平成二十五年東京都議会会議録第十七号

〇議長(吉野利明君) 百二十四番山下太郎君。
   〔百二十四番山下太郎君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇百二十四番(山下太郎君) 初めに、先日の台風でお亡くなりになられた方々、被災された全ての方々に、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 質問に入る前に、知事に一言申し上げます。
 私は、昨日の我が会派の代表質問に対する知事の極めて不誠実な答弁を伺い、問題発覚以前から予定していた知事への質問を取りやめました。なぜなら、都民が到底理解できないような説明しかできない今の知事と都政の未来を議論することは、私はできないからであります。
 知事は昨日、都政を停滞させないために仕事を全うするという趣旨の発言をされましたが、事態は逆で、知事がその不誠実な態度を続ければ続けるほど、都政を停滞させかねないのであります。一分でも一秒でも早く説明責任を果たすよう強く申し上げ、質問に入ります。
 初めに、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックと多摩地域について伺います。
 オリンピック招致の成功は、日本中の多くの方々に新たな希望を感じさせました。その方々の思いに応えるためにも、二〇二〇年東京オリンピックを、夢が持てない若者に勇気を与え、そして東日本大震災からの早期復興を実現し、世界中からのさまざまなサポートに対して心からの感謝を表明できるよい機会にしていかなければなりません。
 そのためには、主な競技が開催される湾岸地域に限らず、さまざまな地域や多くの人々を巻き込んでいく必要があります。
 私たちは、当初から、被災地支援と多摩地域での競技開催を求めてまいりました。被災地での競技開催を含む支援計画は一定の前進を見ましたが、多摩地域における競技開催は非常に限定されたものになってしまいました。
 もちろん、今回の招致成功の理由の一つに、競技会場をコンパクトにというコンセプトがあったことは十分理解しています。だとすれば、多摩地域において、ロンドン・オリンピックでも注目された文化プログラムを積極的に活用してはいかがでしょうか。
 文化プログラムは、開催国の文化、芸術、音楽などを紹介するプログラムのことで、一九四八年のロンドン・オリンピックでは、芸術競技という文化の種目があり、各国が文化メダルを争った歴史まであります。しかも、注目される点は、単にオリンピック開催時の一過性のものとして終わらずに、その後も自分たちの町の文化遺産として役目を果たすことを目標としている点です。
 私は、多摩地域のさまざまな場所で大型スクリーンを設け、チケットを持たない人でも大会を楽しめるようにしたり、音楽ライブイベントなどを行い、そこに地域の特色を生かしたアイデアを重ねる文化プログラムを積極的に活用すべきと考えます。
 そして、それらイベントを、ドイツ・ロマンチック街道のように一つのルートにまとめた、外国の方にもわかりやすいマップなどをつくり、広く広報していくべきだと思います。
 私は、オリンピック開催に向け、多摩地域の魅力を発信し、内外の旅行客を誘致すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 次に、多摩地域の今後について伺います。
 私はこれまで、多摩地域が発展していくためには、多摩は独自の将来像を描くことが重要だと主張してまいりました。そこで、二〇二〇年の東京でも目指しているスマートシティー構想を多摩の将来像の柱にすべきと、本年第一回定例会において提言をいたしました。
 多摩地域は、太陽光、風力、小水力、バイオマスなど豊富な資源があり、都心からのアクセスのよさを生かし、さまざまな研究機関や民間企業などを巻き込むこともできる、スマートエネルギー構想にはうってつけの地域であります。また、実現すれば、市民のライフスタイルの変革や新たなビジネスチャンスが生まれるなど、独自の発展にもつながります。
 私たちの質問後、都は新たな多摩ビジョンを発表し、今後の進むべき方向性として、町ごとにエネルギーを創造するエネルギーモデルを構築し、エネルギーの地産地消を実現するとしており、高く評価しています。既に国においては、横浜市や北九州市など四地域で実証実験を行っており、多摩地域でも、スマートメーターという各世帯の電気使用量を簡単に把握できる電力メーターを導入することまで検討されています。
 このように、国全体の環境が整い、都としても既に明確なビジョンを示しています。まず、多摩地域がスマートエネルギー都市のモデルとなるような具体的な取り組みを進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、小児医療について伺います。
