平成二十五年東京都議会会議録第十七号

〇議長(吉野利明君) 四番山内晃君。
   〔四番山内晃君登壇〕

〇四番(山内晃君) さきの大島町を襲った台風二十六号により犠牲になられた方々にお悔やみを申し上げ、そして被災された方々にお見舞いを申し上げます。
 まずは、東京の都市づくりについて伺います。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定しました。前回の東京オリンピックを契機とし、半世紀かけて築いてきた交通インフラ等の世界に誇る都市力が、東京開催を招致する上で高い評価を受けました。これは、この間まちづくりに携わってこられた諸先輩方の努力のたまものが礎となっています。今後は、我々がさらに磨きをかけ、発展させ、未来へと引き継いでいくことが責務であります。
 オリンピック・パラリンピックの開催は、成熟都市東京を世界の人々に見ていただく絶好の機会であります。国際競争力の強化や、災害に強い安全な都市の実現、環境問題などに一層取り組むことで成熟都市に磨きをかけ、五十年、百年先を見据えた東京をつくり上げることが必要だと考えます。
 我が党の公約でもある、東京を世界で一番の都市にしていくために、都の役割はこれからも多大であると認識しております。
 そこで、今後の東京の都市づくりをどのように進めていくのか、所見を伺います。
 地域包括ケアについて伺います。
 介護保険制度が施行された平成十二年の都内の高齢者人口は百九十一万人でしたが、その後、高齢化が急速に進み、団塊世代が七十五歳を迎え、後期高齢者となる平成三十七年には三百二十七万人と見込まれております。今後、超高齢社会を迎える大都市東京においては、住まい、医療、介護、予防、生活支援に対する取り組みを連携して進める地域包括ケアシステムが何よりも重要と考えます。この地域包括ケアシステムの実現のために、施設など介護基盤の整備と並んで、人材の確保、育成も大きな課題と考えます。
 高齢者の多くは、介護が必要になっても在宅で住み続けていたいと願っております。高齢者が安心して在宅生活を送るためには、介護、医療サービスが適切に提供されることが重要です。そのためには、ケアマネジャーが、必要な医療的知識を有し適切なケアプランを作成する必要があります。
 都は、平成二十一年度から、ケアマネジャーが医療と介護の連携したケアプランを作成できるよう在宅医療サポート研修を実施していますが、この研修のこれまでの実績と効果について伺います。
 地域包括ケアシステムの構築においては、ケアマネジャーなど介護に携わっている人材だけではなく、住民同士が地域で支え合う互助の取り組みも重要になります。高齢化が急速に進む中、高齢者が住みなれた地域で暮らし続けるために、住民同士がともに支え合い、気遣い合う見守りは、欠かすことのできない大切な取り組みです。
 地域には、団塊世代を初めとする退職されて地域に戻った高齢者など、さまざまな人材がいます。これらの方々が互いに見守り合うことは、希薄化した地域のつながりを回復する上でも極めて有益であることを、我が党としても都議会で主張してきました。
 超高齢社会の到来に備え、より多くの住民が見守り活動に参加できるよう、都としても取り組みを推進するべきと考えますが、所見を伺います。
 現在、六十五歳以上のうち八割を超える方が介護保険の要介護認定を受けていない元気高齢者です。このような元気高齢者が、これまで培ってきた豊富な知識や経験、技術を生かして地域でさまざまな活動に参画していけば、来るべき超高齢社会を豊かにできると考えます。高齢者がサービスの受け手ではなく担い手として活躍し、趣味のサークルで新たに仲間をつくり、生き生きと豊かな生活を送るといった活動は介護予防の観点からも極めて有効です。
 こうした高齢者の生きがいづくりや社会参加に向けた取り組みが進み、高齢者が生き生きとして地域で生活できる社会が実現できるよう、都としても支援すべきと考えますが、所見を伺います。
 これまで述べたように、地域包括ケアを進めていくためには、それを支える人材を育成していくことが重要です。高齢者も誰もが住みなれた地域で安心して暮らし続けることができる社会の実現のため、都の積極的な施策の充実を要望いたします。
 下水道の浸水対策について伺います。
 下水道は、汚水処理や公共用水域の水質保全など快適な都市環境の創出を担うとともに、近年多発している豪雨に対しても、速やかに雨水を排除し都民の安心・安全を確保する重要な役割を持つインフラです。
 一方で、ことしは豪雨による甚大な被害が発生し、東京においても七月、八月の豪雨により区部全域で七百棟を超える浸水被害が生じました。
 下水道局では区部全域で浸水対策を進めているが、区部全域となると対策の完了までに多くの時間と費用がかかり、頻発するゲリラ豪雨に対応するためには重点化するなどの工夫が必要ではないかと考えますが、区部の下水道事業における浸水対策の進め方について伺います。
