平成二十五年東京都議会会議録第十七号

   午後三時三十五分開議

〇議長(吉野利明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十五番和泉武彦君。
   〔四十五番和泉武彦君登壇〕

〇四十五番(和泉武彦君) 初めに、さきの台風二十六号により亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方のお見舞いを申し上げます。
 日本時間の九月八日早朝、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催都市が東京に決定し、日本中が歓喜に包まれました。このときを境に、全ての日本人が七年後、自分はどうしているんだろう、子や孫は何歳になって、どんなに成長しているんだろうと、将来の姿に思いをはせるようになったのではないでしょうか。
 また、これを機にスポーツへの関心がこれまで以上に高まり、スポーツに取り組んでみようかと考えた方も多いのではないでしょうか。まさにオリンピック・パラリンピックが、日本中に未来への夢を運んできてくれたといえます。
 今回の東京オリンピック・パラリンピックは、立候補ファイルにおいて、都市の中心で開催するコンパクトな大会をコンセプトとしています。そして、晴海の選手村から半径八キロ圏内に競技会場の八割以上が予定されています。
 しかし、東京オリンピック・パラリンピックを成功させるには、都民が総力を挙げてこの世紀の祭典を迎える準備をする必要があり、二〇二〇年に向けて、競技会場から離れており競技が開催されていない地域も含めて、老いも若きも東京が一つになって盛り上がりを持続させていくことが大切であります。そのためにも、都内のあらゆる地域において、あらゆる世代の方々がスポーツのすばらしさを感じ、スポーツに親しめる機会を整えていかなければなりません。
 そこで、地域におけるさまざまな世代に向けたスポーツの取り組みについて、都の所見を伺います。
 次に、高齢者のスポーツ振興について伺います。
 ことし九月、東京都総務局が発表した平成二十五年敬老の日にちなんだ東京都の高齢者人口によると、東京都の六十五歳以上の高齢者人口は二百八十万四千人、高齢化率が二一・九%となりました。これは、団塊の世代が六十五歳を迎えていることで、過去最高を更新しているわけです。
 さらに、七年後の東京オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年には、高齢者の人口は約三百二十万人となり、東京に住む四人に一人は高齢者になるともいわれています。
 このような超高齢社会の到来に伴い、高齢者のスポーツ振興は、健康寿命を延ばすとともに孤独死を予防するという観点から、医療費及び介護費用の増大、高齢者の社会的孤立などを防ぐための手段として、重要性がますます高まるものと思われます。
 ただ、一口に高齢者といっても、健康状態はさまざまであり、既にスポーツを実施している方がいる一方、スポーツをしたいが、何が自分に合うのかわからない、腰に負担がかからないスポーツとはどのようなものがあるんだろうか、このような声もよく聞かれます。
 このような状況の中、今後ますます高齢者のスポーツ振興を進める必要があり、特に健康状態に合ったスポーツの紹介など、高齢者の意欲を喚起するきめ細かな情報発信が必要だと思いますが、見解を伺います。
 次に、都内中小企業の海外展開に対する支援について伺います。
 私の地元葛飾区は、都内でも代表的なものづくりの集積地ですが、最近、企業の皆様方から、新しい取引先を求めて海外市場、特にアジアのマーケットへの挑戦を考えているという話を聞くようになりました。
 都内にはすぐれた技術や付加価値の高い製品を持つ中小企業が数多く存在しますが、どんなにすぐれた製品を持つ企業であっても、名前の知られていない企業が単独で現地のマーケットに出ていって、すぐによい取引先にめぐり合うというわけにはいきません。現地の企業や関係者がその製品に興味を持ち、話を聞いてみたいと考えるきっかけが必要です。
 そこで、世界的な経済都市である東京のブランド力を前面に出して、都内中小企業をアジア市場に売り込むべきです。都が先頭に立って東京の中小企業の技術、製品に対する認知度を高め、高い技術力や安全性といった製品の強みを理解してもらうことが必要と考えますが、所見を伺います。
 一方で、東京におけるビジネス展開を考えている外国企業もたくさんあります。東京ビッグサイトでは、毎年、機械製品やエネルギー、医療等さまざまな分野の国際展示会が開催されており、これらの展示会には欧米やアジアから多くの外国企業が参加しています。アメリカの情報通信系企業や、特定分野で高いシェアを誇るドイツの中小メーカーなど、高い技術力を持つ外国企業も少なくありません。