 私は、周産期、小児医療に関しては、病院数、NICU病床数、医師の数など、区部と多摩の間には厳然たる格差があり、命にかかわる問題で格差があってはならないと主張してきました。しかし、いまだに格差が解消されたとはいいがたい状態であります。
 都は、これら諸課題を克服するためにNICU増床を目指していますが、新生児科医師及び新生児専門看護師の確保に困難が伴い、設備投資に莫大な予算が必要とされています。もちろん、NICU増床には賛成でありますが、時間がかかるのは容易に想像できるところです。それまでただ手をこまねいているわけにもいきません。
 NICUに関しては、東京都以外からも流入患者さんも多く受け入れている状況ですが、そのような中でも都内患者の受け入れが円滑になされるよう、体制整備をしていくべきであります。見解を伺います。
 NICU増床を本当の意味で生かしていくためには、NICUから出ることができた子供を収容する後方医療を、地域中核病院で充実していく必要があります。地域に患者さんを帰すことができれば、保護者の負担軽減だけでなく、こども救命センターにも余裕ができ、NICU機能強化にもつながります。また、向上心の強い医師が地域医療に関心を持ち、地域での常勤医師確保にも可能性が見えてきます。
 多摩でいえば、多摩北部医療センターが都で唯一の特別連携病院に指定されており、地域医療機関の献身的な努力により、ある程度安定した一次、二次医療が確保されています。さらに、多摩小児総合医療センターとの医師の派遣、交流、患者さんの転院受け入れなど、他の地域にはまだ少ない土壌も整いつつあります。
 そこで、多摩地域におけるNICU不足を補っていくためにも、多摩北部医療センターで行っているNICU退院後の後方病床としての在宅移行支援をさらに進め、医師の確保、育成も含め、モデルとなるような取り組みとしていくべきだと考えますが、見解を伺います。
 最後に、教育について伺います。
 情報化社会といわれる今日、情報通信技術の発展で世界中の出来事を瞬時に知ることができたり、世界中の人々と友人になれたりと、便利になったことは喜ばしいことではあります。しかし、便利になった反面、情報の発信源や信憑性を確認することが非常に困難になり、時として、大人でさえ、それが真実なのかを判断することが難しいこともあります。
 さらに近年、LINEやツイッターなどのSNSと呼ばれる新しいコミュニケーション技術の普及により、子供たちを取り巻く環境は複雑なものになっています。
 大阪府警がことし六月に行ったアンケートによると、小学六年生の二二・四%、中学一年生の四八・六%、高校一年生では何と八七・一%がSNSを利用していることが明らかになりました。さらにその中で、SNSで知り合った人に実際に会ったことがある人は、高校一年生で一六・一%、中学一年生では九・九%、小学校六年生でも三・七%もいるという、子供たちが携帯電話などを通じて見知らぬ人と簡単に会えてしまう、大変憂慮すべき事態になっています。
 今後、子供たちが事件に巻き込まれないためにも、まず、都として早急に子供たちのSNSなどの利用状況を把握し、適切に対策を講じていくべきと考えますが、ご所見を伺います。
 また、同じアンケートでは、高校一年生の保護者のうち、約八割がメールやサイトの閲覧について何かしらの制限を課していると認識しているのに対し、子供たちで実際に制限があると答えたのは三七・七%にとどまり、実態に乖離があることがわかりました。
 これからの時代、親や学校がただ単に、あれは危ない、これは見てはいけないと上から押しつけても、問題は解決しないと考えます。
 私は初当選以来、情報化社会の中で子供たちが生き抜くためには、メディアリテラシーを身につけることが必要不可欠であると申し上げてまいりました。メディアリテラシーとは、さまざまなメディアからの情報をうのみにすることなく、自分の頭で考え、情報を読み解く力のことであります。全ての情報には発信者がおり、何かしらの意図が必ずある。その発信者の思想や価値観、目的によって、情報というものは編集や脚色されていることを理解する必要があります。
 この間、都がネット上でのいじめ対策や、教員にリテラシーを理解してもらうための努力をしているのは評価いたしますが、今後はさらに踏み込んで、欧米のように、ある程度の年齢に達した生徒には、一つの教科としてメディアリテラシーを本格的に教えていくくらいの試みが必要であると考えます。
 ご所見を伺って、私の質問を終えます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 山下太郎議員の一般質問にお答えいたします。
 教育に関する二点のご質問ですが、まず、SNSなどの利用状況の把握についてであります。
 昨今、SNSの利用が急速に拡大する中で、児童生徒が誹謗中傷などのいじめを受けたり、見知らぬ大人からのつきまといや脅迫などの被害を受けるといった深刻な事態が発生をしております。
