備えた東京の防災、減災対策の強化、さらに特別養護老人ホームの待機者解消、そして保育園待機児童ゼロを達成するなど、都政が直面する諸課題に厚労大臣時代の経験を生かして全力で取り組むと繰り返し訴えられました。そして、見事に当選を果たされました。
 我々は、これをまさに都民の常識的あるいは良識的な選択の結果と受けとめております。施政方針で知事が述べられたとおり、政治や行政の現場は派手なパフォーマンスや劇場型の政治手法で動くものではないという、ごく当たり前の判断が反映したといっても決して過言ではないと思います。
 自民党とともに推薦をし、支援をした我々公明党は、二元代表制における知事と議会の健全で建設的な緊張関係を維持しながら、都民の皆様の負託に応えることができる都政の実現に全力で取り組んでいくことを、まず表明しておきたいと思います。
 同じく施政方針において知事は、ロンドンがオリンピック・パラリンピック開催の後、パリやニューヨークを抜いて世界一の都市になったことを例に挙げ、現在は第四位の東京を世界一の都市にすると述べられました。
 我々公明党も、二〇二〇年は終着点ではなく、むしろこれからの六年間は目標達成へのスプリングボード、つまり跳躍台であると考えております。交通、情報、通信、オフィス機能などの都市機能の高度化はもとより、防災、福祉、環境、教育なども含めた、より成熟度の増した都市、つまり世界一の都市を目指すための絶好の機会を与えられたと理解すべきであると思います。
 したがって、短期、中期、長期にわたる取り組みが不可欠でありますが、改めて、世界一の都市を目指す知事の決意を伺いたいと思います。
 続いて、財政について質問いたします。
 今から十五年前、舛添知事が前回の都知事選挙に初めて挑戦された平成十一年、都財政は史上最悪の一千億円を超える赤字を計上するなど、財政再建団体転落寸前の危機的な状況にありました。
 こうした中、我が党は平成十三年度に複式簿記・発生主義に基づく新たな公会計制度改革を提唱し、都もこれを受けて、全国自治体に先駆けて新公会計制度を構築、強固な財政基盤の確立に当たってまいりました。
 この民間企業の会計に準じた新都方式の公会計制度は、財政状況を都民にわかりやすく説明することができるよう見える化されており、国際公会計基準にも近いなど、都民への説明責任を果たす上で非常に極めて有効な制度であります。
 また、迅速かつ正確に財務諸表を作成することができるだけでなく、事業別にも作成可能であるなど、行政のマネジメントツールとして極めてすぐれたものであります。
 現在、地方自治体が選択できる公会計基準は、この東京都方式と総務省方式がありますが、総務省はようやく重い腰を上げ、この四月にも統一的会計基準を示す予定であると聞いております。しかし、残念ながら、総務省方式は、国際公会計基準に適合したものではなく、いわゆる見える化にも十分に応えられるものではありません。
 したがって、都は、この統一基準にはあくまで東京都方式を取り入れるように、国に対して引き続き強く働きかけていくべきであります。
 そこで、これまで東京都が行ってきた公会計制度改革に対する舛添知事の評価と今後の取り組みについて見解を伺いたいと思います。
 また、今回の都の予算は、アベノミクスの効果あるいは景気回復期待によって都税収入が伸び、一般会計で六・四%の増、一般歳出も二・五%の増となりました。しかし、国の法人事業税や法人住民税の取り扱い、あるいはリーマンショック後において一年間で一兆円もの税収減を経験したことなどを考え合わせると、財政運営には中長期の視点が欠かせません。
 税収源の確保や税収増対策、事業評価による無駄の排除、さらに基金の活用なども含め、今後の財政運営に関する都の見解を求めたいと思います。
 関連しまして、多摩の市町村の財政問題と振興策について質問をいたします。
 多摩地域の市町村については、区部に先行する人口減少や高齢化率の上昇などが見込まれており、将来の多摩の市町村の財政運営を圧迫することが強く懸念されております。
 東京都は、多摩地域を取り巻く厳しい状況変化に対して、市町村や、あるいは民間等とも連携しながら、多摩地区の振興、発展を図っていく必要があります。今後の多摩振興に向けた知事の見解を伺いたいと思います。
 続きまして、高齢者支援について質問いたします。
 かつて知事は、ご自身の母親の介護のために、東京から実家のある福岡県まで七年間もの間通い続けたことが政治の道を歩むきっかけとなったというお話を聞いております。そうした知事だからこそ、高齢者支援に対する積極的な姿勢は、単なるパフォーマンスを超えた説得力があると私は思います。
 総務省が昨年七月に発表した就業構造基本調査によりますと、仕事を持つ六千四百四十二万人の四・五%に当たる二百九十一万人が、介護をしながら働いております。これに仕事を持たない人を加えると、介護者総数は五百五十七万人、そしてその三割強が男性であり、男性の数が約二百万人に達しております。
 さらに、介護退職の経験者は十万人に上り、もしもこの傾向が拡大すれば、近い将来の企業の経営にも影響を与えかねません。
 昨年、都議会公明党が視察した企業では、先進的に介護と仕事の両立に取り組み、人事室内にワークライフバランス課を設置、介護と仕事の両立セミナーなどを開催する等、意欲的な取り組みを展開しております。
 この会社の社内調査では、昇進への影響などを恐れて介護を隠す、いわゆる隠れ介護者の存在も明らかになり、今後は人事規定の改善や相談体制の確立にも取り組むとのことでありました。
 都は、こうした先進的な取り組みを行う企業を支援するとともに、中小企業における実態調査を実施し、さらに仕事と介護の両立が可能となる新たな東京モデルを発信すべきであります。知事の見解を伺いたいと思います。
 次に、特別養護老人ホームの整備について質問をいたします。
 現在、定員は約四万人でありますが、それと同数の入所待機者がおり、施設整備は急務の課題であります。
 ところが、現実は、昨今の地価上昇や建設費の高騰により、まず土地購入を前提とした整備計画は、そのほとんどが資金面で実現不可能となっております。
 これまでは、土地を取得して、百床の特別養護老人ホームを建設する場合、事業者は事前に約二億円の自己資金を用意すれば、補助金と金融機関の融資を受けて、特養ホームの整備が可能でありました。 しかし昨今では、建築資材費が約三割上昇したため、自己資金が六億円から七億円必要となっております。これらの自己資金を捻出できる事業者は限られているため、現在は特養ホームの新規建設が困難な状況となっています。
 このように、建築費等が急騰する中にあっても、東京都は、特別養護老人ホームの整備費補助に際して、整備費全体に対する借入割合が二分の一を超えないことという制限をいまだに設けております。
 この制限があるため、融資枠が残っていても借り入れが認められず、結果として、増大する自己資金が賄えないために、整備計画を断念せざるを得ないケースが少なくありません。
 この二分の一の制限は、東京都だけの制度であり、神奈川県や千葉県、埼玉県などは、借入制限は全く存在いたしません。また、大阪府の借入制限は三分の二以内と、かなり緩やかであります。
 以上のような状況を踏まえて東京都は、特別養護老人ホームを整備する際の現在の借入制限を緩和すべきでありますが、見解を求めたいと思います。
 また知事は、特別養護老人ホームの待機者問題の解決が都政の重要課題であると強調しておりますが、地価の高い東京では、施設建設へのコストも高く、その道のりは平たんではありません。しかし、決して避けて通ることのできない課題でもあり、改めて、特養ホーム待機者問題の解決を目指す知事の決意を伺うとともに、目標達成までのロードマップをぜひ示していただきたいと思います。知事の見解を伺います。
 次に、ふるさと特養や区域外特養など、自治体域外の特養の活用促進を求めたいと思います。
 これまで触れてきたテーマは、原則的に都内の各自治体が、みずからの行政区域内で高齢者の住まいの問題を解決するための方策についてでありました。しかし、都内の自治体にはさまざまな違いがあり、一様に整備が進むとは限りません。したがって、今後は、域内での整備とあわせて、いわゆるふるさと特養や自治体の区域外、あるいは都外の特養を活用することが重要になります。そのためには、住所地特例の適用範囲を現状の介護保険制度だけではなく、後期高齢者医療制度にも広げ、特養が所在する自治体の後年度負担を軽減する必要があります。
 元厚生労働大臣の舛添知事をトップに迎えた今こそ、都は国に対して、積極的に大都市の実情に即した介護保険制度の改善を迫り、環境を整えるべきであります。見解を求めたいと思います。
 一方、特別養護老人ホームの入居までには至らないものの、随時ケアを必要とする高齢者も数多く存在いたします。緊急時の医療的ケアや、必要時の短期入所などが安定して利用できれば、安心して在宅介護を続けることが可能であります。
 したがって、こうしたさまざまなニーズを抱えた高齢者に対しては、居住のあり方の多様なメニューを用意することが最大の課題となります。そのため東京都は、グループホームやサービスつき高齢者住宅の整備に力を注いでまいりました。
