平成二十五年東京都議会会議録第十七号

〇議長(吉野利明君) 十七番栗林のり子さん。
   〔十七番栗林のり子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇十七番(栗林のり子君) 東京にとって、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックは、誉れある二度目の開催であります。東京が、七年後の開催を目指し、世界の諸都市が抱える共通の課題に先駆的に挑戦し、その成果を内外に発信していく大きな契機としていくことが望まれます。
 先日、IOCのトーマス・バッハ会長が来日され、記者会見で二〇二〇年の東京五輪を、日本文化を反映した大会にしてほしいと述べていました。オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典であると同時に、文化の祭典でもあります。日本の誇る文化を世界に発信していく、またとない好機であり、文化の力を世界が再認識する、新たな歴史を刻んでいく祭典とすべきであります。
 また、二〇二〇年は、東日本大震災の発災からちょうど十年目に当たる節目の年ということになります。大会開催は被災地の復興とともにでなくてはなりません。私は、復興なくしてオリンピック・パラリンピックの成功はないと考えています。
 被災地支援策の一つとして、私は、文化、芸術を通しての支援が被災者の心の支援につながることを強く訴えてまいりました。そして、さまざまな施策を推進してまいりました。
 オリンピック・パラリンピックの文化プログラムを今後具体化していくことになりますが、文化の力で被災地を支援するなど、二〇二〇年まではもとより、これからもずっと、被災地のことを忘れてはならないと考えます。
 そこで、文化、芸術を通しての被災地支援の新たな取り組みとして、岩手、宮城、福島三県との合同交流イベントを都が企画することを提案します。前回の東京大会のレガシーである駒沢オリンピック公園広場などを活用し、やぐらを組んで、東北の有名な民謡を歌い踊り、物産展や地元グルメなどで交流の輪を大きく広げる東京大交流夏祭りといった大イベントです。人、物、心の交流を通じて、被災地の復興を大きく後押しすることになります。
 芸術文化を通じた被災地支援について、文化プログラムにおけるあり方も含め、都の見解を伺います。
 オリンピック・パラリンピックの東京開催は、いうまでもなく、子供たちに夢と希望をもたらすものであります。こうした次代を担う子供たちをいかに育てていくかは、東京の大きな課題であります。子供を大切にするという意識を高め、子供は国の宝というメッセージあふれる東京を構築することが求められます。
 こども未来財団が、少子化社会を生きると題してエッセーを募集しています。その中で、財団賞に選ばれた都内在住の三十七歳の母親の作品が印象的でした。双子を出産後、夜中は二人分の授乳でろくに眠れず、へとへとになり、心身ともに疲労のピークだったとき、生後六カ月の双子をベビーカーで散歩させていたら、年配の紳士が近づいてきて、かぶっていた帽子をとり、深々とおじぎをし、ありがとうといい、立ち去ったそうです。
 子供を産んだことに対して、見ず知らずの人にありがとうといわれた言葉がストレートに心に入り、おめでとうではなく、ありがとうの言葉がたまらなくうれしく、誇らしい気持ちになったそうです。そして、このありがとうをずっと忘れないと述べていました。
 このエピソードに象徴されるように、子育てに頑張る人たちにエールを送る社会を構築することが求められています。
 都はこのたび、少子化対策検討チームを立ち上げました。初めに、このチームの委員長になられた安藤副知事に、子供を大切にする社会の実現に向けての見解を伺います。
 今回の少子化対策では、結婚、妊娠、出産というところにもポイントを置き、さらに、若年者支援部会を立ち上げています。私も以前より取り上げてきたテーマだけに、高く評価いたします。
 都は、未婚化、晩婚化の原因の一つとして、地縁の出会いの機会が減少していることを挙げています。昨日の我が党の代表質問に対し、若年者の就業、結婚等に関し幅広い意見を聞く調査を行うとの答弁がありました。これらの調査も参考に、結婚支援について精力的に議論し、必要な施策を実施すべきです。見解を伺います。
