平成二十五年東京都議会会議録第十七号

〇副議長(藤井一君) 三十番山内れい子さん。
   〔三十番山内れい子君登壇〕

〇三十番(山内れい子君) 都議会生活者ネットワークを代表して質問します。
 猪瀬知事の資金問題については、各会派から厳しい意見が出されました。しかし、これまでの説明では都民を納得させることはできません。職員のトップに立つ知事には、より高潔性と危機管理能力が求められるのは当然であり、これなくして職員の士気は下がる一方です。
 しかも、知事は政治家です。政治資金規正法も公職選挙法も政治の透明性を高めるためのものです。こうした趣旨をないがしろにする報告書を出すことについて恥ずべきです。
 たとえ個人的借金であったとしても、悪質な選挙違反で強制捜査を受けている徳洲会と五千万円ものお金を簡単に借りることができるような密接な関係を持ったということの道義的、政治的な責任は免れません。
 生活者ネットワークは、知事はみずから辞職し、改めて都民に信を問うべきと考えます。
 猪瀬知事は、失った信頼の回復、都民への説明責任をどのように果たすのか伺います。
 オリンピックとまちづくりについて伺います。
 コンパクトなオリンピックをうたってかち取った二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックですが、ここに来て、新国立競技場の建設をめぐって、巨大過ぎて景観を損ねる、お金がかかり過ぎるなど、専門家からも異議が噴出しています。
 新国立競技場のデザインは、昨年十一月に公募で決まりました。しかし、都は、この巨大な建築物が建つことを前提に、この地域にかけられている風致地区制度の十五メートルの高さ制限を大きく超えて、現在の国立競技場の二倍以上の七十五メートルまで緩和した地区計画をことし六月に都市計画決定しました。
 新国立競技場は国がつくるものですが、神宮の森は都内の風致地区第一号として都民が誇りに思い、九十年近い年月をかけて守ってきた場所です。それをオリンピックという国家プロジェクトだからとなし崩しにしていいものではありません。迫りくる少子高齢社会を見据え、将来世代に過大な負担を残さないコンパクトな施設づくりやまちづくりこそ重要と考えます。
 都は、都民の感性を重視した風致地区制度などを尊重して、現在進めようとしている新国立競技場を含む神宮外苑地区のまちづくりを見直していくべきと考えますが、見解を伺います。
 福島原発事故直後、電気が足りなくなるという危機感から、その年の夏は、自治体や企業、個人も全力を挙げて節電に取り組みました。その結果、東京電力管内の最大電力は、震災前に比べて一八%削減となり、去年とことしは一五%減となっています。また、東京エリアで一年間の電力消費量は、二〇一一年度、二〇一二年度ともに一〇%減となっており、節電の取り組みがある程度定着したと考えられます。
 しかし、町には必要以上に明るい照明や自動販売機などが復活し、ことしは特に暑い夏でしたが、節電を呼びかけるマスコミ報道は見られず、喉元過ぎれば熱さを忘れるの格言のごとく、節電、省エネに取り組む意識が緩んだのではないかと心配です。
 電力不足対策のピークカットとともに、温暖化対策を推進するために、電力消費量全体を減らす必要があります。無理なく省エネできる技術も進展しており、節電、省エネの取り組みをさらに進めていかなければなりません。
 そのためには、都が節電、省エネのノウハウやすぐれた事例を提供するなど、都民、事業者の節電、省エネの取り組みを促していく必要があると考えますが、所見を伺います。
 ことし九月、国交省は、劣悪な脱法ハウスについて、建築基準法違反である旨、通知を出しました。しかし、この通知によって、安価で良質なシェアハウスまでも空き家活用の支障になることが強く危惧されています。
 高齢者のグループリビングや多世代のホームシェアなど、家族以外の人が集まり、助け合って暮らす新しい住まい方が広がり、注目されています。空き家になった広い家やアパートをこうした住まいに活用することも積極的に進める必要があると考えます。低所得者の住まい確保の観点からも、空き家の活用が期待されており、今後シェアして暮らすことはますます重要になります。
 空き家活用型のシェアハウス、グループリビングなどを進めるために、地域の実情に即した取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