 しかし、地価が高い都内では、特養と同様、高齢者向けの施設や住宅の整備においても、初期費用やその後の運営経費がかさみ、例えば、国民年金受給世帯などが気軽に入居できるような費用設定とはなりにくい、そうした現実があります。
 このような現状を打開するため、都議会公明党は、高齢社会対策プロジェクトチームを設置し、昨年十二月、第一次提言書を都に提出をいたしました。ぜひ知事にも一読を願いたいと思いますが、新たなスタートに当たり、要点を絞って幾つか質問をいたします。
 その一つは、住まいと施設を兼ね備えた高齢者向けの複合施設の建設であります。
 東京以外のある大都市で複合施設を運営している社会法人は、ターミナル駅などの幾つかの駅前において中高層のビルを建築し、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、小規模多機能施設、サービスつき高齢者向け住宅などを一体化した複合施設を運営しております。複合化によるコストパフォーマンスは、駅前などの地価の高さを補って余りあり、各施設の利用料や賃料は比較的低額に抑えられております。
 東京は、日本で一番地価の高い地域ですが、他の大都市で成功している事例が都内で応用できないはずはありません。都においても、自治体や社会福祉法人の協力を得やすい環境を整え、こうした複合施設の整備を強力に推進すべきと考えますが、見解を求めたいと思います。
 二点目は、複合施設の整備のための公共住宅用地の有効活用であります。
 高齢者向け複合施設の利用料金をさらに低く抑えるためには、用地費を抑えることが何よりも有効であります。東京都住宅供給公社は、既に公社住宅の建てかえの際に、サービスつき高齢者住宅を併設する事業を行っていますが、都営住宅の建てかえの際にも余剰地を活用して、先ほど述べた複合施設の整備を積極的に推進していくべきであります。
 その際には、現在、最大二分の一まで軽減している土地の賃料をさらに低くするとともに、公共住宅などの建てかえ計画のスピードアップを図り、余剰地を活用した複合施設建設の促進を図るべきであります。知事の見解を伺います。
 以上、高齢者施設や住まいの安定を中心に質問してまいりましたが、そうした取り組みを主体的に推進できるのも、さまざまな困難がありながらも、都営住宅で二十六万戸、公社住宅で六万戸という公共住宅のストックを東京都が堅持してきたからであります。
 公明党は、居住の安定こそ全ての行政サービスの基盤であり、都民生活の安定の根幹、基軸であると認識をしております。
 しかし、残念ながら都庁では、住宅局が都市整備局に糾合をされて以降、都市整備の施策に重点が移り、居住の安定策への取り組みが幾分後退した感が否めません。居住の安定は独居高齢者、子育て世代、低所得者、さらに、障害者や将来の夢を描く若者支援のかなめとなるものであります。住宅局の復活の検討など、今後、住宅政策の執行体制を強化し、見直すべきであると思いますが、都の見解はいかがでありましょうか。
 次に、子育て支援について質問いたします。
 知事はこれまで、みずからの子育て経験に照らして、子育て支援の重要性を訴えてこられました。また、知事就任後に編成した平成二十六年度追加予算では、保育所待機児ゼロを目指すための保育所の整備促進や、子育て応援ファンド等を盛り込みました。その迅速な対応は評価をいたします。
 待機児童問題は、今や子育て世代だけではなく、多くの都民の強い関心事となっており、都政が喫緊に取り組むべき重要課題であります。都民は保育所整備のための公有地活用、新築高層ビルや駅施設等への保育所設置など、知事が主張してきた待機児童解消策の速やかな実行を、期待を持って注視をしているといってもいい過ぎではありません。
 そこで、こうした施策をいかに推進していくかを示すために、実施計画や整備目標を策定、明示する必要があります。これも知事の見解を求めたいと思います。
 続いて、既存の保育施設の効率的活用について質問いたします。
 都は、新年度から同一自治体内にある定員割れの保育所などに、児童を専用のバスで巡回輸送する送迎保育ステーション事業をスタートさせるとしております。この事業は、自宅から離れている保育所であっても、空き定員があれば、自宅近くの保育所から巡回輸送をしてくれるものであり、有力な待機児解消策の一つであると思います。
 この事業を普及させるためには、事業の主体者である区市町村の理解が不可欠であり、パンフレットの作成や保護者向け説明会などを行う必要があります。また、地域の実情に合わせた利用しやすい送迎システムにするためには、他県の実例や、都が蓄積してきた情報やノウハウを提供するなど、支援を行うべきであります。見解を求めます。
 次に、産前産後の母親のための支援策について質問します。
 核家族化の進行や、地域コミュニティの希薄化が著しい東京において、孤立しがちな産前産後の母親の支援体制は極めて重要であります。その一つは、新年度から拡充する子育てスタート支援事業の普及であります。
 昨年の第四回定例会代表質問におきまして、我が党は、産前産後ケアの充実を子育て支援策の重要な柱に据えるべきであると主張をいたしました。これを受けて、都は、新たに助産師等による産前産後の相談事業やケアセンターの新設等に対して、より一層の財政支援を講じることとなりました。
 しかし、依然として都内の多くの区市町村では、産前産後ケアの取り組みが極めて乏しいのが現状であります。産前産後の母親が、悩みを一人で抱え込んだり、孤立しないためには、宿泊や日帰りで助産師等による親身な支援が受けられる、そうした体制が必要であります。
 そのような施設を整備するに当たっては、区市町村によって整備の偏在が生じないように工夫し、あわせて、助産師等との連携を密にするなど、都としても本腰を入れて取り組みを開始すべきであります。見解を求めます。
 二点目は、気軽に相談しやすい電話やメール相談の拡充であります。
 現在、都では、不妊・不育ホットライン、それと女性のための健康ホットラインの二つの電話相談窓口を設置しておりますが、特に若い女性からは、妊娠出産に関して具体的な事例に絞り込んで相談できる窓口が欲しいとの要望が高まっております。
 メールの活用が一般化している社会状況も踏まえ、こうしたニーズに対応できる電話やメールによる、利用しやすい相談体制を整備すべきでありますが、これも都の見解を求めたいと思います。
 次に、女性が活躍できる輝く都市の実現について質問をいたします。
 昨年四月に発表された政府の長期戦略では、女性の活躍はその中核をなすものと位置づけ、女性の中に眠る高い能力を十二分に開花させていくことこそ、日本を再び成長軌道に乗せる原動力であるとしています。
 知事は、就任記者会見の中で、能力に応じて女性を登用するとの趣旨を述べられました。しかし、そこで問題は、いかにして女性の能力を正当に評価するのかであります。いわゆるクオーター制とは、そうした懸念に対応するためにとられた措置であるということもできます。
 また、女性が十分に能力を発揮していくためには、子育てや介護などへの支援とともに、男性と同様に、仕事を通じてみずからの能力を開拓していける職場環境の整備も必要であります。世界一女性が輝く都市東京の実現を目指して、オリンピック・パラリンピックの成功、そして東京の成長力のさらなる増大を図るため、女性の能力を正当に評価できるシステムの構築、そして能力を開拓し、発揮するための環境整備に、今こそ取り組むべきであります。知事の見解を伺います。
 次に、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催に関連して三点質問をいたします。
 去る一月二十四日、一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が設立されました。いよいよ本格的に大会運営の設計に取り組んでいくことになりますが、その際、特に重視すべきは、東日本大震災の被災地と被災者の皆様方への配慮であります。
 都議会公明党は、開催都市決定以来、一貫して、被災地の復興なくして東京オリンピック・パラリンピックの成功はあり得ないと訴えてまいりました。昨年の第四回定例会においては、組織委員会の立ち上げに当たっては、開会式や聖火リレーのあり方、予選や事前キャンプの実施箇所など、被災地の方々への配慮を具体化するための専任の部門を設置すべきであると提案いたしました。この提案に対する現在における取り組み状況について、まず答弁を求めたいと思います。
 次に、都内全体にオリンピック・パラリンピックの開催効果を波及させるための方策についてであります。
 東京大会のコンセプトとして、都市の中心で開催する、かつてないほどコンパクトな大会を標榜しておりますが、コンパクトにする余り、競技会場等の周辺地域の整備だけが進み、他の地域が置き忘れられるような事態はあってはなりません。
 平成二十六年度予算案には、史上最高のオリンピック・パラリンピックに向けた取り組みとして、競技会場へのアクセス道路の無電柱化、バリアフリー化、さらに自転車レーンの整備加速などに取り組むとしておりますが、主要会場周辺はもちろん必要でありますが、それだけではなく、都内全域でハード、ソフト両面にわたる取り組みを行い、大会のレガシーを東京全体に波及させていく努力を行うべきであります。知事の見解を伺います。
 三点目は、文化交流に総力を挙げる東京大会とすべきであります。