 今後、都教育委員会は、こうした状況をより正確に把握するために、児童生徒、保護者を対象としたSNSに関する調査を新たに実施し、利用状況や被害、トラブルの実態を把握していきます。また、実態調査の結果を踏まえ、児童生徒が見ず知らずの大人に不用意にみずからの個人情報を伝えて会うことなどがないよう、教員向け指導資料に未然防止のためのより具体的な指導のポイントを掲載するなどして、各学校における指導の充実を図ってまいります。
 次に、メディアリテラシー教育についてであります。
 都教育委員会の学校非公式サイト等の監視では、児童生徒が不確かな情報を安易に信用したり、不適切な情報を発信するなどの実態が明らかになっております。このため、小中高校、特別支援学校では、教科、情報や技術家庭、総合的な学習の時間、道徳の時間などで、情報の適切な選択や発信の仕方を指導しております。また、都教育委員会は、児童生徒を対象に、外部講師による情報活用能力向上の訪問講座を実施をしております。
 今後は、これらの取り組みに加え、インターネット等の利用上のスキルに終始することなく、情報を分析して発信者の意図や目的を理解するための事例学習を、訪問講座だけではなく、教員向け指導資料にも取り入れて、各学校でメディアリテラシーについて指導できるよう支援をしてまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 多摩地域への旅行者誘致についてでありますが、多摩地域は豊かな自然、歴史、文化などさまざまな観光資源に恵まれており、東京の観光振興を図る上で欠かすことのできない地域であると認識しております。
 都はこれまで、地域が作成する観光マップへの支援などを通じて、多摩の魅力を旅行者に発信してまいりました。また、今年度はスポーツ祭東京二〇一三の開催に合わせて、多摩地域を初めとする競技会場周辺の観光情報を掲載したガイドブックを作成し、各会場や東京観光情報センター等の案内窓口で配布をいたしました。
 今後も、オリンピックの開催に向けてより多くの旅行者が訪れるよう、さまざまな角度から方策を検討し、多摩地域ならではの魅力の発信に努めてまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 多摩地域のスマート化への取り組みについてでございますが、スマートエネルギー都市の実現のためには、オフィス集積地や住宅地域など、地域の実情に応じて施策を進めていくことが重要でございます。
 お話のとおり、多摩地域は小水力発電などの再生可能エネルギーにふさわしい豊かな自然環境に恵まれ、先端産業や多くの大学、研究機関も集積しております。こうした特性を生かし、さまざまな主体が相互に連携して、電力の創出や最適制御などの取り組みを行うことはエネルギー効率化の観点から効果的でございます。
 今後、民間事業者や地元自治体等とも連携しながら、多摩地域を含め地域特性に応じた東京におけるスマートエネルギー都市の推進に向けて取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 周産期医療体制の整備についてですが、都は平成二十二年に周産期医療体制整備計画を定め、平成二十六年度末までにNICUを都内全域で三百二十床整備することを目標に、運営費や施設設備整備費に関する補助を拡充してまいりました。
 また、総合周産期母子医療センター等を中核とした地域の病院、診療所、助産所のネットワークグループを構築し、リスクに応じた役割分担と連携を進めているところでございます。
 さらに、周産期医療に従事する医師を確保するため、奨学金制度を設けるほか、NICU勤務医師に手当を支給する医療機関への支援も行っております。
 国に対しては、周産期母子医療センター等に対する補助制度の拡充を提案要求しており、今後とも周産期医療の体制整備に向け、さまざまな施策を推進してまいります。
   〔病院経営本部長醍醐勇司君登壇〕

〇病院経営本部長(醍醐勇司君) 多摩北部医療センターにおけるNICU退院後の在宅移行支援についてでありますが、同センターは都における小児周産期医療の拠点である小児総合医療センターと連携して、地域の小児周産期医療を支える役割を担っております。
 こうした役割分担のもと、多摩北部医療センターではNICUを退院した新生児を可能な限り受け入れ、在宅移行前に家族、訪問看護師への人工呼吸器管理の訓練や、退院後の急変時の受け入れなどの在宅移行支援を行ってまいりました。
 今後、多摩北部医療センターは、地域の中核病院として地域医療を支える小児科医の安定的な確保、育成を図るとともに、小児総合医療センターや地域の医療機関と連携して、在宅移行支援のさらなる充実を図ってまいります。

〇副議長(藤井一君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十七分休憩

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