 レストランなどで、メニューの誤表示などが次々に明らかになりました。事業者の責任は重大ですが、消費者のブランド志向も誤表示の一因ではないかと思います。消費者行政は、景品表示法に基づくガイドラインを早期に策定し、表示の適正化に向け、体制を強化する方針と報じられています。
 一方、スーパーマーケットなどで販売されている流通食品の表示については、添加物は食品衛生法、原産国はJAS法、栄養は健康増進法とさまざまな法律があり、ことし六月、これら三法を一元化した食品表示法が公布されたものの、施行に向けて基準は二年以内に定めるとされています。
 また、遺伝子組みかえ食品表示や加工食品の原料原産地表示の拡大、外食、中食の表示などは、食品表示法における今後の検討課題とされており、いまだ詳細は明らかにされていません。TPPによる表示への影響も危惧されます。
 食品表示は、商品選択のための原産地表示や安全確認のためのアレルギー表示など、消費者にとって必要な情報を正しく提供することが何よりも大切です。
 こうしたことを踏まえ、都は、流通食品の適正表示の推進に向け、どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 最後に、高次脳機能障害者の支援について伺います。
 高次脳機能障害者は、集中的な入院によるリハビリテーションを終了し、退院した後、改めて本人も家族も生活の困難さに直面するという声を聞いています。
 在宅生活の安定を図り、社会参加を促していくためには、障害者手帳の有無にかかわらず、長期的、継続的なリハビリテーションを十分に行うことが必要と考えます。
 こうした状況を踏まえ、都では、二〇一〇年度から、高次脳機能障害者に対応したリハビリテーションの普及モデル事業を実施し、地域における高次脳機能障害者に対する支援体制の充実を目指していくとしていましたが、現在の取り組みについて伺います。
 また、高次脳機能障害者には若い人や子育て中の人もおり、復職あるいは就労への意欲は大変強く、一歩一歩懸命に時間をかけて求職活動に入る前の準備をしています。
 そこで、高次脳機能障害者の就労支援など、社会参加への支援についてどのように取り組むのか、所見をお伺いします。
 なお、障害者手帳の有無にかかわらず、退院後、在宅生活に移行する前に、入所による機能訓練や生活訓練を望む声があります。今後、地域で在宅支援を始める際の不安を軽減するような取り組みを進めていただくよう要望し、都議会生活者ネットワークの質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 山内れい子議員の一般質問にお答えします。
 都民の信頼の回復、都民への説明責任についてでありますが、まず、今回の借入金の問題について、都民の皆様、都議会の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことについて、深くおわび申し上げます。また、その借入金を資産等報告書に記載せず、後日訂正をしましたことについてもまことに申しわけありませんでした。
 これまでも、記者会見や所信表明、また、昨日の代表質問の場で繰り返し説明申し上げてきましたが、五千万円を個人として借りる際に、徳田毅氏の前でサインをして、借用証を徳田毅氏に預け、返済しましたので、借用証は返ってきた。そして、先日、その借用証を公表したと。自分にとっては、このプロセスは明快なものなのであり、説明してきたつもりなのですが、まだまだご理解いただけているとは思っているわけではありません。できる限り、説明させていただきたいと考えております。
 都民のため、国民のため、とにかく一生懸命仕事をしていきたいと思っております。それが、都民の皆様への信頼回復に向けた最も近道であると考えております。粉骨砕身働くことで示していきたいので、よろしくお願い申し上げます。
 その他の質問は、東京都技監、関係局長が答弁いたします。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、神宮外苑地区のまちづくりについてでございますが、国家プロジェクトである新国立競技場の計画が具体化したことを受け、都は、本年六月、神宮外苑地区一帯について地区計画を決定いたしました。
 この計画では、まちづくりの目標として、外苑の良好な風致と調和したスポーツ施設等の集積を図るとともに、イチョウ並木から絵画館を望む歴史的景観を保全し、緑豊かでにぎわいある都市空間を創出することとしております。
