平成二十五年東京都議会会議録第十七号

〇副議長(藤井一君) 十番みやせ英治君。
   〔十番みやせ英治君登壇〕

〇十番(みやせ英治君) 質問に先立ち、台風二十六号による影響で伊豆大島に甚大な被害がありました。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。
 まず初めに、高齢者の住まいについてお伺いいたします。
 今、我が国では高齢化が急速に進展しており、東京都も例外ではありません。特に高齢者に占める単身世帯の割合が急増しており、東京都における高齢者の単身世帯は、二〇一〇年の約六十二万世帯から、二〇三〇年には約九十万世帯にまでふえると予想されています。
 また、六十五歳以上の高齢者世帯は相対的に所得水準が低く、厚労省の統計によりますと、年収二百万未満が全体の約四割、また、六十五歳以上の単身世帯は借家率が高いのが特徴であります。
 単身世帯では家族による介護も期待できないことから、今後、低所得の単身高齢者が医療、介護等のサービスを受けられる住まいの確保が求められています。
 都の調査によると、高齢期に住みかえを考えている世帯の望ましい居住形態は、サービスつき高齢者住宅が二三・四%で一位。こうした中、二〇一一年、一人で暮らせなくなった高齢者の受け皿を支えるサービスつき高齢者向け住宅制度がスタートいたしました。整備補助や税の優遇措置、都道府県への登録制で参入への困難が少ないことから、普及は急速に進み、現在、全国で約十三万戸が整備されております。
 一方で、制度開始から二年がたち、課題も見えてきております。
 まず、高過ぎる費用でございます。
 都内のサービスつき高齢者向け住宅は家賃、管理費だけで最低月十万円、価格設定の多くは十五万から十七万、食費をつけると二十万を超えるものも珍しくありません。
 しかし、単身世帯の年金受給額を見ると、八割近い人が年に二百万未満、月にすると十六万七千円に満たず、年金だけでは費用を賄い切れていないのが実情です。
 サービスつき高齢者向け住宅の賃料は、全国平均は七万五千円ほどですが、都内では最も低い賃料の平均が約十三万、最も高い賃料の平均が約十六万五千円と全国平均の倍近くにもなっております。
 私の地元板橋区高島平でも空き室を活用したサービスつき高齢者向け住宅が始まっておりますが、賃料が月十三万からでは高過ぎて入所ができない、行き場がないと、そういった切実な高齢者の方の声を聞いてまいりました。
 また、実際の事業者にもお話を聞きましたが、賃料十五万前後の厚生年金モデルから、十万円前後の国民年金モデルへと賃料の取り組みを努力はしているが、サービスの質の担保もあり、もう限界とのことでした。
 現在、都は国と区市町村とともに、所得に応じ、最大月四万円の家賃補助を行っていますが、全国平均に比べ、都内のサービスつき高齢者向け住宅の賃料の高さを考えると、都独自の家賃補助制度を考えることも必要なのではないでしょうか。
 次に、低所得高齢者に対する住宅供給という点から見た現在の補助制度の問題です。
 サービスつき高齢者向け住宅は、土地所有者が上物である住宅を建築し、運営は事業者に委託する所有と運営を分離する形が多くなっていますが、補助制度の対象は主に建築に対する補助に偏っています。
 整備費補助は所有者や金融機関、建築事業者にとってはメリットがありますが、運営事業者がそれを十分に享受できるとは限りません。運営事業者にメリットがないと、家賃も高どまりし、入居者もメリットを実感しにくくなります。
 建築にかかるコストは一般的には二割程度とされ、運営費、管理費等のランニングコストの占める割合の方がはるかに大きく、この点に対する助成こそがコスト削減、ひいては入居者の家賃の値下げになっていくのではないでしょうか。
 いずれにせよ、都でも二〇一四年度末までに一万戸までふやす目標の達成や、一定の供給量が確保された後は、補助制度のあり方を見直すことも視野に入れ、これからより必要とされる低所得高齢者向けの住まいの確保につなげていくべきです。
 この東京都の現状を前提とした家賃補助や整備費補助など、今後のサービスつき高齢者向け住宅を進めるに当たって、補助制度のあり方や見直しについて、都の所見をお伺いいたします。
 また、さらにますます大きな課題となる高齢者の住まいの問題には、より一層、福祉と住宅政策の連携が求められていると考えますが、これからの低所得高齢者の住宅問題に対する都としての考えを伺います。
 次に、空き家の活用についてお伺いいたします。
 空き家が全国で増加傾向にあることが問題になっており、総務省の調査によりますと、都内でも平成五年に約五十万戸であった空き家は、平成二十年には約七十五万戸に増加し、全体住宅数の約一一%を占めております。そのうち利用可能で、かつ全く活用されていない空き家の数は十万戸といわれており、防災、防犯、衛生、景観など多岐にわたる課題となっております。
 これまで都は、高齢者対策や待機児童の解消などに対応した事業として、空き家活用を促進しようとしてまいりました。都は、民間賃貸の空き家の改修工事について、費用の一部を補助する空き家活用モデル事業を行っています。