 私は昨年の予算特別委員会の質疑において、ボランティアを活用しての婚活支援について取り上げ、当時の石原知事より前向きな答弁をいただいたところです。しかし、いまだ実現には至っておりません。
 その際、ボランティアのモデルとして、海の森の活用を提案させていただきました。海の森というのは、水と緑のネットワークの拠点だけでなく、ボランティア等を通じた人と人との交流の拠点としても、すばらしいポテンシャルを有していると思います。そこで苗木を植えながら会話が生まれたり、出会った人たちがお互いのボランティア活動について語り合い、誘い合うなど、共通のテーマをベースとした発展性ある人と人との関係を構築できるいい機会となります。そうした出会いと交流を経て結婚に至れば、婚活支援の一つのスタイルになるのではないでしょうか。
 海の森の魅力を伝えるということを前面に打ち出しつつ、結果として結婚につながる、そのような自然な結婚支援が可能であり、新しい地縁の役割を担うのではないでしょうか。
 海の森には、そうした若い男女の交流のきっかけとなるような工夫が重要だと思いますが、都の見解を伺います。
 次に、妊娠に対する支援について伺います。
 妊娠しにくい夫婦への支援に、不妊治療に対する助成制度があります。国は、対象年齢を四十三歳まで引き下げることを発表しました。治療を受ける機会が減少することなく、対象となる所得制限を拡充するなど、都独自の支援が必要と考えます。
 一方、妊娠した人の中には、妊婦健康診査をほとんど受けない人や、全く受けずに飛び込み出産をする人もいます。こうした未受診妊婦の場合は、妊娠、出産に関するリスクが母子ともに高いことが明らかになっており、そうしたことを十分に認識していない人もいることは課題だと考えます。
 また、妊婦の中には、経済的な基盤やパートナーとの関係、また、マタニティーハラスメントなどの職場での待遇等、さまざまな悩みや不安を抱えている方もふえています。
 そこで、妊婦健康診査を受けることの重要性について広く普及啓発することや、悩みを抱えている妊婦への相談支援の充実を図ることが必要であると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、産後ケアについて伺います。
 フィンランドに、妊娠期から家族をケアするネウボラという出産育児相談所があります。妊婦と胎児のケア、母体回復、授乳支援を同時に同じ保健師が担当するマイ保健師制度などにより、頻繁に親子に会う機会をふやすことで虐待防止の役割にもなるといわれています。育児不安や児童虐待が増加する日本でも、ネウボラの役割に関心が寄せられています。
 社会保障審議会児童部会の専門委員会の検証によると、平成二十二年度には二十三人のゼロ歳児が虐待により亡くなっており、そのうち生後二十四時間以内に亡くなっているのが九人という悲しい結果でした。
 国が行った子どもの健康と環境に関する全国調査によると、産後一年たった母親の約半数は、自分が神経過敏になっていると感じ、一三%は絶望的な気持ちになることがわかっています。
 昨日の我が党の代表質問でも取り上げたように、私の地元世田谷区では、五年前より産後ケアセンターを開設し、育児に不安を抱えていた母親から大変喜ばれています。全国初ということから、設置に当たっては、国や都と綿密に相談し、申請方法や許可の仕組みなど大変苦労が多い中、さまざまな課題を克服し設置に至ったようです。
 都の支援としては、子育てスタート支援事業による補助制度がありますが、都内全域に設置しやすい環境をつくるため、補助制度の一層の周知や設置に向けたノウハウを紹介することなど、区市町村を積極的に支援するべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、子供を守るためのネット依存対策について伺います。
 LINEという無料通話アプリの急速な普及により、便利さが受ける一方で、友達との距離感に悩んだり、いじめや犯罪に悪用されたり、LINEから離れられない依存も問題になっています。
 ネットを利用している高校生は九五・四%、スマートフォン所有率は五五・九%です。LINEは世界で三億人が利用しています。フィルタリングの機能はますます低下し、有害サイトによる犯罪、他人への誹謗中傷がいじめにつながり、利用者に身体的、心理的悪影響を与えています。