 さらに、この目標に即して、競技場の敷地などを対象に地区整備計画を定めており、緑地や広場を拡充し、風致の維持向上を図ることとしております。
 今後とも、関係権利者等と連携し、風格と活力を兼ね備えた世界に誇れるスポーツ、文化の拠点形成に取り組んでまいります。
 次に、空き家を活用したグループリビングなど、地域の実情に即した取り組みについてでございますが、空き家活用などにより、地域の高齢者など、住宅の確保に配慮が必要な方々に対してそれぞれの地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、基礎的自治体である区市町村が中心となり関係団体やNPOなどと連携して取り組むことが重要でございます。
 そのためには、区市町村が居住支援協議会を設置して主体的に活動することが効果的であり、都として、区市町村における居住支援協議会の設置を促すこととしております。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 節電、省エネの推進についてでございますが、都はこれまで、キャップ・アンド・トレード制度等の着実な運用や、事業者のすぐれた取り組み事例の発信、家庭向けの省エネパンフレットでの広報などを通じて、都民、事業者の節電、省エネの取り組みを推進してまいりました。
 こうした取り組みにより、例えば家庭では室内温度の設定見直しが浸透し、また、都内の大規模商業施設においては、平成二十三年度に導入された照明器具の九割以上がLED照明になるなど、無理なく賢い節電の取り組みは着実に進んできております。
 今後も、冬の暖房時の省エネ手法など、時期に合わせた情報発信を行うとともに、高効率機器の導入によるすぐれた省エネ技術の活用や、設備の最適運転などの運用対策を促し、都民、事業者の節電、省エネの取り組みを一層推進してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、流通食品の適正表示の推進についてですが、食品表示は、品質や健康被害の防止等に関する情報を消費者に提供するという重要な役割を果たしております。
 都は、事業者向け講習会を毎年開催し、これまでに適正表示を推進する人材を約五千人育成するとともに、調理冷凍食品の原料原産地表示を独自に義務づけているところでございます。
 また、食品表示対策を監視指導計画の重点事業に位置づけ、健康安全研究センターの専門監視班や保健所等が年間約二十一万件の立入検査を実施しております。
 さらに、国に対しては、食品表示法の施行に向け、食品の表示が消費者や事業者にとってわかりやすい内容となるよう提案要求をしております。
 今後とも、国の動向を注視しつつ、食品の適正表示に向けた取り組みを推進してまいります。
 次に、高次脳機能障害者支援の取り組みについてですが、都は、地域において、高次脳機能障害者に対応したリハビリテーションを提供できる体制を整備するため、平成二十二年度から二つの二次保健医療圏でモデル事業を開始し、昨年度から本格実施いたしました。
 この事業では、高次脳機能障害者のリハビリテーションを担う中核病院を圏域ごとに定め、その病院の専門スタッフが、区市町村や地域の医療、福祉等の関係機関に対して技術的助言を行うほか、医療と福祉の連携強化のための圏域連絡会や症例検討会などを行っております。
 現在、取り組みは六圏域まで拡大しており、今後とも地域における支援体制の充実に向けて取り組んでまいります。
 最後に、高次脳機能障害者への支援についてですが、高次脳機能障害者は、障害特性や改革の程度により、状態が一人一人異なるため、本人や家族が置かれている状況とニーズを適切に把握し、支援する必要がございます。
 そのため、都は、心身障害者福祉センターを高次脳機能障害者の支援拠点として、専門的な相談支援や支援手法の研修を実施するほか、地域の支援機関からの依頼に基づき、個々の特性に応じて就労準備やサービス利用につなげる評価プログラムを実施しております。
 プログラムでは、パソコン入力の作業やスケジュール管理等の訓練を通じて、利用者の作業能力等の評価を行うほか、就労希望者には職業能力の評価等を行っており、今後ともこうした取り組みにより、高次脳機能障害者の就労支援など、社会参加への支援に取り組んでまいります。

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