 今後、大会組織委員会の重要な取り組みの一つが、文化プログラムの策定であります。
 オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典であると同時に、文化の祭典、平和の祭典でもあります。東京大会においては、日本の文化芸術を世界に発信していくとともに、国民がそのすばらしさを再認識し、国内の振興を進め、文化芸術立国日本を築く絶好の機会とすべきであります。
 プログラムの策定に当たっては、国内外の文化関係者はもとより、広く都民からもアイデアを集め、全ての人々が文化芸術に触れ、参加できるプログラムをつくっていくべきであります。知事の見解を伺います。
 また、オリンピックとパラリンピックが並列されるように、文化プログラムの策定においても、障害者の方たちが参加できる、そういう内容にする工夫が重要であります。障害者アートの専門家や幅広いその他のアーティスト、芸術団体などの意見を集約し、反映させて、さまざまな文化の彩りに満ちたパラリンピックをぜひとも実現したいと思います。見解を伺います。
 次に、世界一の都市づくりという観点から、東京の交通体系について質問いたします。
 知事は、東京の最大の問題は交通体系だと述べ、地上、地下の鉄道と道路などが相互に有機的に関連する体系の整備が不十分だと指摘されています。確かに、これまで東京の交通網は、都心と周辺部を結ぶ放射方向の交通が重視されてまいりました。つまり、東京の交通、とりわけ鉄道は、住宅地である郊外から都心に向けて、大量、高速に通勤客を輸送することで発達してまいりました。
 しかし、成熟期にある現在の東京は、都心への過度の集中を避け、業務機能や学校、病院なども周辺部に分散する方向に転換しつつあります。都心を経ない通勤通学や買い物、あるいは物流などもふえ、首都圏の各地域を互いに結ぶ交通ネットワーク形成へのニーズまで高まっております。
 これまで都内においては、多摩都市モノレールや大江戸線、地下鉄八号線の延伸、さらにはメトロセブン、エイトライナーや新空港線等の構想がありました。二〇二〇年東京大会の先を見据えた、世界一の都市東京の実現のためには、首都東京の持つポテンシャルを飛躍的に増大させる大胆な都市交通体系の整備に取り組むべきであります。
 とりわけ、道路に比べ関心度の低かった鉄道整備の今後の展望を示すために、空港アクセスを含めた、東京における鉄道ネットワークのあるべき姿を総合的に検討すべきであります。都の見解を伺います。
 鉄道体系の整備の中でも、首都東京の最大の弱点とも指摘されている羽田空港へのアクセスが課題であります。羽田空港は現在、国内五十都市と海外十八都市とつながっており、年間の旅客数は約六千七百万人と、世界の主要空港では第四位の国際空港であります。いよいよ今月中に、国際線が年間六万回から九万回に増便されます。それに伴って大幅に増加が予想される旅客者に適切に対応するためには、羽田空港への鉄道アクセス機能を強化する必要があります。
 現在、JR東日本の東海道貨物線を利用して山手線と羽田空港をつなぐ構想、京急と都営浅草線をつなぎ、羽田空港と成田空港を直接結ぶ都心直結線構想、東急多摩川線と京急空港線を地下で直結する新空港線構想が存在します。
 特に、JRと東急の蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ新空港線は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会に間に合う可能性がある路線の一つともいわれております。東横線や副都心線を経由し、東京南西部や多摩地区、さらに渋谷、新宿、池袋などからの羽田空港へのアクセスを強め、世界一ビジネスのしやすい都市づくりに大きく貢献すると指摘もされております。さらには、埼玉県と神奈川県を含めた首都圏の交通機能をも強化することにつながります。
 JR、東急の蒲田駅から京急蒲田駅までのわずか八百メートルをつなぐことで、空港アクセスが広範囲に強化され、東京の国際競争力が向上するのであれば、費用対効果は極めて高いと判断できます。新空港線整備に関する知事の所見を伺います。
 次に、災害時多目的船、いわゆる病院船の導入に向けた取り組みについて質問いたします。
 災害時の救援活動については、陸上の道路輸送だけでなく、交通網の寸断も考慮し、空や海からのアプローチを確保する必要があります。東京湾に広く面する東京において、病院船による洋上からの医療支援を可能にすることは、首都直下地震などの大災害への備えとして極めて有効であります。
 病院船導入の検討を進めている国では、公明党の主張を踏まえ、昨年八月、南海トラフ地震などを想定して、三重県尾鷲沖において、海上自衛隊の輸送艦「しもきた」に陸上自衛隊の野外手術システムを搭載し、DMATの協力も得て実証訓練を行いました。
 さらに、国の平成二十六年度予算案には実証訓練の第二弾の経費を盛り込み、民間船舶に運搬可能なコンテナ型医療モジュールを積み込んで、洋上からの医療支援や負傷者、患者の手術などの医療行為についても検証することとしております。
 都議会公明党は、昨年十二月、公明党災害時多目的船検討PTの国会議員とともに、政府に対して、平成二十六年度の第二弾の実証訓練は、首都直下地震を念頭にして東京湾で実施するよう強く申し入れを行いました。病院船は広域医療搬送に効果的であることから、九都県市首脳会議を構成する神奈川、埼玉、千葉の関係自治体とも連携協力できるよう政府に求めたところであります。
 東京湾で実証訓練が実施される場合、都は必要な協力に全力を挙げるべきと考えます。大災害時に病院船を活用し、海からの医療支援を行うことは、都民の生命を守る上で極めて有効であります。見解を求めたいと思います。
 次に、都民の安心・安全を守るという立場から、ストーカー対策と特殊詐欺の取り締まりについて、高綱警視総監に質問いたします。
 まず初めに、ストーカー対策についてであります。
 ストーカーとは、特定の他者に対して、恋愛感情などを抱いて執拗につきまとう卑劣な行為及び人物のことをいいますが、警視庁のホームページによれば、ストーカー事案にかかわる相談受理件数は、平成二十四年は千四百三十七件、しかし、五年前の平成二十年は千七十七件で、この間、件数にして三百六十件、三三・四%の増加をしております。
 ストーカーは、メディア等でも取り上げられ、殺人事件にまで至ってしまった事例が報告をされております。ストーカーは、放置をすると次第にエスカレートし、重大事犯へと発展するため、初期の段階で適切な対応が不可欠であります。まず、警視総監の所見を伺いたいと思います。
 また近年、件数、被害金額ともに増加傾向にある特殊詐欺について伺います。
 昨今、犯罪集団の手口も巧妙化し、中でも特に悪質なのは、高校生などの未成年者を受け子とするケースが見受けられることであります。未成年者は犯罪への意識が低く、大人から、小遣いが稼げるからなどと巧みに誘われると、簡単に引き受けてしまうケースが少なくありません。
 こうした特殊詐欺行為は、被害金額が大きいという特性があり、被害者の平穏な生活を破壊し、さらに、犯罪の低年齢化は、子供の将来に大きな傷をつけるばかりではなく、新たな犯罪にもつながりかねません。
 都民の生活と安心・安全を守るため、特殊詐欺の撲滅対策と犯罪の低年齢化への対応について、警視総監の所見を伺いたいと思います。
 次に、いじめやひきこもりなどの課題について質問いたします。
 いじめは陰湿な人権侵害であるとの認識を、教育関係者のみならず社会総体で共有し、常に早期の対応を心がけ、被害を最小限に抑えなくてはなりません。
 昨年九月、いじめ防止対策推進法が施行され、文科省は、いじめ防止のための基本的方針を策定しております。公明党は、こうした国の取り組みに呼応し、都としてより実効性を高める、いじめ防止条例を制定し対策を強化すべきであると考えます。都の見解を求めたいと思います。
 また、都内の公立学校においては、先般公表した、いじめに関する専門家会議報告をもとに、未然の防止策、早期発見、早期対応、重大事態への対処などに対して、実効性のある総合的な対策が必要であります。これもあわせて都の見解を伺います。
 次に、長期間、学校や職場に行けず、家族以外との交流が絶たれた状態となる、ひきこもりの対策について質問いたします。
 近年では、ひきこもりの長期化や高年齢化も大きな問題となっております。都はこれまでに、ひきこもり対策として、電話、メールによる相談事業ひきこもりサポートネットや、住民に身近な区市町村における支援体制の整備、支援のノウハウを持つNPO法人等、民間団体の育成などの取り組みを進めてまいりました。
 しかし、都と連携してひきこもり支援に取り組む区市町村は、依然として少なく、きめ細かな支援を担える民間団体も不足しており、支援体制はとても十分とはいえません。
 そこで、ひきこもり支援に効果的な訪問相談を事業化し、あわせて、区市町村の相談体制を強化していくべきでありますが、見解を求めたいと思います。
 続いて、環境エネルギー対策について質問いたします。
 知事は、エネルギー政策において、東京は日本で一番電力を消費する町であり、エネルギー問題に関心を持つ必要がある。さらに、原発に依存しない社会を目指したい。そのために再生可能エネルギーの比率を二〇%まで上げたい。さまざまな技術革新を取り入れると述べています。