 こうした外国企業が東京を訪れる機会を利用して、都内の中小企業が持つ技術や製品に関する情報を提供し、お互いに交流する機会を設けることが重要だと思います。都内中小企業との共同の技術開発などにつなげていければ、東京の産業のさらなる発展に役立つのではないかと考えます。
 そこで、都として、外国企業と都内中小企業との相互交流や連携がより活発に行われるよう支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 特定不妊治療費助成事業は、子供を産み育てたいと願う夫婦を支援する上で、経済的な負担の軽減という観点から重要な事業であります。
 平成十六年度の事業開始以降、助成回数や助成金額の拡大を図ってきましたが、今年度から国は、以前に凍結した胚を解凍して移植する場合などの安価な費用で行うことのできる治療については、助成額を半額にする見直しを行っております。
 都は、今年度については経過措置として従前どおり補助をしていますが、今後さらに、国は助成対象年齢、通算助成回数等の見直しについて経過措置を設け、平成二十八年度から見直しを実施する方針を示しております。
 少子化を見据え、妊娠、出産を希望している夫婦を支援するため、都は独自に支援の拡充を行い、子供を産みやすい環境を整えるべきと思われますが、都の見解を伺います。
 特定不妊治療は、医療保険の適用対象となっておらず、治療の標準化もなされていないため、治療方法、治療費用は医療機関によってさまざまとなっております。金銭的な負担が大きいため、治療を受けたくても受けられないという人がおります。
 全ての人々が平等に治療を受けられるようにするためには、既成の概念にとらわれる必要はなく、原因がはっきりとしてきたこの不妊症というものを疾患として捉えて、特定不妊治療を保険適用の対象とすべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 不妊治療を行っても、高齢になると妊娠する確率は低くなります。また、高齢で妊娠した場合には、流産等のリスクが高いことも明らかとなっております。しかし、妊娠を望む方の中には、こうした事実を知らなかったために、若いときには妊娠のことを考えず、高齢になってから不妊等に悩んでいる方もたくさんおられます。
 不妊治療は肉体的にも精神的にも苦痛を伴うものであり、女性ばかりが悩みがちな傾向がございます。しかしながら、男性側に不妊の原因があるケースも少なくありません。そもそも妊娠、出産の問題は夫婦がともに考えるべき事柄であり、男性も含めた若い世代がこの問題に向き合うように対策を進めるべきであります。
 高校生については、妊娠適齢期等に関する内容が教科書に掲載されることになったと聞いておりますが、それ以降のライフステージにある若い世代がこの問題について考えることも重要であります。
 そこで、妊娠適齢期など妊娠、出産に関する知識について、男性も含めた若い世代を中心に幅広く啓発する必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、女性の活躍推進について伺います。
 私は、医師として高齢の患者さんに寄り添って在宅診療を行ってまいっております。この中で、女性たちがさまざまな道を懸命に歩いてきた足取りを、患者様方の言動に感じることがあります。専業主婦として家族のために奮闘してきた方、仕事と子育てを担い、思ったように社会の場で活躍できずに苦労された方、ひとり親としての苦労を、このような話をしみじみとした笑い話にする方、みんな時代状況に応じて生き方を選択し、人生を切り開いてきたんだと思います。
 時代の大きな潮流である少子高齢化が進み、人々の生き方はますます多様化しています。これから社会に羽ばたく若い女性が、出産、育児、介護などさまざまなライフイベントを迎えるに当たり、それぞれの希望に応じて、あらゆる場で生き生きと活躍できる環境をつくっていくことは、都議会議員として大切な使命であると考えます。全ての女性が、将来、自分の人生を振り返ったときに、胸を張って誇りを持ち、自慢して子供や孫に話ができる社会であってほしいと思います。
 こうした社会を実現していくためには、企業ばかりでなく、地域などあらゆる場における女性の登用や継続就業に向けた取り組みの促進が不可欠であります。このため、女性活躍推進の機運の醸成を図ることが重要と考えますが、所見を伺います。