 また、インターネットゲームは数人でチームを組むことから、自分だけ途中で抜けることができず、エンドレスで続き、夜更かし、遅刻、日中の居眠り、成績の低下、不登校等、変化が起こり、ネット依存は短時間に深刻化し、早期発見、早期対応が大切であり、子供の変化を見逃さない、小さなサインを見落とさないことも親として大事な役目です。
 都としては、ファミリeルールの徹底を図り、スマホ、携帯とのつき合い方や、ネットの利用時間の上限を決めて子供に守らせるなど、事態が深刻になる前に対応することが大事です。ネット依存予防、対応のための啓発資料を作成し、普及啓発に取り組むべきです。青少年治安対策本部の取り組みについて伺います。
 また、ネット依存への学校内の相談体制を確立すべきです。スクールカウンセラーや養護教諭、情報教育担当者等に、ネット依存の防止、対応に関する研修を行い、適切に相談、対応ができるようにすべきと考えますが、教育庁の所見を伺い、質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔副知事安藤立美君登壇〕

〇副知事(安藤立美君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えをいたします。
 子供を大切にする社会の実現についてでございますけれども、東京では、未婚化や晩婚化等の影響により少子化が進行しておりまして、合計特殊出生率は全国で最も低い水準にありますし、先日公表いたしました人口推計によれば、二〇六〇年の年少人口は、二〇一〇年に比べ半減が見込まれる状況にございます。
 少子化の進行に歯どめをかけ、子供を大切にする社会を実現するには、子供を持ちたいと希望する全ての人が安心して子供を産み育てることができる環境を整備していくことが極めて重要であると思っております。
 子育てには、保育、医療、住宅、雇用、教育など、さまざまな分野が関係していることでございますので、少子化対策検討チームを設置し、有識者ヒアリング等により把握しました東京の子育て家庭の現状やニーズも踏まえまして、局横断的に検討を進めているところであります。
 東京の将来を担う子供が健やかに成長するよう、家庭、地域、学校等とも連携協力し、社会全体で子育てを幅広く支援する仕組みを構築してまいりたいと思います。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) ネット依存への相談体制についてでありますが、警視庁が先月発表した都内中高生対象の携帯電話等の利用に関する調査では、携帯電話が手元にないと不安、予定の時間が来てもネットをやめられないなど、七割の生徒が何らかの依存傾向を示す結果となっております。
 都教育委員会はこれまで、ネットの利用時間を決める、食事中は使わないなど、家庭でのルールづくりを促す指導のポイントを指導資料に盛り込むことや、情報科教員対象の研修を行うなど、学校での指導を支援してまいりました。
 今後は、こうした取り組みに加え、養護教諭やスクールカウンセラーを対象としたネット依存に関する研修を新たに実施いたしますとともに、専門家の意見を踏まえて指導資料を改定するなどして、児童生徒や保護者からの相談に適切に対応できるよう、各学校を支援してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) オリンピック・パラリンピックに向けた芸術文化の活用による被災地支援についてでございます。
 今回の立候補ファイルでは、復興した日本を全世界に示すことがうたわれており、文化プログラムの策定に当たっても、日本の文化の力を最大限に引き出しながら、それを被災地の復興につなげることが重要であります。
 都はこれまでも、小中学校や仮設住宅などにアーティストを派遣するとともに、地元自治体やNPOなどと連携して、東京の文化の力を活用した被災地支援事業に取り組んでまいりました。
 こうした取り組みは、被災された方々の心を癒やすとともに、津波で失われた能舞台の復活や、復興を支える人材の育成など、具体的な成果につながってきております。
 これまでの成果やご提案の趣旨も踏まえ、今後とも芸術文化を活用した被災地支援事業に取り組むとともに、被災地支援の視点を取り入れた文化プログラムの策定に向けて、東京芸術文化評議会での議論を進めてまいります。
   〔知事本局長中村靖君登壇〕