 また、二十六年度予算追加事業では、官民連携再エネファンドの創設が盛り込まれました。これは、都内及び東北地方等で投融資を行うファンドを創設し、再生可能エネルギーによる発電の拡大を推進する取り組みであり、我々の主張に沿うものでもあります。
 都議会公明党においては、さきに再生可能エネルギー促進PTを設けて、これまでも太陽光発電、地中熱、波力発電、バイオマス発電などの再エネの導入、また、福島県内の発電事業への投融資などを主張してまいりました。
 今後は、都内の中小企業の技術力も活用した新たな再エネの開発、都内に潜在する利用可能な再エネの調査、また地域の自治体や住民等との幅広い連携も必要であります。
 さらに、国全体の再生可能エネルギー普及の先導役を果たすことも、全国自治体の代表格たる東京都の欠かせない役割であります。
 このような視点を踏まえ、省エネの推進や再生可能エネルギー比率二〇%達成について、知事の構想をまず伺いたいと思います。
 次に、再生可能エネルギーにおける熱利用の拡大について質問いたします。
 太陽光などに比べて、熱の分野はまだ認知度が低く、買い取り制度のような支援策もないため普及がおくれています。そこで、太陽熱を初め、地中熱やバイオマスなどの都内における有効活用の検討が必要であります。都内の熱利用の拡大について、今後の都の方針を明らかにすべきであります。見解を求めます。
 続いて、賢く省エネを進める都市の構築、いわゆるスマートシティ化を目指した取り組みについて質問します。
 過日、都議会公明党は、スマートハウスの現場を視察しました。そこでは、大手メーカーによる新型MEMSや、これまでと同等の能力を持ちながら、価格は半額の蓄電池など、高機能製品が数多く投入されておりました。
 MEMS、すなわちマンション・エネルギー・マネジメント・システムとは、マンションの建物内で使用する電力消費量等のデータを計測、蓄積し、建物内部からだけでなく、遠隔地からも見える化を図り、加えて、空調、照明設備等の接続機器の制御や、デマンドピークを抑制、制御する機能等を有するエネルギー管理システムのことであります。
 このMEMSの市場規模は、二〇一六年度には倍増するとの予測もあり、省エネ効果のみならず、我が国経済の活性化にも寄与すると期待されています。
 しかし一方で、MEMSは導入時のコスト高などの問題を抱えております。そこで、新築マンションはもちろんのこと、既存のマンションでも普及促進が図られるように、新たな補助金制度などの支援策を講じるべきであります。また、このスマート化をマンションの管理組合などに周知徹底する取り組みも欠かせません。都の見解を求めたいと思います。
 先日、耐震補強を行った幼稚園で、同時に太陽光発電システムを設置した事例がありました。こうした工事を同時に施工すれば、工期の短縮を初め効率的な工事が実施可能であります。既に、私立学校や緊急輸送道路の沿道建築物や、医療、福祉施設等を対象とした耐震改修への補助事業があります。
 その一方で、この太陽光利用の補助事業や来年度から実施する中小企業等への省エネの補助事業もございます。この二つの工事を同時に実行すれば、工期の短縮やコストの削減など極めて大きな効果が期待できます。二つの事業の連動に関して都の見解を求めたいと思います。
 続いて、都市外交について質問いたします。
 外交は、国の専管事項であり、都市に外交権は存在しません。また外交は、国益と国益のぶつかり合いであり、そこにおいては、国益の毀損は許されません。しかし我々は、こうした国益のぶつかり合いとは違った諸外国との交流のチャンネルが存在してもいいと考えております。それが民間の交流であり、都市の国際交流、あえていえば都市外交であります。
 既に、国内においても、被爆都市である広島と長崎の非核化と平和を目指した国際交流の例も存在しております。
 残念ながら、東京都においては、対外的な緊張感を結果としてあおってしまう出来事もありました。したがって、それだからこそ、今後は、緊張を緩和し、真の友好関係を目指した国際交流のチャンネルを首都東京として持つべきであります。
 都市の国際交流によって得られる成果は枚挙にいとまがありません。まず第一に挙げられるのは災害救援であり、東日本大震災やアジア各地の大災害でも、東京消防庁や警視庁が活躍し、日本の被災地も世界から助けられました。こうした国際災害救援活動を、東京の独自の活動として、より積極的に展開できないものかと常々考えていました。
 また、既に水道局で試みている水道事業の海外展開や環境技術の交流、さらには文化、スポーツ、教育における国際交流にも大きな可能性があります。そのためにも、改めて、都市としての国際交流、都市外交に着目し、新たな取り組みを開始すべきであります。
 そこでまずは、緊張が高まる東アジアにおいて、その緊張を緩和する重要なプレーヤーの一員であるとの自覚を強く持って、中長期の真の友好関係を築くために、東京は一体何ができるのかを真剣に模索すべきであります。東京が展開すべき都市外交について知事の所見を伺います。
 そして、同時に取り組むべきことは、形骸化しつつあるといってよい友好姉妹都市交流の再生であり、また、そのあり方も、儀礼から機能へと変えていく工夫が必要であります。そのためには、いずれ海外事務所の再開並びに自治体国際化協会海外事務所への都職員の派遣の拡充などが必要となってくると考えられますが、まず当面は、姉妹都市交流の活性化と実質化について、これも知事の見解を伺いたいと思います。
 こうした交流の促進と並んで重要なのは、東京が持つ技術力を海外に積極的に発信し、都市間関係を強固にするという戦略であります。東京には、世界に誇る技術やノウハウが存在します。都はこれまで、都市としての課題解決のために、さまざまなノウハウを蓄積し、独自の技術を磨いてまいりました。とりわけ環境、水道、下水道分野のノウハウは、世界的に見てもトップレベルの優秀さを誇っております。また、そうした分野の人材の育成にも、東京はどこよりも経験と技術の蓄積があります。
 一方で、アジアの諸都市は、発展に伴う課題が山積をしています。そのアジアの諸都市に対して、技術的な交流を通じて、あるいは技術の供与等によって問題の解決にこの東京が貢献することができれば、東京の都市外交は、その成果がさらに高まることは間違いありません。
 東京ならではの都市外交について知事の見解を伺い、代表質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) 中嶋義雄議員の代表質問にお答えいたします。
 世界一の都市東京の実現に向けた決意についてでございますが、東京は日本の首都として、そして地方自治体のリーダーとして、日本の成長と発展を牽引してまいりました。
 しかし、オリンピック・パラリンピックが開かれる二〇二〇年をピークに、東京の人口も減少に転じ、二〇二五年には、都民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者になります。
 少子高齢化、人口減少社会は、ともすれば、暗い社会の到来と受けとめがちでありますが、だからこそ人々に明るい未来を提示し、それに向かって現実を見据えた政策を練り上げ、結果を出すことが政治の役割であると思います。
 私は、この問題にも真正面から向かい合い、多様な保育サービスの提供による四年間での待機児童解消や、地域でのきめ細やかな支援体制の充実を通じた都全域の介護力の強化に取り組んでまいります。
 そのため達成すべき政策目標と具体的な工程表を示し、全ての都民が東京に生まれて本当によかったと実感できる町をつくってまいります。東京を世界一の都市にしていくため、都議会の皆様と真摯で建設的な議論を積み重ねながら、都政のかじ取りを行っていく所存でございます。
 続きまして、公会計制度改革についてでございますが、都は平成十八年度に、全国に先駆けまして本格的な複式簿記・発生主義による新公会計制度を導入いたしました。この制度は、従来の官公庁会計に欠けていた資産、負債等のストック情報、金利、減価償却費を含めた真のコスト情報を明らかにするものであり、効率的、効果的な行財政運営を進める上で極めて有効なツールであると考えております。
 都における新公会計制度は、財務諸表の議会への提出や、アニュアルレポートの作成、公表など、説明責任の充実に大きな役割を果たしており、また、これまで以上に質の高い決算分析や事業評価への活用など、都財政の健全性確保にも大きく寄与しております。
 一方で、全国自治体に目を向けますと、本格的な複式簿記・発生主義の会計制度を導入した自治体は極めて少数にとどまっておりまして、また、会計基準も統一されておらず、財務諸表による自治体間比較もほとんど進んでおりません。
 こうした状況を打開するため、国において、この四月を目途に取りまとめる予定の統一的な会計基準に、東京都方式のメリットが取り入れられるよう、引き続き国に対して強く働きかけてまいります。
 また、新公会計制度の導入ノウハウや活用事例などをより一層蓄積し、発信していくことが求められており、大阪府や町田市など、都と同様の制度を導入している自治体と連携し、積極的に取り組みを進めてまいります。
 今後とも、全国自治体における公会計制度改革をさらに推進していきます。