 私の地元品川は、昔から浸水被害が多く発生する地域で、平成十一年には全域で二千棟を超える大規模な床上床下浸水の被害が生じ、各地で浸水被害が多発しました。このとき、下水道局は雨水整備クイックプランを策定し、浸水被害の大きかった地域については、優先的にクイックプランの中でも規模の大きな第二立会川幹線の整備を進めるなど迅速な対応を行い、浸水被害の軽減を図りました。
 貯留施設として供用を開始した平成二十二年以降は、五十ミリを超える雨が降っても大規模な浸水被害が生じておらず、地元も大いに評価をしております。
 しかしながら、ことしの七月二十三日の局地的豪雨では数十棟の浸水が発生してしまい、なお一層の浸水対策の強化をしていくべきと考えますが、品川区の立会川流域における浸水対策の強化策を伺います。
 海の森の新たな協働の仕組みについて伺います。
 ことしの予算特別委員会において、我が党の委員の質問により、海の森の一部開園予定の時期と姿が明らかになりました。散策や広場でのレクリエーションに加え、展示施設による環境学習等も楽しめるという平成二十八年度の完成が大変待ち遠しいです。
 海の森はいうまでもなく、ごみの山という二十世紀の負の遺産を、緑の島というプラスの資源に生まれ変わらせる事業であります。私は、東京を水と緑に囲まれた世界一の環境都市とすること、そして、次世代を担う子供たちが、知力、体力、人間力を備えた、世界に渡り合えるようになることが必要だと考えております。海の森は、それを実現するのにふさわしい舞台だと思います。
 そのためには、より多くの人に訪れてもらい、知ってもらうことが重要です。これまでも、海の森は、都民参加を募り、植樹をするなど、協働というコンセプトのもと事業を進めてきており、今後はさらに、より経験豊富なさまざまな主体に幅広くアイデアを募り、イベントなども協働で展開できたらよいのではないかと考えます。このことによって、幅広く環境保全や次世代育成などにつなげていけることも可能になると思われます。
 来週、東京ビッグサイトで開催される、日本最大級の環境展示会であるエコプロダクツにおいても、海の森に関する展示、見学会を初めて実施する予定と聞いております。あの展示会には、多くの企業やNPOなどが出展し、環境学習やイベントなどに対する取り組みもアピールしております。
 そうした団体のCSRに対する機運などを上手に活用するのもよいと思われますが、多くの人々をこの海の森に呼び込めるような新たな協働の仕組みの整備が、今、求められているのではないかと考えますが、見解を伺います。
 観光振興について伺います。
 都心のアクセスが容易な国際空港や安全で正確な鉄道網は、東京が世界に誇れる都市機能であり、羽田空港や新幹線の乗り入れ駅とのアクセスにすぐれた私の地元品川も、こうした機能を大いに活用し旅行者誘致に取り組んでおります。
 このような都市機能に加え、東京の最大の魅力は人々のおもてなしの心です。オリンピック・パラリンピックの開催都市決定を契機として、これまで以上に多様な国々、ムスリムなど異なる文化圏からの旅行者が東京を訪れることが期待されます。こうした旅行者を温かくお迎えをするソフトの面の充実には、行政の取り組みだけではなく、民間の力が欠かせません。
 民間とも連携した外国人旅行者の受け入れ環境の整備については、都はどのように取り組んでいかれるのか、所見を伺います。
 先日品川では、国際会議にも対応できる設備を新たに備えたホテルが、全館改修の上、開業しました。今後、MICEへの利用も期待されるところです。国際会議を初めとするMICEの開催は、一度に多くの外国人旅行者の訪問が見込まれることから、経済波及効果が大きく、また、都市としての国際的な存在感の向上にもつながります。MICE誘致で成果を上げているシンガポールやソウルなどの海外諸都市は、国際的な都市間の連携を図り、国際会議の誘致に有益な情報交換を行っていると聞きます。
 都は、国際会議の誘致を推進するため、こうした海外諸都市との競争に勝ち抜いていかなければなりません。そのためには、まず誘致を効果的に進めるための活動基盤を強化する必要があると考えますが、所見を伺います。
 近年、アジアなど新興国における経済成長を背景に、MICEの中でも特に企業系の会議や報奨旅行は増加傾向にあると聞きます。国際会議に加えて、こうした動向も捉え、東京での開催につなげるよう、都はしっかりと戦略を立てて取り組むべきと考えますが、今後の施策展開を伺います。
 諸外国では、美術館や博物館などの特別な場所をレセプション会場などに活用することでMICE開催都市としての魅力を高め、誘致を優位に進めていると聞きます。
 先日、東京でも、旅行業界の大規模イベントのレセプションが、夜の東京タワーを借景に日本の伝統文化を感じさせる寺院で開催をされ、外国人参加者から非常に好評だったと聞いております。