 しかし、昨年度は応募がゼロであり、今年度は都独自助成独自補助を創設し、先着順受け付け、かつ一日多いときで四、五件もの問い合わせがあったにもかかわらず、応募数は現在まだ一件と、より利用しやすい工夫が必要であることは明らかです。
 空き家所有者の意向は、その形態ごとにさまざまです。今後、空き家の適正な活用につなげていくためには、都が区市町村と連携をした形で、まずは空き家の実態調査を行うべきと考えます。それにより、市民、NPO、不動産事業者による空き家バンクの支援、都がトータルにマネジメントする仕組みにつながっていくのではないでしょうか。
 また、現状の空き家活用モデル事業も、単なる改修補助事業型だけではなく、一般から募集したアイデアに対して助成を行ったり、地域コミュニティの活性化や、行き場のない高齢者の住まい対策と結びつけた事業にしたりするなど、現場の区市町村やNPOなどが使いやすい補助制度を新たに構築することが必要です。区市町村と連携した実態調査や、トータルでのマネジメントの仕組み、住民やNPOなどのアイデアをくみ上げていく取り組みについて、都の所見をお伺いいたします。
 核家族化や少子高齢化、地域とのかかわりが薄い都市には、子育てや介護、シングルマザーなど多くの課題がありますが、こうした課題を解決する一助となる、地域住民が運営する公共サービス、シェアハウス、保育ママ事業、子育てスペースなど、NPOや民間による新たな空き家活用の事業も出始めました。空き家が地域福祉やコミュニティの活性化を促す活動となり、新たな住民同士の助け合いの場を生み出しています。
 豊島区や江東区では、住宅の確保に配慮を必要とする人たちが民間の賃貸住宅に円滑に入居できると居住支援協議会が設置され、その取り組みの一つに、地域の空き家活用を訴えてまいりました。東京都がその実態や魅力を紹介し、全ての区市町村で設置するように誘導していくように考えますが、ご所見をお伺いいたします。(拍手)
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) みやせ英治議員の一般質問にお答えいたします。
 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、サービスつき高齢者向け住宅についてでございますが、都は、主として中堅所得者層が適切な負担で入居できるサービスつき高齢者向け住宅の供給を進めております。
 本年度からは、医療、介護サービスの事業所と連携して、住宅を供給する事業者に対し、国と同額を加算して整備費補助を行うなど、供給の促進を図っております。
 また、入居者の所得に応じ、家賃負担を軽減するため、区市町村が都及び国と連携し、事業者に対し、一戸当たり月額四万円を上限に家賃減額補助を行う制度を既に設けております。
 今後とも、これら現行制度の適切な運用に努め、サービスつき高齢者向け住宅の供給を促進してまいります。
 次に、低所得高齢者の住宅問題についてでございますが、住宅マスタープランや高齢者保健福祉計画におきましては、低所得者を含めた全ての高齢者が地域社会の中で必要なサポートを受けながら安心して暮らせることが重要であるとしております。
 これを踏まえまして、高齢者の居住安定確保プランを策定し、住宅施策と福祉施策が連携して、中堅所得者向けのケアつき住まいや、低所得の高齢者も利用できる都市型軽費老人ホームの整備などを進めております。
 今後とも、関係局、区市町村と連携しながら、高齢者が住みなれた地域で安心して住み続けられるよう取り組んでまいります。
 次に、空き家活用に向けた取り組みについてでございますが、都は、空き家の利活用方策の可能性を検証するため、昨年度から空き家活用モデル事業を実施しております。
 今年度は、相談のあった都民やNPO等の意見を踏まえ、事業の改善を行っております。例えば、旧耐震基準の建物では、改修費用に対する補助限度額を引き上げました。また、戸建て住宅を貸し出したいといった要望に対し、戸建て住宅の多世代同居、子育て世帯向け用の改修を補助対象に加えました。
 引き続き、モデル事業を通じたニーズ把握に加え、空き家の実態調査やあっせんなどのコーディネートを行っている区などの取り組み状況や意見を参考にしながら、空き家の利活用方策の可能性を検証してまいります。
 最後に、居住支援協議会の設置についてでございますが、地域の高齢者など、住宅の確保に配慮が必要な方々に対して、それぞれの地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、基礎的自治体である区市町村が中心となり、関係団体やNPOなどと連携して取り組むことが重要でございます。
 そのためには、区市町村が居住支援協議会を設置して主体的に活動することが効果的であり、都として、区市町村における居住支援協議会の設置を促すこととしております。

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