 続きまして、多摩振興についてでございますが、多摩地域は、今後人口減少や少子高齢化の進展といった厳しい状況変化が見込まれており、こうした状況を突破するためには、都、市町村、民間等が一丸となって取り組む必要があります。
 多摩地域が直面する課題を見据えて、現場の状況に即した具体の手だてを遅滞なく進めることが知事としての私の職責であります。
 このため、まず年度内に新たな多摩のビジョン行動戦略を策定いたします。少子化、高齢化や産業の空洞化等の課題を見据えた取り組みに加えて、市町村や民間等による先進的な取り組みを示し、多摩地域にかかわる多くの主体の連携を促進してまいります。
 また、今後市町村の現場を見て、地元の意見も伺いながら現場の実情を踏まえた実効ある取り組みを積み重ねてまいります。市町村、民間等の力も結集して多摩の発展に向け、知事として全力で取り組んでまいります。
 続きまして、仕事と介護の両立についてでございますが、私は、仕事をしながら母親を介護するという経験をいたしました。同じ苦労を人にさせたくないなと、こうした思いが政治を目指した原点でございます。私のように働き盛りで親の介護に直面する方は非常に多いと思います。仕事と介護の両立に苦慮してキャリアを断念したり、退職してしまうこともあります。今後高齢化が急速に進行し、介護を必要とする方が増加すると、仕事と介護の両立の問題は一層切実なものとなります。
 東京都は、企業の先進的な取り組みを発信し、介護と両立できる働き方を広めるとともに、中小企業の実態を把握し、都として講ずるべき対策を検討してまいります。東京で生活し、仕事を続けられてよかったなと、誰もが実感できる都市東京をつくってまいります。
 次に、特別養護老人ホームの整備についてでございますが、私は、介護現場の苦労や家族の大変さは十分にわかっております。介護は家族で抱え込むのではなく、介護のプロや地域の力など周囲の力をかりることが肝要であります。そのためには、在宅か施設の二者択一ではなく、在宅サービスも施設も両方とも必要であり、さまざまなメニューや選択肢があった方がよいと考えております。
 今後、在宅サービスは、地域包括ケアの考え方に立って、医療と介護の連携強化や地域での見守りなどを充実させる必要があります。また、施設サービスは、都有地をこれまで以上に活用するなど方策を講じて、特別養護老人ホームなどの定員を大幅にふやしていかなければなりません。
 そのため、来年度は、特養の整備費補助の単価を増額するとともに、近接する複数の区市町村が共同で利用する仕組みを構築いたします。また、さらなる促進策も検討するよう、福祉保健局に指示しているところであります。
 今後、特養など介護サービス基盤の整備に向け、あらゆる可能性を検討し、全力で取り組んでまいります。また、その工程表につきましては、本年中に策定する長期計画の中で示していく所存でございます。
 続きまして、高齢者施設の整備における公共住宅用地の有効活用についてでありますが、高齢者が安心して人生を過ごせるような環境を提供していくためには、お話のような住まいと施設を兼ね備えた高齢者向け複合施設などの福祉サービス基盤の整備が急務であります。
 都では、これまでも都営住宅の建てかえにより創出した都有地などを活用し、特養や認知症高齢者グループホーム等の高齢者施設設備を進めてまいりました。
 今後は、今般、設置を指示しました福祉施設の整備促進のための土地活用策を検討するチームにおきまして、都営住宅などの都有地の一層の活用はもとより、国有地、民有地の活用策の検討も進めてまいります。また、貸付料等についても、実情を検証し、そのあり方を検討いたします。こうした取り組みにより高齢者施設整備のさらなる促進を図ってまいります。
 続きまして、待機児童対策についてでありますが、子育てをしながら仕事を続けたいと願う保護者にとって、保育サービスの充実は切実な願いであります。その点、私は、保育所の待機児童を四年間でゼロにする、そういう公約を掲げました。この公約を実現するため、保育サービスの整備目標と、いつまでにどれだけ整備するのかを定めた工程表を作成し、都民の皆様にお示しいたします。工程表は、今後策定する長期計画に反映させ、その進捗状況につきましては、定期的に報告させていただきます。
 現在、保育の実施主体である区市町村は、来年四月の子ども・子育て支援新制度の施行に向け、ニーズ調査を行っております。その結果に基づき、各自治体は、保育サービスの新たな整備目標を定め、地域の実情やニーズに応じた多様な保育サービスを整備する必要があります。
 こうした取り組みを支援するため、都は、来年度、施設整備にかかわる事業者や区市町村のさらなる負担軽減、定期借地権を活用して整備する区市町村の負担軽減、株式会社やNPO法人への独自補助などを実施いたします。また、新たな土地活用策の検討も指示したところでございます。
 今後、あらゆる手法を駆使して区市町村への支援を行い、待機児童解消に向け、全力で取り組んでまいります。
 次に、女性の活用についてでありますが、少子高齢化の急速な進展に伴い、生産年齢人口が減少する中で、東京が今後とも活力を維持し、さらに発展するためには都民一人一人が持てる力を最大限発揮することが必要であり、とりわけ、高い潜在能力を持つ女性の活用は不可欠であります。
 女性の活用が進むことにより、女性ならではの生活に根差した豊かで柔軟な視点が加わり、新商品やサービスの開発など新たな価値が創造されます。
 例えば、女性の視点から開発された洗濯時間が従来の半分になる洗浄力の高い洗剤は、時間のない共働き世帯に歓迎されヒット商品となりました。男性技術者が圧倒的多数を占める中、必ず開発チームに女性を登用し、男女双方の視点を取り入れた成果といわれております。
 都民がみずからの可能性を追求し、豊かな職業生活や家庭生活を営むため、行政は、子育て支援など安心と希望のセーフティーネットを張りめぐらして下支えしていくことが必要であると考えております。
 肝心なことは、性別にかかわりなく適正に評価される仕組みの構築を促し、意欲ある女性が能力を十分に発揮し、活躍できるよう、ワークライフバランスの推進、保育環境の整備、就業継続、登用促進の後押しに積極的に取り組んでいくことであります。
 今後、企業、地域など社会全体で女性の活躍を推進するため、両立支援の啓発、機運の醸成はもとより、待機児童を解消し、安心して子供を預けられる環境を創出するとともに、女性の活用に積極的な企業を後押しするなど、都の総力を結集して女性の活躍を推進してまいります。
 続きまして、二〇二〇年東京大会のレガシーについてでございます。
 オリンピック・パラリンピックの開催に当たりましては、これから六年半の準備期間を通じて、ハード、ソフト両面で都市力を高め、大会後の東京にさまざまなレガシーを残していかなければなりません。
 まず、ハード面では、大会開催を一つの契機として、競技会場等の周辺地域にとどまらず、輸送インフラの整備やバリアフリー化の促進など、都市機能を向上させる取り組みを推進してまいります。また、大会のため整備した競技施設については、大会後、広く都民共有の財産となるよう、その後の利用のあり方などについて検討してまいります。
 次に、ソフト面では、大会に向けて多くの外国人が東京を訪れる機会を捉え、広く都内から幅広い年齢層を対象としたボランティアの募集、育成等を行い、おもてなしの精神でお迎えしたいと思っております。
 また、多摩地域を初めとする市区町村の事前合宿誘致の取り組み等を通じて、都民が世界のアスリートと触れ合う機会の創出に努め、都民のスポーツに対する興味、関心をさらに高めてまいります。
 こうした取り組みを通じて、二〇二〇年大会の有形無形のレガシーを東京全体に波及させていきたいと思います。
 続きまして、全ての人々が参加できるオリンピック文化プログラムの策定についてでございますが、近代オリンピックにおける文化に関する取り組みの歴史は長く、一九一二年のストックホルム大会の芸術競技から始まっております。二〇一二年のロンドン大会では、英国全土で伝統やアートを発信するロンドンフェスティバルが展開され、世界中から二千万人もの人々が参加したことが機運の醸成に貢献し、大会の成功を大きく牽引いたしました。とりわけ、若者や障害者など、誰もが大会に参加する機会を提供したことは大きな特色であります。
 いまだ世界中に紛争が絶えず、さまざまな課題を抱える中で、世界の人々が共感できる文化の力を活用することは、東京が大会を通じて成熟都市としてのメッセージと、オリンピックが平和の祭典であることを発信していくことにつながります。
 このため、東京大会では、世界中からアーティストが集まり、東京という舞台で創造活動を行い、国籍や老若男女、障害の有無を問わず、世界中のあらゆる人々が参加し、体験できる文化プログラムを展開してまいります。
 プログラムを策定するには、まず、東京はもとより、日本全国の芸術家や芸術文化の専門家、文化施設の責任者など多くの人々の英知を結集してまいります。私も、こうした人々のさまざまな意見を直接聞くため、ぜひ現場に出向いてまいりたいと思います。
 こうした取り組みを通じて、二〇二〇年の東京大会を史上最高のオリンピック・パラリンピック大会としていく決意でございます。