 東京には、庭園や歴史や建造物など、外国人を引きつける場所が多数あります。こうした特色のある観光資源を積極的に活用して、MICE開催都市として東京の魅力を高めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 先般、東京ビッグサイトで開催された東京モーターショーには多くの方々が来場し、大変なにぎわいを見せました。こうした大規模イベント開催も、東京への旅行者誘致につながる重要な取り組みであり、誘致に向けて努力していただくことを要望いたしまして、私の質問を終了いたします。
 ありがとうございます。(拍手)
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 山内晃議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の都市づくりについてでございますが、オリンピック・パラリンピック開催を推進力として、五十年先を見据えた都市づくりを進めていくことが重要でございます。
 このため、首都圏を連結する三環状道路や骨格幹線道路の整備などを加速し、強固な交通ネットワークを構築いたします。
 また、民間による都市再生プロジェクトなどを積極的に推進し、経済活力を高める拠点の形成を図ってまいります。
 今後、こうした取り組みに一層弾みをつけるとともに、世界の都市間競争の激化や少子高齢、人口減少社会への対応など、新たな時代の要請にも応え得る都市づくりを進め、東京を、さらに成熟を遂げた都市へと進化させるべく取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、在宅医療サポート介護支援専門員研修についてですが、この研修は、医療と介護の連携を図るため、居宅介護支援事業所の介護支援専門員に対して、都独自に実施をしているものでございます。
 研修では、医療サービスを含む適切なケアプランが作成できるよう、医師や看護師等との連携に欠かせない医療的知識に関する講義や、退院時を想定した模擬演習等を行っており、平成二十一年度から平成二十四年度までの四年間で約千七百人が受講しております。
 研修受講者からは、医療的な視点も入れたケアプランの作成に役立った、医療職との連携が図れるようになったなどの声が数多く寄せられており、介護支援専門員の質の向上に寄与していると認識しております。
 次に、高齢者の見守り活動の推進についてですが、現在、区市町村は、民生委員や町会、自治会、NPO法人、ライフライン事業者等と連携しながら、さまざまな高齢者の見守り活動を行っており、都はこうした取り組みを包括補助により支援しているところでございます。
 今年度は、地域住民が高齢者を日常的に見守り、異変に気づいた場合に専門機関につなぐ見守りサポーターの養成についても、新たに包括補助の対象といたしました。
 また、十月には、異変への気づきや相談しやすい体制の確保など、見守り活動を行う際のポイントをわかりやすくまとめた都民向けのガイドブックを作成いたしました。
 今後、このガイドブックも活用しながら、より多くの方が高齢者の見守り活動に参加できるよう、区市町村と連携し、見守り体制の一層の推進を図ってまいります。
 最後に、高齢者の社会参加に向けた取り組みについてですが、現在、区市町村では、高齢者の豊富な知識や経験を生かしたボランティア活動、子供と触れ合う世代間交流など、社会参加や生きがいづくりに向けたさまざまな取り組みを行っております。
 都は、こうした取り組みを包括補助により支援するとともに、地域で活動する団体や企業の事例等を紹介するTokyoシニア情報サイトを運営し、都内で開催されるイベント情報や地域で活躍する団体の活動を紹介するなど、広く都民に情報発信をしているところでございます。
 今後とも、都として、区市町村における高齢者の生きがいづくりや社会参加に向けた取り組みを積極的に支援してまいります。
   〔下水道局長松浦將行君登壇〕

〇下水道局長(松浦將行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、区部における浸水対策の進め方についてでございます。
 下水道局では、東京都豪雨対策基本方針に基づき、浸水の危険性が高い地区などに重点化し、品川区大井を含めた二十地区を対策促進地区として、下水道幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を進めております。
 また、浸水被害が発生した場合に影響が大きい大規模地下街九地区では、新たに今年度から新橋・汐留地区に着手するなど、時間七十五ミリの降雨への対策を進めております。
 さらに、かつての川を下水道幹線として利用している浅く埋設された幹線の流域などでは、大雨により幹線内の水位が上昇すると、周辺の地盤の低い箇所に雨水が逆流し、浸水被害が発生しやすいため、戸越幹線の流域を含め二十地区を新たに重点地区として選定し、既存幹線の増強などの対策を実施していくこととしております。