〇知事本局長(中村靖君) 若年者支援についてでありますが、都はこれまで、主に出産期から子育て期を重点に置いた少子化対策に取り組んできたところであります。
 しかし、少子化の背景には、経済的基盤の不安定さなど、若者を取り巻く社会環境の変化や、結婚、出産に関する価値観の多様化など、さまざまな要因が関係しております。
 このため、子育て世代に加え、結婚や出産前の若者にも焦点を当て、ライフステージを踏まえた切れ目のない支援策について検討することを目的に、本年七月、構造的福祉プロジェクトチームの中に、若年者支援部会と子育て環境支援部会を設置いたしました。
 現在、若年者支援部会においては、若者の自立に向けた支援策に加え、さまざまな面から若者を応援する仕組みを検討しております。その成果を新たな長期ビジョンに反映し、今後の取り組みにつなげていくことにより、都における少子化対策の一層の充実に結びつけてまいります。
   〔港湾局長多羅尾光睦君登壇〕

〇港湾局長(多羅尾光睦君) 交流の拠点としての海の森についてですが、海の森の事業は、ごみの山を緑の島によみがえらせ、訪れた方たちがくつろぎながら豊かな自然に親しめる公園とすることのみならず、森づくりを通じて人を育てる事業でございます。
 この事業を活用して、人々の出会いの場を創出していくことは大変有意義であると考えております。このため、海の森のコンセプトを生かし、子供たちからお年寄りまで幅広い層の参加を念頭に置いた多様なイベントを実施してまいります。
 そうした取り組みの一つとして、例えば、アウトドアに興味のある若い男女を対象に、自然環境保全や野外活動の知識や技術を学べるイベントを海の森で開催するなどし、新たな交流が生まれる機会づくりの工夫を行ってまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、妊婦健診の普及啓発と相談支援についてですが、妊婦健診は、妊婦や胎児の健康状態を定期的に確認しながら、医師や助産師と出産や育児等に関する相談ができる場であり、妊娠期間中を心身ともに健康に過ごし、母子ともに安全な出産を迎える上で大変重要でございます。
 そのため、都は現在、区市町村や医師会、産婦人科医会等の関係団体と連携しながら、妊婦健診の重要性の啓発や相談窓口の周知に努めており、今後、悩みを抱えている方が医療機関や行政機関の相談窓口につながるよう、インターネット上の広告等、新たな媒体を活用した普及啓発の方法についても検討してまいります。
 また、妊娠、出産に関するさまざまな不安や悩みについて、妊婦の方がより相談しやすいよう、電話相談などの体制の充実を図ってまいります。
 次に、産後ケアについてですが、都は、出産後、家族などによる援助が受けられず、心身の負担感を抱える母親を対象に、親子で宿泊して二十四時間体制で支援するショートステイやデイケア、相談支援などを行う区市町村の取り組みを、施設整備も含め、包括補助事業により支援しているところでございます。
 お話の世田谷区の取り組みもその一つであり、今後、こうした取り組みがより多くの区市町村に広がるよう、説明会の開催や先進的な取り組みをまとめた事例集の作成等を行い、妊娠期から産後までの切れ目のない支援の充実に向け、区市町村の取り組みを積極的に支援してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(河合潔君) ネット依存対策についてお答えいたします。
 都は、インターネット、携帯電話の子供の適正利用を推進するため、家庭でのルールづくりを支援するファミリeルール講座や、さまざまなトラブルの相談窓口であります、こたエールを運用しておりまして、ネット依存の予防等についても対応しているところであります。
 また、青少年のネット依存についての実態等をより明らかにするため、現在、東京都青少年問題協議会におきまして、専門的見地から調査研究を行っているところであります。
 今後は、これらの取り組みを踏まえ、ご指摘の普及啓発につきまして、より効果的に実施するほか、ファミリeルール講座について、ネット依存の予防を重視した講座の充実を図るとともに、こたエールの相談員の研修を実施し、相談機能の向上等の対策に取り組んでまいります。

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