 次に、新空港線の整備についてでございますが、東京の国際競争力を強化するには、鉄道、バスなど羽田空港へのアクセスを充実させることが必要であります。新空港線については、多額の事業費を要することなどから、現場を見て、関係機関等の意見も聞きながら、鉄道ネットワーク全体のあり方を検討する中で総合的に判断してまいります。
 続きまして、再生可能エネルギーの普及拡大についてでございますが、東京は、電力、エネルギーを最も多く消費する都市であることから、大消費地としての責務を踏まえ、一層の省エネ、節電とともに、再生可能エネルギーの普及拡大に努めていくことが重要だと思います。
 このため、再生可能エネルギーにつきましては、電力に占める利用割合を二〇%程度まで高めることを目指し、長期的展望にも立って、あらゆる手だてを講じてまいります。
 その第一歩として、都の内外における民間投資を促進する官民連携再生可能エネルギーファンドを創設することにいたしましたが、例えば、植物の藻の活用を初め、これは藻から油を生み出すという、そういう藻です。自然エネルギーには、まだ技術革新の余地があります。今後、研究開発の促進など多角的に取り組んでいく必要があると考えております。
 さらに、地域の多様な主体とも連携し、海外における先進事例も参考に、専門家の助言も得ながら、再生可能エネルギーの利用割合の拡大を目指し、具体策を取りまとめ、取り組みを強化してまいります。
 続きまして、都市外交についてでありますが、ご質問にもありましたとおり、外交は、国の専管事項ではありますが、都市には都市だからこそできる外交があると考えております。
 都はこれまで、ニューヨーク、北京、ソウルなどと姉妹友好都市提携を結び、さまざまな交流を行ってまいりました。その国の主要な都市同士が交流を通じて相互理解を深めることは、国家間の良好な関係にも資すると思います。
 オリンピック・パラリンピック開催に向けて世界の都市との結びつきはますます重要となってまいります。姉妹友好都市やアジア大都市ネットワーク21会員都市などとの間で培ってきた信頼関係に基づき、都市間の交流をさらに活発にしていきたいと思います。
 今後も、文化やスポーツなど多様な分野で引き続き交流を深めるとともに、北京を初めとしたアジアの諸都市で深刻化するPM二・五の問題など、課題解決に向けた協力を一層促進してまいります。
 特に、少子高齢化が進むアジア諸国において、私たち東京の経験は大変大きな役に立つと考えております。
 東京に蓄積する最先端の技術、人材、ノウハウを活用し、世界有数の都市ならではの都市外交を展開することによって、東京の国際的な地位を向上させてまいります。
 次に、姉妹友好都市交流についてでございますが、先日、知事に就任して最初に受けました海外からの表敬訪問は、姉妹友好都市であるオーストラリア・ニューサウスウェールズ州の首相でありました。州首相とは、姉妹友好都市提携三十周年を迎える両都市が、今後も経済やスポーツなどさまざまな分野で長期的な関係を構築していくことといたしました。
 特に、ニューサウスウェールズ州の州都シドニーでは、二〇〇〇年にオリンピック・パラリンピックを開催しており、開催準備だけでなく、大会終了後を見据えた計画の重要性など貴重な経験について話を聞くことができました。単なる儀礼的な表敬ではなくて、本当に中身のある会談であったと思います。
 世界の主要都市である姉妹友好都市との間で、互いの知識や経験を積極的に交換することによって、実りある交流を進めることは非常に重要であります。今回の会談を手始めとして、トップ同士はもちろんのこと、さまざまなレベルで姉妹友好都市との幅広い交流を推進していきたいと考えております。
 最後になりますが、都市外交における東京の持つ経験、技術の活用についてご質問がございました。
 東京は、これまでの成長の過程でさまざまな課題を経験し、これを解決し、技術を育んでまいりました。環境、水道、下水道の政策や技術は、先人たちの努力のたまものであり、経済成長の著しいアジア諸都市にとっては極めて有益なものであります。これまでも都は、アジア諸都市のために協力を惜しまないでまいりました。
 環境分野では、大気汚染や廃棄物対策に関し技術支援を行い、都市型キャップ・アンド・トレード制度など気候変動対策に関する政策ノウハウを積極的に提供しております。
 水道分野では、実技を学ぶことができる研修・開発センター等を活用するとともに、無収水対策事業を手がけております。
 下水道分野では、毎年千人以上の視察を受け入れ、また老朽化した下水道管を更生する工法など、東京発の技術を海外に発信、展開しております。
 これらは、アジアの発展を後押しし、そこに暮らす人々の福祉の向上に直結するだけでなく、真の友情を育んでいくことになります。
 今後とも、アジア諸都市が抱える諸課題の解決に協力していくことで、都市外交を効果的なものにしてまいります。
 なお、その他の質問につきましては、警視総監、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁させます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔警視総監高綱直良君登壇〕

〇警視総監(高綱直良君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、ストーカー対策についてでありますが、ストーカー事案は、事態が急展開をして重大事件に発展するおそれが大きいことから、相談受理を含め、この種の事案を認知した時点において、被害者等に危害が加えられる危険性や、その切迫性を的確に把握し、危険性が認められるものについては、初期段階から事件化、すなわち検挙を念頭に置いた対応を行うことが肝要であります。
 こうした観点から、警視庁では、昨年十二月、ストーカー事案を初めとする恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案に対し、より迅速かつ的確な組織的対応を図るため、ストーカー・DV総合対策本部を設置いたしました。
 また、同本部内に、警察署におけるこの種の事案対応を支援するため、事件捜査の経験豊富な警察署長経験者を指揮官とするストーカー・DV事態対処チームを立ち上げ、警察署と一体となった事態対処を行い、検挙件数も増加しているところであります。
 今後とも、被害者等の安全確保を最優先とした的確な事態対処に努めますとともに、関係機関、団体等と連携を密にして、社会全体でストーカー被害等の予防や拡大防止を図ってまいりたいと考えております。
 次に、特殊詐欺の撲滅対策と被疑者の低年齢化への対応についてであります。
 昨年の都内における特殊詐欺の状況につきましては、検挙面では、過去最多の一千百五十七件、七百二十五名を検挙したものの、被害額は約八十八億円に上り、過去最悪となったところであります。
 警視庁といたしましては、特殊詐欺は組織的に敢行される極めて卑劣な犯罪であるとの認識のもと、各部門が連携をして、組織の総力を挙げて検挙対策を推進してまいりますとともに、行政、金融機関など、関係事業者団体と幅広く連携をして被害防止対策を強化してまいります。
 あわせて、本年二月から、職場で学んで親子で訓練と銘打ちまして本格運用を開始した特殊詐欺根絶アクションプログラム・東京に参加する企業や団体をふやしていくなど、都民一人一人の心に響く広報啓発活動にも取り組んでまいります。
 また、被疑者の低年齢化への対応についてでありますが、昨年、警視庁が検挙した特殊詐欺被疑者のうち約二〇%が未成年者であり、増加傾向にございます。この点につきましては、東京都及び各学校と連携を図りながら、加害者にならないためのしっかりとした規範意識の醸成に努めてまいる所存でございます。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、いじめ防止に関する条例の制定についてでありますが、都教育委員会は、平成二十五年九月に施行されたいじめ防止対策推進法を踏まえ、いじめ防止に関する条例の制定に向け、関係部門と調整を図るなど準備を行っているところでございます。
 この条例には、基本理念、都の責務、基本方針の策定、関係機関との連携を図るための連絡協議会や附属機関の設置など、いじめ問題への対策を推進するための基本となる事項を規定する必要があると考えております。次の第二回都議会定例会を含めて、できる限り早期に条例案を提案できるよう進め、区市町村教育委員会と連携をし、いじめ問題の解決を図るための実効性ある対策に取り組んでまいります。
 次に、いじめ問題への総合的な対策についてでありますが、専門家会議報告では、学校一丸となっていじめから子供を守り通すための対策を示しております。
 具体的には、全校に学校いじめ対策委員会を設置し、組織的な対応を図ること。その上で、いじめに関する授業等を通して、子供がいじめを見て見ぬふりをせず、声を上げられるようにするとともに、スクールカウンセラーによる全員面接やSNSを含めたネット監視などにより、いじめを早期に発見をしていくことです。また、保護者や警察などと連携し、早期の解決を図るとともに、重大事態発生時には、弁護士などの第三者による委員会により調査を行っていくことであります。