 東京では、急速に高齢化が進展しており、それに伴い、認知症高齢者の患者も急増しております。認知症の問題はテレビや新聞等で頻繁に取り上げられ、さまざまなシンポジウムが開催される等、認知症に対する都民の関心は年を追うごとに高まっています。認知症は、高齢になれば誰でもがかかる可能性のある疾患であり、世界でも類を見ないペースで高齢者が増加している東京にとって、この認知症対策は喫緊の課題であります。
 さきの平成二十五年第一回定例会において、私は認知症対策の強化の必要性と早期の段階からの支援の仕組みづくりについて伺いましたが、都は、区市町村に配置した認知症コーディネーターと認知症疾患医療センターに配置したアウトリーチチームが連携して、認知症が疑われる高齢者を訪問し、早期に支援につなげていく認知症早期発見・早期診断推進事業を本年八月からいち早く開始しており、速やかな対応は高く評価しております。
 また、認知症の早期発見を進めるためには、高齢者の身近にいる人たちが認知症について正しく理解し、早期に異変に気づいていくことが重要ですが、都は今年度、都民への認知症の普及啓発の充実に向けて、認知症の疑いを家庭で確認できるチェックシートの作成を進めております。
 今後、都内で認知症の人がふえ続けていく中、これらの方々や家族が地域で安心して暮らしていくためには、区市町村を初め、かかりつけ医、ケアマネジャー、そして地域包括支援センターなどの関係者が密接に連携して、認知症の人を早期に発見し、早期に支援に結びつけていく体制を都内の各地域でつくっていく必要があります。
 そこで、認知症早期発見・早期診断推進事業の現在の取り組み状況と今後の展開について伺い、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 和泉武彦議員の一般質問にお答えします。
 スポーツに関する二点の質問ですが、まず、地域におけるさまざまな世代に向けたスポーツの取り組みについてでございます。
 誰もが気軽にスポーツに親しめる環境を整えることは、オリンピック・パラリンピック開催を七年後に控え、スポーツ都市東京を目指す都にとって極めて重要でございます。
 都は、スポーツ博覧会東京やTOKYOウオークなど、さまざまな参加体験型のスポーツイベントを通じて、親子がともにスポーツを楽しめる機会を提供しております。
 また、子供から高齢者まで、誰もが身近にスポーツに親しめる地域スポーツクラブの設立、育成を推進しており、中でも、クラブが開催する働き盛り、子育て世代向けのイベント等に対して支援をしてございます。
 さらに、今年度からは、トップアスリートを指導者として地域に派遣し、ジュニア層を対象としたスポーツ教室を実施するアスリート・サイクル地域貢献モデル事業を開始し、地域スポーツの裾野の拡大などを図っております。
 今後とも、これらの事業に継続して取り組むとともに、その充実に向けて検討し、さらなる地域スポーツの推進を図ってまいります。
 次に、高齢者のスポーツ振興についてでございます。
 高齢者にとって、スポーツは、健康の維持増進など身体的な有用性だけでなく、生きがいづくりや孤独感の軽減など心理的、社会的な効用もあり、超高齢社会を迎える東京において、ますます重要な意義を持っております。
 都はこれまで、シニア健康スポーツフェスティバルTOKYO、ねんりんピックへの選手団の派遣、シニアスポーツ振興事業など、高齢者を対象としたさまざまな事業を展開してまいりました。
 高齢者に適したスポーツは多種多様でございまして、身体への負担の少ないスポーツなど、新たに知ってもらうことで、高齢者がスポーツに取り組むきっかけにつながり、スポーツ実施率向上にも期待ができます。
 このため、都は、高齢者が各自の健康状態や生活環境に合わせてスポーツを選択できるよう、スポーツの特性や効用などを「ニュースポーツEXPO in多摩」、都民スポレクふれあい大会などのイベントや各種情報媒体で紹介することを初め、区市町村や関係団体などと連携し、きめ細かな情報の発信に努めてまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の海外展開支援についてでありますが、東京の産業の活性化を図るためには、都内中小企業に対し、拡大するアジアの需要を取り込むことができるよう支援することが重要であります。
 都はこれまで、海外ビジネスに精通した商社OB等を活用し、アジアなど海外市場を目指す中小企業の販路開拓を支援してまいりました。
 今後は、これに加え、集客力の高いアジアの展示会において、都内中小企業の高い技術力やすぐれた製品を効果的にアピールする機会を新たに設けていくことを検討いたします。
 こうした取り組みにより、ビジネス拡大のきっかけとなる商談機会の充実を図り、アジア市場の販路開拓に取り組む中小企業を積極的に後押ししてまいります。