 次に、品川区立会川流域での浸水対策についてであります。
 品川区二葉・中延など、平成十一年に甚大な浸水被害が生じた地域において、緊急重点雨水対策として第二立会川幹線を計画いたしました。
 平成十三年度から直径三・八メートル、延長三・三キロメートルの区間を整備し、浸水対策の効果を早期に発現するため、二十一年度より貯留量約三万五千立方メートルの暫定貯留管として供用を開始し、地域の浸水被害の軽減に役立てております。
 現在、第二立会川幹線の下流部約一キロメートル区間の整備を平成三十年度末を目標に進めており、完成後は、これまでの貯留管が流下管となり、京浜運河へ継続的に雨水排水が可能となります。
 これにより、浸水に対する安全度が大幅に向上し、地域のお客様の安全・安心がより一層確保されることとなります。
   〔港湾局長多羅尾光睦君登壇〕

〇港湾局長(多羅尾光睦君) 海の森の新たな協働の仕組みについてですが、海の森は、主要なコンセプトとして協働を掲げており、これまで苗木づくりや植樹に参加する都民や企業等の団体を募り、森づくりを進めてまいりました。
 今後は、森づくりに加え、国内外のさらに多くの方々に訪れていただき、海の森の生い立ちやその意義を知っていただくことが必要であり、例えばコンサートやスポーツ等を取り入れた、より魅力的なイベントを海の森を舞台として企画、実施していくことが有効でございます。
 このためには、海の森事業に賛同する企業等の豊富な経験に基づくアイデアを生かすことも効果的であり、これまでの協働をさらに発展させていくため、新たに東京都海の森倶楽部を設置いたします。
 この仕組みの活用により、海の森における魅力的なイベントの実施を誘導し、海の森に多くの方々が訪れていただけるよう努めてまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、外国人旅行者の受け入れ環境の整備についてでありますが、オリンピック・パラリンピックの開催決定を契機として、世界各国から訪れる多くの旅行者の多様なニーズに応えるためには、民間とも連携して受け入れ環境を充実させていくことが必要でございます。
 東京には、さまざまな言語に対応できる人材や、観光に関連する多くの民間事業者が集積しております。こうした東京の特性を生かし、旅行者をきめ細かく支える観光ボランティアの育成、活用を検討するほか、ムスリムなど多様な文化や習慣を持つ旅行者への対応として、普及啓発を通じて宿泊施設、飲食店と連携するなど、受け入れ環境の整備を検討してまいります。
 海外からの旅行者をおもてなしの心でお迎えし、何度も訪れたくなる世界有数の観光都市を目指してまいります。
 次に、国際会議の誘致についてでありますが、国際会議は、東京の魅力を国内外にPRする絶好の機会であり、大きな経済波及効果が期待できることから、これまで都は、誘致、開催に必要な資金の助成や人材の育成など、着実に施策を展開してまいりました。
 誘致を一層効果的に進めるためには、主催者が会議開催に当たり重視する視点や競合都市の活動など、有益な情報を積極的に入手し、活用することが必要であります。
 このため都は、これまでの取り組みに加え、国際的な連携組織に加盟し、海外とのネットワークを構築するなど、誘致活動を戦略的に進めるための体制の強化を検討してまいります。
 次に、企業系の会議等の誘致についてでありますが、経営会議を初めとする企業が開催する会議や、報奨旅行、研修旅行等は、経済活動が活発になるほど増加する傾向にあり、経済成長が著しいアジア地域を中心に、今後も増加を続けることが見込まれております。
 このため都は、今年度、企業系の会議等の誘致に成果を上げている都市の取り組みや、重点的に誘致活動を展開していくべき市場などについて調査を実施しております。
 今後は、この調査結果を踏まえて誘致戦略を構築するとともに、会議主催者に対する支援の方策などについて検討してまいります。
 最後に、観光資源を活用したMICE誘致についてでありますが、国際会議等の参加者に東京の魅力を堪能できるさまざまな機会を提供することは、MICE誘致につながる有効な手法であります。
 これまで都は、国際会議の開催時に、外国人に人気の高い浅草、築地などをめぐる観光ツアーや日本の伝統文化体験など、参加者が東京の魅力を実際に体験できるプログラムを提供することを通じて、会議の誘致、開催を支援してまいりました。
 今後は、MICEのレセプションに日本庭園や美術館、博物館等を活用するなど、開催都市としての魅力を一層高める取り組みを検討いたします。
 海外の競合都市との誘致競争を勝ち抜くため、こうした取り組みを通じてMICE誘致を戦略的に展開してまいります。

〇議長(吉野利明君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時三十四分休憩

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