 今後、この報告をもとに、条例や基本方針とあわせて、いじめ総合対策を策定し、都内公立学校におけるいじめ防止対策に万全を期してまいります。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 鉄道ネットワークの充実についてでございますが、都市の機能や利便性を高めていく上で、鉄道ネットワークの充実を図ることは重要であり、特に、機能強化の進む羽田空港へのアクセスにつきましては十分な検討が必要でございます。
 都は、国や鉄道事業者などと連携し、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた路線の実現に向けて取り組んでおります。答申におきまして、平成二十七年までに開業することが適当とされた東京モノレールの羽田空港第二ビル駅への延伸など、都内の十六路線につきましては、既に開業、または事業中でございます。
 一方で、平成二十七年までに整備着手することが適当とされた路線につきましては、事業主体や事業採算性などの課題があり、未着手となっております。
 国は、運輸政策審議会答申第十八号の目標年次に近づいていることから、来年度から審議会におきまして、東京圏の高速鉄道を中心とする交通体系のあり方などについて議論を行い、平成二十七年度ごろを目途に審議会答申を取りまとめることを検討中と聞いております。
 都といたしましても、審議会答申に向け、来年度、学識経験者などで構成する委員会を設置し、その中で、空港アクセス機能の強化なども含め、都における今後の鉄道ネットワークのあり方などにつきまして、国の動向を踏まえながら調査検討を進めてまいります。
   〔総務局長中西充君登壇〕

〇総務局長(中西充君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩地域の雪害対策についてでございますが、今回の記録的な大雪により、多摩地域では、交通手段の途絶や一部の集落が孤立する事態が発生いたしました。多摩地域の住民の安全・安心を確保するためには、こうした大雪などの災害に対し、現場で最初に対応する市町村による取り組みを支援するとともに、都としても適切な備えを講じることが重要でございます。
 このため、都は、今般の大雪の際の除雪費について市町村の負担額を取りまとめ、国に対し特別交付税の措置を求めているところであり、引き続き強く働きかけてまいります。
 また、今回の雪害を踏まえて、年度内に策定いたします新たな多摩のビジョン行動戦略の中で、雪害に対する備えを位置づけるなど、多摩地域の安全・安心の確保に向けた取り組みを推進してまいります。
 次に、大雪などによる帰宅困難者対策についてでございます。
 東日本大震災の際には、首都圏の鉄道が停止した中、多くの人々が一斉に帰宅しようとしたため、車道に人があふれ、緊急車両の通行に支障を来すなど、都内は大きく混乱いたしました。この教訓を生かし、首都直下地震等の大規模災害において、帰宅困難者の大量発生による社会の混乱を防止するため、これまで対策を進めてまいりました。
 一方、大雪や台風の場合には、事前に発生が予想できない大地震と異なり、あらかじめ備えておくことが可能なため、迅速的確な情報発信が重要となります。このため、今回の大雪の際には、ホームページやツイッター等により、積雪時の注意や気象情報、鉄道の運行情報をきめ細かに提供したところでございます。
 こうした中でも、鉄道の運転見合わせのため帰宅できない方々がいらっしゃいましたが、車内で保護するなど鉄道事業者が対応いたしました。
 今後も、首都直下地震等における帰宅困難者対策を推進することはもちろん、大雪等の際にも、都民に対するより一層きめ細かな情報発信を行うとともに、鉄道事業者による利用者保護の徹底を促してまいります。
 次に、都の住宅政策部門の体制についてでございます。
 都では、行政課題の解決のため組織を適宜適切に見直し、常に効果的で効率的な執行体制の確保に努めてまいりました。住宅政策部門は、まちづくりと一体となった住宅政策などを展開するため、平成十六年に関係部署を都市整備局として再編統合したもので、その後も担当理事の新設など体制強化を図ってまいりました。
 現在、住宅行政には、木密地域の改善や既存住宅の耐震化、高齢者向け住宅の供給促進、居住の安定確保など多くの重要かつ困難な課題がございます。また、その対応のために、福祉分野などの関係局と、より密接な連携が必要となることが多くなっております。
 こうしたことから、直面する課題に、より迅速かつ的確に対応できるよう、事業の展開にあわせまして組織のあり方を検証してまいります。
 最後に、病院船の活用についてでございます。
 都の被害想定では、最大約十五万人の負傷者の発生が想定されており、災害発生時には、こうした多数の負傷者に対し、迅速に医療救護活動を行うことが重要です。
 現在、都では、東京DMATなどによる迅速な医療救護活動や災害拠点病院を中心とする受け入れ医療機関の確保に努めております。しかし、大規模災害時には、交通網の遮断やライフラインの途絶、患者の集中などにより、十分な医療救護活動を行うことが困難な場合も想定されます。
 このため、国が病院船により、海側から医療機能を提供することは、負傷者の搬送等の課題が想定されるものの、都内の医療救護活動を補完する役割が期待できます。
 こうしたことから、都といたしましても、国で進められている病院船の活用に向けた検討状況を注視してまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 大雪対策についてのご質問にお答えいたします。
 本年二月の都内での記録的な積雪により、大きなダメージを受けた農業や商業の施設の復旧などを速やかに進め、多摩地域での生産活動などを早期に通常の状態に戻すことは重要でございます。
 農業施設の再建等について、国では、各地域の被害状況を確認し、対策の概要を明らかにしていますが、その詳細については、今後示される見込みであります。そのため、都としては、国の対策を踏まえながら、今後に向け支援策を検討してまいります。
 また、商店街のアーケードについては、商店街の意向を踏まえ、来年度できるだけ早期に対応してまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 財政運営についてでありますが、都税収入は、景気の緩やかな回復を受け、足元では増加となるものの、ご指摘のように、過去には一年で一兆円の大幅な減収に見舞われるなど、景気変動に大きく左右されやすい構造にございます。
 一方、都政には、首都直下地震への備えや急速に進行する少子高齢化への対応、オリンピック・パラリンピックの開催準備など、取り組むべき課題が山積しており、都財政の先行きは予断を許す状況にはございません。
 地方交付税の不交付団体である都が、都政の諸課題に、安定的、継続的に対処していくためには、強固な財政基盤を堅持していくことが不可欠でございます。
 このため、事業評価などを通じ、施策の効率性や実効性を高めるための自己改革に不断に取り組むとともに、中長期的な視点に立って都債の計画的活用や基金残高の確保を図るなど、堅実な財政運営に今後とも努めてまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 六点の質問にお答えいたします。
 まず、特別養護老人ホーム整備時の借り入れについてですが、都は、社会福祉法人が新たに特別養護老人ホームを整備し、補助金を支出する場合、社会福祉施設整備費補助対象法人審査要領に基づき、借入金が総事業費のおおむね二分の一以内であることと定めております。この基準は、社会福祉法人が健全な財政基盤のもと、安定的、継続的に法人運営を行い、借入金を確実に償還することを担保するために設定したものでございます。
 現在、国では、社会福祉法人のあり方等に関する検討会において、財務諸表の公表による経営の透明性の確保や経営判断指標の構築による経営改善の仕組みの導入などを検討しており、借り入れ制限は、こうした制度の導入にあわせ、法人経営の健全性という観点から、そのあり方を検討していくことが必要であると考えております。
 次に、介護保険制度についてですが、現在の制度では、要介護高齢者は、全国いずれの特別養護老人ホームでも利用可能であり、その必要入所定員総数は、都道府県の介護保険事業支援計画で定めることとなっております。
 そのため、国の検討会でも、都内の自治体が、都外に特別養護老人ホームを整備することは、住民同士の連携が深い自治体間の取り組みであっても、関係都道府県の介護保険事業支援計画への明記や入所者本人の意思の尊重が前提であるという考え方が示されております。
 同時に、この検討会では、都内の老人福祉圏域間では、都の計画に明記することで、整備数の調整が可能とするという考え方も示されており、都は今回、都内の近接する複数の区市町村が共同で特別養護老人ホームを利用する仕組みを構築することといたしました。
 高齢者の生活を支えていくためには、適切な住まいを選択し、ニーズに応じて必要なサービスを受けることができる環境整備を進めていくことが重要でございます。
 そのために、都はこれまで、国に対して必要な提案要求を行っており、今後とも、大都市東京の実情に応じた介護保険制度となるよう、時期を捉え、提案要求を行ってまいります。