 次に、外国企業と中小企業の連携促進についてでありますが、都内中小企業が外国企業との交流や連携を通じ新たなビジネス展開を図っていくことは、国際的な競争力を強化する上で重要であります。
 都はこれまで、産業交流展において、東京のマーケットに関心を持つ外国企業に出展の機会を提供してまいりました。これら外国企業の中には、都内中小企業との取引拡大にとどまらず、技術や製品開発における提携を希望する企業もございます。
 そこで、今後は東京で開催される展示会に出展する外国企業と中小企業との交流の機会を設け、技術提携や共同研究などを促進する仕組みを検討してまいります。
 こうした取り組みを通じ、すぐれた技術力を有する中小企業の新たな事業展開を支援してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、不妊治療への支援についてですが、都では、平成十六年度から国の制度に基づき特定不妊治療費の一部助成を実施しており、その助成件数は、制度の開始当初と比較して約十倍となっております。
 国は、この助成制度について、実際にかかる費用のおおむね二分の一とすることを基本として、今年度、安価な凍結胚移植等の助成額を現行の半額に引き下げる見直しを行いました。
 しかし、特定不妊治療は、治療法によってかかる費用がさまざまであり、自己負担額が治療費の二分の一を大きく超える場合もございます。
 都としては、こうした状況を踏まえ、子供を欲しいと望んでいるにもかかわらず恵まれない方々が治療を受けやすくなるよう、支援の拡充について検討してまいります。
 次に、不妊治療の保険適用についてですが、現在、特定不妊治療は治療の標準化がなされておらず、治療方法や費用は医療機関によってさまざまでございます。
 このため、都はこれまでも、全国の治療状況及び成績を考慮した上で、治療の標準化を図り、医療保険の適用対象とするよう国に提案要求を行ってまいりました。
 今後とも、不妊治療を必要とする人が安心して治療を受けられるよう、国に強く求めてまいります。
 次に、妊娠、出産に関する知識の啓発についてですが、都では、若い人たちが妊娠、出産について正しい知識を持ち、自分自身のライフプランを考えるきっかけとなるよう、平成二十二年度に、小冊子「いつか子供がほしいと思っているあなたへ」を作成いたしました。
 この中では、不妊の原因や不妊治療、妊娠や出産の適齢期などを紹介しており、今年度行った改訂では、男性にも不妊につながる要因が存在することを詳しく説明した内容も盛り込んだところでございます。
 小冊子は、区市町村や保健所等の関係機関に加え、昨年度から都内の大学約百八十カ所にも配布し、若い人たちへの普及啓発に役立てており、今後、さまざまな媒体の活用も検討しながら、男性も含め若い世代を中心に妊娠、出産に関する知識の啓発に努めてまいります。
 最後に、認知症早期発見・早期診断推進事業についてですが、お話の認知症コーディネーターとアウトリーチチームが連携した取り組みは、現在、七つの二次医療圏の十二区市で開始しており、そのうち六区では、高齢者を訪問、診断し、介護保険サービス等の支援につなげております。
 また、認知症の疑いを家庭で簡単に確認できるチェックシートにつきましては、六月に実施した生活状況等のアンケート調査をもとに、看護師が高齢者の自宅を訪問し、健康状況等に関するヒアリングを行っており、年度内には完成する予定でございます。
 既に、多くの区市町村が来年度からの事業開始の意向を示しており、今後、より多くの人が認知症に早期に気づき、必要な支援を受けられるよう、関係機関と連携しながら事業の一層の展開を図ってまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 女性の活躍推進に向けた機運の醸成についてでありますが、全ての女性が意欲と能力に応じて多様な生き方を実現するためには、仕事と家庭、地域生活の調和の推進を初め、女性の継続就業に向けた職場環境の整備、さらには女性の参画や登用の促進を社会全体で進めていく必要があります。
 都はこれまで、企業によるワークライフバランスの先進的な取り組み事例を盛り込んだ手引書や、ウエブサイトを通じて仕事と育児の両立支援に関する情報などを広く発信するとともに、今年度、初の試みとして、大学との共催により生涯キャリアの設計に関する公開講座を実施いたしました。
 今後は、新たに、経営トップ層を対象とした女性の積極的な登用や人材育成に関する普及啓発を初め、産業、地域、教育等にかかわるさまざまな団体と協働した取り組みを展開するなど、女性の活躍推進に向け、一層の機運醸成を図ってまいります。

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