 次に、複合型の高齢者施設の整備についてですが、都はこれまで、認知症高齢者グループホームや都市型軽費老人ホームに、他の介護事業所等を併設する場合には、整備費補助額を加算し、整備を進めてまいりました。
 また、来年度は整備を促進するため、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の整備費補助単価を増額するとともに、地域密着型サービス等を併設する場合には、さらに補助額を加算するなど、都独自の支援策を講じてまいります。
 さらに、今月六日には、区市町村や事業者向けに説明会を開催し、高層ビル等の一部を買い取る場合の補助制度や、既に実施されている先駆的事例など、複合型施設の整備に資する手法を広く紹介する予定でございます。
 今後とも、こうした取り組みにより、区市町村における介護サービス基盤の整備を積極的に支援してまいります。
 次に、送迎保育ステーションについてですが、お話のように、都は来年度から、学校や児童館など保護者の利便性のよい場所に送迎保育ステーションを設置し、専用のバス等で定員に余裕のある保育所まで児童を送迎する区市町村の取り組みを支援する制度を開始いたします。
 保育の実施主体である区市町村が、この制度を活用して、新たに大規模な保育所を整備したり、空き定員のある既存の保育施設の有効活用を図ることは、待機児童解消のための有効な方策の一つでございます。
 第一号は、本年四月に江東区で始まる予定であり、今後、都は、区市町村への説明会を開催するほか、個別の相談にも応じながら、広く制度を周知し、活用を促すとともに、パンフレットの作成など、保護者や事業者の理解を得るための区市町村の取り組みも積極的に支援してまいります。
 次に、産前産後ケアについてですが、現在、都は、産後に家族等の援助が受けられず、心身の負担感を抱える母親を対象に、親子で宿泊して、二十四時間体制で支援するショートステイや、相談等を行う区市町村の取り組みを包括補助事業により支援しております。
 また、来年度からは、妊娠中から継続的な専門相談や支援が行えるよう、専任の相談員として助産師等の配置を支援するとともに、ショートステイ等を実施する専用施設の新設や改修のための補助制度を拡充いたします。
 産前産後ケアは、子どもの健やかな育ちと母親の健康を支える重要な取り組みであることから、今後、より多くの区市町村が取り組めるよう、事業説明会の開催や先進的な取り組みをまとめた事例集の策定等を行い、関係団体とも連携しながら、区市町村の取り組みを積極的に支援してまいります。
 最後に、妊娠出産に関する相談体制についてですが、都はこれまで、妊娠、出産に関して、さまざまな不安を抱える女性を支援するため、女性のための健康ホットラインや女性相談センターにおいて相談に応じるほか、区市町村や医師会等関係団体と連携しながら、妊婦健診の重要性の啓発や相談窓口の周知等に努めてまいりました。
 来年度は、こうした取り組みに加え、若い女性がより利用しやすいよう、妊娠、出産に関する専用の電話相談窓口を開設いたします。この窓口では、看護師等の専門職が必要な助言を行うとともに、内容に応じて適切な関係機関の紹介を行うこととしており、お話のメールの活用についても今後検討してまいります。
 また、相談窓口が広く活用されるよう、電車内の広告やリーフレット等により都民への周知を図ってまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会を通じた被災地支援の取り組みについてでございますが、支援策の実施に当たりましては、被災地の自治体などと緊密な連携を図り、被災地の方々の声をきめ細かく聞くことが必要でございます。
 このため、本年一月に設立されました大会組織委員会において、被災地のニーズを受けとめ、事業に反映させていく担当部署を、この四月に設置する予定であります。そして、復興の姿を国内外に示す情報発信のあり方や、文化・教育プログラムなどの事業について、復興の観点から事業効果を高めていく方策などが検討されることとなっております。
 都といたしましては、こうした取り組みを効果的に進めるため、大会組織委員会と事業内容の工夫や、組織、人員体制整備などの連携を図り、被災地支援に積極的に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 文化プログラムへの障害者アートの反映についてでありますが、オリンピック・パラリンピック大会を文化の面でも成功させるためには、年齢や障害の有無にかかわらず、多くの人々が世界中から集い、大会の機運を大きく盛り上げていくことが重要であります。
 ロンドン大会では、若者を中心としたビッグダンスや障害者のアートが展示されたアンリミテッドなどが、誰もが参加しやすい無料のイベントとして、英国全土の町なかや広場などで実施され、アーティストはもちろんのこと、多くの参加者が世界中から集まり、大会の成功に貢献をいたしました。
 こうしたことから、昨年、東京がIOCに提出した立候補ファイルでは、文化プログラムの基本的な考え方の一つとして、若手芸術家や高齢者、障害者などがともに創作することを盛り込んでおります。
 これを具体化するため、まず来年度に、障害を持つアーティストや関係団体などからのヒアリングを実施いたします。
 また、障害者アートに知見のある専門家を活用して、障害の有無にかかわらず、誰もが参加できる多彩なイベントを盛り込んだ文化プログラムを策定してまいります。
〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(河合潔君) 地域におけるひきこもり支援体制の充実でありますが、都はこれまで、電話と電子メールによる相談事業として、ひきこもりサポートネットを実施してまいりましたが、訪問支援を初めとするきめ細かな個別支援を住民に身近な地域で提供できる仕組みづくりが不可欠であります。
 ひきこもりの若者については、外部の支援機関に結びつけるのが困難なことも多いことから、地域の実態に即した継続的な訪問支援は、支援員が自宅等に出向き、支援機関の紹介や外出の手助け等を行うことができるため、極めて有効な支援策であります。
 そこで、住民との接点が多い区市町村において、支援を個別に提供できる体制の整備を促進するためにも、新たに国の補助制度を活用した訪問支援を、ことし六月から開始し、さらなる支援の充実に取り組んでいくこととしております。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) エネルギー施策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、再生可能エネルギーの熱利用の普及拡大についてでございます。
 都は、再生可能エネルギーの熱利用が重要との認識に立って、従来から太陽光発電とともに太陽熱利用の拡大にも取り組み、住宅供給事業者向けの補助事業も活用しながら事業者の取り組みを促し、新たな太陽熱住宅のモデルを生み出してきております。
 今後、従来の施策を拡充し、給湯用の熱需要の大きい福祉施設を補助対象に加えることで、より広範な施設における太陽熱利用を促進してまいります。
 さらに、太陽熱とともに、地中熱やバイオマスによる熱利用の導入可能性など、東京における再生可能エネルギー利用のさらなる拡大に向け、調査検討を進めてまいります。
 次に、集合住宅へのエネルギーマネジメントシステム、いわゆるMEMSの導入についてでございます。
 集合住宅へのMEMS導入は、無理のない節電や電気料金の削減に寄与いたします。一方で、新築へのMEMS導入は、コストを販売価格に転嫁するため、ブランド力がある高価格帯の不動産物件に限られており、現時点で普及は限定的でございます。
 さらに、既存の集合住宅への導入は、高圧一括受電する設備への改修等を伴うため、新築よりも導入コストが高くなることから、ほとんど普及が進んでいない状況にございます。
 このため、来年度、新たに導入費用の二分の一を助成する制度の創設により、集合住宅へのMEMS導入を促進していくこととし、その実施に当たっては、制度の内容やメリットなどについて、ホームページへの掲載や説明会の開催を通じて、管理組合などに広く周知してまいります。これによりスマート化の潜在需要の高い集合住宅へのエネルギーマネジメントの導入を推進し、エネルギー利用の効率化を促してまいります。
 最後に、補助事業間の連携についてでございます。
 事業を効果的に実施する上で、対象が同じである他の制度との連携は重要と認識しております。お話の耐震改修の補助制度との連携につきましては、省エネ節電補助事業のパンフレットやホームページに耐震改修の案内を掲載するとともに、事業説明会で積極的に紹介するなどの取り組みを進めてまいります。
 また、省エネ節電補助事業の実施に当たって、耐震改修の予定者の優先的な採択や、耐震改修工事が長期にわたる場合の省エネ節電補助事業の工事完了期限の延長などを検討してまいります。
 こうした取り組みにより、工事施行の円滑化や制度利用者の利便性の向上に努めてまいります。

〇副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時二十八分休憩

ページ先頭に戻る